【118】 ○ 吉岡 憲章 『潰れない会社にするための12講座 (2002/03 中公新書ラクレ) ★★★☆

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臨場感満載の倒産ドキュメント。倒産を防ぐには銀行から借りないこと?
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潰れない会社にするための12講座』 中公新書ラクレ 〔'02年〕

 前半部分の「倒産ドキュメント」が、企業小説のような臨場感に溢れ、面白かったです。
 著者の創業会社が上場会社の懐に入り、その上場会社が銀行の強制回収で破綻、創業会社も破産の憂き目に遭いますが、その際の銀行の身勝手な回収手口や債権者会議の様子などが、生々しく再現されています。

 一方で、現実を直視しないトップがいて、その能天気ぶり、無責任ぶりは漫画チックでもあり、全体としては"悲喜劇"の様相さえ呈していています(もちろん、著者の言うように一番の被疑者は社員であり債権者であって、それらの人にとっては許せない話でしょうが)。

 著者の奮闘で会社は何とか再建したものの、ここまでの記述は、ダメ社長と銀行に対する怨念に満ちていて、後半の「12講座」に入ってもやや怨念引き摺り気味で、一種のリベンジ・ファクターのようなものが、著者の経営コンサルタントとしてのモチベーションや自負に繋がっているのかも、と。

 かつて自分が出た起業セミナーで、ある"倒産社長"が、「倒産しない秘訣は銀行からお金を借りないこと」とやや冗談めかして言ってましたが、著者の考え方も同じで、「手形支払いゼロ、銀行借入ゼロ」を目指し、銀行支配から脱却をせよと―。これは、経営基盤の弱い中小零細企業などでは特に言えることかも知れません。

 著者は、そのための経営改革として、売り上げよりを利益重視し、経費を削減せよと説いています。
 数字を示していますが、この辺りは業態や会社規模によって異なってくるでしょうが、方向性としては低成長期にほとんどの企業が考えたことで、著者の想定する短期間での荒療治が必要な状況であれば、最後は本書にもあるとおり、どうしても人件費の問題になってくるのでしょう。

 思い切ったリストラができるか、正しい人材選別が可能か、といったことは、結局、トップの決断力から評価制度まで幅広く関連してくる問題で、うまくいかない会社というのはますます悪循環に陥るのだなあと、本書前半の話に思いが戻りました。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月16日 18:08.

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