【108】 × 米倉 誠一郎 『勇気の出る経営学 (2001/06 ちくま新書) ★☆

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かなりノー天気では。この本で勇気の出る人がいるのなら、まあいいが。

勇気の出る経営学.gif  『勇気の出る経営学』 ちくま新書 〔'01年〕

 もともとは経営史が専門の著者ですが、起業セミナーなどの講師やパネリスト、はたまたコーディネーターとしても活躍していて、そのノリのいい語り口に接した人も多いと思います。
 本書はそのノリをそのまま活字にしたような感じですが、自分にはかなりのノー天気な内容に思えました。

 経営者に対しては株主市場主義に基づく人的リストラの必要を説いていますが、著者の言う"敗者復活"のシステムが日本の労働市場では充分に機能していないからこそ、安易にリストラに踏み切れないという面もあるでしょう。
 そうした面を知りながら、「楽しい会社」を目指せとか、団塊の世代よ団結せよとか言う、企業や個人に向けての著者の呼びかけには、何か空しさを感じます。

 引いてくる事例が、サウスウエスト航空とかGEとか、あるいはシリコンバレー型のべンチャーだったりして、アメリカ偏重が甚だしい。
 全員がべンチャーを目指せというような論調になっているのも、お気楽。なれない人はどうするのかという視点が見られません。
 リーダーシップ論に至っては、どこかの国の国王やダライ・ラマなど、最初から権威に土台の上にいる人をとり上げ礼賛していますが、たまたま著者と接触があったにしても、説得力は乏しい感じがします。

 社員のエンピロイアビリティを高めることが株主利益に相反するという著者の発想は、まさに人材"飼い殺し"のススメでしょう。
 普通の読者なら、細部のエピソードに感応する前に、全体のバラバラぶりに気づくかと思いますが、書いている本人がそのことに気づいていないことが一番のノー天気では。
 
 ―と突っ込みばかり入れましたが、不況下においてやたら悲観論や脅威論が横行しがちな中で、若い人に向けて楽観的な明るいメッセージを発することで、それにより多少とも勇気が出る人がいるなら、これはこれでいいのかも...。

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