【103】 △ 三浦 展 『仕事をしなければ、自分はみつからない。―フリーター世代の生きる道』 (2005/02 晶文社) ★★☆

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社会学的視点で若者の職業意識を探るが、マーケッターの域を出ていない。

仕事をしなければ、自分はみつからない.jpg  『仕事をしなければ、自分はみつからない。』 マイホームレス・チャイルド.jpg 『マイホームレス・チャイルド―今どきの若者を理解するための23の視点

 増え続けるフリーターの問題をどうするかというよりも、フリーターの"生態"のようなものを書いた本で、この本を読んで一番よくわかることは、著者がマーケッターであるということだったかも知れません。
 社会学的視点でフリーターの職業意識を探ろうとしていますが、マーケッターの域を出ず、タイトル(「生きる道」)にも充分に応えているとは言えないのでは。

 『マイホームレス・チャイルド』('01年/クラブハウス)の中でフォーカスした「真性団塊ジュニア世代」('75〜'79年生まれ、本書執筆時の20代前半)を「フリーター世代」とし、その職業意識をインタビューなどから探ろうとしていますが、「若者の農民化」とか「常磐線スタイル」「週刊自分自身」といった表現はいかにも"それ"らしく、一方、提言の部分は、若者に対しては「自分探し」にこだわるな、社会(教育)に対しては「中学六年制」だけというのはいかにも弱い。

 著者の本は統計の用い方が我田引水ではないかという批判がありますが、マーケッターというのは多分に自らの直感をもとに論理を展開するという面もあり、またプレゼンなどでは、統計をずらずら並べるより、第2部「若者のいる場所」のように写真などビジュアルで示した方が、その場での訴求力はあったりする(聞き手が眠らない)...。ただしこうした手法は、学者らから見れば、"俗流"若者論と言われる所以となるのでは。

 第2部以降は文化社会学、家族社会学的な視点に立とうとしているようでもありますが、やはり"ウォッチャー"的立場を出ていません。
 だだし、フリーターへのインタビューがうまくまとめられていて、この部分ではある意味端的に若者の職業意識をあぶり出しているのと、「三浦半島ってどこですか?」などの"オヤジ"的な憤りにやや共感を覚えた部分もありましたが(この部分が教育論ときちんとリンクしていないのが残念)、これもやりすぎると若者への生理的偏見の持ち主ととられかねないかと思います。

《読書MEMO》
●「"できちゃった婚"の増加は若者の"農民化"のため」(32p)...現状の中で停滞
●「歩き食べ」...3食"歩き食べ"ですませる若者も。携帯電話を使う時、ふと立ち止まるかどうかが世代の分かれ目(121p)
●「常磐線スタイル」(140p)...車内飲食
●「週刊自分自身」(194p)...携帯電話で交わされる情報は、自分自身で週刊誌をつくっているようなもの

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