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「インディペンデント・コントラクター」を熱く語るが、現実問題を認識し解決への示唆にも富む。
『インディペンデント・コントラクター 社員でも起業でもない「第3の働き方」』('04年/日本経済新聞社)
リクルートからセガに移り、その後インディペンデント・コントラクター(IC)となった秋山進氏と、『賃金デフレ』('03年/ちくま新書)の著者で日本総研の山田久氏が、ICとは何かについてその現況と今後を語っています(2人は同じ大学の同じ学部を'87年に卒業した同期生)。
秋山氏の体験談をもとに、山田氏が労働経済的な観点などから補足しつつ対談は進められていますが、ICとして仕事する楽しさ、充実感だけでなく、社会制度面でのデメリットや、顧客との契約をとる難しさ、仕事が終れば契約は打ち切られることもあるという不安定さなど仕事上の悩みも語られています。
ICの正確な定義は無いようですが、統計上は日本でも米国でも不況になるとその数が増えるようで、両者はこの数字の中には無理やり正社員の座を追われた「擬似IC」が相当数含まれているのではと見ています。
またICと「フリーランス」の違いについて、「フリー」というのが会社の圧政を逃れ自由になるという意味合いなのに対し、会社から独立して一人前の個人として会社と契約する人と見ています(こうした評価には主観が入るので、正確な定義にはつながらないという気はしますが)。
主に働く側からの見方で語られていますが、企業側も今後インディペンデント・コントラクターを活用していくには、企業の内と外の仕事をモジュール化し、ICを一種の業務モジュールとして使いこなしていくことが必要になっていくことを示唆しています。
余計なものを持たずにリスクを軽減したい経営者にとって、インディペンデント・コントラクターは経済合理性を持つと説いています。
両者とも既存の企業を否定しているのではなく、教育の場としての価値は認めていて、ICになったらお世話になった会社に恩返しできるような、そうした関係が理想であるとしています。
会社を辞めて自分でベンチャーを起こすのも大変だし、ベンチャー企業などに転職しても、独裁的な経営者のもとに仕えるならば結局不満は解消されないでしょう。
本書は「第3の働き方」について前向きに熱く語った本ですが、現実問題に対する認識とその解決に向けた示唆にも富んでいるものだと思います。
《読書MEMO》
●インディペンデント・コントラクター(IC)の3つの特徴(69‐70p)
1.何を遂行するかについて自ら決定できる立場を確保している
2.実質的に個人単位で、期間と業務内容を規定した、請負、コンサルティング、または顧問契約などを、複数の企業や各種団体と締結する
3.高度な専門性、業務遂行能力を有している