「●働くということ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【102】 秋山 進/山田 久 『インディペンデント・コントラクター』
取材姿勢には概ね好感が持て、働くことの意味を考えさせられる。
『働くということ』 (2004/09 日本経済新聞社)
『働くということ (日経ビジネス人文庫)』['06年]
本書に関しては日経連載中から読んでいましたが、広い世代の人々の働き方を取材し、その多様化を如実に示すものとなっています。会社を辞めて独立したり、大企業からベンチャーへ行ったり、会社内でも新規事業を立ち上げたり...。
92歳の「現役」エンジニアとか、居酒屋を開いた元「裁判官」とか、かなり特別じゃないかと思われる事例もありますが、成功して結果を出した人だけでなく、将来に向けて努力している真最中の人も追っています。ワークライフ・バランス的な問題も視野に入れ、またフリーターに対して頭ごなしに否定的な見方をしてはいないなど、取材姿勢には概ね好感が持てました。"ひとり「プロジェクトX」"みたいな話も多く、じっくり読むとグッとくるものもあります。
こうしたワークスタイルの多様化は、本書の中で"元祖"『働くということ』('82年/講談社現代新書)の著者・黒井千次氏が指摘するように、「昔は企業に身売りしたが、今は企業が脆弱になり、全部を売ろうとしても買ってくれない」という状況と、ある意味で対応関係にあるのではないでしょうか。
企業内で会社に対し"不満"を言っていた時代から、企業内にいること自体に"不安"を感じる時代へ社会的ムードがシフトする中、自らが働くことの意味は、困難ではあるが自らの経験を通じて探すしかないという時代が来たのだ思いました。
【2006年文庫化[日経ビジネス人文庫〕】