【096】 △ 矢下 茂雄 『大卒無業―就職の壁を突破する本』 (2006/05 文藝春秋) ★★☆

「●働くということ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1167】 川崎 昌平 『若者はなぜ正社員になれないのか

"親向け就職ガイド"。「あ〜、とうとうこんな本、出ちゃった」という感じも。

大卒無業.jpg 『大卒無業―就職の壁を突破する本』 (2006/05 文藝春秋)

 本書は"親向けの大卒就職ガイド"であり、子どもが大学を卒業するにあたって、"大卒無業者"にならないようにするにはどうすれば良いかということが書いてあります。
 子どもをフリーターやニートにしないようにするにはどうすれば良いかという本は結構多く出版されていますが、本書の場合、大学卒業時に的を絞っているのが特徴でしょうか。

 著者はリクルート出身で、親向けの就職情報サイトを立上げ、大卒無業時代における「親のサポート力」の大切さを訴え続けているそうですが、本書では近年の大卒就職戦線の状況が、これまでの背景や流れとともに要領よくまとめられていて、そうしたことにこれまで疎かった人にもわかるように書かれています。

 本書によれば、子どもに対する「無知・無関心・過保護」が"働かない子ども"をつくるということですが、OB訪問の仕方からエントリーシートの書き方、面接時に留意すべきことまでこと細かく書いてある本書は、想定読者が親であることを考えると、ある意味これも「過保護」的では?

 「あ〜、とうとうこんな本、出ちゃった」という感じもしないではないですが、毎年卒業する大学生のうち、就職するのは僅か55%、5人に1人はフリーター(契約社員・派遣社員・アルバイト等)でもない「無業者」となっているという現実があるならば、こうした本が出てくるのも「むべなるかな」という感じ。

 いいことも書いてありました。
 「子どもの就職を成功させる条件」の中に「オフィスでアルバイトをさせよう」というのがあり、ファミレスやコンビニなど仕事仲間が同世代ばかりの環境では、異なる世代と円滑にコミュニケーションする能力は身につかないと。

 若者(と親?)に対する愛情溢れる本であるとの評価もありますが、著者は本書執筆時点でリクルート関連会社の新卒採用部門にいるわけで、人材会社の新たな市場開拓戦略というものが背後にあるようにも思えます。

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2006年8月14日 08:55.

【095】 ○ 森岡 孝二 『働きすぎの時代』 (2005/08 岩波新書) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【097】 ◎ 黒井 千次 『働くということ―実社会との出会い』 (1982/01 講談社現代新書) ★★★★☆ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1