【095】 ○ 森岡 孝二 『働きすぎの時代 (2005/08 岩波新書) ★★★★

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「働きすぎ」の原因を多様な観点から分析し、提言しているが...。

働きすぎの時代.jpg 『働きすぎの時代』 岩波新書 〔'05年〕  森岡孝二.jpg 森岡 孝二 氏(略歴下記)

business01.jpg わが国の労働の現場における「働きすぎ」の実態とその原因を、グローバル化、情報時代化、消費資本主義化、規制緩和など様々な観点から分析しています。

 働きすぎは日本に限らない。世界貿易センタービルがテロ攻撃を受けた際に、ビル内で「従業員は仕事に戻れ」というアナウンスが流れたという話はゾッとします。
 一方、アメリカではメールはPCでの利用がほとんどだが、日本人は携帯電話でのメールの使用も多く、旅行先などにも携帯電話を持っていくというのは、日本人のテクノ

 また、重大な列車事故の背後にある収益競争や、ネット書店で本を注文したら翌日には届くスピードの背後にある、アルバイトの厳しいノルマや宅配業運転手の超長時間労働についての指摘などは、我々が享受している"便利さ"のために犠牲になっているものを考えさせます。

 著者は、「労働基準」と「ワーク・ライフ・バランス」の観点から、36協定の実態のいい加減さを指摘したり、「スローライフ」「ダウンシフティング(減速への切り替え)」といった概念を紹介したたりしつつ、働きすぎにブレーキをかけるために施策をいくつか提案しています。
 
 「1日の残業の上限を原則2時間にする」などの提言は、〈一律型〉のワークシェアを提唱する熊沢明氏などの提言の具体版とも言えるかもしれませんが、著者が反対する「ホワイトカラー・エグゼンプション」にむしろ期待する経営側との溝はあまりに深いと言わざるを得ないのでは。
 こうした著者の主張がどこまで経営者の耳に届くか、"立場の違い"による平行線のままでは問題は改善されないだろうとも思いました。
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森岡孝二(もりおか・こうじ)
1944年大分県生まれ。関西大学経済学部教授。株主オンブズマン代表。専門は、株式会社論、企業社会論、労働時間論。香川大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程退学。83年4月以降、現職。経済学博士。 著書は、『独占資本主義の解明』『企業中心社会の時間構造』『日本経済の選択』『粉飾決算』など多数。訳書に『働きすぎのアメリカ人』『浪費するアメリカ人』 『窒息するオフィス 仕事に強迫されるアメリカ人』など。趣味はバード・ウォッチング。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月14日 08:55.

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