「●労働経済・労働問題」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【094】 橘木 俊詔 『企業福祉の終焉』
教授と学生の合作だが、解決案としての具体性に欠ける。
『脱フリーター社会―大人たちにできること』 (2004/11 東洋経済新報社)
増え続けるフリーターの問題に対しての、前半が著者の主張で、後半が著者のゼミの学生からの提言になっていますが、後半の学生の提言を前半で先生が補うというか、「長い前書き」のような感じです。
学生の提言は、サービス残業の削減、割増賃金制度の見直し、さらにこれらによって生まれた追加雇用を若者の正規雇用に(例えばトライアル雇用制度を拡充するなどして)回すといった、主に企業に向けてのものであり、"先生"はこれに加えて、フリーターの親は子供を甘やかさず、高齢者は早期リタイアも考えてみるべきといった感じ。
学校・公共機関等における職業教育の充実など、政策提案的なものも含まれていますが、全体に解決策としての具体性が乏しく、企業側が聞く耳を持たなければそれまででは、と思われる部分もありますし、新聞などの一部の書評子にも、本書はメッセージ部分が弱いと書かれていた記憶があります。
学生が書いた部分の方がむしろ纏まってはいますが、ゼミ論のような構成や生硬な文章は、一般書としてそのまま出すのはどうかという気もしました。
ただしこの点については養老孟司氏が、こうした「まとめ」を学生が書くのはたいへん良いことで、学生と自分のものを並べて書く"先生"はむしろ偉いと思うというようなことを書いていましたが...。
養老氏はむしろ、学生の「自分に合った仕事」という表現にケチつけていました。「自分とは、仕事で規定される程度の安直なものではない」と。
でも、それをここで持ち出すのは、主観レベルと客観レベルの混同ではないかという気もするのですが...。