【087】 ○ 島田 晴雄 『日本の雇用―21世紀への再設計』 (1994/09 ちくま新書) ★★★★

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日本的雇用の概説としてはまとまっていて、多角的視点を示していた。

『日本の雇用―21世紀への再設計』3.jpg日本の雇用031.jpg simada.jpg 島田晴雄 氏(略歴下記)
日本の雇用―21世紀への再設計』ちくま新書〔'94年〕 

 本書は'94年に「ちくま新書」の創刊ラインアップの1冊として刊行されたものですが、「日本の雇用」の今までと今後を、国際経済・労働経済の観点から概説し、企業や社会が今後取り組むべき改革の方向性を提言しています。

koyo.jpg 平成不況で雇用リストラが進行し、「終身雇用」が崩れるというのが一般的な見方だとすれば、著者はまず「終身雇用」は法的にも制度的にも保障されていたものではない一種の〈幻想〉であるとし、さらに、不況のためと言うよりも、日本経済が成熟段階にきたこと、円高の進行、高齢化社会の到来などのメガトレンドが、従来の雇用システムの見直しを迫っているのだとしています。

 年功賃金のような「終身雇用」的な考えをベースした制度が従来果たしてきた役割を認めながらも、企業は今後、賃金制度を能力主義化したり、新卒一括採用を見直したり、中高年の能力開発や女性の活用を検討する必要があり、また国は雇用需要を創出するような規制緩和や産業政策が必要になると...。

 「終身雇用」に対する考え方などは今思えば独自のものではないけれど、日本的雇用の概説としては平易な記述でよくまとまっていて、また、賃金プロファイルを住宅ストックと関連づけるなど(要するに若いうちに持ち家が買えるようにすべきだという考え)、人事・賃金制度に対して多角的な視点を示していて、この本自体は入門書として悪くないと思います。

 本書を読むと、「新産業・雇用創出計画」は著者の当時から提言だとわかりますが、著者が「小泉構造改革」に深く関わるにつれて、一部の著作の内容が政策プロパガンダ的になっていった気がします。
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島田晴雄
1943年生まれ。慶應義塾大学教授。2000年より東京大学先端科学技術研究センター客員教授。2001年より経済財政諮問会議(内閣府)専門委員、内閣府特命顧問。2004年より富士通総研経済研究所所長。専攻は労働経済学。
[編集] 主な著書...『日本経済 勝利の方程式』講談社、『痛みの先に何があるのか―需要創出型の構造改革』東洋経済新報社、『住宅市場改革』東洋経済新報社、『ヒューマンウェアの経済学―アメリカのなかの日本企業』岩波書店

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月14日 03:39.

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