「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【082】 石田 仁 『小さな会社の労務トラブル「円満」解決法』
現実に企業で起きやすい問題に対しての具体的対処法を示す。
『サービス残業・労使トラブルを解消する就業規則の見直し方』 〔'05年〕 『デフレに勝つ賃金改革―北見式実践マニュアル』 ('00年/東洋経済新報社)
社員にサービス残業をさせていたところへ監督署の臨検が入り、時間外手当の遡及支払いを命じられた、あるいは就業規則等の是正勧告を受けたという話は、業種、企業規模を問わずよく見聞きするところとなっています。
本書は、そうしたトラブルを招かないようにするための就業規則・賃金規定の作成や労務管理のあり方について具体的に述べられていて、時間管理の問題のほかにも、年次有給休暇や配転の問題、パート・嘱託社員の労務管理問題など広くとりあげて、法規に沿った対処方法を解説しています。
個人的に注目したのは役職手当に関する部分です。
前著『デフレに勝つ賃金改革』('00年/東洋経済新報社)で、役職手当を「役職手当」と「役職時間外手当」に分け、金額は大きくあるべき(例えば部長は役手10万円・時間外なし、課長は役手1.5万円・時間外7万円、係長は役手1万円・時間外5万円)と主張していましたが、これは役職手当に「時間外」が含まれていることを明示するとともに、昇進したら時間外が付かなくなり賃金が減るという矛盾を避けるにも良い方法だと思いました。
しかし、役職手当の金額が大きくなると既得権化し、人材登用が硬直化する恐れもあるのではとも思われました。
本書でも、役職手当の金額を大きくして実力主義を徹底させるという考えは同じですが、金額を固定せずに貢献度に応じて変動させることを提案しています(例えば部長は役手13万〜20万円・時間外なし、課長は役手8万〜12万円・時間外なし、係長は役手1万円・時間外あり、主任は役手5千円・時間外あり)。
これは洗い替え方式の「役割業績給」的な考え方であり、前述の既得権化の問題をクリアするうえでも、より良いやり方だと思います。
現実に企業で起きやすい問題に対しての具体的対処法が練られていて、かつ事業主にも分かりやすく書かれていると思います。