【059】 ◎ ハーバード・ビジネス・スクール・プレス (監修:ピーター・キャペリ) 『ハーバード・ビジネス・エッセンシャルズ(2) 人事力』 (2003/03 講談社) ★★★★☆

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人材獲得戦略・人材定着戦略がポイントがよく纏められている良書。

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ハーバード・ビジネス・エッセンシャルズ (2) 人事力』 (2003/03 講談社)

 本書は、「マネージャーや経営者向けに、優れた人材を獲得し定着させるための基礎知識をまとめたもの」(7p)ということで、特に目新しいことばかりが書かれているわけではないですが、採用(面接を含む)など人材確保戦略の押えておくべき基本的ポイントがよく纏められている良書だと思いました。

 採用において必ずしも新卒中心ではないという日本との違いはありますが、それ以外の日米の差はあまり感じられず、面接に際して「職務記述書」を作るところは米国らしいですが、それに拘束されず最終的に人物を重視するとか、社員が辞める理由なども、人間関係や上司の問題とかが多いというのは日本と同じです。

 採用(人材獲得戦略)と同じくらいのボリュームを、人材教育・キャリア開発戦略を含む人材定着戦略にも割いているのもいいと思います。
 人材定着の成功事例として、"定番"とも言える〈サウスウエスト航空〉と〈SASインスティチュート〉が紹介されています(やはりこの2社は米国内でも先進事例なのか?)。

 シリーズの性格上"教科書"っぽい外枠ですが、翻訳がカタカナを濫用せずきちんと日本語に訳されていて、全体で150ページ強とコンパクトなので落ち着いて読めます。

 米国は'90年代に熾烈な人材獲得競争の時代を迎え、'00年のITバブル崩壊までそれが続きましたが、その時に蓄えたノウハウが本書で体系的に整理されていて、これから日本が迎えるであろう人材難の時代に、経営者に多くの示唆を与える本であると思いました(因みに本書の監修は、『雇用の未来』('01年/日本経済新聞社)の著者ピーター・キャペリ教授が行っている)。

《読書MEMO》
●Cクラスの社員は、同じCクラスの社員を採用する傾向がある(8p)
●構造化面接か非構造化面接か...構造化面接(すべての候補者に同じ質問をする)→回答を比較できる利点があるが、候補者の情報を十分に引き出せるとは限らない、非構造化面接(自由に質問する面接)→候補者をよく知ることはできるが、他者と比較しづらい→中間的手法が望ましい(柔軟性を損なわず、核となる質問セットは全員に対し行う)(26p)
●採用の二つの落とし穴...何が何でも「売れっ子」指向、類を以って集める(38p)
●候補者の志向を見極める...サウスウエスト航空の採用方針「前向きな姿勢がなければ、どんなに能力があっても採用しない」(60p)
●人材はなぜ留まるのか...◆やりがいのある仕事◆良い会社であること◆魅力ある報酬◆能力開発の機会◆ライフスタイル(これらの訴求価値(EVP)が要注目)(84p)
●人材はなぜ辞めるのか...◆会社のリーダーの交代◆直属の上司との軋轢◆親しい仲間の退職◆職務変更に対する不満(直属の上司がカギ「時代遅れの会社で素晴らしい上司のために働く方が、開けた文化の会社でひどい上司の下で働くより良い」と考える)
●価値ある社員と社員グループを見分け、グループの違いに応じた人材維持策を講じているかをチェックする(99p)
●Cクラス社員を見分け、その異動・解雇についての説明責任をマネージャーに求める(123p)

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