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大切なのは研修対象者の明確化と英語学習の「空気づくり」。
『日産を甦らせた英語』 光文社ペーパーバックス 〔'04年〕
前半部分で、日産がどのように企業内英語研修に取り組んできたかを軸に、「成功する企業」の英語研修というものを検証していますが、その過程で、日産のリバイバルプランと社内英語の関係や、クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)やコミットメント(必達目標)という言葉が何を指すかなどもおおまかに掴めます。
実際に自社で効果的な英語研修を行おうとする場合、「全体的な底上げか?ピンポイント式か?」研修対象者を明確にしておかないと、教える側も辛いものがあり、研修自体も非効率なものになるというのは、よくわかります。
もう1つ、大切なのは英語学習の「空気づくり」であるとのことですが、これが一番難しいのではないでしょうか。
この点では日産の場合、ゴーン氏が来たことで、自ずとそうしたグローバル志向の社内雰囲気になったのではないでしょうか(他のフツウの企業に比べれば条件がいいと言えばいい...)。
研修担当者の立場から見ると、本書で推奨している「習熟に応じて」費用援助するというのは、なかなかいいやり方ではないかと思いました。
後半は、英語を学習するビジネスパーソン向けの効果的な学習方法について触れ、さらに「異文化間コミュニケーション」について書かれています。
〈a〉と〈the〉の使い分けにおいて、ある会社の社長 president は知らなくても1人しかいないから the president であり、特定されてないマネジャーを the manager とやると、「どのマネジャーか?」と訊かれてしまうなど、ビジネスの現場に沿った解説はわかりやすく、日本は予め基本認識が共有されている「高コンテキスト(文脈)文化」で"以心伝心"への依存度が高いが、アメリカなどは「低コンテキスト文化」であることを踏まえよ、等々の話は、読み物としても面白ものですが、体系的に論じるには紙数不足か。
企業内での英語研修のあり方を模索する担当者にとっても、日産の再生について興味がある人にも、、ビジネス英語の学習者にとっても役立つ本...と言いたいところですが、ピンポイント的には参考になる指摘はあったものの、総体的には読者ターゲットが拡散し、何れに対してもやや浅い内容のものとなっていることは否めないと思います。
企業内英語研修の専門家で、日産のそれを担当したという著者が、当事者としていろいろ書きたかったのは分かりますが...。