【055】 ○ 菅原 裕子 『コーチングの技術―上司と部下の人間学』 (2003/03 講談社現代新書) ★★★☆

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「コーチング=組織文化」と説く基本姿勢には共感。よく網羅されている分、やや浅いかも。

コーチングの技術 上司と部下の人間学2.jpgコーチングの技術 上司と部下の人間学3.jpgコーチングの技術―上司と部下の人間学.jpg 菅原裕子 (ワイズコミュニケーション代表取締役).jpg 菅原 裕子氏(ワイズコミュニケーション代表取締役)
コーチングの技術―上司と部下の人間学』 ['03年/講談社現代新書]

 コーチングについて、その〈基本的な考え方〉、〈実践での技術〉、〈グループや自分自身への応用〉のそれぞれに3分の1ずつを充てた構成です。

 コーチングは"技術"である以上に"組織の文化"であり、組織全体にコーチングマインドが浸透しているときに、初めてその"技術"が活きると著者は言っています。そのためには、個人が自らのビジョンを語ることができる、コミュニュケーション環境の整備された企業(状況)でなければならないと。また、「相手をサポートしようとする気持ちが、働きやすい組織や、一緒にいて喜びの感じられる関係を創る」とも言っています(要するに相互作用なのだ)。

business_coaching.bmp こうした前提を踏まえたうえで、実践的な事例を挙げつつ、ミラーリング、ベーシング、バックトラッキングといった"技術"論に入る姿勢には好感が持てました。さらに応用として、グループ・コーチング(ファシリテーション)やセルフコーチングにも触れています。結果として網羅する範囲が広い分、それぞれの突っ込みは浅くなったような気がしますが、それはあくまでも入門書であるから仕方がないのかも。

後輩が会社に慣れ、仕事に前向きになれるような工夫.jpg コーチングの人間観は、相手をまず「能力を有する存在であると捉える」ということだと著者は述べていますが、カウンセリングとの共通点を感じました(カウンセリングの立場では、コーチングは「職場」への適応を通して個人の発達を支援するものという捉え方をし、一方カウンセリングの場合は、個人の発達を通して、仕事や職場への適応を促進するとされているのですが)。
 
 また、この本にはメンタリングという言葉が出てきませんが、著者の言うコーチングには、そうしたものと重なっている部分もあるように思えました。「まず、コーチとしての資質を自身の中に見つけなさい。ただし、その資質が完全に発揮できる時を待つのではなく今すぐ始められる何かを始めましょう」という著者の言葉に異論はありませんが、それとは別に、今後、より明確なコーチングの定義が必要になるのではないかという気がします。

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