【054】 ○ ローラ・ウィットワース/フィル・サンダール/ヘンリー・キムジーハウス (CTIジャパン:訳) 『コーチング・バイブル―人がよりよく生きるための新しいコミュニケーション手法』 (2002/09 東洋経済新報社) ★★★☆

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「職業的コーチ」を目指す人にとっては良書だが...。

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コーチング・バイブル―人がよりよく生きるための新しいコミュニケーション手法"Co-Active Coaching: New Skills for Coaching People Toward Success in Work And Life"(2007)

 本書はコーチングのプロを目指す人のための入門書で、"コーアクティブ・コーチング"というものが提唱されているように(原題は"Co-Active Coaching")、コーチとクライアントが協働してコーチングを進めていくことを重視し、「クライアントが答えを持っている」ということを鍵(前提)にしています。 
 さらに具体的なコーチングの進め方として、傾聴、直感、好奇心、行動と学習、自己管理といったコーチとしての技術的ステップについて、それぞれモデルを紹介しつつ丁寧に解説しています。

 全体を通してカウンセリング理論がベースになっていて、中途半端に参照しているという程度ではなく、しっかりとそれに根ざした記述内容です。
 「クライアントの人生全体を取り扱う」という考え方を鍵として、仕事・キャリアだけでなく、健康や家族、余暇や自己啓発などもバランスよく充実させるべき対象分野であるとしている点は、ライフキャリア・カウンセリングの考え方と同じです。

 また、コーチングの初期段階では傾聴を重視し、その深化・全方位化に注力すべきとしている点や、好奇心、自己管理(何れもコーチ自身のです)を技術項目に入れている点でもカウンセリングと重なり、本書にあるクライアントの自己変容を阻害する"グレムリン"というのも、論理療法における"イラシャナル・ビリーフ"の1種と見てよいのではないでしょうか。

business coaching MP.jpg 毎週1回、30分から1時間ぐらいのセッションを繰り返し、それを3ヶ月から半年続けるような"有料"のスタイルが前提となっているようで(休憩の取り方まで書いてある)、プロのコーチを目指す人にとっては良書だと思いますし、将来こうした職業的コーチの需要は増えるでしょう。
 また、社内コーチを目指す人にも、カウンセリングの理論と実践に触れた本として役立つとは思います。
 
 ただし、社内コーチの場合はこうしたカウンセリングと同じような状況設定は難しい場合が多く、またパフォーマンスを改善することが活動目標になるため、本書を読んで"バイブル"として期待したものとのズレを感じるのではないでしょうか(カウンセリング理論にさほど触れたことのない人は、新鮮味を感じるかもしれませんが)。
 
 本書を手にしただけでは、そこのところの違い(つまり基本的にはプロ用に書かれたものであるということ)がわかりにくいのが、少しひっかかります。ただし、考え方そのものは誰でも可能で、例えば育児などにおいても当てはまると思われることがあるように思いました。

 答えは全てクライアントの中にあり、コーチとクライアントは完全に対等な関係であるという基本に則っており(完全にカウンセリングの"基本"ではあるが)、"バイブル"と謳うに不足ない内容でであることも確か。パーソナル・コーチングの神髄とスキルを知る上では押さえておくべき本でしょう(結局、かなりの部分でカウンセリング理論に立脚することになるが)。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月12日 12:31.

【053】 ○ 池田 隆寛 『実践・企業内研修』 (1996/02 生産性出版) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【055】 ○ 菅原 裕子 『コーチングの技術―上司と部下の人間学』 (2003/03 講談社現代新書) ★★★☆ is the next entry in this blog.

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