【045】 ◎ 三宅 直 『退職金規程と積立制度―確定給付から確定拠出へ制度改革12の行程』 (2005/01 経営書院) ★★★★☆

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退職金制度改革は、金融機関でなくその会社主導で進めるべきという考えに基づく実務書。

退職金規程と積立制度.jpg 『退職金規程と積立制度―税制適格退職年金制度廃止!中小企業に最適 確定給付から確定拠出へ制度改革12の行程』 (2005/01 経営書院)

 税制適格年金制度の廃止など退職金・企業年金制度が大きな転換期にある中小企業が「人事」と「財務」の両側面に留意しながら、どのような行程を経て退職金制度改革を進めていけば良いのかを、あくまで中小企業の立場に立って提案しています。
 一般にはどの制度に移行するかに関心が集まりがちですが、本書ではそれだけでなく、それ以前の、「適年」の積立金をどう処理していけば良いかという問題について特に丁寧に書かれていると思います。

 「退職金規程」と「積立制度」のパターンや意義、原資積立てや給付の仕組みを充分解説したうえで、具体的に「適年」を他の制度に移行させる手法を示していますが、可能性として考えられるものを網羅的にカバーしながらも、主たる提案としては、確定拠出(日本版401k)へ制度移行を推奨しています。

 ただしその前に、実際に「定額方式」「給与比例方式」の規程例をもとにその違いを解説したうえで、「既得権」等、保証額の決め方や制度廃止の場合の分配方式などを詳説しており、こうして見ると「給与比例方式」の場合の保証額の決め方がとりわけ難しく、特に自己都合退職と定年退職で、退職事由係数の格差が大きいような場合においてそのことを感じます。

 複雑な制度問題を扱った「実務書」ですが、事業主にもわかりやすい言葉で書かれて、まず自社の企業年金制度がどういった性格のものであるかを主体的に理解することが大事であることがわかります。
 そのうえで、不利益変更問題や制度廃止の場合の分配金の課税問題などもカバーしているため、退職金・企業年金制度の概要把握の助けとなるだけでなく、改革の方向性を検討する段階での留意点のチェック用としても使えると思います。

 年金財政の「収支報告書」の読み方などが解説されていることなどもその表れですが、退職金制度改革は金融機関主導ではなく企業がリードしながら進めていくべきであるという著者の考え方に符合する執筆内容であり、共感と信頼を覚えました。

 【2008年第2版】

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