【034】 △ 溝上 憲文 『隣りの成果主義―症例、効能、副作用』 (2004/11 光文社ペーパーバックス) ★★☆

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端的に言えば「事例集」なのだが、図表が少なくて読みにくい。

隣りの成果主義963.JPG隣りの成果主義.jpg 『隣りの成果主義』(2004/11 光文社ペーパーバックス)

force_01.jpg 普段は人事専門誌に賃金・人事制度の取材記事を執筆している著者が、一般向けに書き下ろしたものですが、内容的にはやはり賃金人事制度の"取材記事"であり、端的に言えば「事例集」です。
 当然のことながら、実名で登場する取材企業の制度に対する表立った批判はありません。
 本書内には成果主義の定義が見当たらないのですが、「成果主義人事」が「成果を持続的に高めていける組織・人材を創り出すための仕掛け・仕組みを創り出すこと」(ワトソンワイアット)であるならば、成果主義を具体化したものは仕組み(制度)であり、さらにその中心には賃金制度がくるかと思います。
 そうした意味では、本書のタイトルにほぼ偽りは無いということになりますが...。

 人事担当者が近況を俯瞰したり、経営者に「世の中こうなっていますよ」と示したりする分には一部使えるかも知れません。
 しかし如何せん、ただでさえこうした事例は読み解くのに苦労しますが、本書には図表が少なく、字面だけ追うにしては英語表記の部分が邪魔なために、読みにくいものとなっているのが残念です。
 
 著者がいつも人事専門誌に書いている賃金・人事制度の紹介記事は、理解の助けとなる図表が添えられていて、その内容もわかりやすいものです。
 "ペーパーバックス"での「事例集」という企画が、著者にとって気の毒な面もあったかも知れませんが、文章を削ってでも図表をもっと入れるべきだったのではないでしょうか。
 
《読書MEMO》
●ヤマダ電機・ソフトバンクBB...全社員年俸制(8p)
●近畿日本ツーリストの役員評価...役員も成果主義に→退職金廃止→報酬諮問委員会が中期的な「成果責任」(Accoutability)と毎期の「業績目標」達成度を評価(187p)
●高橋伸夫東大教授への疑問..."成果主義の失敗"ではなく"成果主義"そのものを批判、「仕事による動機づけ理論」「日本型年功制」のメリットは正しいが、「賃金原資」「職能給の運用」の2点で、「日本型年功制」の復活は困難(224p)
●1次評価だけでなく最終評価もフィードバックすべき

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