【032】 △ 楠田 丘 『職能資格制度 〔第5版〕―その再点検・整備・リニューアル方策』 (2003/12 経営書院) ★★★

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今世紀に入っても「職能資格制度」堅持を唱えているのは、ある意味ユニーク?

クス.jpg 『日本型成果主義の基盤 職能資格制度―その再点検・整備・リニューアル方策』 〔'03年〕

 「職能資格制度」の生みの親で、それを日本企業に広めた立役者であり"権威"とされる著者が、「成果主義」的な賃金制度は時代の流れであるとしながらも、その中での「職能資格制度」の在り方やリニューアル方法を示した本。
 「職能資格制度」の歴史や果たして来た役割を知ることが出来、また「職能資格制度」導入に際しての入門手引書としても読めます。

 ただし、例えば、社員格付け制度がまだ無いある企業において新たに何らかの等級制度を導入する場合に、今後の人事制度が「人基準」から「仕事基準」へ移行していくことがほぼ市場の要請でもあると考えれば、わざわざ今から新たに「職能資格制度」を入れることには、それなりの根拠と注意が必要かと思います。
 
 本書で示されている「職能資格要件書」やそれを作成するための「職務調査」の手法なども、1人1人の課業やそれをこなすために求められる職能がある程度固定的・階層的に捉えることが可能であることが前提で、本書の初版は'75年ですが、産業構造等の変化などにより、必ずしもこうしたやり方があてはめにくい業態が多くなっているのでは...。

 今世紀に入っても「職能資格制度」を中心に据えた本を書いているのは著者ぐらいで、「日本型成果主義」の条件を「人基準」とし「職能資格制度」は堅持すべきだという著者の主張はむしろユニーク(時代に逆行的?)なものであるという印象も受けます。

 ただし個人的には、最初から全否定することも、こうでなければならないと決め込むことも、ともに人事制度改革の選択肢の幅を狭めてしまうことになるのではないかと思います(やはり"一般論"的には「職能資格制度」は時代に逆行していると思うが、中小企業には様々な業態があるので、今在る制度を全面改定するのがいいのかどうかは最終的には個別に判断せざるを得ない)。

 「成果主義」を導入しても「職能資格制度」を残している企業は多くあり、それは移行期における激変緩和措置であったりするばかりでなく、"部分的"にはメリットがある場合も少なからずあることに一応は留意すべきでしょう。

 本書では「人基準=能力主義、仕事基準=成果主義」という枠組みが前提となっていますが、等級制度を軸に考えればわかるように、「仕事基準」は「職務・役割主義」であるのが正しく、「成果主義」はむしろ「能力主義(顕在能力)」に近いのではないかと思います。

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