「●人事・賃金制度」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【032】 楠田 丘 『職能資格制度 〔第5版〕』
「職能給」を存続させながら、実質的には「職務・成果主義」を実現。
『役割能力等級制度の考え方・進め方』['03年]
役割能力等級制度」という考え方を軸に、等級制度だけでなく、評価制度、賃金制度(基本給・手当・業績連動賞与・年俸制・退職金制度)から昇進管理、能力開発、人事面接までをトータルな人事制度とみなして、それぞれについて、理念と実務の両方の観点から、最近の動向や事例にも触れながらわかりやすく解説しています。
中核となる「役割能力等級制度」とは、
・等級数が多すぎて年功的な運用に陥りがちな従来型の職能資格等級を改め、
・等級区分を職能と役割を複合した観点から4〜5のクラスに絞込み、
・賃金管理の運用上、必要に応じて各クラスの中でさらに等級区分を行うものです。
(各クラス・等級の「役割能力基準書」は、一般職は「職能基準」で、管理監督職は「役割基準」で作成する。)
また本書では、基本給制度において、
・「職能給+役割手当」と
・「職能給+役割給」
というタイプを中心に提唱していますが、
・「職能給」を範囲給(等級別上下限額を決める)として厳密運用するとともに、
・前者の「役割手当」は、役職自体同じでも責任度によって金額が異なるものとし、
・後者の「役割給」は、職能給と同ウェイトの金額的比重を持つとともに、評価の変動によって毎回洗い替えされるものとしています。
こうした制度および運用であれば、
・「職能給」を存続させながら、実質的には「職務・成果主義」の処遇が実現可能で、さらには
・「役割」重視の考え方を打ち出しながらも、成長過程にある一般職に対しては能力の伸長に応じた処遇が可能であるため、
・移行が比較的容易なうえに、従業員にも受け入れられやすい提案ではないかと思います。
事業主にも読みやすい構成と文章で、かつ、人事制度のトレンドを踏まえながらも、小さな会社でも導入しやすいオリジナルな機軸を示した良書だと思います。