【029】 ◎ 中村 壽伸 『成果主義の人事・報酬戦略―いかにして事業の成功につなげるか』 (2002/11 ダイヤモンド社) ★★★★☆

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主張が明確で、戦略と実務の両面にわたってバランスのとれた本。

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成果主義の人事・報酬戦略―いかにして事業の成功につなげるか』('02年/ダイヤモンド社)

compensation.jpg 本書では、成果主義の人事・報酬システムをいかにして成功させるかということを「戦略」的視点から捉え、業績と人件費のバランスを図り、適正総額人件費の枠内で報酬を支払うためには、資格・等級はどうすべきか、賞与や月例給与はどうすべきか、業績評価はどう改革すべきかなどについて、具体的な制度策定や運用に踏み込んで述べられています。

 成果主義人事や「業績」「成果」といったものに対する考え方が明確に示されていて、「業績評価」を徹底して報酬に反映させるという考え方で貫かれており、能力評価は成果主義人事戦略の邪魔でしかないと言い切っています。

 一方で、昇進・昇格など「任免評価」は、業績評価と別のアセスメント評価とし、事業戦略の将来を見据えた未来志向の評価であるべきだとし、また昇進に代わる価値も有能な社員を失わないためには必要であると。

 「人件費」ではなく「総額人件費」という考え方のもとに、適正総額人件費、適正労働分配率を維持することの重要性を理論的に解明し、「賃金」ではなく「報酬」という考え方に沿って、月例給・賞与・退職金における報酬性を高めることを説いています。

 昇給査定の評価項目に「能力評価(理解力・判断力...)」「情意評価(積極性・協調性...)」などといった項目がまだ入っている企業の担当者には、パラダイム変換を促す本かも知れません。

 個人的にも、「上司と部下が面接で目標を決めると失敗する」とか「年俸制は経営者を選ぶ」といった著者の主張の論拠などは示唆に富むものだったし(著者の言う「年俸制」とは賞与固定型の「完全年俸制」のことだと思いますが)、戦略と実務の両面にわたってバランスのとれた本だと思います。

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