【028】 ◎ 藤原 久嗣 『職務・成果主義による新賃金・人事制度改革マニュアル (2002/09 日本法令) ★★★★★

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日本型職務・成果主義を具体的に提唱。賃金コンサルを目指す方に最適。

I職務・成果主義による新賃金・人事制度改革マニュアル24.JPGふじ.jpg職務・成果主義による新 賃金・人事制度改革マニュアル』['02年]

force_03.jpg 本書は、アメリカの賃金・人事制度の特長から積極的に学びつつ、日本的な伝統を生かした日本型職務・成果主義を、豊富なコンサルティング経験に基づいて具体的に提唱しています。
 例えば、アメリカの伝統的なジョブ・グレード制度の問題点と90年代以降のブロードバンディングへの流れを分析しつつ、日本型の職務グレード制度を提唱していますが、その辺りの解説が、系統立っていて、実に理路整然としていると思いました。
 また、コンピテンシーやアカウンタビリティという米国から輸入された概念についても平易に解説しています。

 評価制度について、絶対評価法の一種である「成果認定制度」、つまり目標管理の項目と評価の項目の関係を1対1対応で捉えるのではなく、もっと柔軟性を持たせるものを提案しているのは、成果主義導入に際しての「目標」と「評価」の関係の問題を乗り越える良い方法ではないかと思いました(総合商社などで既に導入している企業もある)。  

 日本企業において、評価制度にコンピテンシーやアカウンタビリティを採り入れる場合には、業績評価、職務遂行評価(アカウンタビリティ)、行動プロセス評価(コンピテンシー)という位置づけとなるであろうという導きは、わかりやすさと実務面での説得力があります。 
 職種が多いために職種別の職務要件書が作成されていない場合は、職務遂行評価を行動プロセス評価の一項目としても差し支えないとするなど、理論的整合性と実効性、導入実現性を兼ね備えているという印象を持ちました。

 日本の賞与制度とアメリカのボーナス制度を対比させつつ、業績・成果反映型の賞与制度と併せて、インセンティブ・ボーナスやペイ・バック制度を提唱しており、ストック・オプションや年俸制の解説も、パターン別の説明によってわかりやすいものとなっているほか、法規上の留意すべきポイントがしっかり押さえられています。 
 また、ポイント制退職金制度や退職金前払い制度と併せて、確定拠出年金などの新企業年金への移行問題も丁寧に扱っています。

 日本型職務・成果主義をトータルな人事制度としていかに実現するかについてキッチリ書かれた数少ない本で、実務家や賃金コンサルを目指す方にはかなり使える1冊だと思います。

《読書MEMO》
●経営理念(58-60p)...経営理念は社会的使命(ミッション)、企業理念は経営姿勢・原則(プリンシプル)
 経営理念→行動理念、企業理念→基本理念が導き出される
 ビジョン=中長期の企業目標、ビジョン→経営戦略が導き出される
●成果認定法(136p)...
 1.業務目標に対する成果【目標管理】
 2.職務遂行レベルの達成度(≒【アカウンタビリティ】)→3.に含めても可
 3.行動プロセスの評価(≒【コンピテンシー】)

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