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「虚妄の成果主義」の主張の繰り返し。しかも、かなりケンカ腰?
『"育てる経営"の戦略―ポスト成果主義への道』講談社選書メチエ〔'05年〕
著者は本書で、成果主義は人材育成機能を破壊し、すべての成果主義は失敗すると断定し、 〈育てる経営〉を目ざすならば、社員の生活を守り、次の仕事の内容で報いるシステム「日本型年功制」を再構築すべきだと主張しています。
これらは前著『虚妄の成果主義』('04年/日経BP社)の主張と同じであり、本書ではさらに、『できる社員は「やり過ごす」』('96年/ネスコ)などで展開した人材論や、経営における競争優位の源泉とは何かという考察(やや唐突な感じ)、青色LED訴訟にみる発明対価の判決に対する疑問提示などを行っています。
「日本型年功制」(年功序列とは別物であることを著者は強調)が今までに果たした役割というのはそれなりに認めるべきだとは思いますが、それを維持していくことが難しいという現状をもう少し重く認識すべきではないかと...。
自らを「急進的な反成果主義者」とする著者の論は、まず成果主義を修正するのではなく否定するところから始まり、本来は経営のサブシステムに位置づけられるべき(つまり会社の経営理念や人事戦略に沿うべきものである)処遇制度のベクトルとしての成果主義が、イデオロギー論争のテーマのようになってしまっているが何だか変な気がします(しかも、かなりケンカ腰?です)。
本書ではモチベーションの問題について、前著『虚妄の成果主義』同様、"内発的動機づけ理論"(実験室的状況での理論という気がする)への執着が見られますが、モチベーションを向上させる例として本書で挙げられているのは、むしろ承認願望の充足などの「健全な利己心」(太田肇『ホンネで動かす組織論』)をベースとした動機づけであり、"内発的動機づけ理論"の裏づけにはなってないのではと思われました。