【009】 △ 高橋 俊介 『成果主義は怖くない―「仕事人生」を幸せにするキャリア創造』 (2002/03 プレジデント社) ★★☆

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残念ながら、人事部(企業)の代弁者が語っているようにしか聞こえない。

成果主義は怖くない.jpg成果主義は怖くない―「仕事人生」を幸せにするキャリア創造』〔'02年〕 高橋 俊介.jpg 高橋 俊介 氏(略歴下記)

成果主義は.bmp 内容は、前半7割が成果主義について、後半3割がキャリア創造についてといったところです。成果主義が陥りやすい過ちを、米国の職務主義の失敗やビジョニングによる成功例などを引き合いにしながら指摘しています。 

 精緻な評価基準をつくることに固執していないか、コンサルタントに丸投げしていないか、数値至上主義になっていないかなどの指摘は、著者の豊富なコンサル経験からくるものでしょう。ここまでの部分は、企業の経営者や人事担当者に向けてのアドバイスと見てよいでしょう。

 ただし、成果主義を推し進めるうえでどうしても生じる「弱者」をどうするかという問題については、オランダのワークシェアリングの事例を挙げるのみで、あまり問題解決についての考察がされていない気がしました。
 振り返って一般のサラリーマンに向かって、成果主義に振り回されないキャリアを構築しよう説いていますが、こちらの方の内容はかなり漠然としています。

 本書の中でのコンサルタント批判はリアリティがありますが、著者自身のコンサルタント時代の顧客が企業の人事部だったわけで、一般読者に突然向き直って、キャリアの自律を説き、ただし会社に期待する受身の姿勢ではいけないと言われても、単に人事部の代弁者が語っているようにしかとれない読者も多いのではないかという気がします。キャリアショック.jpg

 もちろん著者は『キャリアショック』('00年/東洋経済新報社)などビジネスパーソン向けの本も書いていますが、この『成果主義は怖くない』という本に関して言えば、1冊の本の中で、企業・経営者側と社員側の両方に向いて話をしているのが少しぎこちない気がしました。
 タイトルは完全にサラリーマンに向けだと思うのですが...。
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高橋 俊介
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
組織・人事に関する日本の権威の一人。プリンストン大学大学院工学部修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ザ・ワイアット・カンパニーに勤務後、独立。
人事を軸としたマネジメント改革の専門家として幅広い分野で活躍中。主な著書に「自由と自己責任のマネジメント」「自立・変革・創造のマネジメント」「キャリアショック」「組織改革」「人材マネジメント論」がある。

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