「●人事マネジメント全般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【009】 高橋 俊介 『成果主義は怖くない』
むしろ、起業しようとしている人たちにとっての示唆を多く含んでいる本。
『社員の幸せを追求したら社長も成果主義も不要になった!』〔'02年〕 日下 公人 氏
日下公人氏が自らが注目する、広島市に本部を置き、西日本を中心に展開する安売りメガネチェーン「株式会社21(トゥーワン)」のユニークな経営方式を紹介した、ケーススタディ本と言える内容かと思います。
タイトルに「成果主義も不要になった!」とありますが、この会社は創業当初からユニークな経営方式を採っていて、
◆利益は社員で山分け
◆管理職がゼロ
◆ノルマ・目標設定はなし
◆社長は4年交代
◆社長の年収は社員の最高年収を超えてはならない
◆パートも取締役になれる
◆退職金は前払い
といった常識に囚われない独自の経営のスタイルを通じて、社員が金銭的にも精神的にも安心して楽しく仕事ができ、会社業績も順調である、その結果、「成果主義というものを今更のごとく入れる必要が無い」ということだと思いますが、社員を動機づける人事システムとはどのようなものかを具体的に示唆したものとなっていると思いました。
「管理職がゼロ」など、日下氏が以前に書いた『人事破壊』('94年/PHP研究所)の内容を地でいくような感じです('05年に続編、『人事破壊―その後10年そして今から 』が刊行されている))。
この会社の場合、社員は株主でもあるので、株主による共同経営の会社ともとれますが、そうすると合資会社や協同組合でも同じコンセプトは成り立つかと思います。
ただしこの会社は、全国に125店舗を持つまでに急成長しているので、「社長交代制」などのシステムが今後どうなるのでしょうか。企業の規模の変化は、往々にして質の変化にも及ぶのが一般的ですから。
この会社の設立経緯が、あるメガネチェーンのリストラ組が集結したものであったことも考慮しておく必要はあると思います。
今在る会社をどうするかということよりも、むしろ、起業しようとしている人たちにとっての示唆を多く含んだ本だと思いました。