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年功制・終身雇用批判は旗幟鮮明! ヘイ・コンサルティング・グループの考え方が窺える。
『まず、日本的人事を変えよ!―「競争」と「評価」が活力を生む』〔'01年〕 田中 滋 氏
著者の1人田中滋氏は、コンピテンシーモデルなどで知られる〈ヘイ・コンサルティング〉の社長で、当然予想されることながら、本書の前半部分で、日本企業の年功序列や終身雇用を厳しく批判しています。
職能資格制度を「日本の会社が飛びついた後ろ向きの制度」で「仲間主義に根ざした能力主義」であるとし、また情緒的な日本においては、「やる気」が高く評価され業績評価は軽視されてきたとも、家族手当は「後進国的発想の最たるもの」だとも言っています。
著者の海外経験や旧日本軍を引き合いに、日本的人事を競争と評価を避け、一方でエリートなら失敗をしても保護される仕組みであると徹底批判しています。
外資系コンサルティングファームの社長が旧日本軍の話を持ち出すのは意外かもしれませんが、伝統的な日本の官僚的システムの問題点を指摘するために引き合いにしているのです。
後半部分では、著者らが属するヘイ・グループの提唱する人事システム(ヘイ・システム)が示され、さらに日本的経営全般に対する改革に言及しています。
ヘイ・システムには世間的にも賛否両論ありますが、そのバックにある考え方を知る上でも、本書に示された日本的「人と組織」に対する分析や批判は一読の価値があるかと思います。
全体を通して旗幟鮮明で、その部分では爽快感さえ感じます。
ただし、ヘイ・グループの"売り"は、企業における短期のドラスッティックな業績回復を実現させることであり、長期的観点での人材育成などにはさほど重きを置いていないことも念頭に置いて読むべきではないかと思います。
《読書MEMO》
●職能資格制度...日本の会社が飛びついた後ろ向きの制度、仲間主義に根ざす日本独特の「能力主義」(66p)
●情緒的な日本の人事(84p)...改めて業績評価をするのは他人行儀、「同じ釜の飯を食う」とういう表現は長期雇用を前提にしている/さまざまな手当に象徴される「競争排除の原理」(129p)...家族手当は後進国型発想の最たるもの
●ジョブ・ディスクリプション/ヘイ・システム...求められる「ノウハウ」「問題解決能力」「アカウンタビリティ(成果)」(139p)
●成果主義報酬...1.成果主義給与 2.プロフィット・シェア・ボーナス 3.ターゲット・ボーナス