2006年08月19日
【200】 ○ フレデリック・S・パールズ 『ゲシュタルト療法―その理論と実際』 (1990/07 ナカニシヤ出版) ★★★★
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創始者フレデリック・パールズ自身によるまさに理論と実践の書。
『ゲシュタルト療法―その理論と実際』
フレデリック・パールズ (1904-1990) in 「グロリアと3人のセラピスト」
「ゲシュタルト療法」は、人間の精神は部分や要素の集合ではなく、全体性や構造こそ重要視されるべきとした「ゲシュタルト心理学」(ゲシュタルトは「全体」という意味のドイツ語)をベースとしており、また「今・ここ」で「いかに」「なにを」話しているかを問題とするように、実存哲学の考え方も取り入れられています(本書にある“ゲシュタルトの祈り”にその考え方がよく表れている)。
「理論」の部分は前提知識がないとやや難しく感じられるかも知れませんが、創始者フレデリック・パールズ自身による著書で翻訳されているものは本書しかないので、読む価値はあると思います。
ユダヤ人精神科医であったパールズは、フロイト派の精神分析医としてスタートしていますが、本書では自由連想法などに対しては完全に批判的で、むしろ「ゲシュタルト療法」というのはその対極にあるものと言ってよいかも(ただし、フロイトという先達に対して著者は、深い尊敬の念も抱いている)。
患者例として神経症のかなり難しい症例などが選ばれていますが、技法としては、患者の声の調子や姿勢、身振り、他者に対する反応を注視し、その人の人格的欠陥を探し、自身に気づかせながら治療する8という、言わば積極的に患者の“態度”に働きかけていく手法をとっています。
これは、アルバート・エリスの論理療法が、その人の“思考”に積極的に働きかけるのとも、また異なるわけです。
以前にビデオで見たもので、「グロリアと3人のセラピスト」というのがあります。
聡明だが現実生活に悩みをもつ若い女性が、ロジャーズ(来談者中心療法)、パールズ(ゲシュタルト療法)、エリス(論理療法) という心理療法の3大創始者のセラピーを1日の間に続けて受ける(!)、その様子を収めた記録映画です。
面接中に一番口数が多かったのがパールズで、どんどん女性の話を中断して、そのとき女性がとった態度などを話題として割り込んでくる―。しかも瞬時に、その態度に対する彼なりの解釈を添えて。
女性が面接終了後、パールズ先生は少し怖かったというようなことを述べていたのが印象的でした(残念ながら、貴重な体験をしたこの女性は、その後間もなく、交通事故死してしまった)。
個人的には、実践場面においてのこの療法は、かなりセラピストのタレント(資質)に依存する部分が大きいのではという気がしています。
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【199】 ○ ミュリエル・ジェイムズ/D・ジョングウォード 『自己実現への道―交流分析(TA)の理論と応用』 (1976/01 社会思想社) ★★★★
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交流分析(TA)の対話例を多くとりあげ、詳細かつわかりやすく解説。
『自己実現への道―交流分析(TA)の理論と応用 (1976年)』
「交流分析(TA-Transactional Analysis)」は米国の精神科医エリック・バーン博士によって創始されたパーソナリティー理論の一つであり、心理療法として開発されたものですが、本書はその理論と実践場面での応用についてかなり早い時期に翻訳紹介された本で、バーン博士の直接の弟子にあたる人たちによって書かれています。
「交流分析」とは要するに人と人とのやりとりの分析であり、
◆P:ペアレント(親)、
◆A:アダルト(大人)、
◆C:チャイルド(子供)
という3つの自我状態をクライエントとセラピストがロールプレイし、P-P、P-A…といった対人パターン(3×3=9通り)の中で状況にふさわしい態度・考え方・行動様式を対話分析を通じて獲得していくもので、本書ではその具体的な対話例を多くとりあげ、詳細かつわかりやすく解説しています。
さらに、CP(批判的な子供)、NP(保護的な子供)、A(客観的な大人)、FC(自由な子供)、AC(順応した子供)という5パターンに拡大した応用についても、実例を示して解説していて、1セッションの中での役割変換のダイナミズムなども理解しやすいものとなっています。
P(親)、A(大人)、C(子供)という自我概念は、フロイト理論の超自我・自我・エスにほぼ対応しているようですが、最初に本書を読んだときに、非常にプラグマティカル(実用的)なものを感じました(そのことは、“Born to Win” とい原題からも窺えます)。
精神分析というものが既に先行して行われていたこと、人種の坩堝社会の中で対話コミュニケーションが重要な位置づけを持つなど、日本とは異なる土壌や文化が背景にあり、一方で、日本において普通の社会人が、例えばチャイルド(子供)という自我状態にスッと入っていくロールプレイがどこまで可能かという難しさは感じました(TAは日本では、理論はあるが技法は弱い、ともよく言われている)。
しかし日本でも、教育現場などを中心に以前からTAが行われており、またその応用であるエコグラムによる自己分析などは、ビジネスの現場でもとりあげられるようになってきています。
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【198】 ○ 国分 康孝 『〈自己発見〉の心理学』 (1991/03 講談社現代新書) ★★★★
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第一人者による「論理療法」の考え方の実生活での応用。
『「自己発見」の心理学』 講談社現代新書
人は「ねばらなぬ」の思い込み(ビリーフ)に縛られており、その非合理性に気づき、そこから自己を開放することの大切さを、「論理療法」の第一人者である著者が、自らの人生観や経験を交えわかりやすく述べています。
社会、学習、家庭、職業の4つの生活局面から、「人を拒否すべきではない」「暗記式の勉強はすべきでない」「配偶者はやさしくなければならない」「いばるべきではない」といった普段何となく正しいと信じられている考え方(ビリーフ)を4つずつ16個挙げ、それらに反駁していく過程は、こなれた文章により理解しやすく、そのまま「論理療法」の考え方(技法)の応用を示すものにもなっています。
「家庭は憩いの港たるべきである」と考えるのではなく「…にこしたことはない」とか、「第二の職場である」と考える方が事実に即している―。
ナルホドと、以下、自分なりに考えてみました。
会社で仕事でしんどい思いをして、やっと終わってホッとして、これで家に帰ってくつろげると思ったら、家に帰ってもやること(やらされること?)がいっぱいあってイライラする…。
つまりこれは、家でもやるべきことがあったという事実A(Activatin event)に対して、イライラするという結果C(Consequence)が生じているのですが、この結果を招いているのは 「家庭は憩いの港たるべきである」という思い込みB(Beliefe)であると。
この思い込みが誤りではないかという反駁D(Dispute)をし、最初から「家にも仕事がある」と思っていれば、会社での仕事が終わっても、「ああ、これで今日の仕事の8割が終わった。家に帰って、あと2割、“家の仕事”をやらなくちゃ」という前向きな考えになる効果E(Effect)が得られるということか。
《読書MEMO》
●目標達成志向の人生観とプロセス主義の人生観(今ここを大事にする)(62p)
●家庭は憩いの港である→にこしたことはないが第二の職場であると考える(119p)
●職場で女性がお茶汲み→男性が女性に母親を期待することを許容する文化(144p)
●おとなになってからも自力で大人の小学校教育を自分に施す(163p)
●会社は私を認めるべきだ、認められない人間はダメだ→人を不満に陥れる(192p)
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【197】 ◎ 伊藤 順康 『自己変革の心理学―論理療法入門』 (1990/07 講談社現代新書) ★★★★☆
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「ABCDE理論」などをわかりやすく丁寧に説くオーソドックスな入門書。
『自己変革の心理学―論理療法入門』 講談社現代新書
副題にある論理療法とは、「非合理的・非論理的な思考をみつけて取り出し、それに有効な反論を加えて、次第に考え方を変えさせ、人を自滅の方向から救い出すもの」(本書)で、カウンセリング理論の一つです。
本書では“自己訓練法”というとらえ方をしていますが、カウンセリングの目的が自己実現の「援助」であり、変容するのは本人自身であることを考えれば、これが自己変革を図るための手立てにもなり得ることは納得できると思います。
論理療法でいうイラショナル・ビリーフやABCDE理論をわかりやすく説くために著者の経験やマンガを引いたりしていますが、内容的にはオーソドックスで、最後に「論理療法のまとめ」と「実践のためのアドバイス」を配しており、入門書として丁寧な構成になっています。
同じ新書に『〈自己発見〉の心理学』('91年)という論理療法の権威・国分康孝氏の著作があり、こちらも論理療法の入門書ですが、イラショナル・ビリーフに焦点を当て実生活での応用などを説いたものであるため、論理療法を体系的に知りたい人は、先に本書を読んでそのアウトラインを掴んでおいた方がよいのではと思います。
《読書MEMO》
●論理療法とは、非合理的・非論理的な思考を見つけて取り出し、それに有効な反論を加えて、次第に考え方を変えさせ、人を自滅の方向から救いだす(12p)
●受付の対応だけで「あの病院は冷たい」…過度の一般化(19p)
●カウンセリングとは、言語的および非言語的ココミュニケーションを通して、相手の行動の変容を試みる人間関係(38p)
●諸悪の根源は非論理的な文章記述にあるというのが、論理療法のαでありω(82p)
●適切な感情を自分のものとする(176p)
●ABCDE理論…
・A(Activatin event)
・B(Beliefe)
・C(Consequence)
・D(Dispute)
・E(Effect)
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【196】 ◎ 今村 義正/国分 康孝 『論理療法にまなぶ―アルバート・エリスとともに』 (1989/02 川島書店) ★★★★☆
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「論理療法」の創始者自身によるロールプレイの実演を通してその技法を学ぶ。
『論理療法にまなぶ―アルバート・エリスとともに・非論理の思いこみに挑戦しよう』

この本は「論理療法」の創始者アルバート・エリスが来日した際の講演と、臨床心理士など専門家とのワークショップで自らカウンセリングをロールプレイした際の記録を中心に、クライエント役となった先生がたも含め、それを目の前で見ていた専門家たち(他派を含む)の寄稿により構成されています。
論理療法は、本書にもありますが、「~ねばならない」という不合理な信念を持つ人に対して「どういう根拠でそういうのですか」「あなたの考えが正しいことを立証してほしいのですが…」などと聞いて自問自答を促進させ、その応答を論駁していくことで不合理な信念からの束縛を解いていこうとする心理療法です。
一般には“論理”という名のとおり、クライエントの〈思考〉に働きかける手法と解されていますが、そうした〈思考〉面だけでなく、クライエントに特定のイメージを描かせたり、宿題を与えるなど、〈感情〉や〈行動〉にも働きかける統合的手法であることが、創始者の実践(実演)場面における言葉を通して一般にもよくわかる1冊です。
私見ですが、“論理”という言葉が、この療法が日本人に不向きなような印象を与えている面もあるかと思います。
しかし〈思考〉だけでなく〈感情〉や〈行動〉にも働きかける手法であるという観点に立つと、そう不向きでもなく、むしろ日本人に向いているのではないかと思います。
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【195】 ◎ 東山 紘久 『来談者中心療法 心理療法プリマーズ』 (2003/09 ミネルヴァ書房) ★★★★☆
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「来談者中心療法」のカウンセリング事例。「来談者中心療法」の実際を知るうえで格好の入門書。
『来談者中心療法 心理療法プリマーズ』 (2003/09 ミネルヴァ書房)
一般に「来談者中心療法」はカール・ロジャーズによって開発され、ロジャーズ理論とイコールとされていますが、厳密に言えばそれは100%正しいとは言えず、本書にもある通り、ロジャーズが強調した〈純粋性・受容・共感的理解〉という概念は、セラピストの人格とクライエントに向かう態度であり、彼自身は技法論を提唱していません。
この本では、来談者中心療法とは何か、その技法論とは何かなどの歴史と理論に冒頭約3割を充て、それでは専門家たちはどのようにしてカウンセリングを行っているのかを実際の事例で示すことに、残り約7割を充てています。
本書での6人のカウンセラーによる6つの事例は、10回程度のものから60回を超えるものまで面接回数もその内容も多様ですが、単なる逐語記録の抜粋ではなく、カウンセラー自身の考え方や状況説明に加え、自身での振り返りや何を学んだかなどが述べられいます。
例えば、クリスチャンであるカウンセラーが、新興宗教にはまっているクライエントに向かった場合、どこまで介入すべきかといった難しいケースなども、実事例としてこれらの中にあります。
1つ1つの事例の末尾に東山氏がコメントをしていおり、「来談者中心療法」の実際を知るうえで格好の入門書だと思います。
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【194】 ◎ 東山 紘久 『プロカウンセラーの聞く技術』 (2000/09 創元社) ★★★★★
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「相づち以外はしゃべらないこと」が第一歩。実生活でも役に立つ本。
『プロカウンセラーの聞く技術』 (2000/09 創元社)
東山 紘久 氏 (経歴下記)
来談者中心療法の権威である著者が一般向けに書いた、人の話を「聞く技術」の本ですが、来談者中心療法の実生活での応用編ともとれ、カウウセラーを目指す人にも技法面で大いに参考になるのではないかと思います。
久しぶりに友人と会食することになり、何か相談ごとでもあるのかなと思って行ったけれども、ついつい会った途端に自分の話ばかりしてしまい、その時は楽しかったけれども、ウチに帰った後で相手の話はあまり聞かなかったことに気付き、しゃべり過ぎたと後悔する…。
そうした経験をよくする人にはお薦めです。
本書の31章の中から、自分にとってのチェックポイントに線を引き、人に会う前にもう一度なぞっておく。
そういうことを繰り返していくうちに、本書の効用を実感することがあるかと思います。
そうした意味では、実生活でも大いに役に立つ本と言えるかも。
因みに第1章の中に「相づち以外はしゃべらないこと」とあり、これがこの本の第1段階ですが、このことを実行するだけでも結構たいへんかも知れませんし、その難しさを意識することで、自分の未熟さに対し謙虚な気持ちにもなれます。
他人から“頭のいい”人と思われたければ、“頭のいい話し方”の本を読む前に、まずこの本を読んでみてはどうでしょうか。
《読書MEMO》
●相づち以外はしゃべらないこと(11p)
●「なるほど」「なあるほど」「なるほどね」「なるほどねえ」「なるほどなあ」と「なるほど」だけでも使い分ける(26p)
●相手の話したことを繰り返すのは、すばらしい相づち効果(29p)
●悪口を言うからこそ我々は悪くならないですんでいる(48p)
●相手の思いのままに聞き、自分の思いは胸にしまっておく(101p)
●プロは相手の話の内容よりも、なぜその話をするのかに関心」ある(158p)
●聞きだそうとしない(193p)
_________________________________________________
東山 紘久 (臨床心理士・京都大学副学長)
昭和17年、大阪市に生まれる。
昭和40年、京都大学教育学部卒業。
昭和48年、カール・ロジャース研究所へ留学。教育学博士、臨床心理士。
現在は京都大学大学院教授。専攻は臨床心理学。
著書には、『遊技両方の世界』創元社、『教育カウンセリングの実際』培風館、『愛・孤独・出会い』福村出版、『子育て』(共著)創元社、『母親と教師がなおす登校拒否――母親ノート法のすすめ』創元社、『カウンセラーへの道』創元社 他
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【193】 ○ 池見 陽 『心のメッセージを聴く―実感が語る心理学』 (1995/03 講談社現代新書) ★★★★
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フォーカシング入門書。ロージャーズ理論入門としても読め、奥も深い。
『心のメッセージを聴く―実感が語る心理学』
池見 陽(あきら) 氏 (略歴下記)
本書自体は、E・ジェンドリンにより「心の実感」に触れるための方法として開発された「フォーカシング(focusing)」の技法について解説した入門書ですが、「フォーカシング」は、ジェンドリン自身が彼の師にあたるC・ロジャーズとのカウンセリングの共同研究を通して、その成功・不成功例の比較からから開発した技法であるため、本書ではそのベースとなった「ロジャーズ理論」(来談者中心療法)の解説もなされています(著者自身もジェンドリンの弟子であると同時に、ロジャーズの“孫弟子”にあたる)。
自分自身、何気なく手にした本書で初めて、ロジャーズのカウンセリング・マインド(「一致」と「不一致」、「共感的理解」、「無条件の肯定的関心」)の何たるかを知ったわけで、それまで来談者中心療法のクライエント役になった経験などがあったにも関わらず、その本質がわからないでいました。
そうした意味では来談者中心療法の入門書としても読め、同時に、より広い意味でのカウンセリング・マインドとは何かを知る上でも参考になると思います。
失敗したカウンセリングとは「心の実感」からのメッセージを引き出すことに失敗しているのであり、〈フォーカシング〉は、(1人でも出来ますが)自分の内側に感じられる「心の実感」に触れ続け、停滞した心を開いて、成長や創造性的問題解決を図るものです。
本書は事例を挙げてわかりやすく書かれているものの、かなり奥が深く、(1人でも出来るとは言え)より実践を経ないと本当に理解できないのではと思われる面もありました。
ただ、技法論としての、冒頭において「開かれた間をおく」というやり方は、何か禅的でもあり興味深く、日常生活でも応用が可能な気がしました。
人間存在を、心身一元論・二元論を超えて、私とは体の「内」にいるのでも「外」にもいるのでなく「関係的な存在である」と捉える考え方は、実存主義の「世界-内-存在」に通じるものですが、「体験」も“関係”であり、ある事柄にフォーカシングすることで、その事柄に関する暗在的な“関係”が「からだ」の実感として体験されるというのは、流行の“身体論”的人生論を超えた高次の自己探求法に繋がるものかも知れないと思いました。
尚、フォーカシングを来談者中心療法とは別個の体系(フォーカシング指向心理療法)として捉える見方もあることを付記しておきます。
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池見 陽(医学博士)
臨床心理士で専門はフォーカシング指向心理療法。現在、関西大学教授で、大学での教育研究のほか、臨床は自動車メーカーの健康保険組合で行っている。日本フォーカシング協会会長、日本人間性心理学会理事、兵庫県臨床心理士会理事や The Focusing Institute の認定コーディネーター。
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【192】 ○ 平木 典子 『カウンセリングの話 [新版]』 (2004/01 朝日選書) ★★★★
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「不完全な人間が、不完全性を認めながらもがんばりつづける」という姿勢が大事であると。
『新版 カウンセリングの話』 (2004/01 朝日選書)
カウンセリングの入門書ですが、カウセリングの働きが、カウンセラー自身にとっての深い意味の発見であることを示唆する本となっています。
まずカウンセリングの定義や理論前提を充分に解説し、続いてX理論・Y理論やマズローなどのカウンセリングに関する「人間観」と、来談者中心療法や論理療法などの「理論」を、それぞれバランスよく網羅しています。
読者の理解を深めるために突っ込んだ説明もなされていますが、著者の考えを述べている部分はその旨を明記していて、入門書として適切でそれでいて内容の薄っぺらさはありません。
最終章では著者のカウンセリング観、カウンセラーに求められる資質などが述べられていますが、「不完全な人間が、不完全性を認めながらもがんばりつづける」そういう姿が身についたとき、カウンセラーは真の援助者になれるのではないか、というその考えに頷かされます。
《読書MEMO》
●マグレガーのX理論(人間なまけもの論)・Y理論(人間信頼論)
●マズローのD(dificiency=欠乏)心理学とB(being=人間存在)心理学(29p)
欲求五段階説(31p)
1.生理的欲求/2.安全の欲求/3.所属と愛の欲求/4.承認の欲求/5.自己実現の欲求
●カウンセリングの理論
1.精神分析
2.特性因子理論 (F・パーソンズ.)
3.来談者中心療法 (C・ロジャーズ)
4.行動療法(系統的脱感作)
5.論理療法 (A・エリス)
6.ゲシュタルト療法 (F・パールズ)
7.TA(交流分析)(エリック・バーン)
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【191】 ○ 矢幡 洋 『立ち直るための心理療法』 (2002/06 ちくま新書) ★★★★
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「原因究明」型のトラウマ理論より「解決志向」を説く。
『立ち直るための心理療法』 ちくま新書
本書ではまず、「心の病気」を、
1.精神病(うつ病・精神分裂病)
2.心身症
3.神経症
4.依存症
5.適応上の問題
の5つに区部し(この区分はほぼ国際的な基準に沿ったもの)、わかりやすく解説していますが、例えば神経症についても、「森田神経症」や「退却神経症」などもフォローするなど、行き届いた感じがしました。
さらに、それぞれについて、「精神科医」に診てもらうべきか、「カウンセラー」に診てもらうべきかを述べていますので、専門家の助けが必要な人にとっては良い“助け”になるかと思います。
またそれは、カウンセラーにとっても、同じことが言えるかもしれません。
最近は「心の病気」を「アダルト・チルドレン」や「PTSD」といった概念で説明することが流行っていますが、著者はこうしたトラウマ理論はぶっとばせ!と言っています。
こうした“原因究明”は治療とは直結せず、新たな問題を増やす恐れさえあるという著者の言説には、説得力を感じます。
どうやって「立ち直る」かが問題なのだと―。
この考え方は、後半部分の心理療法の実際についての説明にも表れていて、「解決志向セラピー」や「ナラティブ・セラピー」というものに代表される「ポストモダンセラピー」に、特に頁を割いて説明しています。
この他にも、諸外国で行われているセラピーを紹介していますが、大方が自らの体験に基づいた記述なので、どのようなものかをイメージしやすいと思います。
著者は精神科医ではなく臨床心理士ですが、精神病院や精神科クリニックなどでの勤務経験が豊富で、自らをカウンセラーとしては精神科医寄りかも知れないと言っています。
本書には良い意味で、その特色が出ていると言えます。
《読書MEMO》
●心理療法の種類
・言語によるアプローチ(精神分析、クラエアント中心療法、ポストモダンセラピー)
・変性意識状態による治療法(自律訓練法、トランスパーソナル心理学、イメージ療法)
・ボディワーク(センサリー・アウェアネス、フェルデンクライシス身体訓練法、オーセンティック・ヌーブメント他)
・芸術療法(アートセラピー、音楽療法他)
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【190】 ○ 河合 隼雄/南 伸坊 『心理療法個人授業』 (2002/06 新潮社) ★★★★
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語られているのは、“技法”よりもクライエントに向かうときの“姿勢”の話。
『心理療法個人授業』 (2002/06 新潮社)
新潮文庫 〔'04年〕
南伸坊氏が“生徒”になって各界の専門家の授業を受けるというスタイルのシリーズ第4弾で、“先生”は河合隼雄氏。
同じこのシリーズの、養老孟司氏が先生役の『解剖学個人授業』('98年/新潮社)を読んでいたので、南伸坊という言わば“素人”さんを介在して、一般読者の入りやすい切り口から学問の特定分野の世界を紹介し、読者により身近に感じてもらおうというのがこのシリーズの狙いであって、必ずしも体系的に○○学とは何かを述べているものではないということはわかっていました。
本書も大体はそうしたコンセプトに沿ったものですが、基本的にはわかりやすい言葉で書かれているものの、内容的には奥が深いと思います。
「授業」というタイトルにつられて知識や技法論を求め過ぎて本書を読むと、思惑違いということになるのではないかと思います。
この本で述べられているのは主として“技法”以前の話、つまりクライエントに向かうときの姿勢についてであり、そちらの方が“技法”そのもよりずっと大事なのだと思いました。
個人的には、来談者中心療法の祖とされるカール・ロジャーズが、セラピストの人格とクライエントに向かう態度を強調する一方で、技法論そのものはあえて提唱しなかったこととの共通性を、河合隼雄氏に見出した思いがしました。
心理療法というのは、心理療法家個人が人間として先ずどう在るのかに依存するところが大きいのではないかと。
【2004年文庫化[新潮文庫]】
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【189】 ○ 河合 隼雄 『人の心はどこまでわかるか』 (2000/03 講談社+α新書) ★★★☆
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心理療法における問題を扱うと同時に、著者のエッセンスが随所に。
『人の心はどこまでわかるか』 講談社+α新書
河合隼雄氏が、心理療法家として活躍している中堅の方々との対談を通して、対談の後に個別に寄せられた質問に答える形をとりながら、その中で自分がどうして心理療法家になったか、心理療法を通して何が見えてきて何が難しいと感じたかなども含めまとめたもの。
西洋人の父性原理を通してみる日本人の心の問題や、氏にとってのユングの存在についてなど、“河合隼雄”のエッセンスが詰まっています。
結局のところ人の心はわからないのであって、そのことを認識した上で努力を重ねる、その姿勢が大切なのだということでしょう。
著者の言を借りれば、いかにわからないかを骨身にしみてわかった者が「心の専門家」であると―。
特に、事例研究の重要性を説いていたのが印象に残りました。
西洋人の父性原理につて述べた部分では、その象徴的な話として紹介されている、村の掟を破った自分の息子を父親が銃殺するというメリメの「マテオ・ファルコーネ」という小説の話が印象的で、この父親の感覚は日本人には理解しがたいものでしょう。
理解しがたいということは、カウンセラーとしての父性・母性のバランスを考える場合、それだけ日本人の場合、父性の役割をもっと意識した方がいいというのが、河合氏の考えのようです。
この辺りは『母性社会日本の病理』('76年/中央公論新社、'97年/講談社+α文庫)で氏が展開した、日本は母性社会であるという比較文化論的な流れを引いているようです。
しかし、全体として心理療法においてセラピストが直面する諸問題を扱った本書が、発刊後すぐに10万部突破の売れ行きを示したのは、編集部がつけたというタイトルのうまさ、著者のネームヴァリュー、「講談社+α新書」の創刊ご祝儀的要素などいろいろあるにしても、やはり日常社会の人間関係などを難しく感じている人が多い時代だということなのでしょうか。
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【188】 ◎ 河合 隼雄 『カウンセリングを語る (上・下)』 (1999/10 講談社+α文庫) ★★★★☆
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カウンセリングの入門書であり名著。ゆっくり読みたい。
『カウンセリングを語る〈上〉 カウンセリングを語る〈下〉
』 講談社+α文庫
本書は、著者がかつて四天王寺人生相談所(お寺の付属機関)で毎年カウンセリングの話をした、その通算20回の講義内容がベースになっています。
元本(単行本)は'85(昭和60)年に出版されたものですが、それまでに長年にわたって話した内容が全体として一貫性を持ち、しかも章を追うごとに化していくのは見事です。
入門書であり、名著でもあると思います。
上巻では、学校や家庭での身近な問題から説きおこし、心を聴くとは? カウンセラーの人間観とは? 治るとは? カウンセリングの限界とは? 危険性は?といった切り口で、カウンセリングとは何かを語っています。
さらに下巻では、カウンセリングにはなぜ「××派」などがあるのかという話からその多様な視点と日本的カウセリングを考察し、カウセリングを行う際の実際問題とその対し方を述べ、最後は死生観や人生観にまで突っ込んだ話となっています。
著者はカウンセリングが宗教に通じるものがあることを肯定していますが、この本自体が“法話”のような趣があります。
本書を読むことは、〈知識的〉読書というより〈体験的〉読書とでも言うべきでしょうか。
文庫上・下巻で600ページを超えますが、ゆっくり読みたい本です。
【1985年単行本[創元社 (上・下)]/1999年文庫化[講談社+α文庫 (上・下)]】
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【187】 ○ 渡辺 三枝子/平田 史昭 『メンタリング入門』 (2006/01 日経文庫) ★★★★
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「キャリア発達支援」というメンタリングの本筋を押さえた入門書。
『メンタリング入門』 日経文庫
「メンタリング」について書かれた本の中には、リーダーシップ論やコーチングの技法論とまったく同じになってしまっているものも散見し、「高成果型人材を育成する」といった、短期間でパフォーマンスの向上を求めることが直接目的であるかのような書かれ方をしているものもあります。
本書は、キャリア・カウンセリング理論の第一人者による「メンタリング」の入門書ですが、「メンタリング」の目的を、メンティ(メンタリングを受ける人)の「キャリア発達を援助する」ことであるとしています
企業内で良いメンター役になるにはどうすればよいかということについて、相手に関心を持ち、自分の価値観を押しつけず、自らも誠実かつ寛大であり、相手から学ぶ態度を持つなどといった、メンターがメンティに向き合う際の姿勢を重視し、またメンターが自身のキャリアの棚卸しをすることなどを通して自身の成長をも促すとしていて、そうした考え方のベースにカウンセリング理論があることが読み取れます。
最終章では、企業内で「メンター制度」として導入し運用する際のポイントが述べられていて、その中で提唱している、メンティに希望するメンターを選ばせる「ドラフト会議方式」などは、メンターの本来の姿は自然発生的な私的なものであり、制度はその仕掛けであるという考え方からすれば、納得性の高いものと言えます。
新書ゆえの簡潔さで、物足りなさを感じる部分もありますが、入門書ほど著者の「見方」が入るものはないかもしれず、個人的には著者の「見方」は「メンタリング」の本筋を押さえたものだと思います。
メンターを志す方は、本書を足掛かりにカウンセリング心理学の本などに読み進むのもいいのではないでしょうか。
ただし、1つ付け加えるならば、メンターとカウンセラーはまた少し異なるということも意識しておくべきでしょう(メンターはメンティを「組織」の目指す方向に向かわせるべきものでもある)。
著者の渡辺氏も『キャリアカウンセリング入門-人と仕事の橋渡し』('01年/ナカニシヤ書店)の中で、コーチングやメンタリングとカウンセリングの違いを詳説していますし、日本の企業社会では、「上司はカウンセラーよりもメンターになることの方が現実的である」と思われる(同書111p)と書いています。
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【186】 × 岩尾 啓一 『キャリア・カウンセリングが会社を強くする―本気で、個人も会社もしあわせになる法、教えます』 (2004/10 経済界) ★★
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わかりきっていることの羅列にがっかり。独自の提案が欲しかった。
『キャリア・カウンセリングが会社を強くする―本気で、個人も会社もしあわせになる法、教えます』 (2004/10 経済界)
著者は今や大手となった再就職支援会社の設立者で(後にその会社は外資系になりました)、ある意味、業界の先駆者的な人であると言えるかと思います。
その後〈キャリア工学ラボ〉というものを設立し、自分はたまたま著者のセミナーを聴く機会があって、その前に本書を読みましたが、残念ながら本もセミナーもやや期待外れでした。
セミナーを聴いていて気づいたのですが、本書は著者のセミナー内容を書き起こしたような内容だったのですね。
内容があまりにわかりきっていること、手垢のついた表現の羅列で、著者自身の独自の提案というものが無いと感じました。
一方、自らの経験によるものとしては、「派遣スタッフの身に“安住”しているような人は、チャレンジ精神に欠けるのだ」、「学校の先生は社会人の礼儀を知らない」など決めつけ型の表現が目立ちます(この辺りは、限定的な聴衆を対象としたセミナーのノリか)。
例えば、個人が幸せになれば家族も幸せになれ、その幸福感は職場にも連鎖する―といった表現は、セミナーの中で聞き手を惹きつけるうえではある程度効果的なフレーズであるかも知れないし、キャリア・カウンセリングの本筋からも外れてはいない(ワーク。ライフ・バランスという考え方)と思いますが、活字にした場合、その本を選び、お金を払って買って読む側に対して、内容の提供レベル的にどうなのかなあと言う感じも(因みに、自分が受けたセミナーは、コンサルティング会社の販促セミナーだったので無料でした)。
日本におけるキャリア・カウンセリングという分野の歴史が、企業経営との関連ではまだ浅いために(そうしたセミナーにも社命で何となく参加している人事担当者などもいたりして)、まず、こういうところから説いていかなければならないのかなとも思いました。
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【185】 ○ 金井 壽宏 『会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング』 (2003/08 日本経済新聞社) ★★★★
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キャリア行動の専門家とプロ・キャリアカウンセラーのコラボ。個人的には良かったが…。
『会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング』 ('03年)
金井壽宏 氏
組織には組織の価値観や規則があり、社員が組織にとって望ましい発想や行動パターンをとってくれて、なおかつそれが社員にとっても元気の源となり自己実現につながるならば、そらは素晴らしいことでしょう。しかしなかなか現実にはそうはいかない…。
個人は当然、自らのキャリアや価値観を重視するわけで、そうしたなかで企業は、企業のアイデンティと個人のアイデンティの調和をいかに図るかが大きな課題になってくるに違いなく、そのことを意識した場合において(まだそういう意識を持てないでいる企業経営者も多いけれど)、キャリアカウンセリングというのは会社生活と個人生活を調和した状態に近づけるひとつの手立てになると思われます。
本書はキャリア行動などが専門の金井壽宏教授と、プロのキャリアカウンセラー(臨床心理士)らの共著ですが、上述の問題に一歩でも迫ろうという意欲は感じられます。
金井教授が冒頭で最近とりあげられることの多いミドルの課題を提示し、以降カウンセラーがキャリア・ストレスやミドルの危機、カウンセラーの役割などについて1章ずつ述べ、後段で金井教授がリーダーシップやトランジッションについて述べています。
岡本祐子氏の「アイデンティの螺旋式モデル」は厚労省のキャリア・コンサルティング技法報告書にも採用されたものであるし、「成人期の発達を規定する2軸・2領域」論は是非多くの人に触れて欲しいものです。
渡辺三枝子氏のキャリア・カウンセラー論も素晴らしい内容でした。
全体的にはバラエティに富んだ、意欲的かつ面白いコラボレーションだと思います。
ただし少しケチをつけるならば、学術的論文を50頁以上にわたりベタで掲載して1章を構成していたりもし、この部分は“バラエティ”と言うよりは“水増し”の感があり、少なくとも一般読者向けを思わせるタイトルとは相容れないのではないでしょうか。
《読書MEMO》
●客観的キャリアと主観的キャリア(意味づけ・将来展望)(10p)
●ワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事と家庭の間で生じる葛藤)(39p)
●成人期の発達を規定する2つの軸と2つの領域-職業人・組織人・家庭人・自立(自律)した個人(岡本祐子)(61p)
・人としてのアイデンティの達成-職業人としての有能性
・組織に対するケア-後進の指導育成・組織の人間関係への主体的関与
・家族に対するケア-親役割・夫役割
・一人の人間、生活者としての自立/自律性
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【184】 △ ノーマン・C・ガイスバース/他 『ライフキャリアカウンセリング―カウンセラーのための理論と技術』 (2002/04 生産性出版) ★★★
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参考になる部分は確かにあるが、読んでいていろいろと効率が悪いのが難点。
『ライフキャリアカウンセリング―カウンセラーのための理論と技術』 (2002/04 生産性出版)
キャリアカウンセリングを“ライフキャリア”という観点(個人の役割・環境・出来事など、人生における重要な要素すべてを考慮して最適な選択を行おうとする考え方)から理論的に整理し、さらにオープニングから、情報収集、理解/仮定、行動化、目標/行動計画、評価/終了までの6段階に構造化して、各段階の実践的アプローチを具体的に解説しています。
クライエントの意思が明らかな場合でも、“ライフキャリア”の観点からは違った結論が導かれるのではないかと思われる場合は、クライエントのパートナーとしてそのことを率直に伝え、クライエントの視野を拡げ、クライエントが自主的に最良の選択をすることを“サポートする”ことを旨としていて、基本的にはオーソドックスなキャリアカウンセリングの考え方に近いと思われます。
ただし理論と技術を総合的にとりあげ、ここまで具体的に詳説した本というのは従来はあまりなく、キャリアカウンセリングに携わる人にとって参考になる部分は確かにあるかと思います。
ただし、本の造りが拙くて、かなり読みにくく感じました。
これでは、参考になる部分があっても、後で読み返すときに探しにくいという気がします。
さらには、性差や民族といった観点からもライフキャリアについて述べていますが、グローバルな(米国的な)観点に立つ分、日本人に対するカウンセリングとウェイトの置き方が異なるため、読んでいて効率が悪い。
こうした欠点もいろいろあり、価格(3,400円)、時間などからみてROI(投資効率)的には今ひとつでした。
《読書MEMO》
●キャリアカウンセリングの構造化…
◆オープニング→◆情報収集→◆理解/仮定→◆行動化→◆目標/行動計画→◆評価/終了までの6段階
●社会的認知学習理論(107p)/自己効力感(108p)
●タイプA行動…他人に対して敵対的でせっかちな態度を取り、時間に追われながら攻撃的・競争的に仕事取り組む傾向(123p)心臓発作を起こしやすい
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【183】 ○ 宮城 まり子 『キャリアカウンセリング』 (2002/03 駿河台出版社・21世紀カウンセリング叢書) ★★★★
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キャリアカウンセリング理論をバランスよく網羅している。
『キャリアカウンセリング』 (2002/03 駿河台出版社)
宮城 まり子 氏 (略歴下記)
キャリアカウンセリングの理論・方法・進め方、意思決定のプロセスなどがバランスよく網羅された入門書だと思います。
キャリアコンサルタントの資格試験の参考書としてよく纏まってるという点ではベストで、この1冊でほぼ合格点は取れるのでは。
自分自身、マーカーで線を引き引きして使いましたが、記述問題で出たアセスメントに関する質問は、本書に書かれている内容で完璧に対応できたと思います。
つまり別な言い方をすれば、択一問題レベルにとどまらず、記述問題に対応できるレベルであると言ってよいかと思います。と言っても、この1冊で終わらないようにしたいものです(自戒をこめて)。
もともと「受験参考書」ではなく(そうした本はキャリア・コンサルタント、キャリア・カウンセラーの養成機関などから別に出版されています)、キャリアカウンセリングの「入門書」であり、また本書において解説されているキャリア・アンカー、プランド・ハップンスタンス、トランジションといった言葉は、最近多いキャリア行動に関する書籍にしばしば登場する言葉ですので、その方面に関心がある人が読んでも、概念把握を誤らずに基礎知識を得る上で参考になるかと思います。
《読書MEMO》
●特性因子理論(43p)/職業指導の父パーソンズ(20p)
●スーパーの理論…(発達論的アプローチ)→ライフステージ・自己概念
●ホランドの理論…(パーソナリティアプローチ)→6つの性格タイプ(現実・研究・芸術・社会・企業・慣習)
●クランボルツの理論…(意思決定論的アプローチ)→計画された偶然性
●シャインの理論…キャリア・アンカー
●シュロスバーグの理論…トランジッション・ノンイベント
●ハンセンの理論…人生の4要素…仕事・学習・余暇・愛)の統合、意味ある全体
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宮城 まり子
早稲田大学大学院心理学専攻修士課程修了。臨床心理士として臨床活動を行い、1992年より産能大学、2002年より立正大学心理学部助教授。大学教育の傍ら外部EAP機関(精神科)にて臨床活動を行う。専門はカウンセリング、キャリア心理学、生涯発達心理学、産業組織心理学。主著「キャリアカウンセリング」(駿河台出版)など。
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【182】 ◎ 渡辺 三枝子/エドウィン・L・ハー 『キャリアカウンセリング入門―人と仕事の橋渡し』 (2001/09 ナカニシヤ出版) ★★★★★
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「キャリアにはアップもダウンもない」という言葉に頷かされる。
『キャリアカウンセリング入門―人と仕事の橋渡し』 (2001/09 ナカニシヤ出版)
キャリアカウンセリングの入門書に触れ、もう少し突っ込んだ標準テキストを求める人には格好の本だと思います。
歴史や背景理論から援助の具体的技法まで広く触れていますが、随所に明快な考察が見られます。
「キャリア」という言葉ひとつにしても、「職業」との対比で、キャリアは個人から独立して存在し得ず、時間をかけて創造していくもので、個々人にとって独自のものである、としています。
確かに「職業」という概念は個人から独立して存在するが、「キャリア」と言う場合は「誰かのキャリア」だ…と納得。
しかしこの本で一番心に残ったのは、著者の渡辺三枝子氏が“キャリアアップ”という言葉を用いたら、キャリアの権威である心理学者サビカスに「キャリアにはアップもダウンもないんだ」と即座に叱られたという話です。
キャリアとは主観的なものであり、評価できるのは本人しかいないということです。
“キャリアアップ”という言葉があまりにも一般化している中で、目からウロコが落ちる思いをしました。
《読書MEMO》
●キャリアにはアップもダウンもない(前書き3p)
●キャリアの特徴「個人から独立しては存在しえない」「時間をかけて創造していくものである」「個々人にとってユニークなものである」「職業との関わりにおける個人の行動(心理的過程)(19-20p)
●予測としては、一人の人が生涯に7回から8回転職するだろう(31p)
●自己効力感(71p)・クルンボルツの社会的学習理論(73p)
●コーチとメンターの違い(108p)
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2006年08月18日
【181】 △ 横山 哲夫/他 『事例キャリア・カウンセリング―個の人材開発実践ガイド』 (1999/08 生産性出版) ★★★
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事例は参考になるが、レベル的には勉強会の意見交換のレベル。
『事例 キャリア・カウンセリング―「個」の人材開発実践ガイド』
『キャリア開発/キャリア・カウンセリング―実践個人と組織の共生を目指して』
前半でキャリア・カウンセリングに対する著者ら(企業出身者で現在、キャリア・カウンセリングの研究及び実施機関を運営している人たちが主)の視点が述べられ、後半3分の2がキャリア・カウンセリングの事例研究となっています。
前半部分の、社内委員会などによる面接とキャリア・カウンセラーによるカウンセリング、さらには治癒的なカウンセリングを“面接の三様態”として整理した部分はわかりやすいものでした。
後半部分の10の事例も、こうした具体例が本書刊行当時('99年)一般書の中で出てくることはあまりなかったので、ある程度は参考になりました。
ただし、何れも著者らが主催したキャリア開発のワークショップに参加した人たちの事例であることを考慮しなければならないし、参加者の意識にかなりバラツキがあるのも気になりました。
「妻から呑気を責められる」などという家庭内の悩みも、ライフキャリアという観点に立てばキャリア・カウンセリングの範疇に入るのかも知れませんが、「生きている実感が持てない」「自然体で生きられない」などという悩みは、本書内でも指摘されているように、来談者がカウンセリングを通じてのセラピューティクな関係を求めているのであって、こういう人に向き合うには、セラピスト(心理療法家)としての高度な経験と技法が必要になってくるのではないでしょうか。
あるいは著者の1人が告白しているように、つい寝てしまったカウンセリングが、来談者に「今回の面接が一番良かった」と言われたように、何もしないでいるか…。
また、事例研究そのものが著者グループの勉強会の意見交換記録のレベルに留まっていて、課題の取り上げ方が恣意的で、内容も充分に総括されているようには思えませんでした(事例討議まで、カウンセリング記録の手法を準用してそのままベタで載せているのが、果たしていいのかどうか)。
著者グループの次著『キャリア開発/キャリア・カウンセリング』('04年/生産性出版)へのステップ段階における本(または記録)だったと言えるのではないでしょうか。
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【180】 △ 金井 壽宏/高橋 俊介 『キャリアの常識の嘘』 (2005/12 朝日新聞社) ★★☆
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物足りない内容。よく言えば“おさらい”的。“焼き直し”感は拭えない。
『キャリアの常識の嘘』 (2005/12 朝日新聞社)
『部下を動かす人事戦略』('04年/PHP新書)に続く金井壽宏、高橋俊介両氏の共著で、「職種が自分に合うことが重要だろうか」「キャリアにとって忠誠心はプラスになるか」「部下は上司が育成すべきか」といった問いに両氏が答える形式になっていますが、就職しようとする学生などキャリアの入り口にある人に対する指南書といったところでしょうか。
金井氏は、今まで多くの自著でも紹介してきた「キャリア・ドリフト」「キャリア・トランザクション」などの概念や理論を織り交ぜながらキャリア・デザインについて論じ、また高橋氏は、単線的な上昇志向より「キャリア自律」が大切であることを説いていますが、方向性としては金井氏と重なり(すり寄ってきた?かつては「成果主義」を進めるコンサルを標榜し、目いっぱい上昇志向を煽っていたではないか)、読んでいてどちらが書いているものかふとわからなくなるときもありました。
一応、中高年などでキャリアの上で迷いを感じている人なども読者対象としているようですが、実社会の経験がある人が読むにはややモヤっとした感じで、「キャリア学」的関心から本書を手にした人にとっても物足りないかも。
特に両氏の本を何冊か読んだことのある人にとっては、よく言えば“おさらい”的なのかもしれませんが、“焼き直し”感は拭えないと思います。
そうした意味でも、(シリーズ名とは言え)タイトルの「常識の嘘」や帯の「目からウロコ!」というのは大仰で、どのあたりのターゲットを指してそう言っているのかと突っ込みたくなります(オーソドックスなんです。書いてあること自体は)。
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【179】 × 高橋 俊介 『スローキャリア―上昇志向が強くない人のための生き方論』 (2004/08 PHP研究所) ★★
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結局のところ“スローキャリア”というものが何なのかよくわからない。
『スローキャリア』 ('04年/PHP研究所)
高橋 俊介 氏
著者の提唱する“スローキャリア”というのは、“上昇志向でない動機によってドライブされる”キャリアのことを指すらしいのですが、この定義がわかりにくい。
キャリアアップや組織で出世することだけに血道を上げ、本来の自分らしいキャリア形成という目的から逸脱してまでも「勝ち組」となることにこだわる考え方に疑問を投げかけるという姿勢はわからないでもないのですが、著者自身が「上昇志向」「勝ち組」「キャリアアップ」などという言葉を使うことで、そうした価値基準の中にどっぷり浸っているようにもとれます。
これは、この本が「THE21」という“キャリアアップ”特集とかをよく組んでいる雑誌に連載したものを単行本化したものであることとも符合します。
基本的には、著者が今まで説いてきた「キャリア自律」、クランボルツの「計画的偶発性理論」などがベースとなっていて、キャリア計画より普段の仕事への取り組み姿勢が大切だという落とし処だと思いますが、“スローキャリア”とは逆の“ファストキャリア”的発想に近いのではないかと思われる記述も多い一方で、“スローキャリア”を“スローフード”“スローライフ”になぞらえる記述もあり(少なくとも“スローフード”の“スロー”と“スローキャリア”の“スロー”は別物または異質のものではないだろうか)、読む側としては混乱します。
平易な文体で書かれていてさらっと読めるものの、流行語としては流行らせようしたのではないでしょうが、“スローキャリア”がまずありきで論を進めていてる感じがしました。
「はっきりいおう、スローキャリアをめざす人は、お金という唯一のものさしでその人の価値を決めることができるという、ある種アメリカ的な考え方を否定すべきだ」
―と言われても、結局のところ“スローキャリア”というものが何なのかよくわらないので、結果的には通俗的な人生論にしか聞こえてこないという面がありました。
【2006年文庫化〔PHP文庫〕】
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【178】 ○ 佐々木 直彦 『キャリアの教科書』 (2003/06 PHP研究所) ★★★★
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バランスがとれ、わかりやすく、かつ深みのある考察。
『キャリアの教科書』 (2003/06 PHP研究所)
エンプロイアビリティの基本能力を 専門能力/自己表現力/情報力/適応力とし、雇われ続ける能力に限定せず、転職を可能にする能力、やりたい仕事を続けるための能力という観点を示しているのが新鮮でした。
企業のエンプロメンタビリティ(雇う力)にも言及していてバランスがとれています。
本論では、エンプロイアビリティ向上のために実践し(フィールドワーク)考え(コンセプトワーク)人とつながる(ネットワーク)ことの重要性を、図解やケーススタディと併せ、またキャリア行動に関する理論を引きながら、わかりやすく具体的に説いていています。
プレゼン能力の大切さを特に強く訴えている点など、プランナーでありコンサルタントである著者の体験からきているかと思いますが、何のために自己表現するかというところまで踏み込んでいて、考察に深みを感じます。
ただ、図説の中にはいかにもプランナーが描きそうな矢印の多用が見られ、洗練されたイラストや写真も時には邪魔に感じられることがあったのが残念でした。
《読書MEMO》
●エンプロイアビリティの基本となる4つの能力…
1.専門能力
2.自己表現力
3.情報力
4.適応力(26p)
●エンプロイアビリティの3つの観点…
1.雇われ続けるためのエンプロイアビリティ
2.好条件での転職を可能にするためのエンプロイアビリティ
3.やりたい仕事をやり続けるためのエンプロイアビリティ
●企業のエンプロイメンタビリティ(45p)
●3つのワーク(フィールドワーク/コンセプトワーク/ネットワーク)(60p)
●グランボルツ博士のプランド・ハップンスタンス・セオリー(96p)
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【177】 × 高橋 俊介 『キャリア論―個人のキャリア自律のために会社は何をすべきなのか』 (2003/06 東洋経済新報社) ★★
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趣旨は、社員の自律的キャリアの構築促進。内容がこなれていない。
『キャリア論』 (2003/06 東洋経済新報社)
高橋 俊介 氏
サブタイトルからは窺えますが、“会社側は”何をすべきなのかという本で、そのあたりが「キャリア論」というタイトルからは少しわかりにくく、それでも個人として買っても役に立ったという人も少なからずいるらしいのは、本書が〈自律的キャリア(CSR=Career Self Reliance)〉を形成・促進することを説いているためだろうと思われます。
この本が企業側に対して明らかにしようとしているのは、社員の〈自律的キャリア〉の構築を促進していくことは、必ずしも優秀人材の流出には繋がらず、むしろ企業にとっても望ましいものであるということです。
それはそれで、企業側部にパラダイム転換を促す1つ筋の通った主張になっていると思います。
ただし、そのことを説明するためにクラスター分析の手法を使って多くのページを割いていますが、学術論文か、その手前のゼミ論文のような生硬さで、一般読者はもちろん企業の担当者にとっても、読んでいて何故こんなゼミの講義みたいな話に付き合わさればならないのかという気分になってきます。
文体にも著者独特の分かりやすさが見られず、どこまで誰が書いたのかわからない、やや“手抜きの1冊”と見ました。
著者が以前から言っている〈自律的キャリア(CSR=Career Self Reliance)〉というが概念にも、少なくとも本書では深化は見られず、加えて〈企業の社会的責任=CSR(Corporate Social Responsibility)〉というハヤリの言葉とカブったのが、ちょっと気の毒。
投稿者 wadamy : 00:36 | コメント (0) | トラックバック
【176】 ○ 金井 壽宏 『仕事で「一皮むける」―関経連「一皮むけた経験」に学ぶ』 (2002/11 光文社新書) ★★★☆
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報告書レベルを超えた内容。ただし、ちょっと大企業中心?
『仕事で「一皮むける」』 光文社新書
金井壽宏 氏
関西経済連合会のワークショップとして、参加企業のミドルが企業トップ(経営幹部)にインタビューし、自らの〈キャリアの節目〉を振り返りってもらったものをまとめたものを、さらに金井教授が新書用に再構成し、解説をしたものです。
金井教授の「一皮むける」という表現は、その仕事上の経験を通して、ひと回り大きな人間になり、自分らしいキャリア形成につながった経験のことを指し、ニコルソンのトランジッション論などのキャリア理論がその裏づけ理論としてあるようです。
直接的には南カリフォルニア大の経営・組織学教授モーガン・マッコールが著書『ハイ・フライヤー』('02年/プレジデント社)の中で述べている“クォンタム・リープ(量子的跳躍)”という概念と同じようですが、“クォンタム・リープ”といった言葉よりは“一皮むける”の方がずっとわかりやすいかと思います(一方で、“ターニング・ポイント”という言葉でもいいのではないかとも思うが、ここでは“キャリア”ということを敢えて意識したうえでの用語選びなのだろう)。
その言葉のわかりやすさと、金井氏の思い入れが、本書を単なる報告書レベルを超えたまとまりのあるものにしています。
経営幹部が選んだ自らの“一皮むけた”経験の契機が様々であるにも関わらず、配属や異動であったり、初めて管理職になったときであったり、プロジェクトに参画したときであったりと、ある程度類型化できるのが興味深く、自分に重なる事例に出会ったときはハッとさせられます。
日経の「私の履歴書」みたいな実名記載ではない分、飾り気が無く、自らのキャリアに対する素直な振り返りになって、誰もが自分にも類似したことが思い当たる〈キャリアの節目〉となった事例を、本書の中に見出せるのではないかと思います。
ただし、大企業での話ばかりで、多階層組織、事業部制を前提とし、新規事業、海外生活などを経験したといったことがキーになっていたりする話などは、今ひとつピンと来ない読者もいるのではないかと思いました。
関経連には中小企業はいないの?
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【175】 ◎ 小杉 俊哉 『キャリア・コンピタンシー 新知的ビジネス・スキル講座』 (2002/05 日本能率協会マネジメントセンター) ★★★★★
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深い考察と確信。キャリア行動に関して読んだ本の中では最良の部類。
『キャリア・コンピタンシー』 ('02年/日本能率協会)
小杉 俊哉 氏 (略歴下記)
本書では、キャリア・コンピタンシーを構成する9つの要素を示し、キャリア理論やカウンセリング理論を引きながら論を進めていますが、最終的には借り物の理論をなぞってスキルのみ伝授して終わるのでなく、著者自身がキャリア及び生き方について深く考察し、確信を持って読者をインスパイアしようとしているのが伝わってきます。
それだけに、「読み手との相性」で評価が割れる本かと思います。
自分の場合は、最後の「自分自身であること」に至るまで物語を読み進むように引き込まれ、著者自身のキャリアの振り返りにも感動しました。
知識を期待して読み始めましたが、既知のクランボルツの挿話にしても、高橋俊介、金井壽宏といった人の本の中で読むよりも深い印象を受けたりしたのは、自分だけでしょうか。
キャリア理論やカウンセリング理論の紹介も的を射ており、そうした知識の整理にも役立ちますが、個人的には知識以上のものが得られという読後感があり、キャリア行動に関する本で今まで読んだものの中では、自分にとっては最良の部類に入るものでした(相性が良かったのかも)。
《読書MEMO》
●専門プロフェッショナル(34p)とビジネス・リーダー(40p)
●キャリア・コンピタンシーを構成する9つの要素
1.自己認識
2.ビジョン
3.楽観・柔軟
4.環境理解
5.状況判断
6.アサーション・表現力)
7.影響力・対人手腕
(以下、コアコンピタンシー)
8.直感
9.自分自身であること
●モチベーション・ファクターとリベンジ・ファクター(66p)
●MBTI(マイヤーズ・ブリッグス・インディケイター)(76p)
●シャインのキャリア・アンカー(124p)
●クランボルツのプランド・ハップンスタンス(125p)
_________________________________________________
小杉俊哉
1958年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、日本電気株式会社(NEC)入社。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー インク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て独立。現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教授、株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長。自律的キャリア開発・リーダーシップの研究とそれに基づく人材育成、組織・人事コンサルティング、およびベンチャー企業への経営支援を行っている【著書】「キャリア・コンピタンシー」(日本能率協会マネジメントセンター)「組織に頼らず生きる」(平凡社)「ラッキーをつかみ取る技術」(光文社新書)他多数
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2006年08月17日
【174】 ◎ 金井 壽宏 『働くひとのためのキャリア・デザイン』 (2000/12 PHP新書) ★★★★☆
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著者の本領発揮!キャリアを考え、キャリア論を知るうえでの良書。
『働くひとのためのキャリア・デザイン』 PHP新書
金井壽宏 氏 (略歴下記)
キャリアとは何かを考えるうえで、また、どういったキャリア観があり、自らのキャリアをデザインするとはどういうことなのか考えるうえで大変参考になります。著者自身のキャリア観にも好感が持てました。
キャリア理論を学ぶうえでも、シャインの〈3つの問い〉、ブリッジスの〈トランジッション論〉、クランボルツの〈キャリア・ドリフト〉といったキャリア行動や意思決定に関する理論や概念が、最近のものまでバランス良くカバーされており、役に立つのではないでしょうか。
またそれらの解説が大変わかりやすいうえに、著者の「この理論を自分のキャリアを決める際に生かしてほしい」という熱意が伝わってきます。
単行本の執筆も多く、最近は組織・人事全般に関わるテーマでも本を出しているのは経営学者ですから当然ですが、実はこの新書本に著者の本領が最も発揮されているのではないか、という気がします。
《読書MEMO》
●シャインの「3つの問い」(36p)…
1.何が得意か (能力・才能についての自己イメージ)
2.何がやりたいか (動機・欲求についての自己イメージ)
3.何をやっているときに意味を感じ、社会に役立っていると実感できるか (意味・価値についての自己イメージ)
●ブリッジスの「トランジッション論」…危機の1つとしての「転機」、一方で躍進感・前進感も(72p)
●ニコルソンのモデル…準備→遭遇→順応→安定化というサイクルの節目をキャリアの発達につなげる(84p)
●クランボルツの「キャリア・ドリフト」(114p)…
・デザインの反対語→流されるままでいいのか→偶然性や不確実性の効用(キャリアドリフトのパワー)
●キャリアにアップもダウンもない、主観的意味づけや統合がキャリア理解を強化(137p)
●キャリアの定義…長い目で見た仕事生活のパターン(140p)
●レビンソン…生涯を通じて発達するという概念(202p)
●ユング…「人生の正午」(221p)
●エリクソン…ライフサイクル論(221p)
_________________________________________________
金井壽宏 (神戸大学大学院経営学研究科教授)
1954年生まれ。兵庫県神戸市出身。京都大学教育学部卒業。神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学でPh.D(マネジメント)、神戸大学で博士(経営学)を取得。現在はリーダーシップ、モティベーション、キャリア・ダイナミクスなどのテーマを中心に、個人の創造性を生かす組織・管理のあり方について研究。
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【173】 ○ 高橋 俊介 『キャリアショック―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?』 (2000/12 東洋経済新報社) ★★★★
「●キャリア行動」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【174】 金井 壽宏 『働くひとのためのキャリア・デザイン』
刊行時はキャリア行動の教科書的な読まれ方。今でも示唆は多い。
『キャリアショック―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?』 (‘00年/東洋経済新報社)
自分の思い描いていたキャリアの将来像が予期しない環境変化により崩壊してしまうことを「キャリアショック」とし、そうしたことが起こりうる現代において自分のキャリアをどう捉え、どう開発していくかを説いています。
変化の激しい時代においては、最初に目標があっても必ずしも予定通りにはいかない、ということは多くのビジネスパーソンが感じているところ。
しかしそうした時代だからこそ、自律的なキャリア形成を図るよう心掛けるべきである、というのがメインの主張です。
キャリアアップという言葉を使わず、「幸福なキャリア」を築くにはどうしたらよいかということを、プランド・ハップンスタンス(計画的偶然性)などキャリア行動の概念を用いて説明する過程は、先駆的で、かつわかりやすいものでした。
実際にキャリアチェンジした人の事例を多く挙げていて、キャリアコンピテンシーの高め方が身近に理解できる1冊。
本書が刊行された'00年は、民間のコンサル会社ワイアットの社長だった著者が独立を経て慶応大の教授に転身した年ですが、この一般向けの著書はキャリア行動の教科書的な読まれ方をしました。
ただし、その後あまりにこうした本や考え方が出尽くして、今読むと当時ほどの目新しさはありません。
それでもなお、キャリアの入り口にいる学生や、今を自分のキャリアの転機ととらえて転職を考えている人には、今もって示唆の多い内容ではあると思います。
高橋 俊介 氏 (略歴下記)
【2006年文庫化(ソフトバンククリエイティブ[SB文庫])】
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高橋 俊介
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
組織・人事に関する日本の権威の一人。プリンストン大学大学院工学部修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ザ・ワイアット・カンパニーに勤務後、独立。
人事を軸としたマネジメント改革の専門家として幅広い分野で活躍中。主な著書に「自由と自己責任のマネジメント」「自立・変革・創造のマネジメント」「キャリアショック」「組織改革」「人材マネジメント論」がある。
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【172】 △ ナンシー・K・シュロスバーグ 『「選職社会」転機を活かせ―自己分析手法と転機成功事例33』 (2000/04 日本マンパワー出版) ★★★
「●キャリア行動」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【173】 高橋 俊介 『キャリアショック』
キャリアの節目で悩んでいる人には、元気づけられる事例やヒントが。
『「選職社会」転機を活かせ―自己分析手法と転機成功事例33』 (2000/04 日本マンパワー出版)
全米キャリア開発協会(NCDA)の会長などを務めた著者による本書は、人が人生の転機やキャリアの節目にぶつかったとき、それをどう乗り越え、どうすれば豊かな人生が送れるかということをテーマとしています。
著者は、どんな転機でも「見定め」、「点検し」、「受け止める」ことで必ず乗り越えられるとし、その「点検」のところでは、リソースとしての4つのS(Situation:状況、Self:自分自身、Support:周囲の支え、Strategies:戦略)を見極めるとが、成功への道に繋がるとしています。
この論旨の流れに沿って、人生の転機や困難に直面した人がそれをどう乗り越えたかという事例が多く紹介されていて(本書の原題は“Overwhelmed”(途方にくれて))、アメリカ人というのはこういう逆境から立ち直る話が好きなのだなあという気もしましたが、もちろん日本人にとっても、とりわけ人生やキャリアの節目で悩んでいる人には、元気づけられる事例や考え方のヒントが本書には含まれていると思います。
原著の出版は'89年と少し古く、一般的なキャリア理論の紹介も一部にありますが、必ずしも充分に網羅しきれていません。
キャリア学の金井壽宏氏も「どんな転機でも必ず乗り越えられる」という考え方において、本書に賛同していたような覚えがあります。
そうした意味では、理論書というより啓蒙書に近い感じがします(人生論ではないと訳者あとがきにはありますが…)。
興味深かったのは、「人生半ばの危機」説に批判的なことで、人はあらゆる時期に転機に見舞われるとしていている点で、例えば母と娘が同時期に出産するといったことが起こる社会においては(そうしたことがどれぐらいの頻度でアメリカ社会にあるのかはよくわかりませんが)、確かに固定的なライフステージを想定していない方が、こうしたダイバーシティ(多様性)に対応できるのかもしれないと思いました。
投稿者 wadamy : 23:42 | コメント (0) | トラックバック
【171】 △ 岡本 義幸 『転職―人材紹介のプロが教える「考え方・選び方・売り込み方」』 (1987/09 ダイヤモンド社) ★★★
「●キャリア行動」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【172】 ナンシー・K・シュロスバーグ 『「選職社会」転機を活かせ』
円高不況期に書かれた転職・人材会社利用ガイド。今に通じる部分も。
『転職―人材紹介のプロが教える「考え方・選び方・売り込み方」』
岡本義幸 氏(略歴下記)
本書は'87(昭和62)年の出版であり、人材会社(人材斡旋会社)の社長が書いた「転職」のためのガイドブックです。
この分野では古書に属するものかも知れませんが、読み直してあまり旧い感じがしないのは、本書が書かれ時期が、その直前までバブル景気前の円高不況期であったために、バブル崩壊の際と背景が少し似ているからではないかと思います。
プラザ合意('85年)による急激な円高が未曾有の鉄鋼不況を招き、新日鉄などが大規模なリストラ策を打ち出したのがこの頃でした。
転職先の見つけ方・見分け方や、履歴書の書き方から面接での自分の売り込み方などが70項にわたって書かれていますが、「受付嬢で会社がわかる」とかはちょっと平凡ですが、「中小企業なら社長面接のある企業を選べ」とか、なかなか面白いアドバイスもあります。
当時それほど一般のビジネスパーソンには馴染みのなかった人材会社の活用の仕方について書かれているほか、外資系の会社というものの見つけ方・見分け方が詳しく書かれているのが特徴でしょうか。
外資系の企業で勤務する場合「本社に2名の友達を持て」というアドバイスは、日本企業の支社・支店に勤める人にも当てはまるかも。
結局、日本の景気は回復してバブル期に入り、高度専門職能(当時ならば金融・SEなどの専門知識・能力が最も需要があった)を持つ人が、自分をより高く売るためにこういう人材会社を利用したように思います(採用会社が斡旋会社に払う手数料も、かなり高かったように思う)。
最後に著者の将来予測があり、「企業の国籍は無くなる」とか「理科系出身者が三次産業に押し寄せる」などというのは当たっている面があり、「社長の10人に1人は女性になる」というのは、まだそこまでいってはいないという感じでしょうか。
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岡本 義幸
ボイデン・ジャパン 代表取締役会長。同志社大学経済学部卒。米国大沢商会取締役社長、株式会社ケンブリッジ ヒューイット インターナショナル(現ヒューイット アソシエイツ)社長を経て、1995年、ECI株式会社を設立。現在、同社の代表取締役会長を務める。
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【170】 ○ 学研辞典編集部 『13か国語でわかる新・ネーミング辞典』 (2005/06 学習研究社) ★★★★
「●広告宣伝・ネーミング」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【171】 岡本 義幸 『転職』
ネーミング企画者必携だが、普通にパラパラ読んでも雑学的に面白い。
『13か国語でわかる新・ネーミング辞典』 ('05年)
『最新ヒット商品をつくるネーミング辞典 8か国語対照』 ('00年改訂版)
様々なジャンルのキーワード3,550語についての〈英・仏・独・伊・西・希・羅・露・葡・蘭・中・韓・刺〉の13か国語対照辞典ですが、最後の「刺」って何?
本書の前身として、ネーミング用キーワード3,500語を分野別に配列した、英語、仏語、独語、イタリア語、スペイン語、ギリシャ語、ラテン語、ロシア語の8カ国語対照の『ヒット商品をつくるネーミング辞典』('91年初版・'00年改訂版/学習研究社)があり、個人的にはネーミングにも使用しましたが、普通に辞書として使ったりもし、あとはパラパラめくって読んでいるのが結構楽しいという感じでしした。
その後PART2として、英語、ポルトガル語、オランダ語、中国語、韓国語、アラビア語の6か国語対照のものが'03年に出されており、今回はその2冊を合体させたもので、本のヴォリュームとしては従来の1冊分とさほど変わらず、分野別から50音順になり、別に分野別索引もあり使いやすくなっています(最後の「刺」はアラビア語でした)。
エスペラント語が無いとか、アジア系言語をもっととか、いろいろな要望はあるかも知れませんが、ネーミング企画をする人にとっての商業ネーミングにおける最大公約数的需要は満たしているので、必携ではないでしょうか。
一般の人が雑学的興味で読んでも、なかなか面白いのではと思います(言語学に興味のある人ならなおのこと)。
今回「ヒット商品をつくる」というのがタイトルから消えていて、巻末付録に〈名づけに使える日本の古語&方言〉を収録しているところをみると、子どもやペットの名付けに『ヒット商品をつくる~』を使った人が結構いたのかなあ。
そのためにわざわざ辞典を買うの?という声もあるかもしれないけれど、自分の会社を創るときに買ったという人もいますから、使う回数の問題ではなく、思い入れの大きさの問題でしょうね、きっと。
投稿者 wadamy : 23:12 | コメント (0) | トラックバック
【169】 ○ 横井 惠子 『ネーミング発想法』 (2002/02 日経文庫) ★★★☆
「●広告宣伝・ネーミング」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【170】 学研 『13か国語でわかる新・ネーミング辞典』
ネーミングの実践的な手法解説と併せて、新たな発見が満載。
『ネーミング発想法』 日経文庫
コピーライターの書いたネーミングの本というのは職人芸を披露しているようなところがありますが、本書は日経文庫らしく(?)、ベーシックな入門書という感じです。
「DoCoMo」「au」「BIGRLOBE」などのネーミング開発を手掛けた「ジザイズ」という会社(この会社名がネーミングの法則から外れて濁音を敢えて多用しているというのが面白い)の社長である著者は、ブランド戦略の第一歩としてネーミングを位置づけ、造語メカニズムを解き明かし、商標登録など権利問題にも触れています。
ですから、本書で「方法」を知ることができても、「発想力」がつくかどうかは別の話だと思います。
ただし、本書の中核を成す、「方式に則って造語する『言葉の発明』」、「辞書の中から見つけ出す『言葉の発見』」、「視点を変えたネーミング発想法」の各章は、たいへん面白かったです。
実践的な手法の解説と併せて、「クルマの名前ってこんなにラテン系言語が多いのか」といった新たな発見が満載です。
そう言えば、著者も大阪外大のイスパニア語学科出身でした。
《読書MEMO》
●ネガティブミーニング(カルピス、モスバーガー、クリープ…)(37p)
●混同されやすい3文字(UFJ (United Financial of japan) とUSJ)(72p)
●雑誌名…サライ(ペルシャ語で「宿」)、じゃらん(インドネシア語で「道」(77p)
●乗用車(98p)…
ラテン語…アルデオ(輝く)、イプサム(本来の)、プリウス(より前に)
スペイン語…セフィーロ(そよ風)、ドミンゴ(日曜日)、エクシード(盾)
イタリア語…アルテッツァ(高貴)、ジータ(小旅行)、ピアッツァ(広場)
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【168】 △ 岩永 嘉弘 『すべてはネーミング』 (2002/02 光文社新書) ★★★
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読みやすいが、一般の人が応用するのは難しい面も。
『すべてはネーミング』 光文社新書
“売れる”ネーミングとは何かを、自らの経験をベースに、読みやすい語り口で説いています。
また、ネーミングの“売り込み”におけるプレゼンテーションの重要性にも触れていて、広告宣伝の世界を垣間見ることができます。
以前に、業界の草分け的存在である土屋耕一氏の『コピーライターの発想』('84年/講談社現代新書)という本を読んで、なかなか面白かったのですが、土屋氏の弟子第一号を自認する著者も、すでにベテランの域に(何だか職人の系譜という感じ)。
「11PM」の企画で「ふんどし」に名前をつける話などは面白いけれど、ちょっと年代を感じます。
洗濯機の「からまん棒」や新宿「MyCity」、雑誌「saita」などもこの人の仕事。
六本木ヒルズに新規出店('01年11月)した食品スーパーマーケット(FOO:D magazine)のネーミングの話もあります。
本書にはありませんが、「新生銀行」「JAL悟空」なども著者が手掛けたもので、トップランナーとしての息の長さを感じます。
都市型スーパーマーケット「FOO:D magazine」のそのネーミングに至るまでの話は、名付け作業以前のマーケティングの重要性を感じました。
西友が展開する店ですが、店舗内に「SEIYU」のロゴは一切使われてませんね。この高級スーパーは。
それと、特に感じるのは、近年の仕事に共通する、ロゴなどのビジュアルの重要性でしょうか。
こうなってくると、専門家と職人のコラボレーションの世界で、興味深くはあるものの、一般の人が応用するのは難しい面もあるかもしれません。
エッセイ風にまとめられていて、体系的な入門書ではないけれど、こうした本をキッカケにコピーライターを目指す人もいるのだろうなあという気はしました。
投稿者 wadamy : 18:49 | コメント (0) | トラックバック
【167】 ○ 中川 佳子 『「情報を見せる」技術―ビジュアルセンスがすぐに身につく』 (2003/07 光文社新書) ★★★☆
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「情報の整理が出来なければセンスはうまく働かない」には共感。
『「情報を見せる」技術』 光文社新書
本書は副題に「ビジュアルセンスがすぐに身につく」とあり、色彩デザインなどのビジュアル、つまり情報伝達の技術的方法論を具体的に論じていて、これは新書本の中では珍しいのではないかと思います。
著者はNHK特集「驚異の小宇宙・人体」でCGを担当するなどのプロですが、本書はPowerPoint などを使った一般的なプレゼンを想定して書いていて、細部はやや専門的ですが、大筋ではそれほど“理解する”のが難しいものではありません。
テクニックとは活用の機会さえあれば“実際に使える”もので、知っておくに越したことはないと思います。
個人的には前半部分の、「センスは学べる」ものであるが「情報の整理」が出来なければセンスはうまく働かないという箇所に共感しました。
「情報」には“収集”と“活用”の2つのレベルがあるということ、つまり、イメージを広げるための情報と、イメージに具体性を与えるための情報があるというのです。
拙いプレゼンの多くに、発表者が自らのイメージを広げるために収集した情報がそのまま盛り込まれていて、それが受け手がイメージをつくる際にむしろ妨げになっていることがあるなあと、自分がやったプレゼンも含め、今更ながら思った次第です。
投稿者 wadamy : 18:42 | コメント (0) | トラックバック
【166】 ○ 土井 哲/高橋 俊介 『プロフェッショナル・プレゼンテーション』 (2003/02 東洋経済新報社) ★★★★
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プレゼンを総体的に把握。欠点もあるが、得るところが大きかった。
本書ではプレゼンテーションの構成を「コンテンツ」と「デリバリー」に分け、さらに前者を「ストーリーライン」と「ビジュアルエイド」に分けて考え方や技法を提示しています。
「コンテンツ」とは言うまでもなく、中身をどう作るかということであり、「デリバリー」とはオーディエンス(聞き手)にどう届けるか、つまりどう発表するかということですが、この構成を最初に示すことで本自体の全体像が掴みやすくなっていて、また“説得的プレゼンテーション”という概念提示をすることで内容がシャープになっています。 ◆プレゼンテーションの全体像 (まとめ)
世の中には企画の書き方の本も、Power Pointの使い方の本も、発表の仕方の本も多くあり、それらは本書で言うところの「ストーリーライン」、「ビジュアルエイド」、「デリバリー」にそれぞれ該当するわけですが、3つ揃って初めてプレゼンテーションと言えるはずなのに、こうした3つ揃えてしっかり解説した本を今まで見かけなかったのが不思議です。
「ストーリーライン」構築の説明部分が特にしっかりしていて(〈演繹法〉と〈帰納法〉の部分など一部において説明がやや“くどい”部分もありましたが、人事企画やコンサルティングなどの実務でも念頭に置くべきことが多く記されているように思いました。
最終章「デリバリー」部分(高橋氏の執筆部分)が口述筆記か書き流しという感じでいかにも“箔付けのための名前貸し”という印象を受けるなど、いくつか欠点もありますが、全体としてそれを補うだけの得るものがある本でした。
《読書MEMO》
●プレゼンの構成=コンテンツ(ストーリーライン・ビジュアルエイド)とデリバリー
●コンテンツ作成の流れ= キーメッセージの明確化 → 論理構築 → 根拠の証明 → ストーリー設計 → ビジュアル作成
●MECE(ミーシー)…モレがなくダブりがない(42p)
●政策メッセージの3つの根拠=必然性・効用・実現可能性(68p) ◆ストーリーラインをつくる (まとめ)
投稿者 wadamy : 18:13 | コメント (0) | トラックバック
【165】 ○ 山崎 紅 『説得できるプレゼンの鉄則 PowerPoint上級極意編―勝負をかけるプレゼン資料はこう作る』 (2002/11 日経BP社) ★★★★
「●プレゼンテ-ション」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【166】 土井 哲/他 『プロフェッショナル・プレゼンテーション』
豊富なカラー図解。「説得する」ということを常に念頭に書かれている。
『説得できるプレゼンの鉄則 PowerPoint上級極意編―勝負をかけるプレゼン資料はこう作る』 (2002/11 日経BP社)
マイクロソフトの PowerPoint がプレゼンテーションの標準ツールになって久しい今日、仕事上、使えないよりは使えた方が良いに決まっています(ディレクティブな立場にある人でも、大事なプレゼンの直前に、何が修正可能で、何が難しいかを知っておいてくれた方が、スタッフの方もありがたい)。
本書は、実習用CD-ROM付きであることもさることながら、全頁カラーで図解も豊富、マニュアルによくある味気なさが無く、また「勝負をする」「差を付ける」「説得する」ということを常に念頭に置いて書かれているので、マニュアル嫌いな人でも、読み物としてざっと読んでみるといった入り方ができます。
「上級極意編」とありますが、マニュアルとしては中級レベルとみていいのではないでしょうか。
デザインや色彩の用い方についての解説が詳しいのが特長ですが、Officeデータの貼り付け方の解説などはよく整理されていると思いますし、「プレゼン成功の鍵」などの囲みコラムにも、役立つ知恵が簡潔に述べられています。
個人的には、上達への道は、まず使ってみること、そしてやはり、いろいろな場で PowerPoint を使ったプレゼンに接してみるのが良いのではとないかと思います。「あのテクニック自分も使いたい」みたいな気持ちが、習得意欲につながるのではないでしょうか。
《読書MEMO》
●章立て
第1章 勝負をかけるプレゼン資料作成法
第2章 デザイン・レイアウトで差を付ける
第3章 カラー化で差を付ける
第4章 Officeデータ活用で差を付ける
第5章 マルチメディア活用で差を付ける
第6章 アニメーションで差を付ける
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【164】 ○ 藤沢 晃治 『「分かりやすい説明」の技術―最強のプレゼンテーション15のルール』 (2002/10 講談社ブルーバックス) ★★★☆
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プレゼン直前にセルフチェック用として使える本。
『「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール』 講談社ブルーバックス
著者のブルーバックスにおける「分かりやすい」シリーズ3冊のうちの1冊で、
この本の前後に
◆『「分かりやすい表現」の技術-意図を正しく伝えるための16のルール』('99年)、
◆『「分かりやすい文章」の技術-読み手を説得する18のテクニック』('04年)
がそれぞれ出ています。
何れもスラスラ読めて、書いてあることも至極まっとうです。
それで、いざ実践場面になると、すでにやっていることはやっているし、分かっていてもできないことはなかなかできない、という感じではないでしょうか。
著者はこのブルーバックスのシリーズを書いているときは、まだ“勤め人”だった人で、現場感覚というものがわかっている人が書いているなあという感じがします。
さらに、このシリーズ3冊の特長は、著書自体が「分かりやすさ」の実践になっていることです。
「読み返しチェック」が楽にできます。
そうした意味では、プレゼンテーションをテーマとした本書「説明の技術」が、プレゼン直前の時間の無いときの自己チェック用として最も使えると思いました。
プレゼンテーションの準備って、時間が無いときほど、ついコンテンツの修正に最後にまでかかりきりになり、こうしたわかりきっているはずの〈説明〉の技術についての基本事項がおろそかになりがちですから。
投稿者 wadamy : 17:53 | コメント (0) | トラックバック
【163】 △ 杉田 敏 『人を動かす! 話す技術』 (2002/07 PHP新書) ★★☆
「●プレゼンテ-ション」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【164】 藤沢 晃治 『「分かりやすい説明」の技術』
明日プレゼンを控えた人が読んでも役に立たないのでは。
『人を動かす! 話す技術』 PHP新書
著者はNHKラジオ「やさしいビジネス英語」の講師として知られるとともに、外資系のPR会社の副社長でもあります。
だから、広告、オンライン、対面、媒体を使ったコミュニケーションのポイントの説明などは的を射ています。
また、送り手(S)からメッセージ(M)がチャネル(C)を通して受け手(R)に流れるだけでなく、そこに受け手がアクションを起こすという効果(E)が生まれなければならないとする「SMCRE理論」や、エトス(信頼)、ロゴス(論理)、パトス(感情)からなる「説得の3要素」の説明もわかりやすいものでした。
「エトス」による説得とは話し手の人格や資質により相手の信頼を得るものであり、「ロゴス」による説得とは論理を積み重ねて相手を納得させるもの、「パトス」による説得とは聞き手の感情に訴える説得ということで、哲学者アリストテレスが定義した「成功するコミュニケーション」が典拠であることは知られているところです。
この中で「エトス」を重視しているのは、米国のコミュニケーション学の潮流を引いたものだと思いますが、「ロゴス」第一主義だった米国人の反省が、「パトス」重視の日本人にも生きるという“妙”を感じました。
自らの豊富なビジネス経験やアイアコッカ、ブッシュのエピソードまで引き合いに出しての話には引き込まれます。
ただ個人的には、プレゼンに役立つかなと思って本書を手にしたため、その部分ではたいしたことは書いてない不満が残りました。
明日プレゼンを控えた人が読んでもそれほど役に立たないのではと思います。
日本の経営トップやリーダーと呼ばれる人は、もっと表現訓練をした方がいいのかも、という感想のみが残りました。
それが、メディアトレーナーでもある著者の狙いだったのかも。
投稿者 wadamy : 17:44 | コメント (0) | トラックバック
【162】 ○ 田村 尚 『プレゼンテーションの技術―言葉だけでは人を動かせない』 (1987/06 TBSブリタニカ) ★★★☆
「●プレゼンテ-ション」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【163】 杉田 敏 『人を動かす! 話す技術』
相手との共感的一致を得るための信頼関係(ラポール)形成の重要性を強調。
『プレゼンテーションの技術―言葉だけでは人を動かせない』 (1987/06 TBSブリタニカ)
大手広告代理店・博報堂の営業部長さんが書いたプレゼンテーションの本で、'87(昭和62)年の刊行と少し古いですが、刊行当時はかなり読まれたようで、続編も出ました。
タイトルに「技術」とあり、ましてや広告代理店勤務のスペシャリストによるものであるため、テクニック一辺倒の内容かと想像しがちですが、確かにプレゼンのテクニック的なことにも触れられているものの、全体を貫くのは「“プレゼン心”とは何か」ということで、相手との共感的一致を得るためのラポール(信頼関係)の形成の重要性を強調しています。
情報収集やリハーサルも大切ですが、相手の課題をしっかり把握しなければ共感的一致は得られず、相手の立場になって考えることができなければ「ラポールの世界」は構築されない、そうした前提があっての情報収集やリハーサルであることを忘れてはならず、また導入部分のきっかけづくりというのも大事であるという、何れも著者が現場で感じ取ったプレゼンの核心が伝わってくるような内容です。
実際に著者が経験したビジネス・プレゼンテーションの事例が多く紹介されているとともに、著者自身が「“プレゼン心”とは何か」ということを探るために、業界内のプレゼンの名人と言われる人だけでなく、トップセールスマンや建築家などと接し、教唆を得たことをひとつひとつポイント整理していて、読みやすい内容です。
ちょうど広告業界の専門用語だった「プレゼンテーション」という言葉が広くビジネスの場面で使われるようになり始めたころのもので、さらに日常生活のあらゆる局面でプレゼンテーションというのものが役に立つということ著者は示しています。
冒頭に、ポール・ニューマンにクルマのCMへの出演を依頼し(これ、スカイラインですね)、困難な状況下で彼を口説き落とした経験が書かれていますが、これなども相手はポール・ニューマン1人で、プレゼンテーションといのは必ずしも大人数の前でやるものとは限らないということが分かり、ビジネスの(時として生活の)あらゆる場面がプレゼンの場になりうることを物語っていると思いました。
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【161】 ○ ジョン・メイ 『プレゼンテーション必勝テクニック』 (1986/10 プレジデント社) ★★★★
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楽しく読めて役に立つプレゼンに関する100のアドバイス。
『プレゼンテーション必勝テクニック』 (1986/10 プレジデント社)
原著タイトルは“How to Make Effective Business Presentations-And Win!”('83年)で、英国の「話し方教室」の先生が、プレゼンテーションにおける話し方のコツなどをまとめたものですが、効果的プレゼンテーションとは何かということを、その準備の段階から説き起こし、〈かゆい所に手の届く記述〉や〈即効ノウハウ〉も多くて、得られるところ大でした。

細かいテクニックもいろいろ紹介されています。
「上着を脱ぐのが適切である場合もある」(60p)などいうのは、自分自身もプレゼンの研修で教わったなあ。聴衆が、これから大事なことを話すのかなって気になるのですね(外国人がこういうのをナチュラルにやるのがうまい)。
「理解しにくい言葉で聞き手をバカにしない」(110p)というのも大事だと思います。専門用語を多用しすぎると、そのつもりがなくても、聞き手がバカにされているように感じてしまうことがある。
それと、本自体が面白く読めるというのもいいです。 MAP理論
例えば〈MAP理論〉というのを紹介していて、聴き手の座る位置によってその態度は決まるという。
話し手から見て向かって左側に座るのが支持派、同意しそうもない人は右側に座り、プレゼンをメチャクチャにする人がいるとすればその真中あたりにいる。
正面に座る人は“男爵”と呼ばれ、話し手が良ければ理性的だが、ダメだと思うと話し手にとって代わる。
右列後方の壁際にいるのは“狙撃兵”で、仲間外れにすると銃弾を撃ち込んでくる…。
〈MAP〉は May’s Audience Positioning の略で、要するに〈MAP理論〉とは著者が勝手に創った理論だとわかりますが、何となく当たっているような気がして面白いです。
要するに「聴衆の全員が話し手に好意的であるとは思わない方がいい」というアドバイスなのだというふうに、自分自身は解釈しました(でも、実感としても結構あてはまる?)。
こうした機知とユーモアに富んだアドバイスが、あと99個あります。
既に古書の部類に入る本ですが、最近読んだ『プレゼンなんて怖くない!―アメリカ人が教えるプレゼンテーションの秘訣53』(ロッシェル・カップ著/'06年/生産性出版)などと比べても、こっちの方が中身がずっと濃いと思いました。
《読書MEMO》
●MAP理論(44p)
・プレゼンをする人から見て左側に座る人は右派、保守的、支持的な「いい子」
・支持しない人たちは、向かって右側に座る、その真ん中に「ぶちこわし屋」
・プレゼンをする人の真正面に座るのは中立者「男爵」、社長がよく座り、プレゼンテーター(=「王様」)が頼りないときは自分がとって変わる
・向かって右列の奥にいる人は聞き手になろうとしない人「狙撃兵」
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【160】 ○ 中西 雅之 『なぜあの人とは話が通じないのか?―非・論理コミュニケーション』 (2004/06 光文社新書) ★★★★
「●文章技術・コミュニケーション」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【161】 ジョン・メイ 『プレゼンテーション必勝テクニック』
コミュニケーション能力を高めるための考え方のヒントを提示している。
『なぜあの人とは話が通じないのか? 非・論理コミュニケーション』 光文社新書
「話が通じない人」とコミュニケーションする場合、言葉や論理に頼りすぎない方が良い場合もあり、それが著者の言う「非・論理コミュニケーション」ですが、「なぜ話が通じないのか」という切り口から、コミュニケーション・トラブルの対処法、背後にある力関係、日本的な“面子”の問題、非言語コミュニケーションの役割、「聴く」ことの重要性、異価値に対する柔軟さの必要性などを指摘し、コミュニケーション能力を高める様々なヒントを提示しています。
コミュニケーション学の本には、米国の理論を引くものが多い。本書で引用されているものも'70年代の米国のものが主流です。
ただし、理論紹介が目的化してしまっていたり、逆に実用を強調するあまり1つの理論を万能薬のように唱える本が多い中、本書での事例と理論のとり上げ方は納得性の高いもので、日本においてはどうかという考察もしています。
例えば米国流コミュニケーション学によく出る「エトス(精神的訴求)」という言葉ですが(もともとは哲学家アリストテレスの思想で、「優れたリーダーの3つの条件」はエトス(精神)・パトス(情熱)・ロゴス(意義)であるというのがベースになっているのですが)、それについての説明でも、元来エトスとは「高い精神性」のことだったのが、近年は情報ソースの「信憑性」を指す傾向にあるというように最近動向を押さえながらも、さらに日本では、それに「カリスマ性」といった情緒的要素が入る傾向があると指摘しています。
全体を通して、答えを示すよりも考え方のヒントを提示するようなスタンスで、お仕着せがましさが無くて自分には合った本でした。
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【159】 × 樋口 裕一 『頭がいい人、悪い人の話し方』 (2004/06 PHP新書) ★★
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本書使用上の注意書を皮肉を込めてを付けるとすれば…。
『頭がいい人、悪い人の話し方』 PHP新書
どうして本書がベストセラーになったのか、読み終えて(途中から通読になってしまいましたが)今ひとつピンとこなかったのですが、よくよく考えると、方法論的な何かを得るというよりも、読み手によってはカタルシス効果のようなものがあるのではないかと思った次第です。
“充分なカタルシス効果”を得るための、本書の「使用書」と「注意書」を皮肉を込めてを付けるとすれば、こうなるのでは…。
《貴方の周囲に“どうもシャクにさわる人”がいたとしたら、その人の話し方を本書の“頭が悪い人の話し方”のどれかに当てはめてください(必ずいくつか当てはまるようになっています)。
その結果、その人は“頭が悪い人”であることが明らかになり、納得できた気持ち、スッキリした気分になれます。
実際の対処法も参考までに示してありますが、この部分に過度の現実性を求めないでください。
相手が仕事上の上司なら堪えるしかないのが現実なのです。
そのことよりもまず“スッキリした気分”になることが大切なのです。》
《ご自分の話し方に “頭が悪い人の話し方”ととられる部分がないかをチェックするのは構いません。
ただしあまり熱心にやり過ぎると、自分に当てはまる項目が思った以上に多くなることもあり、自己嫌悪に陥るか本書が嫌いになるか、何れにせよこれまでの作業がムダになる恐れがありますのでご注意ください。》
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【158】 ◎ 山田 ズーニー 『伝わる・揺さぶる!文章を書く』 (2001/11 PHP新書) ★★★★☆
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コミュニケーションの指南書。エトス(精神性)の高い本。
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』 PHP新書
山田 ズーニー 氏
ちょっと引き気味になりそうなタイトルですが、読んで見るとなかなかでした。
著者はあの進研ゼミのベネッセ・コーポレーションで、小論文通信教育誌の編集長をしていた女性です。
しかし内容は、小論文に限らず、上司を説得する文章、お願いの文章、議事録、志望理由(自己推薦)の文章、お詫び文、メールの書き方など、高校生の試験向けというよりは、ビジネスシーンでの実践的活用に即したものとなっています。
しかも、文章(著者は実用以上、芸術未満と規定していますが)を書く上でのテクニックにとどまらず、“伝わる・揺さぶる”文書を書く上での根幹となるものを示唆していて、むしろコミュニケーション全般にわたる指南書とも言えます。
書かれていることに読者をアッと言わせようというような作為性はなく、「自分を偽らない文章を書くことによってのみ、読み手の心は動く」のだという著者の考えが、そのまま真摯な語り口で実践されている本です。
こうした本は頭で理解できても、なかなか実践は難しいもの。
特に著者の言う「自分の頭でものを考える」ということ。何か忘れた気持ちになったとき、また読み返してみるのも良いかも。読み返す価値のあるエトス(精神性)の高い本だと思います。
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【157】 × バルバラ・ベルクハン 『アタマにくる一言へのとっさの対応術』 (2000/06 草思社) ★★
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全部を熟読すると、どうすればいいのか、かえってわからくなる。
『アタマにくる一言へのとっさの対応術』 (2000/06 草思社)
著者はドイツ人で、大学で心理学を学び、今はコミュニケーショントレーナーであるということですが、タイトルに惹かれた人が多かったのか、かなり売れた本です。
自分の意見を否定されたり相手から侮辱を受けたりし「アタマにきた」場合に、どう対応すれば良いかが、具体例と併せて数多く書かれていますが、大まかに分けて、無視して相手を空回りさせたり、話題を変えるなどして相手をはぐらかす方法と、我慢しないで、相手に対し一言ビシッと、できるだけ効果的な言葉で言い返す方法、があるということでしょうか。
その場で即、「言葉」による対応をすることで自分を護る、という点が西洋的で、「はぐらかし」というのは、彼らにとっては一種の応用形なのかも。
日本人は「はぐらかし」てばかりで、外国人から嫌われている気もしますが…。
でも、「どうしていいかわからなくなったら黙りこむ」とも書かれていて、全部を熟読すると、かえって、どうすればいいのかわからなくなってしまうような本でもあるような気もします。
そこで、もっと理解を深めようと、『グサリとくる一言をはね返す心の護身術』('02年/草思社)などの続編までも買ってしまうのかなあ(家の本棚にいつの間にか?ある)。
個人的に思うのは、自分に一点の非も無ければ、比較的ゆとりを持って対応できるだろうし、相手の指摘で自分の方の筋に自信が持てなくなるとイライラ度が増すのではないかとも思うのですが、この本は、一応自分はまったくもって正しいという前提で書かれているようです。
【2007年文庫化〔ソフトバンク クリエイティブ 〕】
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【156】 ○ 山崎 浩一 『危険な文章講座』 (1998/05 ちくま新書) ★★★★
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真面目だが愉快で刺激的。発想・思考トレーニングの示唆も多い。
『危険な文章講座』 ちくま新書
鬼才コラムニストとして知られる著者が「危険な」と冠するからには一体どんな内容かと思いきや、技術論よりも、文章を書く際に邪魔になる囚われから読者を解き放つことに主眼を置いた真面目な文章論でした。
「批判」と「悪口」の違いを述べた部分など、啓蒙書としての倫理性すら感じます。
しかしながらユニークな視点は健在で、書くことは「自己相対化」作用であることを「幽体離脱体験」に喩えて論じ、「文は人なり」という精神主義を喝破するのに「酒鬼薔薇聖斗」の手紙を立花隆らが「文章はセミプロ級で書いたのは高学歴者」などと推察したことを例に挙げるなど、巷にある真面目くさった文章読本に比べれば、愉快で刺激に満ちたものとなっています。
発想と思考のトレーニングについての示唆も多っかたと思います。
情報収集やカード整理といった作業は、それ自体が自己目的化してまだ始まっていないはずの〈思考〉にすり代わってしまう傾向があると。
こうして書評を書くのも、どこかにその恐れがあるということを、いつも認識しておくべきだということでしょう。
《読書MEMO》
●メモをっとることは大事だが、本当に大切なのはその後の作業。「とにかく自分の頭から生まれたランダムでアンバランスな断片を、どのようにして他者に共有してもらえる表現へと鍛えあげていくのか」
情報収集やカード整理は、往々にしてそれ自体が自己目的化してしまって、まだ始まっていないはずの〈思考〉にすり代わってしまう傾向がある(156p)
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【155】 × 藤沢 晃治 『理解する技術―情報の本質が分かる』 (2005/04 PHP新書) ★★
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ビジネスパーソンの大半が意識的・無意識的に既に実践していること。
『理解する技術 情報の本質が分かる』 PHP新書
本書は、講談社ブルーバックスの『「分かりやすい表現」の技術』シリーズの著者によるものですが、今度は大量の情報から必要なものを抽出するテクニックを説明しています。
この著者の本は本当に読みやすく、「脳内関所」といった言葉使いなども含め、〈PHP新書〉に場を移しても変わっていません。
ただし、本書目次を見れば分かりますが、今回は書かれていることが一段とオーソドックスで、基本的な事柄ばかり。目新しさはやや乏しいかなという感じです。
オーソドックスであること自体が良くないわけではありませんが、情報現場にいるビジネスパーソンの大半は、意識的または無意識的にこれら本書に書かれていることの多くを既に実践しているだろうし、中には意識していても個人のやり方があって本書の通りにはならなかったり、出来なかったりするものあるのではないでしょうか。
その辺りの自己チェック用としては読めないこともありませんが、この程度の内容で「目からウロコの連続!」みたいな人は、ビジネスマンの中にはあまりいないと思うのです。
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【154】 ◎ 牧村 あきこ 『Access はじめてのデータベース』 (2004/03 技術評論社) ★★★★☆
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使えば Excel の100倍便利!と思える。データベースは使う人が自分で作ろう!
『Accessはじめてのデータベース―Access2003/2002/2000対応』 (2004/03 技術評論社)
電卓計算した数値を Word で入力していた人が、同じことが Excel で出来ることを知ったとき、「ああ、Excel は Word の100倍便利だ!」と思っても不思議ではありませんが、ある意味それは、Access と Excel の関係でも言えます。
1つの数値を訂正するだけで、関連する100個の表の数値も一瞬にして直る―これを Excel でやろうとすると、使用関数やリンク設定を記憶しておく必要がある場合が多く、Access が使えれば「ああ、Access は Excel の100倍便利だ!」と思えることになるのでは。
本書は、「住所録を作る」で終わっているように、入門の入門、基礎の基礎というべきレベルのものですが、データベースの概念について若干触れている点で、初学者には薦めやすいものです。
この本のデータベース理論の解説も、ほんのサワリだけで充分とは言えませんが、世の中には、こうした話も端折って、テーブル、クエリ、フォーム、レポートの関係さえ充分に示さないまま、「さあ、テーブルを作ろう」みたいな感じで各論に入っていくマニュアル本が多く、学習者は今学んでいることの「意味」が判らず、マニュアルの最後まで辿りついた“奇特な”人だけが、「ああ、こういう関係性の中でのテーブル、クエリ、フォーム、レポートだったのか」と事態が飲み込める―だったら最初にそう言ってよ、と。
データベースは(Accessd で作れるような一定レベルのものであれば)、仕事でそれを必要としている人がプレーンな状態から自分で作るのがベストで、外注先などとのプロジェクト作業で作成してもよいのですが、仕事の流れがよく判っていない人に丸投げしたばっかりに、使いづらいものを我慢して使用している(あるいは、更新しなくなり死んでいる)ケースも結構ありますネ。もったいない。
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【153】 △ 齋藤 孝 『会議革命』 (2002/10 PHP研究所) ★★★
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「企画会議」に絞った内容。ビジネス会議にはもっといろいろな側面があるのでは。
『会議革命 PHP文庫』
齋藤 孝 氏
会議を効率的に進めるヒントを10の法則にまとめています。
「インスパイア・アイテムを用意する」とか「身体モードを切り替える」とか、著者らしい提案でいいと思いました。
状況的になかなか出来ない面もあるかもしれませんが、念頭に置いておくと煮詰まったときの打開策になるかも。
さらに、会議を変えるための具体的方法を提示しています。
ポジショニングにおいて、2人で共通の資料を頂点とした直角二等辺三角形をつくるというのはいいと思います。
本書にもありますが、カウンセリングの実施場面などにおいても、まず椅子の位置を変えるというのがセオリー的にあります。
「丸テーブル」方式というのも、集団面接の現場などでは、依然からよく採用されています。
「キーワード・シート」にアイデアを(3色ボールペンを使って!)書き込んでいく「マッピング・コミュニケーション」というスタイルも、会議というよりは2人から3人の打ち合わせにおいて有効な手法ではないでしょうか。
全体に、「企画会議」に絞った内容となっていますが、ビジネスの現場では、報告のための会議やコンセンサスを得るための会議も結構多く、そっちの方の効率の悪さに悩まされている人も多いのでは。
著者の認識では、「報告会議」は本来の会議ではなく、「今日の会議は報告だけ」ということになれば出席率は下がるということのようですが、「企画会議」的なものは人任せで、「報告会議」にだけ出てくるタイプの人もいるでしょう。
そういう人が、結構思いつきでものを言ったりする…。
【2004年文庫化[PHP文庫]】
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【152】 × 野口 悠紀雄 『ホームページにオフィスを作る』 (2001/11 光文社新書) ★★
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「ブログ」隆盛の今日においては“鮮度落ち”の内容か。
『ホームページにオフィスを作る』 光文社新書
「野口悠紀雄Online」
本書の肝は、第2章の冒頭にある「ホームページは自分だけが使うつもりで作るとよい」ということです。
本書が刊行された時点('01年)では画期的な提唱でしたが、「ブログ」隆盛の今日においては、根底部分ではすでに多くの人が実践しているものとなっています(本書を読んで「ブログ」を始めたという人もいるかと思いますが)。
もちろん第3章の「ノグラボ」「野口悠紀雄Online」に見る、利用者とのイントラクションなどの有効な活用方法は今読んでも示唆に富むものですが、誰もがすぐにできて、かつ同じ効果が期待できるというものでもありません。
むしろやや自己宣伝的で、一般読者への落とし込みが充分なされていない分、著者の『「超」整理法』シリーズなどと比べ不親切さを感じました。
『「超」整理法』シリーズ1~3('93年・'95年・'99年/中公新書)を読んだ流れで本書を手にしましたが、どの本においても著者の先見性を感じるとともに(そのことは認めます)、近著から順番に賞味期限が切れていくのではないかという皮肉な思いがしました。
本書も、現時点での有効性で評価するのはちょっとキツイかもしれません。
「ホームページは自分だけが使うつもりで作るとよい」という発想の先駆性に対して星1つプラスしたつもりですが、自分のホームページの宣伝的であることに対して(この手の本は他にも結構あるが)星1つマイナス、といったところでしょうか。
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【151】 △ 橋本 治 『「わからない」という方法』 (2001/04 集英社新書) ★★☆
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「わからない」を前提にした自分の方法を探るべきだと。回りくどかった。
『「わからない」という方法』 集英社新書
著者によれば、20世紀は知識を得ることで何でも答えが出ると思われた「わかる」が当然の時代だったのに対し、21世紀は「わからない」を前提とした時代であり、正解を手に入れさえすれば問題はたちどころに解決すると信じられた時代は終わったのであって、そのような「信仰」は幻想に過ぎないということが明らかになった今、「わからない」を前提にした自分なりの方法を探るべきであると。
自分の直感を信じ、それに従って突き進むのが著者の言う「わからない」という方法ですが、それには、「俺、なんにもわかんないもんねー」と正面から強行突破する「天を行く方法」と、「わかんない、わかんない」とぼやきながら愚直に失敗を繰り返し、持久力だけで問題を解決する「地を這う方法」があり、著者は実際の自分の仕事がどのような方法でなされたかを例をあげて説明しています。
『桃尻語訳 枕草子』などの仕事は後者の例で、「わからない」を方法化していく過程が説明されていますが、この人、基本的には「地を這う方法」なのではないか、と思いつつも、全体を通しての著者独特の“回りくどさ”もあり、自分がどれだけ「わからない」という方法に近づけたかやや心もとない感じです。
「自分の無能を認めて許せよ」という啓蒙的メッセージだけは強く受け止めたつもりですが…。
'05年に『乱世を生きる-市場原理は嘘かもしれない』(集英社新書)が出た時に、『「わからない」という方法』、『上司は思いつきでものを言う』に続く“橋本治流ビジネス書の待望の第3弾!”とあり、ああこれらはやっぱりビジネス書だったんだなあと…。
前半部分「企画書社会のウソと本当」の部分で、「企画書の根本は意外性と確実性」だと喝破しており、「確実性」とはもっともらしさであるということを、「管理職のピラミッド」の中にいる「上司」の思考行動パターンへの対処策として述べていて、この辺りは『上司は思いつきでものを言う』への前振りになっているなあと思いました。
投稿者 wadamy : 11:04 | コメント (0) | トラックバック
【150】 △ 野口 悠紀雄 『「超」整理法 3 ―とりあえず捨てる技術』 (1999/06 中公新書) ★★★
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情報環境の急速な変化とともに読み方が変わらざるを得ない本。
『「超」整理法〈3〉』 中公新書
『「超」整理法2 ―捨てる技術』 中公文庫
『「超」整理法』('93年/中公新書)からのシリーズ第3弾ですが、中公文庫版の方では本書が『「超」整理法2』となっているように、『「超」整理法』の「押し出しファイリング」論の続編のような内容です。
「押し出しファイリング」で溜まってきた情報を捨てるノウハウとして、“とりあえず捨てる仕組み”である「バッファー・ボックス」を提唱しています。さらに「バッファー・ボックス」には、「受入れバッファー」と「廃棄バッファー」があると。
本書の提案の中核である「廃棄バッファー」は、PCの「ごみ箱」にあたるとしていますが、多分、そのPCの「ごみ箱」から逆発想したのではないでしょうか。
しかし以前は「ポケット一つの原則」を提唱していたのに、どんどんボックスが階層化してくるのは仕方ないことなのでしょうか。
この本の通りやると、ボックス(箱)だらけになることはある程度覚悟する必要があるのではという気もしますし、個人で仕事している人などで、実際にそうなっている人もいます。
でも、サーバーやハードディスクにある電子情報がマスターで、紙情報は大体の所在がわかればいいという人も多い。
そうした人の中には、「本」についてもPC内に書庫データベースを持てば同様だと言い切る人もいます。
著者のように、大量の蔵書や学生レポートなどを扱う大学教授などはそうはいかないのかも知れませんが…。
本書は'99年の刊行ですが、すでに(著者の予見通り)PCの(ハードディスクの)“大容量時代”を迎え、情報環境が当時と変わってしまった部分もかなりあると思いました。
【2003年文庫化[中公文庫(『「超」整理法2』)]】
投稿者 wadamy : 01:30 | コメント (0) | トラックバック
【149】 △ 野口 悠紀雄 『続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法』 (1995/01 中公新書) ★★★
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時代を感じる部分もあれば、今もって得るところがある部分もある。
『続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法』 中公新書
『「超」整理法3―タイム・マネジメント』 中公文庫
前著『「超」整理法』(中公新書)が'93年、本書が'95年の刊行ですが、やはり前著の「押し出しファイリング」というのはある意味強烈だったなあと。
それに比べると本書は、タイムマネジメント全般を扱っていて、「押し出しファイリング」の復習みたいな章もあり、やや焦点が定まっていない印象を受けます。
だだ、時間管理を軸とした仕事の進め方についての指摘などには鋭いものがあります。「中断しない時間帯を確保する」など。
でも、実際の問題は、それができる状況かどうかということも大きいのではないでしょうか。「TO DOリストの作成」然りです(ん?これは意志力の問題かナ)。
電子メールに関する当時としては慧眼だったその便利さの指摘も、今や誰もが当然のように享受しています。
むしろ、ファックスの「受信紙にメモして送り返す」などの利用法は、今もって使える(だだし、電子メールでも同じことはできる)。
また電話を「問題だらけの連絡手段」とこき下ろしていて、終章で携帯電話を使用する際のマナーの社会的ルールを確立せよと言っているのも、電車内で携帯電話を使うビジネスマンのCMが流れていた当時のことを考えると先駆的だったのかも知れません。
【2003年文庫化[中公文庫(『「超」整理法3―タイム・マネジメント』)]】
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【148】 ○ 野口 悠紀雄 『「超」整理法―情報検索と発想の新システム』 (1993/11 中公新書) ★★★★
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特に個人ワーカー、主婦などには最も適した整理法ではないか。
『「超」整理法 』 中公新書
中公文庫
野口 悠紀雄 氏
本書の刊行は'93年ですから随分前のことになりますが、刊行後10年を経て'03年に文庫化されたりもしており、ロングセラーと言ってよいかと思います。
本書での提言の核は、何と言っても「押しだしファイリング」でしょう。
書類を内容別に分類して格納するのではなく時間順に並べてしまう方式で、これは、内容に沿って分類して置き場所を決める「図書館方式」と対照を成すものであり、「整理」というとすぐにこの「図書館方式」や「五十音方式」を思い浮かべてしまいがちな人には、「分類する」という考え方自体から脱却したこのやり方は、発想のコペルニクス的転換を促すものでした。
その他にも、電話を使うことよりも、パソコンで作成した文書をプリントアウトせずに電信ファックスする方法を推奨したりしていて、これなどは今で言う「仕事の連絡は電子メールで」という考え方と同じで、著者の先見性を窺わせるものでした。
ただし本書にもあるように、「押しだしファイリング」は“個人用”であり、「時間順」という検索キーは個人の記憶に基づくものであるため、会社の一部署などで情報を共有する場合は、この方法では困難が生じるだろうと。
個人的にも、電子ファイリングにおいてこの方式を採用してますが(ファイル名の冒頭にすべて作成年月日を入れるなどして)、ある時点で自分以外の人と情報共有することになったりすると「あのファイルはどこにありますか」といつも聞かれることに…。
読み返して、この“留意点”を再認識した以外には特に新たな発見もなかったのですが、まだ読んでいない人には、今読んでもそれなりに示唆が得られる、そうした普遍性はあるのではないでしょうか。
特に個人ワーカー、主婦などには最も適した整理法だと思います。
【2003年文庫化[中公文庫]】
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【147】 ◎ ロジャー・フィッシャー/ウィリアム・ユーリー 『ハーバード流交渉術』 (1982/09 TBSブリタニカ) ★★★★☆
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まず「人と問題を切り離す」というところから、意識して始めるべきか。
『ハーバード流交渉術』 1998年改訂版
日本人の場合、「交渉」というとすぐに「権謀術数」とか「手練手管」という言葉を思い浮かべ、交渉問題そのものよりも相手の性格や立場のことを考えがちではないでしょうか。

本書は特に日本人向けに書かれたものではありませんが、ここに示されている交渉の戦術は、そうした日本的な交渉とは対照的で、要約すれば、
1.人と問題を切り離せ
2.立場でなく利害に焦点を合わせよ
3.複数の選択肢を用意せよ
4.客観的基準を強調せよ
ということになります。
これらの戦術をどう実践するかが平易かつ説得力をもって書かれていて、理論と実例のバランスもとれているように思えます(こうした書き方も含めて実に“アメリカ的”な本)。
「以心伝心」とか「阿吽の呼吸」のようなものにすがることなく、自分の考えをロジックで通していく、多民族国家の根底にある「ディベート文化」を感じました。
ただし、相手を叩きのめすということではなく、“お互いの”問題解決とその後の良好な関係維持のための交渉であるという目的意識がはっきりしているのがいいです。
原著“Getting to Yes: Negotiating Agreement Without Giving in”は'81年刊行という“古典”ですが、ハーバード大に交渉学研究所があって、当時所長であった著者は国防省のコンサルタントもしており、その理論は中東和平交渉などでも応用されているというから恐れ入ります。
その後、“Getting Together: Building a Relationship That Gets to Yes”(『続 ハーバード流交渉術―よりよい人間関係を築くために』('89年/TBSブリタニカ))、“Getting Past No: Negotiating Your Way from Confrontation to Cooperation”(『決定版 ハーバード流“NO”と言わせない交渉術』('00年/三笠書房))と続編が出ているところをみると、アメリカでも結構売れた?
最後の方では、「相手の方が強い時」、「相手が話に乗ってこない時」、「相手が汚い手口を使ってきた時」などの対処法も書かれていたりして、通して読んで損はないですが、まず「人と問題を切り離す」というところから、今までより意識して始めるべきでしょうか。
【1989年文庫化[知的生きかた文庫]/1998年単行本改訂[TBSブリタニカ]】
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【146】 × 堀江 貴文 『儲け方入門~100億稼ぐ思考法』 (2005/03 PHP研究所) ★★
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自分の “粗製濫造”商品(いわゆる「堀江本」)が自分の首を絞める…。
『儲け方入門~100億稼ぐ思考法』 (2005/03 PHP研究所)
本書は、'04年のライブドアによる球団買収騒動と'05年のテレビ局買収騒動の間に書かれたもので、'03年11月に『100億稼ぐ仕事術』(ソフトバンククリエイティブ)を出して以来9冊目の「堀江本」、既にやや粗製濫造気味ではありました。
著者はその後も衆院選に立候補するなどし、経済や社会、政治の既成の概念や風潮に風穴を開けた面はあるかと思いますが、ライブドア事件を経て、かつて書店に平積みされた「堀江本」もその面影は無く、図書館にでも行かないと見つからないないとか…。
著者の経営、ビジネス、ファイナンスなどについての考え方自体はそれなりに筋が通っている部分もあったと思い、“事件”を起こしたから書いてあることも全部ダメというのもどうかなあと。
ただし特別に斬新なわけでもなく、また、成功したから言える面もあるし、(後日明らかになりますが)人に言えないこともいっぱいやっているだろうし、ベンチャーにはいいが、既存の企業にはどうかというものもあります。
でも当時のホリエモンの“固定客”にはそれで充分だったのかもしれませず、同時に彼らがライブドアの個人株主にもなっていたわけですが、企業にはびこる老害や無意味なヒエラルキーを小気味よく斬っていく様は心地よく感じられるでしょう。
ファンには、本書が最も言いたいことがよく語られていると好評だったようです。
ただ、知名度が上がって「ホリエモンってどんな人」と思って読む読者が増えると、「お金で買えないものはない。(中略)女心だって買える」というような表現は、社会的責任のある企業経営者としてどうなのという反発も出て当然で、選挙に出てこの点を突っ込まれ、「部分をとりあげての批判をしないで、ちゃんと僕の本を読んでください」と言ってましたが―。
しかしこの本には、稼げない人は元々その能力が無いのだから、最初から高望みするなというようなことも書いてあり、まさに「勝ち組」支配の論理で貫かれていて、「能力の無い人は天才に食わせてもらえばいい」と書いてあっても、それについての具体的施策を述べている箇所はなく、これでよく選挙に立候補したなあと。
結局、選挙戦の途中で、「本の内容についてはコメントしない」という方針へ方向転換しています(そうせざるを得なかったのでしょうが、こうした細かい“変節”も、その後の逮捕事件などの衝撃が大きかったために、やがて忘れ去られてしまうでしょう)。
彼は、著書(=自分)に対する固定的なファンの反応が、世の中の大方の反応ではないかと勘違いしていた面があったのかも。
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【145】 △ 齋藤 孝 『座右のゲーテ―壁に突き当たったとき開く本』 (2004/05 光文社新書) ★★★
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斎藤氏自身のメッセージを込めたビジネス啓蒙書とみていいのでは。
『座右のゲーテ -壁に突き当たったとき開く本』 光文社新書
これを機に『ゲーテとの対話』(岩波文庫で3分冊、約1200ページあります)を読む人がいれば、その人にとっては“ゲーテ入門者”ということになるかも知れませんが、本文中に「ビジネスマンこそ、自分の資本は何かということを問われる」などとあるように、基本的には斎藤氏自身のメッセージを込めたビジネス啓蒙書とみていいのでは。
仕事術、処世術から氏の専門である身体論、教育論、さらに人生論まで幅広いです。
ゲーテは常に偉大なものに対しては素直だったそうですが、斎藤氏もそうあろうとしているのでしょうか。
教養主義を過去のものとする風潮に対する氏の考えには共感できる部分もあるのですが、大芸術家や文豪から、スポーツ選手、歌手、漫画家まで、多方面から引いてきた“いい話”が満載で、誰でもこの人のヒーローになっちゃうのかな、という感じもしました。
個々にはナルホドと思う箇所もありました。「豊かなものとの距離」の章で、憧れの対象と付かず離れずの距離を置くことを説いていることに納得!
ゲーテはシェイクピアの作品との付き合い方を「年1回」という言い方で、「適当にしておけ」と言っているそうです。
著者自身の経験からか、藤沢周平の作品の読み易さをから、そこにハマって他のものを読まなくなると、世界が広がらなくなるとも言っています。
ただし、変に固まってしまうことを戒めると同時に大人になり切れないことの弊害を説くというように、「すべてを語って何も語らず」みたいな感じもして、文章自体が平易でスラスラ読める分、読後の印象がやや薄いものになった気がします。
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【144】 × 伊東 明 『「人望」とはスキルである』 (2003/07 カッパ・ブックス) ★★
「●ビジネス一般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【145】 齋藤 孝 『座右のゲーテ』
「人望」を得ようとするその「心根」が部下に嫌われるのではないだろうか。
『「人望」とはスキルである』 カッパ・ブックス
「人望=スキル」であるならば、人事考課の要素に「人望」というものがあってもおかしくないでしょう。測定可能なはずだから。
実際には測定困難であるにしても、業績評価は別として、管理職登用に際して「品格」や「識見」を考課要素に入れている企業はあります。いわゆるヒューマン・スキルの1つとして。
ただし、習熟やトレーニングによって高められるのは、「品格」や「識見」であって、「人望」はそれに付随するものであるはず(ただし、両者の間に不確定要素がいっぱい入るわけですが)。
そうすると「人望=スキル」というのは、かなりユニークな論ではないか―。
そう思って本書を手にしたところ、何のことはない、「人望」は「スキル」で磨くことができるということを言っているに過ぎないことがすぐにわかりました(この段階でも「人望」という言葉を「品格」や「識見」と誤って使っているわけですが)。
内容的には、上司が部下を「ほめる」「しかる」「動かす」「励ます」といった際の基本的なテクニックを説いたコーチングの本と言えるかと思いますが、ケーススタディごとにわかりやすく解説されていて、実際この本は結構売れたようです。
しかし、とり上げられている事例があまりにパターン化されたもので、部下に対するお気楽な性善説的見方は、現場を外からしか見ることがない「心理屋さん」のものという気がしました。
コーチング・テキストとしても組織心理学の本としてもやや底が浅く、いわゆる「ビジネス一般書」レベルだと感じました。
とにかく、部下は、組織目標に向かって自分が働きやすくしてくれる上司についていくのであって、上司本人が「人望」を得るためにする行為については、その「心根」を嫌うのが普通ではないかと思うのですが、最初の用語の定義でひかかってしまった自分の読み方が、やや斜に構えたものになってしまったのかも知れません。
【2007年文庫化〔 ソフトバンク クリエイティブ 〕】
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【143】 ○ 加賀見 俊夫 『海を超える想像力―東京ディズニーリゾート誕生の物語』 (2003/03 講談社) ★★★★
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〈映画〉から〈海〉へ、〈カリブ海〉から〈地中海〉へ。プロジェクの交渉過程やディズニーのこだわりがわかり、興味深い。
『海を超える想像力―東京ディズニーリゾート誕生の物語』 (2003/03 講談社)
オリエンタルランド(OLC)社長が語るディズニーリゾートの誕生まで、さらに誕生後20年の歴史で、巨大プロジェクトがどういう形で進行したのかということだけでなく、「顧客満足」を念頭に置いたディズニーの〈細部へのこだわり〉がわかるという点でも面白かったです。
'60年の会社設立当時は、浦安沖埋立て事業が当面の仕事で(だから社名“ランド”と付いている)、そこに商業・住宅・レジャー施設を誘致して活用しようという漠たる計画しか無かったわけで、その時にディズニーランド誘致を構想した高橋政知という人がやはりスゴイ。
開業後も「テーマパークは生き物であり、進化を止めたとき老化が始まる」と言う通り、様々なプロジェクトが常に生起しているのがわかり、著者が社長となり陣頭指揮したディズニーシー開業の秘話は興味深く、とりわけ、ライセンシーのOLCとライセンサーのディズニーの交渉過程は、外国人と交渉することがあるビジネスパーソンなどには参考になる部分が多いのでないでしょうか。
「第2パーク」構想でディズニー側が最初に示したプランは、MGM(映画)だったんですね。でも、日本人は米国人ほど映画文化に執着は無く、そこで〈シー(海)〉になった―。
〈シー〉と決まってからも、相手は〈カリブ海〉をイメージしているけれど、日本人が憧憬を抱くのはむしろ〈地中海〉で、入り口のアイコンも、米国側は〈灯台〉を想定していたけれど、それだと日本ではウェットな世界になってしまうので〈地球〉になった―、そうした文化的修正の過程も興味深いです。
〈シー〉や〈イクスピアリ〉にどれだけOLC側の独自姿勢が生かされているかと宣伝気味の嫌いはあり、著者が経済同友会の副代表にもなったように経営は一定の安定期にあるかと思いますが、まだ投資負債は残っているはずで、さらに大衆に近いビジネスだけに利用者サイドからも毀誉褒貶はあります(個人的にも、平日に関わらず、ポップコーンを買うだけで30分以上も並ぶような状況は何とかして欲しい!)。
とは言え、そうしたことを抜きにして、プロジェクト物語としてよく纏まっていて(ライターがいい?)、〈シー〉開業前に亡くなったランド設立の立役者・高橋氏の遺体を乗せた霊柩車が夜のパーク内に入っていく最後のところには、ちょっとグッときました。
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【142】 × 森永 卓郎 『年収300万円時代を生き抜く経済学』 (2003/02 光文社) ★☆
「●ビジネス一般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【143】 加賀見 俊夫 『海を超える想像力』
こんな人に“分相応”を説かれたくはないなあ、という気もしてしまう。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 給料半減が現実化する社会で「豊かな」ライフスタイルを確立する!』 (2003/02 光文社)
冒頭で小泉内閣の経済政策を批判し、デフレへの対応を誤ったゆえに雇用創出にも失敗し、失業の拡大を招いたとしています。
デフレは止まらず、このままでは日本に新たな階級社会が作られ、所得は3階層に分かれると。
つまり、1億円以上稼ぐ一部の金持ちと年収300万円くらいのサラリーマンと年収100万円台のフリーター的労働者に。最初の大金持ちになれるのは1%ぐらいしかいないから、金持ちになる幻想は捨てて、なんとか真ん中の年収300万円の層に留まり、その中でどう生きるべきかを考えよと。
アメリカンドリーム的な成功を目指して必死で働くよりも、ヨーロッパの一般市民階級のように人生を楽しむことを優先せよと、発想の転換を促しています。
これは大企業などに長年勤め、すでに子どもの教育も持ち家のローン終わり、なおかつ一定の蓄えがあり、老後の公的年金や上乗せとしての企業年金が保証されている人ならば納得するかもしれませんが、不況やリストラで年収300万円を稼ぐのも大変な立場にいる人にとってはどうでしょうか。
アルゼンチンの楽天的な国民性をあげ、都道府県別の自殺率と失業率の逆相関を「ラテン指数」と名付けたりしていますが(沖縄県が最も高い)、最後は気の持ちようみたいな結論は、著者自身のお気楽な精神論にすぎないのではないかとも思えます。
自分は車を外車からカローラにし、その後軽自動車に変えたとか言っても、一方で、本書がベストセラーになるや「年収300万円時代」とタイトルに入った本を何冊も書いている―(誰かが計算してたが、本書の印税だけで軽く3千万円を超えるとか)。
こんな人に“分相応”を説かれたくはないなあ、という気もしてしまいます。
大体、『〈非婚〉のすすめ』('97年/講談社現代新書)などという本を書きながら、自分はしっかり結婚している、そういう人なので、書いてあることにあまり踊らされない方がいいかも。
【2005年新版文庫化[知恵の森文庫]】
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【141】 ◎ トム・コネラン 『ディズニー7つの法則―奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念』 (1997/11 日経BP社) ★★★★☆
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キャスト・細部への配慮・こだわりが顧客満足へ。楽しく読めて感動も。
『ディズニー7つの法則―奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念』 (1997/11 日経BP社)
「顧客満足」コンサルタントによる本書は、「ディズニーのために書かれたものではない」ということですが、読みやすい小説仕立て、各方面5人のビジネス人男女が、ディズニー・ワールドの探検ツアーを通してその成功の秘密を体感していく様が描かれています。
来園者を〈ゲスト〉、従業員を〈キャスト〉と呼ぶディズニーの経営姿勢が、どういった形でテーマパークに生かされているかがよくわかり、「顧客満足」とは何かということをテーマとした本ですが、ビジネス全般に通じる示唆を含んでいて、また読み物として感動させられる箇所も多くありました。
ディズニー・ワールドには行ったことはないけれど東京ディズニー・リゾートは定期的に家族と訪れていて、“順番待ち担当”の身にどうしても目につくのは〈キャスト〉の仕事ぶりで、いつもスゴイなあと思って見ています。
「全員がゴミを拾う」ことが〈キャスト〉に徹底しているのはよく知られているところですが、「金箔」の話など、テーマパークの「細部へのこだわり」が新たにわかり、利用者の立場から読んでも興味深く楽しいものです。
そして、それらが〈ゲスト〉のためだけでなく、むしろ〈キャスト〉へ向けてのメッセージであるという点が、個人的には最も興味深く思われ(“隠れミッキー”なども元は内輪受けからスタートしているようです)、そうした配慮やこだわりが、結果的には〈ゲスト〉の満足度にもつながっていくのだということがよくわかりました。
原題はタイトルが“Inside The Magic Kingdom”、サブタイトルが“Seven Keys to Disney's Success”で、こちらの方が自分にはしっくりきました。
邦題は「7つの法則(Seven Keys to Disney's Success)」の方が本題にきているためにセミナー本っぽい感じがしますが、セミナー本としても使えるように「7つの法則」に纏めているのであり、まず読み物として読んで、感動した部分があれば自らの心に刻むようにすればいいのではないかと思います。
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【140】 ○ ロジャー・エンリコ/ジェシー・コーンブルース 『コーラ戦争に勝った!―ペプシ社長が明かすマーケティングのすべて』 (1987/05 新潮文庫) ★★★★
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ボードの一員としてその場にいるような臨場感。コーラ戦争は終わっていない。
『コーラ戦争に勝った!』 新潮文庫
Roger A. Enrico, PepsiCo
後にペプシコ社会長となるロジャー・エンリコは、コーラ業界において、'70年代から激しさを増して「コーラ戦争」とまで呼ばれたコカ・コーラとの覇権争いの最中にペプシコ社社長に就任しますが、本書は彼が、その挑戦意欲・決断力とリーダーシップ、さらには徹底したマーティング戦 略により、シェアの奪回を果たした過程が描かれています。
今もって示唆に富む内容ですが、翻訳がいいのか(常盤新平氏訳)、読んでいて自分がペプシコのボードの一員としてその場にいるような臨場感があり、読み物としても楽しめました
本書冒頭にあるように、敗れたコカ・コーラ社は方針転換し、'85年に〈ニュー・コーク〉を発表しますがこれは不評に終わり、僅か90日で元の味に戻しています(ただし、素早い決断をしたゴイズエタ会長は、後にその素早さゆえに名経営者と言われた)。
マイケル・ジャクソンのCM起用が本書終盤のヤマで、契約を結ぶことが出来た時点でエンリコはペプシの勝利を確信したフシがありますが、当時のマイケルは、大衆の好悪が割れるようなキャラクターイメージではなく、圧倒的スーパースターだったということでしょう。
CMによるイメージ戦略の威力は、コーラ以上に味そのものの識別が微妙なビールの業界における、アサヒスーパードライの成功を想起させます(飲料商品というのは多分にイメージ商品なのです)。
日本でのシェアは圧倒的にコカ・コーラの方が勝っているので、その点では本書の内容は少しピンとこない部分もあるかも知れません。
その後ペプシコは、日本での事業をサントリーに売却していますが、マーケティングやR&Dと原液供給はアメリカ本社主導で行う〈ボトリングシステム〉を維持していました。
しかし日本でのシェアの伸び悩みは続き、ついに〈完全ボトリングシステム〉の方針を変更し、サントリー主導で開発した日本向けブランド「ペプシネックス」を'06年に発売しています。
「コーラ戦争」はまだまだ続いているという感じです。
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2006年08月16日
【139】 ○ ジョン・デロリアン/J・パトリック・ライト 『晴れた日にはGMが見える ―世界最大企業の内幕』 (1980/11 ダイヤモンド社) ★★★★
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保守的で内向きなGM役員の中で、異彩を放った競争心と挑戦意欲。
『晴れた日にはGMが見える―世界最大企業の内幕』 新潮文庫
ジョン・Z(ザッカリー)・デロリアン (1925-2005/享年80)
スピルバーグの映画「バック・トウ・ザ・フューチャー」でお馴染みのクルマ〈デロリアン〉を開発したジョン・デロリアンの話で、彼がGM史上最年少で役員になりながらも、経営陣と対立して同社を辞すまでが描かれています(本書はライターを使ってますが、彼自身は後に、GM退職後の〈デロリアン〉開発のことなども含めた自筆自伝を書いています)。
暴露本とも言え、その分、経営書と言うよりはビジネス書、ビジネス書と言うよりは小説のように面白く読めます。
私企業でも大きくなると役所と変わらぬ官僚主義が横行することがよくわかり、それに驚き、怒り、呆れるデロリアン氏に共感しますが、彼自身も自分の考えを通す上で強引過ぎる点は無かったのかという疑問も湧き、この点でアメリカでも本書に対する評価は割れるようです。
それでも、大企業の役員が保守的で内向きな視点しか持てない傾向に陥りがちなのがよくわかって興味深く、これは'70年代のGM社内の話ですが、今でも実際にGMは大企業病に喘いでいるわけです。
フォード社で社長を務めながらもオ-ナー一族と対立し、クライスラー社の社長に転じたリー・アイアコッカと比べると、アメリカの自動車メーカーのトップクラスで異彩を放つ人物が持つ競争心と挑戦意欲に富んだ気質という点では似ていますが、デロリアンはアイアコッカ以上に車づくりの方にこだわった感じがします。
むしろコッポラの映画にもなったブレストン・タッカーに近いかも。ただし、〈タッカー〉は約50台しか生産されませんでしたが、〈デロリアン(DMC‐12)〉は約9,000台生産されています。

しかし独立後のデロリアンは、ジウジアローのような超一流デザイナーとの出会いはありましたが、本田宗一郎を補佐した藤沢武夫のような経営補佐に恵まれませんでした。
そのことは、本書を読んで窺える彼の性格からも何となく感じられ、会社も倒産し、'05年に80歳でひっそりと亡くなりました(でも、デロリアンの名は残った!)。
【1986年文庫化[新潮文庫]】
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【138】 △ 金井 壽宏 『組織変革のビジョン』 (2004/08 光文社新書) ★★★
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短時間でビジョン、ミッション、バリューなどの概念整理はできるが…。
『組織変革のビジョン』 光文社新書
金井壽宏 氏 (略歴下記)
大學教授であり、教育研修コンサルタントでもある著者によって書かれた本書は、働く個々人に対し「ビジョン」、「ミッション」、「バリュー」を創ることで、生きていく方向性や指針が見つかるとし、とりわけビジョニング(自分自身のマイビジョンを創ること)が自己改革をもたらすと説いていますが、併せて、企業を活性化するためには「組織ビジョン」と「個人ビジョン」の相乗効果が大切であると言っていて、組織論の書としても読めます。
「経営理念」の重要性というのがわかっていても、企業によっては額縁に入れて飾ってあるだけで形骸化していたりして、何でも横文字が良いというわけではありませんが、自社の「ビジョン」「ミッション」「バリュー」はそれぞれ何であるかという切り口で改めて問い直してみるということも、創造的組織改革への道筋を探る上で無駄ではないと思います。
「ビジョン」は長期のもの、「ミッション」は短期のもの、「バリュー」は現状からビジョンへ至る過程での価値観・行動規範であるという概念区分がスッキリしていてわかりやすく、リーダーシップ論などのマネジメント理論も紹介されています。
短時間で概念整理するには良い本だと思いますが、最終章の組織メンバーがCOEになったつもりで組織変革を考える「バーチャルCEO」 や「忌憚のない議論が大切」といった提案部分が、独自性が弱かったり(ジュニア・ボードという手法は以前からあります)、抽象的だったりするのがやや物足りなかったです(基本的にはやはり個々人に向けた啓蒙書という感じでしょうか)。
《読書MEMO》
●ジョン・P・コッター『リーダーシップ論』でマネジメントよりリーダーシップが大事、コーチングによる組織活性化が必要(56p)
★コッターのリーダーシップの定義…①方向設定 ②人的連携 ③動機付けと鼓舞
●ジェームズ・C・コリンズ『ビジョナリーカンパニー』 成功の鍵はビジョン(110p)
●好き嫌いチャートと強み弱みチャート(116p)
●ルイス・ガースナー(ナビスコ会長→IBMのCEO)『巨象も踊る』 顧客志向へ変革(149p)
_________________________________________________
金井壽宏 (神戸大学大学院経営学研究科教授)
1954年生まれ。兵庫県神戸市出身。京都大学教育学部卒業。神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学でPh.D(マネジメント)、神戸大学で博士(経営学)を取得。現在はリーダーシップ、モティベーション、キャリア・ダイナミクスなどのテーマを中心に、個人の創造性を生かす組織・管理のあり方について研究。
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【137】 △ 塚田 修 『ビジョニング―あなたのビジョンは今、組織で活きていますか。』 (2004/04 日経BPクリエーティブ ) ★★★
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短時間でビジョン、ミッション、バリューなどの概念整理はできるが…。
『ビジョニング―あなたのビジョンは今、組織で活きていますか。』 (2004/04 日経BPクリエーティブ )
教育研修コンサルタントによって書かれた本書は、働く個々人に対し「ビジョン」、「ミッション」、「バリュー」を創ることで、生きていく方向性や指針が見つかるとし、とりわけビジョニング(自分自身のマイビジョンを創ること)が自己改革をもたらすと説いていますが、併せて、企業を活性化するためには「組織ビジョン」と「個人ビジョン」の相乗効果が大切であると言っていて、組織論の書としても読めます。
「経営理念」の重要性というのがわかっていても、企業によっては額縁に入れて飾ってあるだけで形骸化していたりして、何でも横文字が良いというわけではありませんが、自社の「ビジョン」「ミッション」「バリュー」はそれぞれ何であるかという切り口で改めて問い直してみるということも、創造的組織改革への道筋を探る上で無駄ではないと思います。
「ビジョン」は長期のもの、「ミッション」は短期のもの、「バリュー」は現状からビジョンへ至る過程での価値観・行動規範であるという概念区分がスッキリしていてわかりやすく、リーダーシップ論などのマネジメント理論も紹介されています。
短時間で概念整理するには良い本だと思いますが、最終章の組織メンバーがCOEになったつもりで組織変革を考える「バーチャルCEO」 や「忌憚のない議論が大切」といった提案部分が、独自性が弱かったり(ジュニア・ボードという手法は以前からあります)、抽象的だったりするのがやや物足りなかったです(基本的にはやはり個々人に向けた啓蒙書という感じでしょうか)。
《読書MEMO》
●ジョン・P・コッター『リーダーシップ論』でマネジメントよりリーダーシップが大事、コーチングによる組織活性化が必要(56p)
★コッターのリーダーシップの定義…①方向設定 ②人的連携 ③動機付けと鼓舞
●ジェームズ・C・コリンズ『ビジョナリーカンパニー』 成功の鍵はビジョン(110p)
●好き嫌いチャートと強み弱みチャート(116p)
●ルイス・ガースナー(ナビスコ会長→IBMのCEO)『巨象も踊る』 顧客志向へ変革(149p)
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【136】 △ 太田 肇 『ホンネで動かす組織論』 (2004/04 ちくま新書) ★★★
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企業に見られる組織心理のダイナミズムを解き明かしてはいるが…。
『ホンネで動かす組織論』 ちくま新書
太田 肇 氏
本書は3部構成になっていて、第1部「なぜ、やる気がでないのか」、第2部「ホンネの抑圧が組織を滅ぼす」において企業や組織におけるタテマエとホンネの乖離とその弊害を説き、第3部で「ホンネからの組織づくり」、つまり旧来の「全社一丸」的な“直接統合”ではなく、「個人が組織の一員でありながら、組織と同じ目標を追求する必要はない」という“間接統合”の考え方を提唱しています。
組織における人の行動や人間関係についてのさまざまな事例やエピソードには非常に頷かされるものが多く、著者が一般企業などで見られる組織心理のダイナミズムに精通していることがわかります(さすがサラリーマン経験者!)。
一方、提案部分の方は、「内発的動機づけ」(高橋伸夫『虚妄の成果主義』などでも強調されていましたが)など仕事の「面白さ」を重視しすぎるのを戒め、むしろ「目立ちたい」といった承認願望など「健全な利己心」をベースに動機づけを図ることを提唱しています。
全体を通して読みやすくスラスラと読めてしまいますが、「タテマエ・ホンネ論」というのは意外と、どこまでがタテマエでどこまでがホンネなのかわかりにくく、またタテマエがすべて弊害とは言い切れない部分もあり、その点本書は、やや問題を単純化しすぎた「タテマエ・ホンネ論」になっているのも否めないのではないかと思いました。
《読書MEMO》
●いかに会社に貢献するかよりも、いかに自分が評価されるかが関心事(48p)
●有給休暇の権利を行使しないことは、サービス残業と同じように、やる気をアピールする手段になる。(54p)
●やる気をみせるためのファザード(演技)は組織にとっても社員にとっても有害でこそあれ何の価値も無い、一種の病理現象(中略)。演技を続けるうちにタテマエがホンネに近づくという奇妙な現象が起きている(57p)
●いくら会社が情報を共有するように呼びかけても、その価値に見合う対価が得られない限り、積極的に情報を出そうとはしなくなる。(67p)
●私用を優先させたければ、仕事上の理由を装うことが必要になる。(94p)
●「私」より「公」が優先される組織では、個人はホンネを隠そうとする(98p)
●タテマエの行使を控える会社や管理者に対し、社員は協力的な姿勢や打算を超えた貢献によって報いようとする。(120p)
投稿者 wadamy : 23:02 | コメント (0) | トラックバック
【135】 ○ 橋本 治 『上司は思いつきでものを言う』 (2004/04 集英社新書) ★★★☆
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「組織心理学」から「組織論」、「文化社会学」的な話へと展開。
『上司は思いつきでものを言う』 集英社新書
このタイトルに、誰もが自分の会社のことだと思うのではないでしょうか。著者独特のやや回りくどい言い回しも、本書に関しては「そうだ、そうだ」というカタルシスの方が勝り、それほど気になりませんでした。
「埴輪の製造販売」会社での会議の例え話で、「埋葬品でなく美術品としての埴輪を」という部下の提案に対し、上司の「いっそ、ウチもコンビニをやろう」というトンチンカン発言に会社の決定が靡いていく様は、企業の中にある「ありふれた不条理」をうまく描いていると思いました。
著者によれば、結局、上司とは現場という“故郷”を離れ、管理職という“都会”に住む先輩で、田舎の青年団の後輩(部下)が持ってきた村おこしプラン(企画)に対し、故郷をバカにしている先輩はアラ探しをし、故郷を愛し過ぎている先輩は、自分も青年団の一員になったような錯覚に陥り、いずれの場合も「思いつきでものを言う」のであると。
「組織心理学」の話かと思い読み進むと、日本の会社の下から上への流れがない組織的特徴を指摘する「組織論」そのものの話になり、さらに中国から伝わった儒教が日本的変容を遂げて、官僚や企業組織の中にどのように反映されたかという、「文化社会学」的な話になってきます。
確かに本書については、前書きにサラリーマン社会の欠点を書こうとしたとあるように、そのあたりが著者の最も言いたかったことなのかも知れませんが、こうした歴史文化論的分析に対しては、賛否が割れるとかも知れません。
一方、こうした困った上司への対処法としては、その場で「ええーっ」と呆れればいいと。
個人的には、このやり方自体にさほど現実味を感じず(実践している人はいるかも知れないが)、これらも含めて、そういう下からの声が無さ過ぎるのだという著者の批判の一形態としてこれを捉えた次第です。
投稿者 wadamy : 22:48 | コメント (0) | トラックバック
【134】 ○ 沼上 幹 『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』 (2003/03 ちくま新書) ★★★★
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目新しさは少ないが、組織腐敗のメカニズムを旨く解き明かしている。
『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』 ちくま新書
硬そうなタイトルですが、ビジネス誌「プレジデント」に連載したエッセイがベースになっていて、文章が平易でスラスラ読めます。
冒頭で「組織設計の基本は官僚制である」と言っているのが、組織はフラットな方がいいという昨今の通説に対峙して一見ユニークですが、読めばある意味至極当然のことに気づきます。
組織論の入門書としてよく紹介される本で、体系的に整理されているわけではありませんが、書かれていること1つ1つの内容はオーソドックスです(目新しさは少ないとも言えるかも)。
マズローの欲求階層説について、自己実現欲求もさることながら、承認・尊厳欲求の充足が大切だということなども、かなり以前から一般に指摘されていることです。
むしろ、組織にいる人に働く組織心理の傾向の分析や説明には、誰もが思い当たるものが多くあるのではないかと思われます(まるで企業小説のように書かれていて、しかも現実味がある!)。
組織腐敗のメカニズムをうまく解き明かし、一応はその診断と処方も提示しているので、自分が関わっている組織の問題に引きつけて読むことができれば、問題解決の方向性やヒントが見えてくるかもしれず、それだけ本書を読む価値は出てくるかと思います。
《読書MEMO》
●組織構造自体は何も解決しない(62p)ムチャクチャな組織に問題があるとしても、組織変革すれば全面的に問題が解決するわけではない(62p)
●(マズローの欲求段階説について)自己実現欲求の追求という方向が美しく、安上がりであるゆえに、多くの人がそこに目を奪われ、所属・愛情欲求や承認・尊厳欲求などを忘れてしまう(87p)
●エリートとノン・エリートの間に、当たり前のことを当たり前に黙々と処理してくれる信頼できる中間層がいないとエリート・システムもうまく機能しない(120p)
●全方位前面戦争型の戦略計画などは、何も考えていない、何も決めていない明確な徴候(132p)
●「厄介者の権力」…育ちの良い優等生の「大人」たちが組織内で多数になると、厄介者の言うことがかなり理不尽であっても、組織として通してしまう場合が出てくる(144p)
●「バランス感覚のある宦官」…(スキャンダルで)密告者が権力を握るのではない。根性のない優等生たちが恐怖にとらわれ、その恐怖心を気持ちよく解消する「美しい言い訳」を創り上げる宦官が権力を握る(171p)
●「キツネの権力」…公組織と業者という二つの世界をつなぐ唯一の橋であることを権力基盤とした、トラの威を借る「キツネの権力」が生み出される。天下った人が二つの組織の間をいろいろかき回す。(201p)
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【133】 △ ジェフリー・A・クレイムズ 『ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件―GEを最強企業に導いた人材輩出の秘密』 (2005/11 プレジデント社) ★★★
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Energy(情熱)、Energize(元気づけ)、Edge(決断力)、Execute(実行力)。
『ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件』 (2005/11 プレジデント社)
本書は、ウェルチのリーダーシップ論の成り立ち及び展開と、それに沿って彼がGEで行った経営改革や人材育成戦略について、識者の評価を交えながら紹介し、またそのDNAを受け継いだ経営者たちはどうであったかが書かれています。
彼の言う「リーダーシップ4条件」とは、「Energy(エネルギーまたは情熱)、Energize(元気づける)、Edge(決断力)、Execute(実行力)」ですが、CEO就任当時は「頭脳、心、ガッツ」という原初モデルだったというのが面白い(ウェルチ自身としては整合性のとれたものだったが、人に伝わりにくかった?)。
また、マネジャーを、タイプA「価値観に忠実で成果を上げる」、タイプB「価値観に忠実だが必ずしも成果を上げるとは限らない」、タイプC「価値観に忠実ではないが成果を上げる可能性がある」の3タイプに分け、タイプBやCをタイプAに変身させるのは困難で、試みる価値もなく、将来的にはよその企業へ押し付けるべき人材だとしています。
もっともこれも1種の原初モデルで、後にもっと洗練された人材モデルを構築しますが、例えば「Edge(決断力)」のところで述べられている「差別化とは、極端であることだ。最も優れた者に報酬を与え、無能な者を排除する」といった成果主義や、「トップ20%、活力のある70%、底辺10%」という選別主義の考え方の基となっているように思えました。
有名な「ナンバー1、ナンバー2」戦略がドラッカーの影響を受けたものであることは知られていますが、「企業にカリスマは不要である」という考え方でもドラッカーと一致し、“カリスマ性”よりも“情熱”を重んじたというのは興味深いです。
個人的には、日本人の情緒的指向性としては、競争に価値を置く“情熱家”よりも、なんとなく共存を図る “カリスマ”の方へ向かいやすく、日本版ウェルチが誕生しにくい原因になっているのかも、と思った次第です。
翻訳モノの“ウェルチ本”は少なからずどれも、彼の自伝『ジャック・ウェルチ わが経営』('01年/日本経済新聞社)と被ってしまう傾向にあり(その“絶賛”姿勢も含め)、本書も本としては悪くはないのですが、もう少し「華々しい結果」より「苦労したプロセス」について書いて欲しかった気もします。
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【132】 × 米倉 誠一郎 『脱カリスマ時代のリーダー論』 (2005/06 NTT出版ライブラリーレゾナント) ★☆
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若い読者への啓蒙書? 物足りない内容で、浮つきムード、パクリ感も。
『脱カリスマ時代のリーダー論 NTT出版ライブラリーレゾナント011』
著者は一橋大学イノベーション研究センターの教授で、その著書や講演は比較的若い人に人気があうようでが、本書も「誰でもリーダーになれる」という考え方で貫かれていて、【第4章 ベンチャーにおけるリーダー】とあるところなどからも、起業などを目指す若い読者を対象にした啓蒙書という感じでしょうか。
リーダーは別にカリスマである必要は無く、リーダーシップは勉強すれば身につくものであり、必要なものは〈ビジョン構築能力〉、〈目標設定能力〉、〈組織設計能力〉、〈制度設計能力〉の4つである―という“持論”を軸に、様々なビジネスリーダーの決断や行動を紹介しながら論を進めています【第1章 戦略としてのリーダーシップ】。
さらに、「変革することこそリーダーの役割」であり【第2章 イノベーション・リーダー】、「部下はリーダーの“顧客”である」と考え、部下のデータを集めて部下とのコミュニケーションを図り、ミッションを刷り込むことでモチベーションを向上させよと【第3章 データベース・リーダーシップ】。
「経理や総務にも成果がある」(42p)など部分的には共感する箇所もあり、人材マネジメントやキャリアに関する諸理論なども紹介されてはいるもののさほど目新しさは無く、中間管理職なども読者層として想定しているようですが、ある程度ビジネスキャリアがある人には物足りない内容です。
有名経営者などの話を随所にちりばめ、「スローラーナーやアンカンファタブルな人材」「ディメンション・シフトのフェーズによってフレキシブルに…」(225p)などカタカナ用語を多用しているのも、むしろ浮ついた感じがします。
リーダーシップは必要だが、カリスマ的リーダーは不要であると言ったのはピーター・ドラッカーで、その考えに共感し「エッジ」ということを強調したのはジャック・ウェルチですが、文中にその名は出てこず、多少経営書を読んでいる人ならば、本書がタイトルから中身まで“パクリ”の連続であるという印象は払拭できないのではないでしょうか。
投稿者 wadamy : 22:14 | コメント (0) | トラックバック
【131】 ○ ジャン=フランソワ・マンゾーニ/他 『よい上司ほど部下をダメにする』 (2005/01 講談社) ★★★☆
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色眼鏡で部下を見がちな「失敗おぜん立て」上司に自省を促す書?
『よい上司ほど部下をダメにする』 (2005/01 講談社)
原題は“The Set-Up-To-Fail Syndrome”で、本文では「失敗おぜん立て症候群」と訳されていますが、この方がタイトルよりも内容を端的に表しているかと思います。
つまり、マネージャー(上司)というものは部下に対してレッテルを貼りがちで、いったん「できない部下」というレッテルを貼ると、部下の自信を平気で傷つけたり余計なアドバイスをしたりし、また頻繁に報告を求め、細かいチェックを入れるため、ますますその部下のヤル気を削ぎ、自主性を抑えてしまいがちであり、いわば「失敗のおぜん立て」をしているようなものであるという、その1点に絞って本書は書かれています。
「できない部下」に悩まされながらもどこかで「できないままでいて欲しい」という願望があり、自分が下してきた評価をいまさら変えたくないので、たまにいいことをしても認めようとしないなどの鋭い見方も示されていて、多くの管理者が読んで冷や汗をかく部分もあるかもしれません。
確かに「できない部下」をそのままにしておくことは、これからの人材難の時代に業務効率に多大のマイナスを及ぼすに違いないと思います。
本書で示されている解決の方法は、やはりコミュニケーションを密にするということで、このあたりにはあまり目新しさは感じませんが、言いたいことは「よい上司」より「尊敬される上司」になれ(メンターを志向せよ)ということでしょうか。
事例が数多くとり上げられているので、過去の経験を想起しつつ、自分に言い聞かせるように熟読すれば、上司にとってそれなりの自己変革(自省)効果はあるかも(そのためには先ず謙虚にならなければ)。
アメリカで80年代から今日まで数多く書かれている組織心理学の本のような印象を受けますが、この本を書いているのはフランスの経営大学院の教授らで、こういうテーマのもとに事例を集めて論理的に整理していくところはやはり欧米的な感じがします。
上司が色眼鏡で部下を見てしまいがちなものであるということは、日本も含め万国共通なんだなあという感想を持ちました。
投稿者 wadamy : 22:06 | コメント (0) | トラックバック
【130】 × 染谷 和巳 『上司が「鬼」とならねば部下は動かず』 (2000/07 プレジデント社) ★☆
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読みたい人が読めばいい本で、人に押しつけて読ませる本ではない。
『上司が「鬼」とならねば部下は動かず―強い上司、強い部下を作る、31の黄金律』 (プレジデント社)
単行本は'00年の刊行ですが、発売当初ベストセラーになり、'04年には“「新潮文庫」入り”を果たしています。
タイトルはキツイけれども、言っていることは、部下に甘い上司はダメだということもさることながら、上司は会社のことを常に考えろとか、変化を嫌ってはいけないとか、「対部下」よりも「対自分」の話が結構多いです。
上司は命令者であり、優れた上司とは優れた命令を出すことの出来る人であり、優れた命令とは、言語明瞭で、内容に過不足なく、論理的相手を納得させるものであると。
おっしゃるとおりですが、階層化された日本の企業で、管理職が単独で即断できることというのは、ある程度限られているのではという気もします。
上司としての威厳さえあれば、やさしい口調で命令しても、部下は従うと…。
上司の威厳って何?と思わず突っ込みたくなります。
結局のところ“硬軟取り揃え”で、帰結するところが“精神論”だったりして、社長に無理やりこの本を読まさせられた幹部とかは、かえって混乱するかもと、少し意地悪く考えたりもしました。
コーチングという観点から見れば、あまりに旧来の上司・部下という概念に囚われ過ぎていている感じがしましたが、著者がこのシリーズの近著で、「社員道」というものを「武士道」に模して説いているのを見ると、「ああ、むべなるかな」という感じです。
ところどころ良いことも書いてあり、書かれていることを全否定するつもりはないけれど、読みたい人が読めばいい本で、人に押しつけて読ませる類の本ではないと思います。
【2004年文庫化[新潮文庫]】
投稿者 wadamy : 22:00 | コメント (0) | トラックバック
【129】 ◎ ジョン・P・コッター 『リーダーシップ論―いま何をすべきか』 (1999/12 ダイヤモンド社) ★★★★★
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リーダーシップとマネジメントは別、組織変革を促すのは前者だと指摘。
『リーダーシップ論―いま何をすべきか』 (1999/12 ダイヤモンド社)
リーダーシップ論のバイブルとまで言われている本ですが、本書の要諦は序章にまとめられていて、つまり、リーダーシップとマネジメントは別物であり、
「マネジメントの仕事は、計画と予算を策定し、階層を活用して職務遂行に必要な人脈を構築し、コントロールによって任務をまっとうすること」
であるのに対し、
「リーダーとしての仕事は、ビジョンと戦略をつくりあげ、複雑ではあるが同じベクトルを持つ人脈を背景とした実行力を築き、社員のやる気を引き出すことでビジョンと戦略を遂行することである」
ということです(25p)。
著者は本書で、リーダーシップの新しいスタイルを述べているのではなく、リーダーシップの普遍的性質を解き明かそうとしているのですが、その1つに、マネジメントがオフィシャルな組織ラインを通じて実行されるのものであるのに対し、リーダーシップはインフォーマルな人的ネットワークを構築して組織に働きかけるものであると言っています。
これは著者が有能とされるゼネラル・マネジャーに対するインタビューと実地調査をまとめた『ザ・ゼネラル・マネジャー』('82年発表)で、その行動特性としての「人的ネットワーク構築」を指摘していたことと符合します(本書の最終章に同趣旨の要約あり)。
実際に組織を動かす人は、マネジメントとリーダーの仕事の両方をこなすわけですが、組織を変革しようとする際の原動力はリーダーシップにあり、変革が急がれる部門にマネジメント重視の管理者を置いても変革は進まないという著者の指摘は、経営者が社内ポストやプロジェクトへの人員配置を考える際のヒント乃至チェックポイントになるのではないでしょうか。
個人的には、リーダーというのは素質的なものもあると思うのでが、著者は、リーダーは育成できるものだとしています(ただし、同時に不足しているとも言っている)。
優れたリーダーというのはインフォーマルな人的ネットワークの構築ができ、そうした依存関係の中でパワーを発揮しているというのが著者の見方で、エンパワーメント(権限委譲)が次のリーダーを育成し、組織改革を促すという点は、大いに賛同するところです。
本書の序章には、コッター教授の有名な「成果に導く組織変革の8段階」なども示されていますが、本書に書かれていることは何れも実地で生かされなければ意味が無いわけで、まずリーダーシップとマネジメントの違いを日常において意識することから始めてみてはどうでしょうか。
投稿者 wadamy : 21:51 | コメント (0) | トラックバック
【128】 ○ ジョン・P・コッター 『ザ・ゼネラル・マネジャー―実力経営者の発想と行動』 (1984/03 ダイヤモンド社) ★★★★
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有能なゼネラル・マネジャーとは人的ネットワークの構築が上手い人?
『The General Managers』 ペーパーバック版
John P. Kotter
著者のジョン・コッターは、日本でもそのリーダーシップ論に関する著作などで知られるハーバード・ビジネススクールの組織行動論の教授ですが、本書は彼の邦訳された著作の中では比較的初期のもので(原著出版は'82年)、有能とされるゼネラル・マネジャー(GM)というものが、ビジネスの各場面においてどういった発想をし、行動をとっているのかを「精査」したものです。
様々な業種から15人のGMを選び、1人1人について、職歴・経歴・家族状況などは当然のことながら、どのような職業上の要求に応えることが求められるのか、パーソナリティや知識、対人関係はどうかなどをまず押さえたおいたうえで、職務への取り組み方はどうかをアジェンダ設定から時間の使い方まで、インタビューなどを通してこと細かく調べ、各人の間に見られる類似点や相似点を探っています。
面白いのは、そうして得られた結果が、有能とされるGMの人物像というのが、難敵を次々と倒す「カウボーイ」でもなければ、MBA資格 を有する切れ者テクノラートでもなく、人的ネットワークの構築活動に長け、ある意味そうした依存関係の中で行動しているということです(出版当初はかなりの意外性があったかも知れません)。
それにしても1人につき1ヶ月以上かけてこうしたフィールドリサーチをし、事実を積み上げて検証する、これがハーバード・ビジネススクール流であるというのが興味深いです。
要するに極めて帰納法的で、後に展開される彼のリーダーシップ論も、現場の生身のリーダーをしっかり見てきた経験の上に語るから、説得力があるのでしょう。
本書の翻訳には、後にキャリア行動を研究分野とする金井壽宏氏と、以降もコッターの著作に関わり続ける加護野忠夫氏の神戸大コンビが関わっていて(金井氏は当時まだ講師)、金井氏のずっと後の著書には、こうしたビジネス現場のフィールドリサーチを模したもの、例えば『仕事で「一皮むける」』('02年/光文社新書)などもあり、そうした点でも興味深かったです(本書の原著出版から20年後の話ですが、これが日米のこうした分野での研究の開きか)。
投稿者 wadamy : 21:42 | コメント (0) | トラックバック
【127】 △ ケネス・プランチャード/スペンサー・ジョンソン 『1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!』 (1983/01 ダイヤモンド社) ★★☆
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「チーズはどこへ消えた?」の著者らによる寓話風ビジネス書のはしり。
『1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!』
('00年/扶桑社)
'80年代にアメリカで出版され始めた行動科学的なマネジメント書は、日本にも多く翻訳輸入されましたが、'83年に邦訳出版された本書は、そうした日本での翻訳本ブームの端緒となったものです。
それまでもD・カーネギーの『人を動かす』('58年/創元社)などのロングセラーはあり、要点が極めて端的にまとめてある点では本書も同じですが(共に3項目にまとめてある)、本書は「1分間」というキャッチや145ページという薄さ、内容が寓話風になっているところなどが目新しかったのではないでしょうか。
かつてあるところに青年がいて、優れたマネジャーを探していた―みたいな設定は、その後も多くの本に模倣されたようです(デイル・ドーテン著『仕事は楽しいかね?』('01年/きこ書房)などもそれに近い)。
本書で言っているのは、部下マネジメントにおいて大切なのは、
1.目標設定
2.褒めること
3.叱ること
であり、褒めたり叱ったりするのは“人格”に対してではなく、相手の“行動”に対して行うべきだということではないかと思いますが、これが結構日本人の苦手とするところであり、逆に日本人にも受けた理由ではないかと思います。
本書を「座右の書」とする人も多いようですが、少し皮肉っぽく考えると、自分が本書に書かれていることを守れないかも知れないという不安が常にどこかにあるから、「座右の書」となりうるのではないかと思ったりもします。
ただ、そういう意味では、D・カーネギーの「人を動かす3原則」の方が、まだ「座右の銘」としてピンと来るものがあると言うか、個人的にはしっくりきました。
著者のK・プランチャード(心理学者)とS・ジョンソン(精神医学者)はその後も「1分間シリーズ」を続々と出し続け(「1分間ファザー」「1分間マザー」っていうのもありました)、『チーズはどこへ消えた?』(S・ジョンソン著/'00年/扶桑社)に至っては動物まで登場させて、物語の寓意を検討するディスカッションまで入れた手とり足とりの解説ぶりですが、アメリカ人ってだんだん子どもみたいになってきているのではと思いきや、日本でもこの「チーズ」本は結構売れました。
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【126】 ○ 森生 明 『会社の値段』 (2006/02 ちくま新書) ★★★★
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「敵対的M&A」=「悪いM&A」ということにはならないと。
『会社の値段』 ちくま新書
著者は、ハーバード・ロースクールで学び、外資系投資銀行などでM&A業務経験を持つM&Aアドバイザーで、企業価値評価の理論と実践について書いた『MBAバリュエーション』('01年/日経BP社)という著書もある人。
本書でも企業価値の具体的な算定方法に触れていて、前著に至る入門書ともとれますが、特徴的なのは、なぜ「会社に値段をつけるのか」という根源的問いを発し、「米国流」の〈株主至上主義〉の考え方の背景や本質を解説している点です。
一方で、日本で使われている「企業価値」という言葉に該当する英語は無いとして、その曖昧さを指摘しており、ライブドアのニッポン放送株事件を実例に引いたこの辺りの説明はわかりやすいものでした。
要するに日本では、誰にとっての「企業価値」なのかが曖昧であり、「すべてのステークホルダーにとっての企業価値」という日本的な表現を、著者は心情的には理解しながらも何も言っていないのと同じとし、ストレートに「株主価値」基準で「会社の値段」をきちんと算定すべきだというのがその主張で、そのことが社会・経済の混乱を防ぐことに繋がるのだと。
「敵対的M&A」に対する日本企業や日本人の抵抗感は強いけれども、ハゲタカファンドが暗躍する背後には、市場原理がうまく機能していないという国家や銀行に責を帰すべき問題もあり、また、ライブドア事件などを見てもわかる通り、株式市場における適正な情報開示や投資家の成熟ということも大事であり、ファンドばかりが悪者ではないということでしょうか。
著者の立場(企業買収のファシリテーター?)からすれば当然の論旨とも思え、また敵対的買収に対する防衛策を説いた他の本とは考え方も前提となる視座も異なるところですが、健全なM&Aとは本来は支配権の売買であって、経営者としての力量を競い合うのがM&Aの本質であり、「シナジー効果」など新たな価値を生むM&Aであれば、「敵対的M&A」だから悪いということにはならないということが、よくわかる本でした。
《読書MEMO》
●株式公開もM&Aも、会社を売るという意味では本質的に違いはない(15p)
●「企業価値を創造するのは、その企業活動に参加するすべての人である」という優等生的回答は何も解決しない(86p)→企業価値創造の担い手は経営者であり、その経営者の評価は株主や投資家が行う(90p)
●経営者は会社の値段を適正に反映した株価が市場でちゃんとつくように情報発信し、説明する努力を惜しむな(177p)
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【125】 ○ 宮崎 哲也 『これくらいは知っておきたい 図解でわかるM&A』 (2005/07 日本実業出版社) ★★★★
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一般社会人向けのM&Aの入門書として最適。刊行時の直近の話題も豊富。
『<これくらいは知っておきたい>図解でわかるM&A』 (2005/07 日本実業出版社)
本書は1項目を見開き2ページずつまとめ、右ページに必ず図解を配していますが、この図やイラストがそれぞれに本文内容のエッセ ンスをうまく表していて、理解の助けとなり、後で読み直すときも便利です。
なぜM&Aが行われるかその目的を示し、狙われやすい会社や、買収が実際にどのように進められ防衛策はどのようなものがあるのかを、事例をあげながら解説しています。
やはりライブドアとフジテレビを巡る話が、単独の事例としても、また様々な用語の解説の中にも多く出てきます。
そうしたものをうまく解説に取り入れているので、一般書としてはかなり広い範囲を網羅しているにもかかわらず身近な感覚で読めるのも特長です。
本書は'05年7月刊ですが、制御機器メーカーの「ニレコ」が計画していた新株予約権を活用したポイズン・ピル(毒薬条項)を裁判所が差し止めた('05年6月)といった本書出版直近の事例までカバーしていて、“時機”を捉えて発刊された本と言えます。
《読書MEMO》
●札束の脅迫、グリーンメール(114p)
●生え抜きがオーナー社長になるMBO(116p)
●相手のフンドシで相撲をとるLBO(118p)
●ポイズン・ピル(134p)
●企業を救うゴールデン・パラシュート、ティン・パラシュート(136p)
●白と黒の騎士、ホワイトナイト、ブラックナイト(138p)
●パックマン・ディフェンス(140p)
●焦土作戦、スコーチド・アース(142p)
●クラウン・ジュエル・ロックアップ(144p)
●サメよけ戦略、シャーク・リペラント(146p)
●株式の非公開、ゴーイング・プライベート(118p)
●委任状の争奪戦、プロキシ・ファイト(158p)
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【124】 △ 箭内 昇 『企業合併』 (2001/04 文春新書) ★★★
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面白さで言えば、ナビスコの事例が一番面白い。あとは通読でも。
『企業合併』 文春新書
『メガバンクの誤算』 ('02年/中公新書)
著者は元長銀執行役員で、放漫な経営陣を批判して銀行を辞し、コンサルタントに転じてた人で、『メガバンクの誤算-銀行復活は可能か』('02年/中公新書)などの著書もあります。
本書において、資本家や投資家の飽くなき欲望と、冷徹な資本の論理がぶつかり合うのが欧米の企業合併であるとすれば、日本のそれは、経営者の面子や旧財閥のしがらみ、行政の強引な介入などが絡んだ経済合理性の無い企業合併ばかりで、それでは経済の国際化がますます進むなかで、国際競争についてはいけなくなることを示唆しています。
前半3章でRJRナビスコ、タイムワーナー、スイス銀行といった海外の合併事例を、後半3章で三井物産・三菱商事の大合同、海運大再編、新日鉄など国内の事例を取り上げています。
読んで面白いのは海外のもので、とりわけRJRナビスコの、〈経営陣によるMBO〉vs.〈投資顧問会社によるLBO〉の対決劇と、その後フィリップ・モリスに買収されるまでの顛末を追った第1章の「タバコとビスケット」は、スケールの大きさと逆転に次ぐ逆転劇で引き込まれるように読めます。
LBO、ゴールデン・パラシュート、ベア・ハッグ、TOB、白馬の騎士といった要素がすべてこの章に盛り込まれていて、その用語が出てきたところで著者が簡潔な解説を挟んでいるため、今まであまりこうした用語に縁の無かった自分の頭にも、その意味がすんなり入ってきました。
ただ、後半の日本の合併劇は、著者自身が言うように“あまりドラマがない”もので、その狙いもスケールメリットを図るという一本調子なものばかり。
一応最後まで読みましたが、ナビスコの章だけじっくり読めば、あとは通読でよかったかも知れません。
投稿者 wadamy : 20:43 | コメント (0) | トラックバック
【123】 △ 森信 静治/他 『M&Aの戦略と法務―成功する事業・グループ再編の新手法』 (1999/04 日本経済新聞社) ★★☆
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入門書としてならば「図解雑学M&A」クラスで充分だったかも。
『M & A の戦略と法務 (新版)(2005年版)』
『図解雑学M&A』 (05年/ナツメ社)
M&Aの実務を中心に解説したもので、自分のレベルが『図解雑学M&A』('00年/ナツメ社)という入門書と併読という感じで選んだぐらいのレベルだったので、本書はやや難しかったし、「戦略」といっても、経営戦略としては抽象的なもので、具体的に詳しく述べられているのは「法務の戦略」ではないかと思ったりして…。
もちろん“法務の専門家ではない経営層や戦略部門にもわかりやすく”書いてあると言うように、M&Aの種類など丁寧に記されていますが、その先のノウハウについては、実際にM&Aの作業に入ると、法律や会計の専門家が担う部分がかなり含まれています。
新聞・ニュースなどで対等合併と言われているものも、法的には吸収合併がほとんどだそうですが、M&Aの実態は百社百様で、名称で括り切れない部分も多々あるかと思います(その意味では本書はむしろ、参考書として自らが対峙しているケースに当てはまる部分だけをを読むという使い方になるのでは)。
『M&Aの戦略と法務』も『図解雑学M&A』も共に、会社法改正に合わせて'05年に新版が出ていますが、企業内での法務の専門職ならばともかく、一般読者はまず「図解雑学シリーズ」クラスからのスタートでいいかも。
《読書MEMO》
●友好的M&Aの種類…①株式譲渡 ②新株引受 ③営業譲渡 ④合併
①~③は原則として取締役会決議、④は加えて総会の特別決議(2/3以上)要
●新株引受の種類…①第三者割当増資 ②転換社債・ワラント債引き受け
●合併の種類…①新設合併 ②吸収合併
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【122】 ○ 櫻井 稔 『内部告発と公益通報―会社のためか、社会のためか』 (2006/03 中公新書) ★★★★
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内部告発と公益通報の違い。新法の条文内容を検証、問題点も指摘。
『内部告発と公益通報―会社のためか、社会のためか』 中公新書
本書では、一般に言う〈内部告発〉と'06年4月施行の「公益通報者保護法」で言う〈公益通報〉は、どこが同じでどこが違うのかが、どのような場合が“保護”の対象になるのかなどが解説されています。
実際に起きた内部告発事件(エンロン・ワールドコム、牛肉偽装、警察公金不正流用、原発トラブル隠し、自動車クレーム隠しなど)の経緯が要領よく纏められていて、そうした事件を参照しながら、内部告発があった場合の企業側のとるべき対応手順などにも触れられています。
また、今後はより微妙なケースも起きると考えられ、告発のための内部資料の持ち出しなどにおいて、「目的は手段を正当化するか」という難問が浮上することを示唆し、実際に企業側が報復手段としての懲戒処分を行い、懲戒の有効無効を争う裁判で、地裁と高裁でまったく逆の判決が出たケースなどが紹介されていて、この問題はなかなか難しいなあと思いました。
さらにこれらを踏まえ、内部告発を行おうとする人への助言もなされています。
「公益通報者保護法」は、通報先に優先順位(内部→行政機関→マスコミ等)が定められていて、保護対象も労働者に限られている(派遣労働者や取引先労働者も保護対象に含むが、取引先事業主などは含まない)ことなどから、内部告発を抑制するのではとの批判も多い法律ですが、著者は “公益”という前向きのネーミングを評価し、冷静に条文内容を検証してその意図を汲むとともに、曖昧部分などの問題点も指摘しています。
著者は元労働基準監督官ですが、最後に、「日本の法律は守れるのか」という根本問題を、高速道路の制限速度やサービス残業を摘発する役所の残業の青天井ぶり(逆に残業しなくても残業代が“パー配分”されていたりもする)を例に提起し、もともとの法律が守れるかどうかの検証を欠いたコンプライアンスは成り立たないとしています。
このことに関連して、現代社会には“義憤”需要のようなものがあり(また、それに応えるマスコミなどの義憤産業もある)、カタルシスのための義憤では内部告発も公益通報も単に義憤劇で終わってしまうと警告していて、大いに考えさせられました。
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【121】 ○ 梅田 徹 『企業倫理をどう問うか―グローバル化時代のCSR』 (2006/01 NHKブックス) ★★★★
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企業のグローバル化とCSRの関係を指摘するなどした良書。
『企業倫理をどう問うか―グローバル化時代のCSR』 (2006/01 NHKブックス)
本書は、「企業の社会的責任」とは何か、「CSR」とは何か、そしてそれが「企業倫理」とどう関係しているかを読者に理解してもらい、読者が「行動」を起こすことを期待して書かれた本であるとのことで、「企業倫理」という言葉そのものの(字義的)考察は本書内では敢えてしていない、と冒頭で断ってあります。
しかし、新聞記事に見る「企業倫理」「企業の社会的責任」という言葉の使用頻度の過去推移分析がしてあり、それがなかなか興味深く、リクルート事件で「企業の社会的責任」という言葉の使われたのを最後に('88年)、その後の'90年代の企業不祥事では「企業倫理」という言葉が使われていて、それが'04年頃からそれに代わるように、また「企業の社会的責任」がよく使われているとのこと.。
'90年代終わり頃から使われ始めた「コンプライアンス」という語に「企業倫理」が吸収されていったフシもあるとのことですが、その理由やそうした変遷を経ての言葉の意味合いの変化なども分析もされています。
一方「CSR」の方も曖昧性を残す言葉ですが、発祥元の欧州ではボトムラインがきっちり定められているようです。
サブタイトルには「グローバル化」という言葉もありますが、特にグローバル企業の労働搾取や環境破壊問題が広く指摘されていて、国際企業が独裁政権と商取引の上で手を組んで、結果として環境破壊や人権侵害に間接的に関与する形になっていたり、あるいは、有名スポーツブランドのサッカーボールが、発展途上国の児童労働によって生産されていたりする―こうしたことをチェックする動きが海外のNGOなどにはあり、倫理基準(「CSR」)に抵触する製造・流通過程を経た商品は安くても買わない、そうしたことが最初に述べた「行動」するということに繋がるということです。
著者の真摯な問題意識に貫かれている良書ですが、海外の多国籍企業の問題に限らず、国内企業の「偽装請負」なども、まさに労働搾取との批判を避けて通れない問題ではないかと思いました。
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【120】 ○ 浜辺 陽一郎 『コンプライアンスの考え方―信頼される企業経営のために』 (2005/02 中公新書) ★★★★
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コンプライアンス=「法令遵守」という訳語は不完全であると指摘。
『コンプライアンスの考え方―信頼される企業経営のために』 中公新書
コンプライアンス=「法令遵守」、つまり「法令違反を犯さないこと」がコンプライアンスだと理解されがちですが、欧米で「コンプライアンス」と言えば、「法令遵守」だけでなく「企業倫理」も対象とするのが一般的であるとのこと。
では「経営倫理」「企業倫理」とは何なのか、また「コーポレート・ガバナンス」「CSR」「リスク・マネジメント」といったものとはどういう関係にあるのかを解説し、さらに「コンプライアンス」への取り組み方や、どこから始めてどこまでやるべきかなどが書かれています。
ただし全体としては、実務書と言うよりは、用語の定義的な話がかなりの比重を占め、これら外来語の背景にある法文化などにも触れていますが、何となく一般化した外来語が溢れる中、コンプライアンスの定義的位置づけを隣接概念と併せてを理解することも必要かと思われ、そうした意味では充実した解説がされている本です。
「コンプライアンスは大事なこと」と理解しつつも、形式主義に陥ったり、意識教育がなされていないことで起きる事故や悲劇を例に挙げながら、コンプライアンス・プログラム(長期的な視野に立って会社の健全な活動を促すための総合的なプログラム)への主体的な取り組みを訴えています。
自社に「コンプライアンス委員会」があるとすれば、まずメンバーがどのあたりまで「企業倫理」や「主体的取り組み」というものを意識しているか、「法令遵守」に汲々とし受身的になっていないか、本来のコンプライアンスの在り方との距離を測るうえでも、参考になるかと思います。
《読書MEMO》
●コンプライアンス=「法令遵守」という訳語は不完全、ややもすると誤ったとニュアンスを伝えてしまう危険性も(4p)
●「遵守」は最終的に個人→コンプライアンスの中心にあるのは「組織的な対応手法」(5p)
●コンプライアンスは法令だけでなく企業倫理(ビジネス・エシックス)も対象とする(7p)
●監査役がコンプライアンスの中心的な役割を担うと考えると、コンプライアンス・プログラムがカバーする領域が限定され、無理が生じる(監査役に業務執行権はなく、基本的には「適法性監査」をしていれば十分)(79p)
●コーポレート・ガバナンスの2つの狙い…1.コンプライアンス 2.経営パフォーマンス・業績向上(コーポレート・ガバナンスの一環としてコンプライアンスがある)(88p)
●CSR(corporate social responsibility)「企業の社会的責任」
・コンプライアンスもCSRも同じような価値観と狙いを持っている
・CSRはどちらかと言えば、ポジティブな目標を高く掲げ、「法的責任」よりも「社会的責任」に焦点をあてている(99p)。
● CSRは欧州でブーム、米国ではコンプライアンスが先行
● 法律の規制内容は何も変わっていないのに、その取締りが強化されるようになったものも少なくない(例えば、コンプライアンスの中で軽視されがちであった労働法の分野―サービス残業に対する塹壕手当の不払い解消に向けた厚生労働省の取り組み強化)(212p)
投稿者 wadamy : 18:23 | コメント (0) | トラックバック
【119】 ○ 岡本 吏郎 『会社にお金が残らない本当の理由』 (2003/12 フォレスト出版) ★★★☆
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人生論と「一般向け」の経営財務の話をミックスしたような感じ。
『会社にお金が残らない本当の理由』 (2003/12 フォレスト出版)
主に中小企業の経営者向けに書かれた本だと思いますが、タイトルの妙もあって?ベストセラーに。人生論と経営財務の話をミックスしたような感じなのも、広い読者層を得た一因かも。
有名経営者などではなく、若手の税理士の人が書いているというのも興味を引きますが、その著者の姿勢が、生き方において節制的で堅実、経営指南においても、上っ面に惑わされず実をとるという感じなのが面白い。
ポイントを絞ってわかりやすく書かれているため、財務部門以外にいる一般会社員にも気軽に読めて、これから起業しようとする人などにも参考になる部分はあるかと思います。
むしろ、当の経営者や現場の経理担当者の多くは、本書に書かれていている、決算書の作為性、耐用年数の現実との不整合、社会保険料の重さなどは、日常的に肌身に感じているはずのことで、「よくぞ言ってくれた」みたいな感じはあるかも知れませんが、耐用年数問題でも、会計上と税務上で使い分ける手法などは、既に本書以上の知識は頭にあるのではないでしょうか。
「合法的裏金」というような表現はいかがなものかと思いますが、役員の報酬や賞与については、中小企業(零細企業?)なりの考え方(=給与の中に貯蓄しておくという)を示していると思います。
この本に関して言えば、著者が属する「成功法則」本を“量産”しているグループの人たちが書いたものの中では、相対的にはマトモな方だと思います。
《読書MEMO》
●税金を取るために「耐用年数」は長くなっている-果たして4年もパソコンを使う人がどこにいるか(117p)
●本当のかっぱらいは「社会保険」(123p)-半分を会社が負担してくれていると思っているが、その分確実に給料は安くなっている
●決算書に潜むゾンビ(127p)-代表は「固定資産」。建物の耐用年数20年は長すぎ(価値が無いのに償却が終わっていない資産がある)
●「役員報酬」は合法的裏金(185p)-給与所得控除を受けるメリット。
投稿者 wadamy : 18:17 | コメント (0) | トラックバック
【118】 ○ 吉岡 憲章 『潰れない会社にするための12講座』 (2002/03 中公新書ラクレ) ★★★☆
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臨場感満載の倒産ドキュメント。倒産を防ぐには銀行から借りない?
『潰れない会社にするための12講座』 中公新書ラクレ
前半部分の「倒産ドキュメント」が、企業小説のような臨場感に溢れ、面白かったです。
著者の創業会社が上場会社の懐に入り、その上場会社が銀行の強制回収で破綻、創業会社も破産の憂き目に遭いますが、その際の銀行の身勝手な回収手口や債権者会議の様子などが、生々しく再現されています。
一方で、現実を直視しないトップがいて、その能天気ぶり、無責任ぶりは漫画チックでもあり、全体としては“悲喜劇”の様相さえ呈していています(もちろん、著者の言うように一番の被疑者は社員であり債権者であって、それらの人にとっては許せない話でしょうが)。
著者の奮闘で会社は何とか再建したものの、ここまでの記述は、ダメ社長と銀行に対する怨念に満ちていて、後半の「12講座」に入ってもやや怨念引き摺り気味で、一種のリベンジ・ファクターのようなものが、著者の経営コンサルタントとしてのモチベーションや自負に繋がっているのかも、と。
かつて自分が出た起業セミナーで、ある“倒産社長”が、「倒産しない秘訣は銀行からお金を借りないこと」とやや冗談めかして言ってましたが、著者の考え方も同じで、「手形支払いゼロ、銀行借入ゼロ」を目指し、銀行支配から脱却をせよと―。これは、経営基盤の弱い中小零細企業などでは特に言えることかも知れません。
著者は、そのための経営改革として、売り上げよりを利益重視し、経費を削減せよと説いています。
数字を示していますが、この辺りは業態や会社規模によって異なってくるでしょうが、方向性としては低成長期にほとんどの企業が考えたことで、著者の想定する短期間での荒療治が必要な状況であれば、最後は本書にもあるとおり、どうしても人件費の問題になってくるのでしょう。
思い切ったリストラができるか、正しい人材選別が可能か、といったことは、結局、トップの決断力から評価制度まで幅広く関連してくる問題で、うまくいかない会社というのはますます悪循環に陥るのだなあと、本書前半の話に思いが戻りました。
投稿者 wadamy : 18:08 | コメント (0) | トラックバック
【117】 ○ 大濱 裕 『超図解ビジネス キャッシュフロー戦略入門』 (2000/02 エクスメディア) ★★★★
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マネジメントの観点からの「活用方法」に力点を置いた入門参考書。
『カラーでわかるキャッシュフロー戦略入門』 (2000/02 エクスメディア)
本書は、「キャッシュフロー入門」というより、まさにタイトル通り、キャッシュフローを絡めた「会計戦略入門」という内容の本で、書かれたのが金融ビックバンから会計ビッグバンにかけての時期なので、特にそれらのこととの関連で、大競争時代のトータル・キャッシュフロー・マネジメントはどうあるべきか、という方向へ論旨が帰結するように構成されています。
キャッシュフローの入門書は数多くあり、経理・財務部門でキャッシュフロー算定などを実務として行う人はそちらの方をとりあえず参照した方が良いと思いますが、経理・財務部門以外の人などで(経理・財務部門の人でもいいのですが)、キャッシュフローの背景や構造、それが何を表すか、なぜ重要なのかを知りたい人にとっては、最初の1冊としてお薦めできる入門参考書ではないかと思います。
「作成方法」よりも、マネジメントの観点からの「活用方法」が書かれているとでも言うべきでしょうか。
(最終章などはほとんど、例の〈スター〉〈問題児〉〈負け犬〉〈金のなる木〉の4つのセルから成る「PPM分析」との関係で述べられている。)
「キャッシュフロー入門」の本に比べ「キャッシュフロー戦略」の本は、いきなり難解になるものが多いような気がしますが、この「超図解」シリーズは、もともと、エクセルやワードのマニュアル本を出しているシリーズです。
本書の体裁もそれらに沿ったものであり、ふんだんに図表を用い、かつオールカラーで見開きごとに1テーマであるため、読みやすいものとなっています(少なくとも、入り込みやすい。これは入門書として大事なことではないでしょうか)。
投稿者 wadamy : 16:41 | コメント (0) | トラックバック
【116】 △ 大沢 武志 『経営者の条件』 (2004/09 岩波新書) ★★★
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テキストとしてまとまっているが、もう少し面白いものを期待していた。
『経営者の条件』 岩波新書
本書ではまず、経営者を「オーナー経営者」と「サラリーマン経営者(専門経営者)」に区分し、実事例を挙げながらその特質を分析しています。
そのうえで、経営者の役割や求められる能力を、学者や経営者の言説に基づいて示し、日本的組織の中で「専門経営者」が果たしてきた役割やその限界を考察しています。
さらに後段では、多発する経営不祥事に触れ、経営者と企業倫理の問題を考察しています。
これらは、リクルート社の専務として、あの江副浩正という創業社長を「専門経営者」の立場から支えてきた著者ならではの流れであり考察であるかと思います。
HRR(リクルートの人事測定事業社)の初代社長でもあるということで面白いものを期待しましたが、本題である「条件」等については、ドラッカー、P・コッター、ジャック・ウェルチなどの言っていることをそのまま引いていて、著者自身の独創があるわけではなかったのが残念でした。
経営者能力のアセスメント手法(HRRのもの)の紹介などにその特徴が表れている程度です。
それでも、経営者の機能とは何かなどを再整理するうえでの“テキスト”としてのまとまりはあるかと思います。
セゾングループやダイエーグループのオーナーの挫折と「専門経営者」の奮闘に触れていますが、そのあたりをもっとドラマチックに書いたら面白いかとも思うけれど、そうしたら「新書」ではなく「小説」になってしまうのかも。
投稿者 wadamy : 16:35 | コメント (0) | トラックバック
【115】 △ ジェフリー・A・クレイムズ 『ビジネスを変えた7人の知恵者』 (2003/12 角川書店) ★★★
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有名経営者の本などに読み進むには手頃な手引きになるかも。
『ビジネスを変えた7人の知恵者』 (2003/12 角川書店)
経済・経営ジャーナリストである著者によると、米国は'90年代終わりから'00年にかけてエンロン事件などの企業不祥事により、大物経営者というのが何か胡散臭いイメージで見られるようになり、あのジャック・ウェルチに対してさえも、不倫騒動や法外な退職金に対する批判があるとのことです。
しかし、だからと言って、かつて企業の危機を乗り越えた天才的な経営者たちが残した変革の偉業まで否定するのは間違いで、彼らがどのように考え、ピンチをチャンスに変えたのか、その戦略的思考を今一度検証し整理してそこから学ぶというのが、本書の趣旨です(原題は“What the Best CEOs Know”)。
取り上げられている7人のCEO(本書出版時には、ほとんどがその職を辞している)は、
1.デルコンピュータのマイケル・デル
2.GEのジャック・ウェルチ
3.IBMのルー・ガースナー
4.インテルのアンディ・グローブ
5.マイクロソフトのビル・ゲイツ
6.サウスウエスト航空のハーブ・ケレハー
7.ウォルマートのサム・ウォルトン
ですが、例えばウェルチの場合は、真の学習する企業をつくることを目指し、そのためにどうしたかというように、それぞれの戦略的思考の特長的部分に的を絞って書かれています。
マイケル・デルもルー・ガースナーも、企業文化を顧客志向に変えたことが大きな特徴であり、こうして見ると当然のことながら、彼らの戦略的思考には重なり合う部分も多い。
そうした中で、サウスウエスト航空のハーブ・ケレハーの「第一の顧客として社員を厚遇する」というのは、すごく際立っているように思えました。
全体として教科書のような構成で、各章に設問があり、こんな問題に直面したとき彼ならどうするかと問うていますが、それこそ正にそのCEOの直面した問題なので、本文を読んだ後ではある程度見えてしまう…(自社のことに引き付けて考えて欲しいという著者の意図という程度に見てよいのでは)。
時間が無い人には便利な“要約本”ですが、1人当たりの紙数が限られているので“要約”され過ぎてしまっている感じもして、物足りなさがあります。
ただ、今までその経営手腕の中身を知らなかった有名経営者の本などに読み進むには、手頃な手引きになるかも知れません。
《読書MEMO》
●卓越した7人のCEOの共通項(54p)
1.「外向き」志向の持ち主である
2.「伝道師の資質」をもつ
3.企業文化の重要性を認識している
4.次世代の商品、事業手法の開発や導入に取り組んでいる
5.すぐれたアイデアは誰が考えたものでも積極的に取り入れる
6.経営術の世界に新しい知見をもたらしている
投稿者 wadamy : 16:23 | コメント (0) | トラックバック
【114】 ○ ピーター・F・ドラッカー 『経営の哲学― ドラッカー名言集』 (2003/07 ダイヤモンド社) ★★★★
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著作に触れた人の復習用、初めての人の元本に至る橋渡しとして。
『経営の哲学― ドラッカー名言集』 (2003/07 ダイヤモンド社)
P・F・ドラッカー(1909‐2005)の著作から、その多くを翻訳してきた上田惇生氏が、「経営」についての言葉を選んで編集した名言集で、『仕事の哲学』、『変革の哲学』、『歴史の哲学』と合わせた4部シリーズのうちの1冊。
米国などでも、ドラッカーの本で一番売れているのは、こうした「金言集」のようです。
1ぺージに1つの抜粋で、少し贅沢ですが余白が多くて読みやすく、しかし一言一言は重いと思います。
ドラッカーの著作に触れたことのある人の復習用としても使えますが、彼の著作を初めて読もうという人が、そのニュアンスや自分との相性を測るうえでも良いのではないのでしょうか。
本書では、マネジメントの役割、事業の定義、戦略計画、コア・コンピタンス、顧客、マーケティング、イノベーション、生産性、利益、コスト、意思決定、目標管理、人のマネジメント、組織構造、社会的責任の15の章立てに沿って、200近い名言が紹介されていますが、やはり、総合経営書である『現代の経営(上・下)』('54年著作/'65年/ダイヤモンド社)と『マネジメント-課題・責任・実践』('74年/ダイヤモンド社)からの抜粋で約半分を占め

