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細部に"?"はあるが、もっと注目されていい"隠れた傑作"。

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コンドル dvd2.jpgコンドル 01.jpg ニューヨークにあるアメリカ文学史協会は、CIAの外郭団体として世界各国の雑誌書籍の情報分析を行っている。協会職員は学者肌のCIA分析官で構成されていた。ある日の白昼、アメリカ文学史協会は短機関銃で武装した男3人により襲撃さコンドル 1975   .jpgれ、協会職員は次々と射殺される。たまたま裏口から外出していたために命拾いをしたコードネーム"コンドル"ことジョセフ・ターナー(ロバート・レッドフォード)は、CIA本部に緊急連絡し保護を求める。CIA次官コンドル 8.jpgのヒギンズ(クリフ・ロバートソン)からの指示で第17課長のウィクスという男に落ち合うことになったが、コンドル sido.jpgそのウィクスに銃撃を受ける。辛くも逃走したが、孤立状態となったコンドルは、偶然見かけた女性写真家キャサリン・ヘイル(フェイ・ダナウェイ)を拉致同然に巻き込み、独力で真相を暴こうとする。CIAの暗部に近づこうとするコンドルに謎の殺し屋ジュベール(マックス・フォン・シドー)が忍び寄る―。(「Wikipedia」より)

 1975年製作のシドニー・ポラック(1934-2008)監督作であり、同監督がロバート・レッドフォードを主役に据えて映画を撮ったのは「大いなる勇者」('72年)、「追憶」('73年)以来3度目で、この作品以降も、「出逢い」('79年)、「愛と哀しみの果て」('85年)と続くので、相性が良かったのでしょうか。レッドフォードの共演女優は「追憶」がバーブラ・ストライサンド、この「コンドル」がフェイ・ダナウェイ、「出逢い」がジェーン・フォンダ、「愛と哀しみの果て」がメリル・ストリープだから、錚々たる顔ぶれです。

Three Days of the Condor (1975).jpgコンドルの六日間.jpg この「コンドル」の原作はジェイムズ・グレイディの『コンドルの六日間(Six Days of the Condor)』('75年/新潮社)で、映画の原題は"Three Days of the Condor"(3日分圧縮した?)。原作は米国ではベストセラーとなったポリティカル・サスペンスノベルで、日本での映画公開とほぼ同時期に訳出されていますが、個人的には未読です。小説での各人物像と映画で描かれた人物像はかなり異なり、各人の結末も原作と映画で違うようですが、原作を読んでいないためか却ってすんなり楽しめました。
コンドルの六日間 (1975年)
Three Days of the Condor (1975)

コンドル 1975 s.jpg ニューヨークの地味なビルに入っている表向きは「アメリカ文学史協会」という地味な組織が実はCIAの下部組織で、職員は世界中の推理小説やコミックスを読み漁り、そこに隠された敵対勢力の謀略、暗号の意味を解読する仕事を日夜行っているというのが面白いです(今日であればそうした仕事はコンピュータやAIが肩代わりして、フィクションであっても成り立たないような職業のようにも思えるが、そのレトロ感がいい)。

コンドル 9.jpg ある日突然仕事仲間を全員を殺害された"コンドル"は、何が何だか分からないまま得体の知れない巨大な敵から逃れながら、孤独な闘いを強いられますが、その際に、CIA職員であるとは言え、凄腕の諜報部員でも何でもない単なる本の虫に過ぎない彼が、仕事で培った本から得た知識や戦略を駆使して自らを守り、逆襲に出るというわけです。

コンドル 03.jpgコンドルad.jpeg ネタバレにまりますが、結局CIAの中に中東に戦争を仕掛けたがっている派閥、いわば〈もう1つのCIA〉があって、その連中が黒幕です(湾岸戦争やイラク戦争のことを想うと、ある意味"先駆的"な設定とも言え、こうした映画を作るところがいい意味でアメリカ的でもある)。最後"コンドル"は絶体絶命の危機に陥りますが、そこには思わぬ展開が待っていました。

コンドル シド―.jpg 更にネタバレになりますが、マックス・フォン・シドー演じる殺し屋は、結局、〈もう1つのCIA〉と〈本来のCIA〉の両方から雇われたわけなのだなあと。そんなことあり得るかとも思ったりしましたが、敵の目を眩ますために理屈上はあり得るのかも。マックス・フォン・シドーが映画を通してずっと不気味だったのに、最後は急にいい人っぽい感じになって、このギャップが可笑しかったですが、殺し屋が今までターゲットとして狙っていた人間にいきなりスカウトの声掛けをするかなあ(これも原作通りなのか、それともこの辺りは映画でのある種"お遊び"なのか)。

コンドル 1975s.jpg もっと注目されていい"隠れた傑作"だとは思いますが、やや気になったのは、いくらダウンタウンの犯罪多発地域だとは言え、敵方が協会職員を全員殺害したのは、ちょっと乱暴と言うか、リスクがありすぎるように思いました(彼らにだって家族や友人はいるわけで、事件を完全に揉み消すのは何れの立場の側にとっても難しいのでは。強盗のせいにするにしても、押し入った先が「アメリカ文学史協会」では...)。

コンドル 02.jpg フェイ・ダナウェイは珍しく受身的な役回りで、マックス・フォン・シドーの方が記憶に残っていましたが、久しぶりに観直してみると演技達者であることには変わりありませんでした。但し、あくまでも主演はレッドフォードで、フェイ・ダナウェイはやはり一歩引いたポジショニングでした。先に挙げたシドニー・ポラック監督によるロバート・レッドフォードと女優たちの共演作で、主演女優の方がレッドフォードより前面に出ているのは、「追憶」のバーブラ・ストライサンドと「愛と哀しみの果て」のメリル・ストリープでしょうか。いかにもという感じもしますが、ジェーン・フォンダについてはシドニー・ポラック監督は別に彼女を主役に据えた「ひとりぼっちの青春」('69年/米)を撮っていて、これは傑作です。 

Sydney Pollack's 'Three Days of the Condor'
Sydney Pollack's 'Three Days of the Condor'.jpg「コンドル」●原題:THREE DAYS OF THE CONDOR●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●製作:スタンリー・シュナイダー●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア/デヴィッド・レイフィール●撮影:オーウェン・ロイズマン●音楽:デイヴ・グルーシン●原作:ジェームズ・グラディ「コンドルの六日間」●時間:118分●出演:ロバート・レッドフォード/フェイ・ダナウェイ/クリフ・ロバートソン/マックス・フォン・シドー/マイケル・ケーン/アディソン・パウエル/ウォルター・マッギン/ジョン・ハウスマン/ティナ・チェン/ドン・マクヘンリー/ヘレン・ステンボーグ/ハンスフォード・ロウ/ジェス・オスナ/ハンク・ギャレット/カーリン・グリン●日本公開:1975/11●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(78-05-04)(評価★★★★)●併映「合衆国最後の日」(ロバート・アルドリッチ)

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最初観た時はこんなのアリ?という気もしたが、観る度に良いと思えるように。意外と深いかも。

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華麗なる賭け [DVD]

華麗なる賭け 01.jpg華麗なる賭け 03.jpg ハンサムで裕福な実業家でありながら、実は裏の顔を持つクラウン(スティーヴ・マックィーン)。彼は、満ち足りた生活では得られないスリルを求めて銀行強盗を計画、ボストンの自社ビル前の銀行を5人の男に襲わせて見事に成功、260万ドルの現金を手中にする。事件後、ボストン市警も手がかりを掴めずお手上げとなる中、マローン警部補(ポール・バーク)とともに捜査していた銀行の保険会社華麗なる賭け 07.jpgの調査員ビッキー・アンダーソン(フェイ・ダナウェイ)はクラウンに目をつけ、彼が黒幕であることを確信する。彼女は正体を暴こうとクラウンに近づくが、徐々に彼の大胆不敵な姿に心惹かれてしまう。こうして2人のスリリングで奇妙な関係が始まる―。

華麗なる賭け_V1_.jpgTHE THOMAS CROWN AFFAIR.jpg 監督のノーマン・ジュイソンは前作「夜の大捜査線」('67年)でアカデミー作品賞を受賞、主演のスティーヴ・マックイーンも前作「砲艦サンパブロ」('66年)でアカデミー主演男優賞候補にノミネート、フェイ・ダナウェイも前年「俺たちに明日はない」('67年)でやはりアカデミー主演女優賞にノミネートされているなど、当時脂が乗り切っていたメンバー構成。但し、クラウン役はショーン・コネリーにオファーされたのが、彼がそれを断ったためにスティーヴ・マックイーンに回ってきたものだったとか。

華麗なる賭け   マックィーン.jpg華麗なる賭け 04.jpg 世界的に有名な大実業家が、何の苦労もないのにただスリルだけのために銀行襲撃を指揮し、しかも捕まらないという贅沢極まりないお話で、最初観た時はこんなのアリ?という気もしましたが、スティーヴ・マックィーンが亡くなってからテレビで観て、これ、スティーヴ・マックィーンのファンには彼のカッコよさを堪能するには格好の作品だなあと(撮影前は「スーツを着たマックィーンなんて見たくない」との声もあったというが、公開後にはそうした声は殆ど聞かれなくなったという)。また、ラブストーリーとしても楽しめる作品ではないかと思うようになりました。
   
華麗なる賭け チェス.jpg華麗なる賭け 05.jpg 最近劇場で改めて観直して、導入部のマルチスクリーンもいいし、フェイ・ダナウェイもいいし(色香際立つチェス・シーン!)、「シェルブールの雨傘」('64年)の華麗なる賭け 06.jpgミシェル・ルグランによる音楽もいいなあと(テーマ曲「風のささやき」(唄: ノエル・ハリソン)はアカデミー主題歌賞受賞)。主人公は、グライダーで優雅に空を翔け、バギーで浜を走らせ、ゴルフをし、ボロをしとスポーティですが、フランスの街並み風のカットがあったりして、何となくヨーロッパ的な感じがしなくもなく、フェイ・ダナウェイのファッションも楽しめて、全体としてはたいへんお洒落な作りになっていると言っていいのではないでしょうか。

華麗なる賭け マっクィーン.jpg華麗なる賭け ダナウェイ.jpg こうしたストレートな娯楽映画が観る度に良いと思えるようになるのは、「目が肥えた」と言うよりも年齢がいったせいかもしれませんが、やはりスティーヴ・マックィーンとフェイ・ダナウェイという2人のスター俳優に支えられている部分は大きいのだろうと思います。ラスト、空を飛ぶスティーヴ・マックィーンと地を行くフェイ・ダナウェイという対比で捉えると、男と女の生き方の違いを描いた映画とも言えるかもしれません。意外と深いかも...。1999年には、この作品を愛するピアース・ブロスナンの製作・主演で同名(邦題は「トーマス・クラウン・アフェアー」)のリメイク版も制作されていて、フェイ・ダナウェイも客演していますが、ラストを少し変えていたように思います(終わり方としてはオリジナルの方がいい)。

 スティーヴ・マックィーンはこの年はピーター・イェーツ監督の「ブリット」('68年/米)にも出演していて、大スター・マックィーンがそのカッコよさを極めた年だったなあと思います。
The Thomas Crown Affair(1968)
The Windmills Of Your Mind(風のささやき)- Michel Legrand ミシェル・ルグラン
Karei naru kake (1968)
Karei naru kake (1968).jpg
華麗なる賭け 02.jpg華麗なる賭け ダナウェイ2.jpg華麗なる賭けAL_.jpg「華麗なる賭け」●原題:THE THOMAS CROWN AFFAIR●制作年:1968年●制作国:アメリカ●監督:ノーマン・ジュイソン●製作:ノーマン・ジュイソン●脚本:アラン・R・トラストマン●撮影:ハスケル・ウェクスラー●音楽:ミシェル・ルグラン●時間:102分●出演:スティーヴ・マックィーン/フェイ・ダナウェイポール・バーク/ジャック・ウェストン/ヤフェット・コットー/トッド・マーティン/サム・メルビル/アディソン・ポウエル●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーチス●最初に観た場所:池袋・文芸坐(80-07-16)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(15-03-24)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「ブリット」(ピーター・イェイツ)

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比較的原作に忠実。後のポワロことデビッド・スーシェ演じるジャップ警部に目が行ってしまう。

エッジウェア卿殺人事件 us.jpg     エッジウェア卿殺人事件 vhs2.jpg Thirteen at Dinner 1985 04.jpg
"Thirteen at Dinner"輸入盤DVD 「名探偵ポワロ エッジウェア卿殺人事件 [VHS]」 David Suchet/Peter Ustinov

Thirteen at Dinner 1985 フェイ・ダナウェイ2.jpg 偶然に女優のジェーン・ウィルキンソン(フェイ・ダナウェイ)と知り合ったポワロ(ピーター・ユスティノフ)は、彼女から離婚に応じない夫エッジウェア卿を説得して欲しいと頼まれる。ポワロはエッジウェア卿に会うが、卿からは半年も前に承諾の手紙を書いたことを聞かされ訝しがる。そしてその晩、エッジウェア卿は何者かに殺害され、現場ではジェーンの姿が目撃されたのだが、彼女には確かなアリバイがあり、どうやらそれは彼女そっくりの物真似タレント、カーロッタ(フェイ・ダナウェイが二役)だったらしい。しかし今度はそのカーロッタまで不自然な死を遂げる。エッジウェア卿の娘をはじめ、卿の死を望みそうな人間は多くいるが、その誰もにアリバイがあった―。

Thirteen at Dinner 1985 03.jpg 映画「ナイル殺人事件」('78年/英)、「地中海殺人事件」('82年/英)でポワロを演じたピーター・ユスティノフ(1921-2004)が、'85年にアメリカのTVドラマでポワロを演じたもので(原題:Thirteen at Dinner)、この翌年には「死者のあやまち」と「三幕の殺人」が作られていますが、ピーター・ユスティノフ主演のTVシリーズはこの3作で打ち止めで(ヘイスティングス役は3作ともジョナサン・セシル)、ユスティノフは2年後に映画「死海殺人事件」('88年/米)で彼自身最後のポワロ役を演じています。

晩餐会の13人 (創元推理文庫.jpgThirteen at Dinner 02.jpg 原作は、アガサ・クリスティ(1890‐1976)が1933年に発表した名探偵ポワロシリーズの長編第7作(原題:Lord Edgware Dies)ですが、時代は、この映像化作品が作られた時代に置き換えられています。ポワロが有名人としてTV出演したり、男優がアクションシーンに何度もダメ出ししたりといった現代風の味付けがありますが、筋立てそのものは原作に比較的忠実に作られており、かなりストーリー的には複雑な作品ではありますが、謎解きも丁寧でした。

 但し、原作を比較的忠実になぞった分、テンポ的にはややゆったりしているかなという印象。一人二役のフェイ・ダナウェイは、さすが堂々たる演技ですが、登場人物が多いため、その中にやや埋没している印象も。

Thirteen at Dinner 1985 05.jpg そうした中、興味深いのは、お馴染みジャップ警部を、'89年からTⅤ版「名探偵ポアロ」でポワロを演じることになるデビッド・スーシェが演じている点で、ピーター・ユスティノフ演じるポワロに常に先行される役どころを彼が演じているというのが、なかなか面白かったです。

 "新旧ポアロ対決"と言いたいところですが、デビッド・スーシェ演じるジャップ警部はいつも食い意地が張っていて、犯行現場などに行ってもつまみ食いばかりしているといった、ややとぼけた人物造型となっており、その上、最初から犯人はアイツだと決めてかかかる石頭ぶりで、後のポワロ役の剃刀の如く研ぎ澄まされた名探偵ぶりとは雲泥の差です。

デビッド・スーシェ/フェイ・ダナウェイ

 ピーター・ユスティノフとデビッド・スーシェが並ぶと、ついついデビッド・スーシェの方に目が行ってしまいます(後に自分がポワロを演じることになるのを少しでもイメージしていたのかなあ、とか考えてしまう)。フェイ・ダナウェイと並んでもデビッド・スーシェの方に目が...。
 という訳で、ピーター・ユスティノフやフェイ・ダナウェイの演技よりも、デビッド・スーシェのダメ警部ぶりの方が、"お宝映像"的な価値があったかもしれない作品ですが、原作のストーリーを再度確認する上ではオーソドックスな作品と言えます。

エッジウェア卿殺人事件001.jpgThirteen at Dinner 1985 04.jpg「名探偵ポワロ/エッジウェア卿殺人事件」●原題:THIRTEEN AT DINNER●制作年:1985年●制作国:アメリカ●本国放映:1985/09/19●監督:ルー・アントニオ●脚本:ロッド・ブラウニングス●原作:アガサ・クリスティ●時間:95分●出演:ピーター・ユスティノフ/デヴィッド・スーシェ/フェイ・ダナウェイ/ジョナサン・セシル/リー・ホースリー/ビル・ナイ/ダイアン・キートン●ビデオ発売:1990/11 (ビクターエンタテインメント)(評価:★★★☆)

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経営陣の企業倫理の逸脱パターンが戯画的に描かれいる。フェィ・ダナウェイの演技は絶妙。

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NETWORK title.jpg 最盛期に28%の視聴率を誇ったUBSのビール(ピーター・フィンチ)のイブニング・ニュースも今や12%とに低落、これが引金となり、ジェンセン(ネッド・ビーティ)率いるCCAがUBSを買収し傘下に収め、CCAより新社長が就任、報道部長マックス(network 1976 01.jpgウィリアム・ホールデン)はビールに番組降板を通告する。翌日、ビールは本番中に自分が辞めさせられる事を暴き、さらに自殺予告までするが、そのことで視聴率は27%に上がる。野心家のダイアナ(フェイ・ダナウェイ)は、ビールを現代の偽善と戦う予言者とし「再売り出し」し、雨の日の本番中にスタジオに闖入したビールの社会不満を告発する言動が大ヒットするなどして、「ビール・ショー」の視聴率は48%に。ダイアナのアイデアはエスカレートし、過激Network.jpg派グループと契約して、ビールを絡めた衝撃シリーズを展開、これも成功し、彼女とマックスの社内での地位は逆転するが、過激化するビールが、親会社CCAを番組内で非難し始めたことで危機に陥る。ジェンセンはビールに強制暗示的に言動変更を迫り、感化されたビールは番組内でジェンセンの理論を滔々とぶつが視聴率は低下、ダイアナはジェンセンのロボットとなったビールを番組から降ろすために、上層部のハケット(ロバート・デュヴァル)らを説得して、ついにビールの暗殺を決定させ、テレビ局の走狗と化した過激派をスタジオの観客に紛れ込ませ、ビールを銃撃させる―。

ネットワーク 1976 02.jpg シドニー・ルメット(1924-2011/享年86)監督作品。最初観たときは、こんなのありっこないという荒唐無稽さを覚えましたが興業的には成功し、風刺劇としての世間評価も高かった作品であり(シドニー・ルメットはこの映画は風刺劇ではなくテレビ業界の内実を暴露したルポルタージュであると言った)、アカデミー賞においても主演男優賞(ピーター・フィンチ)、主演女優賞(フェイ・ダナウェイ)、など4部門獲得しました(ノミネート直後に心不全で急死したピーター・フィンチは、アカデミー賞史上初の「死後の主演男優賞受賞者」となった)。

 そうした評価につられてではないですが、観直してみて、よく出来ている作品だったかもと思いました。ピーター・フィンチに扇動される人々の描き方などは戯画的と言うか漫画チックですが、ピーター・フィンチの脇を固める俳優陣の演技が素晴らしいです。

network 1976 03.jpg ウィリアム・ホールデン演じるマックスがダイアナとの関係をなかなか断ち切れないのは、ある種"保護者"感覚ではないかなあ。彼女、傍に誰かいないとどうなるか分からないという...。それでもって、自分の妻(ベアトリス・ストレイト)に別居を切り出すというのも、言われた方の妻の心境は察するに余りありますが、ベアトリス・ストレイトはこのヘビイなNETWORK 1976.jpg状況に置かれた妻の哀しみを演じて、僅か5分間の画面登場でアカデミー賞の助演女優賞を獲っています(助演男優賞候補となったネッド・ビーティがもし受賞していれば、主演男優・主演女優・助演男優・助演女優の演技四賞を独占するところだった。ネッド・ビーティがピーター・フィンチを緑色のシェードのライトが並んだ部屋で洗脳するシーンもスゴかったけれど)。

Ned Beatty - Network 1976

network 1976 02.jpg ダイアナの無茶苦茶な提案に躊躇するものの、最終的にはそれを是認してしまうテレビ局の上層部―というのは、経営陣が企業倫理を逸脱する際のパターンを描いており("殺人"まで認めてしまうというところが戯画的だが)、そもそもダイアナは、こんな"素晴らしいアイデア"になぜ上層部がすぐに同意を示さないかが解らず、逡巡する経営陣の様を見てきょとんとしている―この時のフェィ・ダナウェイの演技は絶妙です。

ネットワーク 1976 12.jpg 熾烈な視聴率競争を繰り広げるTV業界の中で「壊れていく」人々を描いた作品ですが、ピーター・フィンチ演じるニュースキャスターは「壊れている」と言うよりも「狂っている」のであって、「壊れている」という言葉が相応しいのはむしろフェィ・ダナウェイ演じるダイアナではないかなと思いました。最後はウィリアム・ホールデン演じるマックスも彼女を見切った感じですが、ダイアナの行く末がどうなったかまでは描かれていません。個人的には、再見して、この作品の主人公はダイアナではなかったかと思っただけに気になりました。

ネットワーク [DVD].jpg「ネットワーク」●原題:NETWORK●制作年:1976年●制作ネットワーク ロバート・デュヴァル.jpg国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:ハワード・ゴットフリード●脚本:パディ・チャイエフスキー●撮影:オーウェン・ロイズマン●音楽:エリオット・ローレンス●時間:121分●出演:フェイ・ダナウェイ/ウィリアム・ホールデン/ピーター・フィンチ/ロバート・デュヴァル/ベアトリス・ストレイト/ウェズリー・アディ/ネッド・ビーティ●日本公開:1977/01●配給:ユナイト映画●最初に観た場所:池袋・文芸坐(78-12-13)(評価:★★★★)●併映:「カプリコン・1」(ピーター・ハイアムズ)
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アメリカン・ニューシネマ代表作2本。もし配役が当初の予定通りだったら違った作品に?。

俺たちに明日はない dvd.jpg 俺たちに明日はない1シーン.jpg    明日に向かって撃て dvd.jpg 明日に向かって撃て! チラシ 1975.jpg
俺たちに明日はない [DVD]」/「俺たちに明日はない」1シーン/「明日に向って撃て! (特別編) [DVD]」/チラシ

俺たちに明日はない パンフ 73年リバイバル版.gif俺たちに明日はない 3.jpg 60年代アメリカン・ニューシネマの代表的な作品と言えば、'67年の「俺たちに明日はない」「卒業」、'68年の「ワイルドバンチ」、'69年の「イージー・ライダー」「明日に向って撃て!」「真夜中のカーボーイ」あたりでしょうか。

「俺たちに明日はない」パンフレット(1973年リバイバル版)

アメリカン・ニューシネマ '60~70 別冊太陽.jpg アメリカン・ニューシネマを最も象徴する作品を1つ挙げるとすれば、メッセージ性という点から「イージー・ライダー」を挙げる人もいるかも知れませんが、やはり、"アメリカン・ニューシネマ第1号作品"とも言えるアーサー・ペン(Arthur Penn、1922 -2010)監督の「俺たちに明日はない」(Bonnie and Clyde)がそれに該当するとするのが大方の見方ではないかという気がします(何せ、当初の監督候補には、フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールといったヌーヴェルヴァーグの担い手の名が挙がっていたぐらいだし)。

アメリカン・ニューシネマ '60~70 別冊太陽 (構成=川本三郎・小藤田千栄子)

「俺たちに明日はない」1.jpg「俺たちに明日はない」2.jpg 名画座で初めて観た時には、既に公開から10年を経ており、それまでにリヴァイバル上映もされていて、おおよその展開を知ってはいましたが、それでも「死のバレエ」と言われるラスト・シーンを観た際の衝撃は大きく、併映の「真夜中のカーボーイ」(これもいい作品)を観終わった後で、また最初から見直しました(その後も何度かリヴァイバル・ロードショーなどで観た)。
俺たちに明日はない1.gif
俺たちに明日はない     .jpg デヴィッド・ニューマンとロバート・ベントンの脚本に共感したウォーレン・ベイティが製作者として関わっていますが、当初は製作に専念する予定だったそうで、一方、彼の姉であるシャーリー・マクレーンが強くボニーの役を願っていたのが、ウォーレン・ベイティがクライド役に決定したためマクレーンは役から降り(脚本の原案では、クライドはバイセクシャルとして扱われていて、これが映画化が難航する原因となったが、映画化のために改変された脚本でもクライドの"不能"がモチーフとして使われているため、何れにせよ、実姉であるマクレーンは降りざるを得なかった)、その結果フェイ・ダナウェイに白羽の矢が立ったとのこと。フェイ・ダナウェイはこの作品で一躍知名度を上げました。

 冒頭の方にある、着替えをするフェイ・ダナウェイの背中を舐めるようなショットが印象的でしたが、ウォーレン・ベイティがクライドを演じなければ、あれも無かったか、または別の女優が演じていた?(この映画の雰囲気は殆どフェイ・ダナウェイが作っているとも言え、フェイ・ダナウェイとシャーリー・マクレーンとでは随分イメージが違うような気がする)

明日に向かって撃て/バート・バカラック 1969.bmp明日に向かって撃て パンフ 75年リバイバル版.jpg ジョージ・ロイ・ヒル(George Roy Hill、1922 -2002)監督の「明日に向って撃て!」(Butch Cassidy and the Sundance Kid)も思い出深い作品であり、「俺たちに明日はない」の約半年前に観たため、自分の中ではある意味、"ニューシネマ"というとこちらの作品になるという面もあります。

「明日に向かって撃て!」パンフレット(1975年リバイバル版)(左)/バート・バカラック・オリジナル・サウンドトラック版CD(右)

明日に向って撃て 1シーン.jpg 「俺たちに明日はない」と同様に実在の人物をベースとしたギャング・ストーリーであり、アメリカン・ニューシネマに特徴的な悲劇的結末を迎えますが、多分この作品で最も印象に残るのは、バート・バカラックの「雨にぬれても」が流れる中、ポール・ニューマン(Paul Newman、1925 - 2008)がキャサリン・ロスを自転車に乗せて走るシーンではないかと思われ、イメージとしては「俺たちに明日はない」より明るいというか、ソフィストケートされて和田 誠 氏.jpgいる印象を受けます。

 この「雨に濡れても」の自転車のシーンは、その後TVコマーシャルで随分マネものが作られましたが、和田誠氏は、このシーンを初めて観た時に「CMみたい」と思ったそうで(『お楽しみはこれからだ PART2―映画の名セリフ』('76年/文藝春秋))、その感覚は分かる気がします。

 当初予定されていた配役は、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーン(Steve McQueen、1930-1980)がブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役だったそうですが、マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォード(Robert Redford、1936-)がサンダンス役に抜擢されたとのこと。

明日に向かって撃て 01.jpg しかも、いきなりロバート・レッドフォードに白羽の矢が立ったわけではなく、最初はマーロン・ブランド(Marlon Brando、1924-2004)がポール・ニューマンの共演者としてサンダンス役をやることになっていたのが、キング牧師の暗殺事件にショックを受けた(本当に?)マーロン・ブランドが役を断った結果、ロバート・レッドフォードに初の大役が回ってきたというから、世の中わからないものです。

 もし、マックイーンとポール・ニューマンの組み合わせだったとすれば、或いはポール・ニューマンとマーロン・ブランドの組み合わせだったら、これも違った雰囲気の作品になっていたように思います。

 当初予定配役の変更により、結果として、「俺たちに明日はない」はフェイ・ダナウェイを、「明日に向って撃て!」はロバート・レッドフォードを、それぞれスターダムに押し上げた作品になったわけだなあと。
                        
俺たちに明日はない」.jpg「俺たちに明日はない」●原題:BONNIE AND CLYDE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:アーサー・ペン●製作:ウォーレン・ベイ俺たちに明日はない ジーン・ハックマン.jpgティ●脚本:デヴィッド・ニューマン/ロバート・ベントン/ロバート・タウン●撮影:バーネット・ガフィ●音楽:チャールズ・ストラウス●時間:122分●出演:ウォーレン・ベイティ/フェイ・ダナウェイ/ジーン・ハックマン/マイケル・J・ポラード銀座文化・シネスイッチ銀座.jpg/エステル・パーソンズ/デンヴァー・パイル/ダブ・テイラー/エヴァンス・エヴァンス/ジーン・ワイルダー●日本公開:1968/02●配給:ワーナー・ブラザーズ=セブン・アーツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)●2回目:早稲田松竹(78-05-20)●3回目:銀座文化(88-06-18)(評価:★★★★)●併映(1回目):「真夜中のカーボーイウォーレン・ベイティ フェイ・ダナウェイ.jpg」(ジョン・シュレジンジャー)
2017年第89回アカデミー賞作品賞プレゼンター/フェイ・ダナウェイ(76)・ウォーレン・ベイティ(79)
早稲田松竹.jpg高田馬場a.jpg早稲田松竹 1951年封切館としてオープン、1975年からいわゆる「名画座」に
①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス/③高田馬場パール座/④早稲田松竹
        
butch_cassidy_and_the_sundance_kid1.jpg「明日に向って撃て!」●原題:BUTCH CASSIDY AND THESUNDANCE KID●制作年:1969●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・ロイ・ヒル●製作:ジョン・フォアマン●脚本:ウィリアム・ゴールドマン●撮影:コンラッド・L・ホール●音楽:バート・バカラック●時間:110分●出演:ポール・ニューマン/ロバート・レッドフォード/キャサリン・ロス/ストローザー・マーティン渋谷文化劇場.png/ジェフ・コーリー/ジョージ・ファース/クロリス・リーチマン/ドネリー・ローズ/ケネス・マース/ヘンリー・ジョーンズ●日本公開:1970/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:渋谷文化劇場(77-10-23)(評価:★★★★)●併映:「追憶」(シドニー・ポラック)

渋谷文化劇場 1952年11月17日、渋谷東宝会館地下にオープン 1989年2月26日閉館(1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーがオープン)

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子役を使って泣かせるなんてアザトイと思いながらも、やはり泣けてしまう...。
チャンプ dvd.jpg THE CHAMP.jpg  新宿ピカデリー.jpg 新宿ピカデリー 新館.jpg
チャンプ [DVD]」 Ricky Schroder and Jon Voight  旧・新宿ピカデリー(2006年閉館)/新・新宿ピカデリー

「チャンプ」 (79年/米).jpgチャンプ 輸入版ポスター.jpg いつの日か栄光の座に返り咲くことを夢見る元世界チャンピオンのボクサー(ジョン・ヴォイト)と、彼を尊敬し今もチャンプと呼ぶ息子(リッキー・シュローダー)の親子の絆、それに別れた妻(フェイ・ダナウェイ)が絡んでの家族愛を描いた作品で、日本でも大いにヒットしました。

 「ロミオとジュリエット」 ('68年/英・伊) 、「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/英・伊)のフランコ・ゼフィレッリ監督よるキング・ヴィダー監督の同名作品('31年)のリメイクですが、子役リッキー・シュローダーの演技が絶賛され、これはフランコ・ゼフィレッリの演出によるところが大きいのではないかと個人的には思いました(この監督は、アッシジのフランチェスコの半生を描いた「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/伊)でも素人に近い役者を使っていたが、主演のグレアム・フォークナーは聖人になりきっていた)。

輸入版ポスター

 もともとイタリア映画(イタリア人監督の映画)には、ビットリオ・デ・シーカの「自転車泥棒」('48年)からエルマンノ・オルミの「木靴の樹」('78年)にまで連なるネオレアリズモの流れがあり、共通する要素は"素人"乃至"子役"を旨く使っていることではないかとも思ったりします。

チャンプ 1979 03.jpg 37歳でチャンピオン戦というのはかなり無理があるなあとか(実際、当時はボクシングを冒涜しているとの批判もあったが、ジョン・ヴォイドのボクシング・スタイルは、「ロッキー」のシルベスター・スタローンのそれなどよりはずっと本モノぽかった)、或いは、子役を使って泣かせるなんてアザトイなあとか、やや斜に構えて観ていても、やはり結局最後は泣けてしまいます。

チャンプ(1931).jpg 個人的には子役の演技にはやや鼻につく面もありましたが、強さと弱さの両面を併せ持つ父親を演じたジョン・ヴォイドの演技がそれをカバーしているように思いました。フェイ・ダナウェイも含め、"ベテランが脇を固める"というパターンか。因みに、この作品は、キング・ヴィダー監督の1931年作品のリメイクですが、旧作の方は未見。小津安二郎の「出来ごころ」('34年)のヒントとなった作品でもあるそうです。

「チャンプ」(1931)

 上映後に女性客がみんな泣いているのでちょっと気恥ずかしかった記憶がありますが(今ここで流されている涙を全部かき集めたらどれぐらいになるのだろうかなどと余計な事を考えてしまうのが自分の悪い癖)、とは言え、映画を観て涙を流すことが皆無になったら、映画館に行って映画を観る意味は無くなるのかも知れない...。

チャンプ 1979 01.jpg「チャンプ」●原題:THE CHAMP●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:フランコ・ゼフィレッリ●製作:ダイソン・ロヴェル●脚本:本 ウォルター・ニューマン●撮影:フレッド・コーネカンプ●音楽:デイヴ・グThe Champ (1979).jpgルーシン●原作:フランシス・マリオン●時間:123分●出演:ジョン・ヴォイト/フェイ・ダナウェイ/リッキー・シュローダー/ジャック・ウォーデン/アーサー・ヒル/ジョーン・ブロンデル/ストロザー・マーティン●日本公開:1979/07●配給:MGM映画=CIC●最初に観た場所:新宿ピカデリー(80-11-14)(評価:★★★☆)●併映:「クレイマー、クレイマー」(ロバート・ベントン)
The Champ (1979)

 この作品を観たのは、新宿松竹会館の旧「新宿ピカデリー」に於いてで、当時は「新宿松竹」(地下劇場)との2館体制で、「新宿ピカデリー」は2本立ての二番館(「チャンプ」の併映は「クレイマー、クレイマー」だった)、それが「アマデウス」('84年/日本公開'85年)を観た頃にはロード館になっていて、その後、松竹会館全体としては3館体制、4館体制となっていきました(新宿ピカデリー1~4)。

新宿ピカデリーS.jpg新 新宿ピカデリー.jpg 「新宿ピカデリー(ピカデリー1)」は1,154席(2001年の改修前)の大劇場でしたが、2006年に全館閉館し、2008年に10スクリーンのシネコンとして再オープン、新生「新宿ピカデリー」の10スクリーン全部合わせた席数は、以前の4館の合計の約5割増しになるそうですが、最大席数の「スクリーン1」で約600席と、かつての「ピカデリー1」の約半分しかないことになります。
新「新宿ピカデリー」 2008年7月オープン

 「みんな泣いているのでちょっと気恥ずかしかった」と書きましたが、大スクリーンということだけでなく、多くの観客と感動を共有できるのも大劇場の魅力かも知れないと思ったりもします。そうした大劇場は消えゆくのみかという寂しい気もするし、同じ1フロアーに昔は一体どうやって今の2倍もの客席を詰め込んでいたのかと思うと、やや不思議な気もします(ゴンドラ席があったなあ)。

新宿ピカデリー 閉館.jpg新宿ピカデリー.jpg 旧・新宿ピカデリー 1958年、靖国通り沿い「新宿松竹会館」1階に「新宿松竹映画劇場」オープン。1962年~「新宿ピカデリー」(1154席)、1987年~「新宿ピカデリー1」。2001年3月改修(820席)。2006年5月14日閉館。

【松竹会館全体】1958年10月28日「新宿松竹映画劇場」「新宿名画座」「新宿スター座」「新宿松竹文化演芸場」の4館オープン、1962年9月28日~「新宿ピカデリー」「新宿松竹」に、1987年7月4日~雀荘を改修し「新宿ピカデリー2」(44席)オープン(3館体制)、1992年8月12日「新宿ピカデリー2」オープン(4館体制、前「ピカデリー2」→「ピカデリー3」)、1999年6月12日「新宿松竹」→「ピカデリー2」、「ピカデリー2」→「ピカデリー3」、「ピカデリー3」→「ピカデリー4」に改称。2001年3月全館改修。2006年5月14日閉館。2008年7月19日、新生「新宿ピカデリー」オープン(10スクリーン)。

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共演の男優・女優を追悼。シェイクスピアを下敷きにした見所多い(?)作品「禁断の惑星」。

禁断の惑星 dvd.jpg 禁断の惑星 英語ポスター.jpg 禁断の惑星 ポスター.jpg 昆虫型ミュータントがアダムス博士を襲う.jpg
禁断の惑星 [DVD]」「禁断の惑星」輸入版ポスター/日本版ポスター 「宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]
 
禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg 宇宙移民が行われている2200年代、アダムス機長が率いる宇宙船は、20年前に移住して消息を絶った移民団の捜索のために、惑星第4アルテアへ着陸するが、アルテア移民団の生き残りは、モービアス博士と、アルテアで誕生した彼の娘アルティラの2人と、博士が作った万能ロボット・ロビーだけだった。博士によれば、アルテアにはかつて高度に進化し、発達した科学を創り上げた先住民族が存在したが、原因不明の滅亡を遂げ、そして移民団も正体不明の怪物に襲われて自分達以外は死んでしまったという―。

「禁断の惑星」パンフレット

アン・フランシス_3.jpgForbidden Planet2.jpgForbidden Planet.jpg アダムス機長を演じたレスリー・ニールセンが昨年('10年)11月に亡くなった(享年84)のに続いて、アルティラを演じたアン・フランシスも今年('11年)1月に亡くなり(享年80)、寂しい限りです。TV番組「ハニーにおまかせ」('56年~)の私立探偵役のアン・フランシスも、「裸の銃(ガン)を持つ男」('86年)のレスリー・ニールセンも、この映画では2人とも20代でしょうか。この作品を観ると、永遠に2人とも若いままでいるような錯覚に陥ります。

禁断の惑星 名画座ミラノ2.jpg 「禁断の惑星」がシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにしていることはよく知られていて、最初に劇場(名画座ミラノ、すでに「名画座料金」ではなくなっていた)で観た時も、同時期の作品「宇宙水爆戦」('55年)などに比べてよく出来ているように思いました。

宇宙水爆戦1.jpg 「宇宙水爆戦」の方は結構キッチュ趣味と言えるかも。惑星間戦争で絶滅の危機にある星の異星人の科学者が、地球の科学者に協力を依頼するが、実はその星の指導者は地球を支配して移り住むことを企んでいた―というストーリーですが、最後、事件が一見落着したかと思ったら、宇宙船内に潜んでいた宇宙昆虫人間みたいなミュータントに襲われそうになるという―このとってつけたように出現するミュータントがポスターなどではメインになっていて、それだけストーリーは印象に残らないといことでしょうか。ストーリー的にも怪物キャラクター的にも、当時流行ったSFパルプマガジンの影響を強く受けているようです(そのこともキッチュ感に繋がる要因か。でもこのキッチュ感こそが、この作品の根強い人気の秘密かも)。

宇宙家族ロビンソン3.jpg 一方、「禁断の惑星」に出てくる有名キャラクターは万能ロボット「ロビー」で、これを参照したのが60年代に作られたテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」に出てくるロボット(愛称:フライデー)だったりし、先駆的な要素も結構あったわけです(「宇宙家族ロビンソン」には外にも「宇宙水爆戦」も参考にしている箇所が幾つかある)。

刑事コロンボ 愛情の計算2.png刑事コロンボ 愛情の計算.jpg 因みに、このロボットは、「刑事コロンボ」の第23話「愛情の計算」('74年)にも"ゲスト出演"してロビーとフライデー.jpgおり(下半身の造りが二本脚から台座型に変わっている)、人工知能研所の所長である犯人のアリバイ作りに一役買っていますが、ロボットのキー・ボードを叩く手つきの大雑把さを見ると、ちょっと所長の代役をさせるには無理な感じも。

ロビー(「禁断の惑星」)とフライデー(「宇宙家族ロビンソン」)

 事件の鍵を握る天才少年の名は、スティーブン・スペルバーグで、これは勿論、コロンボ・シリーズ第3話「構想の死角」を撮ったスピルバーグ監督の名前をもじったもの。息子を庇う親心を利用して犯人を自白に追い込むというのは、後のフェイ・ダナウェイが犯人役を演じた第62話「恋におちたコロンボ」('93年)でもFaye Dunaway & Peter Falk.jpg恋におちたコロンボ2.jpg(こちらは娘を庇ってだが)使われましたが、真犯人ではないと分かっていながら拘束するのはいかがなものでしょうか(「恋におちたコロンボ」の脚本はピーター・フォーク自身が手掛けている)。但し、フェイ・ダナウェイの演技力はさすが。70年代のシリーズ作に比べ見劣りがする90年代のシリーズ作(特に後期作品)の中では、ひときわ映える名犯人役と言っていいのではないでしょうか。 Faye Dunaway & Peter Falk

アン・フランシス「死の方程式」「溶ける糸
死の方程式 アン・フランシス.jpg溶ける糸3 アン・フランシス.jpg 因みに「刑事コロンボ」シリーズに出たのはロボットだけではなく、アン・フランシスも「刑事コロンボ」の第8話「死の方程式」('72年)にロディ・マクドウォール(「猿の惑星」)演じる犯人の秘書兼愛人役で、第15話「溶ける糸」('73年)にレナード・ニモイ(「スタートレック」)演じる犯人に殺されてしまう看護婦役で出ているし、レスリー・ニールセンも、第7話の「もう一つの鍵」で、犯人である広告会社役員役のスーザン・クラークの恋人役で、第34話「仮面の男」('75年)で、元同僚のスパイに殺害される被害者役仮面の男2.jpg刑事コロンボ 仮面の男2.jpgで出ています。

レスリー・ニールセン 「仮面の男

 レスリー・ニールセンはこの頃もまだ二枚目俳優で(コメディ初出演は「フライング・ハイ」('80年))、「禁断の惑星」や「刑事コロンボ」の演技と「裸の銃(ガン)を持つ男」('88年)の演技を比べてみるのも一興でしょうか。コメディ俳優としてブレイクするきっかけとなった「裸の銃を持つ男」ではエリザベス女王裸の銃(ガン)を持つ男(1988).jpgをはじめフセイン大統領、ホメイニなど様々な人物をコケにし、「裸の銃を持つ男PART2 1/2」('88年)では当時のアメリカ大統領裸の銃(ガン)を持つ男2.jpgジョージ・ブッシュをコケにしています。「裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱」('94年)までプリシラ・プレスリー、ジョージ・ケネディ、O・J・シンプソンという共演トリオは変わらず和気藹々といった雰囲気でしたが、O・J・シO・J・シンプソンs.jpgンプソンは'94年に発生した元妻の殺害事件(「O・J・シンプソン事件」)の被疑者となってしまいました(刑事裁判で殺人を否定する無罪判決となったが、民事裁判では殺人を認定する判決が下った)。


Forbidden Planet3.jpg 「禁断の惑星」という作品は、ストーリーも凝っているように思われ、「テンペスト」をなぞるだけでなく、「イドの怪物」という精神分析的な味付けがされていて、ファーザー・コンプレックスがモチーフになっているように、フロイディズムの影響も濃く滲んでいます。
 また、ロボット・ロビーが博士に怪物の攻撃を止めるよう命じられても出来ないのは、アイザック・アシモフの「ロボット3原則」が下敷きになっているわけですが、この「ロボット3原則」は「ロボコップ」('87年/米)のラストなどにも援用されていたなあ。

 「禁断の惑星」も、時代ものSFパルプマガジンをそのまま映像化したような雰囲気はあるものの、それでいて結構おシャレな、レトロ・モダン感満載の"未来"像が楽しめるし、アン・フランシスがパルプマガジンの表紙そのままに超ミニで歩き回るし、この作品が実質的には映画デビュー作であるアダムス機長を演じたレスリー・ニールセンは、多分大多数の日本人がイメージしキャプテンウルトラ222.jpgている彼の演技とは全く異なる演技をしているし(昔の怪獣映画の宝田明や夏木陽介の感じ、乃至は、背景も含めると「キャプテンウルトラ」('67年)の中田博久の方がより近いか)、いろいろと見所が多い作品です(「なぜウチの中にビオトープがあるのか?」とか、突っ込み所も含めて)。

キャプテンウルトラ ハック2.jpg 尚「キャプテンウルトラ」にも、「宇宙警察パトロール隊」と共に「宇宙船シュピーゲル号」(なぜかドイツっぽい名前)に乗り込み、バンデル星人や怪獣たちと戦い続ける万能ロボット「ハック」が登場しますが、こちらは「ゴジラ」以来の日本の"伝統"か(この番組の制作城野ゆき.jpg会社は東映)、着ぐるみっぽいロボットでした。このシリーズは、脚本が番組放送に追いつかなくなった「ウルトラQ」と、その後継番組として構想されていた「ウルトラマン」との間の所謂「つなぎシリーズ」だったので、書割りのような背景からも察せられる通り、番組制作予算は限られていたようです。その後ウルトラ・シリーズでお決まりとなる"紅一点"の女性隊員は、ここでは「アカネ隊員」ですが、「ウルトラマン」で桜井浩子が演じた「フジ・アキコ隊員」、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「アンヌ隊員」と並んで、この「キャプテンウルトラ」で城野ゆきが演じた「アカネ隊員」キャプテンウルトラ」第9話42.jpgアカネ隊員s.jpgアカネ隊員3s.jpgアカネ隊員5s.jpgも、今もって人気があるようです(フジ・アキコ隊員、アンヌ隊員のいわば先輩格になるわけだが、1度だけコスプレっぽい服を着ていたことがある。「禁断の惑星」のアン・フランシスを意識したのか)。

「キャプテンウルトラ」第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」
 

禁断の惑星 11 アンフランシス.jpg SFパルプマガジン風ファッション

禁断の惑星 21 アン・ニールセン.jpg 万能ロボット・ロビー登場

禁断の惑星 20 アン.jpg なぜウチの中にビオトープがあるのか?

禁断の惑星 04 アン・レスリー.jpg アン・フランシス/レスリー・ニールセン
Forbidden Planet(1956)
Forbidden Planet(1956).jpg
「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98しねまみらの.jpgシネマミラノ 劇場内.jpgシネマミラノ.jpg分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシスレスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス/ボブ・ディックス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
名画座ミラノ 1971年11月、歌舞伎町「東急ミラノビル」4Fにオープン、→「シネマミラノ」(写真)、2006年6月1日~「新宿ミラノ3」 2014(平成26)年12月31日閉館。

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]」 

宇宙家族ロビンソン dvd.jpg宇宙家族ロビンソン l.jpg「宇宙家族ロビンソン」Lost in Space (CBS 1965~68) ○日本での放映チャネル:TBS(1966~68)
(全3シーズン。第1シーズンはモノクロ、第2シーズンからカラー)

宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン DVDコレクターズ・ボックス 通常版」 

  

刑事コロンボ 愛情の計算 vhs.bmp「刑事コロンボ/愛情の計算」●原題:MIND OVER MAYHEM●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●脚本:スティーブン・ボッコ/ディーン・ハーグローブ/ローランド・キビー刑事コロンボ 愛情の計算3.bmp●原案:ロバート・スペクト●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ホセ・ファーラー/ロバート・ウォーカー/ジェシカ・ウォルター/リュー・エヤーズ/リー・H・モンゴメリー/アーサー・バタニデス/ジョン・ザレンバ/ウィリアム・ブライアント/ルー・ワグナー/バート・ホランド●日本公開:1974/08●放送:NHK総合(評価:★★★)特選 刑事コロンボ 完全版「愛情の計算」【日本語吹替版】 [VHS]

恋におちたコロンボ1.jpg「新・刑事コロンボ/恋におちたコ恋におちたコロンボ dvdブック.jpgロンボ」●原題:IT'S ALL IN THE GAME●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ビンセント・マクビーティ●製作:クリストファー・セイター●脚本:ピーター・フォーク●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/フェイ・ダナウェイ/アルマンド・プッチ/クローディア・クリスチャン/ジョン・フィネガン/ビル・メイシー/シェリー・モリソン/ブルース・E・モロー/ジョニー・ガーデラ/ダグ・シーマン/ダニエル・T・トレント/トム・ヘンシェル日本公開:1999/05●放送:NTV(評価:★★★☆)
新刑事コロンボDVDコレクション 17号 (恋におちたコロンボ) [分冊百科] (DVD付)

裸の銃(ガン)を持つ男 dvd.jpg裸の銃(ガン)を持つ男 1.jpg「裸の銃(ガン)を持つ男」●原題:THE NAKED GUN:FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・ザッカー●製作:ロバート・K・ウェイス●脚本:ジェリー・ザッカー/ジム・エイブラハムズ/デヴィッド・ザッカー/パット・プロフト●撮影:ロバート・スティーヴンス●音楽:アイラ・ニューボーン●時間:85分●出演:レスリー・ニールセン/プリシラ・プレスリー/ジョージ・ケネディ/O・J・シンプソン/リカルド・モンタルバン/ナンシー・マルシャン●配給:UIP映画配給●日本公開:1989/04(評価:★★★☆)
裸の銃(ガン)を持つ男 [DVD]

「キャプテンウルトラ」中田.jpgキャプテンウルトラ.jpg「キャプテンウルトラ」●演出:佐藤肇、田口勝彦/加島昭/竹本弘一/山田稔/富田義治●制作:平山亨/植田泰治●脚本:大津皓一/高久進/長田紀生/井口達/伊上勝●音楽:冨田勲●出演:中田博久/城野ゆき小林稔侍/伊沢一郎/安中滋/相馬剛三/都健二/田川恒夫●放映:1967/04~09(全24回)●放送局:TBキャプテンウルトラ」9.jpgキャプテンウルトラ」第9話61PQCFU.jpg 「キャプテンウルトラ Vol.2 [DVD]
中田博久(キャプテンウルトラ=本郷武彦)/城野ゆき(アカネ隊員)
 

「キャプテンウルトラ」第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」 
城野ゆき(アカネ隊員)1_500.jpgアカネ隊員cp.jpg城野ゆき(アカネ隊員)










小林稔侍(キケロ星人ジョー)[当時26歳]/「シュピーゲル号」プラモデル
キャプテンウルトラ 小林稔侍.jpgシュピーゲル号.jpg

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複雑な問題をわかり易く説明することのプロが、時間をかけて書いた本だけのことはあった。

まんが パレスチナ問題.jpg 『まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)』 ['05年]    sadat.jpg アラファト.jpg

 旧約聖書の時代から現代まで続くユダヤ民族の苦難とパレスチナ難民が今抱える問題、両者の対立を軸とした中東問題全般について、その宗教の違いや民族を定義しているものは何かということについての確認したうえで、複雑な紛争問題の歴史的変遷を追ったもので、周辺諸国や列強がどのようなかたちでパレスチナ問題に関与したか、それに対しイスラエルやパレスチナはどうしたかなどがよくわかります。

 最初のうちは、マンガ(と言うより、イラスト)がイマイチであるとか、解説が要約され過ぎているとか、地図の一部があまり見やすくないとか、心の中でブツブツ言いながら読んでいましたが、結局、読み出すと一気に読めてしまい、振り返ってみれば、確かに史実説明が短い文章で切られているため因果関係が見えにくくなってしまい、歴史のダイナミズムに欠ける部分はあるものの、全体としては、わかり易く書かれた本であったという印象です。

 ユダヤの少年ニッシムとパレスチナの少年アリによるガイドという形式をとっていて、(会話体の割には教科書的な調子の記述傾向も一部見らるものの)双方のパレスチナ問題に関する歴史的事件に対する見解の違いを浮き彫りにする一方で、ちょっと工夫されたエンディングも用意されています。

 著者は、広告代理店の出身で、教育ビデオの制作などにも携わった経験の持ち主ですが、複雑な問題をわかり易く説明することにかけてのプロなわけで、そのプロが、2年半もの時間をかけて書いた本、というだけのことはありました。

 読み終えて、ロンドンのロスチャイルドのユダヤ人国家建国の際の政治的影響力の大きさや、'48年、'56年、'67年、'73年の4度の中東戦争の経緯などについて新たに知る部分が多かったのと、サダト・元エジプト大統領に対する評価がよりプラスに転じる一方で、アラファト・元PLO議長に対する評価のマイナス度が大きくなりました。


 要所ごとに、「十戒」「クレオパトラ」「チャップリンの独裁者」「アラビアのロレンス」「夜と霧」「屋根の上のバイオリン弾き」「栄光への脱出」といった関連する映画がイラストで紹介されているのも馴染み易かったです。

屋根の上のバイオリン弾き.jpg屋根の上のバイオリン弾き2.jpg 「屋根の上のバイオリン弾き」('71年)は、もともと60年代にブロードウェイ・ミュージカルとして成功を収めたもので、ウクライナ地方の小さな村で牛乳屋を営むユダヤ人テヴィエの夫婦とその5人の娘の家族の物語ですが、時代背景としてロシア革命前夜の徐々に強まるユダヤ人迫害の動きがあり、終盤でこの家族たちにも国外追放が命じられる―。

Topol in Fiddler On the Roof
『屋根の上のバイオリン弾き』(1971).jpg 映画もミュージカル映画として作られていて、テーマ曲のバイオリン独奏はアイザック・スターン。ラストの「サンライズ・サンセット」もいい。

 主演のトポルはイスラエルの俳優で、舞台で既にテヴィエ役をやっていたので板についていますが、森繁の舞台を先に見た感じでは、やはりこの作品は映画より舞台向きではないかという気がしました("幕間"というものが無い映画で3時間は結構長い)。

Katharine Ross in Voyage Of The Damned
Katharine Ross Voyage Of The Damned.jpgさすらいの航海(VOYAGE OF THE DAMNED).jpg 事件的にはややマイナーなためか紹介されていませんが、第2次大戦前夜、ドイツから亡命を希望するユダヤ人937名を乗せた客船が第二の故郷を求めて旅する実話の映画化「さすらいの航海」('76年/英)なども、ユダヤ人の流浪を象徴する映画だったと思います。

 船に乗っているのは比較的裕福なユダヤ人たちですが、ナチスVoyage of the Damned1.jpgの策略で国を追い出されアメリカ大陸に向かったものの、キューバ、米国で入港拒否をされ(ナチス側もそれを予測し、ユダヤ人差別はナチスだけではないことを世界にアピールするためわざと出航させた)、結局また大西洋を逆行するという先の見えない悲劇に見舞われます。

Voyage of the Damned2.jpg この映画はユダヤ人資本で作られたもので、マックス・フォン・シドーの船長役以下、オスカー・ヴェルナーとフェイ・ダナウェイの夫婦役、ネヘミア・ペルソフ、マリア・シェルの夫婦役、オーソン・ウェルズやジェームズ・メイソンなど、キャストは豪華絢爛。今思うと、フェイ・ダVOYAGE OF THE DAMNED Faye Dunaway.jpgナウェイのような大物女優からリン・フレデリック、キャサリン・ロスのようなアイドル女優まで(キャサリン・ロスは今回は両親を養うために娼婦をしている娘の役だが)、よく揃えたなあと。さすがユダヤ人資本で作られた作品。但し、グランドホテル形式での人物描写であるため、どうしても1人1人の印象が弱くならざるを得なかったという映画的な弱点も見られたように思います。

FIDDLER ON THE ROOF 1971.png『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)2.jpg「屋根の上のバイオリン弾き」●原題:FIDDLER ON THE ROOF●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督・製作:ノーマン・ジュイスン●脚本:ジョセフ・スタイン●撮影:オズワルド・モリス●音楽:ジョン・ウィリアムス●原作:ショーレム・アレイヘム「牛乳屋テヴィエ」●時間:179分●出演:トポル/ノーマ・クレイン/ロザリンド・ハリス/スカラ座.jpg新宿スカラ座22.jpgミシェル・マーシュ/モリー・ピコン/レナード・フレイ/マイケル・グレイザー/ニーバ・スモール/レイモンド・ラヴロック/ハワード・ゴーニー/ヴァーノン・ドブチェフ●日本公開:1971/12●配給:ユナイト●最初に新宿スカラ座.jpg観た場所:新宿ビレッジ2(88-11-23)(評価:★★★☆)

新宿ビレッジ1・2 新宿3丁目「新宿レインボービル」B1(新宿スカラ座・新宿ビレッジ1・2→新宿スカラ1・2・3) 2007(平成19)年2月8日閉館

 

吉祥寺スカラ座・吉祥寺オデヲン座・吉祥寺セントラル・吉祥寺東宝
吉祥寺東亜.jpg「さすらいの航海」●原題:VOYAGE OF THE DAMNED●制作年:1976年●制作国:イギリス●監督・製作:スチュアート・ローゼンバーグ●撮影:オズワルド・モリス●音楽:ラロ・シフリン●原作:ゴードン・トマス/さすらいの航海 リン・フレデリック4.jpgマックス・モーガン・ウィッツ「絶望の航海」●時間:179分●出演:フェイ・ダナウェイ/オスカー・ヴェルナー/リン・フレデリック/マックス・フォン・シドー/マルコム・マクダウェル/リー・グラント/キャサリン・ロス/オーソン・ウェルズさすらいの航海 ウェルズ2.jpg/ジェームズ・メイソン吉祥寺セントラル・吉祥寺スカラ座.jpg/マリア・シェル/ネヘミア・ペルソフ/ホセ・フェラー/フェルナンド・レイ●日本公開:1977/08●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:吉祥寺スカラ座 (77-12-24)(評価:★★★)●併映:「シビルの部屋」(ネリー・カフラン) 
吉祥寺スカラ座 1954(昭和29)年、吉祥寺駅東口付近に「吉祥寺オデヲン座」オープン。1978(昭和53)年10月、吉祥寺オデヲン座跡に竣工の吉祥寺東亜会館3階にオープン(5階「吉祥寺セントラル」、2階「吉祥寺アカデミー」(後に「吉祥寺アカデミー東宝」→「吉祥寺東宝」)、B1「吉祥寺松竹オデヲン」(後に「吉祥寺松竹」→「吉祥寺オデヲン座」)。 2012(平成24)年1月21日、同会館内の全4つの映画館を「吉祥寺オデヲン」と改称、同年8月31日、地下の前・吉祥寺オデヲン座(旧・吉祥寺松竹)閉館。 

吉祥寺東亜会館
吉祥寺オデオン.jpg 吉祥寺オデヲン.jpg

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多くの人が犠牲となった原因を浮き彫りに。2つの"The Tower"を思い出した。
World trade centers attack Here is a diagram showing where the planes hit and the times of impact and collapse.gif
9.11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言.jpg 『9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言』 ['05年]

9.11 生死を分けた102分.jpg ニューヨークタイムズの記者が、2001年に起きた世界貿易センター(WTC)の9.11事件後、生存者・遺族へのインタビューや警察・消防の交信記録、電話記録などより、その実態を詳細にドキュメントしたもので、"102分"とは、WTC北タワーに旅客機が突入してからビルが2棟とも崩壊するまでの時間を指していますが、その間の北タワー、南タワーの中の状況を、時間を追って再現しています。

 380ページの中に352人もの人物が登場するので混乱しますが(内、126人は犠牲者となった。つまり、犠牲者の行動は、残りの生存者の目撃談によって記されていることになる)、米国の書評でも、この混乱こそ事件のリアリティを伝えている(?)と評されているとのこと。

 WTCは、大型旅客機が衝突しても倒れないように設計されたとかで、確かに、旅客機が「鉛筆で金網を突き破る」形になったのは設計者の思惑通りだったのですが、その他建築構造や耐火性の面で大きな問題があったとのこと(建材の耐火試験をしてなかった)、それなのに、人々がその安全性を過信していたことが、犠牲者の数を増やした大きな要因であったことがわかります。

航空機の衝突で炎上する世界貿易センタービル.jpg 旅客機衝突50分後にやっと南タワーに救出に入った多くの消防隊員たちは、その時点で、旅客機が衝突した階より下にいた6千人の民間人はもう殆ど避難し終えていたわけで、本書にあるように、上層階に取り残された600人を助けにいくつもりだったのでしょうか(ただし内200人は、旅客機衝突時に即死したと思われる)。ビルはゆうにあと1時間くらいは熱に耐えると考えて、助けるべき民間人が既にいない階で休息をとっている間に、あっという間にビル崩壊に遭ってしまった―というのが彼らの悲劇の経緯のようです。

航空機の衝突で炎上する世界貿易センタービル

崩壊した世界貿易センタービル.jpg 一方、北タワーに入った消防隊員たちには、南タワーが崩壊したことも、警察ヘリからの北タワーが傾いてきたという連絡も伝わらず(元来、警察と消防が没交渉だった)、そのことでより多くが犠牲になった―。

 亡くなった消防隊員を英雄視した筆頭はジュリアーニ市長ですが、本書を読み、個人的には、こうした人災的問題が取り沙汰されるのを回避するため、その問題から一般の目を逸らすためのパーフォーマンス的要素もあったように思えてきました。

崩壊した世界貿易センタービル

 事件後、消防隊員ばかり英雄視されましたが、ビル内の多くの民間人が率先して避難・救出活動にあたり、生存者の多くはそれにより命を落とさずに済んだことがわかります。

 それでも、北タワーの上層階では、避難通路が見つけられなかった千人ぐらいが取り残され犠牲となった―、そもそも、110階建てのビルに6階建てのビルと同じ数しか非常階段が無かったというから、いかにオフィススペースを広くとるために(経済合理性を優先したために)安全を蔑ろにしたかが知れようというものです。


 本書を読んで、2つの"The Tower"を思い出しました。

The Tower SP.gifThe Tower.jpg 1つは、ビル経営シミュレーションゲームの"The Tower"(当初は「タワー」というPCゲーム、現在は「ザ・タワー」というゲームボーイ用ソフト)で、収入を得るために賃貸スペースばかり作っていると、初めは儲かるけれどもだんだん建物のあちこちに不具合が出てくるというものでした(オートモードにして、ちょっと外出して戻ってみると、空き室だらけなっていた...)。 

タワーリング・インフェルノ3.jpgtowering.gif もう1つは、"The Tower"というリチャード・マーティン・スターンが'73年に発表した小説で(邦訳タイトル『そびえたつ地獄』('75年/ハヤカワ・ノヴェルズ))、これを映画化したのが「タワーリング・インフェルノ」('74年/米)ですが、映画ではスティ―ブ・マックィーンが演じた消防隊長が、ポール・ニューマン演じるビル設計者に、いつか高層ビル火災で多くの死者が出ると警告していました。

 この作品はスティーブ・マックイーンとポール・ニューマンの初共演ということで(実際にはポール・ニューマン主演の「傷だらけの栄光」('56年)にスティーブ・マックイーンがノンクレジットでチンピラ役で出ているそうだ)、公開時にマックイーン、ニューマンのどちらがクレジットタイトルの最初に出てくるかが注目されたりもしましたが(結局、二人の名前を同時に出した上で、マックイーンの名を左に、ニューマンの名を右の一段上に据えて対等性を強調)、映画の中で2人が会話するのはこのラストのほかは殆どなく、映画全体としては豪華俳優陣による「グランド・ホテル」形式の作品と言えるものでした。スペクタクル・シーンを(ケチらず)ふんだんに織り込んでいることもあって、70年代中盤期の「パニック映画ブーム」の中では最高傑作とも評されています。双葉十三郎氏も『外国映画ぼくの500本』('03年/中公新書)の中で☆☆☆☆★(85点)という高い評価をしており、70年代作品で双葉十三郎氏がこれ以上乃至これと同等の評点を付けている作品は他に5本しかありません。

 因みに、映画の中での「グラスタワー」ビルは138階建て。そのモデルの1つとなったと思われるこの「世界貿易センター(WTC)」ビルは110階建て二棟で、映画公開の前年('73年)に完成して、当時世界一の高さを誇りましたが(屋根部分の高さ417m(最頂部:528m))、翌年に完成した同じく110階建てのシカゴの「シアーズ・タワー」(現ウィリス・タワー)に抜かれています(シアーズ・タワーは屋根部分の高さ442m(アンテナ含:527m))。

タワーリング・インフェルノ dvd.jpg『タワーリング・インフェルノ』(1974) 2.jpg「タワーリング・インフェルノ」●原題:THE TOWERING INFERNO●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:アーウィン・アレン●脚色:スターリング・シリファント●撮影:フレッド・J・コーネカンプ●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原作:リチャード・マーティン・スターン「ザ・タワー」●時間:115分●出演:スティーブ・マックイーン/ポール・ニューマン/ウィリアム・ホールデン/フェイ・ダナウェイ/フレッド・アステア/スーザン・ブレークリー/リチャード・チェンバレン/ジェニファー・ジョーンズ/O・J・シンプソン /ロバート・ヴォーン/ロバート・ワグナー/スーザン・フラネリー/シーラ・アレン/ノーマン・バートン/ジャック・コリンズ●日本公開:1975/06●配給:ワーナー・ブラザース映画)(評価:★★★☆)
タワーリング・インフェルノ [DVD]

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