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このシリーズらしく、観終わった後の印象は重かったねえ。やや救いが無さすぎた感じもするが...。

モース16 メアリー・ラプスレイに起こったこと dvd.jpg モース16 メアリー・ラプスレイに起こったこと dvd.jpg モース警部 Vol.16「メアリー・ラプスレイに.jpg
"Inspector Morse: Second Time Around [DVD] [Import]"(メアリー・ラプスレイに起こったこと)

メアリー・ラプスレイに起こったこと2.png 元警視副総監ヒリアン(モーリス・ブッシュ)の叙勲パーティが開かれ、モースはかつての同僚でタカ派のドーソン警部(ケネス・コリー)と会話する。ドーソン夫妻は酔ったヒリアンを彼の屋敷に送り、ソファーに寝かしつけ帰宅するが、何者かが侵入して部屋を物色、気づいたヒリアンと揉み合いになり、投げられたヒリアンは床で頭を打って死亡する。彼は回顧録を執筆中で、犯人は原稿の一部を奪い去っていたが、それは18年前のメアリー・ラプスレイという少女の殺人事件に関係するもので、その時の容疑者だったレッドバス(オリヴァー・フォード・ディヴィス)が、車を目撃されたとしてまたもや逮捕される。回想録が出版されることで、未解決事件の犯人として再び自分に嫌疑がかかるのを恐れたための犯行との見方が有力だったが、ドーソンは彼は犯人ではないという確信を持っているようだった。彼の妻(アン・ベル)は夫の直情径行を心配している。捜査の指揮官はモースだが、ドーソン警部の助言も参考にしながら調べていくうちに、モースは少女の隣人ミッチェル家(母パット・ヘィウッド、息子クリストファー・エクルストン)に注目するとともに、殺害された少女の父親が誰なのかを探る―。

モース16 メアリー・ラプスレイに起こったこと vhs.jpg 「主任警部モース」シリーズの第16話で、1991年に本国で放映され、2001年に日本語字幕付きVHSが発売されています。「IMDb」のレーティングは8.4と高め。

 ルイスがレッドバスが犯人だと決めつけ気味であることから、逆に真犯人は誰かということが見えてこなくもなく、本来は非常に意外性の高い犯人であるところが、そうでもなかったような...。
モース16.jpg 一方で、動機はラスト近くまで判らなかったなあ。その背後事情となると尚更に複雑で、子供に対する親の愛情が、復讐と保護という形でダブルで拮抗していたわけかあ。ドーソン夫妻の夫婦間の溝というのも伏線としてあったことになるけれど、これだけではねえ。モースとドーソン夫人の間に恋愛感情は芽生えるのか―といった関心は引き起こしたけれど。

 でも、このシリーズらしく、観終わった後の印象は重かったねえ。ちょっと救いが無さすぎた感じもしますが、ずっとモースの捜査方法に異議を唱えて、仕舞にはややプッツンした感じだったルイスが、最後に素直にモースに謝るところは清々しかったです。勿論、モースは「いいんだ」とも「気にするな」とも言わないんだけど。

INSPECTOR MORSE:Second Time Around.jpg「主任警部モース(第16話)/メアリー・ラプスレイに起こったこと」●原題:INSPECTOR MORSE:SECOND TIME AROUND●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1991/02/20●監督:エイドリアン・シェアゴールド●脚本:ダニエル・ボイル●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/モーリス・ブッシュ/ケネス・コリー/オリヴァー・フォード・ディヴィス/アン・ベル/パット・ヘィウッド/クリストファー・エクルストン●ⅤHS発売:2001/02●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)
Chief Inspector Morse (John Thaw) talks over the case with Chief Inspector Patrick Dawson (Kenneth Colley) in the gardens of a venue for the Oxford Arts Festival.

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モース、やや暴走気味で踏んだり蹴ったりだったが、女性捜査官との距離感の推移が楽しめた。

モース(第14話)/死を呼ぶドライブ dvd.jpg モース(第14話)/死を呼ぶドライブ vhs.jpg  モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 0.jpg
Inspector Morse: Driven to Distraction [VHS] [Import]」(死を呼ぶドライブ)
Inspector Morse: Driven to Distraction [DVD] [Import]

死を呼ぶドライブ.jpg 一人暮らしの若い女性が連続して殺害され、被害者2人の共通点を探したモースは、彼女らがクルマを何れもディーラーのボイントン(パトリック・マラハイド)から買っていること、ボイントンは被害者ソーン(ジュリア・レーン)とも接点があり、被害者の女友達アンジー(テッサ・ウォーツザック)を脅迫するなどしていたことから、物証はないもののボイントンを犯人と確信、自動車会社の隣の自動車教習所のベテラン教習官ウィテカー(デヴィッド・ライアル)のもとへ教習を受けるため定期的に通うことで、ボイントンにプレッシャーをかける。捜査に参入した犯罪心理学の専門家である女性捜査官メイトランド(メアリー・ジョー・ランドル)は、初めはモースの強引な捜査に違和感を覚えるが、次第にモースの被害者への同情や犯罪への怒り、そして捜査そのものに対する彼の姿勢に共感を覚えるようになっていく―。

死を呼ぶドライブ 1.jpg 「主任警部モース」シリーズの第14話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。「IMDb」のレーティングは8.1となっています。

 モースとメイトランドはコンピュータの記録から過去の類似事件を見つけますが、犯人が収監中であるのに、その事件で幸い助かった女性は引き続き脅迫電話を受けており、モースはこれ以上の犯行を阻止するためにボイントンを拘束、しかし、相変わらず物証が得られず上司の命令で釈放するも、ボイントンは脅迫した女性の恋人に襲われ負傷し入院、その間に3人目の犠牲者が出ます(入院中の彼には犯行は不可能ということになる)。

モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 2.jpg 時々、自らの思い込みから暴走することがあるモース。今回はその典型で、誤認逮捕の挙句、最後は包丁を持った真犯人と車内で格闘し、自分の命まで危機に晒される―という、事件的には踏んだり蹴ったりのエピソード、刑事ドラマの最後の方で、主役の刑事が誤認逮捕した相手に誤っている場面が来るというのも冴えない話ですが、モースと女性捜査官メイトランドとの心理的関係の推移が思いの外に楽しめました。

 メイランドはいわばプロファイラーであり、モースも捜査陣の前で彼女に講釈させますが、モース自身はハナから信頼していない様子。実地検証でも彼女の予想は外れ、モースもそれ見ろといった感じで、ここまでは、犯罪心理学とかプロファイリングなんて馬鹿にしているであろうモースらしい展開。しかし、ここからが意外な展開で、令状無しの強硬捜査で、ルイスら他の部下は、こんな違法行為は許されないと現場を去ったのに、彼女だけが「やりましょう」と残って、モースと共に徹夜で作業する―この辺りから2人の距離感は急速に狭まってきます。

モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 3.jpg ラスト、犯人との格闘で腕を負傷したモースがその腕を使って作業しているのを見て、メイトランドが医者に禁じられているのでは気遣ったところ、自分は天邪鬼だから人に言われたことと反対の事をすると言うモース。それに対して、「じゃ、私に電話しないでね」と言って去っていくメイトランド―この遣り取りが良かったです。

 犯人も意外だったけれど、モースと女性捜査官の関係の推移の方がもっと意外だったかな。原作者コリン・デクスターは、どういうわけかコインランドリーにいましたね(結構はっきり映っていた)。

Broadway Car Park, Old Hatfield, Hert, UK - Inspector Morse, Driven to Distraction
モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 4.jpg390e1006-ccee-4ec6-b61c-f544ee1537cf.jpg「主任警部モース(第14話)/死を呼ぶドライブ」●原題:INSPECTOR MORSE:DRIVEN TO DISTRACTION●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/17 ●監督:サンディ・ジョンソン●脚本:アンソニー・ミンゲラ●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/パトリック・マラハイド/メアリー・ジョー・ランドル/ジュリア・レーン/テッサ・ウォーツザック/デヴィッド・ライアル●ⅤHS発売:2000/12●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)

MyTopDozen(海外サイト)
  List of Best Inspector Morse Episodes
Rank  Score       Item
  1.  133  Driven to Distraction (第14話/死を呼ぶドライヴ)
  2.  131  Last Bus to Woodstock (第7話/ウッドストック行き最終バス
  3.  126  Service of All the Dead (第3話/死者たちの礼拝)
  4.  123  Cherubim and Seraphim (第25話/ケルビムとセラフィム)
  5.  121   Who Killed Harry Field? (第18話/誰がハリー・フィールドを殺したのか?)
  6.  116  Twilight of the Gods (第28話/神々の黄昏)
  7.  113  Infernal Serpent (第12話/邪悪の蛇
  8.  110  Death Is Now My Neighbour (第31話/死は我が隣人)
  9.  103  Happy Families (第22話/ハッピー・ファミリー)
  10.  103  Absolute Conviction (第24話/有罪判決)
  11.  94  Second Time Around (第16話/メアリー・ラプスレイに起こったこと
  12.  94  Ghost in the Machine (第8話/ハンベリー・ハウスの殺人

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モース vs. 天才詐欺師。面白かったが、犯人には犯罪哲学があるような無いような...。

モース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」dvd.jpg  INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES.jpg Inspector Morse・episode 15 (Masonic Mysteries).jpg
Inspector Morse: Masonic Mysteries [DVD] [Import]」(魔笛〜メソニック・ミステリー~)

モース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」2.jpg モースも一員である合唱団のオペラ公演「魔笛」のリハーサルに、彼は車で女友達のベリル(マデリーン・ニュートン)と駆けつけるが、運転の荒っぽさを彼女に詰られ、帰りは別行動でと言われてしまう。そのベリスが、一時稽古場を離れた隙に殺害された。悲鳴を聞き、第一発見者となったモースは、凶器の包丁を拾い上げて容疑者となってしまう。モースのことを良くは思っていないボトムリー警部(リチャード・ケイン)が捜査の指揮を執り、ルイスがその配下に付くが、次々とモースに不利な証拠が現れ、濡れ衣を晴らそうとするモースは、逆に追いつめられていく―。

Romeland Gardens, St Albans, Herts, UK - Inspector Morse, Masonic Mysteries (1990)

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズモース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」vhs輸入版.jpgの第15話で、1990年に本国で放映され、2001年に日本語字幕付きVHSが発売されています(監督ダニー・ボイル、脚本ジュリアン・ミッチェル)。「IMDb」のレーティングは8.4という高さ。実際、面白かったですが、ややもやっとした印象も。

モース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」デクスター.jpg オペラ好きのモースは、オペラの合唱団にも入っていたわけか(モースの前列には、原作コリン・デクスター .jpg者のコリン・デクスターがいて、結構大映しになっているカットがある)。殺害されたべリルは、モースが好意を抱き、かなり積極的にアプローチしていた女性。モース自身も自宅で不審火に見舞われ、自慢のLP盤コレクションがかなりの被害に遭った模様です(トスカニーニの「魔笛」を最悪としているけれど、これ、演奏はBBC交響楽団のものか?)
Inspector Morse: Masonic Mysteries [VHS] [Import]

INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES 2.jpg かつて自分が捕まえた天才的詐欺師ド・フリースが怪しいと睨んだモースでしたが、彼は記録上は海外で獄死したことになっていて、但し、ルイスが調べてみると、コンピュータをハッキングしてデータを改竄していたらしい。時としてモースに反感を抱き、前話ではモースの強引な捜査に反発していたルイスですが、今回は最初から無能なボトムリー警部(フリーメーソン信者らしい)は相手にせず、モース一辺倒でした。しかも、得意なコンピュータでハッキングを突き止めるという、IT犯罪捜査官のような活躍ぶり(操っているのは、黒い画面にグリーンの文字が出るMS-DOSコンピュータみたいだが)。

INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES1.jpg 「機械オンチのモースに犯行は無理で、犯人はモースよりずっと頭がいい」というルイスの言い分は可笑しいですが、やはりド・フリースは生きていて(冒頭のオペラ・リハーサルの衣装係に注目)、モースをその命を奪えるところまで追い詰めるも、アッカンベーするみたいな感じで逃げていく。そして、意外な共犯者と合流。しかし、その途端に警察に包囲され、モースがちょっと前に見た幻視通りに―。

 見た目は気色悪いけれど、「魔笛」に準えて犯行を実行するなど犯罪哲学のようなものを持っているように思えた詐欺師ド・フリースについては、逃げ延びさせる手もあったのでないかなあとも。
 彼を崇拝する共犯者の女性(最初はモースの協力者を装っていた)の方がワルだったような気もするけれど、結局ド・フリースも実行犯だったのか? 「誰も殺さない」という犯罪哲学ではなく、復讐相手の愛している者を奪うことによってその相手に復讐するという、単なる方法論に過ぎなかったのかなあ。それにしても自分はあっさり死んじゃったなあ(そんなに監獄が嫌なのか)。終盤はそれなりに緊迫感はありましたが、その辺りのもやっとした感じが個人的にはちょっと引っ掛かったかも。

INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES 5.jpg モースはルイスに「魔笛」を知らないと事件の話が通じにくいと言い放ち、自分はもう(こんな事件があって)合唱隊は辞めるとしながらも、ルイスにはベリル追悼公演となった「魔笛」を半ば無理矢理聴きに行かせますが、ルイスは台詞がさっぱり聴き取れないと言って途中で夫婦で会場を抜け出してしまいました。「魔笛」は普通ドイツ語でやりますから、台詞が解らなくて当然なのですが、この辺りは労働者階級出身のルイスらしかったかな(映画「アマデウス」では映画観客層に合わせてモーツアルト歌劇を全部英語でやっていたけれど)。でも、ルイスがハッキングを突き止め、自分の疑いを晴らした時などは、モースは感謝の祝杯を挙げるという心遣いもみせています(これも、自分が久しぶりに呑みたかったという理由の方が大きいか)。
Fishpool St, St Albans, Herts, UK - Inspector Morse, Masonic Mysteries (1990)

 新米刑事時代のモースを描いた当シリーズの前日譚「新米刑事モース~オックスフォード事件簿~」(2012年1月からITVで放送)の脚本家ラッセル・ルイスがこのエピソードに影響を受けて、「Case3/殺しのフーガ」(2013年)というエピソードの脚本を書いているそうなので、機会があれば観てみたいと思います。

「主任警部モース(第15話)/魔笛〜メソニック・ミステリー~」●原題:INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/24 ●監督:ダニー・ボイル●脚本:ジュリアン・ミッチェル●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/マデリーン・ニュートン/イーアン・マクディアミット/セレスティーン・ランダル/リチャード・ケイン●ⅤHS発売:2001/01●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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ラストまで飽きさせない展開である上に、諸々のもやもやが最後一度にスッキリする。

第13話/ラドフォード家の遺産 dvd.jpg 第13話/ラドフォード家の遺産 dvd.jpg 第13話/ラドフォード家の遺産.jpg
Inspector Morse: Sins of the Father [DVD] [Import]」(ラドフォード家の遺産)

第13話/ラドフォード家の遺産 01.jpg 150年もの歴史を誇るラドフォード醸造社の社長トレヴァー(アンディ・ブラッドフォード)が酒樽の中で死体で見つかる。ライバル企業からの買収問題に揺れるラドフォード家では、自立再建派の被害者と会社売却派の弟スティーブン(ポール・シェリー)との間に確執があり、更にスティーブンは、元秘書の妻を差し置いて、兄トレヴァーの妻ヘレン(キム・トンソン)と親密状態にある。兄の死によって新社長となり、会社を売却の方に舵を切るかに思えたスティーブンだったが、彼もまた殺害され、酒樽の中で見つかる。息子2人を亡くしたチャールズ(ライオネル・ジェフリーズ)とその妻イザベル(イザベル・ディーン)が、会社の自立再建か売却かを決める重役会議を召集する。一方、トレヴァーの秘書ゲイルは、鉄道オタクの薬剤師ブリースと交際しているが、モースが事件を探る中で、ブリースとその母親は、ラドフォード社の創業に纏わる秘密があるらしいことが判る。そして、その秘密を知っているらしい弁護士ネルソンも殺害されてしまう―。

第13話/ラドフォード家の遺産 vhs.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第13話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。原題は「父親たちの罪」の意。監督は、「シャーロック・ホームズの冒険(第25話)/四人の署名」 ('78年/英)などのピーター・ハモンド。

Inspector Morse - Sins of the Father [VHS] [Import]

 関係者が揃って口をつぐむため、モースは皆何か隠していると訝しみ、やや不機嫌そう。事件解決には相当に難儀しましたが、第1・第2の犯行(兄弟の殺害)と、第3の弁護士の殺害が密接に関係しているとの見当をつけながらも、両事件の犯人を切り離して考えることで犯人逮捕に至り、事件は一件落着したかに―しかし、モースは何となく腑に落ちない...。

 一旦は事件が解決したように見えた後で、部下の部長刑事(ここではルイス)の何気ない言葉から真相に気づくというのは、「バーナビー警部(第47話)/消えないセピア色」('06Ye Olde Fighting Cocks, St Albans, Herts, UK - The Sins of the Fathers (1990).jpg年/英)にもあります。ルイスの言葉遣いは庶民派で、弁護士の事務所にかかってきた犯人からと思われる電話の言葉遣いは上流階級のものだったということなのでしょう(その違いから閃いた)。鉄道オタクの薬剤師(それにしてはモデルのような美人の黒人の恋人がいる)の母親の言葉遣いは"庶民派"であり、よって犯人ではなく、実は母親は、第3の犯行が息子の仕業だと思って彼を庇ったのでした。

Ye Olde Fighting Cocks, St Albans, Herts, UK - The Sins of the Fathers (1990) in Movie Location

 トレヴァーが持っていた「会社の評価額が高すぎる」という殺害される直前に3年前の日付で書かれた手紙の意味がずっと謎であり(売却反対派の彼ならば、その逆のことを言うのが自然である)、観ていて理解できなかったのが、最後にその謎が氷解する展開も見事で、ラストまで飽きさせない展開である上に、諸々のもやもやが一度にスッキリするという、「IMDb」のレーティングが7.8と、前作「邪悪の蛇」の8.0に続いてある程度高いのも頷けるエピソードでした。
Lisa Harrow
Lisa Harrow.gif スティーブンの妻(リサ・ハーロウ)が、夫とは躰だけの関係で結婚したと割り切って、ラドフォード家の人々には愛想をつかしながらも、自宅室内プールでオペラ「椿姫」を聴きながらスイミングに勤しみ、ナイスボディだけは維持しているというのがなかなか良かったです(義姉に自分の夫を「貸し出してもいいのよ」と言う発想がスゴイね。体力ありそうだし、一時、彼女が真犯人ではないかと...)。まあ、彼女にはラドフォード家の遺産相続人である2人の子供もいるわけだし、伝統を重んじ(カネへの執着もさることながら、それ以上に)不名誉を嫌うラドフォード家の人々の価値観の方に尋常ならざるものInspector Morse Sins of the Fathers [Audiobook].jpgがあるわけで、彼女が愛想をつかすのも無理はないといったところでしょうか(但し、彼女にとっても財産は魅力的であるが故に、こうした割り切り方になるわけか。納得)。

「主任警部モース(第13話)/ラドフォード家の遺産」●原題:INSPECTOR MORSE:THE SINS OF THE FATHERS●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/10 ●監督:ピーター・ハモンド●脚本:ジェレミー・バーナム●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アンディ・ブラッドフォード/イザベル・ディーン/サイモン・スレイター/リサ・ハーロウ/カミラ・エインズリー/キム・トンソン●VHS発売:2000/11●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)

Inspector Morse: Sins of the Fathers [Audiobook] [Audio Cassette] (1993)

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次々と入れ替わる「第一容疑者」。シリーズの中でも傑作の部類ではないか。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 dvd.jpgTHE INFERNAL SERPENT.jpg 主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 0.jpg
Inspector Morse Set Four - The Infernal Serpent [DVD] [Import]」/「Inspector Morse: Infernal Serpent Set [DVD] [Import]」(The Infernal Serpent(邪悪な蛇)/The Sins of the Fathers/Driven to Distraction/Masonic Mysteries/Second Time Around/Fat Chance)

THE INFERNAL SERPENT2.jpg ある雨の夜、ボーフォートの学内討論会「環境問題は党派政治を超えるか」に学寮長のマシュー(ジェフリー・パルマー)と参加しようとしていたディア博士(デヴィッド・ニール)が、忘れ物を取りに戻った際に何者かに襲われ死亡し、学寮長は現場から逃げ去った若者とぶつかって負傷する。博士の直接の死因は心臓発作だったが、討論会での問題発言を阻止しようとした何者かの仕業なのか? 学寮長は化学肥料会社に投資して利益をあげていたが、その会社は環境問題を引き起こして問題になっていた。その告発記事を書いた「日曜新聞」の記者シルヴィ(チェリル・キャンベル)は学寮長の養女であり、今度の事件後に公邸を訪れ、家族に煙たがられながらも取材のため滞在していた。学寮長夫妻の娘イモジェン(イレーネ・リチャード)はかつて心に傷を負って大学を中退し、今は結婚して夫と厩舎を営んでいたが、今も神経を病んでおり、その原因は定かでない。学寮長の妻ブランチ(バーバラ・リー=ハント)は元ピアニストで、以前は庭師フィルの娘アマンダも彼女にピアノを習いに来ていた。モースは、学寮長の公邸に何度か届いた嫌がらせの小包と事件との関連を疑う一方、学寮長が事件の際に目撃した若者ミックに辿り着いて身柄を確保するが、彼は、自分が博士の傍に行った時には彼は既に死んでいたと言う。ミックと同性愛関係にあり、彼を匿っていた数学者のジェイク(トム・ウィルキンソン)はアメリカに高飛びし、ミックの部屋は何者かによって放火される。モースが、末期がんで入院中のミックの母親を病院に訪ねた際に、逃げ去る不審者を見つけて追跡するが捕り逃がしてしまう―。

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第12話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。TV用のオリジナル脚本ですが、「IMDb」のレーティングは8.0という高ポイントとなっており、実際、よく出来ていたと思います。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 2.jpg 今回は「倒叙法」できたのかと思わせるぐらい、冒頭から不審な素振りを見せる人物が出てきて、実は博士は学寮長と間違えられて殺害されたのではないかとのモースの見方が出てきた以降は、「第一容疑者」が目まぐるしく入れ替わる展開。モースも事件の展開に振り回され放しという感じの中、当の学寮長までも殺害されてしまいます。

 最後に、過去の"邪悪"な出来事が、様々のヒントや当事者の証言から浮かび上がり、モースは学寮長殺害の真犯人にようやっと行き着いたようですが、この学寮長は、誰によって殺害されてもおかしくない人物だったなあと(モースはシルヴィとイモジェンの写った古写真から手掛かりを得るが、その後も、真犯人が誰だったかということについての意外性は十分あった)。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 パブ.jpg 一方のルイスは、現場に残された嘔吐物の分析に執心し、モースが相変わらずパブにちょくちょく立ち寄っては推理を纏めようとしているところへ、ビールを飲んでいるモースに向かってゲロの内容物の話ばかりするため、さすがにモースは嫌な顔をしますが、結局、このルイスの"ゲロへの執着"が、捜査が行き詰ったことに加え、上層部からの圧力もあって事件解明を諦めかけていたモースを、博士殺害の真犯人に導きます。

 しかし、学寮長殺害犯も博士殺害犯も、モースが真犯人に行き着く前に最後自ら犯行を認めた感じでもあり、ブランチがミルトンの『失楽園』の一節から引いた「家の中には邪悪な蛇がいた」という言葉は重く感じられ、一方、酔っぱらって復讐犯行に及ぶ際は、相手を間違えないように注意しなければネ、とも思ったりして...。結果として、別人物がその目的を果たしたことになりますが、主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 vhs.jpgそうしたこともあって、博士の死因は心臓発作にして、どのみち余命僅かだったことにしたわけか(高潔な人物だったという博士には気の毒だったが、殺人罪にはならないわけだ)。

 モースは不審者を追って走り回ったり、自殺しようとする犯人を説得したりと、シリーズとしてはやや珍しい側面も見せますが、パターンから外れ過ぎているという印象はさほど無く、むしろ結末はシリーズらしい余韻を残すものであり、「IMDb」のレーティング"8.0"は伊達ではなく、シリーズの中でも傑作の部類ではないかと思います。

 大学の構内で、考え事をしながら歩いているモースとすれ違ったのが、コリン・デクスターか。モースが、ふと振り返り気味に視線を遣って、「他人の空似か」みたいな表情をチラっと見せた後にまた思索に戻るのがご愛嬌でした。

Inspector Morse: Infernal Serpent [VHS] [Import]
 

Audio Book Colin Dexter Inspector Morse Infernal Serpent.jpg「主任警部モース(第12話)/邪悪の蛇」●原題:INSPECTOR MORSE:THE INFERNAL SERPENT●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/03●監督:ジョン・マッデン●脚本:アルマ・カレン●原案:コリン・デクスター●時間:109分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ジェフリー・パーマー/デヴィッド・ニール/チェリル・キャンベル/イレーネ・リチャード/バーバラ・リー=ハント/トム・ウィルキンソン●VHS発売:2000/10●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)
Inspector Morse: Infernal Serpent (Mci Talk Tapes)」(Audiobook [カセット] 1998)

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シリーズ"らしい"ほろ苦い結末。モースと美女のやり取りが見所?(トロイのクリケットも)

Vol.10「欺かれた過去」【字幕版】 [VHS].jpg主任警部モース 10 欺かれた過去 dvd.jpg 主任警部モース 10 欺かれた過去 クリケット.png
Inspector Morse: Deceived By Flight [DVD] [Import]
モース警部シリーズ Vol.10「欺かれた過去」【字幕版】 [VHS]

主任警部モース 10 欺かれた過去.jpg モースは、大学OBのクリケット・チームの試合のためにロンドンに来ていた、学友の弁護士ドンに呼び出されて久々の再会を果たす。彼はモースに何か相談したがっているようだが、モースが訊いても話さない。その後、彼の方からモースに連絡をしてくるが、モースは書店爆破事件の捜査で手が離せない。その翌日ドンはリード線をくわえて感電死死体となって発見される。モースは休暇中のルイスを説得し、ドンが所属していた、脚の不自由な事業家ローランドが率いるOBクリケットチームに、彼を代わりの選手として潜入させる。トニーの妻ケイト(シャロン・モーン)はラジオ局のDJで、トニーの隣室のフォスター夫婦(ジオフリー・ビーヴァーズ、ジェーン・ブッカー)の夫ピーター・フォスターは何やらクリケット・チームを探っているようだった。そんな中、OBチームのクリケットの試合中に選手控室でピーターが何者かに殺されてしまう―。

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第9話で、1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

第10話/欺かれた過去 3.jpg ドンの妻でラジオ局のDJのケイトは若くて美人で、モースは夫を亡くした彼女を慰めるうちに彼女に惚れてしまった感じですが、フォスター夫婦の妻フィリッパも美人で、モースはこちらにも接近、双方ともモースに悪からぬ印象を抱いているようで、モースがフィリッパとクリケットのOB試合を観戦しているところへケイトが現れ、女性同士がバッティングした感じ(ケイトはぷぃと去ってしまった)。更に、ピーターが殺害されたことで、モースは2人の「未亡人」の間に挟まった形になりましたが、まあ、原作においてもモースは不思議と女性にモテるキャラではあるので、これはアリかなと。

Morse & kate Donn

 モースは、フィリッパとクリケット試合を観ながら、変なユニフォーム来て不可思議なルールで行われるスポーツとこき下し、それでもクリケットが好きそうなフィリッパのために自分もこのスポーツを好きになろうかなと冗談を言いますが(これって彼女へのアプローチ?)、結局居眠りしてしまって、ルイスの折角のファインプレーも見逃した...。そこに起きたフィリッパの夫ピーターの殺害事件。

 実はピーターとフィリッパのフォスター夫婦は本物の夫婦ではなく、英国からのヘロイン密輸出の捜査に2年越しで当たっている所謂「麻薬Gメン」でした。OBクリケットチームが怪しいと、わざとモースを通して事件未解決の中での海外遠征を認めさせ、水際でヘロイン密輸輸出の現場を抑えようとしてドーバーに張り込んでいるところへ、モースも事件の真相を追って現れます。そこでモースが見たものは...(因みにドーバーは英国の都市であり、フランスでは「ドーバー海峡」を「カレー海峡」と呼ぶ)。

eceived By The Flight1.jpg 2件の殺人事件もヘロイン密輸出も解決を見ないまま船が出そうになる―その時モースに突然の閃きが訪れるという、結構ハリウッド映画的なスリルはありましたし、結末も意外でした。ヘロイン密輸出の犯人に対しては、モースも思わず「なぜだ」と問い詰めたくなるし、一方の旧友ドンの殺害事件につていても...。

主任警部モース 10 欺かれた過去 03.jpg このシリーズ"らしい"ほろ苦い結末でした。振り返ってみれば、2件の殺人事件に何か動機上の関連がありそうに思えたのがまず第一のミスリード要因だったでしょうか。モース独特の理詰めの推理は勿論ありましたが、最後は直観による解決だったような気もして、その辺りはややシリーズ"らしくない"真相への導き方だったようにも思います。むしろ、モースと美女2人の遣り取りが見所だったとも言えます。

eceived By The Flight2.jpg 警察官がクリケット・チームに潜入していきなり好プレーを連発することが可能かと言うのはありますが、ルイス巡査部長役のケヴィン・ウェイトリーは、一時プロのクリケット選手を目指していたということで、コリン・デクスターの原案がそもそもケヴィン・ウェイトリーの"クリケット愛"に捧げられたものであるとのことです。

Sharon Maughan2.jpgSharon Maughan.jpg 一方で、ネスカフェ・ゴールド・ブレンドのTVコマーシャルに出ていたシャロン・モーンが演じるケイトに、「コーヒーは嫌い。飲むと頭が痛くなる」と言わせているのは、脚本家のお遊びか。

Sharon Maughan pictured in the Nescafé Gold Blend instant coffee adverts which ran between 1987 to 1992

主任警部モース 10 欺かれた過去 vhs.jpgモース主任警部&ルイス巡査部長.jpg「主任警部モース(第10話)/欺かれた過去」●原題:INSPECTOR MORSE:DECEIVED BY FLIGHT●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/18●監督:アンソニー・シモンズ●脚本:アンソニー・ミンゲラ●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/シャロン・モーン/ノーマン・ロッドウェイ/ジオフリー・ビーヴァーズ/ジェーン・ブッカー/ダニエル・マッセィ/ブライアン・プリングル/ニッキー・ヘンソン●VHS発売:1999/08●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

"Inspector Morse: Deceived By Flight [VHS] [Import]"(輸入版VHS)

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象牙の塔を巡る権力争いと、それに纏わる復讐劇。犯人がやや唐突に姿を現した印象も。

モース警部シリーズ Vol.9「最後の敵」v1.jpgモース第9話/最後の敵 dvd.jpg モース第9話/最後の敵 dvd2.jpg
モース警部シリーズ Vol.9「最後の敵」【字幕版】[VHS]」"Inspector Morse: Last Enemy [DVD] [Import]"(2002)"Inspector Morse: Last Enemy Set [DVD] [Import]"(2005) 右下:ルイス部長刑事(Kevin Whately)/モース主任警部(John Thaw)/ラッセル検視医(Amanda Hillwood)
Inspector Morse Last Enemy.jpgAmandy Hillwood 2.jpg 運河で首と両手脚が切断された死体が見つかる。時を同じくして、オックスフォード大学時代の同級生で同大学の学寮長を務める旧友アレックス・リース(バリー・フォスター)から、ケリッジ博士(テニエル・エヴァンス)が失踪していると相談を受けたモース。死体の状況から殺害されたのは博士だと思われたが...。一方、博士課程を修了したばかりのデボラ・バーンズ(ビーティ・エドニー)は、自分が特別研究員になれなかったのはケリッジ博士が反対票を投じたからだと思い込み博士に直接尋ねると、ケリッジは反対したのは自分ではなく、学寮長のリースだと言う。リースは彼女の博士論文の指導担当で、共著で本を出し、更には2人の間に肉体関係まであったのだが―。

"Inspector Morse: Last Enemy [VHS] [Import]"

モース第9話/最後の敵 dvd 2011.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第9話で(TV用のオリジナルでコリン・デクスターは"原案"提供。但し、ベースとなっているデクスターによる原作あり(『謎まで三マイル(The Riddle of the Third Mile)』(1983)) 、1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 1つ前の「ハンベリー・ハウスの殺人」が一見、学寮長候補同士の争いに起因する事件と思わせて実は夫婦の愛憎劇だったのに対し、こちらはストレートに象牙の塔を巡る権力争いと、それに纏わる復讐劇でした(「シェルドン講師」とはそれほど名誉ある地位なのか)。

"Inspector Morse Set Three: The Last Enemy [DVD] [Import]"(2011)
(Last Bus to Woodstock /Ghost in the Machine /The Last Enemy) 

 殺されたと思ったら実は生きていたケリッジ教授も結局は殺され、モースが疑いを抱いていた学寮長のリースまで殺されてしまう―そうなると残るはなかなか姿を見せないあの人物が犯人かなと、大方の予想はつきましたが、モースが街中を歩いていて見つかるぐらいなのに、それまで見つからなかったのがやや不自然なように思いました(ケリッジ博士だって、モースらが死んでいるのではないかと調べている間にニセ番組の出演交渉とかしているし。そのニセ番組を仕組んだのも犯人だったわけか)。

モース第9話/最後の敵 0.jpg リースまで殺されてしまったのは、実力の無い彼が"漁夫の利"を得たことに対する犯人の恨みでしょうか。女子大生の研究成果を自分のものとし、肉体関係まで持っておいて研究員には推さないというのは、まあ、殺されても仕方無いという感じでしたが。

 モース自身も、犯人の犯行に、単なる復讐ではなく、正義を正すという強い信念を見出しているようで、その犯人の「最後の敵」は病いだったわけかと。それにしても恩師が犯人とは...(モースが学生時代に優秀で、オックスフォードをトップで卒業できる頭脳を持っていながら学者の道を選ばなかったことが明かされる)。犯人は既に逮捕するまでもない状態だったけれど、こうした終わり方は『カインの娘たち』のドラマ版('96年)の方にもありました。

第9話/最後の敵 5.jpg第9話)/最後の敵 10.jpg それにしてもモースは、捜査中にビールを飲む回数がどんどん多くなるなあ。しかも、独身の気安さからか、リースの秘書キャロルに声掛けして彼女の行きつけのジャマイカ料理のレストランで歓談しています。

Morse & Carol Sharp

 その一方で、「お嬢さん」「ドクター」の呼び名で一悶着あった検視医のラッセル女医まで呑みに誘っている...。捜査の一環ということもあるでしょうが、モース自身、女性主任警部モース(第9話)/最後の敵 カメオ.jpgと呑みたがっているように見えました(上司のストレンジ警視正に罵倒され、歯医者にも苛められ、その上事件の解決が困難を極めれば、自宅でオペラを聴くだけではストレスは解消されないか)。

 恒例の原作者のカメオ出演、冒頭のシーンで運河の縁で釣り糸を垂れているオジさんがコリン・デクスターではないかなと思ったけれど、その川縁を散歩していてボートから降りてきた男と鉢合わせになる人がそうだったようです(途中のシーンでは釣り人の後ろを歩いているようですが、そんなシーンあった?)。

「主任警部モース(第9話)/最後の敵」●原題:INSPECTOR MORSE:THE LAST ENEMY●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/11●監督:ジェームス・スコット●脚本:ピーター・バックマン●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/バリー・フォスター/テニエル・エヴァンス/ビーティ・エドニー/シーアン・トーマス/マイケル・アルドリッジ●VHS発売:1999/07●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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かなり無理のあるトリックだけど、パトリシア・ホッジが良かったのでまあいいか。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 dvd.jpg  第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 01.jpg GHOST IN THE MACHINE.jpg
"Inspector Morse: Ghost in Machine [DVD] [Import]"(ハンベリー・ハウスの殺人)
ミシェル(Irina Brook)/レディ・ハンベリー(Patricia Hodge)
Irina Brook.gifPatricia Hodge 2.gif オックスフォード大学の学寮長候補ハンベリー卿の大邸宅から、数点の絵画が盗まれ、モースはルイスと気乗りしない窃盗事件の捜査を開始するが、窃盗事件の後に失踪していた絵の所有者ハンベリー卿が、邸の敷地内で死体となっているのを発見する。更に、邸付近でブレーキに細工されたクルマの事故に遭遇、亡くなった男は、邸で子守に雇われていたフランス人のミシェル(イリーナ・ブルック)の恋人ロジャーで、ミシェルはレディ・ハンベリー(パトリシア・ホッジ)から突然の解雇を言い渡されていた。ロジャーの所持品から脅迫文が見つかり、ハンベリー卿を何らかのネタで脅迫していたらしい―。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 04v.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第8話で、以降第28話まで、「モース主任警部シリーズ」の原作者コリン・デクスターが原案を示して脚本家が仕上げるというスタイルが続きます。この第8話は1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 学寮長の地位争いによる殺人かと思わせておいて実は愛憎劇でした。学寮長候補の夫は写実的な裸体画が好みであるばかりでなく、子守嬢をモデルにヌード写真を撮るという趣味もあったわけで、でも妻の躰には触れない―それでもって妻は庭師(わっくてイケメン、加えてハロー校出身のインテリ)と不倫し、結婚まで考えていたということか。

 パトリシア・ホッジ演じるレディ・ハンベリーは、荘厳な邸に住む貴婦人の風格がありました。それでいて愛情面で満たされていないという、そうした女性の内面も上手く表現していたように思います。

Inspector Morse: Ghost in the Machine [VHS] [Import]

 あちらの貴族って、地所内に一族の霊廟があるんだなあと(アガサ・クリスティの『パディントン発4時50分』のクラッケンソープ邸もそうだった)。死体を霊廟に置いたことで、強盗ではなく一族の誰かによる犯行だという疑いをモースに抱かせてしまったわけですが、それにしても、一旦「他殺」にみせかけて実は自殺だったという方向に導くとは、随分と凝った手を使ったものだなあ。自殺にしておいた方が名誉が守られ子どもへの教育上もその方が望ましいというのはかなり無理な理屈で、裏の裏をかいたつもりでもモースには通用しませんでした。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 03.jpg ラストで実行犯が殺人容疑で逮捕され、手錠を掛けられて連行されますが(かなり惨め)、一方のレディは娘と別れの言葉を交わす(手錠を掛けられることもない)―でも、裁判が始まったら「殺人」と「殺人教唆」は同等の扱いであり、この場合むしろ「殺人教唆」の方が罪が重いんじゃないかな。

 ロンドンのコヴェント・ガーデンで歌劇「トスカ」を観劇していたというレディのアリバイ供述に対し、モースも偶々ロンドンからの帰路、「トスカ」のプログラムを見ていたというのはやや出来過ぎですが(モースはレディのマリア・カラスに対する低評価でややむっとしていた)、プラシド・ドミンゴも出ていたのに値打ちもののプログラムを買わなかったことに疑念を持つというのは、モースならではの推理でした(ルイスには無理)。そのドミンゴは、声の不調でその夜は舞台に立たなかったことが判明したところからアリバイは崩れていきます。

GHOST IN THE MACHINE house.jpgAmandy Hillwood 1.jpg 今回からこれまでの検死医マックスに代わって女医ラッセル(アマンダ・ヒルウッド)が登場、モースが「お嬢さん」と呼ぶと「ドクター」と呼んで欲しいと、早速2人はぶつかっています。

女医ラッセル(Amanda Hillwood)

 邸(馬鹿デカくて豪勢!)の玄関に立っていつも見張りをしている制服姿の警官がいつの間にか若い巡査から中年の巡査に変わっている場面があって、あれがコリン・デクスターではないかな(違っているかもしれないけれど)。

Patricia Hodge.jpg「主任警部モース(第8話)/ハンベリー・ハウスの殺人」●原題:INSPECTOR MORSE:GHOST IN THE MACHINE●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/04●監督:●脚本:ジュリアン・ミッチェル●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/マイケル・ゴドリー/パトリシア・ホッジ/クリフォード・ローズ/バーナード・ロイド●VHS発売:1999/06●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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原作シリーズ第1作のドラマ化。映像化作品は映像化作品としてそこそこ楽しめたといった感じ。

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス dvd.jpg モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 01.jpg     ウッドストック行最終バス 文庫.jpg ウッドストック行最終バス hpm.jpg
Inspector Morse: Last Bus to Woodstock [DVD] [Import]」Terrence Hardiman As Clive Palmer 「ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)」「ウッドストック行最終バス (1976年) (世界ミステリシリーズ)

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 原著.jpg 夕闇迫るオックスフォードで、なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、2人の娘がヒッチハイクをすることに。その晩、ウッドストックの酒場の中庭で、2人の娘の1人シルビアが死体で見つかる。シルビアはその日、もう1人の娘とバス停でバスを待っていたのを目撃されていたのだが、バスに乗った形跡はなく、彼女は赤いクルマの何者かの誘いに乗ったようだ。また、彼女が持っていた封筒の宛先は、勤務先の秘書部長ジェニファー・コールビーになっていた。もう1人の娘は誰でどこに消えたのか、なぜ名乗り出ないのか? テレズ・バレイ警察のモース主任警部は、ルイス部長刑事とともに事件捜査に当たる―。

 原作『ウッドストック行最終バス』(原題:Last Bus to Woodstock)は、コリン・デクスターが1975年に発表した「モース主任警部」シリーズの長編第1作。英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第7話として1988年に本国で放映され、日本では2001年5月にNHK-BS2で放映されていますが、その前に、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 記念すべき原作シリーズの第1作ということもあってか、第5話の「キドリントンから消えた娘」のように原作と犯人を変えてしまうようなことはしてなかったようですが、真犯人が容疑者として浮かび上ってくるのは原作よりかなり後の方になっているのでは。原作を知っていれば、まだかまだかという感じですが、知らないと、第一発見者のジョンを皮切りに、さんざん怪しい人物が出てきて、モースがミスリードさせられた(と言うより犯人の見当がつかないまま)結構最後の方で突然新たな容疑者が浮かび上がってきたという感じではないでしょうか。でも、最終的にその人物が真犯人であると判るのが最後の最後になってというのは原作も同じだったように思います。

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 02.jpg 大学講師バーナードは大学の正教授を目指していて(その割には年齢を喰っている)、妻のマーガレットはその尻を叩いている感じでしたが、あまりに妻に言われ続けると、女子大生を誘惑して気晴らしをしたいという気になるのか(それとも単なるスケベ老人か)。夫がシルビアを轢き殺したと思い込んだマーガレットは、クルマのタイヤを破棄したりして(確かにシルビアをヒッチしたのはバーナードだったが、シルビアの事故死に殺人の疑念があることは報じられていなかったのか)懸命に証拠隠滅を図るけれども、これも夫のためと言うより、その地位を守るため。しかし、その頃には、最初の2人の娘の目撃者であるとともに、超人的記憶力を持つ推理好きお婆さんの証言で、クルマの持主は特定されていた...。

Inspector Morse:Last Bus to Woodstock [VHS].jpg 片や、シルビアが勤めていた会社の秘書部長ジェニファーは、若い女性たちを自宅に下宿させていて、大学教授に言い寄られた奥手の文学少女の悩みを聞いてあげたりもしながら、一方で自身は社長クライブ(テレンス・ハーディマン)と不倫関係にあり、社長に奥さんと別れるよう迫る様はやや強引だったなあ(もう、愛欲の権化という感じ)。原作ではジェニファーは、大学講師バーナードとその愛人の橋渡しもしていることになっています。なぜならば、その愛人というのが、やはりジェニファーのところに下宿している看護婦であり、その点は原作とこの映像化作品は同じ。犯人が誰かは知っていても、犯行動機がイマイチ記憶に無かったのは、ある種衝動的とも言える殺人だったからかもしれません。

 これも原作を読んでかなりの年月を経ているため、映像化作品は映像化作品としてそこそこ楽しめたといった感じでしょうか。このシリーズ、原作者コリン・デクスター自身が毎回登場しているそうですが、いつもどこに出ているのか不明なんだけど、今回はパブの客の一人(チェックのセーターを着ている)として出ていたのが判りました。
Inspector Morse: Last Bus to Woodstock [VHS] [Import]
    
モース第9話/最後の敵 dvd 2011.jpg「主任警部モース(第7話)/ウッドストック行最終バス」●原題:INSPECTOR MORSE:LAST BUS TO WOODSTOCK●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1988/03/22●監督:ピーター・デュフェル●脚本:マイケル・ウィッルコックス●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アンソニー・ベイト/テレンス・ハーディマン/ファビア・ドレイク/ジル・ベイカー●VHS発売:1999/05●発売元:日本クラウン●日本放映:2001/05(NHK-BS2)(評価:★★★☆)

"Inspector Morse Set Three: The Last Enemy [DVD] [Import]"(2011)
(Last Bus to Woodstock /Ghost in the Machine /The Last Enemy)

《読書MEMO》
●モース警部シリーズ(原作発表順)
 ・ウッドストック行最終バス Last Bus To Woodstock
 ・キドリントンから消えた娘 Last Seen Wearing
 ・ニコラス・クインの静かな世界 The Silent World of Nicholas Quinn
 ・死者たちの礼拝 Service of all the Dead (1979年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・ジェリコ街の女 The Dead of Jericho (1981年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・謎まで三マイル The Riddle of the Third Mile
 ・別館三号室の男 The Secret of Annexe 3
 ・オックスフォード運河の殺人 The Wench is Dead (1989年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・消えた装身具 The Jewel That was Ours
 ・森を抜ける道 The Way Through the Woods(1992年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・カインの娘たち The Daughters of Cain
 ・死はわが隣人 Death is Now My Neighbour
 ・悔恨の日 The Remorseful Day

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第一容疑者がどんどん入れ替わる。原作改変に拘泥せず観れば、独立した作品として楽しめた。

INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING dvd.jpgキドリントンから消えた娘 01.jpg キドリントンから消えた娘 03.jpg
Inspector Morse: Last Seen Wearing [DVD] [Import]

 2年前に失踪して以来、行方の知れなかった裕福な家庭の女子校生の娘バレリーから両親に無事を知らせる手紙が届いた。彼女は生きているのか、だとしたら今はどこでどうしているのか。だが捜査を引き継いだ テレズ・バレイ警察のモース主任警部(ジョン・ソウ)は、ルイス部長刑事(ケヴィン・ウェイトリー)に「彼女は死んでいる」との自らの直感を述べる―。

LAST SEEN WEARING.jpgキドリントンから消えた娘 文庫.png 原作『キドリントンから消えた娘』(原題:Last Seen Wearing)は、コリン・デクスターが1976年に発表した「モース主任警部」シリーズの長編第2作で、第1作『ウッドストック行最終バス』(1975)と並んで評価の高い作品。1987年から始まった英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第5話として1988年に本国で放映され、日本では2001年5月3日にNHK-BS2で放映、その後ミステリチャンネルでも放映されています(但し、それに先んじて1999年に日本語字幕付きVHSが発売されている)。
キドリントンから消えた娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
"Last Seen Wearing"
 失踪した娘バレリーは既に死んでいるとのモースの直観はあっさり外れ、その後、失踪事件の第一容疑者が次々と入れ替わるのは原作と同じです。モースがバレリーの交友関係を調べていくうちに、彼女の男友達の部屋でマリファナが見つかり、また、彼女が妊娠していたことが判ったりしますが、彼女の男関係が結構"乱脈"気味で、彼女に関わったと思われる疑わしい男が次々現れます。そうした中、女子校の副校長シェリル・ベインズが殺害されますが、こちらの事件も第一容疑者がどんどん入れ替わっていくという展開です。

 原作の重厚感も良かったように思いますが、モースの"妄想的"推理に多くのページを割いており、その点、テレビドラマ版はテンポが良くて楽しめました。原作を読んだのは随分前なので、犯人すら虚(うろ)覚えでしたが、これ、原作と犯人も結末も違えているんじゃないかな。バレリーの両親はこんな瀟洒な家に住んではおらず、彼女が通っていた学校も学費の高い私立のお嬢様学校ではなく、普通の庶民が行く学校だったのでは。殺害された副校長が女性になっているため(原作では男性)、その辺りから若干原作と雰囲気が違ってきた部分もありましたが、これはこれで楽しめました。

キドリントンから消えた娘 02.jpg バレリーは若いフランス語の補助教員ディヴィッド・エイカムとも、女子校の校長ドナルド・フィリップソンとも関係していたということなのでしょう。それを知った女性副校長(彼女は男性には関心が無い。つまりレズビアン?)は、そのことをネタに校長を脅して副校長の座を掴んだということのようです(フランス語教師はクビになって別の学校へ転職した?)。校長はバレリーの母親グレース(フランセス・トーメルティ)とも関係していて、グレースはバレリーがジョージの子供ではないことを仄めかしていますが、どうやらジョージも血の繋がりのない娘バレリーと関係していたみたいで、そのことに頭にきたグレースが校長との不倫に走り、その現場を見てしまった娘バレリーがショックを受けて家を出たというのが、2年前の彼女の失踪の原因だったようです。

 ラスト近くで、校長の妻が夫と不倫関係にあったバレリーの母親グレースと対峙し、そこで奇妙な連帯感が生まれ、そこへひょっこり現れたのが...と、かなりドロドロしたプロセスだったにも関わらず、最後は過度に後味が悪くならないように纏めた感じで、テレビ版らしい改変でしたが、個人的にはそう悪くないように思えました。

 原作を読んだ直後に観たら「え~っ」という感じだったかもしれないけれど、原作を読んでから年月を置いて映像化作品を観ると、改変に拘泥せず独立した作品として楽しめるというのはあるのかもしれません。
 エリザベス・ハーレー(Elizabeth Hurley)が女学生役で出ていますが、「幻の城/バイロンとシェリー」('88年/英)で劇場映画にデビューする前で、当時は無名だったと思われます。

エリザベス・ハーレイ(Elizabeth Hurley).jpgエリザベス・ハーレー.jpg「主任警部モース(第5話)/キドリントンから消えた娘」●原題:INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1988/03/08●監督:エドワード・ベネット●脚本:トーマス・エリス●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ピーター・マッケリー/フランセス・トーメルティ/メリッサ・シモンズ/フィリップ・フレサートン/スザンヌ・ベルティシュ/グリーン・ヒューストン/ジュリア・サワルハ/エリザベス・ハーレー●VHS発売:1999/04●発売元:日本クラウン●日本放映:2001/05 (NHK-BS2)(評価:★★★★)

1-IMG_0390.JPG●本国個人サイト (Muffy Aldrich The Daily Prep

My Favorite Inspector Morse.jpg◎ Here are some favorite episodes (or characters or scenes or...):
Last Seen Wearing 第5話/キドリントンから消えた娘)- Morse's best line, "We ought to be able to arrest him for his taste", after surveying a suspect's flat. The headmaster gives a nearly-comedic dramatic performance (and in one scene in a very nice Irish Fisherman's sweater).
Last Bus to Woodstock 第7話/ウッドストック行き最終バス)- Oxford politics; pub murder; an old Volvo; and perhaps Morse's best withering glance.
Ghost in the Machine 第8話/ハンベリー・ハウスの殺人)- A supremely snobbish and delightful performance by Patricia Hodge; a discussion of appropriateness of school ties worn as belts; and Morse's commentary on the distastefulness of social envy. This might be a good "first episode" to watch.
Deceived by Flight 第10話/欺かれた過去)- Simply marvelous cricket scenes with equally marvelous cricket clothing.
Driven to Distraction第14話/死を呼ぶドライヴ)- A love of the Mark 2; creepy; Morse on the edge.
Happy Families (第22話/ハッピー・ファミリー)- Two dreadful grown sons (one of whom is played by Martin Clunes, Doc Martin) with the most enviable knitwear. And a moat.
The Day of the Devil (第27話/サタンが巣くう日)- By far the creepiest of all, complete with church pipe organs, vicars and the underground of Oxford.
Twilight of the Gods (第28話/神々の黄昏)- Sir John Gielgud using Oxford England and Oxford Mississippi in the same sentence; and the always wonderful Robert Hardy.
Death Is Now My Neighbour (第31話/死は我が隣人)- Richard Briers (Hector Naismith MacDonald from Monarch of the Glen), Roger Allam (who would later be in Endeavor), and Maggie Steed more than make up for Holley Chant's American accent. Oxford politics and the reveal of Morse's first name.

◎ And my honorable mentions are:
The Last Enemy 第9話/最後の敵)- Good Guernsey in the opening scene; impressive Master's quarters; and bespoke clues.
The Infernal Serpent 第12話/邪悪な蛇)- Terrible topic but stars the wonderful Geoffrey Palmer (Lionel from As Time Goes By).
The Sins of the Fathers 第13話/ラドフォード家の遺産)- Morse solving a crime at a brewery.

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事件にも女性たちにも人生の虚無を感じさせられるが、それが"悪くない"。

カインの娘たち.jpg カインの娘たち 文庫.jpg カインの娘たち コリン・デクスタ-.jpg   The Daughters of Cains 3.bmp  The Daughters of Cains 1.jpg
カインの娘たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)』['00年]/『カインの娘たち (ハヤカワ ポケット ミステリ)』['95年]/「Inspector Morse: Daughters of Cain [DVD] [Import]」(カインの娘たち)

The Daughters of Cain.jpg オクスフォード大学ウールジー・カレッジの元特別研究員が何者かに刺殺された事件の捜査をモース主任警部は同僚から引き継ぐが、行方不明になっていた最大の容疑者である博物館の係員が、同じく刺殺体となってテムズ河畔で発見され、この係員を殺す動機のあると思われる3人の女性には、堅牢なアリバイがあった―。

"The Daughters of Cain" (1994)

 1994年末に発表されたコリン・デクスターの「主任警部モース」シリーズ11作目で(原題は"The Daughters of Cains")、"犯人探し"より"アリバイ崩し"をメインにもってきたような展開が斬新と言えるかも知れません。
 13作シリーズの終わりから3作目で、アルコールとニコチンでモースの体調はますます良くないみたいですが、持ち前の頭脳と勘で、途中大きく方針転換することもなく、時間とともに事件の核心へ近づいていく感じ。

 謎解きが好きな人には物足りないかも知れませんが、むしろ波乱が少ない分、随所にある作者特有のペダンティックな味付けや、モースと魅惑的な女性とのやりとりが楽しめます。
 このシリーズ、後のものになればなるほど本格推理一本から人間(人情)ドラマ的な要素が加味されたのに推移していくため、本格推理ファンには初期作品の方が人気があるようですが、個人的には後期のものも好きです。                              

 女性に感情移入しやすいところは相変わらずですが、女性からもモテるなあ、このオジさんは。
 でも、結局最後は、事件に対しても女性たちに対しても、何か人生の虚しさのようなものを感じさせられる印象が残って、この虚無感みたいなものが、実は意外と"悪くない虚無感"というか、人生ってそうなんだよなあ、みたいにしみじみ共感してしまい、その点ではシリーズの後半の持ち味が出ている作品だと思いました。

モース警部シリーズ DVD-BOX.jpgThe Daughters of Cains 2.jpg  テレビシリーズ「主任警部モース」で映像化された作品も観ましたが(NHK-BS2でのテレビ放映の以前の1998年に、日本語字幕付きでVHS化されていた)、娼婦役の女性は自分が抱いていたイメージと違って、原作より知的で洗練されているような感じがし(モースの気持ちが傾くのがわかる気がした)、終わり方も、原作の趣意は変えないまでも、モースがわざと未解決事件にしてしまったみたいな感じでしたが、それはそれで必ずしも悪い後味ではなかったように思えます。

モース警部・シリーズ 1 DVD BOX」第26話から最終の第33話まで(「アヴリルの昏睡」「サタンの巣くう日」「神々の黄昏」「森を抜ける道」「カインの娘たち」「死はわが隣人」「オックスフォード運河の殺人」「悔恨の日」)

THE DAUGHTERS OF CAIN.jpg 大学内での麻薬使用がモチーフに使われていますが、オクスフォードを舞台に実在の建物や施設を作品に織り込みながらも、オクスフォード大学に「ウールジー・カレッジ」というのは実在しないそうです。やはり、「麻薬」事件の舞台にするのに実名ではマズイと思ったのでしょうか(因みにコリン・デクスターはケンブリッジ大卒)。イギリスでは、大学って昔から麻薬売買の場だったのでしょうか。

INSPECTOR MORSE:THE SINS OF THE FATHERS.jpg「主任警部モース/カインの娘たち」●原題:INSPECTOR MORSE:THE DAUGHTERS OF CAIN●制作年:1996年●制作国:イギリス●監督:ハーバート・ワイズ●脚本Phyllis Logan THE DAUGHTERS OF CAIN.jpg:ジュリアン・ミッチェル●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ジェームズ・グラウト/クレア・ホルマン/ガブリエル・ロイド/フィリス・ローガン/アマンダ・ライアン●日本放映:2001/05 (NHK-BS2)(評価:★★★☆)
フィリス・ローガン(Phyllis Logan) in THE DAUGHTERS OF CAIN.
NSPECTOR MORSE: DAUGHTERS OF CAIN Double Audio Cassette (2003)

 【2000年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫]】

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130年前の事件の謎解き。状況設定がシンプルな一方で、トリックは巧妙。本格推理として満足。

The Wench Is Dead (Inspector Morse Mysteries).jpg The Wench is Dead.jpg オックスフォード運河の殺 人.jpg オックスフォード運河の殺人.jpg THE WENCH IS DEAD dvd.jpg
"The Wench is Dead (Inspector Morse Mysteries)" (1991)" The Wench is Dead" (1989)『オックスフォード運河の殺人 (ハヤカワ ポケット ミステリ)』 ['91年] 『オックスフォード運河の殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』 ['96年] "Inspector Morse Set Eleven: The Wench Is Dead [DVD] [Import]"

 1991(平成3) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(海外部門)第5位作品。

 モースは不摂生が祟り胃潰瘍にため入院生活を余儀なくされるが、たまたま病院で入手した『オックスフォード運河の殺人』という130年前のヴィクトリア朝時代に起きたある殺人事件と裁判に関する郷土史家の研究書を読むことになり、それは、夫に会いに行くためにオックスフォード運河を船旅中のある女性が荒くれ者の船員に殺され運河に投げ込まれたという事件で、裁判により船員2名が絞首刑になっているというものだったが、モースはその記録を読み進むうちに、彼らは無実の罪で処刑されたのではないかと考えるようになる―。

INSPECTOR MORSE:THE WENCH IS DEAD Double Audio Cassette.jpg 1989年発表のコリン・デクスター(Colin Dexter)による、オックスフォード、テムズ・バレイ警察の主任警部モースを主人公とした「主任警部モース」シリーズの第8作(原題:The Wench is Dead)で、2段組ながら200ページとコンパクトですが、一本筋の運河での事件という状況設定がシンプルな一方で、トリックは巧妙で、なかなか密度が濃く、本格推理として満足できる1冊でした。

INSPECTOR MORSE:THE WENCH IS DEAD Double Audio Cassette U.K.

 刑事や探偵がベッドや安楽椅子で文献のみを頼りに過去の事件を解くというパターンには、ジョセフィン・テイ女史の歴史ミステリの傑作『時の娘』('51年/早川書房)があり、一方こちらは史実を扱ったものではなく『オックスフォード運河の殺人』という研究書自体がコリン・デクスターの創作なのですが(原題"The Wench is Dead"はテイを意識したのかも知れないが、研究書のタイトルをストレートに持ってきた邦題の方がいいかも)、本書も傑作と言えるのでは(コリン・デクスターは本書により、英国推理作家協会(CWA)賞ゴールド・ダガー賞を初受賞)。

 『時の娘』の事件の舞台は15世紀で、それに比べると1859年の事件というのは比較的"最近"なのかも知れませんが、それにしても130年も遡って、当時の審判をひっくり返してしまうというのはなかなかのもの。
 同じ英国のアリソン・アトリー女史の『時の旅人』('81年/評論社)は16世紀にトリップするタイムトラベル・ファンタジーでしたが、本書での事件の検証場面にもあるように、英国の家って旧いものがよくもまあいろいろな痕跡を留めているなあと感心しました(130年前の事件の証拠物件を破棄せず、保管しているというのもたいしたもの)。

THE WENCH IS DEAD.bmp アイルランドまで墓を掘り返しに行くなど、やや酔狂が過ぎる気もしないでもないですが、これぞモースの探究心が本領発揮されたものとも言え、ラストのアナグラムは、いかにもクロスワードを得意とするモースらしい(デクスターらしい)ものでした。

 「オックスフォード運河の殺人」はテレビ版も観ましたが(かつてNHK-BS2で放送していたものをAXNで再々放送していた)、モースが過去の事件について推理を巡らせる部分が「時代モノ」のドラマとして再現されていて、その部分の占める比重が大きいため、通常の現代劇としてのミステリ・ドラマとは違った雰囲気に仕上がっており、一風変わった味わいがありました。


INSPECTOR MORSE/THE WENCH IS DEAD.jpg第32話)/オックスフォード運河の殺人.jpg「主任警部モース(第32話)/オックスフォード運河の殺人」●原題:INSPECTOR MORSE: THE WENCH IS DEAD●制作年:1998年●制作国:イギリス●監督:ロバート・ナイツ●脚本:マルコム・ブラッドベリ●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ジェームズ・グラウト/クレア・ホルマン/リサ・アイクホーン/ジュディ・ロー/マシュー・フィニー/ジュリエット・コーワン●日本放映:2001/06 (NHK-BS2)(評価:★★★☆)
Inspector Morse: Wench Is Dead [DVD] [Import]

モース 英ITV.jpg主任警部モース2.jpg「主任警部モース」Inspector Morth (英ITV 1987~2000)○日本での放映チャネル:NHK-BS2(2001)/ミステリチャンネル(2003~2004)
オックスフォード運河の殺人[ハヤカワ・ミステリ文庫].jpg
 【1996年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫]】 
 
 
 

《読書MEMO》
●モース警部シリーズ(原作発表順)
 ・ウッドストック行最終バス Last Bus To Woodstock
 ・キドリントンから消えた娘 Last Seen Wearing
 ・ニコラス・クインの静かな世界 The Silent World of Nicholas Quinn
 ・死者たちの礼拝 Service of all the Dead (1979年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・ジェリコ街の女 The Dead of Jericho (1981年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・謎まで三マイル The Riddle of the Third Mile
 ・別館三号室の男 The Secret of Annexe 3
 ・オックスフォード運河の殺人 The Wench is Dead (1989年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・消えた装身具 The Jewel That was Ours
 ・森を抜ける道 The Way Through the Woods(1992年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・カインの娘たち The Daughters of Cain
 ・死はわが隣人 Death is Now My Neighbour
 ・悔恨の日 The Remorseful Day

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