Recently in 日本のアニメーション映画 Category

「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2510】 渡辺 邦男 「忠臣蔵
「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●や‐わ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ  「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●わ 和田 誠」の インデックッスへ

刺殺体を巡る7人の"探偵"。パロディ精神と映画愛が密度濃く詰まっている。

殺人 MURDER 0.jpg 殺人 MURDER①.jpg 和田 誠 氏2.jpg 和田 誠  去年マリエンバートで dvd 2009_.jpg
「殺人 MURDER!」 (1964)           「去年マリエンバートで HDニューマスター版 [DVD]

殺人 Murder.jpg メイドがノックして入った部屋で刺殺体を発見し、大声で叫ぶ。この場面が7回繰り返され、回ごとに「MURDER!」というそれぞれ違ったタイトルロゴの後、様々な探偵が登場し、独自の方法で犯人を突き止め、逮捕に至る(逮捕殺人 MURDER①ホームズ.jpgされるのは常に同じ人物)。1人目は、ハンチングキャップ.を被りパイプを咥え、現場の遺留物や足跡など残された手掛かりの組み合わせから犯人を推理する探偵。2人目は、巻き口髭を生やし、肘掛椅子で葉巻を燻らせな殺人 MURDER② ポワロ.pngがら新聞記事を読み、創造力だけで事件を解決してみせる探偵。3人目は、ソフト帽を被って両手はいつもコートのポケットの中で、メイドへの質問を手始めに鉄道や船殺人 MURDER③サム・スペード.jpgを使って地道な聞き込みを行い、更にはバーに行って聞き込みをしてカクテルを飲んだり、飛行機に乗ったりして捜査を続け、犯人を見つける探偵。4人目からは、"探偵"という枠を超えた人物が登場し、トップハット殺人 MURDER④.pngを被った19世紀風の男が刺殺体を調べていると、死体が突然目を見開いて吸血鬼となって甦るも、男はニンニクと十字架でこれを退散させるという殺人 MURDER⑤007.pngオカルト・ホラー調。5人目は、007(ジェームズ・ボンド)風で、映画でよく知られている銃口をモチーフしたオープニングのパロディあり、美女との出会いや危険なア殺人 MURDER⑥科学者.pngクションありで、事件を解決して最後は美女とベッドイン。6人目は、SF映画のパロディ風で、科学者風の男が登場し、コンピュータにデータを打殺人 MURDER⑦.pngち込んで犯人を割り出す。本当の犯人はどうやら人間の躰を借りた宇宙人だったらしく、犯人の首がパカッと開いて、そこから空飛ぶ円盤へと帰って行く。最後7人目は、アートシアター風で、冒頭のタイトル及び刺殺体発見場面から最後まで全編モノクロ。映画「去年マリエンバートで」のパロディになっていて、探偵かと思われた男は、最後犯人探しはどうでもよくなっていて、出会った女と共に闇に消えていく。このパートだけ、犯人逮捕の場面はなく、ラストは「END」ではなく「FIN」で終わる―。

 1964年秋、草月会館ホールで行われた第1回「アニメーション・フェスティバル」で上映するため、主催の「アニメーション三人の会」(久里洋二、柳原良平、真鍋博)から依頼されて和田誠が制作した16ミリのアニメーションで、音楽は八木正生(1932-1991)が担当し、時間が無い中で作られたというこの作品は、毎日映画コンクール・第3回「大藤信郎賞」を受賞しています(受賞理由では音楽も高く評価されている)。

「アニメーション三人の会」が設立された'60年の段階では、柳原良平の「アンクルトリス」のCMを除きそれまで本格的なアニメーション制作の経験のなかった3人ですが、「三人の会」の活動は、日本の自主制作アニメーション界全体の活性化と次代の人材育成に繋がったほか(「三人の会」の上映会は60年、61年、63年の3回行なわれた)、「アニメーション・フェスティバル」を通じて、横尾忠則や宇野亜喜良など他の分野の芸術家がアニメーション制作を行なう契機にもなっています。

去年マリエンバートで 01.jpg この「殺人 MURDER!」は9分という長さの軽く楽しめる作品ですが、'64年という制作年で、しかも、「アニメーション三人の会」からの依頼で作った自主制作映画であったにしては、質的レベルはかなり高いように思います。『倫敦巴里』('77年/話の特集)に見去年マリエンバートで dvd 2016_.jpgられるパロディ精神が、この頃から横溢していたことを物語っていると共に、作者の"映画愛"が密度濃く詰まっている感じがし、'64年5月に日本で公開されたアラン・レネ監督の「去年マリエンバートで」('61年/仏)などがパロディ素材として使われていることに作者の慧眼を感じます(既にヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞してはいたが)。
去年マリエンバートで [DVD]

去年マリエンバートで 03.jpg去年マリエンバートで   es.jpg 「去年マリエンバートで」は、脚本のアラン・ロブ=グリエ(1922-2008)自身の言によれば、黒澤明監督の「羅生門」('50年/大映)に触発れて作られた作品であり、より正確に言うならば、芥川龍之介の「藪の中」を下敷きにした作品の一つと言えますが、"誰もあらすじを説明することができない映画"としても有名(?)でしょうか。何回観ても理解不能であり(そこが良くてまた観てしまう人もいると思うが)、この「殺人 MURDER!」の中での使われ方は、ややその辺りのアイロニーが込められているように思いました(和田誠は山田宏一との共著『たかが映画じゃないか』('78年/文藝春秋)で、フランス映画通の山田宏一へのコンプレックスをユーモラスに吐露している)。


殺人 MURDER図1.jpg殺人 MURDER②2.jpg 「殺人 MURDER!」の1人目と2人目の探偵は誰がモデルなのかすぐに分かるけれど、3人目は、前のエントリーで取り上げた『マルタの鷹』の探偵か。だとすれば、彼が飲むカクテルはマンハッタンということになるかもしれませんが、飛行機に乗ったりしたっけ。一方の捕まる犯人の方は、常に"久里洋二"風の男であるのが可笑しいです(そこだけ日本風)。フェスティバルでの上映では、最後の「去年マリエンバートで」篇が最も好評だったそうです。

「殺人 MURDER!」●制作年:1964年●監督・製作:和田誠●撮影:古川肇郁/林政道●音楽:八木正生●時間:9分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作:(評価:★★★★)
 
去年マリエンバートで  チラシ.jpg去年マリエンバートでes.jpg「去年マリエンバートで」●原題:L'ANNEE DERNIERE A MARIENBAT●制作年:1961年●制作国:フランス・イタリア●監督:アラン・レネ●製作:ピエール・クーロー/レイモン・フロマン●脚本:アラン・ロブ=グリエ●撮影:サッシャ・ヴィエルニ●音楽:フランシス・セイリグ●時間:94分●出演:デルフィー去年マリエンバートで ce.jpgヌ・セイリグ/ ジョルジュ・アルベルタッツィ(ジョルジョ・アルベルタッツィ)/ サッシャ・ピトエフ/(淑女たち)フランソワーズ・ベルタン/ルーチェ・ガルシア=ヴィレ/エレナ・コルネル/フランソワーズ・スピラ/カリン・トゥーシュ=ミトラー/(紳士たち)ピエール・バルボー/ヴィルヘルム・フォン・デーク/ジャン・ラニエ/ジェラール・ロラン/ダビデ・モンテムーリ/ジル・ケアン/ガブリエル・ヴェルナー/アルフレッド・ヒッチコック●日本公開:1964/05●配給:東和●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会(81-05-23)(評価★★★?)●併映:「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル)

《読書MEMO》
森卓也.jpg森卓也(映画評論家)の推すアニメーションベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))
○難破ス物語第一篇・猿ヶ島('30年、正岡憲三)
○くもとちゅうりっぷ('43年、正岡憲三)
○上の空博士('44年、原案・横山隆一、演出:前田一・浅野恵)
○ある街角の物語('62年、製作構成:手塚治虫、演出:山本暎一・坂本雄作)
殺人 MURDER('64年、和田誠)
○長靴をはいた猫('69年、矢吹公郎)
ルパン三世・カリオストロの城('79年、宮崎駿)
うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー('84年、押井守)
○天空の城ラピュタ('86年、宮崎駿)
となりのトトロ('88年、宮崎駿)

「●現代日本の児童文学」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2185】 古田 足日 『宿題ひきうけ株式会社
「○現代日本の児童文学・日本の絵本 【発表・刊行順】」の インデックッスへ 「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

作りすぎていないのがいい。復刊版で登場人物の四半世紀後の「今」が書き下ろされた。

お引越し ひこ・田中 復刊.jpgお引越し ひこ・田中 旧.jpg お引越し ひこ・田中 文庫.jpg お引越し ひこ・田中 文庫新.jpg  心が叫びたがってるんだ。DVD_.jpg
お引越し (Best choice)』『お引越し (講談社文庫)』『《新装版》お引越し (講談社文庫)』「心が叫びたがってるんだ。 [DVD]
お引越し (福音館創作童話シリーズ)』(2013)(装画:奈良美智)

 1991(平成3)年・第1回「椋鳩十児童文学賞」受賞作。

 今日とうさんが引越しをした。かあさん泣いた。とうさんもお引越しの日泣いてた。大人が泣いたら、子どもは泣けない。3人だった家がこれから、かあさんと私、2人になる。2人が別れるには私のせいやないって、とうさんもかあさんも言うたけど、私のせいやないのに私に関係ある。あんまりや。両親の離婚を突然知った11歳のレンコ(漆場漣子)。彼女の悩みは深まっていく―。

お引越し-111.JPG 1990年刊行の第1回「椋鳩十児童文学賞」受賞作ですが、むしろ相米慎二(1948‐2001/享年53)監督の映画「お引越し」('93年)の原作として知られているかもしれません。「椋鳩十児童文学賞」は鹿児島市が市制100周年を記念して設けた児童文学の新人賞で、第2回が森絵都氏のデビュー作『リズム』に授与されたりしていますが、第24回の2014年をもって終了しています。

映画「お引越し」('93年)

お引越し dvd.jpg 映画「お引越し」と比べると、原作は映画のようにレンコが理科室でボヤを起こしたり、自分でチケットやホテルを予約して家族の琵琶湖行きを実行したりするといった事件や展開などはなく、ごく普通の小学生のごく普通の生活が、両親が離婚状態になって変わっていく、そうした日常の中で、11歳の少女の心模様がどう揺れ、母親や父親との関係性がどう変化し、少女自身がどう成長していったかを、少女の主観を通して生き生きと描いています(文章にリズムがある)。従って、映画も良かったですが、原作は作りすぎていない分、これはまた読者に訴えかけるものがあり、(「映画の力」に対する)「文学の力」というものを感じました。

お引越し (HDリマスター版) [DVD]

 1990年の刊行後、1995年に文庫化され、2013年の復刊に際し、2013年現在の「登場人物たちの今」を描いた挿話が書き下ろされ、巻末に付されています。その前に、1990年の「あと話」というのがあって、中学生になったレンコのボーイフレンドのミノル(大木実)、友達のサリー(橘理佐)の"今"が2人の言葉で語られていましたが、「忘れたころのあと話」と題された今回の書き下ろし部分では、おおよそ四半世紀後の36歳になった大木実の今、橘理佐の今、更にはレンコこと漆場漣子の今が、それぞれ自らの言葉で語られています。時間の流れを経て主人公たちが大人になっている現在の様が語られるというのはなかなか興味深く(月日の経つのは早いなあ)、作者のこの作品に対する愛着のようなものも感じました。

干刈 あがた 『ウホッホ探険隊』.jpg かつて、離婚に踏み切ろうとしている主人公の女性と、そのことを自分たちなりに受け止めようとしている小学生の長男・次男とのやりとりを通して、当時としては新しいタイプと言える家族の形を模索した、干刈あがた(1943‐1992/享年49)の『ウホッホ探険隊』('84年/福武書店)とい猛スピードで母は 単行本.jpgう芥川賞候補にもなった作品がありましたが、作品のモチーフとして両親が離婚している、或いは離婚状態にあるといった設定を持ってくることは、今や児童文学に限らず文学の世界においても珍しいことではなくなっているようです(長嶋有の芥川賞受賞作『猛スピードで母は』('02年/文藝春秋)もそうだった。やはり、子どもは母親と一緒に暮らすことになるのが多いようだが)。

 最近はアニメの世界でも、長井龍雪監督の「心が叫びたがってるんだ。」('15年)という作品がありました(この度「実写」映画化され、本日[2017年7月22日]公開)。主人公の少女が小学生の頃、憧れていた山の上のお城(ラブホテル)から、父親と見知らぬ女性(浮気相手)が車で出てくるところを目撃、「お城から出てくる王子様とお姫様」だと思い込み、それを母親に話したことにより両親の離婚を招いてしまい、家を去る父親から「全部お前のせいじゃないか」と言われ、ショックを受けた少女は口をきけなくなり、高校2年生になった今も、「話すと腹痛が起きる」という、トラウマを抱えているという設定でした。

心が叫びたがってるんだ。 .jpg 小学生の時のトラウマを高校生になっても引き摺っているわけですが(PTSDと言えるか。但し、離婚は主人公のせいとは言えず、父親が間違っているのは明白ではないか)、それにしても主人公がいろんな局面でそれを引っ張りすぎている印象もあり、これだと周りの方が疲れてしまうのではないかなあ。時にはちょっと突き放した方が、お互いにとって良かったりもするのではないでしょうか。ジュニア向けの作品ですが、個人的にはあまりいいとは思いませんでした(『お引越し』の11歳の小学生レンコの方がずっと逞しいと言えるか)。

お引越し  0s.jpgお引越し  5.png「お引越し」●制作年:1993年●監督:相米慎二●脚本:奥寺佐渡子/小此木聡●撮影:栗田豊通●音楽:三枝成彰●原作:ひこ・田中「お引越し」●時間:124分●出演:中井貴一/田畑智子/桜田淳子/須藤真里子/田中太郎/茂山逸平/森秀人/千原しのぶ/笑福亭鶴瓶/青木秋美(現:遠野なぎこ)●公開:1993/03●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画=アルゴプロジェクト●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(17-07-19)(評価:★★★★)
【2563】 相米 慎二 「お引越し」(1993/03 ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画=アルゴプロジェクト) ★★★★

心が叫びたがってるんだ。00.jpg心が叫びたがってるんだ。DVDS160_.jpg「心が叫びたがってるんだ。」●制作年:2015年●監督:長井龍雪●製作:斎藤俊輔●脚本:岡田麿里●撮影:森山博幸●音楽:ミト/横山克(主題歌:乃木坂46「今、話したい誰かがいる」)●原作:超平和バスターズ(長井龍雪・岡田麿里・田中将賀)●時間:119分●声の出演:水瀬いのり/内山昂輝/雨宮天/細谷佳正/藤原啓治/吉田羊●公開:2015/09●配給:アニプレックス●最初に観た場所:シネマサンシャイン池袋(15-09-21)(評価★★★)

【1990年単行本[福武書店]/1995年文庫化・2008年新装版[講談社文庫]/2013年単行本新装復刊版]】

「●て 手塚 治虫」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2120】 手塚 治虫 『魔神ガロン
「○コミック 【発表・刊行順】」の インデックッスへ 「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●日本のTVドラマ (~80年代)」の インデックッスへ(「悟空の大冒険」)

作者が本当にやりたかったのは漫画よりアニメーションであったことを如実に窺わせる。

フィルムは生きている2.jpg  西遊記 1960 poster.jpg 西遊記 [DVD].jpg   悟空の大冒険01.jpg
フィルムは生きている』「西遊記」(1960年)ポスター「西遊記 [DVD]」「悟空の大冒険 Complete BOX [DVD]
函入愛蔵版(装丁・装画:和田 誠
フィルムは生きている.jpg マンガ映画を作ることを夢見て地方から東京に出てきた青年・宮本武蔵は、アニメ制作会社へ入社を申し出るが、アニメ作家・壇末魔から「絵の動きが死んでいる」と評されて叶わず、街頭で似顔絵を描いて暮らしていた。そして、その際に出会った、やはりマンガ映画を目指している佐々木小次郎と意気投合し、同居を始める。2人は共同でマンガ映画を作ろうとしたが、どちらの作ったキャラクターを主人公にするかで対立して喧嘩別れしてしまう―。

フィルムは生きている 手塚治虫.jpg 「フィルムは生きている」は、学研の「中学1年生コース」(1958(昭和33)年4月号~1959(昭和34)年3月号)、「中学2年生コース」(1959年4月号~1959年8月号)に連載されもので、これまでも単行本化されたり文庫に収められたりしていますが、本書では、連載第1回のカラーページ部分を再現し、各回の扉絵も収録され、その他に、作者自身が日本マンガ映画史を辿った「マンガ映画 メイドイン・ジャパン」なども巻末にあります。装丁・装画は和田誠氏で、和田氏も巻末に「手塚さんとの出会い」という小文を寄せています。

手塚治虫漫画選集5 「フィルムは生きている」.jpg 物語は、武蔵と小次郎の巌流島の決闘に懸けた「アニメ対決」へと向かっていきますが、一方で、後半に武蔵は視力低下に苦しむことになり、この辺りはベートーヴェンの後半の生涯に重ねた味付けになっています。
『手塚治虫漫画選集5「フィルムは生きている」』(1959)

フィルムは生きている (小学館文庫).jpg 武蔵は明らかに作者自身を投影したキャラクターだと思われますが、興味深いのは、一度は200万部の発行部数を誇る雑誌「少年パック」の一番の人気漫画家となった武蔵が、漫画家の"宍戸梅軒"から「マンガ映画を無理に捨てた武蔵は、自分の心を殺したぬけがらだ」と指摘され、漫画を捨ててマンガ映画に打ち込むというストーリーになっている点で、作者が本当にやりたいのはアニメーションであったことを如実に窺わせるものとなっている点です。
フィルムは生きている (小学館文庫)

 実際には作者は、自らのプロダクション創設後も漫画を描き続けますが、それは漫画がアニメーション制作の資金を稼ぐための手段だったのかもしれません。1961年にプロダクション内に動画部を設立、これが後の虫プロダクションになります。

西遊記 1960.jpg 一方、「マンガ映画 メイドイン・ジャパン」の最後に、東映が「少年猿飛佐助(壇一雄作)」に続いて「西遊記(手塚治虫作)」を製作中であるとありますが、「手塚治虫作」と言いつつ、出来上がった「西遊記」('60年/東映)は、あくまでもそれまでの「白蛇伝」('58年/東映)から次回作の「安寿と厨子王丸」('61年/東映西遊記 1960 2.jpg)にかけての流れの中にあるもので(監督・演出は何れも藪下泰司)、あまり手塚カラーというのが感じらないと言うか、逆にその分、時々「ここは手塚治虫だなあ」と思わせる部分があって、手塚的キャラクター及びその動きの描き方と、当時の東映アニメ調のキャラクター及びその動きの描き方とが全く異質であったことが窺えるものとなっています(但し、実際には手塚治虫は構成のみに関与し、作画には携わっていない)。

悟空の大冒険02.jpg やがて手塚治虫は、「鉄腕アトム」(自らのプロダクションのTVアニメ第1作)の後番組として'67年に「悟空の大冒険」を手掛けることになりますが、やはり、自分のプロダクションで自分の作りたい孫悟空のアニメを作りたいと思ったのではないでしょうか。しかし、手塚治虫のオフィシャルサイトによると、「パイロット版「孫悟空が始まるよー」が悟空が真面目過ぎると子どもたちからの批判を受けて、大幅に設定が改められ、ならば徹底的に不真面目にしてやろうと、スタッフも当時としてはかなり実験的な試みを行い、現代っ子らしいヤンチャ坊主にしたら、今度は「言葉遣いが汚い!」とPTAからの大批判を受けて、放映打ち切りに追いこまれてしまいました」とのことで(放送予定本数は52本だったが39本の放送で終了)、やはりいろいろ苦労はあったようです。

 「西遊記」の仕事を通して手塚が得た教訓は「自分が表現したいことを表現するためには、自分の金で作らなければ駄目だ」ということであったと言われています。しかし、アニメ作りは膨大な人手と手間がかかることから、そのための費用を漫画の仕事によって捻出するという構造は続けざるを得ず、手塚は創作と経営の狭間で常に苦悩し、ある時期ヒット作を生み出しながらも、虫プロダクション(旧)は'73年に倒産します。やはり、当初アニメは、急速に伸びつつも不確実性要素の多い新興ベンチャーのようなものであり、そうした中でテレビ局などは、プロダクションとの関係において自分たちに有利な(危険負担は少なく利益は大きい)契約を結ぶことに注力し、一方のプロダクション側には、そうした交渉ごとのプロというのがいなかったのではないかと思われます。漫画の主人公も苦労しているけれども、現実は現実で、なかなか漫画のようにはいかない面も多かったのではないでしょうか。

「西遊記」1960年.jpg「西遊記」●制作年:1960年●監督:藪下泰司(演出)/手塚治虫(構成)●製作:大川博●脚本:植草圭之助/手塚治虫●撮影:大塚晴郷●音楽:服部良一●原作:手塚 治虫●時間:88分●声の出演:小宮山清/新道乃里子/木下秀雄/篠田節夫/関根信昭/植草圭之助●公開:1960/08●配給:東映(評価:★★★)

悟空の大冒険 03.jpg「悟空の大冒険」●監督:杉井ギサブロー●プロデューサー:川畑栄一●演出:出崎統ほか●脚本:菅野昭彦ほか●音楽:宇野誠一郎●原作:手塚治虫●出演(声):右手和子/増山江威子/野沢那智/愛川欽也/ 滝口順平/近石真介/小原乃梨子/熊倉 一雄/三輪 勝恵/大竹 宏/雨森 雅司/小林 清志●放映:1967/01~09(全39回)●放送局:フジテレビ

【1959年単行本[鈴木出版『手塚治虫漫画選集』第5巻]/1967年再録[「COM」3月号・4月号(『名作劇場』)]/1969年新書化[小学館『ゴールデン・コミックス手塚治虫全集』]/1977年文庫化[講談社『手塚治虫漫画全集』]/1998年再文庫化[小学館文庫]/2011年再文庫化[講談社『手塚治虫漫画全集』]/2014年復刻版(函入愛蔵版)[国書刊行会]】

「●さ行の日本映画の監督」の インデックッスへ  Prev|NEXT ⇒ 【1125】 相米 慎二 「台風クラブ
「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

個人的な思い入れもあり、「白蛇伝」と並んで初期東宝アニメの傑作として推したい作品。

わんぱく王子の大蛇退治 dvd.jpgわんぱく王子の大蛇(おろち)退治.jpg わんぱく王子の大蛇退治 title.jpg わんぱく王子の大蛇退治 0.jpg

わんぱく王子の大蛇退治 [DVD]」['02年]「わんぱく王子の大蛇(おろち)退治 [DVD]」['13年]

わんぱく王子の大蛇退治 2.jpg 王子スサノオは両親イザナギとイザナミのもとで楽しく暮らしていたが、ある日、母イザナミが亡くなる。泣き疲れて浜辺で寝てしまったスサノオの夢に母が現れ、勾玉を与えスサノオを励ます。スサノオは黄泉の国に母を訪ねていくことを決意して舟を作り、ウサギのアカハナを供に船出する。大海原で怪魚を退治して、海の神ワダツミに感謝され、兄ツクヨミが治める夜の国へと案内される。ツクヨミに黄泉の国への道を尋ねるが教えてもらえず、火の国を訪ね、火の国の荒廃の元凶だった火の神と戦い打ち負かす。移住できる豊かな土地を望む火の国の住民の代表タイタン坊を供に加え、スサノウは姉アマテラスが治める高天原に行く。姉の勧めにより高天原で働き始めたものの、失敗が重なり、アマテラスは岩戸に隠れてしまう。日の神アマテラスが隠れて世界が真っ暗になったため、高天原の住人たちは一計を案じ、アマテラスを岩戸から連れ出すのに成功、騒動の責任を感じて反省するスサノオを見て、アマテラスはスサノオを励まし、出雲の国に送り出す。出雲の国は荒廃し、母イザナミの面影を思わせる少女クシナダ姫が怪物・八叉の大蛇(ヤマタノオロチ)の生贄にされようとしていた―。

わんぱく王子の大蛇(おろち)退治2.jpg 神話の天岩戸説話、素盞嗚尊の八岐大蛇退治に材を得た東宝動画(現東宝アニメーション)の劇場版長編アニメで、東宝動画は、「白蛇伝」('58年)を長編第1作とし、その後、「少年猿飛佐助」('59年)、「西遊記」('60年)、「安寿と厨子王丸」('61年)、「アラビアンナイト シンドバッドの冒険」('62年)と世に送り続けていて、'63年劇場公開の本作が第6作にあたります。

 監督は前作「安寿と厨子王丸」の藪下泰司(「白蛇伝」も、監督名は大川博・東宝社長になっているが、実質は藪下が監督)から、当時新人の芹川有吾(1931-2000)に交代しています(この時から正式に"演出"が"監督"になり、名実ともにその役割を全面的に担うようになった)。演出助手(助監督)として「安寿と厨子王丸」の時と同じく高畑勲がついています。

住田知仁.jpg風間 杜夫.jpg スサノオの声は住田知仁(現・風間杜夫、1949年生まれ)が担当。前作「安寿と厨子王丸」に比べて非常に躍動的で、とりわけ、八叉の大蛇と天早駒(アメノハヤコマ)に跨るスサノオの空中戦シーンは半年かけて作画されたもので、原画1万枚超、300カット、日本アニメーション史上に残る名場面とされています(アメリカでは1964年に"The Little Prince and The Eight-Headed Dragon"の題で公開)。ゴジラ映画の伊福部昭が担当した音楽も相乗効果として効いているように思います。
左から久里千春(アカハナ)、川久保潔(タイタン坊)、住田知仁(スサノオ)、岡田由起子(クシナダ姫)

わんぱく王子の大蛇退治3.jpg 個人的には、この八叉の大蛇の出てくる場面だけは、かなりはっきり記憶に残っており、これを学校課題の絵日記に書きました(鑑賞日は公開年の7月20日となっており、他の学校の生徒も劇場に来ていたと書いてあるから、学校で課外授業として観に行ったのかも)。ストーリーの根底は母子物なのですが、「おもしろかった」「ハラハラした」「おかしかった」というのが当時の主な感想で、絵の方に力が入って、感想の方はやや手抜きしたのかも(小学校低学年だとこんなものか)?

 最初に観て何十年経た今も、映画の中の闇夜で暴れる八叉の大蛇のイメージが残っているということは、(今のアニメの水準からするとさほどでもないのですが)当時としてはそれだけインパクトがあったということなのでしょう。個人的な思い入れもあって、リバイヴァルで観た「白蛇伝」と並んで初期東宝アニメの傑作として推したい作品です。

 神話では、素盞嗚尊は、幼少期のマザコン、高天原での凶暴性、八岐大蛇退治での英傑ぶりと多様な側面を持ち、日本で最初に和歌を詠んだとされる文人的側面もあるキャラクターですが、素盞嗚尊って意外と身近なのかも。全国に素盞嗚神社があり、ウチの近所にある素盞雄神社も、素盞雄大神(すさのおおおかみ)を祭神としていますが、但し、明治初期の廃仏毀釈により祭神名をそのように定めたようです。

「わんぱく王子の大蛇(おろち)退治」●制作年:1963年●監督(演出):芹川有吾●製作:大川博●脚本:池田一朗/飯島敬●演出助手:高畑勲/矢吹公郎 ●撮影:石川光明/菅原英明●音楽:伊福部昭●時間:86分●声の出演:住田知仁(現・風間杜夫)/岡田由起子/久里千春/木下秀雄/篠田節夫/友部光子/山内雅人/木下秀雄/風祭修一/新道乃里子/川久保潔/巌金四郎/八木光生/山内雅人/古賀浩二●公開:1963/03/21●配給:東映(評価:★★★★)

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【975】 竹内 博 『東宝特撮怪獣映画大鑑 [増補版]』
「●ま行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ「●「菊池寛賞」受賞者作」の インデックッスへ(宮崎 駿)「●「芸術選奨(映画監督)」受賞作」の インデックッスへ(宮崎 駿)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

'97年は「もののけ姫」ヒットの年。宮崎駿監督のお陰で映画産業界は底を脱した?
  
映画イヤーブック 1998.jpg もののけ姫 1997 dvd.jpg もののけ姫 0.jpg となりのトトロ dvdes.jpg
映画イヤーブック (1998) (現代教養文庫)』「もののけ姫 [DVD]」「となりのトトロ [DVD]」('88年/東宝)

映画イヤーブック.JPG 1997年の劇場公開作品、洋画344本、邦画191本の計535本の全作品データと解説を収録し、ビデオ・ムービー、未公開洋画、テレビ映画ビデオのデータなども網羅、このシリーズは8冊目となり、巻末に'91年版から'98年版までの全巻を通しての索引が付いていますが、結局このシリーズはその後刊行されることなく、2000年代に入って版元の社会思想社は倒産しています。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「シャイン」「イングリッシュ・ペイシェント」「浮き雲」「コンタクト」「世界中にアイ・ラブ・ユー」「タイタニック」の6作品、邦画は、「うなぎ」(今村昌平監督)「もののけ姫」(宮崎駿監督)「バウンズ ko GALS」(原田眞人監督)「ラヂオの時間」(三谷幸喜監督)などの4作品。

 トム・クルーズ主演の「ザ・エージェント」('96年)やブルース・ウィリス主演の「フィフス・エレメント」('97年)、ハリソン・フォード主演の「エアフォース・ワン」('97年)、トミー・リー・ジョーンズ主演の「メン・イン・ブラック」('97年)と、ハリウッド・スター映画もそれなりに頑張っていたけれど(本書評価は何れも「三つ星」)、この頃からビデオ化されるサイクルがどんどん早くなってきたので、個人的にもこうした作品はビデオで観てしまうことが多くなりました。

もののけ姫.jpg 世間一般でもこうした「ビデオで観る」派が増えて、'96年の映画館の入場者数が1億1,957万人と史上最低だったわけですが、翌年は、この年'97年7月公開の「もののけ姫」('97年/東宝)のヒットを受けて、邦画の映画館入場者数は前年比2千万人増、さらに12月公開のジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」('97年)のヒットが、翌年の洋画の映画館入場者数を前年比2千万人以上押し上げ、映画業界は何とか底を脱したかたちになりました。

 ちなみに、'90年から'98年までの年度別映画興行成績(配給収入)ベストワンは、  
  1990年 「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」 (UIP) 55.3億円  
  1991年 「ターミネーター2」(東宝東和) 57.5億円   
  1992年 「紅の豚 」(東宝) 28億円   
  1993年 「ジュラシック・パーク」 (UIP) 83億円   
  1994年 「クリフハンガー」 (東宝東和) 40億円  
  1995年 「ダイ・ハード3」 (20世紀フォックス) 48億円   
  1996年 「ミッション:インポッシブル」 (UIP) 36億円  
  1997年 「もののけ姫」 (東宝) 113億円
  1998年 「タイタニック」 (20世紀フォックス) 160億円
となっています。
Sen to Chihiro no kamikakushi (2001)
Sen to Chihiro no kamikakushi (2001).jpg 2001年には宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が304億円、2003年には「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が173.5億円、2004年には宮崎駿監督の「ハウルの動く城」が196億円、2008年には同じく宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」が155億円、2010年にはジェームズ・キャメロン監督の「アバター」が156億円と、それぞれ年間で150億円以上の興行成績を打ち立てていますが、この(社)日本映画製作者連盟による統計のとり方は、90年代までは「配給収入」をみていたのが、2000年以降は海外(米国)の基準に沿って「配給収入」ではなく「興行収入」でみています

 「興行収入」は映画館の入場料の総和そのもので、「配給収入」はそこから映画館(興行側)の取り分を差し引いた、配給会社の収益ですので、「興行収入」の方が「配給収入」よりも数字は大きくなり(配給収入=興行収入×50~60%、洋画メジャー大作の場合は×70%)、2000年代に入り、数字上は100億円超の"興行成績"を収める映画が出やすくなっているというのもあります。

 そうした観点からしても、90年代の"100億円"映画というのは大ヒット作ということになり(「もののけ姫」を「興業収入」でみると193億円になる)、90年代後半にそうした作品が出てきたところで、本書のような評論家による作品評価やマイナー作品の映画情報も入った「総合映画事典」的な文庫の刊行が途絶えたことはやや残念。

 確かに、一発「お化けヒット」した作品が出れば映画業界は活気づくけれども、皆が皆、宮崎駿やジェームズ・キャメロンの監督作品、或いは「ハリー・ポッター」シリーズ(このシリーズも殆どが興行収入100億円超)に靡いて劇場の前に列を作るというのもどうかと―(と言いつつ、自分もこの頃にはすでにあまり劇場に行かず、専らビデオで映画を観ることが多くなっていたのだが)。

もののけ姫2.jpg 「もののけ姫」は、それまでの宮崎駿監督の作品の集大成とも言える大作で、作画枚数は14万枚以上に及び、これは後の「千と千尋の神隠し」の11.2万枚をも上回る枚数です。時代の特定は難しいですが、室町後期あたりのようで、室町時代にしたのはこれ以上遡ると現実感が希薄になって自分自身もイメージが湧きにくくなるためだというようなことを、宮崎監督が養老孟司氏との対談で言っていました(『虫眼とアニ眼』 ('08年/新潮文庫))。自然と人間の対決というテーマは「風の谷のナウシカ」('84年)にも見られましたが、こちらはより深刻かつ現実的に描かれているような気もします。バックボーンになっているのは明らかに網野善彦(1928-2004)の展開する非農業民に注目した日本史観であり、映画全編を通して様々な要素が入っていて、その解釈となると結構難解もののけ姫 1.jpgな世界とも言え、歴史学の知識に疎もののけ姫e.jpgい身としては、その辺りが今一つ解らなかったもどかしさもありました(その網野善彦からは、当時の女性は皆ポニーテールだったとの指摘を受けている)。「となりのトトロ」('88年)みたいに、深く考えないで観た方が良かったのかも。

 因みに、スタジオジブリはこの作品からプロデューサーに鈴木敏夫氏を据え、企画、宣伝、興行全てを鈴木プロデューサーが取り仕切り、徹底的なメディア戦略を行ったそうです。そのことにより、先に述べたように作品はヒットし、初期作品「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」の15倍から18倍の観客を動員しています。「千と千尋の神隠し」となると、更にその1.5倍ほどの差になるわけですが、だからと言Kaze no tani no Naushika (1984).jpgって、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」が「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」や「となりのトトロ」より優れているということには必ずしもならないでしょう。「風の谷のナウシカ」が出た頃、この作品にすごく注目していた友人がいて、薦められてその友人の家でレーザーディスクで観たことがありますが(その友人は当時パイオニアに勤務していた)、となりのトトロes.jpgその友人は先見の明があったのかも。「となりのトトロ」はこの作品が出た時期に限らず、幅広い世代の幼年期の記憶に残ったのではないでしょうか(個人的には「となりのトトロ」がスタジオジブリの最高傑作だと思っている)。こうした初期作品の方が好きな人も結構いるように思います。

「となりのトトロ」('88年/東宝)

Kaze no tani no Naushika (1984)

もののけ姫  .jpgもののけ姫11.jpg「もののけ姫」●制作年:1997年●監督・脚本:宮崎駿●製作:鈴木敏夫●撮影:奥井敦●音楽:久石譲(主題歌:米良美一「もののけ姫」)●時間:133分●声の出演:松田洋治/石田ゆり子/美輪明宏/渡辺哲/小林薫/森繁久彌/田中裕子/佐藤允/森光子/上條恒彦/島本須美/名古屋章/近藤芳正/飯沼慧●公開:1997/07●配給:東宝 (評価:★★★☆)

風の谷のナウシカ1.jpeg風の谷のナウシカ DVD.jpg「風の谷のナウシカ」●制作年:1984年●監督・脚本・原作:宮崎駿●製作:高畑勲●撮影:白神孝始●音楽:久石譲●時間:116分●声の出演:島本須美/松田洋治/榊原良子/家弓家正/永井一郎/富永み~な/京田尚子/納谷悟朗/辻村真人/宮内幸平/八奈見乗児/矢田稔●公開:1984/03●配給:東映●最初に観た場所:下高井戸京王(84-08-25)(評価:★★★☆)●併映:「未来少年コナン」(佐藤肇)
風の谷のナウシカ [DVD]

となりのトトロ 1.jpgとなりのトトロ DVD.jpg「となりのトトロ」●制作年:1988年●監督・脚本・原作:宮崎駿●製作:原徹●撮影:白井久男●音楽:久石譲(主題歌:井上あずみ「となりのトトロ」)●時間:88分●声の出演:日高のり子/坂本千夏/糸井重里/島本須美/高木均/北林谷栄/丸山裕子/鷲尾真知子/鈴木れい子/広瀬正志/雨笠利幸/千葉繁●公開:1988/04●配給:東宝 (評価:★★★★☆)
となりのトトロ [DVD]


《読書MEMO》
●ジブリ作品の興行収入(1984-2011) 
作品 公開年度  興行収入   観客動員
「風の谷のナウシカ」  1984年 14.8億円 91万人
「天空の城ラピュタ」   1986年 11.6億円 77万人
「となりのトトロ」  1988年 11.7億円 80万人
「魔女の宅急便」  1989年 36.5億円 264万人
「おもひでぽろぽろ」   1991年 31.8億円 216万人
「紅の豚」  1992年 47.6億円 304万人
「平成狸合戦ぽんぽこ」 1994年 44.7億円 325万人
「耳をすませば」  1995年 31.5億円 208万人
「もののけ姫」  1997年 193億円 1,420万人
「千と千尋の神隠し」  2001年 304億円 2,350万人
「猫の恩返し」  2002年 64.6億円 550万人
「ハウルの動く城」 2004年 196億円 1,500万人《読書MEMO》
「ゲド戦記」  2006年 76.5億円 588万人
「崖の上のポニョ」  2008年 155億円 1,200万人
「借りぐらしのアリエッティ」2010年 92.5億円 750万人
「コクリコ坂から」  2011年 44.6億円 355万人

森卓也.jpg森卓也(映画評論家)の推すアニメーションベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))
○難破ス物語第一篇・猿ヶ島('30年、正岡憲三)
○くもとちゅうりっぷ('43年、正岡憲三)
○上の空博士('44年、原案・横山隆一、演出:前田一・浅野恵)
○ある街角の物語('62年、製作構成:手塚治虫、演出:山本暎一・坂本雄作)
殺人(MURDER)('64年、和田誠)
○長靴をはいた猫('69年、矢吹公郎)
ルパン三世・カリオストロの城('79年、宮崎駿)
うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー('84年、押井守)
○天空の城ラピュタ('86年、宮崎駿)
となりのトトロ('88年、宮崎駿)

「●まんが・アニメ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【271】 ササキバラ・ゴウ 『〈美少女〉の現代史
「●映画」の インデックッスへ 「●日本のTV番組」の インデックッスへ 「●日本のTVドラマ (~80年代)」の インデックッスへ(「ジャングル大帝」「W3」) 「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●て 手塚 治虫」の インデックッスへ「●榎本 健一 出演作品」の インデックッスへ

見るだけでも楽しいが、手塚治虫自身による裏話が多く盛り込まれており、読んでも面白かった。

手塚治虫劇場.jpgジャングル大帝917.JPG 
手塚治虫劇場―手塚治虫のアニメーションフィルモグラフィー』(1997/07 手塚プロダクション) (カバーイラスト:和田 誠)/「ジャングル大帝 レオのうた(劇場版1966)」作詞:辻真先/作曲:冨田勲/歌:弘田三枝子

 手塚アニメのフィルモグラフィーで、'97年刊行(初版は'91年)。'60(昭和35)年公開の「西遊記」から'97年公開の「ジャングル大帝」までの劇場公開されたアニメーション映画作品、並びに、'63年から'66年にかけて放映された「鉄腕アトム」から、'97年に放映された「聖書物語」までのTVアニメ作品(「バンパイヤ」などの実写との合成版を含む)の、画像や上映・放送記録データを収録しています。

 主要作品については、作者・手塚治虫自身がメディア各誌等で語ったその作品に関する長文の談話が付されていて、主にアニメーションの制作の苦労話や技術的なことについて触れているものが多く、そうした意味では、アニメに特化した編集の趣旨が明確に出ていていいです。

 冒頭の'88年の「朝日賞」受賞時の講演(作者が亡くなる1年前)からしてまさにそうであり、殆どアニメ制作の現場にいる玄人に向けて話すような内容を、一般の人にも分かり易いよう噛み砕いて語っていて、それがそのまま、日本のアニメ史や手塚アニメの特徴を語ることにもなっています。

 代表作「鉄腕アトム」に対する作者の後の自己評価はさほど高くなかったように思いましたが、それでも日本のTVアニメにおいて画期的な作品ではあったのだなあと。その自負は、作者自身の談話からも感じ取れます。
 
 取り上げられているている作品の中で個人的に思い出深いのは、「ジャングル大帝」のテレビアニメ版と旧い方の劇場版('66年/東宝)。

「ジャングル大帝 テレビアニメ 昭和40年.jpgジャングル大帝 テレビ 1965.jpgジャングル大帝 テレビ 1965 2.jpg 原作のオリジナルは、'50(昭和25)年から5年間「漫画少年」に連載されたもので、「鉄腕アトム」のオリジナルよりも以前になりますが、それを虫プロが手直しして、TV版に改変し放映を開始したのが'65(昭和40)年で、当時はまだカラーテレビの普及率が低かったものの(東京でカラー受像機は5千台程度)、番組スポンサーである電機メーカーのカラーテレビを普及させたいとの強い意向から、日本初のカラーアニメ番組が実現したとのことです。
ジャングル大帝 Complete BOX [DVD]

 このスポンサーというのは「三洋電機」のことであり、喜劇俳優の「エノケン」こと榎本健一(1904-1970)の「うち~のテレビにゃ色がない 隣のテレビにゃ色がある あらまきれいとよく見たら サンヨー・カラーテレビ」という軽妙ながらも視聴者の購買意欲をそそるコマーシャルが流れていました(因みににエノケンがCMに顔を出すのはこの作品だけで、初めてのCM出演がカラーで喜んだそうだ)。

弘田三枝子.jpg冨田勲6.jpg また、番組のエンディングテーマ「レオのうた」の作曲者は、後にシンセサイザー音楽作家として名を馳せる冨田勲(1932-2016)で、弘田三枝子(1947年生まれ)のパンチの効いた歌唱力により、アニメのエンディングテーマとしては人々の記憶に最も残るものの1つとなりました。弘田三枝子は、伊東ゆかりらと同様、少女時代から米軍キャンプで唄っていた経歴の持ち主で、このテーマを唄っている頃の彼女はややふっくら体型でしたが、自分で作ったカロリーブックをもとに、1日の食事を2000キロカロリー以内に抑えて半年間で17キロのダイエットに成功、1969年に「人形の家」がブレイクして第11回日本レコード大賞の歌唱賞を受賞し、1970年には『ミコのカロリーBOOK』を出版し150万部を超えるベストセラーになりました。

「ジャングル大帝 1966.jpgジャングル大帝・サンダ対ガイラ.gif 「ジャングル大帝」は、本書の手塚治虫自身の談によれば視聴率40%を超えたとのことで、その翌年に映画化され、主人公のレオが大人になってからの物語「新ジャングル大帝 進めレオ!」も引き続きテレビ放映されました。

「ジャングル大帝」('66年/東宝)ポスター(併映「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」('66年/東宝))

 映画版は劇場で見ましたが、オープニングの迸るような色彩の噴出に、ただただ圧倒された思い出があります(おそらくテレビではまだ白黒でしか見ておらず、それがいきなり大型スクリーンでカラーだったから衝撃をもって受け止められたのではないか)。

 本書の手塚治虫の談話を読むと、まずTVアニメの方は、音楽に経費を使い過ぎて、アニメの方は使い回しするなど苦心したとのこと、また、原画の色が当時のテレビ受像機ではそのままに出ないので、実際に映ったものを何度も見て絵具を塗り直したとのこと、それが今度は映画になると、その色がそのまま映像に出てしまうので、また修正と、かなり苦労したようです。

 因みに「ジャングル大帝」はその後、'97年(監督:竹内啓雄)、'07年(監督:谷口悟朗)に映画化されていますが(本書第2版は'97年版「ジャングル大帝」の公開に合わせて刊行されている)、それらはDVD化されているのに対し、この'66年版(監督:山本暎一)はDVDが無いようです(他作品とバンドルされて、期間限定でDVD化されたりしたことはあったかも)。(実際に、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「新宝島」の3部作DVD-BOX として、2005年と2008年に発売されていることを、このブログを見た人から教えていただいた。期間限定生産だったが、マーケットプレイスで購入可能のようだ。)

w3.JPG 「ジャングル大帝」のテレビ放映時期は「鉄腕アトム」の終わりの方と重なっており、ほぼ同じ時期に虫プロのTVアニメ第2弾作品「W3(ワンダースリー)」の放映がありましたが('65年6月~'66年6月フジテレビで放映)、「W3」は「鉄腕アトム」と「ジャングル大帝」のどちらのアニメチームにも入れなかった虫プロのスッタフの「俺たちは落ちこぼれじゃないか」というひがみムードを払拭するために、そうしたスッタフの自発的なアイディアを尊重して作られた作品であるとのことです。

 もともと宇宙からきたリスのシリーズを考えていたところ、他のプロダクションでそっくりな企画が進行しているとの情報が入ってスパイ疑惑まで生じ、豊田有恒氏が虫プロを辞める事態にまで至ったわけですが(これが巷にいう「W3事件」)、その別のプロダクションの作品というのが「宇宙少年ソラン」です。

 「少年マガジン」で「W3」の連載が始まった後に「宇宙少年ソラン」の連載も同誌で始まり、しかもアニメ化された番組のスポンサーは菓子メーカー同士(ロッテ(W3)と森永(ソラン))の競合だったという―。結局、「W3」は「少年マガジン」の連載を中断し、「少年サンデー」で再開。但し、アニメの方は、途中から裏番組に「ウルトラQ」がきて、ガクンと視聴率が下がってしまったとのことですが、アメリカのローカル局に買われたとのことです(ローカル局のためか、吹き替え無しの字幕放送だった)。

 この本は、見ているだけでも楽しいですが、作者・手塚治虫自身による現場の裏話がふんだんに盛り込まれており(「W3事件」に関しても手塚自身が殆どの経緯を述べている)、読んでも面白かったです。

ジャングル大帝 1965.jpgジャングル大帝3.jpg「ジャングル大帝」●製作:山本暎一●チーフ・ディレクター:林重行●音楽:冨田勲●原作:手塚治虫●出演(声):太田淑子/小池朝雄/松尾佳子/明石一/田村錦人/勝田久/加藤精三/熊倉一雄/川久保潔/関根信昭/山本嘉子/千葉順二●放映:1965/10~1966/09(全52回)●放送局:フジテレビ

ジャングル大帝 劇場版 (1966)b.jpgジャングル大帝(劇場版)1966年2.jpg「ジャングル大帝」(劇場版)●制作年:1966年●監督:山本暎一●脚本:辻真先●音楽:冨田勲●原作:手塚治虫●時間:75分●声の出演:太田淑子/明石一/勝田久/松尾佳子/田村錦人/緑川稔●公開:1966/07●配給:東宝(評価:★★★★)

W3(ワンダースリー).jpgW3(ワンダースリー)2.jpg「W3(ワンダースリー)」●プロデューサー:黒川慶二郎●チーフ・ディレクター:杉山卓●音楽:宇野誠一郎●原作・総監督:手塚治虫●出演(声):白石冬美/近石真介/小島康男/沢田和子/金内吉男/池田一臣/桜井良子●放映:1965/06~1966/06(全52回)●放送局:フジテレビ

「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1554】 藪下 泰司 「安寿と厨子王丸
「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

話はシンプルだが、アニメーション自体が素晴らしい。日本アニメの黎明期の「別格」的作品か。

白蛇伝 vhs.jpg 白蛇伝 dvd.jpg  白蛇伝1.bmp「白蛇伝」(1958)
白蛇伝 [VHS]」「白蛇伝 [DVD]

白蛇伝2.jpg 心優しい青年・許仙(しゅうせん)に助けられた白蛇の精が、青年を慕って美少女・白娘(ぱいにやん)として現れるが、その正体を知る和尚・法海(ほっかい)によって二人の恋は妨げられ、許仙は命を落としてしまう。その命を助けるためには龍王の許しがなければならず、白娘は命を賭して龍王の試練に立ち向かい、更に青年を蘇らせるべく、法海のもとへ向かう―。

 中国古代の四大民間伝説の一つとされている「白蛇伝」は、上田秋成の『雨月物語』の中の「蛇性の淫」のモチーフにもなっています(と言うことは、白蛇の精は、溝口健二の「雨月物語」('53年/大映)で京マチ子が演じた元御姫にも通じるのか)。

 この作品以前に日本で作られた最大規模のアニメ映画は、松竹動画研究所による大戦中の国策映画「桃太郎 海の神兵」('45年/白黒74分)であり、それに対してこの「白蛇伝」は、東映動画が日本で初めて長編アニメ映画制作システムを構築した上で制作した作品であるとのこと(日本初の長編「カラー」アニメ映画ということになる)。
 
 以来、東宝動画は「少年猿飛佐助」('59年)、「西遊記」('60年)、「安寿と厨子王丸」('61年)、「アラビアンナイト シンドバッドの冒険」('62年)、「わんぱく王子の大蛇退治」('63年)、「わんわん忠臣蔵」('63年)、「ガリバーの宇宙旅行」('65年)と毎年のように長編アニメを発表し、アニメ制作の主導権は長年にわたり東映が握っているということです(「東映アニメまつり」の先駆けなのだなあ)。

 「桃太郎 海の神兵」を観て、その技法に感動したのが手塚治虫ならば、「白蛇伝」を観てアニメーション作家を志したのが宮崎駿、「白蛇伝」は日本アニメの黎明期の傑作とされています。

佐久間良子.jpg白蛇伝3.jpg 当時のことですから、セルは当然1枚1枚が手描きですが、登場人物の動きは、当時"新人女優"だった佐久間良子がヒロインの動きをライブで演じ(厳密に言えば、彼女は当時まだ映画デビューしておらず、俳優座養成所での半年間研修期間中に当作品のモデルとして初めてカメラの前に立つことになった)、その動きをアニメーションに生かすディズニー・アニメと同じ手法を取ることで概ね滑らかなものとなっており、妖術合戦や大波のシーンなどのスペクタクルシーンは迫力満点、更に、場面ごとの背景の描写などは中国の古典的説話の雰囲気をよく醸していて(ここでも、画面の奥行きを出すために背景と動画を何層にも重ねるディズニー・アニメの手法が取られている)、総じて、長編アニメの第1号作品にしてかなり高い完成度と言えるのではないでしょうか。

森繁久彌.jpg宮城まり子 女優5.jpg 声の出演は、森繁久彌宮城まり子の2人だけで各10役以上をこなしたそうで、このやり方は、後のTV番組「まんが日本昔ばなし」(声の出演は常田富士男と市原悦子の2人だけ)に受け継がれました。

 説話を翻案した中国の伝奇物語では、「異類婚姻譚」という物語の大枠は共通していても、このアニメのように恋物語としてハッピーエンドで終わるものもあれば、最後は白娘が妖魔としての正体を露わにし、法海に退治されてしまうというものもあるそうですが、何れにせよ、幾多の魑魅魍魎が登場するオリジナルに比べれば、登場人物を大幅に絞り込んだストーリーはシンプルと言えばシンプル、しかし、アニメの場合はこれでいいのだろうなあ。

白蛇伝 ポスター.jpg 子供の時に劇場で観ましたが、やはり、ストーリーよりもアニメーションそのものがずうっと後々まで印象に残りました(リアルタイムで観たつもりでいたが、実はリヴァイバル上映だった)。

 よくインターネット上で、「日本アニメのマイ・ベスト10」とか「日本アニメ史上の最高傑作は?」などといったサイトを見かけますが、名が挙がっているのは80年代、90年代の作品が多く、意外とこの作品の名が挙がらないのは、やはり何と言っても50年代という古さのためでしょうか?(そもそも、その頃は「アニメ」とは言わず「漫画映画」とか言っていたし)

白蛇伝8.jpg そうした80年代、90年代の作品を挙げている人達は、こんな古いのは観ていないのかなあ。まあ、80年代、90年代の作品と比べても見劣りしない「傑作」であることに違いなく(評価としては一応星4つにしてはいるが)、むしろ、日本アニメ史上におけるポジショニングや個人的な想い出も含めると、それらを超えて「別格」であるという感じはします。 

「白蛇伝」●制作年:1958年●監督(演出):藪下泰司白蛇伝 渡辺.jpg●製作:大川博●脚本:藪下泰司/矢代静一●演出:藪下泰司/芹川有吾●撮影:塚原孝吉/石川光明●音楽:木下忠司/池田正義/鏑木創●時間:79分●声の出演:森繁久彌/宮城まり子/佐久間良子(アニメ作画用モデルとして)●公開:1958/10●配給:東映(評価:★★★★)

渡辺 仙州(編著)/石原 依門(絵)『白蛇伝』(2005/03 偕成社)

「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1469】 山田 洋次 「家族
「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「●東野 英治郎 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●森 鷗外」の インデックッスへ

アニメ技術そのものはいいのだが、カタルシス不全を起こしそうな結末。

安寿と厨子王丸 dvd.jpg  安寿と厨子王丸 面子0.jpg 安寿と厨子王丸 面子1.jpg 厨子王丸2.jpg 安寿と厨子王丸 面子4.jpg 安寿と厨子王丸 面子5.jpg  山椒大夫・高瀬舟.jpg
安寿と厨子王丸 [DVD]」/「安寿と厨子王丸」面子(メンコ)シリーズ/『山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫)

山椒大夫.jpg安寿と厨子王丸 vhs.jpg田中澄江.jpg 森鷗外の「山椒大夫」を原作とした溝口健二監督の映画化作品「山椒大夫」('54年/大映)はよく知られていますが、同じく森鷗外の作を原作として、溝口作品の7年後に田中澄江(1908-2000/享年91)の脚本のもと)としてアニメ化されていて、オープニングに東映の「創立十周年記念」とあります。

 声の出演が、安寿が佐久間良子、厨子王(成人後)が北大路欣也、母が山田五十鈴、山椒太夫が東野英治郎、その長男が平幹二朗という錚々たる布陣であり(厨子王の少年時代担当の「住田知仁」は後年の風間杜夫、「わんぱく王子の大蛇退治」('63年/東映)でも主人公の声を担当)、実際に人が演技した映像をなぞってアニメ化するという手法がとられていて、アニメーション自体も美しい出来栄えであるには違いないと思います。

安寿と厨子王丸1.jpg 安寿と厨子王のお供の動物キャラが出てくるのは子供向けアレンジですが、山椒大夫の2人の息子の内、弟の三郎が安寿に想いを寄せるという恋愛話も挿入されていたりします。

 安寿が焼き鏝を顔に当てられそうになるところを三郎が救うので、当然のことながら、やけどが菩提像の加護で癒えるという、鷗外の原作にあるはずの場面は無く、映像化しようとすると、やはりヒロインについては忌避される場面なのでしょうか(ましてや子供向けであるし)。

 安寿が入水自殺を遂げるのは鷗外の原作通りですが(オリジナルの説話「さんせい太夫」では刑死または拷問死なのだが)、成人した厨子王が都で化け物退治をするなどのオリジナル・エピソードがあり、何よりも原作と異なるのは、安寿を供養するため出家した三郎の願いで厨子王が山椒大夫親子を許してしまうという点で、やや拍子抜けしてしまいそうなまでの厨子王の寛容さ。

 しかも、ラストの母子再会でも、溝口作品同様に母の眼は「明かない」という...、アニメーション技術そのものはいいのだけれど、何だかカタルシス不全を起こしそうな結末とも言えるかと。

安寿と厨子王丸 面子7.jpg安寿と厨子王丸 面子6.jpg安寿と厨子王丸 面子8.jpg安寿と厨子王丸 面子10.png 子供向けということもあったと思いますが(当時の面子(メンコ)にもなっているぐらいだから、それなりに多くの子供が観たのではないか)、山椒大夫が処刑を免れたのは、権力を握った者が旧敵を罰するという構図に反発した当時の東映労組の(言わば"大人たちの")意向も反映されているようです。

佐久間良子2.jpg風間杜夫2.jpg北大路欣也.jpg山田五十鈴.jpg東野英治郎.jpg平幹二朗.jpg「安寿と厨子王丸」●制作年:1961年●監督(演出):藪下泰司●製作:大川博●脚本:田中澄江●演出:藪下泰司/芹川有吾●演出助手:高畑勲●撮影:大塚晴郷/中村一雄/東喬明●音楽:木下忠司/鏑木創●原作:森鷗外「山椒大夫」●時間:83分●声の出演:佐久間良子/住田知仁(風間杜夫)/北大路欣也/山田五十鈴/東野英治郎/平幹二朗/宇佐美淳也/水木襄/山村聡/松島トモ子/三島雅夫/花沢徳衛●公開:1961/07●配給:東映(評価:★★★)

「●ま行の現代日本の作家」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●や‐わ行の現代日本の作家」【630】 山田 詠美 『ベッドタイムアイズ
「●「山本周五郎賞」受賞作」の インデックッスへ 「●「本屋大賞」 (10位まで)」の インデックッスへ
「●さ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○存続中の映画館」の インデックッスへ(下高井戸京王) 「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

巻き込まれ型ワンナイト・ムービーみたいだったのが、次第にマンガみたいな感じになり...。

夜は短し歩けよ乙女2.jpg夜は短し歩けよ乙女.jpg  after-hours-martin-scorsese.jpg アフター・アワーズ.jpg 『アフターアワーズ』.jpg
夜は短し歩けよ乙女』['06年](カバー絵:中村佑介)「アフター・アワーズ 特別版 [DVD]」グリフィン・ダン/ロザンナ・アークェット

 2007(平成19)年度・第20回「山本周五郎賞」受賞作。2010(平成22)年・第3回「大学読書人大賞」も受賞。

 「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めるが、先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する"偶然の出逢い"にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を、個性的な曲者たちと珍事件の数々が待ち受ける―。

 4つの連作から成る構成で、表題に呼応する第1章は、「黒髪の乙女」の後をつけた主人公が、予期せぬ展開でドタバタの一夜を送るという何だかシュールな展開が面白かったです。

Griffin Dunne & Rosanna Arquette in 'After Hours'
After-Hours-Scorsese.jpgIアフター・アワーズ1.jpg これを読み、マーチン・スコセッシ監督の「アフター・アワーズ」('85年/米)という、若いサラリーマンが、ふとしたことから大都会ニューヨークで悪夢のような奇妙な一夜を体験する、言わば「巻き込まれ型」ブラック・コメディの傑作を思い出しました(スコセッシが大学生の書いた脚本を映画化したという)。 

アフター・アワーズ 1985.jpg グリフィン・ダン演じる主人公の青年がコーヒーショップでロザンナ・アークェット演じる美女に声を掛けられたきっかけが、彼が読んでいたヘンリー・『アフター・アワーズ』(1985).jpgミラーの『北回帰線』だったというのが、何となく洒落ているとともに、主人公のその後の災厄に被って象徴的でした(『北回帰線』の中にも、こうした奇怪な一夜の体験話が多く出てくる)。映画「アフター・アワーズ」の方は、そのハチャメチャに不条理な一夜が明け、主人公がボロボロになって会社に出社する(気がついたら会社の前にいたという)ところで終わる"ワンナイト・ムービー"です。

夜は短し歩けよ乙女 角川文庫.jpg 一方、この小説は、このハチャメチャな一夜の話が第1章で、第2章になると、主人公は訳の分らない闇鍋会のようなものに参加していて、これがまた第1章に輪をかけてシュール―なんだけれども、次第にマンガみたいな感じになってきて(実際、漫画化されているが)、う〜ん、どうなのかなあ。少しやり過ぎのような気も。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

 山本周五郎賞だけでなく、2007(平成19)年・第4回「本屋大賞」で2位に入っていて、読者受けも良かったようですが、プライドが高い割にはオクテの男子が、意中の女子を射止めようと苦悶・苦闘するのをユーモラスに描いた、所謂「童貞小説」の類かなと(こういう類の小説、昔の高校生向け学習雑誌によく"息抜き"的に掲載されていていた)。

 京都の町、学園祭、バンカラ気質というノスタルジックでレトロっぽい味付けが効いていて、古本マニアの奇妙な"生態"などの描き方も面白いし、文体にもちょっと変わった個性がありますが、この文体に関しては自分にはやや合わなかったかも。主人公の男子とヒロインの女子が交互に、同じ様に「私」という一人称で語っているため、しばしばシークエンスがわからなくなってしまい、今一つ話に身が入らないことがありましたが、自分の注意力の無さ故か?(他の読者は全く抵抗を感じなかったのかなあ)

(2017年に「劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ」の湯浅政明監督によりアニメーション映画化された。登場人物は比較的原夜は短し歩けよ乙女 映画title.jpg作に忠実だが、より漫画チックにデフォルメされている。星野源吹き替えの男性主人公よりも、花澤香菜吹き替えのマドンナ役の"黒髪の乙女"の方が実質的な主人公になっている夜は短し歩けよ乙女 映画01.jpg。モダンでカ夜は短し歩けよ乙女 映画00.jpgラフルでダイナミックなアニメーションは観ていて飽きないが、アニメーションの世界を見せることの方が主となってしまった感じ。一応、〈ワン・ナイト・ムービー(ストーリー)〉のスタイルは原作を継承(第1章だけでなく全部を"一夜"に詰め込んでいる)しているが、ストーリーはなぜかあまり印象に残らないし、京風情など原作の独特の雰囲気も弱まった。映画の方が好きな人もいるようだが、コアな森見登美彦のファンにとっては、映画は原作とは"別もの"に思えるのではないか。)
 
 

After Hours.jpgIMG_1158.jpgIアフター・アワーズ9.jpg
グリフィン・ダン演じる主人公の青年がコーヒーショップでヘンリー・ミラーの『北回帰線』を読んでいると、ロザンナ・アークェット演じる美女に声を掛けられる...。 
 
「アフター・アワーズ」●原題:AFTER HOURS●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:マーチン・スコセッシ●製作:エイミー・ロビンソン/グリフィン・ダン/ロバート・F・コールズベリー●脚本:ジョセフ・ミニオン●撮影:ミハエル・バルハウス●音楽:ハワード・ショア●時間:97分●出演:グリフィン・ダン/ロザンナ・アークェット/テリー・ガー/ヴァーナ・ブルーム/リンダ・フィオレンティ下高井戸京王2.jpgーノ/ジョン・ハード/キャサリン・オハラ/ロバート・プランケット/ウィル・パットン/ディック・ミラー●日本公開:1986下高井戸シネマ.jpg下高井戸東映.jpg/06●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:下高井戸京王(86-10-11)(評価:★★★★)●併映:「カイロの紫のバラ」(ウディ・アレン)

下高井戸京王 (京王下高井戸東映(東映系封切館)→1980年下高井戸京王(名画座)→1986年建物をリニューアル→1988年下高井戸シネマ) 


夜は短し歩けよ乙女 映画04.jpg夜は短し歩けよ乙女 映画ポスター.jpg「夜は短し歩けよ乙女」●●制作年:2017年●監督:湯浅政明●脚本:上田誠●キャラクター原案:中村佑介●音楽:大島ミチル(主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION「荒野を歩け」)●原作:森見登美彦●時間:93分●声の出演:星野源/花澤香菜/神谷浩史/秋山竜次(ロバート)/中井和哉/甲斐田裕子/吉野裕行/新妻聖子/諏訪部順一/悠木碧/檜山修之/山路和弘/麦人●公開:2017/04●配給:東宝映像事業部●最初に観た場所:TOHOシネマズ西新井(17-04-13)(評価:★★★)
TOHOシネマズ西新井 2007年11月6日「アリオ西新井」内にオープン(10スクリーン 1,775+(20)席)。
TOHOシネマズ 西新井 ario.jpgSCREEN 1 106+(2) 3.5×8.3m デジタル5.1ch
SCREEN 2 111+(2) 3.4×8.2m デジタル5.1ch
SCREEN 3 111+(2) 3.4×8.2m デジタル5.1ch
SCREEN 4 135+(2) 3.5×8.5m デジタル5.1ch
SCREEN 5 410+(2) 7.0×16.9m デジタル5.1ch
SCREEN 6 146+(2) 3.7×9.0m デジタル5.1ch
SCREEN 7 148+(2) 3.7×8.9m デジタル5.1ch
SCREEN 8 80+(2) 4.1×9.9m MX4D® デジタル5.1ch
SCREEN 9 183+(2) 4.1×9.9m デジタル5.1ch
SCREEN 10 345+(2) 4.8×11.6m デジタル5.1ch

 【2008年文庫化[角川文庫]】

「●日本の絵本」 インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1143】 松谷 みよ子 『わたしのいもうと
「○現代日本の児童文学・日本の絵本 【発表・刊行順】」の インデックッスへ 「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

絵だけで言えば大人向けと言えるかも。鬼が島から宝物の代わりに姫を連れて帰った桃太郎。

ももたろう.jpg 『ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)桃太郎・海の神兵.gif桃太郎・海の神兵 [VHS]

ももたろう 赤羽.jpgももたろう 赤羽末吉.jpg 1965(昭和40)年に刊行された子供向け絵本(読み聞かせなら5歳から、自分で読むなら小学校中級向き)ですが、赤羽末吉(1910-1990)の絵に水墨画のような味わいがあります。

 これと比べると、"100円ショップ"などで売っている絵本はもとより、他の「桃太郎絵本」が霞んでしまうかも。むしろ、絵だけで言えば、大人向けと言えるかも知れません。

 ところで、桃太郎伝説に出てくる鬼が島というのは、室町か江戸の時代に日本近海の島に外国人が漂着したのが起源だと思っていましたが、古代の大和政権が吉備国に攻め込んだ時に活躍した人物をモデルにしたものであるとの説が有力らしく、ルーツを辿ると結構ヤマトタケル並みに古い話のようです。

桃太郎 海の神兵    .jpg桃太郎 海の神兵.jpg 太平洋戦争中は、軍神的キャラクターとして「桃太郎 海の神兵(しんぺい)」('45年公開、74分)などの国策アニメ映画の主人公になっていますが、「桃太郎 海の神兵」はその内容はともかく、長さで1時間を超える日本初の長編アニメーション映画にしてそのアニメ技術はなかなかのもので、今手塚治虫2.jpg見ると北朝鮮のアニメみたいですが、手塚治虫が公開初日にこの映画を見て、そのレベルの高さに感動し、アニメーションの楽しさに目覚めたのだそうです。
  
桃太郎の海鷲.jpg桃太郎の海鷲2.jpg 30分以上1時間未満を"中編"ではなく"長編"とするならば、「桃太郎 海の神兵」に先立つものとして、同じ瀬尾光世監督による「桃太郎の海鷲」('43年公開、37分)があり、これが日本初の長編アニメーション映画ということになるのかも。こちらも技術水準はなかなかのものですが、100人以上のスタッフが関わった「海の神兵」に対し、「海鷲」の方は僅か4名のスタッフだったというから驚きです。内容的には、日本海軍による真珠湾攻撃をモデルにしており、桃太郎を隊長とする機動部隊が鬼が島へ「鬼退治(空襲)」を敢行し、多大な戦果を挙げるというものです(真珠湾攻撃のメタファーになっている)。アメリカ漫画が締め出された頃であったにも関わらず、たまmomotaro_bluto.jpgたま敵兵の中に大男ブルートにそっくりの顔が出てくるため、宣伝ビラで間違ってミッキーマウスやポパイなどが出てきて桃太郎と戦うというのがあったらしく、それを期待して観に行った人もいて「なんだ、ちっとも出てこないじゃないか」とがっかりしたという話もあったそうです(「マンガ映画メイドイン・ジャパン」―『フィルムは生きている―手塚治虫選集5』1959)。この時から既に桃太郎は「軍神」扱いだったのだなあと思わされますが、これらの作品は日本ではなくアメリカでDVD化され市販されています。

 しかし、桃太郎を「軍神」扱いするというのは、明治時代にすでに福沢諭吉などが、桃太郎が鬼が島から宝を獲って帰ったのは「略奪行為」にほかならないと言っていたことを思うと、当時としてもやはりアナクロではないでしょうか(戦争は時代を逆行させるのだろなあ)。

 桃太郎伝説については各地に様々なバリエーションがあるようで、実は桃太郎は家の事を手伝わない怠け者だったのが、家が鬼に襲われて鬼退治に目覚めたとか。芥川龍之介によるパロディなどは、ちょうどこの怠け者説と福沢諭吉の考えをミックスしたようなものになっています。

松居直.jpg 本書の松居直(まつい・ただし、1926- )氏の文による桃太郎は、最後に鬼が島から宝物を持ち帰らない代わりに鬼たちに囚われていたお姫様を連れて帰って、桃太郎は姫と結婚する!(「一寸法師」みたいだなあ)

 松居氏は児童文学者であるとともに、福音館書店の社長も長く務め、多くの絵本作家や挿画家を発掘した人ですが(無名だったいわさきちひろ・初山滋・田島征三・安野光雅・堀内誠一・長新太などを発掘)、最後の部分は松居氏のオリジナルなのでしょうか、それとも実際、そうしたバリエーションも伝承としてあるのでしょうか。

 版元による内容紹介には、「桃太郎の原型、あるべき姿を追求して作りあげた"桃太郎絵本の決定版"」とありますが、鬼が島から宝物を持ち帰る話を「嫁取り話」に仕立てたのは、やはり作者のオリジナルなのでしょう。伝承に忠実というより、軍神のイメージを払拭するという意味での「桃太郎の原型、あるべき姿」であったように思います(福沢諭吉らの「宝の持ち帰りは略奪行為」説にも符合する)。

 因みに、「桃太郎 海の神兵」を撮った瀬尾光世監督の方は、「桃太郎 海の神兵」で「燃え尽きた」と言われ、1949年の「王様のしっぽ」を最後にアニメ界を去り、それ以後は「瀬尾光男」や「せお・たろう」のペンネームで絵本作家へ転向しています。

桃太郎 海の神兵 vhsカバー.jpg「桃太郎 海の神兵」●制作年:1945年●監督・脚本・撮影:瀬尾光世●製作:松竹動画研究所●後援:海軍省●動画:桑田良太郎/高木一郎/小幡俊治/木村一郎●影絵:政岡憲三●音楽:古関裕而●作詞:サトウハチロー●時間:74分●公開:1945/04●配給:松竹映画(評価:★★★)

桃太郎の海鷲桃.jpg「桃太郎の海鷲」●制作年:1942年●監督・撮影:瀬尾光世●製作:芸術映画社、大村英之助●脚本:栗原有茂●後援:海軍省●技術・構成:持永只仁/田辺利彦/橋本珠子/塚本静世●音楽:伊藤昇●時間:37分●公開:1943/03●配給:映画配給社(評価:★★★)

「●まんが・アニメ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【780】 山村 浩二 『カラー版 アニメーションの世界へようこそ
「●講談社現代新書」の インデックッスへ 「●日本のTV番組」の インデックッスへ 「●あ行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●ま行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●日本のTVドラマ (~80年代)」の インデックッスへ(「海のトリトン」「うる星やつら」「ルパン三世」) 「●て 手塚 治虫」の インデックッスへ

作家・作品論的視点で「萌え」考察。「美少女」萌えのルーツなど、面白くは読めたが...。

美少女」の現代史.jpg 〈美少女〉の現代史.gif   ルパン三世 カリオストロの城2.bmp ルパン三世 カリオストロの城 3.jpg 『〈美少女〉の現代史――「萌え」とキャラクター』 講談社現代新書 〔'04年〕 「ルパン三世 - カリオストロの城

 〈まんが・アニメに溢れる美少女像はいつ生まれてどう変化したのか?「萌え」行動の起源とは? 70年代末から今日までの歴史を辿る〉という表紙カバー(旧装)の口上が本書の内容をよく要約しているかと思います。「萌える」という言葉に正確な定義はないそうですが、本書では「キャラクター的なものに対して強い愛着を感じる」という意味で用いています。

海のトリトン2.jpg まずアニメ好きの女性たちにテレビアニメ「海のトリトン」('72年)を契機に組織的な動きがあったということで、手塚治虫ってここでも関わっているのか!という感じ。ただし、アニメ版は原作と雰囲気が多少異なるもので(その一部はウェブ動画でも見ることができる)、放映時はそれほど好視聴率でもなかったようです。忘れかけていた作品だったということもありますが、「萌え」のルーツが、実は少年向けアニメに対する女性たちの思い入れにあったという論旨が新鮮でした。
「海のトリトン」('72年/朝日放送・手塚プロ・東北新社)

 男性が「美少女」に萌えたルーツは、吾妻ひでお「不条理日記」('78年)で、それに高橋留美子の「うる星やつら」('78年)が続き(この作品、「メゾン一刻」より前のものなんだなあ)、更に宮崎駿監督の劇場用アニメ「ルパン三世〜カリオストロの城」('79年)が続く、とのこと。 

うる星やつら/オンリー・ユー パンフ.jpg 「うる星やつら」の劇場版シリーズ第1作から第3作までを論評すると、第1作「うる星やつら/オンリー・ユー」('83年)は、あらかじめ観客とファンUrusei Yatsura 2:Byûtifuru dorîmâ (1984) .jpgを限定して作られたためマニアックな傾向が強く、良くも悪しくも、日本のスラプスティク・アニメの典型のように思え、第2作「うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー」('84年)が一番の出来だと思うのですが(但し、コミックファンの間では、高橋留美子の原作を外れたと憤慨する声もある)、第3作「うる星やつら3/リメンバー・マイ・ラブ」('85年)は、監督が押井守から別の人(やまざきかずお)に変わって、ウェットなラブ・ストーリーになってしまい、作画のレベルは高いのに、内容的には駄作になってしまったように思います。
Urusei Yatsura 2: Byûtifuru dorîmâ (1984)  シネマUSEDパンフレット『うる星やつら/オンリーユー』☆映画中古パンフレット通販☆「うる星やつら オンリー・ユー」(1983)[A4判]

「うる星やつら」のテレビアニメ版は'81年から'86年にかけて195回に渡って放映されていますが(スペシャル版も含めると218話)、調べてみると、押井守は劇場版「うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー」公開翌年の'84年に、第106回放映分をもってTV版の方のチーフディレクター(CD)も降りています(理由は「体力的・精神的な限界」とのこと)。原作がTV放映に追いつかなくなったということもありますが、アニメの方も、CDが変わると(やまざきかずおが引き継いだ)作風が変わるんだなあと思いました。

ルパン三世 カリオストロの城11.jpg 一方、先に劇場映画作品として公開された「ルパン三世〜カリオストロの城」は、ヒロインのクラリス姫が特定のファンの間で非常に人気があることは聞いていましたが、ルパンはこの「自分も泥棒ルパン三世 カリオストロの城.jpgの手伝いをするから」とまで言う健気なお姫様の想いに応えることなく、笑顔で去って行くわけで、ラストの銭形警部の「ルパンはとんでもないものを盗んでいきました。貴方の心です」という台詞が、臭さを超えてスンナリ受け入れられるほどに、クラリスよりルパンそのもののカッコ良さの方が個人的には印象に残ったかなあ。
ルパン三世 - カリオストロの城 [DVD]

 原作者のモンキー・パンチはこの映画の試写を観て、「僕には描けない、優しさに包まれた、"宮崎君の作品"としてとてもいい作品だ」と言ったそうですが、宮崎アニメに自分の作品とは異質の「萌え」のニオイを嗅ぎ付けたのではないでしょうか。
ルパン三世 TV第1シリーズ.jpg 「ルパン三世」のテレビアニメ版は、'71~'72年、'77年~'80年、'84年~'85年の3シリーズに渡って放映されていますが、第1シリーズは、当初は大人向けの作品を意向していたのが、当時の視聴者の関心を集めることができず、対象年齢を下げるという路線変更の後に打ち切られたとのこと。

「ルパン三世」TVシリーズ1(1971)

 第1シリーズがローカル局で再放映されるうちに人気がじわじわ出てきて第2シーズンの放映が決まったとのことですが、シリーズの人気を決定付けた第2シーズンはハナから子ども向けで、この第2シリーズ放映中の'77年~'80年の丸4年間の間に、劇場版第1作「ルパン三世~ルパンVS複製人間」('78年)と第2作「ルパン三世~カリオストロの城」('79年)が劇場公開されたということになります。

ルパン三世 ルパンVS複製人間 1.jpg 第1シリーズ当初からのファンの中には、そのやや大人びた雰囲気が好きな層も多くいたようで、劇場版第1作「ルパン三世~ルパンVS複製人間」は、クローン人間をテーマとしたSFチックな壮大なストーリー(低年齢化したテレビ版の反動か。怪人「マモー」に果てしない人間の欲望を感じたこの作品が、個人的には一番面白かった)、それが第2作「ルパン三世~カリオストロの城」で、重厚な物語設定ながらも子どもにも分かり易い話になり(一方で、「クラリス萌え」という密かなブームを引き起こしていたとは思いもよらなかったが)、更に、宮崎駿の推挙により押井守が監督した第3作「ルパン三世~バビロンの黄金伝説」('87年)では「うる星やつら」のようなギャグタッチが随所に見られるという、映画は結局6作まで作られていますが、こちらも監督が変わるごとにトーンがそれぞれに(随分と)違っている...。(2013年に17年ぶりの劇場版第7作「ルパン三世〜VSコナン THE MOVIE」が作られ、翌2014年に第8作「ルパン三世〜次元大介の墓標」も作られた。尚、TV版の単発スペシャル版は1989年から2013年までほぼ毎年1作のペースで作られ放映されている。)
   
 本書の著者は漫画雑誌の編集長だったせいか、〈文化社会学〉的視点よりも〈作家・作品論〉的視点で書かれていて(だからこそ、タイトルより「口上」の方が、本書内容をよく表していると思う)、その中で作品と受け手の関係を考察しています。著者は「萌え」の背景を、男性が男らしく戦う根拠を失い、女性にそれを向けるも受け入れられず、さらに女性を見るだけの存在となって「純粋な視線としての私」に退行していったと捉えています。

 それなりに面白く読めましたが、ある意味、それほど斬新さを感じない視点である一方、細部においては我田引水と感じられる部分もあります。まんが・アニメ史を俯瞰的によく網羅し解説していると思われる反面、著者の場合、自分の論に沿って事例を集めることは可能だろうという気もします。大塚英志氏などがアニメを論じた本もそうですが、細部を論じれば論じるほど個人的思い入れが反映されやすいのが、このジャンルの特徴ではないかと思いました(このブログの当項においても、個々の作品の方に話がそれたように...)。

海のトリトン題.jpg海のトリトンTriton.jpg「海のトリトン」●演出:富野喜幸●制作:ア海のトリトン_500.jpgニメーション・スタッフルーム●脚本:辻真先/松岡清治/宮田雪/松元力/斧谷稔●音楽:鈴木宏昌●原作:手塚治虫「青いトリトン」●出演(声):塩谷翼/広川あけみ/北浜晴子/八奈見乗児/野田圭一/沢田敏子/杉山佳寿子/北川国彦/渡部猛/増岡弘/渡辺毅/塩見龍助/滝口順平/矢田耕司/中西妙子/柴田秀勝●放映:1972/04~09(全27回)●放送局:朝日放送
海のトリトン コンプリートBOX [DVD]

Urusei Yatsura 1: Onri yû (1983)うる星やつら オンリーユー(ノーカット版)【劇場版】 [DVD]
Urusei Yatsura 1:Onri yû (1983).jpgうる星やつら/オンリー・ユー.jpg「うる星やつら/オンリー・ユー」●制作年:1983年●監督・脚うる星やつら/オンリー・ユー7.jpg色:押井守●製作:多賀英典●演出:安濃高志●脚本:金春智子●撮影監督:若菜章夫●音楽:小林泉美・安西史孝・天野正道●原作:高橋留美子●時間:80分●声の出演:平野文/古川登志夫/島津冴子/神谷明●公開:1983/02●配給:東宝●最初に観た場所:大井ロマン(85-05-05)(評価:★★☆)●併映:「うる星やつら2」(押井守)/「うる星やつら3」(やまざきかずお)

うる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマー4.jpg「うる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマー」●制作年:1984年●監督・脚本:押井守●製作:多賀英典●演出:西うる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマー00.jpg村純二●撮影監督:若Urusei Yatsura 2 Byûtifuru dorîmâ (1984)_.jpgうる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマー.jpg菜章夫●音楽:星勝●原作:高橋留美子●時間:98分●声の出演:平野文/古川登志夫/島津冴子/神谷明/杉山佳寿子/鷲尾真知子/田中真弓/藤岡琢也/千葉繁/村山明●公開:1984/02●配給:東宝●最初に観た場所:大井ロマン(85-05-05)(評価:★★★)●併映:「うる星やつら」(押井守)/「うる星やつら3」(やまざきかずお)

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]

Urusei Yatsura 2: Byûtifuru dorîmâ (1984)




うる星やつら3/リメンバー・マイ・ラブ16.jpgうる星やつら3/リメンバー・マイ・ラブ0.jpg「うる星やつら3/リメンバー・マイ・ラブ」●制作年うる星やつら3/リメンバー・マイ・ラブ1985.jpg:1985年●監督:やまざきかずお●脚本:金春智子●撮影:若菜章夫●音楽:ミッキー吉野●原作:高橋留美子●時間:90分●声の出演:平野文/古川登志夫/岩田光央/島本須美/京田尚子●公開:1985/01●配給:東宝●最初に観た場所:大井ロマン(85-05-05)(評価:★★)●併映:「うる星やつら」(押井守)/「うる星やつら2」(押井守)
劇場版 うる星やつら3 リメンバー・マイ・ラヴ [DVD]

うる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマーl.jpg「うる星やつら」(テレビアニメ版)●チーフディレクター:押井守(1話 - 129話)/やまざきかずお(130話 - 218話)●プロデューサー:布川ゆうじ/井上尭うる星やつら TVテーマソング.jpg一/久保真/稲毛正隆/長谷川優/菊池優●音楽:風戸慎介/安西史孝/西村コージ/星勝/ミッキー吉野●原作:高橋留美子●出演(声):古川登志夫/平野文/神谷明/島津冴子/杉山佳寿子/鷲尾真知子/小原乃梨子/三田ゆう子/上瑤/小宮和枝/玄田哲章/納谷六朗(1932-2014)●放映:1981/10~1986/03(全195回+スペシャル、全214話)●放送局:フジテレビうる星やつら TVテーマソング ベスト」 

ルパン三世 カリオストロの城  LUPIN THE 3RD THE CASTLE OF CAGLIOSTRO  dvd.jpgルパン三世 カリオストロの城12.jpg「ルパン三世〜カリオストロの城」●制作年:1979年●監督:宮崎駿●製作:片山哲生●脚本:宮崎駿/山崎晴哉●作画監督:大塚康生●音楽:大野雄二 ●原作:モンキー・パンチ●時間:98分●声の出演:山田康雄(1932-1995)/島本須美/納谷悟朗(1929-2013)/小林清志/井上真樹夫/増山江威子/石田太郎/加藤正之/宮内幸平/寺島幹夫/山岡葉子/常泉忠通/平林尚三/松田重治/永井一郎/緑川稔/鎗田順吉/阪脩●公開:1979/12●配給:東宝 (評価:★★★☆)
ルパン三世 カリオストロの城 / LUPIN THE 3RD: THE CASTLE OF CAGLIOSTRO

ルパンVS複製人間.jpgルパン三世〜ルパンVS複製人間 poster.jpgルパン三世 ルパンVS複製人間.jpg「ルパン三世〜ルパンVS複製人間」●制作年:1978年●監督:吉川惣司●製作:藤岡豊●脚本:大和屋竺/吉川惣司●作画監督:椛島義夫/青木悠三●音楽:大野雄二●原作:モンキー・パンチ●時間:102分●声の出演:山田康雄/納谷悟朗/小林清志/井上真樹夫/増山江威子/西村晃/(以下、特別出演)三波春夫/赤塚不二夫/梶原一騎●公開:1978/12●配給:東宝 (評価:★★★★)
ルパン三世 ルパン vs 複製人間 [DVD]

「ルパン三世 ルパン vs 複製人間」劇場公開ポスター

「ルパン三世」(テレビアニメ版)●監督:(第1シリーズ)大隈正秋/(第3シリーズ)こだま兼嗣/鍋島修/亀垣一/奥脇雅晴ほか●プロデューサー:(第2シリーズ)高橋靖二(NTV)/高橋美光(TMS)/(第3シリーズ) 松元理人(東京ムービー新社)/佐野寿七(YTV)●音楽:山下毅雄/(第2シリーズ)大野雄二●原作:モンキー・パンチ●出演(声):山田康雄/小林清志/二階堂有希子/増山江威子/井上真樹夫/大塚周夫/納谷悟朗●放映:1971/10~1972/03(全23回)/1977/10~1980/10(全155回)/1984/03~1985/12(全50回)●放送局:読売テレビ(第1シリーズ)/日本テレビ(第2・第3シリーズ)

「ルパン三世」(テレビアニメ・スペシャル版)
ルパン三世 霧のエリューシヴ.pngルパン三世 sweet lost night.jpg「ルパン三世 霧のエリューシヴ」(2007)/「ルパン三世 sweet lost night」(2008)

ルパン三世 VS名探偵コナン.jpgルパン三世 the Last Job.jpg「ルパン三世 VS名探偵コナン」(2009)/「ルパン三世 the Last Job」(2010)

ルパン三世 血の刻印.jpgルパン三世 東方見聞録.jpg「ルパン三世 血の刻印」(2011)/「ルパン三世 東方見聞録」(2012)

ルパン三世 princess of the breeze.jpgルパン三世 2016.jpg「ルパン三世 princess of the breeze」(2013)/「ルパン三世 イタリアン・ゲーム」(2016)

About this Archive

This page is an archive of recent entries in the 日本のアニメーション映画 category.

緒形 拳 出演作品 is the previous category.

日本映画 〜1920年代 is the next category.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1