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「戦意高揚」よりも「海戦スぺクタル」としてのインパクトが大きかったのではないか。

かくて神風は吹くvhs.jpg かくて神風は吹く dvd.jpg かくて神風は吹く1944.jpg 阪東 妻三郎
かくて神風は吹く [VHS]」「大映特撮DVDコレクション 38号 (かくて神風は吹く 1944年) [分冊百科] (DVD付)

かくて神風は吹く004.jpgかくて神風は吹く19.JPG 世界史上最大の帝国・元は支那・満州・朝鮮を攻略、元主・忽必烈(クビライ)はついに日本征服を企てた。文永11年秋、壱岐・對馬に上陸した元軍は九州博多に来襲するが、「神州男児」の勇戦によって撃退される。しかし、元の野望はなおも衰えず、再度大軍を送り込み、日本に降伏を迫ろうとしていた。これに対し、時の執権・北条時宗(片岡千恵蔵)は、元の使者を一人残らず斬首してしまう。弘安4年春、ついに元軍は再来した。瀬戸内海を治める武将・河野通有(阪東妻三郎)と忽那重義(嵐寛寿郎)はかねてより犬猿の仲であったが、この国難に際して共に力を合わせて元軍と闘うこととなる。元軍は壱岐・對馬を攻略するが、その勢いで攻め入った博多湾で奇跡の神風が吹き荒れ、艦隊ごと全滅する―。

かくて神風は吹く title.jpg 1944(昭和19)年11月公開の丸根賛太郎(1914-1994/享年80)監督作。情報局国民映画で、陸軍省、海軍省などが後援していることからも窺えるように、"元寇"を素材とした完全な戦意高揚映画です(原作は菊池寛)。但し、戦意高揚と言っても、1944年と言えば日本の敗戦がほぼ決定的になった年であり、当時の国民はこの映画でどれくらい"戦意高揚"させられたのでしょうか。この映画が封切られた11月23日の翌日には、アメリカ軍のB29による東京爆撃が始まっています(12月には東京爆撃本格化のため、映画館は日没後閉鎖されることになった)。

 こうした日本軍が劣勢な状況下であるため、せめて神風を銀幕上で吹かせて国民の士気を鼓舞しようという意図で企画されたものと思われますが、皮肉なことに、もう神風が吹く事くらいにしか望みを託せないところに、逆に日本にとっての絶望的な戦況が見てとれます。この作品は当初、抒情的な作風や日常的なリアリズムで知られる五所平之助(1902-1981/享年79)監督によって撮られることになっていましたが、こうした作品を五所平之助に撮らせること自体に無理があり、五所平之助がシナリオ段階で、対立する河野家と忽那家のそれぞれの若者(原健作)と娘(四元百々生)の"ロメオとジュリエット"風の悲恋物語に比重を置き過ぎたため、このままでは戦意高揚映画にならないということで、軍からのクレームで丸根賛太郎監督に代えられたようです(その丸根賛太郎だって、どちらかと言うとこの作品の翌年に撮った「狐の呉れた赤ん坊」('45年/大映京都)のような人情物でより力を発揮する監督であるようにも思うのだが)。

かくて神風は吹く18.JPG 阪東妻三郎(河野通有)、嵐寛寿郎(忽那重義)、片岡千恵蔵(北条時宗)、市川右太衛門(日蓮上人)の四大スターが顔を揃えていますが、山根貞夫氏によると、1942年に日活と新興キネマが戦時統合されて、日活から阪東妻三郎、嵐寛寿郎、片岡千恵蔵、新興キネマから市川右太衛門がそのまま大映に移って来たことが、四大スター共演の背景としてあるとのこと。但し、物語のメインとなるのは、河野通有役の阪東妻三郎と忽那重義役の嵐寛寿郎です。2人が向かい合って会話するシーンは、大時代的な口調ではありますが(大物スター同士ということもあって)なかなかのものでした。それに比べると、北条時宗役の片岡千恵蔵は、執権という役柄上より一層に大時代的になってしまい、日蓮上人役の市川右太衛門に至っては少ない出番が説教シーンばかりと、ややステレオタイプの演技を強いられてしまった印象もあります。

かくて神風が吹く65.jpgかくて神風が吹く80.jpg 特殊撮影は東宝特撮部(円谷英二)が担当しており(撮影は宮川一夫)、迫力ある仕上がりになっていて、ラストの大暴雨風シーンなどはなかなかの出来だと思います(「ゴジラ」('54年/東宝)ではないが、モノクロ映画であるために逆に迫力が増すということもあるかと思う)。その部分においては今観ても結構楽しめるし、当時としても興行的にはヒットしたようですが、「戦意高揚」よりも「海戦スぺクタル劇」としての方のインパクトが大きかったのではないでしょうか。

かくて神風は吹くe.jpgかくて神風は吹く0.jpg「かくて神風は吹く」●制作年:1944年●監督:丸根賛太郎●製作:大日本映画製作株式会社●企画:情報局●後援:陸軍省/海軍省●脚本:松田伊之助/館岡謙之助●撮影:宮川一夫/松井鴻●音楽:宮原偵次/深井史郎●特撮 東宝特撮部・円谷英二●原作:菊池寛●時間:94分●出演:嵐寛寿郎/阪東妻三郎/片岡千恵蔵/市川右太衛門/月形龍之介/羅門光三郎/光岡龍三郎/原健作/嵐徳三郎/四元百々生/荒木忍/常盤操子/香川良介/津島慶一郎/山口勇/多岐征二/葛木香一/井原史郎/原聖四/高山徳右衛門/嵐徳三郎/大井正夫●公開:1944/11●配給:大映京都(評価:★★★)

日蓮と蒙古大襲来.jpg日蓮と蒙古大襲来8.jpg「日蓮と蒙古大襲来」('58年/大映)監督:渡辺邦男、主演:長谷川一夫

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公安トップの移動手段は「丸ノ内線」の専用車両! 珍品的色合いが濃いが、映像的には貴重か。
007は二度死ぬ チラシ.jpgYOU ONLY LIVE TWICE 基地.jpg YOU ONLY LIVE TWICE images.jpg
007は二度死ぬ [DVD]

You Only Live Twice 3.jpg アメリカとソ連の宇宙船が謎の飛行物体に捉えられるという事件が起こり、米ソ間が一触即発の状態になるものの、英国の情報機関である MI6はその宇宙船が日本周辺から飛び立っているという情報を掴み、その真偽を確かめるために、ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が日本に派遣されることになる。ボンドは敵の目を欺くため、英国の植民地の香港の売春宿で、情報部により用意された現地の女性リン(ツァイ・チン)の手引きによって、寝室になだれ込んだ殺し屋にマシンガンで銃撃され死んだことに。その後ビクトリア・ハーバー内にYOU ONLY LIVE TWICE 05.jpg停泊するイギリス海軍の巡洋艦上で水葬され、その遺体を回収したイギリス海軍の潜水艦で隠密裏に日本へ。日本上陸後は、蔵前国技館で謎の女アキ(若林映(あき)子)と会い、彼女を通じて日本の公YOU ONLY LIVE TWICE 06.jpg安のトップ・タイガー田中(丹波哲郎)に会うが、在日オーストラリア人の捜査協力者のヘンダーソンは直後に殺されてしまう。その殺し屋は大里化学工業の本社から送られた者だと知ったボンドは、化学薬品を取り扱うビジネスマンを装って大里化学工業の東京本社に赴き、大里社長とその秘書ヘルガ・ブラント(カリン・ドール)と接触する―。 (右:サンヨー・テレビ「日本」の梱包)

『007号は二度死ぬ』早川書房.jpgYOU ONLY LIVE TWICE 08.jpg 事件の背後にはスペクターの影があり、ボンドはタイガー田中の助けを得てスペクターの秘密基地に潜入、宿敵ブロフェルド(「大脱走」('63年)、「刑事コロンボ/別れのワイン」('73年)のドナルド・プレザンス)と対決するというシリーズの第5作。原作はイアン・フレミングによるシリーズ第11作で(ハヤカワ・ポケット・ミステリの邦訳タイトルは『007号は二度死ぬ』)、脚本は、イアン・フレミングと親交のあったロアルド・ダール(ティム・バートン監督「チャーリーとチョコレート工場」 ('05年/米)として映画化された『チョコレート工場の秘密』の作者)であり、「女性を3人出し、最初の女はボンドの味方で敵方に殺され、2番目の女は敵の手先でこれも殺され、3番目の女は殺されず映画の終わりにボンドがものにするように」というのがプロデューサーの指示だったそうですが、ほぼその通りに作られています。 
You Only Live Twice.jpgMie Hama as Kissy Suzuki in "You Only Live Twice"(1967)
Mie Hama as Kissy Suzuki in  最初は日本に潜入したボンドをリードする公安エージェントの女性役が浜美枝で、ボンドが地方に行って出会う海女のキッシー鈴木の役が若林映子だったそうで、この配役は「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝)を観て浜を知ったスタッフからの若林映子と併せての指名だったとのことです(若林映子は個人的には「宇宙大怪獣ドゴラ」('64年/東宝)などでリアルタイムで見た。浜美枝と若林映子は「国際秘密警察鍵の鍵」('65年/東宝)でも共演している)。ところが浜美枝の語学力ではボンドをリードする公安エージェント役が務まらないということで、若林映子がエージェント(アキという役名になった)を演じ、浜美枝の方がキッシー鈴木役になったとのこと。但し、海女役になった浜美枝は、ロケ地に来て潜れないということがYou Only Live Twice akiko wakabayashi.jpg若林映子3.jpg判明し、ショーン・コネリーに同伴していた妻のダイアン・シレント(彼女は子供の頃から泳ぎが得意で潜水も長時間できた)が、映画でキッシーが潜るシーンはスタントするなどしたとのことで、撮影に際しては結構ドタバタだった面もあったようです。
Akiko Wakabayashi in James Bond film You Only Live Twice (1967)

 都内並びに日本の各所でロケを行っているという007は二度死ぬ ニューオータニ.jpg点では、昭和40年代前半の日本の風景を映し出していて貴重かも。都内では、旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニなどで、地方では富士スピードウェイ、神戸港、 姫路城、鹿児島県坊津町などでロケをしています。日本的なものを都会と地方、現代と伝統の両面からピックアップしている意欲は買えますが、一方で、姫路城で手裏剣で塀を傷つけたりするなどのトラブルも生じさせています。
ホテルニューオータニのエントランス(Osato Chemical & Engineering Co., LTD.(大里化学工業)になっている。)

007は二度死ぬ87.jpg オープニングの影絵は浮世絵のイメージ? イアン・フレミングは親日家ではあったものの、日本文化に対する外国人特有の偏見や誤解もあり、あまりに奇異な見方であると思われる部分は丹波哲郎が撮影陣に進言して直させたりもしたようですが、ボンドと若林演じるアキや丹波演じるタイガーなど日本の公安との橋渡し役が横綱・佐田の山(!)だったり、タイガーの移動手段が地下鉄「丸ノ内線」の深夜の007は二度死ぬ 丸ノ内線.jpg専用車両(!)だったり(中野坂上駅でロケ。タイガーのオフィスは地下鉄の駅の「地下」にある。公安は顔を知られてはならず、そのため下手に地上を歩けないからというその理由がこじつけ気味)、さらに007は二度死ぬ nihon.jpg公安所属の特殊部隊が全員忍者装束(!)で日本刀を背負っていたりと、ちょっYOU ONLY LIVE TWICE 丹波.jpgと飛躍し過ぎていて、さすがの丹波哲郎でも口を挟みにくかった部分もあったのか(まあ、いいかみたいな感じもあったのか)、結果として「!」連続の珍品で、ボンドが日本人に変装することなども含「007は二度死ぬ」 (67年/米)2.jpgめ、現実味という観点からするとどうかなあと思わざるを得ません(非現実性はロアルド・ダールらしく、また007らしくもあるのだが。因みに丹波哲郎は、英語が不得手な浜美枝の降板を要請する英国側スタッフに対し、ここまできたらそれは難しいと交渉するくらいの英語力はあったが、発音は日本語訛りであったため、作中での本人の英語の台詞は吹き替えられている)。

 ロケット遭難事故の黒幕は米ソ何れでもなければどこか、日本にはそんな技術はあるとは思えない、と英国情報部は最初から日本に対し"上から目線"ですが、冒頭の宇宙船の特撮シーンは円谷プロでもあれくらいは出来たかもしれません。

 個人的に不満な点は(プロデューサーの指示とは言え)ずっと頑張っていたアキをあっさり死なせてしまった点でしょうか。ややあっけ無さ過ぎた印象を受けました。アキは江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」と同じトリックで寝ている間に殺され、その間ボンドも寝ていたというのはどうもねえ(女性を守り切れていない)と言いたくなります(近作「007 スカイフォール」('12年)でもボンドガールをあっさり死なせているが)。

YOU ONLY LIVE TWICE 朝日グラフ.jpg まあ、かなりの部分を日本で撮影しているということで、映像的価値並びに珍品的価値(?)を加味して星半個オマケといったところでしょうか。アジア人が最初にボンド・ガ007 ミシェル・ヨー.jpgールになった作品であり、この次にアジア人ボンド・ガールが誕生したのは「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」('97年)のミシェル・ヨーで、その間何と30年もあったわけだし、やっぱり若林映子、浜美枝の起用は今振り返っても画期的だったと言えるのだろうなあ。

若林映子 サルノ王女.jpg 若林映子は、「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年/東宝)にもセルジナ公国のサルノ王女役で出ていましたが(サルノ王女の本名はマアス・ドオリナ・サルノ(まあ素通りなさるの!)。正体は5000年前、キングギドラによって滅ぼされた金星文明から地球に脱出してきた金星人の末裔の一人)、「007は二度死ぬ」の前年にTV番組の「ウルトラQ(第9話)/クモ男爵」('66年/TBS)にゲスト出演したりもしています。ストーリーは―、

桜井浩子/若林映(あき)子 in 「ウルトラQ/クモ男爵」('66年/TBS)
クモ屋敷で不安げな二人の美女(若林映子・桜井浩子).jpg ホテルのパーティに招かれた6人の男女客たちが、霧深い夜道を車を連ねて帰路に着く途中、竹原(鶴賀二郎)が誤って沼に落ちる。助けようとしたクモ男爵 若林1.jpg一平(西條康彦)も深みにはまり、後続車の万城目淳(佐原健二)と江戸川由利子(桜井浩子)、葉山(滝田裕介)と今日子(若林映子)が辛じて救出。霧が深くこれ以上車で先へ進めないので、淳たちはずぶ濡れの北原と一平をかかえて途方に暮れるが、沼の向う側に灯のついた洋館を発見、そちらに向かう。洋館の中は何十年も放置され荒れていたが、階上の方へ淳が行ってみると、そこで巨大なクモに突然襲われる。驚いて階投を転がり降りた淳は、九十年前いたという蜘蛛男爵の館みたいだと言う。その頃、地下のワイン倉庫にいっていた葉山は、例の巨大なクモに襲われ傷つく。淳たちは、はじめてここがまさに蜘蛛男爵の館であることに気づき、館から逃げ出そうとするが―。

クモ男 洋館.jpg 洋館は、コラムニストの泉麻人氏も言っていましたが、アルフレッド・ヒッチコックの映画「レベッカ」('40年/米)に出てくる邸宅みたいな雰クモ男爵カラー .jpg囲気があって良かったですが、男爵の死んだ娘がクモになり、娘の死を悲しんだ男爵自身もクモになっていまったという話はやや強引か(まあ、「ウルトラQ」は"強引"なスト-リーが多いのだが)。この回の視聴率は35.7%と(「ウルトラQ伝説」等による)シリーズ全27話の中では上位にくる数字を出しています。このシリーズ、総天然色版でDVDが出ているので、それでもう一度作品を鑑賞するとともに、若林映子や桜井浩子のファッションを見直してみるのもいいかも。

第9話「クモ男爵」.jpgウルトラQ.jpgクモ男爵 title.jpg「ウルトラQ(TV版・第9話)/クモ男爵」●制作年:1966年●監督:円谷一●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション●脚本:金城哲夫●撮影:内海正治●音楽:宮内国郎●特技監督:小泉一●出演:佐原健二/西條ウルトラQ クモ男爵 000.jpgウルトラQ クモ男爵 001.jpg康彦/桜井浩子/若林映子/滝田裕介/鶴賀二郎/永井柳太郎/岩本弘司/石坂浩二(ナレーター)●放送:1966/02/17●放送局:TBS(評価:★★★)      

007 wa nido shinu (1967)
007 wa nido shinu (1967) .jpg「007は二度死ぬ」●原題:YOU ONLY LIVE TWICE●制作年:1967年●監督:ルイス・ギルバート●製007は二度死ぬ 若林映子.jpg作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:ロアルド・ダール●撮影:フレディ・ヤング●音「007は二度死ぬ」●2.jpg「007は二度死ぬ」●.jpg楽:ジョン・バリー●主題Kissy-Suzuki2-600x400.jpg歌:You Only Live Twice(唄:ナンシー・シナトラ)●原作:イアン・フレミング●時間:117分●出演:ショーン・コネリー丹波哲郎若林映子浜美枝/ドナルド・プレザンス/島田テル/カリン・ドール/チャールズ・グレイ/ツァイ・チン/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェリン/バーナード・リー●公開:1967/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価:★★★☆)
「007は二度死ぬ」 松崎真(ノンクレジット)/松岡きっこ(ノンクレジット)
007は2度死ぬ 松崎真.jpg007は2度死ぬ matuoka.jpg


松岡きっこ .jpg   
                              
                                  
                                                                              
 
「007は二度死ぬ」 若林映子/浜 美枝
o0420021311847920120.jpgYOU ONLY LIVE TWICE last.jpg                                                                                                                                                                               
                                                                                                                       
ホテルニューオータニ東京のエントランス
ホテルニューオータニ.jpgホテルニューオータニ東京 のエントランス - コピー.jpg
                                                                
若林映子 浜美枝  キングコング対ゴジラ 2.jpg若林映子 浜美枝  キングコング対ゴジラ.jpg

「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝) 若林映子/浜 美枝
(共演:高島忠夫) 
 
国際秘密警察 鍵の鍵1.jpg国際秘密警察 鍵の鍵0.jpg国際秘密警察鍵の鍵(浜美枝・若林映子).jpg


 



 

 
 
  

国際秘密警察鍵の鍵(浜美枝・若林映子)1.jpg「国際秘密警察鍵の鍵」('65年/東宝) 若林映子/浜 美枝
(共演:三橋達也)

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戦闘シーンの迫力も素晴らしいが、人間ドラマの方にウェイトを置いて観てしまう。

燃ゆる大空 dvd.jpg 燃ゆる大空 title.jpg 燃ゆる大空 3.jpg
燃ゆる大空 [DVD]

 この作品は1940(昭和15)年が神武天皇の即位から2600年に当たるとされる「皇紀二千六百年」であることの記念として、陸軍航空本部の全面協力のもとに制作されたもので(因みに零式艦上戦闘機、通称「ゼロ戦」などの命名由来も、採用年次の皇紀年代(下2桁)による)、日中戦争において活躍した戦闘機乗り達を描いています。ドラマ部分と飛行・戦闘シーンが交互に現れ、ドラマ部分は、この作品が戦闘において犠牲となった戦闘機乗り達「陸の荒鷲の英霊」への弔意を込めて作られていることから、(コミカルな場面もあるが)全体の色合いとしてははっきり言って暗めでしょうか。

九七式戦闘機.jpg九七式重爆.jpg 一方、戦闘シーンは、日中戦争時に活躍した当時最新鋭の九七式戦闘機や九七式重爆撃機などの実機が大量に使用されており(この部分では国威発揚映画と言える)、スケールも大きく、迫力のあるものとなっており、円谷英二が特撮を担当していますが(本名・圓谷英一でクレジット)、特撮場面は少なく殆どが実写映像となっています。(上写真:九七式戦闘機/九七式重爆撃機)

燃ゆる大空 飛行兵学校.jpg 冒頭は昭和11年(1936年)の陸軍航空飛行学校が舞台で、少年飛行兵の行本(月田一郎)、山村(大川平八郎)、佐藤(灰田勝彦)、田中(伊東薫)の仲の良い4人組を中心とする飛行兵達の日常から始まり、教官・山本大尉(大日方傳)と彼らの遣り取りなどが描かれますが、訓練シーンなどでは実際に飛行学校で起床している生徒達が大勢出演していると思われることから、戦争映画として、戦闘シーンなどとはまた異なる記録的価値があるように思いました。

燃ゆる大空 01 4人.jpg 話は昭和13年(1938年)に飛び、主人公の4人組は北支戦線の飛行戦隊仁禮(高田稔)部隊に配されおり、そこへ飛行学校時代の元教官・山本大尉が飛行中隊長として赴任してきて、ここでも教官と彼らの交流などが描かれます。

燃ゆる大空 97重爆機.jpg 一方の戦闘シーンは、九七式戦闘機など実機を使って操縦席に撮影カメラを設置し、戦闘機操縦者目線で撮影しているためリアルそのもので、敵軍の中国空軍機にも、九七式より旧式の九五式戦闘機を使っています。

燃ゆる大空 ミニュチュア.jpg 山村は敵機に撃墜され不時着するも(不時着シーンは、さすがにここは円谷特撮)やっとのことで行本に救出され、皆で生還を祝います。しかし今度は佐藤の乗る九七式重爆撃機(乗員7名)が撃墜されて佐藤以外は全員死亡、佐藤も腕を骨折しますが、片手で土を掘って死亡した機長・奈良大尉(佐伯秀男)を埋葬し、その後、拳銃で頭を撃ち抜いて自決したことが山本大尉から行本、山村に伝えられます。

燃ゆる大空 平本.jpg 4人組の内、田中は既に名誉の戦死を遂げており、佐藤に続き、今度は行本が敵機の攻撃を受けて行方不明になって、結局何とか帰還するも、滑走路に激突するようなかたちで着陸、瀕死の重傷を負って彼自身が既に死を覚悟している―山村らが行本を看取る場面が作品のクライマックスとなっており、こうなると、戦意高揚映画と言うよりは、戦争の悲劇を主題に据えた作品に思えなくもありません(実際、あまりに悲惨なため、佐藤が撃墜された場面は生かしたものの、その最期はリアルタイムの話として撮ったものをカットし、山本大尉の口伝に置き換えられたらしい)。

 この映画に出てくる戦闘機乗り達は、国のために死ぬと言うよりは、美しく立派に死ぬということにこだわりを持っており(或いは意識的にこだわろうとしており)、そうした美学こそが、彼らを死の恐怖から解き放つ幻影であり麻酔であって、そこへ意図的に自己を投影しようとしているかに見えました。

 しかし、身近な親友の死を目の当たりにしてその悲しみと不安・恐怖は簡単に韜晦されるものではなく、そうした葛藤を「彼は立派に死んだ」「立派に死ねて羨ましい(自分もそうありたい)」と言葉に出すことによって北村小松2.jpg乗り越えようとしているように思われましたが、それは容易ならざることであったことが窺えます。時代とリアルタイムでこうした作品が作られていることに意義を感じました。

 原作は北村小松(1901-64)。五所平之助監督の「マダムと女房」('31年)の原作・脚本、小津安二郎監督の「淑女と髭」('31年)「東京の合唱(コーラス)」('31年)の原作(原案)などを手掛けているほか、翻訳小説『タバコ・ロード』を刊行し、米国の作家コールドウェルをいち早く日本に紹介したインテリでもありましたが、「燃ゆる大空」等の小説により、戦後2年にわたり公職追放を受けています(同じく円谷英二なども公職追放になっていた時期があったわけだが)。
北村小松(1901-64)

九七式戦闘機 2.jpg 実機を使って撮影しているということで、戦闘機ファンの間でも高い評価を得ている作品ですが、この映画で活躍する九七式戦闘機(右)は、2年後に燃ゆる大空 95式.jpg作られた山本薩夫監督の「翼の凱歌」('42年/東宝)では、一式戦闘機「隼」にあっさり追い抜かれてしまいます(当時を知る人の中には、よく九七式戦闘機のようなもので戦ったものだと述懐する人もいるくらい)。それでも、固定脚ながら見事にアクロバティックな飛行をこなす九七式戦闘機を(加えてより旧式の九五式戦闘機(左)も)じっくり見ることが出来るという意味では稀有な作品であり、確かに戦闘中国空軍機に扮した九五戦.jpgシーンの迫力も素晴らしいものです。しかしながら、やはりそれを操縦しているのも生身の人間であることを思うと、個人的には人間ドラマの方にウェイトを置いて観てしまいます(女性が一人も登場しない作品なのだが)。
撮影のため中国空軍機に扮した九五式戦闘機

ヘンリー大川.gif 山村を演じた大川平八郎(ヘンリー大川、1905-1971、当時35歳)は、埼玉・草加出身で、実業家になる修行ために1923年に18歳で渡米して、コロンビア大学で経済学を勉強したという人。それまでの間に皿洗いをしながら好奇心からコロンビア大学の劇科にも学び、同大学に併設された俳優養成学校の一期生となって、ハワード・ホークス監督の「空中サーカス」('28年)などに出演しました(俳大川平八郎2.jpg優学校の同期にゲーリー・クーパーらがいる)。日本国軍人としてフィリピン駐留中に終戦を迎えた彼は、語学堪能ということもあって降伏の際に山下奉文司令官の通訳を務め、戦後は「地球防衛軍」('57年/東宝)、「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」('66年/東宝)などの特撮映画に出演する一方で、デヴィッド・リーン監督の「戦場にかける橋」('57年)で助監督を務めながら、早川雪洲らと共に軍人役で出演しています。

阿部 豊 Mystic Faces.jpg 更に、監督の阿部豊(1895-1977)も、1912年に17歳でロサンゼルス在住の叔父をたよって渡米した人で、演劇学校を経てハリウッドに渡り、ハリウッド無声映画期の俳優としてジャック・アベ(Jack Abbe)の芸名で活躍していて、俳優としても大川平八郎より先輩になるわけですが、フランク・ボーゼージ監督などに演出術を学び、映画監督になるべく帰国して1925(大正15)年に日活に入社、翌年には「足にさはった女」というハリウッド風のソフィスティケート・コメディを撮っています(彼自身がアメリカで「Mystic Faces」(1918)などのコメディ映画に出演していた)。

 因みに、原作者の北村小松の原案による小津安二郎の「淑女と髭」('31年)も「東京の合唱(コーラス)」('31年)もコメディドラマでした。この「燃ゆる大空」でも、少年飛行兵生徒らの訓練や生活の様子をリアルに、時にユーモラスに描写しています。ただ、少飛の宣伝を兼ねていたと言われていますが、実際のところどうなのでしょうか(結局みんな死長谷川一夫58.jpgんでいくわけであって...)。一方、長谷川一夫が飛行部隊附軍医の役で出演しているのは、女性が全く登場しない映画であるため、女性客の集客を考慮したのだとも言われています。

 音楽は早坂文雄が担当、主題歌「燃ゆる大空」の作曲者は山田耕筰となっています。

「燃ゆる大空」(藤山一郎版)作詞:佐藤惣之助、作曲:山田耕筰、編曲:仁木他喜雄 
    
燃ゆる大空(1940).jpg燃ゆる大空 5.jpg「燃ゆる大空」●制作年:1940年●監督・製作:阿部豊●監修:陸軍航空本部●脚本:八木保太郎●撮影:宮島義勇●特殊技術撮影:円谷英二/奥野文四郎●音楽:早坂文雄●主題歌「燃ゆる大空」作詞:佐藤惣之助/作曲:山田耕筰●原作:北村燃ゆる大空 長谷川2.jpg小松●時間:102分●出演:大日方傳/月田一郎/大川平八郎/灰田勝彦/伊東薫/長谷川一夫/高田稔/龍崎一郎/藤田進/柳谷寛/佐伯秀男/清川荘司/三木利夫/真木順/深見泰三/原聖四郎/中村彰/社栄一/沢村昌之助/沼田春雄/島壮児/谷三平●公開:1940/09●配給:東宝東京(評価:★★★★)

from ネイビーブルーに恋をして

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「孤立する老人」の問題を早期に取り上げたと言うより、そのレトリックにおいて佳作か。

青い血の女 dvd.jpgDVD 怪奇大作戦 Vol.2」 青い血の女 title.jpg 青い血の女3.jpg
岸田森(牧)/小橋玲子(小川)/原保美(的矢)/松山省二(野村)/勝呂誉(三沢)
怪奇大作戦0.jpg 三沢(勝呂誉)は久しぶりに会った友人・鬼島明(山中紘)の家でくつろいでいたが、家の前で偶然見かけた鬼島の父・竹彦(浜村純)の話をした際の鬼島夫妻の様子から、鬼島と竹彦の間に確執があることが窺えた。急にテレビの映りが変になったところで話にキリをつけ、三沢は鬼島の誘いで一泊することに。その夜、三沢は就寝中に何者に襲われ、手に傷を負う。同じ頃、帰宅途中のサラリーマンが刃物で殺害され、三沢は手の傷から事件の容疑者となってしまう。証拠不十分で釈放された三沢だが、その帰り道にまたも何者かに襲われる。三沢の事件を知った鬼島は一人暮らしの父の家を訪ねるが、竹彦は会おうともせず、一人"子供部屋"に戻り、ベビーベッドに横たわる何かに向かって話しかけるのだった。翌晩、竹彦の家を見張っていた三沢は、酒に酔った竹彦をタクシーで家まで送り届けた女性に会うが、女性を自分の車内に残して竹彦を自宅に送る間に、女性は何者かに襲われ、三沢は自宅に逃げ帰った彼女の後を追うが、女性の部屋に着くと女は既に息絶えていた。三沢はまたも容疑者にされるが、これも証拠不十分で釈放に。自分が襲われた晩に鬼島宅でテレビ画像が乱れたことを警察の町田警部(小林昭二)に告げ、それが警察の今回の事件の聞き込みと一致したことから、犯行時にテレビ画面を乱すほどの強力な電波が出ていることが判明、調べてみると、その電波の発信源は竹彦の家だった―。

「怪奇大作戦」 岸田森(1939-1982)・勝呂誉
怪奇大作戦 suti-ru.jpg 「怪奇大作戦」は円谷プロダクションが制作し、TBS系で1968(昭和43)年9月から1969(昭和44)年3月まで毎週日曜日19:00-19:30に全26話が放送された、SRI(科学捜査研究所)の活躍を描いた特撮テレビドラマ。2007年にNHKデジタル衛星ハイビジョンで「怪奇大作戦 セカンドファイル」(全3回)、2013年にNHK-BS2で「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」(全4回)としてリメイク放映されて、この間BS-2などでオリジナルの再放映もされています。オリジナルは最初は方向性がバラバラだったような感じでしたが、この第7話「青い血の女」辺りになると、大体定まってきたかなという感じでした。

青い血の女 1.jpg サラリーマン、三沢、女性を襲ったのは《殺人人形》で、早くから画面に登場しますが、これは完全に機械仕掛けのからくり人形。その殺人人形を操っているのは誰なのか。ラストで警察が竹彦の部屋に踏み込む際に、竹彦は、ここには4歳の女の子がいるだけだと拒みますが、そこで彼らが見たものは―。

青い血の女2.jpg う~ん。竹彦は、自分を見捨てていく子どもたちの代わりに《女の子》を作って(高額の特許料で生活しているようだから発明家なのだろう)これを偏愛していたけれど、その《女の子》が老人である竹彦に代わって老人を見捨てる者を襲っているうちに"彼女"も自我を持つようになるとともに成熟し、竹彦から自由になりたいと考え、「あたしも老人を捨てて独立するの。だから、あたしも殺さなきゃ...」ということで"自殺"することになるわけか。ちょっと凝ったレトリックだったなと。

 「青い血の女」というタイトルから成熟した女性が出てくると思われがちですが、結局"自我を持った人形"だったわけで(老人の少女愛、人形愛というのは川端康成っぽい?)、但し、自殺して「血を流した」という意味においては半ば"人間"であり、しかしながら「血が青かった」という意味では"人間"ではなかったという、こうしたレトリックにおいても、シリーズの中では佳作とされるべきものではないかと思います。

 「孤立する老人」の問題を早期に取り上げたことによっても傑作エピソードとされていますが、エピローグで三沢、的矢(原保美)、牧(岸田森)、野村(松山省二)、さおり(小橋玲子)といったSRI(科学捜査研究所)の面々が"世評風に"事件を振り返っている中で出てくる話で、一方で、この「怪奇」を科学的にどう説明するかということについては「科学捜査研究所」であるのに誰も追及しない(「怪奇」を暴かず、「怪奇」は「怪奇」のままにしておく)というのが、この辺りで確立されたこのシリーズの「方向性」だったと言えるかと思います。

怪奇大作戦2 [VHS].jpg大井武蔵野館.jpg「怪奇大作戦(TV版・第7話)/青い血の女」●制作年:1968年●監督:鈴木俊継●監修:円谷英二●制作:円谷英二●脚本:若槻文三●特技:高野宏一●音楽監督:山本直純●音楽:玉木宏樹●出演:勝呂誉/原保美/岸田森/松山省二/小橋玲子/小林昭二/山中紘/浜村純●放送:1968/10/27●放送局:TBS●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「恐怖劇場アンバランス(TV版)死体置場(モルグ)の殺人者」(長谷部案吾)/「ウルトラQ(TV版)/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦(TV版)死神の子守歌」(実相寺昭雄)
怪奇大作戦2 [VHS]

怪奇大作戦 sri.jpg怪奇大作戦 TITLE.jpg「怪奇大作戦」●演出:飯島敏宏/円谷一/実相寺昭雄/ 鈴木俊継/小林恒夫/安藤達己/長野卓/仲木繁夫/福田純/満田かずほ●制作:円谷英二●脚本:上原正三/金城哲夫/佐々木守/若槻文三/市川森一/福田純/高橋辰雄小川さおり(小橋玲子).jpg/藤川桂介/田辺虎男/石堂淑朗/山浦弘靖●音楽監督:山本直純●出演:勝呂誉(三沢)/岸田森(牧)/原保美(的矢)/松山省二(野村)/小橋玲子(小川)/小林昭二(町田)●放映:1968/09~1969/03(全26回)●放送局:TBS
小橋玲子(小川さおり役)

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特撮よりむしろ"異形の愛"を描いた人間ドラマに比重が置かれている。

ガス人間第1号 チラシ.jpgガス人間第1号 チラシ2.jpgガス人間第一号 dvd.bmp 「ガス人間第一号」 (1960 東宝).jpg 
ガス人間第1号 [DVD]

 同一犯によると思われる連続強盗殺人事件が発生、完全密室での犯罪は多くの謎を残すが、事件の捜査にあたる岡本警部補(三橋達也)と婚約者の新聞記者・田野京子(佐多契子)は、春日流舞踊の家元・藤千代(八千草薫)に疑惑を抱き、家宅捜索により盗まれた紙幣を発見、直ちに彼女を拘留するが、その頃、警視庁記者クラブに突然現れた図書館員の水野(土屋嘉男)は、自分が連続強盗殺人事件の犯人であると名乗り、完全犯罪の種明かしをすると宣言、半信半疑で見守る人たちの前で次第に気体化してガス人間となる。藤千代の無実を証明するために現れた水野は、零落した春日流の藤千代を助ける為、佐野博士(村上冬樹)に騙されて人体実験の犠牲となりガス人間にされてしまった自らの能力を使って、愛する者のために強盗殺人を重ねていたのだった―。

ガス人間第一号3.jpg '60(昭和35)年の東宝作品で、「透明人間」('54年)から「美女と液体人間」('58年)へと続いた東宝「変身人間シリーズ」の集大成とも言える作品であり、円谷英二が特撮監督を務めていますが、特撮部分は水野がガス人間化するところしかなく(ガス人間の鉄格子すり抜けは「ターミネーター2」('84年/米)でジェームズ・キャメロンがパクったという話もあるが)、特撮映画には違いないものの、「特撮」乃至は「スリラー」よりむし「異形の愛」を描いた人間ドラマに比重が置かれています。

ガス人間第一号 八千草薫3.jpgガス人間第一号 八千草薫1.jpg 八千草薫(1931-)が凛とした舞踏の家元を演じて美しく、水野との愛に殉ずる覚悟で踊り続ける"道行き"的なラストは、哀切感溢れるものとなっていますが、ガス人間を演じた土屋嘉男(1927-)の演技も、傲岸且つニヒルな中にも、自らが得体の知れないガス人間であるということからくる翳を秘めていて、しかも一女性に愛を捧げるという、なかなか味のあるものとなっています(どちらかと言うと、ガス人間を愛する藤千代の方が愛の「異形」度が高いかも)。

ガス人間第一号 土屋.jpg 土屋嘉男は、黒澤明監督に目をかけられて「七人の侍」('54年)に出演して以来、黒澤作品に出続けた一方で、ガス人間第一号4.jpg本多猪四郎監督の「ゴジラ」('54年)の撮影現場を個人的興味から見学に行って、やがて東宝特撮映画の常連にもなったという変わり種であり、同じ「東宝」ではありますが、「黒澤組」と「本田組」の両方に属していたような人です(志村喬、藤田進などもそうと言えるが)。

 出演した東宝特撮映画の数はかなり多く、中でも「ガス人間第一号」の3年前の'57(昭和32)年の地球防衛軍で、わが国で初めて宇宙人役(ミステリアン総統)を演じた役者であることは有名です(「顔が見えなくてもいいから宇宙人役をやりたいという本人の希望だったらしい)。

ガス人間 フィギア.jpg 因みにこの「ガス人間第一号」には今でも根強いファンがいて、土屋嘉男がガス人間に変身するところのフィギアなども商品化されています。

ガス人間第一号5.jpg「ガス人間第一号」●制作年:1960年●製作:田中友幸●監督:本多猪四郎●特技監督:円谷英二●脚本:木村武●撮影:高橋通夫●音楽:宮内国郎●時間:91分●出演:三橋達也/佐多契子/八千草薫/左ト全/土屋嘉男/伊藤久哉/田島義文/小杉義男/三島耕/松村達雄/村上冬樹/佐々木孝丸/山田巳之助/松村達雄/宮田羊容/野村浩三/山本廉/松本染升/堤康久/山田彰/広瀬正一/中村哲/塩沢とき●公開:1960/12●配給:東宝(評価:★★★☆)

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小松崎茂デザインのンメカニックが、子供の頃の"懐かしい未来"を想起させる。テーマ曲がいい。

宇宙大戦争 東宝 チラシ.jpg  宇宙大戦争 東宝 チラシ(アメリカ版).jpg 本多 猪四郎 「宇宙大戦争」dvd.jpg  
日本版チラシ(1959)/アメリカ版チラシ(1960)/「宇宙大戦争 [DVD]

 地球軌道上の宇宙ステーションが謎の円盤の攻撃を受けて破壊され、地球上でも世界中で鉄橋や汽船が宙に浮き、凍結した海水が舞い上がるなどの怪奇現象が発生、急遽、国際会議が開かれて調査が行われ、それらは無重力状態を生み出す冷却光線を操るナタール人の仕業であり、ナタール人は既に月面に基地を建設し地球侵略の準備をしていることが判明する。ナタール人基地を破壊するため、勝宮一郎博士(池部良)ら科学者によって編成された攻撃隊が原子力ロケット2機で月へ。ナタール人の基地を発見し、攻撃して打撃を与えるが、ナタール人に操られた岩村(土屋嘉男)が味方ロケット1機を爆破し、残る1機にも危機が迫る。しかし、ナタール人の洗脳が解けた岩村が追撃を食い止め、月からの脱出に成功、地球へ帰還する。迫り来る決戦の時に向け、地球では大気圏外でナタールの円盤を迎撃する戦闘ロケットが建造され、やがてナタール円盤群が地球へ向かって来襲、壮絶な戦いが始まる―。

宇宙大戦争 エフェクト.jpg 日本初の宇宙人の侵略をテーマにした特撮SF作品「地球防衛軍」('57年)の姉妹作で、これも原作は丘美丈二郎(1918-2003)。前作では「地上戦」乃至「地対空戦」だった宇宙人との戦いの場を、この作品では「月面戦」乃至「宇宙空間戦」に移していますが、2年間で画像のエフェクト処理も含め、特撮技術がトータルに向上しているように思えました。伊福部昭のマーチ風のテーマ曲もいい(この曲は2016年の「シン・ゴジラ」にも使われた)。評論家の評価は2年前の前作「地球防衛軍」の方が概ね若干上のようですが、おそらく先駆的要素に対する評価が加味されているのでしょう。

「宇宙大戦争」1.jpg 「絶対零度近くにまで冷却された物体は無重量となる」とか「月面の一部に希薄な大気が存在する」といった、当時の段階で既に科学的には誤りであると「宇宙大戦争」2.jpg判明していたり、当時から曖昧だった学説を援用したりするなどの乱暴な点はありますが(ホバークラフトで月面を移動する場面がある!)、ナタール人の基地があるという想定の月の裏側の様子を、ソ連の無人探査機「ルナ3号」が当時世界で初めて撮影に成功した月面裏側の写真に基づき描くなど、科学性へのこだわりは随所に見られ、月に人類が到達する10年も前にしては、月面やそこを歩行する隊員の様子をよく描いていると思います。

 三原山で撮影されたという月面歩行する隊員の無重力状態でのふわっとした跳ね方は、出演者の一人・土屋嘉男の発案によるもので、土屋は10年後にアポロ11号の月面着陸の様子をテレビの衛星中継で観て「間違ってなかった」と思ったそうな。

宇宙大戦争 東宝.jpg ドラマ部分が定型的なのはSF作品であるため許せるとして、宇宙人が地球侵略するにあたってわざわざ一人ひとり洗脳するかなというのはあり、壮大なタイトルの割には結末もややショボイかも。

 但し、小松崎茂のデザインを入江義雄が図面に起こし、井上泰幸らによって制作したナタール側・地球人側のメカニックは、この作品の白眉とも言える素晴らしいもので、円谷英二の特撮技術と相俟って、宇宙戦をよりダイナミックに見せている共に、個人的には、子供の頃に想い抱いた"懐かしい未来"を想起させられます。

 この作品は、制作時の6年先の将来(1965年)という時代設定で、人類で初めて月面着陸に成功したのは勝宮一郎(池部良)、白石江津子(安西郷子)ら日本人であるということになり、実際のアポロ11号による月面着陸(1969年)の4年前ということになります。
宇宙大戦争」(サントラ)

東宝「宇宙大戦争」(1959).jpg安西郷子.jpg 当時"文芸路線"俳優だった池部良(1918-2010/享年92)がSF映画に出ているのが珍しく、その池部良とのしっとりしたラブシーンもある安西郷子(1934‐2002/享年68)は、エキゾチックな面立ちの美人女優でしたが、この作品の2年後、「ガス人間第1号」('60年/東宝)で主演した三橋達也(1923-2004/享年80)と結婚して芸能界を引退しています。

「宇宙大戦争」 (1959 東宝).jpg「宇宙大戦争」3.jpg「宇宙大戦争」●制作年:1959年●製作:田中友幸●監督:本多猪四郎●特技監督:円谷英二●脚本:関沢新一●音楽:伊福部昭●原作:丘美丈二郎●時間:91分●出演:池部良安西郷子/千田是也/土屋嘉男/伊藤久哉/宇宙大戦争 安西郷子.jpg村上冬樹/ジョージ・ワイマン/レオナルド・スタンフォード/ハロルド・コンウェイ/エリス・リクター/桐野洋雄/野村浩三/エド・キーン/堤康久/加藤茂雄/沢村いき雄/旗持貴佐夫/上村幸之/高田稔/熊谷二良/手塚勝巳/津田光男/岡部正/レオナルド・ウェルチ/緒方燐作●公開:1959/12●配給:東宝(評価:★★★☆)

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日本初の宇宙人の侵略をテーマにした特撮SF映画。戦闘シーンのレベルだけ高い。

地球防衛軍 チラシ.jpg 地球防衛軍 チラシ1.jpg 地球防衛軍 チラシ2.jpg 地球防衛軍 チラシ3.jpg
地球防衛軍 [DVD]」チラシ各種

地球防衛軍 1957.jpg地球防衛軍 白川由美2.jpg 天体物理学者の白川亮一(平田昭彦)が村祭りの日に謎の山火事とともに姿を消した数日後、白石の妹・江津子(白川由美)の恋人である渥美譲治(佐原健二)は白石から託されたレポート「遊星ミステロイドの研究」を中央天文台・安達博士(志村喬)に届ける。そこへ、白石が住んでいた村で山崩れが起きたとの連絡が入り、渥美は調査団の一員として村に向かうが、村からは放射能が検出される。村の異常現象を調査中に、山から金色の巨大ロボット怪獣(モゲラ)が出現し、村落を破壊しながら侵攻を開始したため、対策本部が設置され、自衛隊の攻撃部隊はモゲラに総攻撃をかける。そして、モゲラ侵攻中に謎の円盤が―。

 この「地球防衛軍」は、東宝特撮における初のシネマ・スコープ作品であり、日本映画で初めて宇宙人の侵略をテーマにした特撮SF作品で、原作は探偵小説作家の丘美丈二郎(1918-2003)。ストーリーの方は、10万年前に原水爆戦争で滅びた遊星人ミステリアンの末裔が種族の存亡をかけて地球侵略するという、攻めてくる側にも事情があるような話です(核実験批判が込められているのか)。

地球防衛軍 1957 モグラロボット.jpg地球防衛軍 白川由美.jpg 遊星人が最初に地球侵略のために送りこんだのがモグラ型ロボット「モゲラ」で(そもそも戦闘用ではなく土木用ロボット。元々は平和な星だった)、重装備が昂じてちょっと滑稽なヒヨコ体型になっているのがご愛嬌。白川由美(1936-2016)が入浴中のところへモゲラが迫るというのは、お父さん向けのサービス?

 自衛隊が何とか怪獣をやっつけた後に出てくる遊星人の姿が、フルフェイスのヘルメットを被った地球人にしか見えないのも難(顔は見えないが、メットの下に鼻が覗いている。ミステリアン総統役の土屋嘉男によると、ミステリアンのマスクはアイスクリームの容器の改造だという)。但し、それでもこの作品が一般に高い評価を得ているのは、円谷英二の特撮による遊星人と地球人との砲撃戦、空中戦の迫力のためでしょう。

地球防衛軍 ロケット.jpg 昭和32年制作という古さをあまり感じさせないのは、全体のモダンなトーンもさることながら、この戦闘シーンのレベルの高さによるもので、戦争中に作られた戦意昂揚映画での戦闘機の空中戦シーンなどの際に円谷英二自身が駆使した技術や創意工夫の蓄積が、ここに開花したという感じでしょうか。

 それ以外の部分は、平田昭彦(この人、陸軍士官学校の出身)が遊星人側に与(くみ)してしまうといったドラマ部分も含め、個人的にはイマイチですが、作品の位置付けとしては、「宇宙大戦争」('59年)など、その後の「宇宙モノ」「宇宙怪獣モノ」映画の基盤を作ったという意味で、画期的な作品ということになるのでしょう。

ミステリアン.jpg地球防衛軍 1957 dvd.jpg「地球防衛軍」●制作年:1957年●製作:田中友幸●監督:本多猪四郎●特技監督:円谷英二●脚本:木村武●音楽:伊福部昭●原作:丘美丈二郎●潤色:香山滋●時間:88分●出演:佐原健二/平田昭彦/白川由美/河内桃子/土屋嘉男/藤田進/伊藤久哉/小杉義男/志村喬/村上冬樹/山田巳之助/中村哲/大川平八郎/笈川武夫/加藤春哉/大村千吉/佐田豊/三原秀夫/三条利喜江/生方壮児/津田光男/今泉廉/大友伸/熊谷二良/草間璋夫/広瀬正一/中丸忠雄●公開:1957/12●配給:東宝(評価:★★★)地球防衛軍 [DVD]

「美女と液体人間」の白川由美.jpg「美女と液体人間」の白川由美e.jpg白川由美 in「美女と液体人間」(1958年)

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"ペギラ"再登場。"ガラモン"と並んでシリーズ中最高視聴率(36.8%)。次の氷河期が来る頃、人類は?

東京氷河期 vhs カバー.jpg「東京氷河期」VHSカバー東京氷河期1.jpg ペギラ「東京氷河期」(第14話)

ウルトラQオープニング.jpg東京氷河期2.jpg 毎日新報の女性カメラマン江戸川由利子(桜井浩子)は、出稼ぎに出て戻らない父を探して上京した少年・治男(佐藤秀明)に会い、それを記事にしようと社に戻るが、真夏の東京を突然冷気が襲い、氷が張り吹雪になるという異変が発生していたため、関デスク(田島義文)に南極探検の経験者に会って原因を探るよう命じられる。ペギラ11.jpg由利子が星川航空のパイロット万城目淳(佐原健二)に相談すると、以前に南極で遭遇した怪獣"ペギラ"の仕業ではないかと言う。社では、南極の原子炉の暴発で氷が溶け、寒波と共に北上したのが原因だと一蹴されるが、その時急に上空が黒雲におおわれ、その中からペギラが現われて東京は大混乱に。ペギラを退治するには、南極のコケから採れるペギミンHが要るため、淳が飛行機で入手に向うが、機内に潜んでいた男(有馬昌彦)が、自分がペギミンHを取りに行くと言い張る。彼はかつての零戦の名パイロットで、実は治男の父親だった―(「ウルトラQ・あらすじ集」より抜粋)。

カネゴン.jpgガラモン.jpg '66(昭和41)年1月から7月まで27回にわたって放映された「ウルトラQ」の内、この「東京氷河期」は第14話で、第13話が"ガラモン"の「ガラダマ」、第15話が「カネゴンの繭」と、この辺りのラインアップはなかなかのもの。"ガラモン"も"ペギラ"もシリーズで2度登場しますが、「ガラダマ」と「東京氷河期」は共に視聴率36.8%と、シリーズの中で最高数字を記録しています。シリーズ全体の平均視聴率も32.4%と、今ではちょっと考えられないような数字です。

全日空羽田沖墜落事故.jpg 「東京氷河期」は、同年1月に放映された第5話「ペギラが来た!」と間を置かず2月に放映する当初予定だったのが、2月4日に「全日空羽田沖墜落事故」(犠牲者133名は単独機としては当時世界最大の事故)が起き、冒頭に羽田上空で 航空機が墜落炎上する場面があったために4月3日に放映延期になっています('66年はこの後も航空機事故が相次いだ年だったのだが)。

ペギラ.jpg "ペンギン怪獣"が空を飛ぶというのは柔軟な発想というか、むしろペギラのずんぐりした体型からみてかなり強引ですが(口から冷気を吹き出すことの方がもっと強引か?)、温暖化した南極から北極へ移動する途中で飛行機を攻撃し、羽田空港をパニックに陥れ、ついでに東京の街を氷河期状態にしてしまうわけです。

 「原子炉の暴発」というのは当時の米ソ冷戦を背景としており、一方、「東京に氷河期が来る」というのは、一見荒唐無稽なようにも思えますが、「1万年に一度、地球には異常な低温の年が廻ってくると言われている」という前フリは、一応科学的根拠に基づいているのではないでしょうか。

ペギラ「東京氷河期」(第14話)

 学者によれば、実際に現在の地球は"氷河期"にあり、但し、氷河期には「氷期」と、氷期と氷期の間にあたる「間氷期」があって、今は4番目の「間氷期」であるとのこと(安部公房に『第四間氷期』という作品がある)。

桜井浩子 ウルトラQ.jpg あと1万年もすれば「氷期」が訪れると予測され、更に、その時の大気中の二酸化炭素による温室効果バランスの状態によっては、更なる「気候のジャンプ」が生じて「全球凍結」が起き、地球全体が"スノーボール化"するかもしれないという説があり、これまでも6億年前と22億年前にそうしたことが起きたとことが解っているそうです(川上紳一『全地球凍結』('03年/集英社新書)、田近英一『凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語』('09年/新潮選書)など)。次の氷河期が来る頃、人類はどうしているのだろうか。

「総天然色ウルトラQ」 2011年8月26日発売
(桜井浩子/佐原健二/西條康彦 in 第4話「マンモスフラワー」)

ウルトラQ 一の谷博士.jpg江戸川由利子.jpg 因みに、「ウルトラQ」で毎日新報の女性カメラマン・江戸川由利子役でレギュラー出演していた桜井浩子は、後番組として'66年7月から始まった「ウルトラマン」で、科学特捜隊のフジ・アキコ隊員役で出演することとなりました('67年4月まで放映)。

 また、清水宏監督の「港の日本娘」('33年)や小津安二郎監督の「東京の女」('33年)、「彼岸花」('58年)などに出ていた江川宇禮雄(本名:江川ウレオ、ウィリー・メラー、1902-1970/享年68)といった俳優も、「一の谷博士」役で毎回ではないですがちょくちょく出ていました。

●大井武蔵野館.jpg「ウルトラQ(TV版・第14話)/東京氷河期」●制作年:1965年●監督:野長瀬三摩地●監修:円谷英二●制作:円谷英二●脚本:山田正弘●撮影ウルトラQ.jpg:内海正治●音楽:宮内国郎●特技監督:川上景司●出演:佐原健二/西條康彦/桜井浩子/有馬昌彦/田島義文/佐藤秀明/野本礼三/杉裕之/伊藤実/清野弘幸/岡部正/石坂浩二(ナレーター)●放送:1966/04●放送局:TBS●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★)●併映:「恐怖劇場アンバランス(TV版)死体置場(モルグ)の殺人者」(長谷部案吾)/「怪奇大作戦(TV版)青い血の女」(鈴木俊継)/「怪奇大作戦(TV版)死神の子守歌」(実相寺昭雄) "ウルトラQ45周年上映会"チラシ「銀座シネパトス」2011年1月2日

江川宇礼雄 (エガワ・ウレオ).jpg「ウルトラQ」●演出:円谷一/梶田興治/野長瀬三摩地/中川晴之助/飯島敏宏ほか●制作:円谷英二●脚本:千束北男/金城哲夫/山田正弘ほか●音楽:宮内国郎●出演:佐原健二/桜井浩子/西條康彦/江川宇礼雄/田島義文/加藤春哉/岡部正/石坂浩二(ナレーター)●放映:1966/01~07(全27回)●放送局:TBS

江川宇礼雄(エガワ・ウレオ)「ウルトラQ」(3・4・8・12・13・22・25・27・28話)「一の谷博士」

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「戦意昂揚」という外形の下、加藤隊長のヒューマンな人柄を描く。円谷英二の特撮も注目。

加藤隼戦闘隊 ポスター.jpg 加藤隼戦闘隊 vhs.jpg 加藤隼戦闘隊 dvd.jpg  加藤 健夫 .jpg
「加藤隼戦闘隊」 ポスター/「加藤隼戦闘隊」VHS/「加藤隼戦闘隊 [DVD]」 加藤健夫(本人)

加藤隼戦闘隊1.jpg 太平洋戦争初期に南方戦線で活躍した陸軍飛行第64戦隊(通称「加藤隼戦闘隊」)を率いた加藤健夫中佐の活躍と人柄を描いた伝記映画であるとともに、軍部の協力の下、実戦機による空中戦など迫力のある映像で描いた戦争アクション映画であり、1944(昭和19)年の年間観客動員数1位となった作品。

藤田進 加藤隼戦闘隊.jpg 冒頭の1941(昭和16)年4月の広東に、第64戦隊の戦隊長として加藤建夫少佐(当時)(藤田進)が九七式戦闘機を駆って着任するところからカッコ良く、数ヶ月後、部隊には一式戦闘機(隼)が配備され(国内初の車輪が機体に格納できる「引込脚」の戦闘機だった)、加藤は隼の特性把握も兼ねて、単機南シナの偵察に出向いたりして、その大胆さで隊員らを驚かせます。

加藤隼戦闘隊  オリジナルスナップ.jpg 1941(昭和16)年12月初旬には部隊はフコク島へ転進、マレー半島攻略戦を実施する山下奉文の部隊の哨戒任務を与えられ、帰路の夜間飛行で仲間を失った加藤は大いに悔みますが、直後に海軍が真珠湾攻撃に成功、悲しみに浸る間もなく加藤の戦隊はコタバルへ転進し、クアラルンプール爆撃の軽爆隊の援護任務にあたり、そこで隼戦闘機での初の空戦を行って戦果を上げます。以降、加藤隼戦闘隊は目覚ましい戦果を上げ続けますが、映画ではそうした部分はニュース映像的に簡潔に伝えるだけで、前半部分のかなりは、加藤の豪放磊落で、かつ部下想いの人間味溢れる人柄の描写に割かれています。

「加藤隼戦闘隊」オリジナルスナップ写真集より

加藤隼戦闘隊3.jpg 隼戦隊というスペシャリスト軍団の中でも、隊長自身が更に一段と秀でた技術を備えているということは、スペシャリスト軍団を率いるうえで大きなリーダーシップ要因となったと思われますが、「撃墜王」「空の軍神」と呼ばれながらも、すでに40歳近かった加藤自身がどれだけ最前線で戦ったのかはよく分かっていません(映画では、敵機に囲まれ窮地にある味方軍を、加藤が単機で援護する場面などがある)。

加藤隼戦闘隊 02.jpg 但し、加藤の人間性の部分は、映画に描かれている通りの責任感が強い温かな人柄であったようで、20歳前後の若者が多く配属されていた部隊で、部下を自分の息子たちのように大事にし、敵機の攻撃により被弾し帰還できない者が出ると、号泣して兵舎の外に立って帰らぬ部下をいつまでも待ち続けていたとのことで、部下からの信頼や慕われ方は相当のものだったようです。
 
加藤隼戦闘隊05 加藤.jpg 「戦意昂揚」映画の外形をとりながらも、山本嘉次郎監督はそうした加藤の人柄にスポットを当てることで、巧みにヒューマンな作品に仕上げており、また、藤田進演じる加藤が、時に剽軽なオッサンぶりを見せたり、時に博識ぶりや洒落たセンスを見せたりと、なかなか多彩な味があって良く、少なくともこの映画での加藤の描かれ方は「軍神」という近寄り難い雰囲気ではありません(山本嘉次郎自身が撮りたかった映画を撮ったという感じ)。
 
加藤隼戦闘隊 r.jpg加藤隼戦闘隊2.jpg この映画の後半の見所は戦闘シーンで、殆どがオリジナルフィルムであり、本物のパイロットが本物の戦闘機を駆ってい編隊飛行などを見せるほか、1942(昭和17)年2月の陸軍落下傘部隊のパレンバン攻略戦を、実戦さながらのスケールで再現してみせています(これは軍の協力がなければ出来ないことだが)。

加藤隼戦闘隊 01.jpg 年代設定は1941(昭和16)年から1942(昭和17)年にかけてであり、同じく「隼」を中心に据えた山本薩夫監督の「翼の凱歌」('42年/東宝)と比べてみると興味深いかもしれません(リアルタイムでみれば共に胴体に日ノ丸のない「一式戦一型」のはずだが、「翼の凱歌」の2年後に作られたこの作品では、年代設定は「翼の凱歌」より少し前でありながら、胴体に日ノ丸のある「一式戦二型」が登場して編隊飛行などを行っている)。

加藤隼戦闘隊  特撮.jpg 更に戦闘機同士の空中戦や空爆シーンは、円谷英二特技監督による精巧な特殊撮影が織り込まれていて、どこまでが実写でどこまでが模型なのか見た目では分からないぐらいリアル。戦後の怪獣映画の特撮シーンの基礎は、こうした作品で培われたことを窺わせるとともに、円谷英二もまた、自分がやってみたかったことを映画作りの中でやったという側面もあるのではと思ったりもしました。

加藤隼戦闘隊 ポスター2.jpg 1942(昭和17)年5月、出先基地から出撃した味方機が途中で不時着し、部下の身を案じて基地からの引き揚げを躊躇っていた矢先に基地は敵の爆撃を受け、急遽追撃した加藤は敵機を撃墜するも敵弾を受け、反転して海中に自爆(多分、帰還が不可能であることを悟ったのだろう。これは部下に普段から話していた「確実に死ねる」方法だった)、38歳で戦死しました(彼の最期の場面は映画には無い)。

加藤隼戦闘隊 タイトル.png 加藤はすでに生前から「空の軍神」と呼ばれていたぐらいで、死後ますます「軍神」として祭り上げられることになりますが、彼自身はそんな類の名誉を望んでいなかっただろうし、こんないい人でも死ななければならない、という「戦争というのはやっぱり嫌だなあ」という気持ちの方が見終わった後に残る、ある意味アイロニカルな「戦意昂揚」映画のように思えました。
  
「加藤隼戦闘隊」●制作年:1944年●監督:督 山本嘉次郎●製作:村治夫●脚本:山崎謙太/山本嘉次郎●撮影:三村明●音楽:鈴木静●特技監督:円谷英二.●時間:109分●出演:藤田進/黒川弥太郎/沼崎勲/中村彰/高田稔/大河内伝次郎/灰田勝彦/河野秋武/志村喬●公開:1944/03●配給:映画配給社(東宝)(評価:★★★★)

「0戦はやと」.jpg「0戦はやと」2.jpg 一方、優秀な戦闘機パイロットに対する憧憬は戦後も長くあったようで、「隼」と並ぶ日本の戦闘機「0戦」「紫電改」をそれぞれ素材とした、辻なおきの「0戦はやと」(「週刊少年キング」創刊号から1964(昭和39)年第52号まで掲載)、ちばてつやの「紫電改のタカ」(1963(昭和38)年から1965(昭和40)年まで「週刊少年マガジン」に連載)といったマンガがありました。倉本聰.bmpこの内「0戦はやと」は、TVアニメとして、1964(昭和39)年1月21日から10月27日までフジテレビ系で放送され、脚本には倉本聡氏などが携わっています(「見よ、あの空に 遠く光るもの あれはゼロ戦 ぼくらのはやと 機体に輝く 金色(こんじき)の鷲 平和守って 今日も飛ぶ ゼロ戦 ゼロ戦 今日も飛ぶ」というテーマソングの作詞も倉本聡氏)。

ゼロ戦はやと.jpg0戦はやと [VHS].jpg 因みに、アニメのオープニングで、隼人がアップになるカットに1コマだけ(開始16秒後)、スタッフのものと思われる腕時計をした手がちらっと映り込んでいるのが確認できます(ずっとこのまま放映していたのかなあ)。
0戦はやと.jpg
0戦はやと [VHS]

「0戦はやと」(テレビアニメ版)●演出:星野和夫●製作:鷺巣富雄●脚本:倉本聡/鷺巣富雄/河野詮●音楽:渡辺岳夫●原作:辻なおき●出演(声):北条美智留/朝倉宏二/大塚周夫/田の中勇/家弓家正/大山豊/河野彰●放映:1964/01~10(全38回)●放送局:フジテレビ

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戦前最後にして最大規模のミュージカル・コメディ。先取性、先見性に富む。

エノケンの孫悟空6.jpgエノケンの孫悟空.jpg
「エノケンの孫悟空」VHS

 三蔵法師(柳田貞一)は経典を求めての天竺への旅の途中、岩山に閉じ込められていた孫悟空(榎本健一)を救い出して従者とし、併せて猪八戒(岸井明)、砂悟浄(金井俊夫)らもお供にして、妖怪魔物たちに邪魔をされながらも3人(3匹?)の活躍で危難を乗り越えて目的を果たす―。

エノケンの孫悟空2.jpg 1940(昭和15)年11月公開の山本嘉次郎(1902-1974)監督作。ベース・ストーリーはオリジナル通りですが、登場人物全員が歌いながら芝居をするオペレッタ形式であり、戦時色の濃い中で制作された戦前最後にして最大規模のドタバタ・ミュージカル・コメディと言えるものです。'36年1月に日本劇場でデビューした「日劇ダンシングチーム」総動員のレビュー風の踊りがオープニングから見られ(「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年/米)のオープニングみたい)、ハリウッドの古典的ミュージカルを模した彼女らの中国風であったりアラビア風であったりする集団ダンスシーンが、大掛かりなセットも含め物珍しさもあって印象に残りました。

機上の悟空・八戒・悟乗.jpg「エノケンの孫悟空」タイトルバック.jpg 中国ロケを敢行していて中国人俳優も出演していますが、ハリウッド映画のパロディなどもあり、バタ臭い印象が強いのはそのためでしょうか。それでいて、悟空を演じるエノケンの喋りがもろ江戸弁で、エノケン自身がこれまで演じてきた「鞍馬天狗」や「近藤勇」のパロディもあったりするため、もはや国籍不詳という感じ。しかも、最後はSF風になって「未来国」へ行くという、もう何でもありの世界です(そもそも、悟空の移動手段であるキン斗雲がプロペラ戦闘機に置き換わっており、特殊撮影はあの円谷英二が担当している)。

 猪八戒が歌う「狼なんかこわくない」はディズニ―・アニメ「三匹の子ぶた」('33年/米)の挿入歌、この「孫悟空」の前年にアメリカで公開された「オズの魔法使い」('39年/米)っぽいシーンやアニメ「白雪姫」('37年/米)のパロディと思われる場面もありますが、両作品とも日本での公開は戦後であり、「ピノキオ」('40年/米)のテーマ「星に願いを」なども使われていることを考えると、先取性のみならず、その「先見性」には測り知れないものがあります(国際著作権連盟に日本が未加入の時期の、"パクリ"やり放題の作品と言ってしまえばそういうことになるのだが)。

 "SF風"金角・銀角大王を演じた中村是好・如月寛多などエノケン一座も多数出演していますが、その他、服部富子、渡辺はま子、藤山一郎といった当時の人気歌手も出演し、更に役者陣も豪華。「奇怪国」の大王に「わしゃかなわんよ」のフレーズで当時人気のコメディアン・高勢実乗、アラビアの「煩悩国」の女王に三益愛子(当時29歳)、煩悩国で猪八戒が恋に落ちる歌姫に満映の超人気女優・李香蘭(山口淑子)(当時20歳)、後編の「お伽の国」のお姫様で、金角・銀角らによって「ネバーエンディング・ストーリー」('84年/西独・米)の竜ファルコンそっくりの顔した東洋の女  李 香蘭.jpgお伽の姫  高峰 秀子  .jpg袖珍  中村メイ子.jpg犬に姿を変えられてしまった少女に、当時人気絶頂の国民的アイドル・高峰秀子(当時16歳)、その国の案内役の少女・袖珍に天才子役として人気のあった中村メイコ(当時6歳)といった具合です。
李香蘭(当時20歳)/高峰秀子(当時16歳)/中村メイ子(当時6歳)

エノケンの孫悟空1.jpg 中村メイコの袖珍(いつも小脇に百科辞典を抱えている)は、金角・銀角らの頭脳交換機で記憶を奪われ虚脱状態になった孫悟空らに、ホウレン草の缶詰を与えて元気を回復させるという、これもまた日米開戦直前の作品であるにも関わらず「ポパイ」のパロディで(実際ポパイのテーマ曲が流れる)、「ポパイ」は、'59年から'65年までTBS「不二家の時間」でテレビ放映されたアニメですが(後番組は「オバケのQ太郎」)、ポパイというキャラクター自体は日本でも戦前からよく知られていたようです。

 この作品は、評論家には「中身のない映画」と酷評されたそうですが、確かに「大掛かりな学芸会」といった印象はあります。ただ、前年の'39 年に、戦時体制に合わせ映画法が施行、'40年には、学生・生徒が映画館に行くのは土日・祝祭日に限るという文部省通達が出され、実際に世の中は日中戦争からから日独伊三国同盟締結へと太平洋戦争へ向かいつつある中、日米開戦の前年にこのような作品が作られたのは(ディズニー・アニメのモチーフがふんだんに織り込まれていることだけをとっても)信じられないようなことでもあります。

 評論家の酷評とは裏腹に国民に大受けしたのは、そうした暗い時代であったからこそ、明るい娯楽を求める国民の気持ちに応えたということでしょう。芸術的価値よりも歴史的価値の方が高い作品か。

東洋の女=李香蘭(山口淑子)(当時20歳)/袖珍=中村メイコ(当時6歳)
エノケンの孫悟空   3.jpgエノケンの孫悟空 中村メイ子.bmp「エノケンの孫悟空」●制作年:1940年●監督・脚本:山本嘉次郎●製作:東宝東京●制作:滝村和男●撮影:三村明●特殊技術撮影:円谷英二●音楽:鈴木静一●原作:山形雄策●時間:135分●出演:榎本健一/岸井明/金井俊夫/柳田貞一/北村武夫/高勢実乗/土方健二/中村是好/如月寛多/三益愛子/高峰秀子/中村メイ子/徳川夢声/服部富子/渡辺はま子/李香蘭(山口淑子)/伊達里子/千川照美/藤山一郎●公開:1940/11●配給:東宝映画(評価:★★★☆)

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谷啓の「しばたき」と石原慎太郎の「しばたき」。

空想天国 dvd.jpg 空想天国2.jpg     スパルタ教育 石原慎太郎.jpg 
松森 健 監督・谷 啓 主演(酒井和歌子 共演)「空想天国 [DVD]」['68年]/石原慎太郎『スパルタ教育』['69年]

空想天国1.jpg 建設会社に勤める田丸(谷啓)は大変な空想家で、空想の中ではいつも大活躍するが、現実の仕事は失敗ばかりで、守衛に格下げされ、更には機密書類を盗まれさらには産業スパイの疑いを掛けられてしまう―。

 昨年('10年)9月に亡くなった谷啓(1932 - 2010/享年78、自宅階段から転落し、脳挫傷により急逝。認知症を患っていた模様)の主演映画で、12月の「銀座シネパトス」での追悼上映ラインナップにもあった作品ですが、ほぼ同時期に日本映画専門チャンネルでも放映されました。クレージー・キャッツ(故人はハナ肇、植木等、安田伸、石橋エータロー、そして谷啓。存命は2011年4月現在、犬塚弘、桜井センリの2人)らが総出演するシリーズ映画は、60年代を中心に撮られたものだけで25,6本ありますが、一方で、こうした谷啓主演の番外編的な映画も何本かあったのだなあと。

空想天国 酒井和歌子.jpg 監督は「これが青春だ!」('66年/東宝)の松森健で、共演は酒井和歌子。ガマラという着ぐるみっぽい怪獣が出てきて主人公の空想の手助けをしますが、その空想の中で出てくる理想の女性役が酒井和歌子で、それが現実世界では、産業スパイの一味に誘拐された守衛長の娘であり、最後は、主人公が彼女を救出し、2人は結ばれるというノホホンとしたコメディです(「ウルトラセブン」の"幻のアンヌ隊員役"と言われる豊浦美子が社長令嬢役で出ている)。

 この映画、公開時は、三船敏郎主演の「連合艦隊司令長官 山本五十六」('68年/東宝)との併映で、こちらも最近観なおしましたがが、ちょっと結びつかない組み合わせだったなあ(酒井和歌子は両方の作品に出ている)。当時のサラリーマンは、「山本五十六」で男の生き方を学び、谷啓のコメディで息抜きしたのか。

空想天国/山本五十六.jpg 「空想天国」のはラストシーンは明治記念館でのロケシーンで、庭池の飛び石を谷啓と酒井和歌子の2人がぴょんぴょん飛び跳ねるところで終わるのに対し、「連合艦隊司令長官 山本五十六」のラストは、三船敏郎演じる山本五十六が視察移動中の戦闘機の機中で敵の機銃を受けてもじっと動かない(実はすでに1発の銃弾が命中し、墜落前に絶命していることになっている)―実に対象的なエンディングだなあと思いました。

1968(昭和43)年8月1日 公開(「空想天国」「連合艦隊司令長官 山本五十六」2本立て(千代田劇場))「キネマ写真館」より
  
空想天国 1968.jpg空想天国d.jpg「空想天国」●制作年:1968年●監督:松森健●製作:渡辺晋●脚本:田波靖男●撮影:西垣六郎●音楽:萩原哲晶●時間:84分●出演:谷啓/京塚昌子/奈加英夫/酒井和歌子/宝田明/北あけみ/藤岡琢也/佐田豊/藤木悠/権藤幸彦/田中浩/木村博人/西岡慶子/中川さかゆ/矢野陽子/矢野間啓治/沢村いき雄/藤田まこと/頭師孝雄/中山豊/ハナ肇/桜井センリ/田崎潤/荒木保夫/ハンス・ホルネフ/小松政夫/豊浦美子/田辺和佳子●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「連合艦隊司令長官 山本五十六」(丸山誠治) 

連合艦隊司令長官 山本五十六  1968 poster.jpg連合艦隊司令長官 山本五十六 80.jpg「連合艦隊司令長官 山本五十六」●制作年:1968年●監督:丸山誠治●特技監督:円谷英二●製作: 田中友幸●脚本:須崎勝彌/丸山誠治●撮影:山田一夫●音楽:佐藤勝●時間:128分●出演:山本五十六(連合艦隊司令長官):三船敏郎/辰巳柳太郎/荒木保夫/堤康久/佐田豊/若宮忠三郎/豊浦美子/中谷一郎/伊吹徹/黒部進/黒沢年男/八世松本幸四郎/平田連合艦隊司令長官 山本五十六  1968 dvd.jpg昭彦/土屋嘉男/藤木悠/佐原健二/田島義文/坂本晴哉/今福正雄/柳永二郎/北龍二/向井淳一郎/岡部正/稲葉義男/太田博之/佐藤允/安部徹/久保明/加山雄三/宮口精二/藤田進/伊藤久哉/桐野洋雄/草川直也/森雅之/小鹿敦/岡豊/堺左千夫/緒方燐作/西条康彦/阿知波信介/酒井和歌子/司葉子/清水元/田村亮/渋谷英男/村上冬樹/池田秀一/加東大介/石山健二郎/佐々木孝丸/清水将夫/宇留木康二/江原達怡/船戸順/(ナレーター)仲代達矢●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「空想天国」(松森健) 
連合艦隊司令長官 山本五十六 [東宝DVD名作セレクション]

 谷啓には、高速まばたき(所謂「しばたき」)の癖がありましたが、同じ癖の持ち主に石原慎太郎氏がいます。

石原慎太郎 裕次郎.jpg ある心理学の先生が、石原慎太郎・裕次郎の兄弟を比較して、兄貴の慎太郎の「しばたき」の癖は、芸術家的繊細さの1つの現れであり(このことは、名トロンボーン奏者でもあった谷啓にも通じるかも)、兄の慎太郎よりは弟の裕次郎の方が精神的には図太いとしていましたが、「しばたき」が繊細さの現れであるとすれば、谷啓は、そのことによって他人を緊張させないように、自らをほんわかした、或いはトボケた雰囲気で包むようにしていて、一方、慎太郎氏は、それを周囲に悟られないように、努めて自分を豪胆に見せようとしている感じも受けます。

 その慎太郎氏は、'69年に『スパルタ教育―強い子どもに育てる本』(カッパ・ホームズ)を著していて、その中には「ヌード画を隠すな」「いじめっ子に育てよ」「子どもに酒を禁じるな」「子どもの不良性の芽をつむな」とかいろいろ激しいフレーズがありますけれど、これで「強い子ども」が育つのかなあ。実際に育った3人の息子達は、そんな図太い感じはしないけど、この偽悪的とも思えるポーズは、弟の裕次郎を意識したのではないかと(実際、裕次郎主演で映画化されている―と言っても、元が小説ではないので、脚本は書き下ろしだが)。

 この本、当時はベストセラーになりましたが、「本を、読んで良いものと悪いものに分けるな」とか、今主張している漫画規制の強化などとは言っていることが真逆のようにも思えるフレーズもあり(マンガは本ではないということか)、今読むと突っ込みどころ満載と言えるかも(昔は結構この人の小説も読んだのだが、今何故かあまり読み返す気がしない)。

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ストーリーが良く、特撮水準も高かった「サンダ対ガイラ」。マジ恐かった「海底大戦争」。

サンダ対ガイラ.jpg サンダ対ガイラ dvd縦.jpg 海底大戦争.jpg 海底大戦争2.jpg キイハンター(TVドラマ).jpg
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ [DVD]」/「海底大戦争 [DVD]」(千葉真一/ペギー・ニール)/「キイハンター BEST SELECTION BOX [DVD]

 ある嵐の夜、三浦半島沖を航行する漁船が大ダコに襲撃される。ただ1人生き残った操舵手の男は、「仲間は全員、大タコに続いて海から現れたフランケンシュタインらしき怪物に襲われ、喰われてしまった」と証言し、引き揚げられた乗組員の衣服は噛み砕かれて吐きだしたかのような状態だった―。

海外版予告編

サンダ対ガイラ4.jpgサンダ対ガイラ3.jpg 山に住む優しいフランケンシュタイン「サンダ」と、海に住む凶暴なフランケンシュタイン「ガイラ」の兄弟対決で(実際には"兄弟"ではなく同じ遺伝子を持つ"分身"。今で言うところの「クローン」)、古事記の海幸彦・山幸彦神話がベースになっていることはすぐに分かるのですが、それでも観ていてぐっとのめり込むぐらいストーリーはよく出来ています。   「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966/07/東宝)

「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」.jpg 兄サンダが弟ガイラを"叱る"(?)のは、ガイラが人間を喰ってしまったからで、小さい頃に人間に育てられたサンダには(この作品は、前年に公開された「フランケンシュタイン対地底怪獣」('65年)のの姉妹編となっている)、人間への恩義があるのか。とは言え、兄弟の情もあったりして...不肖の弟を持ったサンダは悩ましいところです。

ジャングル大帝・サンダ対ガイラ.gif 個人的には、田舎の小学校に転校した頃、学校の体育館で(所謂"体育座り"して)観せられたのが「フランケンシュタイン対地底怪獣」で、その姉妹編であるこの作品はちゃんと(?)劇場でを観た記憶がありますが(「ジャングル大帝」('66年)と併映だった)、当時はストーリー展開よりも、山からぬっと現われた巨大フランケンシュタインの迫力や、羽田空港の滑走路をゴム毬が弾むように駆けていく2匹の躍動感が印象に残りました。

水野久美02.jpg水野久美1.jpg 今顧みても、特撮の水準は歴代怪獣映画の中ではなかなかのものではなかった思われ、この日米合作映画はアメリカでは今でもカルト的な人気があるそうです。古事記神話のことは彼らはおそらく知らないと思いますが、水野久美についてはアメリカにも熱烈なファンがいると聞きます。

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ3.jpgラス・タンブリン.jpg 「ウエスト・サイド物語」('61年)でジェット団の首領リフを演じたラス・タンブリンが科学者ポール役で出ていたりしますが、タンブリンはいつも定時の撮影後は共に来日した妻とホテルへ直帰し、食事の交歓の誘いも一切断るなど、「怪獣大戦争」('65年)などに出演したニック・アダムスがスタッフや俳優たちと積極的に交わり、溶け込もうとしたのとは対照的な態度をとり、撮影現場でもまったく演技を合わせようとせず、土屋嘉男によれば、共演した水野久美はタンブリンの態度に怒ってヒステリーを起こしたこともあったとのことです。

「海底大戦争」(1966/07 東映)           
海底大戦争 1966 2.jpgペギー・二ール.jpg 同じ頃に、 「海底大戦争」('66年)海底大戦争3.jpgいうのも"観せられ"、これは東宝ではなく東映映画で、原案はSF作家の福島正実(1929-1976/享年47)、監督は佐藤肇(1929-1995)。これも日米合作映画であり、出演者は外国人の方が多いのですが、主演は千葉真一でした。 

海底大戦争 1966e2.jpg これはマジ恐かったあ。特にマッドサイエンティストに捕まったペギー・ニール演じるヒロインの外国人女性記者が半魚人にされかけるところ。皮膚が半分ウロコ状になってもうだめかと...。

 この作品を観せられちょっとトラウマ気味になった生徒もいたみたいで、自分自身もその後大人になって「大井武蔵野館」あたりでだと思いますが観る機会はあったものの、あまり再見する気にならなかったのは、当時その1人だったからかもしれません(今、予告編などを見るとそれほどでもなく、正直、ちょっとクエンティン・タランティーノ.jpg評価不能という感じか)。これもまた、クエンティン・タランティーノ監督など海外にも熱烈なファンが多い作品なのですが...。

 その後、同年代の人と昔学校で課外授業の一環として観た映画の話になったことがあり、自分がフランケンシュタインものや「海底大戦争」を学校の体育館で観ていた時期と同じ頃には、「サウンド・オブ・ミュージック」とかを、ちゃんとした映画館で観たとのことでした。

 同じ"課外授業"としての映画鑑賞でありながら、内容は随分違うなあと思い、田舎の学校の先生の教育的意図は何だったのかなあと不思議に思ったりしましたが、ビクトル・エリセ「ミツバチのささやき」('73年/スペイン)でも、子供らが集まる公民館で「フランケンシュタイン」を上映する場面があったから、あれはあれで、日本のビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」1.bmpビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」2.bmpミツバチのささやき.jpg一田舎に限ったものではなく、ある種の"世界標準"だったのでしょうか。
ミツバチのささやき HDマスター [DVD]

 
キ―ハンター 2.jpgキーハンター 千葉真一.bmp 因みに、千葉真一は、この「海底大戦争」に出ていた頃まではアクション映画やヤクザ映画への出演が主で、出演本数の割には一般にはそれほど知名度の高い俳優ではありませんでしたが、「海底大戦争」出演の2年後の'68(昭和43)年からスタートしたテレビドラマ「キイハンター」に主演、一躍人気スター俳優となり、番組自体も視聴率は30パーセントを超え、当初1年の放送予定だったのが5年も続き、放映回数は262回にまで達しました(これ、丹波哲郎の代表的な作品でもあると思うのだが)。

 野際陽子の歌うテーマ曲「非常のライセンス」が懐かしいですが、この曲、千葉真一も歌っていなかったかなあ。
ウフン ラムール(愛)
アー ラモール(死)
ああ あの日愛した人の
墓に花をたむける明日
ああ 昨日恋して燃えて
今日は敵と味方の二人
恋も夢も希望も捨てて
命かける非情の掟
ああ だから 
ああ もっと
もっと愛して
(作詞:佐藤純彌/作曲:菊池俊輔)
                             
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ  03.jpgサンダ対ガイラ ワイドポスター.jpg「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」 ●制作年:1966年●監督:本多猪四郎●特撮監督:円谷英二●製作:田中友幸/角田フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ0.jpg健一郎●脚本:馬淵薫/本多猪四郎●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●時間:88分●出演:ラス・タンブリン(スチュワート博士)/佐原健二(間宮雄三)/水野久美(戸川アケミ)/伊藤久哉(泉田課長)/田島義文(平井)/田崎潤(橋本陸将補)/中村伸郎(喜田教授)/大川平八郎(医師)/桐野洋雄(風間二佐)/山本廉(亀田三郎)/堤康久/岡部正(記者)/勝部義夫(記者)/伊藤実(記者)/岡豊(記者)/渋谷英男(記者)/橘正晃(記者)/関田裕(サンダ)/中島春雄(ガイラ)/小宮康弘(子供のフランケンシュタイン)/森今日子(看護婦)/沢村いき雄(年配の漁夫)/広瀬正一(山のガイド)/伊原徳(潜水夫)/堤康久(士官)●公開:1966/07●配給:東宝 (評価:★★★☆)


海底大戦争 19661.jpg「海底大戦争」 ●制作年:1966年●監督:佐藤肇●企画:亀田耕司/吉野誠一●脚本:大津皓一●撮影:下村海底大戦争 tiba.jpg海底大戦争 ビデオ.jpg和夫●音楽:菊池俊輔 ●原案:福島正実●時間:84分●出演:千葉真一/ペギー・ニール/フランツ・グルーバー/アンドリュー・ヒューズ/エリック・ニールセン/マイク・ダーニン/ビバリー・ケラー/ブラウン・ガン/三重街恒二/室田日出男/菅沼正●公開:1966/07●配給:東映 (評価:★★★?)

キイハンター主題歌 「非情のライセンス」.jpgキイハンター①.jpgキイハンター dvd.jpgキーハンター.jpg「KEY HUNTER キイハンター」●監督:井上昭/堀長文/深作欣二/佐藤肇ほか●制作:小野耕人/近藤照男●脚本:深作欣二/池内金男/小山内美江子ほか●音楽:菊池俊輔(主題歌:野際陽子「キイハンター 非情のライセンス」●原作:都筑道夫●出演:千葉真一/野際陽子/丹波哲郎/谷隼人/大川栄子/川口浩/安岡力也/松岡きっこ/川地民夫/野添ひとみ●放映:1968/04~1973/04(全262回)●放送局:TBSキイハンター BEST SELECTION BOX [DVD]

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地上で繰り広げられるドタバタ劇はともかく、宇宙怪獣ドゴラはなかなかいい。若林映子も...。

宇宙大怪獣ドゴラ.jpg ドゴラ vhs.jpg 宇宙大~4.JPG  007は二度死ぬ ps.jpg 若林映子.jpg
ポスター/「宇宙大怪獣 ドゴラ [VHS]」「宇宙大怪獣ドゴラ [DVD]」「007は二度死ぬ [DVD]」/若林映子(あきこ)

宇宙大怪獣 ドゴラ ポスター.jpg  日本上空を周回中のテレビ中継衛星が突然消え、時を同じくして世界各国の宝石店が襲われて多量のダイヤモンドが盗まれる事件が頻発し、警視庁は宝石強盗団一味の仕業として捜査を開始、警視庁の駒井刑事(夏木陽介)は、ダイヤの研究を行なっている宗方博士(中村伸郎)のもとを訪れるが、マークという謎の外国人(ダン・ユマ)に襲撃されてダイヤを奪われ、そのマークも強盗団にダイヤを奪われる。一方の強盗団も、盗んだダイヤを積んだトラックが突如浮遊して落下するという異常事態に見舞われる―。

宇宙怪獣ドゴラ2.jpg 1960年代半ばの東宝映画は、「ゴジラ」シリーズの全盛期でしたが、この頃東宝はゴジラを主役にした映画ばかりではなく、こんなのも撮っていました。こんなのと言ってもどう言えば良いのか。クラゲのお化けみたいな巨大宇宙生物が出てくる作品です。

 この巨大クラゲ、エネルギー補給のために炭素を必要とし、そのためダイヤや石炭を地上から吸い上げるようにして補給するということで、この「ドゴラ」と命名された巨大クラゲが、ボタ山から石炭を吸い上げるシーンはなかなか見応えがあります(今観れば、水槽に落とした黒い粉末の塊が拡散していく様を、逆モーションで撮っていたのが分かるが、それにしても大した創意工夫)。

宇宙大怪獣ドゴラ  サントラ.jpg宇宙第怪獣ドゴラ 若戸大橋.jpg クラゲの全体像がなかなか見えないのもイマジネーションを駆りたてるし、実はこのクラゲ、ビニール製だそうですが、CGの無い時代にジェームズ・キャメロンの「アビス」('89年/米)顔負けの映像作りをしているなあと感心しました(「ドゴラ」の原案イメージは小松崎茂)。
宇宙大怪獣ドゴラ」サントラ

 映画公開の前年に完成したばかりの「東洋一の吊り橋」若戸大橋を破壊するなど、その"活躍"は派手ですが、結局、終盤になっても、ドゴラがあまり画面に出てこなかったのがやや残念か。

ドゴラ 若林.jpg 映画の大部分は、地上で繰り広げられる警察と強盗団のダイヤ争奪・奪回戦に費やされ、盗んだのがダイヤだと思ったら氷砂糖だったとか、ドタバタ喜劇調でもあります。主演の夏木陽介や、3年後に「007は二度死ぬ」('67年)でボンドガールとなる若林映子(あきこ)(警官をして「動くベッド」と言わしめる妖艶さ)などの演技陣は真剣に演じているのですが...。

Uchû daikaijû Dogora(1964).jpg宇宙大怪獣ドゴラ.jpg 今観ると、ストーリー映画としては星3つに届くか届かないですが、ドゴラだけはなかなかいいと思います。この作品を最初に観たのは学校の「課外授業」としてで、併映は家城巳代治監督、池田秀一主演の「路傍の石」('64年/東映)でしたが、その後の授業で感想文を書けと言われて「路傍の石」ではなく「ドゴラ」の方の感想文を書きました。 
Uchû daikaijû Dogora(1964)
 特撮映画としてもユニークだし、スタジオセット撮影と併せて実際に筑豊産炭地区でもロケをしているため、石炭産業華やかなりし頃の当地の様子や石炭積出港であった若松港の様子を収めた貴重な記録映像としても鑑賞できます。
007は二度死ぬ ニューオータニ.jpg007は二度死ぬ チラシ.jpg 因みに、「007は二度死ぬ」('67年)も、そのロケ地は都内では旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニなど、地方では神戸港、 姫路城、鹿児島県坊津町などに及び、昭和40年代前半の日本各所の風景を映し出しているという点では貴重かもしれません。

若林 映子(あきこ)
「宇宙大怪獣ドゴラ」若林映子.jpg若林映子5.jpgドゴラ 夏木.jpg「宇宙大怪獣ドゴラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●特撮監督:円谷英二●製作:田中友幸/田実泰dogora 中村・藤田.jpg良●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●時間:81分●出演:夏木陽介/ダン・ユマ/小泉博/藤山陽子/若林映子藤田進中村伸郎/河津清三郎/田島義文/天本英世/田崎潤/加藤春哉/桐野洋雄/若松明/篠原正記/堤康久/岩本弘司/津田光男/熊谷卓三/当銀長太郎/広瀬正一/中山豊/上村幸之●公開:1964/08●配給:東宝 (評価:★★★☆)●併映:「路傍の石」(家城巳代治)

ドゴラ vhs.jpg

007は二度死ぬ 若林映子.jpg「007は二度死ぬ」●原題:YOU ONLY LIVE TWICE」●制作年:1967年●監督:ルイス・ギルバート●製作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:ロアルド・ダール●撮影:フレディ・ヤング●主題歌:You Only Live Twice(唄:ナンシー・シナトラ)●原作:イアン・フレミング●時間:117分●出演:ショーン・コネリー/丹波哲郎/若林映子/浜美枝/ドナルド・プレザンス/島田テル/ カリン・ドール/チャールズ・グレイ/ツァイ・チン/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェリン/バーナード・リー●公開:1967/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価:★★★☆)
007は二度死ぬ」 若林映子

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"黒澤明"風「阿部一族」。原作のイメージしにくい部分をイメージするのに丁度いい。

日本映画傑作全集 阿部一族.jpg 阿部一族 映画.jpg  阿部一族 岩波文庫.jpg 阿部一族 新潮文庫.jpg
「阿部一族」(1938年/監督:熊谷久虎)/映画「阿部一族」の一場面/『阿部一族―他二編 岩波文庫』/『阿部一族・舞姫 (新潮文庫)

阿部一族31_v.jpg 寛永18年、肥後熊本の城主・細川忠利が逝去し、生前より主の許しを受け殉死した者が18名に及んだが、殉死を許されなかった阿部弥一右衛門(市川笑太郎)に対しては、家中の者の見る眼が変わり、結局彼は息子達の目の前で切腹して果て、更に先君の一周忌には、長男・権兵衛(橘小三郎)がこれに抗議する行動を起こし非礼として縛り首となり、次男・弥五兵衛(中村翫右衛門)以下阿部一族は、主君への謀反人として討たれることになる―。

 原作は森鷗外が1913(大正2)年1月に雑誌『中央公論』に発表した中篇小説ですが、簡潔な描写であるのはいいのですが、一部においては歴史史料のような文体であり、これをフツーの人が読んでどれぐらい出来事の情景が思い浮かべることができるか、大体は可能だとしても細部においてはどうか。個人的には、同年発表の『護持院原の敵討』の方が読み易かったでしょうか。鷗外が、同じ江戸時代の慣習でも、「殉死」に対して批判的で、「敵討」に対しては同情的であるように見えるのが興味深いです(「阿部一族」は、明治天皇を追って乃木希典が殉死したことへの批判的動機から書かれたとも言われている)。

映画『阿部一族』.jpg 熊谷久虎(1904‐1986)監督により1938年に映画化されていますが(このほかに深作欣二(1930‐2003)監督も1995年にテレビ映画化している)、黒黒澤明         .jpg澤明監督が演出の手本にしたという熊谷久虎作品はたいへん判り易いもので、但し、判り易すぎると言うか、弥一右衛門のことを噂する家中の者の口ぶりは、サラリーマンの職場でのヒソヒソ話と変わらなかったりして(親近感は覚えるけれど)、小説の中でも触れられている犬飼いの五助の殉死や、小心者の畑十太夫などについても、コミカルで現代的なタッチで描かれています(この辺りで残酷な場面はない)。

阿部一族30_v.jpg 一方、登場人物中で殉死に唯一懐疑的な隣家の女中・お咲(堤真佐子)と、彼女と親しい仲間多助(市川莚司)は映画オリジナルのキャラであり、市川莚司(後の加東大介)の主君の追い腹を切ろうとしてもいざとなるとビビって切れないという演技もまたコミカルでした。

 但し、基本的には当然明るい話では無く、阿部弥一右衛門の自死が、追い腹を切れば主君の命に背いたことになり、切らねば「脂を塗った瓢箪の腹を切る」臆病者と揶揄されるという状況の中での切羽詰まった選択であったにせよ、その事が一族にもたらしたその後の不幸は彼の推測し得なかったことであり、残された一族の「何でこうなるのか」みたいな焦燥感や悲壮感が、映像でよく伝わってきます(最後は一族総玉砕みたいな感じで、この辺り"黒澤明"風)。

殉死の構造 学術文庫.jpg 因みに、鷗外がこの小説のベースにした『阿部茶事談』という史料自体が脚色されたものであり、実際には阿部弥一右衛門は、他の殉死者と同じ日にしっかり殉死していたということは、山本博文 著『殉死の構造』(講談社学術文庫)などで史料研究の観点から指摘されており、山本氏によれば、鷗外は、"誤った"史料をベースに物語を書いたということのようですが、鷗外が確信犯的に創作したという可能性はないのだろうか(他にも、「権兵衛の非礼」→「一族の討伐」→「権兵衛の縛り首」が正しい順番であるなど、史実との違いがある)。

 この「阿部一族」は、円谷英二が特殊技術を担当し、始めて本格的に特撮監督としてデビューした作品でもあるらしいです(但し、息子・円谷一による追悼フィルモグラフィー『円谷英二―日本映画に残した遺産』('73年/小学館、'01年復刻版刊行)の「関係主要作品リスト」にはなぜか入っていない)。

阿部一族(1938).jpg 「阿部一族」●制作年:1938年●監督:熊谷久虎●製作:東宝/前進座●脚本:熊谷久虎/安達伸男●撮影:鈴木博●音楽:深井史郎/P・C・L管絃楽団●原作:森鷗外「阿部一族」●時間:106分●出演:中村翫右衛門/河原崎長十郎/市川笑太郎/橘小三郎/山岸しづ江/堤真神保町シアター.jpg佐子/市川莚司(加藤大介)/市川進三郎/山崎島二郎/市川扇升/山崎進蔵/中村鶴蔵/嵐芳三郎/坂東調右衛門/市川楽三郎/瀬川菊之丞/市川菊之助/中村進五郎/助高屋助蔵/市川章次/中村公三郎●公開:1938/03●配給:東宝映画●最初に観た場所:神保町シアター(09-05-09)(評価:★★★☆) 神保町シアター 2007(平成19)年7月14日オープン

『阿部一族・舞姫』 (新潮文庫) 森 鴎外.jpg 【1938年文庫化・2007年改版[岩波文庫(『阿部一族―他二篇』)]/1965年再文庫化[旺文社文庫(『阿部一族・雁・高瀬舟』)]/1967年再文庫化・1976年改版[角川文庫(『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』)]/1968年再文庫化・2006年改版[新潮文庫(『阿部一族・舞姫』)]/1972年再文庫化[講談社文庫(『阿部一族・山椒大夫・高瀬舟―ほか八編』)]/1995年再文庫化[ちくま文庫(『森鴎外全集〈4〉雁・阿部一族』)]/1998年再文庫化[文春文庫(『舞姫・雁・阿部一族・山椒大夫―外八篇』)]】

阿部一族・舞姫 (新潮文庫)

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写真が豊富(数千点)かつ鮮明。生活費を切り詰め集めた"執念のコレクション"。

東宝特撮怪獣映画大鑑(増補版).jpg 東宝特撮怪獣映画大鑑 増補版.jpg ゴジラ.jpg モスラ対ゴジラ1964.jpg
東宝特撮怪獣映画大鑑』(1999/03 朝日ソノラマ) 「ゴジラ」(1954)/「モスラ対ゴジラ」(1964)

 朝日ソノラマの旧版('89年刊行)の「増補版」。553ページにも及ぶ大型本の中で、'54年の「ゴジラ」から'98年の「モスラ3」までのスチールや撮影風景の写真などを紹介していますが、とにかく写真が充実(数千点)しているのと、その状態が極めてクリアなのに驚かされます。

浅野ゆう子.jpg 怪獣映画ファンサークル代表竹内博氏が、仕事関係で怪獣映画の写真が手元に来る度に自費でデュープして保存しておいたもので(元の写真は出版社や配給会社に返却)、当時の出版・映画会社の資料保管体制はいい加減だから(そのことを氏はよく知っていた)、結局今や出版社にも東宝にもない貴重な写真を竹内氏だけが所持していて、こうした集大成が完成した、まさに生活費を切り詰め集めた"執念のコレクション"です(星半個マイナスは価格面だけ)。

水野久美2.jpg若林映子2.jpg やはり、冒頭に来るのは「ゴジラ」シリーズですが、スチールの点数も多く、ゴジラの変遷がわかるとともに、俳優陣の写真も豊富で、平田昭彦、小泉博、田崎潤、佐原健二、藤木悠、宝田明、高島忠夫、女優だと水野久美若林映子、根岸明美、さらに前田美波里や、ゴジラものではないですが浅野ゆう子('77年「惑星大戦争」)なども出ていたのだなあと。

モスラ対ゴジラ.jpgモスラ.jpgゴジラ ポスター.jpg 「ゴジラ」('54年)は、東宝の田中友幸プロデューサーによる映画「ゴジラ」の企画が先にあって、幻想小説家の香山滋が依頼を受けて書いた原作は原稿用紙40枚ほどのものであり、現在文庫で読める『小説ゴジラ』は、映画が公開された後のノヴェライゼーションです。

ゴジラ 1954.jpgゴジラs29.jpg  自分が生まれる前の作品であり(モノクロ)、かなり後になって劇場で観ましたが、バックに反核実験のメッセージが窺えたものの、怪獣映画ファンの多くが過去最高の怪獣映画と称賛するわりには、自分自身の中では"最高傑作"とするまでには、今ひとつノリ切れなかったような面もあります。やはりこういうのは、子供の時にリアルタイムで観ないとダメなのかなあ。昭和20年代終わり頃に初めて「怪獣映画」というものを観た人たちにとっては、強烈なインパクトはあったと思うけれど、自分がリアルタイムで観ていない作品は、ついつい現代の技術水準や演出などとの比較で観てしまう傾向があるかも。ゴジラ 1954.jpg但し、制作年('54年)の3月にビキニ環礁で米国による水爆実験があり、その年の9月に「第五福竜丸」の乗組員が亡くなったことを考えると、その年の12月に公開されたということは、やはり、すごく時代に敏感に呼応した作品ではあったかと思います。
Gojira (1954)
Gojira (1954) .jpg
「ゴジラ」●制作年:1954年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:村田武雄/本多猪四郎●撮影:玉井正夫●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二ほか●原作:香山滋●時間:97分●出演:宝田明/河内桃子/平田昭彦/志村喬/堺左千夫/村上冬樹/山本廉/榊田敬二/鈴木豊明 /馬野都留子/菅井きん/笈川武夫/林幹/恩田清二郎/高堂国典/小川虎之助/手塚克巳/橘正晃/帯一郎/中島春雄●公開:1954/11●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ (83-08-06)(評価:★★★☆)●併映:「怪獣大戦争」(本多猪四郎)

モスラ_0.jpg 作品区分としてはゴジラ・シリーズではないですが、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の3人の純文学者を原作者とする「モスラ」('61年)の方が、今観ると笑えるところも多いのですが、全体としてはむしろ大人の鑑賞にも堪えうるのではないかと...。まあ、「ゴジラ」と「モスラ」の間には7年もの間隔があるわけで、その間に進歩があって当然なわけだけれど(そう言えば、大映の「ガメラ」('60年)も第一作はモノクロで、かなり子供向けの内容だった)。
「モスラ」('61年)予告

「モスラ」(61年).jpg ザ・ピーナッツ(伊藤エミ(1941-2012)、伊藤ユミ(1941-2016))のインドネシア風の歌も悪くないし、東京タワー('58年完成、「ゴジラ」の時はまだこの世に無かった)に繭を作るなど絵的にもいいです。原作「発光妖精とモスラ」では繭を作るのは東京タワーではなく国会議事堂でしたが、60もののけ姫のオーム.jpg年安保の時節柄、政治性が強いという理由で変更されたとのこと、これにより、モスラは東京タワーを最初に破壊した怪獣となり、東京タワーは完成後僅か3年で破壊の憂き目(?)に。繭から出てきたのは例の幼虫で、これが意外と頑張った? 宮崎駿監督の「もののけ姫」('97年)の"オーム"を観た時、モスラの幼虫を想起した人も多いのではないでしょうか。
モスラ_1.jpg「モスラ」●制作年:1961年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:古関裕而●特殊技術:円谷英二●イメージボード:小松崎茂●原作:中村真一郎/福永武彦/堀田善衛「発光妖精とモスラ」●時間:101分●出演:フランキー堺/小泉博/香川京子/ジェリー伊藤 /ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/上原謙/志村喬/平田昭彦/佐原健二/河津清三郎/小杉義男/高木弘/田島義文/山本廉/加藤春哉/三島耕/中村哲/広瀬正一/桜井巨郎/堤康久●公開:1961/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★★☆)●併映:「三大怪獣 地球最大の決戦」(本多猪四郎)
モスラ対ゴジラ ポスター2.jpgモスラ対ゴジラ ポスター.jpg この「ゴジラ」第1作を観ると、ゴジラが最初は純粋に"凶悪怪獣"であったというのがよくわかります。それが「ゴジラシリーズ」の第4作「モスラ対ゴジラ」('64年)(下写真)の時はまだモスラの敵役モスラ対ゴジラ 02.jpgだったものの(この作品はゴジラにとって怪獣同士の闘いにおける初黒星、昭和のシリーズでは唯一の敗戦を喫した作品でもある。因みに、「ゴジラシリーズ」の第3作「キングコング対ゴジラ」('62年)は両者引き分け(相撃ち)とされているようだ)、同じ年に公開された('64年12月公開予定だった黒澤明監督「赤ひげ」の撮影が長引いたため、正月興行用に急遽制作された)「ゴジラシリーズ」の第5作「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年)(下写真)「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年)3.jpgになると、宇宙怪獣キングギド三大怪獣 地球最大の決戦.jpgラを倒すべく力を合わせようというモスラ(幼虫)の"呼びかけ"にラドンと共に"説得"されてしまいます。この怪獣たちが極端に擬人化された場面のバカバカしさは見モノでもあり、ある意味、珍品映画として貴重かもしれません。ともかく、ゴジラはこの作品以降、昭和若林映子 サルノ王女.jpgシリーズではすっかり"善玉怪獣"になっています(「三大怪獣 地球最大の決戦」には、後にボンドガールとなる若林映子が、キングギドラに滅ぼされた金星人の末裔であるサルノ王女役で出ていたが、王女の本名はマアス・ドオリナ・サルノ(まあ素通りなさるの!)だった)。この作品、モスラ、ゴジラ、ラドンの3匹がを力を合わせてキングギドラ戦に挑むことから、本来は「四大怪獣」ではないかと思うのですが...。
若林映子(サルノ王女)in「三大怪獣 地球最大の決戦」

Mosura tai Gojira(1964).jpgモスラ対ゴジラ2.jpg「モスラ対ゴジラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:89分●出演:宝田明/星由里子/小泉博/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/藤木悠/田島義文/佐原健二/谷晃/木村千吉/中山豊/田武謙三/藤田進/八代美紀/小杉義男/田崎潤/沢村いき雄/佐田豊/山本廉/佐田豊●公開:1964/04●配給:東宝(評価:★★★☆)
Mosura tai Gojira(1964)

「モスラ対ゴジラ」('64年)予告

                  
三大怪獣・地球最大の決戦 パンフレット.jpgSan daikaijû Chikyû saidai no kessen(1964).jpg三大怪獣 地球最大の決戦2.jpg「三大怪獣 地球最大の決戦」.png「三大怪獣 地球最大の決戦」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:97分●出演:夏木陽介/小泉博/星由里子/若林映子/ザ・ピーナッツ/志村喬/伊藤久哉/平田昭彦/佐原健二/沢村いき雄/伊吹徹/野村浩三/田島義文/天本英世/小杉義男/高田稔/英百合子/加藤春哉●時間:93分●公開:1964/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★☆)●併映:「モスラ」(本多猪四郎)
San daikaijû Chikyû saidai no kessen(1964)

怪獣大戦争.jpg怪獣大戦争01.jpg 更に、ゴジラシリーズ第6作「怪獣大戦争」('65年)は、地球侵略をたくらむX星人がキングギドラ、ゴジラ、ラドンの3大怪獣を操り総攻撃をかけてくるというもので、X星人の統制官(土屋嘉男)がキングギドラを撃退するためゴジラとラドンを貸して欲しいと地球人に依頼してきて、その礼としてガン特効薬を提供すると申し出るが実はそれは偽りで...という、まるで人間界のようなパターンの詐欺行為。「シェー」をするゴジラなど、怪獣のショーアップ化が目立ち、"破壊王"ゴジラはここに至って、遂に自らのイメージをも完全粉砕してしまった...。

ニック・アダムス.jpg 本書にはない裏話になりますが、この作品に準主役で出演した米俳優のニック・アダムスは、ラス・タンブリンなど、同列のSF映画で日本に招かれたハリウッド俳優達が日本人スタッフと交わろうとせずに反発を受けたのに対し、積極的に打ち解け馴染もうとし、共演者らにも人気があったそうで、土屋嘉男とは特に息が合い、土屋にからかわれて女性への挨拶に「もうかりまっか?」と言っていたそうで、仕舞には、自らが妻帯者であるのに、水野久美に映画の役柄そのままに「妻とは離婚するから、結婚しよう」と迫っていたそうです(ニック・アダムスは当時、私生活では離婚協議中だったため、冗談ではなく本気だった可能性があるとのこと。但し、彼自身は、'68年に錠剤の過量摂取によって死亡している(36歳))。

ニック・アダムス2.jpg怪獣大戦争2.jpg「怪獣大戦争」●制作年:1965年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本: 関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:94分●出演:宝田明/ニック・アダムス/久保明/水野久美/沢井桂子/土屋嘉男/田崎潤/田島義文/田武謙三/、村上冬樹/清水元/千石規子/佐々木孝丸●公開:1965/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ (83-08-06)(評価:★★☆)●併映:「ゴジラ」(本多猪四郎)

水野久美.jpg 怪獣の複数登場が常となったのか、「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年)などというのもあって、監督は本多猪四郎ではなく福田純ですが、これはなかなかの迫力だった印象があります(後に観直してみると、人間ドラマの方はかなりいい加減と言うか、ヒドいのだが)。

ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘ps.jpg水野久美 in「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年)

ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘2.jpg 水野久美が"原住民"の娘役で出ていて、キャスティングの変更による急遽の出演で、当時29歳にして19歳の役をやることになったのですが、今スチール等で見ても、妖艶過ぎる"19歳"、映画「南太平洋」('58年/米)みたいなエキゾチックな雰囲気もありましたが、何せ観たのは子供の時ですから、南の島の島民たちが大壷で練っている黄色いスープのような液体の印象がなぜか強く残っています(何のための液体だったのか思い出せなかったのだが、後に観直して"エビラ除け"のためのものだったと判り、スッキリした)。

「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」.jpg「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」●制作年:1966年●監督:福田純●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:山田一夫●音楽:佐藤勝●特殊技術:円谷英二●出演:宝田明/渡辺徹/伊吹徹/当銀長太郎/砂塚秀夫/水野久美/田崎潤/平田昭彦/天本英世/佐田豊/沢村いき雄/伊藤久哉/石田茂樹/広瀬正一/鈴木和夫/本間文子/中北千枝子/池田生二/岡部正/大前亘/丸山謙一郎/緒方燐作/勝部義夫/渋谷英男●時間:87分●公開:1966/12●配給:東宝(評価:★★★☆)●併映:「これが青春だ!」(松森 健)

ゴジラvsキングギドラ.jpgゴジラvsビオランテ.gif '75年で一旦終了したシリーズが9年ぶりに再開し、久々に作られた第16作「ゴジラ」('84年)で、ゴジラを原点の"凶悪怪獣"に戻したようですが、第17作あたりから、また少しおかしくなってくる...。

「ゴジラ vs ビオランテ」vhs.jpg 第17作「ゴジラ vs ビオランテ」('89年)は、バイオテクノロジーによってゴジラとバラの細胞を掛け合わせて造られた超獣ビオランテが登場し、一般公募ストーリー5千本から選ばれたものだそうですが(選ばれたのは「帰ってきたウルトラマン」第34話「許されざるいのち」の原案者である小林晋一郎の作品。一般公募と言ってもプロではないか)、確かに植物組織を持った怪獣は、「遊星よりの物体x」('51年/米)(「遊星からの物体x」('82年/米)のオリジナル)の頃からあるとは言え、随分と荒唐無稽なストーリーを選んだものだと...。

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ゴジラ vs キングギドラ 1991.jpg 第18作「ゴジラ vs キングギドラ」('91年)は、南洋の孤島に生息していた恐竜が核実験でゴジラに変身したという新解釈まで採り入れており(ここに来てゴジラの出自を変えるなんて)、ゴジラが涙ぐんでいるような場面もあって、また同じ道を辿っているなあと(この映画、敵役の未来人のUFOが日本だけを攻撃対象とするのも腑に落ちないし、タイム・パラドックスも破綻気味)。
 第17、第18作は大森一樹監督で、いくらか期待したのですが、かなり脱力させられました(この監督は商業映画色の強い作品を撮るようになって、はっきり言ってダメになった。彼の最高傑作は自主映画作品「暗くなるまで待てない!」('75年/大森プロ)ではないか)。

 結局、ゴジラ・シリーズは'04年の第28作をもって終了しますが、「ゴジラ」シリーズ全体での観客動員数は9,925万人で、「男はつらいよ」シリーズ全48作の合計観客動員数7,957万人を上回り、歴代で最も観客動員数多い劇場映画シリーズとされています。

「ゴジラ vs ビオランテ」●制作年:1989年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:すぎやまこういち(ゴジラテーマ曲:伊福部昭)●時間:97分●出演:三田村邦彦/田中好子/小高恵美/峰岸徹/高嶋政伸/沢口靖子/高橋幸治●公開:1989/12●配給:東宝 (評価:★☆)

「ゴジラ vs キングギドラ」●制作年:1991年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:伊福部昭●特技監督:川北紘一●原作:香山滋●時間:103分●出演:中川安奈/豊原功補/小高恵美/西岡徳馬/土屋嘉男/原田貴和子/小林昭二/佐々木勝彦/チャック・ウィルソン/ロバート・スコットフィールド●公開:1991/12●配給:東宝 (評価:★☆)

日本誕生.jpg ゴジラ・シリーズ以外で、役者だけで見れば何と言っても凄いのが「日本誕生」('59年)で、ヤマタノオロチが出てくるため確かに"怪獣映画"でもあるのですが、三船敏郎、乙羽信子、司葉子、鶴田浩二、東野英治郎、杉村春子、田中絹代、原節子など錚々たる面々、果ては、柳家金語楼から朝汐太郎(当時の現役横綱)まで出てくるけれど、「大作」転じて「カルト・ムービー」となるといった感じでしょうか(観ていないけれど、間違いなくズッコケそうで観るのが怖いといった感じ)。 

「日本誕生」 アメノウズメノミコ (乙羽信子)

マタンゴ.jpg 初期の「透明人間」('54年)やガス人間第1号」('60年)など"○○人間"モノや天本英夫の「マタンゴ」('63年)といった怪奇モノ、地球防衛軍」('57年)宇宙大戦争」('59年)などの宇宙モノから中国妖怪モノ、"フランケンシュタイン"モノまで、シリーズごとのほぼ全作品を追っていて、作品当りのスチール数も豊富な上に、一部については、デザイン画や絵コンテなども収められています。

 この頃東宝はゴジラ映画だけを作っていたわけではなく、クラゲの化け物のような怪獣が登場する宇宙大怪獣ドゴラ」('66年)といった作品もありました。個人的には、"フランケンシュタイン"モノでは、フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」('66年)などが印象に残っています。
 
水野久美 in 「フランケンシュタイン対地底怪獣」('65年)/根岸明美 in「キングコング対ゴジラ」('62年)
東宝特撮怪獣映画大鑑1.jpg 東宝特撮怪獣映画大鑑2.jpg

根岸明美 アナタハン.jpg根岸明美 マタンゴ.jpg赤ひげ 根岸明美 .jpg
根岸明美(1934.3.26-2008.3.11/享年73) in 「アナタハン」('53年)、「キングコング対ゴジラ」('62年)、「赤ひげ」('65年)

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