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後期作品の中では異彩を放つこの"暗さ"は、小津安二郎の悲観的な結婚観に符合する?

東京暮色 1957.jpg 東京暮色  1957.jpg 東京暮色 j.jpeg 東京暮色 有馬稲子 .jpg
あの頃映画 松竹DVDコレクション 「東京暮色」」「東京暮色 デジタル修復版 [DVD]」 山田五十鈴・原節子 有馬稲子
東京暮色_AL_.jpg東京暮色_640.jpg東京暮色157a.jpg 杉山周吉(笠智衆)は銀行に勤め、停年も過ぎ今は監査役の地位にある。男手一つで子供達を育て、次女の明子(有馬稲子)と静かな生活を送っている。そこへ、長女の孝子(原節子)が夫との折り合いが悪く幼い娘を連れて出戻ってくる。一方、短大を出たばかりの明子は、遊び人の川口(高橋貞二)らと付き合うようになり、その中の一人である木村憲二(田浦正巳)と肉体関係を持ち、彼の子を身籠ってしまう。憲二は明子を避けるようになり明子は彼を捜して街を彷徨う。中絶費用を用立てするため、明子は叔母の重子(杉村春子)に理由を言わずに金を借りようとするが断られ、重子からこれを聞いた周吉は訝しく思う。その頃、明子は雀荘の女主人・喜久子(山田五十鈴)が自分のことを尋ねていたと聞き、彼女こそ自分の実母ではないかと孝子に質すが、孝子は即座に否定する。喜久子はかつて周吉がソウルに赴任していたときに東京暮色8.jpg周吉の部下と深い仲になり、満洲に出奔した過去があったのだ。明子は中絶手術を受けた後で、喜久子がやはり自分の母であることを知って、自分は本当に父の子なのかと悩む。蹌踉として夜道へ彷徨い出た彼女は、母を訪ねて母を罵り、偶然めぐりあった憲二にも怒りに任せて平手打を食わせ、そのまま一気に自滅の道へ突き進んで行った。その夜遅く、電車事故による明子の危篤を知った周吉と孝子が現場近くの病院に駈けつけたが明子は既に殆ど意識を失っていた。その葬儀の帰途、孝子は母の許を訪れ、明子の死はお母さんのせいだと冷く言い放つ。喜久子はこの言葉に鋭く胸さされ東京を去る決心をする。また、孝子も自分の子のことを考え、夫の許へ帰り、家は周吉一人になった。今日もまた周吉は心侘しく出勤する―。

2018年・第68回ベルリン国際映画祭(ヴィム・ヴェンダース監督・坂本龍一氏(審査員))
Tokyo-Twilight_0 - コピー.jpgTokyo-Twilight_0.jpg第68回ベルリン国際映画祭ヴェンダース監督・坂本龍一.jpgTokyo-Twilight_4.jpg 1957年公開の小津安二郎監督で、今年['18年]開催の第68回ベルリン国際映画祭のクラシック部門で、ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」('87年)などと併せて選出され、プレミア上映されました。小津安二郎監督作品のデジタル修復版は、2013年のベルリン国際映画祭の「東京物語」から世界三大映画祭クラシック部門で7作目の選出となり、小津安二郎の世界的な評価の高さが窺えます(ヴィム・ヴェンダースに至っては、「小津安二郎は私の師匠」と以前から公言し、同映画祭においても審査員の坂本龍一氏を前に、"天国の大島渚"にごめんなさいと謝るジョークを交え、"小津愛"を繰り返し吐露している)。

East of Eden.jpg ジェームズ・ディーンの代表作「エデンの東」('55年)の小津的な翻案とされ、どちらも父親の妻(つまり母親)が出奔していて、「エデンの東」における兄弟が原節子と有馬稲子の姉妹に置き換えられている作りですが、内容が暗いばかりでなく、実際に暗い夜の場面も多く、有馬稲子が全編を通して全く笑うことが無くて、その最期も含め作品の暗さを補強している印象です。ちょうど、「風の中の牝雞」('48年)までの小津作品に見られた"暗さ"の部分を継承している感じでしょうか。そうした暗さもあってか、一般の人気は芳しくなく、キネマ旬報のベストテンでも19位と圏外となり、小津安二郎自らも自嘲気味に「何たって19位の監督だからね」と語っていたとのことです。

東京暮色7.jpg東京暮色 nakamura .jpg しかしながら、戦後期の大女優山田五十鈴(1917-2012)が出演した唯一の小津作品であり、姉妹の実母で雀荘の女主人・喜久子を演じたそのリアルな演技はさすが。夫役の中村伸郎も、後の出演作に多く見られる会社役員や大学教授の役ばかりでなく、こういった市井の人を演じても上手いということがよく分かります(まあ、「東京物語」('57年)でも下町で美容院を営む杉村春子の夫役だったが)。加えて、小津安二郎自身が小津作品における「四番バッター」と評した杉村春子も相変わらず世話焼きおばさんぶりが上手く、こうなるとむしろ原節子の比較的パターン化された演技や笠智衆の一本調子が物足りなくなってくるほどです。

 小津映画で原節子が主演した"紀子三部作"のうち、「晩春」('49年)、「麦秋」('51)が、娘が結婚に行くか行かないかという話でしたが、この「東京暮色」は、原節子が夫と夫婦不和で、半ば出戻り状態のようになっていて、何だかそれら前作の続きのような印象も受けます(情にほだされて結婚してしまったような「麦秋」とも繋がるが、父親を同じく笠智衆が演じている「晩春」とはよりよく繋がる感じも)。前後の小津作品も、多くが主要登場人物の結婚をテーマにしながら、「晩春」にも「麦秋」にも「秋刀魚の味」('62年)にもAkibiyori (1960) 2.jpgその結婚式の場面が無いのは(「秋日和」('60年)のみ例外で、司葉子と佐田啓二の新郎新婦がそろって結婚式の記念撮影をする場面がある)、それらが何れも結果として"不幸な結婚"となることを暗示していて、小津安二郎が結婚の"現実"に対して悲観論者であったためとも言われています(小津安二郎自身、実人生において、噂のあった原節子と結婚することもなく、生涯独身を通した)。もしそうだとしたら、この「東京暮色」は、そうした小津安二郎の悲観的な結婚観に符合するともとれます。

小津安二郎 志賀直哉.jpg その意味でも興味深い作品ですが、評価が当時は芳しくなかったことに懲りたのか、小津安二郎はもうこの手の作品は撮らず、志賀直哉に「里見弴君が仕事が無くて困っているから彼の作品を使ってくれ」と言われ、里見弴の原作作品を「彼岸花」('58年)、「秋日和」、「秋刀魚の味」と3作も撮り(ただし、小津安二郎自身も10代の時から里見弴の作品を愛読していた)、「晩春」「麦秋」以来の娘が結婚に行くか行かないかという話を、これらでまた3回も繰り返すことになりました。小津安二郎自身、「俺は豆腐屋だから豆腐しか作れない」と言っているわけですが、結果としてどれも似たような感じになり、それぞれに一定の完成度は保っていますが、続けて観るとやや飽きがこなくもありません。個人的には、こうした「東京暮色」のような暗くてドラマチックな展開の小津映画ももっと観たかった気がしますが、結局この類の作品はもう作られることはなく、この「東京暮色」は、小津安二郎の後期作品の中では異彩を放つものとなったように思われます(「東京暮色」のIMDbスコアを見ると、他の小津作品に比べむしろ若干高い評価にある)。
       
小津4K 巨匠が見つめた7つの家族.jpg「小津4K 巨匠が見つめた7つの家族」<生誕115年記念企画>2018年6/16(土)~6/22(金)新宿ピカデリー、6/23(土)~7/7(土)角川シネマ新宿 有馬稲子
【上映作品】 「晩春 4K修復版」「麥秋 4K修復版」「お茶漬の味 4K修復版」「東京物語 4K修復版」「早春 4K修復版」「東京暮色 4K修復版」「浮草 4K修復版」

山田五十鈴 in 成瀬巳喜男監督「流れる」('56年)/小津安二郎監督「東京暮色」('57年)/黒澤明監督「用心棒」('61年)
流れる 1シーン.jpg 山田五十鈴 東京暮色.jpg 用心棒01.jpg

笠智衆(杉山周吉)・山村聰(友人・関口積)/杉村春子(孝子・明子の叔母・竹内重子)/高橋貞二(遊び人の川口)
東京暮色 笠智衆 山村.jpg東京暮色 杉村春子.jpg東京暮色 高橋.jpg「東京暮色」●制作年:1954年●監督:小津安二郎●製作:山内静夫●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●時間:140分●出演:原節子/有馬稲子/笠智衆/山田五十鈴/高橋貞二/田浦正巳/杉村春子/山村聰/信欣三/藤原釜足/中村伸郎/宮口精二/須賀不二夫/浦辺粂子/三好栄子/田中春男/山本和子/長岡輝子/櫻むつ子/増田順二/長谷部朋香/森教子/菅角川シネマ新宿  0.jpg角川シネマ新宿 .jpg角川シネマ新宿 2.jpg原通済(特別出演)/石山龍児●公開:1957/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):角川シネマ新宿(シネマ1・小津4K 巨匠が見つめた7つの家族)(18-06-28)((評価:★★★★)

角川シネマ新宿 シネマ1.jpg 角川シネマ新宿(新宿3丁目「新宿文化ビル」4・5階)シネマ1(300席/右写真)・シネマ2(56席)  2006(平成18)年12月9日〜旧文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」として、旧文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」として再オープン、2008(平成20)年6月14日「新宿ガーデンシネマ1・2」が「角川シネマ新宿1・2」に改称)


《読書MEMO》
●小津安二郎の1949年以降の作品(原作者)とIMDbスコア及び個人的評価
・1948年「風の中の牝雞」[7.6]★★★☆
・1949年「晩春」(広津和郎)[8.3]★★★★☆
・1950年「宗方姉妹」(大佛次郎)[7.5]★★★☆
・1951年「麦秋」[8.2]★★★★☆
・1952年「お茶漬の味」[7.9]★★★☆
・1953年「東京物語」[8.2]★★★★☆
・1956年「早春」[8.0]★★★☆
・1957年「東京暮色」[8.3]★★★★
・1958年「彼岸花」(里見 弴)[8.0]★★★★
・1959年「お早よう」[7.9]★★★☆
・1959年「浮草」[8.0]★★★☆
・1960年「秋日和」(里見 弴)[8.2]★★★☆
・1961年「小早川家の秋」[8.0]★★★☆
・1962年「秋刀魚の味」(里見 弴)[8.2] ★★★☆

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映画は「本日休診」+「遥拝隊長」(+「多甚古村」?)。
本日休診 DVD.jpg 本日休診_3.jpg  本日休診 文庫 .jpg
<あの頃映画>本日休診 [DVD]」 岸惠子・柳永二郎 『遙拝隊長・本日休診(新潮文庫)

本日休診 01柳永二郎.jpg 三雲医院の三雲八春(柳永二郎)は戦争で一人息子を失い、甥の伍助(増田順二)を院長に迎えて戦後再出発してから1年になる。その1周年記念日、伍助院長は看護婦の本日休診 04岸惠子.jpg瀧さん(岸惠子)らと温泉へ行き、三雲医院は「本日休診」の札を掲げる。八春先生がゆっくり昼寝でもと思った矢先、婆やのお京(長岡輝子)の息子勇作(三國連太郎)が例の発作を起こしたという。勇作は軍隊生活の悪夢に憑かれており、時折いきなり部隊長となって皆に号令、遥拝を命じるため、八春先生は彼の部下になったふりをして本日休診 三國.jpg気を鎮めてやらなければならなかった。勇作が落着いたら、今度は警察の松木ポリス(十朱久雄)が大阪から知り合いを頼って上京したばかりで深夜暴漢に襲われ本日休診 03角梨枝子.jpgたあげく持物を奪われた悠子(角梨枝子)という娘を連れて来る。折から18年前帝王切開で母子共八春先生に助けられた湯川三千代(田村秋子)が来て、悠子に同情してその家へ連れて帰る。が、八春先生はそれでも暇にならず、砂礫船の船頭の女房のお産あり、町のヤクザ加吉(鶴田浩二)が指をつめるのに麻酔を打ってくれとやって来たのを懇々と説教もし本日休診 06鶴田浩二.jpgてやらねばならず、悠子を襲った暴漢の連本日休診 02佐田啓二.jpgれの女が留置場で仮病を起こし、兵隊服の男(多々良純)が盲腸患者をかつぎ込んで来て手術をしろという。かと思うとまたお産があるという風で、「休診日」は八春先生には大変多忙な一日となる。悠子は三千代の息子・湯川春三(佐田啓二)の世話で会社に勤め、加吉はやくざから足を本日休診 05淡島千景.jpg洗って恋人のお町(淡島千景)という飲み屋の女と世帯を持とうと考える。しかしお町が金のため成金の蓑島の自由になったときいて、その蓑島を脅本日休診 10.jpg迫に行き、お町はお町で蓑島の子を流産して八春先生の所へ担ぎ込まれる。兵隊服の男は、治療費が払えず窓から逃げ出すし、加吉は再び賭博で挙げられる。お町は一時危うかったがどうやら持ち直す。そんな中、また勇作の集合命令がかかり、その号令で夜空を横切って行く雁に向かって敬礼する八春先生だった―。

本日休診』d.jpg本日休診●井伏鱒二●文芸春秋社●昭和25年4刷.jpg 1952(昭和29)年公開の渋谷実(1907-1980/享年73)監督作で、原作は第1回読売文学賞小説賞を受賞した井伏鱒二(1898-1993/享年95)の小説「本日休診」であり、この小説は1949(昭和24)年8月「別冊文芸春秋」に第1回発表があり、超えて翌年3回の発表があって完結した中篇です。

本日休診 (1950年)』(1950/06 文藝春秋新社) 収載作品:遥拝隊長 本日休診 鳥の巣 満身瘡痍 貧乏徳利 丑寅爺さん

 町医者の日常を綴った「本日休診」は、井伏鱒二が戦前に発表した田舎村の駐在員の日常を綴った「多甚古村」と対を成すようにも思われますが、「多甚古村」は作者の所へ送られてきた実際の田舎町の巡査の日記をベースに書かれており、より小説的な作為を施したと思われる続編「多甚古村補遺」が後に書かれていますが(共に新潮文庫『多甚古村』に所収)、作家がより作為を施した「多甚古村補遺」よりも、むしろオリジナルの日記に近いと思われる「多甚古村」の方が味があるという皮肉な結果になっているようも思いました。その点、この「本日休診」は、作家としての"作為"の為せる技にしつこさがなく、文章に無駄が無い分キレを感じました。

 医師である主人公を通して、中篇ながらも多くの登場人物の人生の問題を淡々と綴っており、戦後間もなくの貧しく暗い世相を背景にしながらもユーモアとペーソス溢れる人間模様が繰り広げられています。こうしたものが映画化されると、今度はいきなりべとべとしたものになりがちですが、その辺りを軽妙に捌いてみせるのは渋谷実ならではないかと思います。

本日休診 12.jpg 主人公の「医は仁術なり」を体現しているかのような八春先生を演じた柳永二郎は、黒澤明監督の「醉いどれ天使」('48年/東宝)で飲んだくれ医者を演じた志村喬にも匹敵する名演でした。また、「醉いどれ天使」も戦後の復興途上の街を描いてシズル感がありましたが、この「本日休診」では、そこからまた4年を経ているため、戦後間もない雰囲気が上手く出るよう、セットとロケ地(蒲田付近か)とでカバーしているように思本日休診5-02.jpgいました。セット撮影部分は多分に演劇的ですが(本日休診m.jpgそのことを見越してか、タイトルバックとスチール写真の背景は敢えて書割りにしている)、そうい言えば黒澤明の「素晴らしき日曜日」('47年/東宝)も後半はセット撮影でした(「素晴らしき日曜日」の場合、主演俳優が撮影中に雑踏恐怖症になって野外ロケが不能になり後半は全てセット撮影となったという事情がある)。

「本日休診」スチール写真(鶴田浩二/淡島千景)

本日休診 title.jpg本日休診 title2 .jpg クレジットでは、鶴田浩二(「お茶漬の味」('52年/松竹、小津安二郎監督))、淡島千景(「麦秋」('51年/松竹、小津安二郎監督)、「お茶漬の味」)、角梨枝子(「とんかつ大将」('52年/松竹、川島雄三監督))ときて柳永二郎(「魔像」('52年/東映))となっていますが、この映画の主役はやはり八春先生の柳永二郎ということになるでしょう。その他にも、佐田啓二、三國連太郎、岸恵子など将来の主役級から、増田順二、田村秋子、中村伸郎、十朱久雄、長岡輝子、多々良純、望月優子といった名脇役まで多士済々の顔ぶれです。

本日休診 07三国連太郎.jpg この作品を観た人の中には、三國連太郎が演じた「遥拝隊長」こと勇作がやけに印象に残ったという人が多いですが、このキャラクターは遙拝隊長youhaitaichou.jpg原作「本日休診」にはありません。1950(昭和25)年発表の「遥拝隊長」(新潮文庫『遥拝隊長・本日休診』に所収)の主人公・岡崎悠一を持ってきたものです。彼はある種の戦争後遺症的な精神の病いであるわけですが、原作にはその経緯が書かれているので読んでみるのもいいでしょう。また、映画の終盤で、警察による賭場のガサ入れシーンがありますが、これは「多甚古村」にある"大捕物"を反映させたのではないかと思います。

淡島千景鶴田浩二角梨枝子『本日休診』スチル.jpg 脚本は、「風の中の子供」('37年/松竹、坪田譲治原作、清水宏監督)、「風の中の牝鶏」('48年/松竹、小津安二郎監督)の斎藤良輔(1910-2007/享年96)。原作「本日休診」で過去の話やずっと後の後日譚として描かれている事件も、全て休診日とその翌日、及びそれに直接続く後日譚としてコンパクトに纏めていて、それ以外に他の作品のモチーフも入れ、尚且つ破綻することなく、テンポ良く無理のない人情喜劇劇に仕上げているのは秀逸と言えます(原作もユーモラスだが、原作より更にコメディタッチか。原作ではお町は死んでしまうのだが、映画では回復を示唆して終わっている)。

鶴田浩二/淡島千景/角梨枝子

本日休診 スチル.jpg この映画のスチール写真で、お町(淡島千景)らが揃って"遥拝"しているものがあり、ラストシーンかと思いましたが、ラストで勇作(三國連太郎)が集合をかけた時、お町は床に臥せており、これはスチールのためのものでしょう(背景も書割りになっている)。こうした実際には無いシーンでスチールを作るのは好きになれないけれど、作品自体は佳作です。その時代でないと作れない作品というのもあるかも。過去5回テレビドラマ化されていて、実際に観たわけではないですが、時が経てば経つほど元の映画を超えるのはなかなか難しくなってくるような気がします(今世紀になってからは一度も映像化されていない)。
     
本日休診 vhs5.jpg本日休診 1952.jpg「本日休診」●制作年:1939年●監督:渋谷実●脚本:斎藤良輔●撮影:長岡博之●音楽 吉沢博/奥村一●原作:井伏鱒二●時間:97分●出演:柳永二郎/淡島千景/鶴田浩二/角梨枝子/長岡輝子/三國連太郎/田村秋子/佐田啓二/岸恵子/市川紅梅本日休診 08中村伸郎.jpg(市川翠扇)/中村伸郎/十朱久雄/増田順司/望月優子/諸角啓二郎/紅沢葉子/山路義人/水上令子/稲川忠完/多々良純●公開:1952/02●配給:松竹(評価:★★★★)
中村伸郎(お町の兄・竹さん)

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初カラー作品。佐分利信の"昭和的頑固親父"ぶり全開。後期作品の多くの原型的スタイルを含む。

彼岸花 映画pos.jpg彼岸花 映画 dvd.jpg
彼岸花 [DVD]」 山本富士子/有馬稲子/久我美子
[下]「「彼岸花」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]
彼岸花 タイトル.jpg彼岸花 小津00_.jpg 会社常務の平山渉(佐分利信)は、妻・清子(田中絹代)と共に出席した旧友・河合(中村伸郎)の娘の結婚式に、同期仲間の三上(笠智衆)が現れないことを不審に思っていた。実は三上は自分の娘・文子(久我美子)が家を出て男と暮らしていることに悩んでおり、いたたまれずに欠席したのだった。三上の頼みで平山は銀座のバーで働彼岸花 映画 02.jpgいているという文子の様子を見に行くことになる。一方の平山にも、適齢期を迎えた娘・節子(有馬稲子)がいた。彼は節子の意思を無視して条件のいい縁談を進める傍ら、平山の馴染みの京都の旅館の女将・佐々木初(浪花千栄子)の娘・幸子(山本富士子)が見合いの話を次々に持ってくる母親の苦情を言うと「無理に結婚することはない」と物分かりのいい返事をする。一方、平山が勝手に縁談を進めていた自分の娘・節子には、実は親に黙って付き合っている谷口(佐田啓二)という相手がいた。そのことを知らされ、それが娘の口から知らされなかったのが平山には面白くなく、彼は娘の恋愛に反対する―。

 小津安二郎監督の1958(昭和33)年作品で、小津監督初のカラー作品でもあり、原作は里見弴。因みに、この作品と同じく、なかなか結婚しない娘のことを気遣う親をモチーフとしたその後の作品「秋日和」('60年)、「秋刀魚の味」('62年)共に里見弴の原作であり(里見彼岸花 佐分利信A.jpg彼岸花 映画1_s.jpg弴ってこんな話ばかり書いていた?)、本作品では、他人の娘には自由恋愛を勧めるのに、自分の娘には自分のお眼鏡に適(かな)った相手でなければ結婚を許さないという、佐分利信の"昭和的頑固親父"ぶりが全開です(浪花千栄子の関西のおばはんぶりも全開だったが)。
佐分利信/田中絹代

江川宇禮雄/笠智衆/北竜二          中村伸郎
彼岸花 映画 dousoukai .jpg中村伸郎 higanbana .jpg 佐分利信、中村伸郎、北竜二が演じる旧友3人組は「秋日和」でも形を変えて登場し、「秋刀魚の味」では笠智衆、中村伸郎、北竜二の3人組になっていました。この「彼岸花」では、佐分利信、笠智衆、中村伸郎、北竜二の"4人組"となっています(その他に江川宇禮雄ら同窓生多数)。加えて佐分利信の娘に有馬稲子(当時26歳)、笠智衆の娘に久我美子(当時27歳)、佐分利信の知人の娘で、この作品においてコメディ・リリーフ的な役割を果たす女性に山本富士子(当時26歳)(大映から借り受け)という顔ぶれですから、考えてみれば結構豪華メンバーでした。
                                       久我美子/渡辺文雄
彼岸花 映画 00.jpg彼岸花 映画5O.jpg 佐分利信演じる平山は、三上の娘・文子(久我美子)には理解を示す一方で(その恋人役は渡辺文雄)、自分の娘・節子(有馬稲子)の結婚には反対し、平山の妻・清子(田中絹代)や次女・久子(桑野みゆき)も間に入って上手く取りなそうとしますが、平山はHiganbana (1958) .jpgますます頑なになります。そこへ節子の友人でもある幸子が現れ、平山に自分の縁談について相談する。が、それは節子の結婚のための芝居だったわけで、結局、彼は出ないと言っていた結婚式にも出ることになり、最後は娘と谷口の結婚を認めて彼女らのいる広島に向かう―という結末です。
Higanbana (1958)
 別に結末まで書こうと書くまいと、そんなビックリするような話ではない点は、その後の小津作品と同じではないかと...。佐田啓二は、「秋日和」では司葉子彼岸花 映画 浪花.jpgが演じたヒロインの結婚相手でしたが、この「彼岸花」と「秋日和」「秋刀魚の味」の3作の中で(主要人物の)結婚式の場面があるのは「秋日和」だけです。結婚式の場面が無いのはその結婚が必ずしも幸せなものとはならなかったことを暗示しているとの説もあるようですが、この「彼岸花」の場合どうなのでしょう(渡辺文雄、何となく頼りなさそう)。「秋刀魚の味」で佐田啓二は、岡田茉莉子演じる妻の尻の下に敷かれて、ゴルフクラブもなかなか買えないでいましたが...(因みに、「秋刀魚の味」では佐田啓二が会社の屋上でゴルフの練習をしているが、この「彼岸花」では佐分利信がゴルフ場で独りラウンドしている。しがないサラリーマンと重役の違いか)。

浪花千栄子/山本富士子

彼岸花 映画01.jpg モチーフばかりでなくセリフや撮影面においても、その後の小津カラー作品の原型的なスタイルを多く含んでおり、この作品に見られる料亭での同期の男たちの会話やそれに絡む女将(高橋とよ)との遣り取り、家の1階に夫婦が暮らし2階に娘たちが暮らすが、階段は映さないという"ルール"(映さないことで親子の断絶を表しているという説がある)、会社のオフィスやバーのカウンターでの会話やその際のカメラワークなど、そして例えばオフィスであればくすんだ赤と緑を基調とした色使いなど、その後も何度も繰り返されるこうした後期の小津作品における"セオリー"的なものを再確認するうえでは再見の価値ありでした。

 この作品で、佐分利信演じる平山の部下で、佐田啓二演じる谷口の後輩でもある近藤役を演じてコメディ的な味を出している高橋貞二は、この作品彼岸花 映画s.jpg高橋貞二.jpgに出た翌年1959年に33歳で自らの飲酒運転で事故死しています(この年に結婚したばかりだった妻も3年後に自殺、青山霊園に夫と共に埋葬されている)。

佐分利信/高橋貞二(1959年に33歳で自らの飲酒運転で事故死)

 そして佐田啓二も、1964年に37歳でクルマにより事故死していますが、共に4人でクルマに乗っていて事故に遭い、亡くなったのはそれぞれ高橋貞二と佐田啓二の一人ずつのみでした。

佐田啓二(1964年に37歳で自動車運転事故死)/久我美子/有馬稲子
彼岸花 映画16.jpg彼岸花 映画9_s.jpg彼岸花 有馬稲子.jpg「彼岸花」●制作年:1958年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●原作:里見弴●時間:118分●出演:佐分利信/有馬稲子/山本富士子/久我美子/田中絹代/佐田彼岸花 sata%20.png啓二/高橋貞二/笠智衆/桑野みゆき/浪花千栄子/渡辺文雄/中村伸郎/北竜二/高橋とよ/桜むつ子/長岡輝子/十朱久雄/須賀不二男/菅原通済/江川宇禮雄/竹田法一/小林十九二/清川晶子/末永功●公開:1958/09●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★★)●併映:「東京物語」(小津安二郎)/「秋刀魚の味」(小津安二郎)

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「晩秋」に似た終わり方。テーマも同じく「娘を嫁にやった男親の悲哀と孤独」。

秋刀魚の味 チラシ.jpg秋刀魚の味 dvd.jpg 秋刀魚の味 ブルーレイ.jpgあの頃映画 秋刀魚の味 [DVD]」「「秋刀魚の味」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]」 

秋刀魚の味 宴席.jpg 初老のサラリーマン平山周平(笠智衆)は、秋刀魚の味 岩下.jpg妻を亡くして以来、24歳になる長女・路子(岩下志麻)と次男・和夫(三上真一郎)の三人暮らしで、路子に家事を任せきって生活している。そのことに後ろめたさを感じつつ、まだ嫁にやるには早い思いたい周平に、同僚の河合(中村伸郎)が路子の縁談を持ちかける。最初は乗り気でない周平だったが、河合のしつこい説得と、一人娘の婚期を遅れさせ後悔する恩師の姿を見るにつれ、ついに路子へ縁談話をするが、急な話に路子は当惑する―。

Sanma no aji (1962) 1.jpg秋刀魚の味1カット.jpg 小津安二郎監督の1962(昭和37)年作品で、同監督の遺作となった作品。原作は「秋日和」('60年)と同じ里見弴。タイトルの「秋刀魚の味」は佐藤春夫の詩「秋刀魚の歌」から引いており、映画の中には"秋刀魚"は出てきません(海外では"Autumn Afternoon"のタイトルで公開)。「秋日和」に受付嬢役で出てた岩下志麻が小津映画初主演(作中に小林正樹監督・仲代達矢主演の松竹映画「切腹」('62年9月公開)のポスターが見られるカットがあるが、岩下志麻はこの作品にも出演している)。

秋刀魚の味s.jpg 前半部分は、周平、河合、堀江(北竜二)らかつての中学の同級生たちが恩師の漢文教師で、通称"瓢箪"先生(東野英治郎)を招いて同窓会をした話が主軸になっています。その席で"瓢箪"はかつての教師の威厳も無く酔っぱらってしまいます(この元教師、鱧(はも)を食べたのは初めてか?この映画で出てくる料理魚は鱧だけで、先に述べた通りサンマは出てこない)。

 秋刀魚の味 東野.jpg 東野英治郎って「東京物語」以来、小津映画で酔っ払いの役が多いなあ(実際にはあまり飲めなかったようだが。一方、中村伸郎は酒好きで、笠智衆は完全な下戸だった)。笠智衆が実年齢58歳で57歳の周平を演じているのに対し、東野英治郎は実年齢55歳で17歳上の72歳の老け役です。"瓢箪"を家まで送ると独身の娘(杉村春子)が悲憤の表情でそれを迎える(杉村春子(1906年生まれ)は実年齢56歳で東野英治郎(1907年生まれ)演じる元教師の48歳の娘を演じている)―"瓢箪"は、今は独身の娘が経営するラーメン屋の親父になっていたわけ秋刀魚の味 杉村.jpg秋刀魚の味 燕来軒.jpgで、後日周平がその店を訪ねた際にもその侘しさが何とも言えず、"瓢箪"が周平の会社へ礼に来た際に河合と共に料理屋へ誘うと「あんたは幸せだ、私は寂しい、娘を便利に使って結局嫁に行きそびれた」とこぼす始末。それを聞き河合は「お前も"瓢箪"になるぞ。路子さんを早く嫁にやれ」と周平に忠告する―といった出来事が、後半の伏線となっています。

秋刀魚の味 佐田・岡田.jpg 周平の長男・幸一(佐田啓二)は妻・秋子(岡田茉莉子)が団地住まいをしていますが、夫は大企業に勤めているものの、共稼ぎの妻の方が帰りが遅い時は夫が自分で夕飯を作るところが、当時としては目新しかったといいます。幸一が以前から欲しかったゴルフクラブを会社の同僚(吉田輝雄)から買うために周平から金を借りると、それを秋子にさらわれてしまったため不満が募るといった具合に、共稼ぎのせいか妻の発言権が強く、最終的には秋子は月賦で買うことを認めますが、その代わり自分もハンドバッグを買うと言います。雰囲気的に、この作品で小津監督は、夫婦生活、結婚生活というものをあまり明るいものとしては描いていない印象を受けます(因みに佐田啓二はこの映画に出演した2年足らずの後に自動車事故で亡くなっている(享年37))。

秋刀魚の味 岩下志麻 花嫁姿.jpg 路子の縁談の話は周囲が色々動き過ぎてあっちへ行ったりこっちへ行ったりしますが、最後に路子は結婚を決意し、河合が紹秋刀魚の味 笠 ラスト.jpg介した医師の元へ嫁ぐことに―。路子の花嫁姿に接し、平山は「うーん、綺麗だ。しっかりおやり、幸せにな」と言葉をかけ、式の後は亡き妻に似たマダム(岸田今日子)がいるバーへ行き独りで飲みながら軍艦マーチを聴く。ラスト、周平は自宅で「うーん、一人ぽっちか」と呟き、台所へ行くと急須から茶を注いで飲む―。

秋刀魚の味 笠1.jpg がっくりしてはいるが泣いてはいないという(笠智衆は映画において泣く演技を拒否した)、「晩秋」に似た終わり方でした(テーマも同じく「娘を嫁にやった男親の悲哀と孤独」であるし)。会社のオフィスの撮り方や宴席、料理屋の撮り方なども、同じセットを使ったのではないかと思われるくらい似ていて、しかも俳優陣も重なるため、やや印象が弱かった感じも(ヒロイン・路子役の岩下志麻は、「秋日和」で会社の受付嬢というチョイ役だった)。路子の花嫁姿はあっても結婚式の場面が無いのも「晩秋」と同じで、これは路子の結婚生活が必ずしも幸せなものとはならないことを暗示しているとの説もありますが、個人的には何とも言えません。

Sanma no aji (1962).jpg 小津安二郎監督のカラー作品は、「彼岸花」('58年)、「お早よう」('59年)、「浮草」('59年)、「秋日和」('60年)、「小早川家の秋」('61年)とこの「秋刀魚の味」の6作品があり、戦後のということで多くの人に観られているということもあってか、何れの作品も小津作品のファン投票サイトや個人のサイトなどでベストテンにランクインすることが多いのです。

 実際、2003年にNHK-BS2で「生誕100年小津安二郎特集」を放映した際の視聴者投票による「小津映画ベスト10」では、①「東京物語」②「晩春」③「麦秋」④「生れてはみたけれど」⑤「浮草」⑥「彼岸花」⑦「秋刀魚の味」⑧「秋日和」⑨「早春」⑩「淑女は何を忘れたか」の順でした。これ、自分の中でのランキングと近い部分もあれば違っている部分もあるのですが、この並び順が別の一般または個人のサイトなどを見ると「お早よう」がランクインしていたりして、微妙に違っていたりするのが面白いです。

 因みにIMDbの評価は「8.3」。海外でも高い評価を得ている作品と言えます。
Sanma no aji(1962)

秋刀魚の味 杉村春子.jpg 杉村春子 秋刀魚の味 東野英治郎.jpg 東野英治郎

中村伸郎2.jpg秋刀魚の味 加東.jpg「秋刀魚の味」●制作年:1962年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●原作:里見弴●時間:113分●出演:笠智衆/岩下志麻/佐田啓二/岡田茉莉子/中村伸郎/東野英治郎/北竜二/杉村春子/加東大介/吉田輝雄/三宅邦子/高橋とよ/牧紀子/環Sanma no aji (1962) 岸田今日子.jpg秋刀魚の味 吉田輝雄.jpg三千世/岸田今日子/浅茅しのぶ/須賀不二男/菅原通済●公開:1962/11●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★☆)●併映:「東京物語」(小津安二郎)/「彼岸花」(小津安二郎)

吉田輝雄


"The Tofu Maker | The Films of Yasujiro Ozu/The six final films of Yasujiro Ozu"
1958年 彼岸花
1959年 お早よう
1959年 浮草
1960年 秋日和
1961年 小早川家の秋
1962年 秋刀魚の味

Music from the 2008 film Departures, 'Okuribito - Ending' written by Joe Hisaishi.

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「晩秋」と"裏返しの相似形"か。同じ手を使いながらも、ラストに女性の強さが感じられる。

映画 秋日和  dvd.jpg 映画 秋日和  ブルーレイ.png  映画 秋日和 女性3人.jpg
あの頃映画 秋刀魚の味 [DVD]」「「秋日和」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]

映画 秋日和  七回忌.jpg 亡き友・三輪の七回忌に集まった間宮(佐分利信)、田口(中村伸郎)、平山(北竜二)の3人は、未亡人の秋子(原節子)とその娘アヤ子(司葉子)と談笑するうち、年頃のアヤ子の結婚に話が至る。映画 秋日和  男3人.jpg3人は何とかアヤ子を結婚させようと動き始めるが、アヤ子は母親が一人になることが気がかりでなかなか結婚に踏み切れない。間宮の会社の後藤(佐田啓二)がアヤ子に似合いだと考えた3人は、アヤ子が嫁ぐ気になるためにはまず母親が再婚することが先決と考え、平山を再婚相手の候補として画策する。映画 秋日和  伊香保.jpgその動きを察したアヤ子は同僚の佐々木百合子(岡田茉莉子)に相談し、それを聞いて憤慨した百合子は間宮らを一堂に会させてやり込めるが、彼らの説明を聞いて百合子も納得し、母娘の結婚話が進むことになる。しかし秋子は娘と二人で出かけた伊香保温泉の宿で、自分は一人で生きていく決意だと伝え、娘の背中を押す―。

 小津安二郎監督の1960(昭和35)年製作作品で、「彼岸花」('58年)に続いての里見弴の原作であり、娘の結婚を巡る親子の感情のもつれと和解を淡々としたコメディタッチで描いています。

 なかなか結婚しない娘のことを気遣う親という、小津映画に繰り返し見られるモチーフを踏襲していますが、この作品では「親」が、「晩春」('49年)などで見られる「父親」ではなく「母親」になっていて、その母親を、「東京物語」('53年)で笠智衆の義理の娘を、「晩春」で笠智衆の実の娘を演じた原節子が演じているのが興味を引きます。

映画 秋日和 原2.jpg映画 秋日和 司.jpg 原節子は当時実年齢40歳にして45歳の未亡人秋子役で、娘役の司葉子は実年齢26歳で24歳のアヤ子を演じていますが、実年齢では14歳差ということになります。当時56歳の笠智衆が秋子の義兄(59歳)という設定であるため、「晩春」と比べると原節子が1世代上にスライドしたことになります。

 「晩春」においてもこの「秋日和」においても、親の再婚話を前にして娘が「不潔よ」「汚らしい」などという場面がありますが、「晩春」でそのセリフを言った原節子が、今度は娘・司葉子に言われる側に回っているわけです。その秋子が、再婚話に乗り気になったふりをして、アヤ子を嫁に行く気にさせるというのも、「晩春」で笠智衆が再婚話に乗ったふりをして原節子演じる娘・紀子を嫁に行かせるのと"同じ手"を使っている訳で、言わば"裏返しの相似形"になっている点が興味深いです。

映画 秋日和 原.jpg 但し、「晩春」のラストで笠智衆は、娘を嫁にやった後に家で独りになって林檎の皮を剥きながら深くうなだれますが、この作品の原節子演じる秋子は、娘の結婚式を終えてアパートに戻った後、独り静かに微笑を浮かべます。原節子が母親役を演じていることに注目が行きがちな作品ですが、「晩春」と比べるとこの点が大きく異なるように思います。

 秋子に再婚の意思が無いことは本人が最初から言っていることですが、この"笑み"によって、それは確信として最初からあり、途中で揺らぐことも無かったのだと、個人的には感じられました。平山(北竜二)が、妻に先立たれて不自由し、自分が秋子の再婚相手として話が進んでいると勘違いして有頂天になった挙句に、アヤ子の結婚式では一人しおれていたのとは対極的で、小津安二郎はこの作品で、男と女の強さの違いを描いたかのようにも思います。

秋日和 記念撮影.jpg秋日和 司葉子 佐田啓二.jpg また、「晩春」にも「秋刀魚の味」にも無い結婚式の場面がこの作品にあるのは(新郎新婦そろっての式当日の記念撮影シーンなど)、このアヤ子(司葉子)と後藤(佐田啓二)の結婚のみが、小津映画ではごく例外的に"幸せな結婚"として暗示されているためとの説もあるようです。個人的には、「お茶漬けの味」('52年)、「早春」('56年)などでもお馴染みのラーメン屋「三来元」で2人が並んでラーメンを食べる場面に、この先2人が上手くいくであろう予兆が示唆されているように思いました。

秋日和 司葉子.jpg映画 秋日和 岡田.jpg 名匠・小津の作品として気負って観たところで、話としては何てことない話のような気もしますが、司葉子を美しく撮っているほか、小津映画初出演の岡田茉莉子(当時27歳)の活き活きとした演技も印象的であり、特に百合子が秋子に会いに行く場面は、昭和前期型(原節子)と昭和後期型(岡田茉莉子)の異なる演出パターンが1つの場面に収まっているという点が興味深かったです。

秋日和 屋上から1.jpg秋日和 屋上から2.jpg 小津映画と言えば、鉄道の駅や走っている列車を映すところから始まるものが多いのですが(或いは作中に必ず駅や列秋日和9.jpg車が出てくる)、この作品は2年前に完成した東京タワーが冒頭に映し出されています。では列車は出てこないかというと、アヤ子や百合子が勤めるオフィスの屋上から東海道線が映し出されていました(その列車には、新婚旅行に向かう2人のかつての同僚が乗っている)。

 ローアングルは和室場面だけでなく、会社のオフィスでの場面もローアングルで撮っていたのだなあと改めて思わされましたが、そのオフィスの受付嬢役で出演していたのが、2年後に「秋刀魚の味」に主演することになる岩下志麻(当時19歳)でした。

映画 秋日和  チラシ.jpg IMDbの評価は「8.2」。海外でも高い評価を得ている作品と言えます。


「秋日和」●制作年:1960年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤Akibiyori(1960).jpg高順●原作:里見弴●時間:128分●出演:原節子/司葉子/佐分利信/岡田茉莉子/佐田啓二/中村伸郎/北竜二/桑野みゆき/三宅邦子/沢村貞子/三上真一郎/渡辺文雄/高橋とよ/十朱久雄/南美江/須賀不二男/桜むつ子/笠智衆/田代百合子/設楽幸嗣/千之赫子/岩佐分利信 秋日和.jpg下志麻●公開:1960/11●配給:松竹(評価:★★★☆)

Akibiyori(1960)
A widow tries to marry off her daughter with the help of her late husband's three friends.

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「老成」とは子供への心理的依存を断つことか。義理の関係の方が美しく描かれているのが興味深い。
東京物語 小津 チラシ2.jpg東京物語 小津 dvd.jpg 東京物語 紀子のアパート.jpg   
「東京物語」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター 【初回限定版】 [Blu-ray]」(2013)
「東京物語」チラシ

 尾道に暮らす平山周吉(笠智衆)とその妻のとみ(東山千栄子)は20年ぶりに東京に出掛け、成人した子供たちの家を訪ねるが、長男の幸一(山村聰)も長女の志げ(杉村春子)も仕事が忙しくて両親にかまってやれない。寂しい思いをする2人を慰めたのが、東京物語 小津 ラスト.jpg戦死した次男の妻の紀子(原節子)であり、彼女は仕事を休んで、2人を東京の観光名所に連れて行く。周吉ととみは、子供たちからはあまり温かく接してもらえなかったが、それでも満足した様子を見せて尾道へ帰る。しかし、その数日後に、とみが危篤状態であるとの電報が子供たちの元に届く。子供たちが尾道の実家に到着した翌日未明に、とみは死去する。とみの葬儀が終わった後、志げは次女の京子(香川香子)に形見の品をよこすよう催促する。その上、紀子以外の子供たちは、葬儀が終わるとそそくさと帰ってしまい、京子は憤慨するが、紀子は義兄姉を庇って若い京子を諭す。紀子が東京に帰る前に、周吉は上京した際の紀子の優しさに感謝を表す。がらんとした部屋で周吉は独り静かな尾道の海を眺めるのだった―。

東京物語11.JPG 小津安二郎監督の代表作とされ、日本映画を代表する傑作とされていますが、世界的な評価も高く、2012年には、英国映画協会発行の「サイト・アンド・サウンド」誌が発表した、世界の映画監督358人が投票で決める最も優れた映画に選ばれています(同誌は小津監督が同作品で「その技術を完璧の域に高め、家族と時間と喪失に関する非常に普遍的な映画をつくり上げた」と評価した)。最初に観た当時は、そんなにスゴイ作品なのかなという印象もありましたが、何回か観ていくうちに、自分の中でも評価が高くなってきた感じで、世評に影響されたというよりも、年齢のせいかなあ(若い人でもこの作品を絶賛する人は多いが)。

左から山村聡、三宅邦子、笠智衆、原節子、杉村春子、東山千栄子

 老年と壮年、地方と大都会、大家族と核家族、ゆったりと流れる時間と慌ただしく流れる時間―といった様々な対立項の位相の中で幾度となく論じられてきた作品ですが、小津自身は「親と子の成長を通して日本の家族制度がどう崩壊するかを描いてみた」と述懐しています。

甘えの周辺292.JPG土居健郎.png 個人的には、『甘えの構造』('71年/弘文堂)で知られた精神科医・土居健郎(1920-2009)が『「甘え」の周辺』('83年/弘文堂)でこの作品について書いていた論考がしっくりきました("論考"と言うより"感想"に近いもので、そう難しいことを言っているわけではないが)。
 土居健郎はその本の「老人と心の健康」という章で、「ある映画から」としてこの作品のストーリーを丁寧に紹介したうえで、「子どもは成長するときに、親と同一化する」(親を見習って成長する)が、「老人になると、どうも逆になるらしい」とし、今度は老人が子供に同一化することで、「この世におさらばする前に、子どもを通してもういっぺん人生をおさらいするのである」としています。その上で、この映画の場合、忙しそうにしている長男夫婦を見ると、それを見て両親たちは、自分たちが来て嬉しいことは嬉しいのだろうが、一方で邪魔になっていることも分かる―但し、自分たちも若い頃は同じだったではないかという思いがあるからこそ、両親たちはそれを責めないのではないかと。

東京物語 熱海.jpg 長女(杉村春子)の勧めで熱海に行って、旅館の部屋が麻雀部屋の真下で寝付かれなかったなど散々な目に遭って帰ってきたけれど、お金を出したのは子供達なので文句も言えず、逆に早く帰って来たことで文句を言われる始末だが、「宿無しになってしもうたなあ」とか言いながらも、それぞれ友達(十朱久雄・東野英治郎)の所と次男の未亡人(原節子)のアパートへと行く―。

 「人間欲を言えばきりがないからのう」と周吉(笠智衆)は言っていますが、両親が子供たちに失望させられたのは確かであるとしても、そこで子供たちは自分達とは異なる別の人格や生活を持った一個人であることを認識したことで、老夫婦も成長していると筆者(土居)は捉えているようです。

東京物語 小津 アパート.jpg この点について土居健郎は、映画評論家・佐藤忠男氏の「小津安二郎は、大人になることは、親に対して他人になっていくことである、と言おうとしているようだ」との指摘を非常に鋭いものとして評価しています(因みに、佐藤忠男の『完本・小津安二郎の芸術』(朝日文庫)は、小津映画に見られる「甘え」をしばしば指摘している。『小津安二郎の芸術』の単行本(朝日新聞社)の初版は1971年の刊行であり、これは『甘えの構造』の初版と同じ年である)。

 その上で筆者(土居)は、老人は老いて子供に依存的にならざるを得ない状況になる場合があるが、経済的に依存することがあっても心理的な依存からは離れていくべきであって、それが「老成・老熟」ということではないかとしています。

 一方で、この映画では、実の親子の関係と比べ、老夫婦と次男の未亡人(原節子)との関係は美しく描かれており、義理同士の関係の方が実の親子の関係より遥かに良い関係として描かれていることがこの作品の興味深い特徴かと思われます。

 この点について土居健郎は、義理の関係の方がお互いに遠慮があるために、我儘を言わずに良い関係が構築されることがあるとしています(土居は、グリム童話の「シンデレラ物語」の、姉妹の中で唯一心根の優しい娘シンデレラが"継子"であったことを指摘している)。

東京物語 小津 笠・原.jpg この映画で笠智衆は実年齢49歳にして70歳の平山周吉を演じたわけですが、その「老成」を演じ切っているのは見事。原節子演じる東京物語 小津 原号泣.jpg紀子がラスト近くで自分の複雑な思いを周吉に打ち明けて号泣する場面は名シーンとされていますが、紀子の全てを受け止める周吉の態度との相互作用からくる場面状況としての美しさと言えるのでは。
 「義理の関係の方がお互いに遠慮があるために、我儘を言わずに良い関係が構築されることがある」と土居健郎に言われてみれば、原節子はうっ伏して号泣するのではなく、こみ上げるものを抑えるような感じで泣いていて、この"節度"がこの作品の美しさを象徴していると言えるのかもしれません。

『東京物語』原節子、香川京子.gif 2013年が小津安二郎の生誕100周年だったため、貴田庄 著 『小津安二郎と「東京物語」』(ちくま文庫)梶村啓二 著 『「東京物語」と小津安二郎』(平凡社新書)など何冊か関連本が刊行されています。この辺りも機会があれば読んでみようかと思っています。


原節子/香川京子

東京物語21.jpg

Tôkyô monogatari(1953)
Tôkyô monogatari (1953).jpg An old couple visit their children and grandchildren in the city; but the children have little time for them.

        
Poster for Yasujiro Ozu Season at BFI Southbank.jpgPoster for Yasujiro Ozu Season at BFI Southbank (1 January - 28 February 2010)

東京物語 笠・東野.jpg東京物語 0.jpg「東京物語」●制作年:1953年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●時間:136分●出演:笠智衆/東山千榮子/原節子/香川京子/三宅邦子/杉村春子中村伸郎/山村聰/大坂志郎/十朱久雄/東野英治郎/長岡輝子/高橋豊子/桜むつ子/村瀬禪/安部徹/三谷幸子/毛利充宏/阿南純子/水木涼子/戸川美子/糸川三鷹オスカー.jpg三鷹オスカー  (2).jpg三鷹オスカー ー.jpg和広●公開:1953/11●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★★☆)●併映:「彼岸花」(小津安二郎)/「秋刀魚の味」(小津安二郎)
三鷹オスカー 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

《読書MEMO》
Sight & Sound誌オールタイム・ベスト2012年版.jpg"Sight & Sound"誌・映画監督による選出トップ10 (Director's Top 10 Films)(2012年版)の上位100作品
[姉妹版:同誌映画批評家によるオールタイム・ベスト50 (The Top 50 Greatest Films of All Time)(2012年版)
Sight & Sound誌オールタイム・ベスト2012.jpg 1位:『東京物語』"Tokyo Story"(1953/日) 監督:小津安二郎
 2位:『2001年宇宙の旅』"2001: A Space Odyssey"(1968/米・英) 監督:スタンリー・キューブリック
 2位:『市民ケーン』"Citizen Kane"(1941/米) 監督:オーソン・ウェルズ
 4位:『8 1/2』"8 1/2"(1963/伊) 監督:フェデリコ・フェリーニ
 5位:『タクシー・ドライバー』"Taxi Driver"(1976/米) 監督:マーティン・スコセッシ
 6位:『地獄の黙示録』"Apocalypse Now"(1979/米) 監督:フランシス・フォード・コッポラ
 7位:『ゴッドファーザー』"The Godfather"(1972/米) 監督:フランシス・フォード・コッポラ
 7位:『めまい』"Vertigo"(1958/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック
 9位:『鏡』"Mirror"(1974/ソ連) 監督:アンドレイ・タルコフスキー
 10位:『自転車泥棒』"Bicycle Thieves"(1948/伊) 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
 11位:『勝手にしやがれ』"Breathless"(1960/仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール
 12位:『レイジング・ブル』"Raging Bull"(1980/米) 監督:マーティン・スコセッシ
 13位:『仮面/ペルソナ』"Persona"(1966/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン
 13位:『大人は判ってくれない』"The 400 Blows"(1959/仏) 監督:フランソワ・トリュフォー
 13位:『アンドレイ・ルブリョフ』"Andrei Rublev"(1966/ソ連) 監督:アンドレイ・タルコフスキー
 16位:『ファニーとアレクサンデル』"Fanny and Alexander"(1984/スウェーデン)監督:イングマール・ベルイマン
 17位:『七人の侍』"Seven Samurai"(1954/日) 監督:黒澤明
 18位:『羅生門』"Rashomon"(1950/日) 監督:黒澤明
 19位:『バリー・リンドン』"Barry Lyndon"(1975/英・米) 監督:スタンリー・キューブリック
 19位:『奇跡』"Ordet"(1955/ベルギー・デンマーク) 監督:カール・ドライヤー
 21位:『バルタザールどこへ行く』"Au hasard Balthazar"(1966/仏・スウェーデン) 監督:ロベール・ブレッソン
 22位:『モダン・タイムス』"Modern Times"(1936/米) 監督:チャーリー・チャップリン
 22位:『アタラント号』"L'Atalante"(1934/仏) 監督:ジャン・ヴィゴ
 22位:『サンライズ』"Sunrise: A Song of Two Humans"(1927/米) 監督:F・W・ムルナウ
 22位:『ゲームの規則』"La Règle du jeu"(1939/仏) 監督:ジャン・ルノワール
 26位:『黒い罠』"Touch Of Evil"(1958/米) 監督:オーソン・ウェルズ
 26位:『狩人の夜』"The Night of the Hunter"(1955/米) 監督:チャールズ・ロートン
 26位:『アルジェの戦い』"The Battle of Algiers"(1966/伊・アルジェリア) 監督:ジッロ・ポンテコルヴォ
 26位:『道』"La Strada"(1954/伊) 監督:フェデリコ・フェリーニ
 30位:『ストーカー』"Stalker"(1979/ソ連) 監督:アンドレイ・タルコフスキー
 30位:『街の灯』"City Lights"(1931/米) 監督:チャーリー・チャップリン
 30位:『情事』"L'avventura"(1960/伊) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
 30位:『フェリーニのアマルコルド』"Amarcord"(1973/伊・仏) 監督:フェデリコ・フェリーニ
 30位:『奇跡の丘』"The Gospel According to St Matthew"(1964/伊・仏) 監督:ピエロ・パオロ・パゾリーニ
 30位:『ゴッドファーザー PartⅡ』"The Godfather Part II"(1974/米) 監督:フランシス・フォード・コッポラ
 30位:『炎628』"Come And See"(1985/ソ連) 監督:エレム・クリモフ
 37位:『クローズ・アップ』"Close-Up"(1990/イラン) 監督:アッバス・キアロスタミ
 37位:『お熱いのがお好き』"Some Like It Hot"(1959/米) 監督:ビリー・ワイルダー
 37位:『甘い生活』"La dolce vita"(1960/伊) 監督:フェデリコ・フェリーニ
 37位:『裁かるゝジャンヌ』"The Passion of Joan of Arc"(1927/仏)  監督:カール・ドライヤー
 37位:『プレイタイム』"Play Time"(1967/仏) 監督:ジャック・タチ
 37位:『抵抗(レジスタンス)/死刑囚の手記より』"A Man Escaped"(1956/仏) 監督:ロベール・ブレッソン
 37位:『ビリディアナ』"Viridiana"(1961/西・メキシコ) 監督:ルイス・ブニュエル
 44位:『ウエスタン』"Once Upon a Time in the West"(1968/伊・米) 監督:セルジオ・レオーネ
 44位:『軽蔑』"Le Mépris"(1963/仏・伊・米) 監督:ジャン=リュック・ゴダール
 44位:『アパートの鍵貸します』"The Apartment"(1960/米) 監督:ビリー・ワイルダー
 44位:『狼の時刻』"Hour of the Wolf"(1968/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン
 48位:『カッコーの巣の上で』"One Flew Over the Cuckoo's Nest"(1975/米) 監督:ミロス・フォアマン
 48位:『捜索者』"The Searchers"(1956/米) 監督:ジョン・フォード
 48位:『サイコ』"Psycho"(1960/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック
 48位:『カメラを持った男』"Man with a Movie Camera"(1929/ソ連) 監督:ジガ・ヴェルトフ
 48位:『SHOAH』"Shoah"(1985/仏) 監督:クロード・ランズマン
 48位:『アラビアのロレンス』"Lawrence Of Arabia"(1962/英) 監督:デイヴィッド・リーン
 48位:『太陽はひとりぼっち』"L'eclisse"(1962/伊・仏) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
 48位:『スリ』"Pickpocket"(1959/仏) 監督:ロベール・ブレッソン
 48位:『大地のうた』"Pather Panchali"(1955/印) 監督:サタジット・レイ
 48位:『裏窓』"Rear Window"(1954/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック
 48位:『グッドフェローズ』"Goodfellas"(1990/米) 監督:マーティン・スコセッシ
 59位:『欲望』"Blow Up"(1966/英) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
 59位:『暗殺の森』"The Conformist"(1970/伊・仏・西独) 監督:ベルナルド・ベルトルッチ
 59位:『アギーレ 神の怒り』"Aguirre, Wrath of God"(1972/西独) 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
 59位:『ガートルード』"Gertrud"(1964/デンマーク) 監督:カール・ドライヤー
 59位:『こわれゆく女』"A Woman Under the Influence"(1974/米) 監督:ジャン・カサヴェテス
 59位:『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』"The Good, the Bad and the Ugly"(1966/伊・米) 監督:セルジオ・レオーネ
 59位:『ブルー・ベルベット』"Blue Velvet"(1986/米) 監督:デイヴィッド・リンチ
 59位:『大いなる幻影』"La Grande Illusion"(1937/仏) 監督:ジャン・ルノワール
 67位:『地獄の逃避行』"Badlands"(1973/米) 監督:テレンス・マリック
 67位:『ブレードランナー』"Blade Runner"(1982/米) 監督:リドリー・スコット
 67位:『サンセット大通り』"Sunset Blvd."(1950/米) 監督:ビリー・ワイルダー
 67位:『雨月物語』"Ugetsu monogatari"(1953/日) 監督:溝口健二
 67位:『雨に唄えば』"Singin'in the Rain"(1951/米) 監督:スタンリー・ドーネン & ジーン・ケリー
 67位:『花様年華』"In the Mood for Love"(2000/香港) 監督:ウォン・カーウァイ
 67位:『イタリア旅行』"Journey to Italy"(1954/伊) 監督:ロベルト・ロッセリーニ
 67位:『女と男のいる舗道』"Vivre sa vie"(1962/仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール
 75位:『第七の封印』"The Seventh Seal"(1957/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン
 75位:『隠された記憶』"Hidden"(2004/仏・オーストリア・伊・独) 監督:ミヒャエル・ハネケ
 75位:『戦艦ポチョムキン』"Battleship Potemkin"(1925/ソ連) 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン
 75位:『M』"M"(1931/独) 監督:フリッツ・ラング
 75位:『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』"There Will Be Blood"(2007/米) 監督:ポール・トーマス・アンダーソン
 75位:『シャイニング』"The Shining"(1980/英) 監督:スタンリー・キューブリック
 75位:『キートンの大列車追跡』"The General"(1926/米) 監督:バスター・キートン & クライド・ブラックマン
 75位:『マルホランド・ドライブ』"Mulholland Dr."(2001/米) 監督:デイヴィッド・リンチ
 75位:『時計じかけのオレンジ』"A Clockwork Orange"(1971/米) 監督:スタンリー・キューブリック
 75位:『不安と魂』"Fear Eats the Soul"(1974/西独) 監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
 75位:『ケス』"Kes"(1969/英) 監督:ケン・ローチ
 75位:『ハズバンズ』"Husbands"(1975/米) 監督:ジョン・カサヴェテス
 75位:『ワイルドバンチ』"The Wild Bunch"(1969/米) 監督:サム・ペキンパー
 75位:『ソドムの市』"Salo, or The 120 Days of Sodom"(1975/伊・仏) 監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
 75位:『JAWS/ジョーズ』"Jaws"(1975/米) 監督:スティーヴン・スピルバーグ
 75位:『忘れられた人々』"Los Olvidados"(1950/メキシコ) 監督:ルイス・ブニュエル
 91位:『気狂いピエロ』"Pierrot le fou"(1965/仏・伊) 監督:ジャン=リュック・ゴダール
 91位:『アンダルシアの犬』"Un chien andalou"(1928/仏) 監督:ルイス・ブニュエル
 91位:『チャイナタウン』"Chinatown"(1974/米) 監督:ロマン・ポランスキー
 91位:『ママと娼婦』"La Maman et la putain"(1973/仏) 監督:ジャン・ユスターシュ
 91位:『美しき仕事』"Beau Travail"(1998/仏) 監督:クレール・ドゥニ
 91位:『オープニング・ナイト』"Opening Night"(1977/米) 監督:ジョン・カサヴェテス
 91位:『黄金狂時代』"The Gold Rush"(1925/米) 監督:チャーリー・チャップリン
 91位:『新学期・操行ゼロ』"Zero de Conduite"(1933/仏) 監督:ジャン・ヴィゴ
 91位:『ディア・ハンター』"The Deer Hunter"(1977/米) 監督:マイケル・チミノ
 91位:『ラルジャン』"L' argent"(1983/仏・スイス) 監督:ロベール・ブレッソン

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優れたカメラ効果を生んでいるシーンが多くあり、特にロケシーンは貴重な映像の連続。

天国と地獄 vhs.jpg 2天国と地獄 dvd .jpg 天国と地獄 dvd.jpg
天国と地獄 [VHS]」「天国と地獄 [監督:黒澤明][三船敏郎] [レンタル落ち]」「天国と地獄<普及版> [DVD]
Tengoku to jigoku(1963)
天国と地獄 ポスター.jpg天国と地獄 チラシ.jpgTengoku to jigoku(1963).jpg 製靴会社ナショナル・シューズの常務・権藤金吾(三船敏郎)の元に、「子供を攫った」という男からの電話が入る。そこに息子の純(江木俊夫)が現れ、いたずらと思っていると、住み込み運転手である青木(佐田豊)の息子・進一がいない。誘拐犯は子供を間違えたのだが、そのまま身代金3千万円を権藤に要求したのだった。妻(香川京子)や青木は身代金の支払いを権藤に懇願するが、権藤にはそれができない事情があった。権藤は密かに自社株を買占め、近く開かれる株主総会で経営の実権を手に入れようと計画を進めていた。翌日までに大阪へ5千万円送金しなければ必要としている株が揃わず、地位も財産も、すべて失うことになる。権藤は誘拐犯の要求を無視しようとするが、その逡巡を見透かした秘書(三橋達也)に裏切られたため、一転、身代金を払うことを決意する。3千万円を入れた鞄を持って、犯人が指定した特急こだまに乗り込む。が、同乗した刑事が見たところ車内に子供はいない。すると電話がかかり、犯人から「酒匂川の鉄橋が過ぎたところで、身代金が入ったカバンを窓から投げ落とせ」と指示される。特急の窓は開かないと刑事が驚くも、洗面所の窓が、犯人の指定した鞄の厚み7センチだけ開くのだった。権藤は指示に従い、その後進一は無事に解放されたものの、身代金は奪われ犯人も逃走してしまう。非凡な知能犯の真の目的は―。

中村伸郎・伊藤雄之助・田崎潤・三船敏郎(手前)/三船敏郎・香川京子
天国と地獄 中村伸郎 .jpg天国と地獄 香川京子.jpg 今観てもつくづく凄い映画だと思います。前半部分の権藤邸での息詰まる舞台演劇のような緊張感と(製靴会社買収攻防の持株数の話はエド・マクべインの原作に基づいている)、後半の犯人と警察及び権藤との攻防のダイナミックな展開の対比がいいです天国と地獄  01.jpg。主演の三船敏郎もいいけれど、戸倉警部役の日本版FBIのような仲代達矢もいい。この映画の仲代達矢は、前半部分では観客の視線を代弁しているような面もあり、演出構成の巧さというのもあるかと思いますが、「用心棒」('61年)での役柄よりも個人的には好みです。そして、犯人・竹内銀次郎を演じる当時は新人であった山崎努もいいです。

天国と地獄12.jpg 更に脇役陣として、戸倉警部の上司に志村喬と藤田進、刑事に木村功や加藤武、名古屋章、土屋嘉男がいて、新聞記者には千秋実、三井浩次、北村和夫がいて、権藤の社内の敵に伊藤雄之助、田崎潤、中村伸郎、工場の靴職人に東野英次郎、ゴミ焼却炉の作業員に藤原釜足、麻薬街には菅井きんといった具合に、細かい処でベテランが出ていて、しかもその内のかなりを黒澤組の常連が固めていたことが窺えます。

天国と地獄  11.jpgこだま 151系電車.jpg 「特急こだま号」の車内での撮影は、実際と同じ12両編成の特急こだま号が借り切られ、他の列車の運行の妨げにならないよう特別ダイヤで運行させていますが、限られた時間内で(当時は東京―大阪間6時間ぐらい。新幹線だったらもっとキツかっただろなあ)、しかも車中だけでなく、酒匂川での身代金の受け渡しシーンなど殆ど撮り直しがきかない条件の中、よく撮ったものだなあと。役者や撮影スタッフの緊張感がそのまま画面に表れていて、それが、緊迫した臨場感を生んでいるように思います。

天国と地獄 煙突.jpg 煙突から赤い煙が上がるシーンなども衝撃的でした。モノクロ画面に合成着色するというこの手法は、「椿三十郎」('62年)で椿の花だけカラーで映すというアイデアが実行出来なかったのをこの作品で実現したものだそうで、「踊る大捜査線 THE MOVIE」('98年)でもオマージュとして引用されました。その他にも、カメラのアングルやカメラワークなどで優れた効果を生んでいるシーンが多くあり、この作品を改めて観ると、最近の邦画はもっと先人の知恵を活かして工夫した方がいいのではないかと思ったりもします。

天国と地獄  03.jpg 山崎努演じる犯人・竹内銀次郎が歩き回る横浜の街中や店の様子も、「生きる」(52年)で志村喬が伊藤雄之助に引っ張り回されて徘徊する歓楽街の様と同様にシズル感があり、雰囲気は出ていたように思います。一方で、昭和38年頃でまだこんなアヘン窟みたいな所があったの?と思わせなくもないですが、当時の週刊誌記事(下)によると、横浜に"ハマの麻薬地帯"と呼ばれる地域が実際にあったようです。

天国と地獄  01.jpg この映画、最初に観た時の個人的評価は5つ星が満点として星3つ半という、どういうわけかそう高くないものHigh and Low(Tengoku to Jigoku).jpgになっていて、おそらく、ラストの権藤と竹内の面会シーンが自分の中で解題出来なかったのが評価のマイナス要因だったのではないかと思いますが、今観ると、自分なりに分かる気がします。
 竹内は権藤の苦しんでいる様を確認したくて彼に面会を求めたけれど、権藤は持ち前の叩き上げ精神で既に新たな一歩を踏み出していたわけで、竹内もそこまでは権藤という人物を把握していなかったわけかと。権藤は、なぜ竹内が自分を憎むのかさえ理解できず、この面会は完全に竹内の空振りで終わっています(そのことが同時に竹内の精神的瓦解に繋がる)。
天国と地獄  04.jpg 黒澤明がこの作品を撮った動機の一つに、児童誘拐犯罪の刑罰の軽さに対する憤りもあったと言われていますが、黒澤監督はここでは竹内を(死刑に対する彼の怯えも含め)容赦なく無残極まりない「敗者」として描いており、ピカレスクロマンとは一線を画しているように思いました。

天国と地獄  13.jpg天国と地獄  14.jpg この映画は'63年3月1日の公開であり、今年('13年)オリンピックの東京での2度目の開催(2020年)が決まりましたが、前の東京オリンピック('64年)の前年の公開ということになります(新幹線は未だ開通していない)。そ~かあ、今年でこの作品が公開されてから丁度50年になるのかあと。今観ると、とりわけロケシーンは貴重な映像の連続のように思え、時間の経過と共に価値が増してくる作品かもしれません。半世紀と言う年月の経過に一つの節目というものを感じますが、公開50年目に当たるこの1年間、地上波ではどの局でも放映されなかったようです(現実に誘拐事件が発生していることとの関係(配慮)もあるのか)。

佐田豊.jpg 権藤邸の運転手・青木がここまで責任を感じて自ら犯人の犯行拠点を探ろうとするものかという印象も最初に観た時はありましたが、見直してみて、時代背景というよりは、権藤を裏切る会社幹部との対比での描かれ方だったように思いました。その運転手役の佐田豊は1911年生まれで、2010年時点で健在であることが確認されているとのことです。今(2013年12月)現在も存命中であれば102歳になっており、かつての東宝専属俳優の中でも最長老の人物ということになります。
     
「サンデー毎日」1962(昭和37)年
ハマの麻薬地帯.jpg

天国と地獄63.jpg 天国と地獄107.jpg
山崎努/菅井きん(麻薬中毒患者)
菅井きん 天国と地獄.jpg 菅井きん.jpg 菅井きん(1926-2018/享年92

天国と地獄  02.jpg天国と地獄  15.jpg「天国と地獄」●制作年:1963年●監督:黒澤明●制作:東宝/黒澤プロダクション●脚本:黒澤明/菊島隆三/久板栄二郎/小国英雄●撮影:斎藤孝雄/中井朝一●音楽:佐藤志村 喬 in 天国と地獄.jpg東野英治郎 in 天国と地獄.jpg勝●原作:エド・マクベイン「キングの身代金」●時間:143分●出演:三船敏郎/仲代達矢/山崎努/香川京子/佐田豊/三橋達也/木村功/志村喬/石山健二郎/伊藤雄之助/中村伸郎/田崎潤/名古屋章/江木俊夫.jpg藤田進/田口精一/千秋実/土天国と地獄64.jpg屋嘉男/三井浩次/北村和夫/東野英次郎/藤原釜足/菅井きん/江木俊夫/島津雅彦/山茶花究/浜村純/西村晃/沢村いき雄/大滝秀治(ノンクレジット)●公開:1963/03●配大滝秀治 天国と地獄.jpg給:東宝●最初に観た場所:池袋・文芸地下(80-07-03)●2回目:北千住・シネマ池袋文芸地下 地図.jpg文芸坐.jpgブルースタジオ(11-01-22)(評価:★★★★★)●併映(1回目):「三十六人の乗客」(杉江敏男) 池袋・文芸地下 1997(平成9)年3月6日閉館。

《読書MEMO》
小林久三.jpg小林久三(推理作家,1935-2006)の推す推理・サスペンス映画ベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))
①天国と地獄('63年、黒澤明)
②飢餓海峡('64年、内田吐夢)
③砂の器('74年、野村芳太郎)
④新幹線大爆破('75年、佐藤純彌)
⑤黒い画集・あるサラリーマンの証言('60年、堀川弘道)
⑥張込み('57年、野村芳太郎)
⑦犬神家の一族('76年、市川昆)
⑧天城超え('83年、三村晴彦)
⑨黒の試走車('62年、増村保造)
⑩赤いハンカチ('64年、舛田利雄)

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小市民的な役がハマっていた小林桂樹。「清張原作」と「橋本忍脚本」を比べてみるのもいい。

黒い画集 あるサラリーマンの証言 ポスター.jpg黒い画集 あるサラリーマンの証言.jpg黒い画集 あるサラリーマンの証言 dvd.jpg 黒い画集 新潮文庫.jpg 黒い画集.jpg
黒い画集 あるサラリーマンの証言 [DVD]」『黒い画集 (新潮文庫)

証言0.bmp ある会社の課長(小林桂樹)が妻に秘密で会社の同じ課の部下だった女性(原佐和子)を愛人として囲っていて、ある日、新大久保の愛人に住まわせているアパートでの密会の帰りに、自宅近所に住む保険外交員の男(織田政雄)と新大久保駅付近で偶然出会ってすれ違いざまについ目礼を交わしてしまうということがあった。その何日か後、その外交員は全く別の場所で起きた若妻殺しの容疑者として逮捕され、警察が課長のところに職質に来るが、課長は何も知らないとシラを切る―。

証言1.bmp その保険外交員が犯人でないことは、愛人との密会の際に(それがちょうど事件が起きた日でもあった)彼に出会った課長にはわかっているわけですが、保険外交員のアリバイ立証の求めにより法廷証言を求められても、課長は自らの保身のために外交員とは会わなかったと否認してしまったわけで、しかしながら、愛人についつい彼にはアリバイがあるとの事実を話したのが人づてに伝わり、事件を担当している弁護士の耳にそれが入ります。そして―。

証言2.bmp 映画の前半部分は原作と同じですが、原作は文庫で20ページほどしかなく、課長の秘密が外部に漏れた後の話は簡潔な後日譚で締め括られているのに対し、映画はその後の話として原作を膨らませており、愛人の若い恋人の男がヤクザに殺され、愛人との関係をネタに彼に強請られていた課長が若者殺害の容疑者になるという"原作には無い事件"を1つ絡ませています(愛人に恋人がいて、その恋人の男に愛人が課長の秘密を喋ってしまうのは原作と同じだが、第2の殺人事件は原作には無い)。

 昨年('10年)9月に亡くなった小林桂樹主演。小林桂樹はそれまでもサラリーマンものに多く出ているだけに、こうした小市民的な役がハマっているなあと("小市民"でも愛人を囲うことができる点に、古き良き(?)時代を思わせるが)。

 ヤクザ役の小池朝雄とか刑事役の西村晃とかも渋い演技を見せており、この作品はビデオも絶版になっていて観る機会が限られると思いますが、時々CS放送などで放映されることがあるので、一度、「松本清張の原作」と「橋本忍の脚本」との比較という意味で観てみるのもいいかと思います。また、何度かテレビドラマ化されており、'92年の渡瀬恒彦版は結構よく出来ていたように思います。

小林桂樹/原佐和子

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(VHS).jpg 因みに、松本清張本人が評価していた映画化作品は「張込み」('58年/松竹)、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」、「砂の器」('78年/松竹)だけであったといい(3作とも脚本は橋本忍)、特に「張込み」と「黒い画集 あるサラリーマンの証言」については、 「映画化で一番いいのは『張込み』『黒い画集 あるサラリーマンの証言』だ。両方とも短編小説の映画化で、映画化っていうのは、短編を提供して、作る側がそこから得た発想で自由にやってくれるといいのができる。この2本は原作を超えてる。あれが映画だよ」と述べたとのことです。(白井佳夫・川又昴対談「松本清張の小説映画化の秘密」(『松本清黒い画集 あるサラリーマンの証言      .jpg張研究』第1号(1996年/砂書房)、白井佳夫・堀川弘通・西村雄一郎対談「証言・映画『黒い画集・あるサラリーマンの証言』」(『松本清張研究』第3号(1997年/砂書房))。

黒い画集 あるサラリーマンの証言    .jpg「黒い画集 あるサラリーマンの証言」●制作年:1960年●監督:堀川弘通●製作:大塚和/高島幸夫●脚本:橋本忍●撮影:中井朝一●原作:松本清張「証言」●時間:95分●出演:小林桂樹/中北千枝子/平山瑛子/依田宣/原佐和子/江原達治/中丸忠雄/西村晃/平田昭黒い画集 あるサラリーマンの証言」新大久保.jpg彦/小文芸坐.jpg池朝雄/織田政雄/菅井きん/小西瑠美/児玉清/中村伸郎/小栗一也/佐田豊/三津田健●公開:1960/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸地下 (88-01-23)(評価★★★☆)

黒い画集・証言119eb.jpg松本清張サスペンス「黒い画集・証言」.jpg「黒い画集・証言」(TV)●演出:松原信吾●制作:斎藤守恒/浜井誠/林悦子●脚本:大藪郁子●音楽:茶畑三男●原作:松本清張「証言―黒い画集」●出演:渡瀬恒彦/岡江久美子/有森也実/佐藤B作/段田安則/高樹澪/山口健次/高松いく/志水季里子/渡辺いっけい/須藤雅宏/高山千草/住若博之/宮崎達也/小林勝彦/布施木昌之/梶周平/太田敦之/中江沙樹/児玉頼信/森富士夫/三上剛仙/安威宗治/桝田徳寿/武田俊彦/岩永茂/小林賢二/下川真理子/黒田国彦●放映:1992/10(全1回)●放送局:TBS


黒い画集 ある遭難 ポスタード.jpg   黒い画集 第二話 寒流 ps1.jpg黒い画集 第二話 寒流 ps2.jpg

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日本のホームドラマの基盤がこんなところで着々と築かれていたのだなあと。斎藤達雄、栗島すみ子がいい。

淑女は何を忘れたか vhs.jpg淑女は何を忘れたか1.bmp 流れる dvd .jpg
 「淑女は何を忘れたか [VHS]」(斎藤達雄/栗島すみ子/桑野通子)「流れる [DVD]

ozu  'What Did the Lady Forget?'.jpg節子(桑野通子)と岡田(佐野周二).jpg 大学の医学部教授の小宮(斎藤達雄)は日頃から、口うるさい妻の時子(栗島すみ子)に頭が上がらなかったが、それは、夫婦円満を保つ彼流の秘訣でもあった。そんなある日、大阪より時子の姪・節子(桑野通子)が上京、小宮家にやって来る。自分とは対照的に思ったままに行動する彼女に触発された小宮は、ある揉め事を契機に初めて時子に平手打ちをくらわせてしまう―。

 トーキー時代に入ってもしばらくサイレント映画にこだわり続けた小津安二郎監督の、「一人息子」('36年)に続くトーキー第2作で、サイレント映画時代の彼のコメディ的要素と戦後の家庭劇の要素が混ざった作品のように思えました。

 それまで下町の庶民を題材にすることが多かった小津ですが、この作品では一転して舞台を山の手へ移し(丁度この頃に小津自身も深川から高輪へ転居している)、アメリカ映画から得られた素養をふんだんに生かしたモダニズム溢れるソフィストケティッド・コメディに仕上がっています。

淑女は何を忘れたか3.jpg 31際の若さで夭逝した桑野通子が演じる(当時22歳)姪の節子は、いわば当時のモダンガールといったところでしょうか。未婚だがタバコも酒も嗜むし、車の運転にも興味がある活発な彼女は、妻の尻に敷かれる小宮を見て、夫権の復活を唱えて盛んに小宮をけしかける―そこへ時子がいきなり現れたりして、小宮が節子を叱るフリをする、時子が去ると節子が小宮を軽く小突くなどといった具合に、小宮と節子の遣り取りが、爆笑を誘うというものではないですが、クスッと笑えるものとなっています。

ozu  'What Did the Lady Forget?' 2.jpg この作品の斎藤達雄はいいです。サイレント時代の小津作品では、もてない大学生(「若い日」)やしがないサラリーマン(「生まれてはみたけれど」)を演じたりもしていましたが、この作品で「ドクトル」と世間から呼ばれるインテリを演じてもしっくりきています(独りきりになると結構このドクトルは剽軽だったりするが)。

ozu  'What Did the Lady Forget?' 3.jpg 有閑マダム3人組(栗島すみ子、吉川満子、飯田蝶子)の会話なども、それまでの小津作品には無かったシークエンスですが、関西弁で話しているためかどことなくほんわかした感じがあり、それでいて畳み掛けるところは畳み掛けるという、トーキー2作目にしてこの自在な会話のテンポの操り方には、トーキー参入に際しての小津の周到な事前準備が感じられました。

淑女は何を忘れたか4.jpg その他に、小宮家で家庭教師をすることになる大学の助手・岡田を佐野周二が演じていますが、息子・関口宏より相当濃いハンサム顔に似合わず、この作品では教え子の友達(突貫小僧)に先に算数の問題を解かれてしまって面目を失うというとぼけた役回り。

 小宮は、妻にはゴルフに行ったことにしながら、節子の東京探訪に付き合わされて、その晩は岡田の下宿に泊めてもらいますが、アリバイ工作のためにゴルフ仲間の会社役員(坂本武)に投函を託した葉書に書かれた当日の天候が全く違っていたことに気付いて慌てふためくも、まあ、大丈夫でしょうと、岡田はのんびり構えてしまっています(結局、そのことで小宮の工作は時子にばれてしまう)。

淑女は何を忘れたか2.jpg 岡田と節子の間で何かあるのかなと思いましたが、これは"夫婦"がテーマの映画なのでそうはならず、結局、「雨降れば地固まる」みたいな映画だったんだなあと。

 まあ、全体として他愛の無い話と言えばそうなのですが、こうした細部のユーモラスなシチュエーションの組み入れ方もそうですし、ストーリーの落とし所からも、ああ、日本のホームドラマの基盤がこんなところで着々と築かれていたのだなあと思わせるものがありました。

流れる 栗島すみ子.jpg流れる 栗島すみ子2.jpg また、この作品は、日本映画史上初のスター女優と言われた栗島すみ子(1902-1987)の映画界引退作品でもあり、さすがに堂々たる存在感を見せています。彼女はその後、成瀬巳喜男監督の「流れる」('56年/東宝)で一度だけスクリーンに復帰、田中絹代(1909-1977)、山田五十鈴(1917-2012)、杉村春子(1906-1997)、高峰秀子(1924-2010)らと共演しましたが、それら大女優の更に先輩格だったわけで、まさに貫禄充分!
栗島すみ子、高峰秀子、山田五十鈴、田中絹代
『お嬢さん』栗島すみ子、岡田時彦.jpg そもそも、成瀬巳喜男の監督デビュー(1930年)よりも栗島すみ子の映画デビューの方が先であり(1921年)、年齢も彼女の方が3歳上。成瀬監督を「ミキちゃん」と呼び、「流れる」撮影の際は、「あたしはミキちゃんを信用して来てるのだから」と、セリフを一切覚えず現場入りしたという話があり、小津安二郎の「お嬢さん」('30年/松竹蒲田)で岡田時彦と共演したりしていることから、自分の父親が自分が1歳の時に亡くなったためその記憶が無い岡田茉莉子(1933-)には、「あなたのお父さんは美男子の中でもずば抜けて美男子だった」と「流れる」の撮影現場で話してやっていたそうな。

栗島すみ子、岡田時彦 in「お嬢さん」('30年/モノクロ。フィルムは現存せず)

流れる 映画ポスター.jpg それにしても「流れる」の配役陣は、今になった見れば見るほどスゴいなあという感じ。大川端にある零落する置屋を住込みのお手伝いさん(田中絹代)の視点から描いた作品でしたが、先に挙げた田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子ら大物女優に加えて、岡田茉莉子、中北千枝子、賀原夏子らが脇を固めるという布陣で、成瀬巳喜男作品は個人的には合う合わないがあって、世間で評価されるほど自分としての評価は高くないのですが(若い頃に観たというのもあるかもしれない)、この作品も、ストーリーよりも一人一人の演技が印象に残った感じでした。

流れる 杉村春子.jpg 杉村春子を除いて皆、着物の着こなしがいい、との評がどこかにありましたが、年増芸者を演じた杉村春子は、あれはあれで役に合わせた着こなしだっだのでしょう。個人的には、水野の女将を演じた栗島すみ子の演技は"別格"として、当時、田中絹代・山田五十鈴・高峰秀子の三大女優より一段格下だった杉村春子が一番上手いのではないかと思いました(高峰秀子は子役としてのデビューは早かったが、1940流れる 1シーン.jpg年、豊田四郎監督の「小島の春」に出演した杉村春子の演技にショックを受けて演技開眼したという。杉村春流れる 岡田茉莉子.jpg子を"格下"と言ったら失礼にあたるか)。岡田茉莉子などは実に若々しく、和服を着ると昭和タイプの美女という感じでしたが(着物を着た際にスレンダーで足長に見える)、演技そのものは当時はまだ大先輩たちの域には全然達していなかったのではないでしょうか。機会があれば、また観直してみたいと思います。

岡田茉莉子
 
神保町シアター.jpg桑野通子.jpg「淑女は何を忘れたか」●制作年:1937年●監督:小津安二郎●脚本:伏見晁/ジェームス槇(小津安二郎)●撮影:茂原英雄/厚田雄春●音楽:伊藤冝二●時間:71分●出演:斎藤達雄/栗島すみ子/桑野通子/佐野周二/飯田蝶子/坂本武/吉川満子/葉山正雄/突貫小僧/上原謙●公開:1937/03●配給:松竹大船●最初に観た場所:ACTミニシアター(90-08-05)●2回目:神保町シアター(10-12-11)(評価:★★★)●併映(1回目):「お早よう」(小津安二郎) 神保町シアター 2007(平成19)年7月14日オープン
桑野 通子 (1915-1946/享年31)

淑女は何を忘れたか vhs.jpg


流れる%20(1956年).jpg流れる [DVD]「流れる」●制作年:1956年●監流れる dvd .jpg映画「流れる」.jpg督: 成瀬巳喜男●製作:藤本真澄●脚本:田中澄江/井手俊郎●撮影:玉井正夫●音楽:斎藤一郎●原作:幸田文「流れる」●時間:117分●出演:田中絹代山田五十鈴高峰秀子杉村春子/岡流れる09.jpg 流れる杉村春子.jpg山田五十鈴 流れる.jpg田茉莉子/中北千枝子/賀原夏子/栗島すみ子(特別出演)/泉千代/加東大介/宮口精二/仲谷昇/中村伸郎●公開:1956/11●配給:東宝(評価:★★★☆)
左奥:栗島すみ子・右手前:田中絹代   杉村春子/山田五十鈴

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ストーリーが良く、特撮水準も高かった「サンダ対ガイラ」。マジ恐かった「海底大戦争」。

サンダ対ガイラ.jpg サンダ対ガイラ dvd縦.jpg 海底大戦争.jpg 海底大戦争2.jpg キイハンター(TVドラマ).jpg
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ [DVD]」/「海底大戦争 [DVD]」(千葉真一/ペギー・ニール)/「キイハンター BEST SELECTION BOX [DVD]

 ある嵐の夜、三浦半島沖を航行する漁船が大ダコに襲撃される。ただ1人生き残った操舵手の男は、「仲間は全員、大タコに続いて海から現れたフランケンシュタインらしき怪物に襲われ、喰われてしまった」と証言し、引き揚げられた乗組員の衣服は噛み砕かれて吐きだしたかのような状態だった―。

海外版予告編

サンダ対ガイラ4.jpgサンダ対ガイラ3.jpg 山に住む優しいフランケンシュタイン「サンダ」と、海に住む凶暴なフランケンシュタイン「ガイラ」の兄弟対決で(実際には"兄弟"ではなく同じ遺伝子を持つ"分身"。今で言うところの「クローン」)、古事記の海幸彦・山幸彦神話がベースになっていることはすぐに分かるのですが、それでも観ていてぐっとのめり込むぐらいストーリーはよく出来ています。   「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966/07/東宝)

「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」.jpg 兄サンダが弟ガイラを"叱る"(?)のは、ガイラが人間を喰ってしまったからで、小さい頃に人間に育てられたサンダには(この作品は、前年に公開された「フランケンシュタイン対地底怪獣」('65年)のの姉妹編となっている)、人間への恩義があるのか。とは言え、兄弟の情もあったりして...不肖の弟を持ったサンダは悩ましいところです。

ジャングル大帝・サンダ対ガイラ.gif 個人的には、田舎の小学校に転校した頃、学校の体育館で(所謂"体育座り"して)観せられたのが「フランケンシュタイン対地底怪獣」で、その姉妹編であるこの作品はちゃんと(?)劇場でを観た記憶がありますが(「ジャングル大帝」('66年)と併映だった)、当時はストーリー展開よりも、山からぬっと現われた巨大フランケンシュタインの迫力や、羽田空港の滑走路をゴム毬が弾むように駆けていく2匹の躍動感が印象に残りました。

i水野久美.jpg水野久美02.jpg水野久美1.jpg 今顧みても、特撮の水準は歴代怪獣映画の中ではなかなかのものではなかった思われ、この日米合作映画はアメリカでは今でもカルト的な人気があるそうです。古事記神話のことは彼らはおそらく知らないと思いますが、水野久美についてはアメリカにも熱烈なファンがいると聞きます。
   
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ3.jpgラス・タンブリン.jpg 「ウエスト・サイド物語」('61年)でジェット団の首領リフを演じたラス・タンブリンが科学者ポール役で出ていたりしますが、タンブリンはいつも定時の撮影後は共に来日した妻とホテルへ直帰し、食事の交歓の誘いも一切断るなど、「怪獣大戦争」('65年)などに出演したニック・アダムスがスタッフや俳優たちと積極的に交わり溶け込もうとしたのとは対照的な態度をとり、撮影現場でもまったく演技を合わせようとせず、土屋嘉男によれば、共演した水野久美はタンブリンの態度に怒ってヒステリーを起こしたこともあったとのことです。
  
「海底大戦争」(1966/07 東映)千葉真一/ペギー・ニール           
海底大戦争 1966 2.jpgペギー・二ール.jpg 同じ頃に、 「海底大戦争」('66年)海底大戦争3.jpgいうのも"観せられ"、これは東宝ではなく東映映画で、原案はSF作家の福島正実(1929-1976/享年47)、監督は佐藤肇(1929-1995)。これも日米合作映画であり、出演者は外国人の方が多いのですが、主演は千葉真一でした。 

海底大戦争 1966e2.jpg これはマジ恐かったあ。特にマッドサイエンティストに捕まったペギー・ニール演じるヒロインの外国人女性記者が半魚人にされかけるところ。皮膚が半分ウロコ状になってもうだめかと...。

 この作品を観せられちょっとトラウマ気味になった生徒もいたみたいで、自分自身もその後大人になって「大井武蔵野館」あたりでだと思いますが観る機会はあったものの、あまり再見する気にならなかったのは、当時その1人だったからかもしれません(今、予告編などを見るとそれほどでもなく、正直、ちょっとクエンティン・タランティーノ.jpg評価不能という感じか)。これもまた、クエンティン・タランティーノ監督など海外にも熱烈なファンが多い作品なのですが...。

 その後、同年代の人と昔学校で課外授業の一環として観た映画の話になったことがあり、自分がフランケンシュタインものや「海底大戦争」を学校の体育館で観ていた時期と同じ頃には、「サウンド・オブ・ミュージック」とかを、ちゃんとした映画館で観たとのことでした。

 同じ"課外授業"としての映画鑑賞でありながら、内容は随分違うなあと思い、田舎の学校の先生の教育的意図は何だったのかなあと不思議に思ったりしましたが、ビクトル・エリセ「ミツバチのささやき」('73年/スペイン)でも、子供らが集まる公民館で「フランケンシュタイン」を上映する場面があったから、あれはあれで、日本のビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」1.bmpビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」2.bmpミツバチのささやき.jpg一田舎に限ったものではなく、ある種の"世界標準"だったのでしょうか。
ミツバチのささやき HDマスター [DVD]

 
キ―ハンター 2.jpgキーハンター 千葉真一.bmp 因みに、千葉真一は、この「海底大戦争」に出ていた頃まではアクション映画やヤクザ映画への出演が主で、出演本数の割には一般にはそれほど知名度の高い俳優ではありませんでしたが、「海底大戦争」出演の2年後の'68(昭和43)年からスタートしたテレビドラマ「キイハンター」に主演、一躍人気スター俳優となり、番組自体も視聴率は30パーセントを超え、当初1年の放送予定だったのが5年も続き、放映回数は262回にまで達しました(これ、丹波哲郎の代表的な作品でもあると思うのだが)。

 野際陽子の歌うテーマ曲「非常のライセンス」が懐かしいですが、この曲、千葉真一も歌っていなかったかなあ。
ウフン ラムール(愛)
アー ラモール(死)
ああ あの日愛した人の
墓に花をたむける明日
ああ 昨日恋して燃えて
今日は敵と味方の二人
恋も夢も希望も捨てて
命かける非情の掟
ああ だから 
ああ もっと
もっと愛して
(作詞:佐藤純彌/作曲:菊池俊輔)
                             
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ  03.jpgサンダ対ガイラ ワイドポスター.jpg「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」 ●制作年:1966年●監督:本多猪四郎●特撮監督:円谷英二●製作:田中友幸/角田フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ0.jpg健一郎●脚本:馬淵薫/本多猪四郎●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●時間:88分●出演:ラス・タンブリン(スチュワート博士)/佐原健二(間宮雄三)/水野久美(戸川アケミ)/伊藤久哉(泉田課長)/田島義文(平井)/田崎潤(橋本陸将補)/中村伸郎(喜田教授)/大川平八郎(医師)/桐野洋雄(風間二佐)/山本廉(亀田三郎)/堤康久/岡部正(記者)/勝部義夫(記者)/伊藤実(記者)/岡豊(記者)/渋谷英サンダ対ガイラ .jpg男(記者)/橘正晃(記者)/関田裕(サンダ)/中島春雄(ガイラ)/小宮康弘(子供のフランケンシュタイン)/森今日子(看護婦)/沢村いき雄(年配の漁夫)/広瀬正一(山のガイド)/伊原徳(潜水夫)/堤康久(士官)●公開:1966/07●配給:東宝 (評価:★★★☆)

中村伸郎(喜田教授)・佐原健二(間宮雄三)・本多猪四郎監督

海底大戦争 19661.jpg「海底大戦争」 ●制作年:1966年●監督:佐藤肇●企画:亀田耕司/吉野誠一●脚本:大津皓一●撮影:下村海底大戦争 tiba.jpg海底大戦争 ビデオ.jpg和夫●音楽:菊池俊輔 ●原案:福島正実●時間:84分●出演:千葉真一/ペギー・ニール/フランツ・グルーバー/アンドリュー・ヒューズ/エリック・ニールセン/マイク・ダーニン/ビバリー・ケラー/ブラウン・ガン/三重街恒二/室田日出男/菅沼正●公開:1966/07●配給:東映 (評価:★★★?)
                       「キイハンター BEST SELECTION BOX [DVD]
キイハンター主題歌 「非情のライセンス」.jpgキイハンター①.jpgキイハンター dvd.jpgキーハンター.jpg「KEY HUNTER キイハンター」●監督:井上昭/堀長文/深作欣二/佐藤肇ほか●制作:小野耕人/近藤キイハンター 野際陽子.jpg野際陽子.jpg照男●脚本:深作欣二/池内金男/小山内美江子ほか●音楽:菊池俊輔(主題歌:野際陽子「キイハンター 非情のライセンス」●原作:都筑道夫●出演:千葉真一/野際陽子/丹波哲郎/谷隼人/大川栄子/川口浩/安岡力也/松岡きっこ/川地民夫/野添ひとみ●放映:1968/04~1973/04(全262回)●放送局:TBS

第1回放送:1968年4月6日
(吹雪一郎(川口浩)は第60回放送から加入)

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地上で繰り広げられるドタバタ劇はともかく、宇宙怪獣ドゴラはなかなかいい。若林映子も...。

宇宙大怪獣ドゴラ.jpg ドゴラ vhs.jpg 宇宙大~4.JPG  007は二度死ぬ ps.jpg 若林映子.jpg
ポスター/「宇宙大怪獣 ドゴラ [VHS]」「宇宙大怪獣ドゴラ [DVD]」「007は二度死ぬ [DVD]」/若林映子(あきこ)

宇宙大怪獣 ドゴラ ポスター.jpg  日本上空を周回中のテレビ中継衛星が突然消え、時を同じくして世界各国の宝石店が襲われて多量のダイヤモンドが盗まれる事件が頻発し、警視庁は宝石強盗団一味の仕業として捜査を開始、警視庁の駒井刑事(夏木陽介)は、ダイヤの研究を行なっている宗方博士(中村伸郎)のもとを訪れるが、マークという謎の外国人(ダン・ユマ)に襲撃されてダイヤを奪われ、そのマークも強盗団にダイヤを奪われる。一方の強盗団も、盗んだダイヤを積んだトラックが突如浮遊して落下するという異常事態に見舞われる―。

宇宙怪獣ドゴラ2.jpg 1960年代半ばの東宝映画は、「ゴジラ」シリーズの全盛期でドゴラ 夏木陽介.jpgしたが、この頃東宝はゴジラを主役にした映画ばかりではなく、こんなのも撮っていました。こんなのと言ってもどう言えば良いのか。クラゲのお化けみたいな巨大宇宙生物が出てくる作品です。

夏木陽介/ダン・ユマ

 この巨大クラゲ、エネルギー補給のために炭素を必要とし、そのためダイヤや石炭を地上から吸い上げるようにして補給するということで、この「ドゴラ」と命名された巨大クラゲが、ボタ山から石炭を吸い上げるシーンはなかなか見応えがあります(今観れば、水槽に落とした黒い粉末の塊が拡散していく様を、逆モーションで撮っていたのが分かるが、それにしても大した創意工夫)。

宇宙大怪獣ドゴラ  サントラ.jpg宇宙第怪獣ドゴラ 若戸大橋.jpg クラゲの全体像がなかなか見えないのもイマジネーションを駆りたてるし、実はこのクラゲ、ビニール製だそうですが、CGの無い時代にジェームズ・キャメロンの「アビス」('89年/米)顔負けの映像作りをしているなあと感心しました(「ドゴラ」の原案イメージは小松崎茂)。

宇宙大怪獣ドゴラ」サントラ

 映画公開の前年に完成したばかりの「東洋一の吊り橋」若戸大橋を破壊するなど、その"活躍"は派手ですが、結局、終盤になってもドゴラがあまり画面に出てこなかったのがやや残念か。

ドゴラ 若林.jpg 映画の大部分は、地上で繰り広げられる警察と強盗団のダイヤ争奪・奪回戦に費やされ、盗んだのがダイヤだと思ったら氷砂糖だったとか、ドタバタ喜劇調でもあります。主演の夏木陽介や、3年後に「007は二度死ぬ」('67年)でボンドガールとなる若林映子(あきこ)(警官をして「動くベッド」と言わしめる妖艶さ)などの演技陣は真剣に演じているのですが...。

Uchû daikaijû Dogora(1964).jpg宇宙大怪獣ドゴラ.jpg 今観ると、ストーリー映画としては星3つに届くか届かないですが、ドゴラだけはなかなかいいと思います。この作品を最初に観たのは学校の「課外授業」としてで、併映は家城巳代治監督、池田秀一主演の「路傍の石」('64年/東映)でしたが、その後の授業で感想文を書けと言われて「路傍の石」ではなく「ドゴラ」の方の感想文を書きました。 
Uchû daikaijû Dogora(1964)
 特撮映画としてもユニークだし、スタジオセット撮影と併せて実際に筑豊産炭地区でもロケをしているため、石炭産業華やかなりし頃の当地の様子や石炭積出港であった若松港の様子を収めた貴重な記録映像としても鑑賞できます。
007は二度死ぬ ニューオータニ.jpg007は二度死ぬ チラシ.jpg 因みに、「007は二度死ぬ」('67年)も、そのロケ地は都内では旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニなど、地方では神戸港、 姫路城、鹿児島県坊津町などに及び、昭和40年代前半の日本各所の風景を映し出しているという点では貴重かもしれません。

藤山陽子(昌代(宗方博士の秘書))・中村伸郎(宗方博士)/若林 映子(女スパイ・夏井浜子)
宇宙大怪獣ドゴラ 藤山陽子.jpg 宇宙大怪獣ドゴラ 若林映子.jpg

若林 映子
「宇宙大怪獣ドゴラ」若林映子.jpg若林映子5.jpgドゴラ 夏木.jpg「宇宙大怪獣ドゴラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●特撮監督:円谷英二●製作:田中友幸/田実泰dogora 中村・藤田.jpg良●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●時間:81分●出演:夏木陽介/ダン・ユマ/小泉博/藤山陽子/若林映子藤田進中村伸郎/河津清三郎/田島義文/天本英世/田崎潤/加藤春哉/桐野洋雄/若松明/篠原正記/堤康久/岩本弘司/津田光男/熊谷卓三/当銀長太郎/広瀬正一/中山豊/上村幸之●公開:1964/08●配給:東宝 (評価:★★★☆)●併映:「路傍の石」(家城巳代治)

ドゴラ vhs.jpg

007は二度死ぬ 若林映子.jpg「007は二度死ぬ」●原題:YOU ONLY LIVE TWICE」●制作年:1967年●監督:ルイス・ギルバート●製作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:ロアルド・ダール●撮影:フレディ・ヤング●主題歌:You Only Live Twice(唄:ナンシー・シナトラ)●原作:イアン・フレミング●時間:117分●出演:ショーン・コネリー/丹波哲郎/若林映子/浜美枝/ドナルド・プレザンス/島田テル/ カリン・ドール/チャールズ・グレイ/ツァイ・チン/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェリン/バーナード・リー●公開:1967/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価:★★★☆)
007は二度死ぬ」 若林映子

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迷宮「玉の井」を三重構造で描くことで、作品自体を迷宮化している。

ぼく東綺譚.jpg 濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)_.jpg 東綺譚.jpg 「墨東綺譚」の挿画(木村荘八).jpg
ぼく東綺譚 (新潮文庫)』『濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)』『墨東綺譚 (角川文庫)』朝日新聞連載の『濹東綺譚』の挿画(木村荘八)

『濹東綺譚』1937 2.jpg濹東綺譚(ぼくとうきだん) 永井荷風.jpg 1937(昭和12)年に発表された永井荷風(1879‐1959)58歳の頃の作品で(朝日新聞連載)、向島玉の井の私娼街に取材に行った58歳の作家〈わたくし〉大江匡と、26歳の娼婦・お雪の出会いから別れまでの短い期間の出来事を描いています(誰かが「新藤ポンコツ版」と呼んでいたが...)。

永井荷風『濹東綺譚』昭和12年初版(装幀:永井荷風/挿画:木村荘八)

永井 荷風.gif 昭和初期の下町情緒たっぷりで、浅草から向島まで散策する主人公を(よく歩く!)、地図で追いながら読むのもいいですが(「吉原」ではなく「玉の井」だから「濹東」)、「玉の井」と名のつくものが地図上から殆ど抹消されているためわかりにくいかも知れません。でも、土地勘が無くとも、流麗な筆致の描写を通して、梅雨から秋にかけての江戸名残りの季節風物が堪能できます。

永井荷風

 〈わたくし〉は、種田という男を主人公に玉の井を舞台にした小説を書いているところという設定なっていて、その小説が劇中劇のような形で進行していき、では〈わたくし〉=〈作者(荷風)〉かと言うと必ずしもそうではなく、時に〈わたくし〉が小説論を述べたかと思うと、今度は〈作者〉が小説論的注釈をしたりと、〈作者(荷風)〉―〈わたくし(大江)〉―〈書きかけ小説の主人公(種田)〉という凝った三重構造になっており、加えて、文末に「作者贅言(ぜいげん)」というエッセイ風の文章(「贅言」の「贅」は贅肉の贅であり、要するに作者の無駄口という意味なのだが、辛辣な社会批評となっている)が付いているからややこしいと言えばややこしいかもしれません(「〈わたくし(大江)」としたが、大江が驟雨がきっかけで偶然お雪と知り合ったという設定にコメントしている「わたくし」は明らかに永井荷風自身ではないか)。

「濹東綺譚」.jpg濹東綺譚 映画49.jpg 1960年に豊田四郎監督、山本富士子、芥川比呂志主演で映画化されていますが、「濹東綺譚」を軸に「失踪」と「荷風日記」を組合せて八住利雄が脚色しています。〈大江〉濹東綺譚 豊田四郎監督.jpgが〈種田〉と同一化されていて(主人公は種田)、種田はお雪の求婚に対して返事を曖昧にし、やがてそうこうしているうちにお雪は病気になって死を待つばかりとなります。お雪のキャラクターが明るいものになっているため、結末が却って切ないものとなっています。白黒映画で玉の井のセットがよくできていて、途中に芥川比呂志による原作の朗読が入り、ラストでは〈荷風〉と思しき人物が玉の井を散策(徘徊?)しています。
豊田四郎監督「濹東綺譚」(1960)主演:山本富士子・芥川比呂志
新藤兼人監督「濹東綺譚」(1992)オープニング/主演:墨田ユキ・津川雅彦
映画濹東綺譚.jpg映画濹東綺譚 (2).jpg 更に1992年に新藤兼人監督、墨田ユキ、津川雅彦出演で映画化されていますが、こちらは未見。やはり、〈作者〉-〈大江〉-〈種田〉のややこしい三重構造を映像化するのは無理と考えたのか、津川雅彦演じる主人公が〈荷風〉そのものになっているようで、〈荷風〉はお雪と結婚の約束をするが、東京大空襲で生き別れになる―といった結末のようです。

 荷風は外国語学校除籍という学歴しか無かったものの慶應義塾大学の教授を務めたりして、素養的にはインテリですが、この小説では衒学的記述は少なく、むしろ「玉の井」をラビラント(迷宮)として描くと同時に小説の構成も迷宮的にしているというアナロジイに、独特のインテリジェンスを感じます。

 高級官僚の子に生まれながらドロップアウトし、外遊先でも娼館に通ったというのも面白いですが、この"色街小説"は日華事変の年に新聞連載しているわけで、私小説批判で知られた中村光夫も、一見単なる私小説にも見えるこの作品を、「時勢の勢いに対する痛烈な批判者の立場を終始くずさぬ作者の姿勢が、圧政のなかで口を封じられた知識階級の読者に、一脈の清涼感を与えた」と評価しています。「作者贅言」では、そうした全体主義的ムードを批判する反骨精神とともに、「玉の井」への〈江戸風情〉的愛着と急変する「銀座」界隈への文化的失望が直接的に表わされています。

偏奇館.jpg 作品中に、前年廃止された京成白髭線の玉ノ井駅の記述がありますが、「玉の井」も今はほとんどその痕跡がありません。また、荷風が中年期を過ごした麻布の家(『断腸亭日乗』に出てくる偏奇館)も、現在の地下鉄「六本木一丁目」駅前の「泉ガーデンタワー」裏手に当たり、当然のことながら家跡どころか当時の街の面影もまったくありません(一応、こじんまりとした石碑はある)。

濹東綺譚 岩波文庫 挿画16.jpg濹東綺譚 岩波文庫 挿画6.jpg 因みに、この作品は個人的には今回「新潮文庫」版で読み返しましたが、木村荘八の挿画が50葉以上掲載されている「岩波文庫」版が改版されて読み易くなったので、そちらがお奨めです。

挿画:木村荘八


濹東綺譚on.jpg濹東綺譚 映画49.jpg濹東綺譚 映画 1960 00.jpg濹東綺譚 00.jpg濹東綺譚 映画 1960ド.jpg「濹東綺譚」●制作年:1960年●監督:豊田四郎●製作:佐藤一郎●脚本:八住利雄●撮影:玉井正夫●音楽:團伊玖磨●原作:永井荷風「濹東綺譚」「失踪」「荷風日記」●時間:120分●出演:山本富士子/芥川比呂志/新珠三千代/織田新太郎/東野英治郎/乙羽信子/織田政雄/若宮忠三郎/三戸部スエ/戸川暁子/宮口精二/賀原夏子/松村達雄/淡路恵子/高友子/日高澄子/原知佐子/岸田今日子/塩沢くるみ/長岡輝子/北城真記子/中村伸郎/須永康夫/田辺元/田中志幸/中原成男/名古屋章/守田比呂也/加藤寿八/黒岩竜彦/瀬良明/中村芝鶴●公開:1960/08●配給:東宝(評価:★★★★)

(下) 新珠三千代/芥川比呂志 
『墨東綺譚』スチル02.jpg『墨東綺譚』スチル01.jpg

『墨東綺譚』スチル03.jpg

新藤兼人監督「濹東綺譚」(1992)主演:墨田ユキ・津川雅彦
濹東綺譚_11.jpg  

山本富士子:渡辺邦男監督「忠臣蔵」(1958)/小津安二郎監督「彼岸花」(1958)/豊田四郎監督「濹東綺譚」(1960)/市川昆監督「黒い十人の女」(1961)/市川昆監督「私は二歳」(1962)
山本富士子『忠臣蔵(1958).jpg 彼岸花 映画 浪花.jpg 濹東綺譚 映画 1960 01.jpg 黒い十人の女 山本富士子.jpg 私は二歳 映画 .jpg

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫) 200_.jpg墨東綺譚 (角川文庫)0_.jpgぼく東綺譚 新潮文庫.jpg 【1947年文庫化・1991年改版[岩波文庫]/1951年再文庫化・1978年改版[新潮文庫]/1959年再文庫化・1992年改版[角川文庫]/1977年再文庫化[旺文社文庫(『濹東綺譚・ひかげの花』)]/1991年・2001年復刻版[岩波書店]/2009年再文庫化年改版[角川文庫]】
ぼく東綺譚 (新潮文庫)』(新カバー版)
墨東綺譚 (角川文庫)』(新解説・新装版)
濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)』(木村荘八挿画入り)

《読書MEMO》
●「濹東綺譚」...1937(昭和12)年発表

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「華麗なる一族」1974年.jpg 古さを感じさせない。政財界にわたっての丹念な取材の跡が窺える。

山崎豊子 華麗なる一族.jpg  華麗なる一族 上巻.jpg 華麗なる一族 中巻.jpg 華麗なる一族 下巻.jpg 
華麗なる一族 (1980年) (新潮文庫)』 /新潮文庫(上・中・下)〔改訂版〕/映画「華麗なる一族」('74年/東宝)

華麗なる一族 dvd.jpg華麗なる一族.jpg 万俵財閥の当主で阪神銀行頭取の万俵大介の野望を軸に、それに翻弄される一族の姿を金融業界の内幕に絡めて描いた作品で、'73(昭和48)年の発表ですが、「金融再編」に伴う「銀行の合併問題」がモチーフになっているため、あまり古さを感じさせません。

 小説の冒頭は、志摩半島の英虞湾を望む一流ホテルでの主人公一族の豪奢な正月晩餐会から始まりますが、作者は舞台のモデルにした「志摩観光ホテル」のレストランから夕陽がどう見えるかまで取材しに行ったそうで、そうした丹念な取材は、銀行内部のみでなく、政治家や大蔵省など政財界に広く及んでいて、物語にリアルな厚みを増しています。 
華麗なる一族 [DVD]」/映画パンフレット                  

 大介の野望は、上位銀行の専務と結託してその銀行を併呑する、所謂「小が大を呑む」というもので(かつて神戸銀行が太陽銀行を吸収合併し、"名"前だけ「太陽神戸」として"実"の方をとった出来事がベースになっている)、大介の政財界への働きかけは、「政財癒着は良くない」という綺麗事のレベルを遥かに凌駕する凄まじさで、目的のためには親友も、長男さえも切り捨てる―。

 タイトルの「華麗なる一族」という言葉が、政界との癒着強化のための閨閥づくりを指すとともに、長男・鉄平の暗い過去の出生の秘密を表す反語にもなっています。

 同じ山崎豊子原作の映画化作品「白い巨塔」が大ヒットしたためか、この作品は豪華キャストで映画化されましたが('74年・山本薩夫((1910-1983))監華麗なる一族 仲代.jpg督)、オールキャストとは言え、その中で圧倒的に存在感を際立たせているのは佐分利信であり、その佐分利演じる万俵大介と鉄平(仲代達矢)の"暗い血"にまつわる確執に重きが華麗なる一族 田宮二郎.jpg置かれていたような感じもしました。また、鉄平の最期が、大介の女婿を演じた田宮二郎の実人生での自殺方法と同じだったことに思い当たりますが、鉄平役は実は田宮二郎がやりたかった役だったそうです。

華麗なる一族 目黒.jpg華麗なる一族 佐分利.jpg どうしても、こういう複雑なストーリーの話が映画化されると、情緒的な方向に重きがいってしまったりセンセーショナルな部分が強調されるのは仕方がありませんが(大介の「妻妾同衾」シーンなども当時話題になった)、それなりの力作でした。"いい人"がとにかく苛められる(相手方銀行の頭取の二谷英明とか)点で「白い巨塔」に共通するものを改めて感じたのと、農家の預金獲得のために、ワイシャツ姿で終日稲刈りまでする銀行員なども描いていて「銀行員って意外と泥臭いなあ」と思わされたりもしました。
                    映画「華麗なる一族 [VHS]」 ビデオ(上・下)
華麗なる一族2.gif華麗なる一族 ビデオ.jpg「華麗なる一族」●制作年:1974年●製作:芸苑社●監督:山本薩夫●製作:佐藤一郎/市川喜一/森岡道夫●脚本:山田信夫●音楽:佐藤勝●原作:山崎豊子●時間:210分●出演:佐分利信仲代達矢/月丘夢路/京マチ子/酒井和歌子/目黒祐樹/田宮二郎/二谷英明/香川京子/山本陽子/中山麻里/小沢栄太郎/滝沢修/河津清三郎/大空真弓/北大路欣也/志村喬中村伸郎加藤嘉/神山繁/平田昭彦/細川俊夫/大滝秀治/北林谷栄/西村晃/金田龍之介/小林昭二/花沢徳衛/鈴木瑞穂(ナレーション華麗なる一族 京マチ子 .pngも担当)/嵯峨善兵/荒木道子/小夜福子/中村哲/武内亨/梅野泰靖/浜田寅彦/花布辰男/下川辰平/伊東光一/田武謙三/若宮大祐/青木富夫/五藤雅博/生井健夫/白井鋭/夏木章/笠井一彦/守田比呂也/華麗なる一族 京マチ子.jpg鳥居功靖/堺美紀子/横田楊子/川口節子/森三平太/千田隼生/金親保雄/南治/麻里とも恵/木島一郎/坂巻祥子/隅田一男/久遠利三/鈴木昭生/記平佳枝/東静子/加納桂●劇場公開:1974/01●配給:東宝●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山本薩夫監督追悼特集) (84-01-08) (評価★★★☆) 京マチ子(万俵大介の愛人・高須相子)
華麗なる一族 saburi.jpg滝沢修 華麗なる一族.jpg 大滝秀治 華麗なる一族.jpg 中村 伸郎 華麗なる一族.jpg 華麗なる一族 志村.jpg
佐分利信(阪神銀行頭取・万俵大介)/滝沢修(長期開発銀行頭華麗なる一族 (1974東宝)katou .jpg取・宮本之三)/大滝秀治(社民党代議士・荒尾留七)/中村伸郎(日銀総裁・松平公之)/志村喬(大阪重工社長・安田太左衛門)/仲代達矢(阪神特殊鋼専務・万俵鉄平)/加藤嘉(阪神特殊鋼常務・銭高)
華麗なる一族3.jpg月丘夢路(万俵大介の妻・万俵寧子)/香川京子(長女・美馬一子)/京マチ子(家庭教師・高須相子)/山本陽子(長男鉄平の妻・万俵早苗)/中山麻理(次男銀平の妻)/酒井和歌子(次女・万俵二子)


 【1973年単行本・1979年改訂[新潮社(上・中・下)]/1980年文庫化・2003年改訂[新潮文庫(上・中・下)]】

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医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせた傑作。もとは財前の勝利で終わる話だった。
白い巨塔 1965.jpg 白い巨塔 1.jpg 白い巨塔 2.jpg 白い巨塔 3.jpg kyotou2.jpg 白い巨塔 1シーン.jpg
白い巨塔 (1965年)』 『新潮文庫「白い巨塔 全5巻セット」』  映画「白い巨塔 [DVD]」['66年]
映画「白い巨塔」('66年/大映) 田宮二郎・田村高廣
映画「白い巨塔」('66年/大映).jpg この作品は何度かテレビドラマ化ざれ、佐藤慶('67年/テレビ朝日系/全26回)、田宮二郎('78年/フジテレビ系/全31回)、村上弘明(90年/テレビ朝日系/全2回)などが主役の財前五郎を演じています。更に最近では、'03年にフジテレビ系で唐沢寿明主演のもの(全21回)がありましたが、断トツの視聴率だったのは記憶に新しいところ(唐沢寿明版の最終回の視聴率32.1%で、'78年の田宮二郎版の最終回31.4%を上回る数字だった)。
                   
白い巨塔 66.jpg銀座シネパトス.jpg しかしながら個人的には、やっぱりテレビ版よりは、原作を読む前に観た山本薩夫(1910-1983)監督による映画化作品(田宮二郎主演)が鮮烈な印象として残っており、また観たいと思っていたら、'04年にニュープリント版が銀座シネパトス(東銀座・三原橋の地下にあるこの映画館は、しばしば昔の貴重な作品を上映する。2013年3月31日閉館)で公開されたため、約20年ぶりに劇場で観ることができました。これも全て今回の唐沢寿明版のヒットのお蔭でしょうか。

映画 「白い巨塔」('66年/モノクロ)

白い巨塔」(テレビ 1978.jpg田宮二郎自殺.jpg田宮二郎.jpg 田宮二郎(1935-1978/享年43)は、31歳の時にこの小説と巡り会って主人公・財前五郎に惚れ込み、作者の山崎豊子氏に懇願してその役を得たとのこと。その演技が原作者に認められ、それがテレビでも財前医師を演じることに繋がっていますが、テレビドラマの方も好評を博し、撮影終盤の頃、ドラマでの愛人役の太地喜和子(1943‐1992/享年48)との対談が週刊誌に掲載されていた記憶があります。それがまさか、ヘミングウェイと同じ方法でライフル自殺するとは思わなかった...。クイズ番組「タイム・ショック」の司会とかもやっていたのに(司会者は自殺しないなどという法則はないのだが)。

テレビドラマ版 「白い巨塔」('78~'79年/カラー)
 田宮二郎は30代前半の頃から躁うつ病を発症したらしく、テレビ版の撮影当初は躁状態で自らロケ地を探したりも田宮二郎 .jpgしていたそうです。それが終盤に入ってうつ状態になり、リハーサル中に泣き出すこともあったりしたのを、周囲が励ましながら撮影を進めたそうで、彼が自殺したのはテレビドラマの全収録が終わった日でした(実現が困難な事業に多額の投資をし、借金に追われて「俺はマフィアに命を狙われている」とか、あり得ない妄想を抱くようになっていた)。当時週刊誌で見た大地喜和子とのにこやかな対談は、実際に行われたものなのだろうか。

『続・白い巨塔』('69年/新潮社 )/『白い巨塔(全)』('94年/新潮社改版版)/映画「白い巨塔」('66年/大映)
白い巨塔 ラスト.jpg続白い巨塔.jpg白い巨塔1994.jpg
 もともとの『白い巨塔』('65年/新潮社)は、'63年から'65年にかけて「サンデー毎日」に連載されたもので、熾烈な教授選挙戦を征して教授になった財前五郎が、権力者の後ろ盾のもとに、彼の医療ミスを告発する里見医師らを駆逐するところで終わっています。映画('66年)も教授選をクライマックスに、主人公の財前が第一外科教授に昇進するまでを描いていて、原作・映画ともに、医学界の権威主義に対する強烈な風刺や批判となっていますが、権力志向の強い男のピカレスク・ロマンとしてもみることができます。しかしながら、こうした「悪が勝つ」終わり方に世間から批判があり、そのため『続・白い巨塔』('69年)が書かかれたということです('94年新装版では、正・続が2段組全1冊に収められている)。

白い巨塔 新潮文庫.jpg 文庫の方は、当初は正(上下2巻)・続に分かれていましたが、'93年の改定で「続」も含め『白い巨塔』として全3巻になり、更に'02年の改定で全5巻になっています(「続」という概念がある時期から消されているともとれる)。最近のテレビドラマもそれに準拠し、財前が亡くなるところまで撮り切っていますが、文庫で読むときは、もともとは今ある全5巻のうち、第3巻までで終わる話だったことを意識してみるのも良いのではないでしょうか。

 因みに、いくつかあるテレビ版で、原作の正編に相当する部分のみで終わっているのは、「続」が書かれる前にドラマ化された佐藤慶版('67年/テレビ朝日系/全26回)のみです。田宮二郎の主演のものも、テレビ版の方は唐沢寿明版と同じく、主人公が癌で亡くなるところまで撮っています。田宮二郎テレビ版では、田宮二郎自身が台本に自分で書いた遺書を挿入し、末期がんのがん患者になり切ったとのこと、ストレッチャーに乗る遺体役での演技をラッシュで確認して、本人は満足していたそうです(その場面が放送される前に自殺したわけだが)。

白い巨塔 .jpgkyotou1.jpg この小説は、続編も含め、単純な勧善懲悪物語にしていないところがこの著者の凄いところです。財前はむしろ、周囲に翻弄されるあやつり人形のような存在で(苦学生上がりで医師になったのに、才能を上司に認められないというのは辛いだろうなあ)、彼をとりまく人々の中に、医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせている(読んでると、権力を持たなければ何も出来ないではないかという気にさえさせられる)一方、個々には、権力に憧れる気持ちと真実を追究し正義を全うしようという気持ちが入り混じっているような"普通の人"も多く出てきて、この辺りがこの小説の充実したリアリティに繋がっていると思います。
 
 山崎豊子(1924-2013
山崎豊子.png白い巨塔 東野.jpg白い巨塔 加藤嘉.jpg「白い巨塔」●制作年:1966年●製作:永田雅一(大映)●監督:山本薩夫●脚本:橋本忍●音楽:池野成●原作:山崎白い巨塔 船越 英二.jpg白い巨塔 滝沢修.jpg豊子●時間:150分●出演:田宮二郎/東野英治郎/小沢栄太郎/小川真由美/岸輝子/加藤嘉田村高廣船越英ニ滝沢修藤村志保/下条正巳/石山健二郎/加藤武/里見明凡太朗/鈴木瑞穂/清水将夫/下條正巳/須賀不二男/早白い巨塔 小川真由美.jpg白い巨塔 藤村志保  .jpg川雄三/高原駿雄/杉田康/夏木章/潮万太郎/北原義郎/長谷川待子/瀧花久子/平井岐代子/村田扶実子/竹村洋介/小山内淳/伊東光一/南方伸夫/河原侃二/山根圭一郎/浜世津子/白井玲子/天池仁美/岡崎夏子/赤沢未知子/福原真理子●劇場公開:1966/10●配給:大映●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山甦れ!東急名画座3.jpg甦れ!東急名画座1.jpg東急文化会館.jpg東急名画座 1.jpg本薩夫監督追悼特集) (83-12-05)●2回目:銀座シネパトス (04-05-02) (評価★★★★)
東急名画座 (東急文化会館6F、1986年〜渋谷東急2) 2003(平成15)年6月30日閉館

銀座シネパトス.jpg銀座東映.jpg銀座シネパトス.jpg銀座シネパトス 1952(昭和27)年、ニュース映画の専門館「テアトルニュース」開館、1954(昭和29)年「銀座東映」開館、1967(昭和42)年10月3日「テアトルニュース」跡地に「銀座地球座」開館、1968(昭和43)年9銀座シネパトスs.jpg月1日「銀座東映」跡地に「銀座名画座」開館、1988(昭和63)年7月1日「銀座地球座」→「銀座シネパトス1」、「銀座名画座」→「銀座シネパトス2」「銀座シネパトス3」に改装。2013(平成25)年3月31日閉館
     
              

白い巨塔」(テレビ 1978.jpgテレビドラマ 白い巨塔 田宮二郎  dvd.jpg白い巨塔 ドラマ 1.jpg「白い巨塔」(テレビ・田宮二郎版)●演出:小林俊一●制作:小林俊一●脚本:鈴木尚之●音楽:渡辺岳夫●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:田宮二郎/生田悦子/太地白い巨塔 大滝秀治2.jpgTV版「白い巨塔」中村伸郎.jpg喜和子/島田陽子/上村香子/高橋長英/中村伸郎/小沢栄太郎/河原崎長一郎/山本學/金子信雄/清水章吾/大滝秀治佐分利信加藤嘉/渡辺文雄/戸浦六宏/関川慎二/東恵美子/中村玉緒/井上孝雄/小松方正/西村晃/曽我廼家明蝶/渡辺文雄/米倉斉加年/岡田英次/中北千枝子/児玉清/北村和夫/小林昭二●放映:1978/06~1979/01(全31回)●放送局:フジテレビ
白い巨塔 佐分利 信.jpg白い巨塔 (1978年のテレビドラマ) 大河内 加藤.jpg白い巨塔 戸浦六宏.jpg中村伸郎(浪速大学医学部第一外科教授→近畿労災病院院長・東貞蔵)/大滝秀治(大阪地方裁判所裁判長)/佐分利信(東都大学医学部第一外科教授教授・船尾悟)/加藤嘉(浪速大学医学部病理学教授・大河内清作)/戸浦六宏(浪速大学医学部産婦人科教授・葉山優夫)
『白い巨塔_1331.jpeg
    
白い巨塔 ドラマ 2003.jpg「白い巨塔」ドラマ  .jpg「白い巨塔」(テレビ・唐沢寿明版)●演出:西谷弘/河野圭太/村上正典/岩田和行●制作:大多亮●脚本:井上由美子●音楽:加古隆●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:唐沢寿明/江口洋介/西田敏行/佐々木蔵之介/上川隆也/伊藤英明/及川光博/石坂浩二/伊武雅刀/黒木瞳/矢田亜希子/水野真紀/高畑淳子/沢村一樹/片岡孝太郎/若村麻由美●放映:2003/10~2004/03(全21回)●放送局:フジテレビ


 【1965年単行本・1969年続編・1973年改訂・1994年新装版[新潮社]/1978年文庫化(上・下・続)・1993年改訂(全3巻)・2002年再改定(全5巻)[新潮文庫]】

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黒い画集  寒流                 .jpg "映画化率""ドラマ化率"の高い短編集。映像と比べるのも面白い。

黒い画集 松本 清張.jpg 黒い画集 新潮文庫.jpg 黒い画集.jpg 黒い画集 あるサラリーマンの証言 dvd.jpg証言32.bmp
黒い画集―全一冊決定版 (1960年) (カッパ・ノベルス)』 『黒い画集 (新潮文庫)』 「黒い画集 あるサラリーマンの証言 [DVD]」(出演:小林桂樹/原佐和子) 映画「黒い画集 第二話 寒流」(出演:池部良/新珠三千代)
黒い画集 全三集』(2005年12月刊行(1959年刊行の復刻版))
黒い画集 00_.jpg黒い画集2.png黒い画集3.png カッパ・ノベルズの「全一冊決定版」は、'59(昭和34)年4月から翌年7月にかけて光文社から刊行された『黒い画集』第1巻〜第3巻の抜粋で、珠玉の名編集ですが(新潮文庫『黒い画黒い画集 あるサラリーマンの証言 ポスター.jpg集』に同じラインアップで移植されている)、知る限りでは「遭難」「証言」「天城越え」「寒流」「凶器」「紐」「坂道の家」の所収7作中、「証言」などの4作が黒い画集 あるサラリーマンの証言.jpg映画化されており、"映画化率"の高い短編集ではないでしょうか。また、この短編集の中には何度もテレビドラマ化されているものもいくつもあります。

[右上]映画黒い画集 あるサラリーマンの証言('60年/東宝)主演:小林桂樹 /[下]映画黒い画集 ある遭難('61年/東宝)出演:伊藤久哉/児玉清/香川京子/土屋嘉男
黒い画集 ある遭難 ポスタード.jpg黒い画集%20ある遭難3_033.jpg黒い画集%20ある遭難.jpg黒い画集 ある遭難0_.jpg 「遭難」の映画化作品('61年映画化・杉江敏男監督「黒い画集 ある遭難」)は脚本は石井輝男で、児玉清が被害者役、伊藤久哉が犯人役、土屋嘉男が犯人の犯罪を暴く役でしたが、最後だけ「悪」(ワル)」が勝って終わってしまう原作を少し変えています。「証言」の映画化作品('60年映画化・堀川弘通監督「黒い画集 あるサラリーマンの証言」)は小林桂樹が好演、黒い画集 第二話 寒流.jpg黒い画集 第二話 寒流 ps1.jpg黒い画集 第二話 寒流 ps2.jpgこちらも、原作の後日譚を膨らませ、映画オリジナルの話が付け加わっています。「寒流」の映画化作品('61年映画化・鈴木英夫監督黒い画集 第二話 寒流)は池部良と新珠三千代の共演で、銀行員である主人公(池部良)が仕事上のきっかけで美人女将(新珠三千代)と知り合い、いい関係になったまではともかく、そこに主人公の上司である好色の常務(平田昭彦)が割り込んできて、主人公の仕事人生をも狂わせてしまうというものですが、主人公は原作と違って踏んだり蹴ったりの散々な目に遭うだけ遭って終わってしまう結末になっています。

映画「黒い画集 第二章 寒流」('61年/東宝)出演:池部良/新珠三千代

黒い画集 寒流01.jpg黒い画集 寒流03.jpg 「寒流」の原作でも主人公は踏んだり蹴ったりの目に遭いますが、主人公を陥れた常務に対して主人公が逆転劇を演じるのに対し、映画ではその逆転劇を前にもってきて、そこから二転三転して結局は主人公状況が絶望的な状況鈴木英夫監督.jpgに陥るところで終わります。映画化する際に原作の毒を薄めることはよくありますが、最後「悪」が勝つように原作を改変しているのが和製フィルム・ノワールの名手と言われた鈴木英夫(1916-2002/享年85)監督なら松本清張作品「黒い画集 第二話 寒流」.jpgではという気もします。銀行本店には昭和27年までGHQが総司令部を置いていた旧第一生命ビルが使われていて、いかにも大銀行の本店という感じがします。池部良演じる銀行員は原作以上に真面目そうに描かれていて、新珠三千代演じる女将に対しても最初は銀行員らしくかなり慎重に接しています。2人に割って入る平田明彦演じる常務のほかに、その常務の行内でのライバルの副頭取に中村伸郎、主人公が常務と女将の密偵を依頼する探偵社の男に宮口精二、味方かと思ったらとんでもない食わせ者だった総会屋に志村喬、常務が自分を陥れようとする主人公を脅すため差し向けたヤクザの親分に丹波哲郎―といった配役も楽しめました。

 「天城越え」の映画化作品('83年/松竹)は田中裕子の演技が高く評価された作品です(「天城越え」は'78年にNHKで大谷直子主演で、'98年にTBSで田中美佐子主演でテレビドラマ化もされている)。「天城越え」は、川端康成の『伊豆の踊子』に対する清張流の挑戦だという説もありますが(「踊り子を自分より下の弱い存在と見る東大生」vs.「旅の女性を憧憬のまなざしで見上げる少年」という対照的構図)、個人的にはこの説がある程度の説得力を持って感じられました。

天城越え05.jpgamagigoe.jpg 映画化作品は、テレビで途中から観ることになってしまったため評価を避けますが、田中裕子演じる件(くだん)の酌婦・大塚ハナが派出所で少年の弁明をするという、小説には無い場面があったのではなかったかと(これが先駆けとなってか、以降の映像化作品ではこうしたハナが尋問を受ける場面が必ずあるように思う)。'78年のテレビ版(大谷直子主演)ともしかしたら記憶がごっちゃになっているかもしれませんが(映画をテレビで観て、しかも別にあるテレビ版作品も観てしまうとこういうことになりがち)、警官の尋問中にハナがこらえ切れず失禁するシーンを、田中裕子が自らの申し出により仕掛け無しの体当たり演技でやったという逸話が知られているから、やっぱり映画の方をテレビで観たのでしょう。田中裕子はこの作品でモントリオール世界映画祭主演女優賞を受賞しています。
天城越え [DVD]」 ('83年/松竹)

天城越え 田中美佐子版 01.jpg「天城越え」●.jpg  更に、'98 年の田中美佐子主演のテレビ版では、少年(二宮和也)が大人(長塚京三)になってから大塚ハナと再会天城越え 田中美佐子版 dvd.jpgするという、原作にも他の映像化作品にはない独自の創作部分がありましたが、全体の出来としては悪くなく、ギャラクシー賞優秀賞などを受賞していることから一般の評価も高かったようです。この作品の翌年に「嵐」としてデビューした二宮和也のドラマ初出演作であり(当時、作中の「少年」と同じ14歳だった)、その演技が後々も話題になりますが、個人的には、田島刑事役を演じた蟹江敬三が(彼だけが同一人物の過去と現在の両方を演じているわけだが)渋みがあって良かったと思いました。 「天城越え [DVD]」('98年/TBS)

黒い画集・紐1.jpg紐.jpg '05年にテレビ東京で「紐」を放映しました。絞殺死体を巡って保険金殺人の疑いがあるものの、容疑者には完璧なアリバイがあるという話で、「サスペンス劇場」とか「愛と女のミステリー」で今も清張作品をとりあげているというのは、「清張」というネームバリューだけでなく、面白さに普遍性があるということだと思います。

松本清張スペシャル「黒い画集・紐」 ('05年/BSジャパン・テレビ東京)

 「紐」の過去のテレビドラマ化
 •1960年「紐(KR)」芦田伸介・北村和夫・千石規子
 •1979年「紐(ANB)」酒井和歌子・宇津宮雅代(宇都宮雅代)・中山仁
 •1985年「松本清張の黒い画集 紐(CX)」浅丘ルリ子・近藤正臣・佐藤允
 •1996年「紐(TBS)」名取裕子・内藤剛志・風間杜夫
 •2005年「黒い画集~紐(BSジャパン)」余貴美子・大地康雄・内藤剛志

 原作が短編なあなたに似た人 (ミステリ文庫.jpgので、それをどう脚色して映画や2時間ドラマにしているのか見比べるのも面白いです。

 映画化されていませんが、「凶器」という刑事が凶器として使われた"餅"を、そうとは気づかず犯人にご馳走になってしまう話も味があって好きです(この作品は、ロアルド・ダールの「おとなしい凶器」(『あなたに似た人』('76年/ハヤカワ・ミステリ文庫)に所収)を作者が日本風にアレンジしたものである)。

「黒い画集・証言」('92年/TBS)渡瀬恒彦・有森也実・岡江久美子
黒い画集・証言289e.jpg 「証言」は'84年には柳生博主演でテレビ朝日の「土曜ワイド劇場」で、'94年には渡瀬恒彦主演でTBSでテレビドラマ化もされていますが、'92年版の方を観ました。渡瀬恒彦は刑事ドラマにおける犯人を追いつめる「刑事」役のイメージが強いですが、こうしたドラマの追いつめられる側の「犯人」役をやらせてもうまいと思いました。

 原作と、映画やテレビドラマなどで映像化されたものとを比べてみるのも面白いかと思います。

証言0.bmp証言1.bmp「黒い画集 あるサラリーマンの証言」 (1960/03 東宝) ★★★☆


   


 
黒い画集 ある遭難 title.jpg黒い画集 ある遭難40.jpg「黒い画集 ある遭難」 (1961/06 東宝) ★★★☆

    

黒い画集 寒流 ド.jpg黒い画集 寒流02.jpg「黒い画集 第二話 寒流」 (1961/11 東宝) ★★★☆
       
    

   
  
 

黒い画集 あるサラリーマンの証言.jpg「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(映画)●制作年:1960年●監督:堀川弘通●製作:大塚和/高島幸夫●脚本:橋本忍●証言2.jpg撮影:中井朝一●原作:松本清張黒い画集 あるサラリーマンの証言      .jpg「証言」●時間:95分●出演:小林桂樹/中北千枝子/平山瑛子/依田宣/原佐和子/江原達治/中丸忠雄/西村晃/平田昭彦/小池朝雄/織田政雄/菅井きん/小西瑠美/児玉清/中村伸郎/小栗一也/佐田豊/三津田健●公開:1960/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸地下 (88-01-23)(評価★★★☆)
小林桂樹/原佐和子

黒い画集 ある遭難m.jpg黒い画集 ある遭難55.jpg黒い画集 ある遭難15.jpg「黒い画集 ある遭難」(映画)●制作年:1961年●監督:杉江敏男●製作:永島一朗●脚本:石井輝男●黒い画集 ある遭難43.jpg撮影:黒田徳三●音楽:神津善行●原作:松本清志「遭難」●時間:87分●出演:伊藤久哉/和田孝/児玉清/香川京子/土屋嘉男/松下砂稚子/天津敏/那智恵美子/塚田美子●公開:1961/06●配給:東宝(評価:★★★☆) 
香川京子/伊藤久哉/土屋嘉男

池部良/新珠三千代/平田昭彦
黒い画集 寒流 title.jpg黒い画集 寒流00.jpg「黒い画集 第二話 寒流(黒い画集 寒流)」(映画)●制作年:1961年●監督:鈴木英夫●製作:三輪礼二●脚本:若尾徳平●撮影:逢沢譲●音楽:斎藤一郎●原作:松本清志「寒流」●時間:96分●出演:池部良(沖野一郎)/荒木道子(沖野淳子)/吉岡恵子(沖野美佐子)/多田道男(沖野明黒い画集 寒流_0.jpg)/新珠三千代(前川奈美)/平田昭彦(桑山英己常務)/小川虎之助(安井銀行頭取)/中村伸郎(小西副頭取)/小栗一也(田島宇都宮支店長)/松本染升(渡辺重役)/宮口精二(伊牟田博助・探偵)/志村喬(福光喜太郎・総会屋)/北川町子(喜太郎の情婦)/丹波哲黒い画集 第二話 寒流12.jpg郎(山本甚造)/田島義文(久保田謙治)/中山豊(榎本正吉)/広瀬正一(鍛冶久一)/梅野公子(女中頭・お時)/池田正二(宇都宮支店次長)/宇野晃司(山崎池袋支店長代理)/西条康彦(探偵社事務員)/堤康久(比良野の板前)/加代キミ子(桑山の情婦A)/飛鳥みさ子(桑山の情婦B)/上村幸之(本店行員A)/浜村純(医師)/西條竜介(組幹部A)/坂本晴哉(桜井忠助)/岡部正(パトカーの警官)/草川直也(本店行員B)/大前亘(宇都宮支店行員A)/由起卓也(比良野の従業員)/山田圭介(銀行重役A)/吉頂寺晃(銀行重役B)/伊藤実(比良野の得意先)/勝本圭一郎/松本光男/加藤茂雄(宇都宮支店行員B)/細川隆一/大川秀子/山本青位●公開:1961/11●配給:東宝(評価:★★★☆)


黒い画集・証言119eb.jpg松本清張サスペンス「黒い画集・証言」.jpg「黒い画集・証言」(TV)●演出:松原信吾●制作:斎藤守恒/浜井誠/林悦子●脚本:大藪郁子●音楽:茶畑三男●原作:松本清張「証言―黒い画集」●出演:渡瀬恒彦/岡江久美子/有森也実/佐藤B作/段田安則/高樹澪/山口健次/高松いく/志水季里子/渡辺いっけい/須藤雅宏/高山千草/住若博之/宮崎達也/小林勝彦/布施木昌之/梶周平/太田敦之/中江沙樹/児玉頼信/森富士夫/三上剛仙/安威宗治/桝田徳寿/武田俊彦/岩永茂/小林賢二/下川真理子/黒田国彦●放映:1992/10(全1回)●放送局:TBS

008005001360.jpg天城越え03.png「天城越え」(TV)●演出:大岡進●脚本:金子成人●原作:松本清張「天城越え」●出演: 田中美佐子/蟹江敬三/二宮和也/風間杜夫/室天城越え ドラマ 田中美佐子5.jpg田日出男/柳沢慎吾/余貴美子/斉藤洋介/寺島しのぶ/長塚京三/松金よね子/六平直政/遠藤憲一/不破万作/松蔭晴香/中丸新将/佐戸井けん太/温水洋一/河原さぶ/佐久間哲/都家歌六●放映:1998/1(全1回)●放送局:TBS

黒い画集・紐2.png黒い画集 紐.jpg「黒い画集~紐」(TV)●演出:松原信吾●制作:小川治彦●脚本:田中晶子●音楽:川崎真弘●出演:余貴美子/大地康雄/内藤剛志/真野響子/石橋蓮司/萩原流行/山田純大/小沢真珠/田中隆三/根岸季衣●放映:2005/01(全1回)●放送局:BSジャパン/テレビ東京

 【1959年単行本・2005年新装版[光文社]/1960年ノベルズ版[光文社]/1971年文庫化・2003年改版[新潮文庫]】

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