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研ぎ澄まされた映像と音楽により、映画は原作を超えている。

乾いた花  j.jpeg乾いた花 dvd.jpg 乾いた花ド.jpg 乾いた花 石原慎太郎_.jpg
乾いた花 [DVD]」池部良/加賀まりこ/藤木孝 『乾いた花 (1959年)』(文藝春秋新社)

乾いた花  ぽすたー80.jpg乾いた花02.jpeg ヤクザ抗争で敵対していた安岡組の男を刺して三年ぶりに刑務所から出所した船田組の村木(池部良)は、賭場で男達に混じり大胆な花札勝負をする「その少女」と出会う。彼女に乾いた花03.jpeg自分と同じ匂いを感じた村木は、愛人の新子(原佐知子)との逢瀬も気が入らない。次の賭場で村木は再びその少女に会い、彼女との乾いた花es.jpgサシで勝負する。有り金を全部張って挑みかかる彼女は、村木の心を楽しませる。その夜、村木は思いがけず屋台でコップ酒を飲む彼女と出会う。冴子(加賀まりこ)という名の彼女は、もっと大きな勝負のある場所へ行きたいとせがむ。約束の日、豪華なスポーツカーで現れた彼女に村木は眼を瞠る。大きな賭場での冴子の手捌きは見事だった。彼はふと隅に蹲って彼乾いた花29.jpg女を擬視する葉(藤木孝)という男に気づく。中国帰りで殺しと麻薬だけに生きているというその男の死神のような眼に、村木は危険を感じる。それでも勝負に酔った村木と冴子は、乾いた花22.jpg夜の街を狂ったように車を走らせ、充実感を味わう。勝負事への刺激を追い求める冴子が、勝負が小さくてつまらないと言うので、村木は弟分の相川(杉浦直樹)が主宰する、その筋の大物らが集まる花札賭場へ彼女を案内し、大勝負の刺激に心震える冴子の姿に村木は満足する。そこへガサ入れがあり、隠れる中二人はカモフラージュで恋人同士を演じるが、二人の間にキス以上の関係はない。更に刺激を求める冴子は、葉から麻薬の刺激を教わってしまう。一方の村木は、自分の組と大阪の組との抗争に巻き込まれ、再び鉄砲玉になる。標的の組長を殺る直前、村木は冴子に会い「あんたにヤクよりいいものを見せてやる。俺は人を殺すんだ」と襲撃現場に彼女を連れて行く。オペラBGMが流れる重厚ゴージャスなクラブで、冴子の目の前で村木はターゲットの組長(山茶花究)を刺す。その時、冴子は―。

乾いた花25.jpg 1964(昭和39)年公開の篠田正浩監督作で、原作は石原慎太郎が雑誌「新潮」1958(昭和33)年に発表した短編小説。公開前に配給会社側から難解という理由で8カ月間お蔵入りとなった後、反社会的という理由で成人映画に指定のうえ公開されたそうですが、確かに池部良演じる主人公の村木はヤクザだしなあ。但し、ヤクザと言ってもインテリ・ヤクザといったイメージでしょうか(本を読んだりしている場面があるわけではないが)。

乾いた花ges.jpg 主人公の村木が出所してみたら、船田組と安岡組が既に手打ちをしていて、安岡組のチンピラ・次郎(佐々木功)がかつての仇である村木を襲うが失敗、次郎は安岡(東野英治郎)の命令で指を詰め、安岡も船田(宮口精二)近しくなっていて、次郎もその後は村木の子分みたいになるという―ちょっと最初の方の勢力図が分かりにくいですが(この話は原作には無い映画のオリジナル)、結局、冴子との出会いを経て、村木は再び刺客として大阪の組の組長を殺ることになり、その際に冴子を連れれ行き、その刺殺現場を見せます。

乾いた花 池部.jpg 何のために村木は冴子を襲撃現場に連れて行ったのか。自分と同じく日常生活の刺激に対して不感症状態になっていて、生の充足を賭博でしか得ることが出来なくなってしまっている彼女に、葉が彼女に与える麻薬以上の刺激を村木は与えたかったのか。それが村木の冴子に対する愛の形であり、それが虚しいと分かっていても、彼はそれをしないではおれなかったのか―。

乾いた花01.jpeg 作家・石原慎太郎の初期の中短編作品は悪くないものが多く、この映画の原作「乾いた花」もその一つですが、映画はストーリーの根幹部分は原作を踏襲しながらも、映像や音楽を研ぎ澄ませて原作を超えているように思いました(マーチン・スコセッシはこの作品を30回は見ているという)。但し、音楽は、武満徹が賭場に響く花札の札の音にインスパイアされてテーマ曲を作ったとのことですが、劇中では殆ど使われていません(花札を切る音がバックミュージックの代わりになっていたりする)。

乾いた花zj.jpeg 加賀まりこ演じる冴子の小悪魔感と、賭場の緊迫した雰囲気との取り合わせが光っています。コラムニストの中森明夫は、この映画の美少女ヒロイン像を押尾守のアニメーションで観てみたいとしており、"萌え"系の感性がここにはあり、「やはり石原慎太郎は元祖おたく作家だ!」としています(『石原慎太郎の文学9』('07年/文藝春秋)解説)。

乾いた花ages.jpg 東京オリンピックの年に、こうした世間一般の感覚で言えば"退廃的"とも言える作品が公開されていて、その原作者が、「青春とはなんだ」('65年/日活)や「これが青春だ!」('66年/東宝)の原作者である石原慎太郎であるというのが興味深いです。原作が書かれたのは1958(昭和33)年ですから、映画の中にあるスポーツカーで冴子が走った首都高速は、映画撮影当時で一部が完成したばかりで、原作では一般道を走ったことになります。

 池部良が後に東映ヤクザ映画に出るきっかけとなった作品と言われています。乾いた花  東野.jpg安岡組のチンピラ役の佐々木功、村木の弟分役の杉浦直樹ともに若々しく、葉を演じた藤木孝に至っては、「シン・ゴジラ」('16年/東宝)に副知事役で出ていましたが、すっかり変わったあなと。東野英治郎と宮口精二が、ヤクザの親分同士と言うより、単なる年寄りの茶飲み仲間に見えてしまうという難はありますが、全体としては、緊迫感のある映像が密度濃く続いて(特に池部良、加賀まりこが出ている賭場シーンがいい)、ラストまで飽きさせずに一気に見せる作品でした。
東野英治郎(安岡組組長・安岡)・宮口精二(船田組組長・船田)

佐々木 功(安岡組のチンピラ・次郎) 杉浦直樹(村木の弟分・相川)  藤木 孝(中国帰りの男・葉)
乾いた花 佐々木功.jpg 乾いた花 杉浦直樹.jpg 乾いた花j.jpeg
佐々木 功     杉浦直樹     藤木 孝 in「シン・ゴジラ」('16年/東宝)
佐々木功.jpg 杉浦直樹.jpgシン・ゴジラ 藤木孝.jpg

乾いた花sim.jpg乾いた花  title.jpg「乾いた花」●制作年:1964年●監督:篠田正浩●製作:白井昌夫/若槻繁●脚本:馬場当/篠田正浩●撮影:小杉正雄●音楽:武満徹/高橋悠治●原作:石原慎太郎●時間:99分●出演:池部良/加賀まりこ/藤木孝/原知佐子/中原功二/東野英治郎/三上真一郎/宮口精二/佐々木功/杉浦直樹/平田未喜三/山茶花究/倉田爽平/水島真哉/竹脇無我/水島弘/玉川伊佐男/斎藤知子/国景子/田中明夫●公開:1964/03●配給:松竹(評価:★★★★)

完全な遊戯 新潮文庫2003L.jpg【1958年単行本[新潮社(『完全な遊戯』)]/1959年単行本[文藝春秋新社](『乾いた花』)/1959年文庫化[角川文庫(『完全な遊戯―他四篇』)]/1960年再文庫化・2003年改訂[新潮文庫(『完全な遊戯』)]】

完全な遊戯 (新潮文庫)
(完全な遊戯、若い獣、乾いた花、鱶女、ファンキー・ジャンプ、狂った果実) 

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幻想的な映像美で愉しませてくれる。松田優作の演技の個性を活かしている。

陽炎座 00.jpg陽炎座 1981.jpg 陽炎座 01.jpg
陽炎座 [DVD]」  松田優作・大楠道代

陽炎座 02.jpg 1926年、大正末年で昭和元年の東京。新派の劇作家・松崎春狐(松田優作)は偶然謎の女・品子(大楠道代)と出会う。三度重なった奇妙な出会いを、自分のパトロン玉脇(中村嘉葎雄)に打ち明けるが、玉脇の邸宅の一室は、松崎が品子と会った部屋とソックリだった。品子は玉協の妻ではと陽炎座 04.jpg松崎は訝る。数日後、松崎は品子とよく似た振袖姿のイネ(楠田枝里子)と出会い、イネは「玉脇の家内です」と言う。しかし、玉脇によれば、イネは松崎と出会う直前に息を引きとったという。松崎の下宿の女主人みお(加賀まりこ)が玉脇の過去を語る。玉脇はドイツ留学中イレーネと結ばれ、彼女は日本陽炎座es.jpgに来てイネになりきろうとし、やがて病気で入院、玉脇は品子を後添いにしたという。折しも品子から松崎に、「金沢、夕月楼にてお待ち申し候。三度びお会いして、四度目の逢瀬は恋になります。死なねばなりません」との手紙が来る。金沢に向う松崎は列車の中で玉脇に出会い、松崎は金沢へ亭主持ちの女と若い愛人の心中を見に行くと言う。金沢では不思議なことが相次ぎ、品子と死んだはずのイネが舟に乗っていたかと思うと、やっと会えた品子は手紙を出した覚えはないと言う。玉脇は松崎に心中を唆すが、仕組まれた心中劇に松崎は乗れない。逃れた松崎は、アナーキストの陽炎座 06.jpg和田(原田芳雄)と知り合い、和田は松崎を秘密めいた人形の会に誘う。人形を裏返して空洞を覗くと、そこには男と女の陽炎座 07.jpg情交の世界が窺え、松崎が最後の人形を覗くと人妻と若い愛人が背中合わせに座っている。死後の世界であり、松崎は衝撃を受ける。金沢を逃げ出し彷徨う松崎は、子供芝居の小屋「陽炎座」に辿り着く。舞台で玉脇、イネ、品子の縺れた糸が解かれようとした刹那、愛憎の念が一瞬にして小屋を崩壊させる。松崎が不安に狂ったように帰京すると、品子の手紙が待っていた。「うたた寝に恋しき人を見てしより夢てふものは頬みそめてき」"夢が現実を変えたんだ"とつぶやく松崎の運命は奈落に落ちていくのだった―。

陽炎座 05.jpg 1981年公開作で、今年['17年]2月に93歳亡くなった鈴木清順監督の「(大正)浪漫三部作」(「チゴイネルワイゼン」('80年)、「陽炎座」('81年)、「夢二」('91年))の第2作目です。鈴木清順監督のベスト作品は何かということが言われる際に「チゴイネルワイゼン」は"別格"とされたりすることがありますが、「チゴイネルワイゼン」がそうであれば、「三部作」まとめて"別格"となるような気もします。特にこの「陽炎座」は「チゴイネルワイゼン」の翌年に撮られており、鈴木清順監督の自らの美学に対する自信のようなものが感じられました。

 原作は泉鏡花ですが、「春昼」「春昼後刻」など複数の作品から引いているようです。但し、あるのかないのか分からないストーリーながらも、振り返ってみればそう複雑な話ではなく、次にどっちへ行くか分らないながらも、意外とシンプルな展開だったかも。「チゴイネルワイゼン」もそうでしたが、何だか分からない部分の方が多いのでけれども、「清順版フィルム歌舞伎」とも呼ばれる幻想的な映像美とテンポの良い展開で愉しませてくれた作品という感じです。

陽炎座 03.jpg 松田優作(1949-1989/享年40)がいい味を出していたように思います。それまでアクション映画ばかりだった松田優作に、鈴木清順監督は、直径1mの円を描き「この中から出ないような演技をしてください」と指導したそうです。松田優作はこの映画の翌年には森田芳光(1950-2011/享年61)監督の「家族ゲーム」('83年/ATG)に出演して好評を博し、森田芳光監督の「それから」('85年/東映)にも出演して、こちらも高い評価を得ましたが、そした演技の幅を拡げる契機となったのがこの作品ではないでしょうか。個人的には、「それから」のやけに重々しい松田優作よりも、TV版「探偵物語」の軽さを一部残しているようなこの作品の松田優作の方が好きです。鈴木清順監督は、松田優作の演技の個性を活かしているように思いました。

陽炎座  松田優作 原田芳雄.jpg 共演の大楠道代中村嘉葎雄原田芳雄(1940-2011/享年71)、加賀まりこの何れも良く、中村嘉葎雄と加賀まりこの二人は、第27回キネマ旬報賞と第5回日本アカデミー陽炎座  中村嘉葎雄、加賀まりこ.jpg賞のそれぞれの助演男優賞・助演女優優賞をW受賞しています。大楠道代、原田芳雄は「チゴイネルワイゼン」から引き続いての共演ですが、原田芳雄が亡くなっているだけに、今観ると、松田優作との共演は貴重な映像のように感じられます(前の共演作「竜馬暗殺」('74年/ATG)では原田芳雄が主役で、映画デビュー2年目の松田優作は脇だった)。久しぶりに松田優作を観て、松田龍平に似ていると思ったカメラアングルがあったとき、時の流れを感じたりもしました。

陽炎座 大楠.jpg 陽炎座 中村.jpg 陽炎座 原田.jpg 陽炎座 鈴木清順.jpg 鈴木清順監督

Kagerô-za (1981)
Kagerô-za (1981).jpg
陽炎座1-7.jpg「陽炎座」●制作年:1981年●監督:鈴木清順●脚本:田中陽造●撮影:永塚一栄●音楽:河内紀●原作:泉鏡花●時間:139分●出演:松田優作/大楠道代/中村嘉葎雄/加賀まりこ/原田芳雄/楠田枝里子/大友柳太郎/麿赤児/江角英/東恵美子/玉川伊佐男/佐野浅夫/佐藤B作/トビー門口●公開:1981/08●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(17-08-21)(評価:★★★★)

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事実をアムンゼン・スコット隊の物語のようにドラマチックに改変した原作と映画。

八甲田山  1.jpg八甲田山 1977.jpg八甲田山  2.jpg 八甲田山 dvd.jpg
Hakkodasan (1977)   「八甲田山 完全版 [DVD]

八甲田山 大滝秀治.jpg八甲田山1s.jpg 日露戦争開戦目前の1901(明治34)年10月、軍部はロシア軍と戦うためには雪と寒さに慣れておく必要があると判断、弘前の第4旅団司令部で行われた「日露戦争に備えての雪中行軍作戦会議」に、弘前第8師団より第4旅団長・友田少将(島田正吾)、参謀長・中林大佐(大滝秀治)、「弘前第31連隊」より連隊長・児島大佐(丹波哲郎)、第1大隊長・門間少佐(藤岡琢也)、徳島大尉(高倉健)、「青森第5連隊」よ八甲田山2a96e.jpg八甲田山 高倉2.jpgり津村中佐(小林桂樹)、木宮少佐(神山繁)、神田大尉(北大路欣也)、第2大隊長・山田少佐(三國連太郎)らがそれぞれ出席して、耐寒訓練として冬の八甲田山を軍行する計画を立て、神田大尉率いる「青森第5連隊」と徳島大尉率いる「弘前第31連隊」の参加が決まる。双方は青森と弘前から出発、八甲田山ですれ違うという進行が大筋だった。翌年1月20日、徳島率いる弘前八甲田山80.jpg第31連隊は、雪に馴れている27名の編成部隊で弘前を出発し、一方の神田大尉も小数精鋭部隊の編成を申し出たが、大隊長・山田少佐に拒否され210名という大部隊で青森を出発した。神田の青森第5連隊の実権は大隊長・山田少佐に移っており、神田の用意した案内人を山田が断ってしまう。神田の部隊は低気圧に襲われ、磁石が用をなさなくなり、ホワイトアウトの中に方向を失い、次第に隊列は乱れ、狂死する者八甲田山12.jpgさえ出始める。一方徳島の部隊は、案内人(秋吉久美子)を先頭に風のリズムに合わせ、八甲田山に向って快調に進む。出発してから1週間後、徳島隊は八甲田に入って神田大尉の従卒の遺体を発見、神田の青森第5連隊の遭難は疑う余地はなかった。そして徳島は、吹雪の中で永遠の眠りにつく神田と再会。青森第5連隊の生存者は山田少佐以下12名。徳島の弘前第31連隊は全員生還。山田少佐はその後に拳銃自殺する―。

八甲田山 高倉.jpg 1977年公開の森谷司郎監督、橋本忍脚本、高倉健・北大路欣也主演作品で、原作は新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』('71年/新潮社)。原作は、1902(明治35)年)1月、陸軍第8師団の「青森歩兵第5連隊」が青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう雪中行軍訓練で参加者210名中199名が死亡した事件に材を得ていますが、「弘前歩兵第31連隊」の雪中行軍訓練と時期は重なるものの、お互いに相手の計画を知らなかったということで、これを徳島・神田両大尉が同時に行軍指揮の命令を受け、事前に両隊が八甲田山で出会うことを示し合わてスタートしたように描き、更に、強行スケジュールを立てて先を急いだ神田・青森隊と、自然の驚異への畏怖からそれに逆らわず慎重に行動した徳島・弘前隊を対比的に描くことで、ちょうど南極点一番乗りを目指して片や偉業達成、片や全滅したアムンゼン隊とスコット隊の物語のようにドラマチックにしたのは、新田次郎の作家としての力量の為せる技でしょう。

八甲田山 1977  三國s.jpg 従って、事実としては、映画のように高倉健が演じた徳島大尉(モデルは福島泰蔵大尉)と北大路欣也が演じた神田大尉(モデルは神成文吉大尉)が出発前に出会って語らったこともなく、また、映画では三國連太郎演じる山田少佐(モデルは山口鋠少佐)の我田引水の判断や行動が遭難事故の誘因となったように描かれていますが、実際には山口少佐の遭難事故に与えた影響は判明していないそうです(部下の犠牲で生き残ったことへの自責の念から病院で拳銃自殺するというのも新田次郎の創作)。

八甲田山es.jpg 一方の、徳島大尉は理想のリーダーのように描かれていますが、実際には福島隊も地元の案内人との関係は良くなかったらしく、高倉健の徳島大尉が秋吉久美子演じる(軽々と雪山を登って行く部分はスタント?)案内人に感謝の意を表して部下らに捧げ銃を命じるのは完全に映画のオリジナルで、新田次郎原作においてすら、小銭を渡して冷たくあしらったことになっています(映画では、三國連太郎演じる山田少佐が「金目当てか?」と案内人を追い返したのと対照的な行動として描かれている。感動的な場面ではある)。

八甲田山i.jpg しかしながら、事実がどうだったかはともかく、映画は映画としてみれば面白く、少なくとも長尺の割には、途中飽きることはありませんでした。原作の方は企業研修や大学において、リスクマネジメントやリーダー論などの経営学のケーススタディに用いられることがあるようですが、当然事前に読ませておくということでしょう。映画も(その後の討論を含め1日がかりの研修ならともかく)勤務時間中に見せるのは約2時間40分の長さはきついかもしれません。

八甲田山 北大路欣也.jpg そもそも、原作にしても映画にしても、明治陸軍という特殊な組織の中での話であって、これを現代のビジネス社会に当て嵌めて考えたり応用したりするには無理があるという見方もあるようですが、確かにそうした面もあるかもしれないし(「北大路欣也演じる神田大尉が上官の無茶な命令に逆らえないのはフォロワーシップの欠如だ」と言うのは簡単だが、当時の陸軍においては上官命令には絶対服従だっただろう)、一方、高倉健演じる徳島大尉はあまりに理想的に描かれ過ぎている感じもします。しかしながら、個々のリーダーシップと言うより組織論的な観点から見ると、命令系統の混乱が青森隊を混迷状況に陥れたわけで、マネジメントにおける「命令統一の原則」が守られなかった場合どうなるかということと呼応しており、参考になる部分はあるかもしれません。

八甲田山 1977   8.jpg 今日まで続く"山岳映画"の流れの嚆矢にもなったとされる作品ですが(一応これ以前にも「銀嶺の果て」('47年)や「黒い画集 ある遭難」('61年)といった作品はあるが)、この作品のロケは大変だったろうなあと思います。撮影隊が本当に遭難しそうになったという逸話があるというのは頷けますが、今だったらかなりの部分をCGでカバーしてしまうだろうから、そう考えると全てフィルムで撮っているというのは映像的に貴重かも。但し、カメラマンの木村大作は吹雪の中で照明が殆ど使えなかったことが不満だったとのことで、確かに白い雪の中で登場人物の顔が黒く潰れてしまっているというのは多く見られました。おそらくこれはデジタルリマスター版になってもそう改善されないものなのでしょう。

八甲田山_n.jpg八甲田山(映画) 加藤嘉 .jpg
徳島大尉(第一大隊第二中隊長):高倉健
神田大尉(第二大隊第五中隊長):北大路欣也
山田少佐(第二大隊長):三國連太郎
村山伍長(第五中隊第二小隊):緒形拳
田茂木野村の作右衛門:加藤嘉

八甲田山 特別愛蔵版.jpg八甲田山03.jpg「八甲田山」●制作年:1977年●監督:森谷司郎●製作:橋本忍/野村芳太郎/田中友幸●脚本:橋本忍●撮影:木村大作●音楽:芥川也寸志●時間:169分●出演:高倉健/北大路欣也/島田正吾/三國連太郎/丹波哲郎/藤岡琢也/加山雄三/小林桂樹/神山繁/森田健作/下絛アトム/大滝秀治/前田吟/東野英心/緒方拳/加賀まり子秋吉久美子八甲田山 加賀まりこ.jpg八甲田山 akiyosi.jpg山谷初男/丹古母鬼馬二/菅井きん/加藤嘉/田崎潤/栗原小巻/金尾哲夫/玉川伊佐男/江角英明/樋浦勉/浜田晃/加藤健一/江幡連/高山浩平/安永憲司/佐久間宏則/大竹まこと/新克利/山西道宏/船橋三郎●公開:1977/06●配給:東宝(評価:★★★☆)

八甲田山 特別愛蔵版 高倉健 主演 DVD2枚組」(2014年)

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サスペンス・ドラマ風作品(寓話っぽい話?)。加賀まりこより他の女優らの方が印象に残る。

悦楽 dvd.jpg悦楽 [DVD]」  悦楽4.jpg  悦楽3.jpg

 脇坂篤(中村賀津雄)は貧乏学生の頃に家庭教師として教えていた金持ちの娘匠子(加賀まりこ)を密かに愛していたが、実は彼女がまだ小学生の頃、彼女を暴行しその後も彼女の両親を脅迫し続けていた青年(小林昭二)を列車のデッキから突き落として殺してしまったという秘めた過去があった。そんな脇坂のもとへ、脇坂の犯行現場を見たと言う元官僚・速水(小沢昭一)が現れ、速水は横領した公金3千万円の入ったトランクを脇坂に渡し、脇坂の秘密を守ることと引き換えに、5年後に刑期を終え出所するまでその金を預かって欲しいと言う。悦楽 カラー1.jpgそれから4年後、匠子が有名化粧品会社社長と結婚してしまったことを知った脇坂は絶望し、速水から預かった金を1年で使い切って後は自殺をしようと考え、月百万円で女を次々と買うという彼の生活が始まる―。
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 原作は山田風太郎の『棺の中の悦楽』で、大島渚監督にしては珍しく("巨匠"とか言われる以前の作品ということもあるためか)ストーリー性が前面に出たサスペンス・ドラマ風作品であり、導入部は面白かったです(カラー作品なのだが、80年代に映画館で観た時は、すでにかなりフィルムが色褪せていた)。

悦楽 カラー2.jpg 脇坂が最初に愛人契約をしたのが、どことなく翳のあるバーホステス眸(野川由美子)、次が夫との不幸な家庭生活から逃れられないアルサロの女・志津子(八木昌子)、3人目は研究医のインテリ女圭子(樋口年子)、そして最後が唖で知的障害のある娼婦マリ(清水宏子)―何れも女優らがそれぞれの持ち味を出しているという感じがしましたが(演技自体は野川由美子がいいが、じっくり描かれているのは樋口年子、役柄的には清水宏子がいい)、それらが必ずしも全体のオムニバス効果に繋がっておらず、時間の経過とともに平板な印象を受けるようになってしまうのはどうしてかなあ。

悦楽2.bmp 1年の間に大金を女に注ぎ込み「悦楽」を汲み上げるという脇坂のプランに、自分だったらこんなことはしないだろうなあとマトモに考えてしまったのも、今1つノリきれなかった原因かも―。結局、脇坂は女性たちに「悦楽」ではなく、匠子の面影を求めていたように思え、女性の肉体を得られても心が得られなければ気持ちは満たされず、女性遍歴を辿っていくと次第に"本来目的"に近づきつつあったようにも思えますが、色々ごたごたもあって、いずれの女性の前からも彼の方から去っていくことになります。

 「女性の肉体を得られても心は得られない」その原因はそもそも脇坂の「金で女性の気持ちが買える」という傲慢さにあり(そう考えると何だか寓話っぽい話かも)、トランクの中の大金が底をついた時に彼は死ぬ―トランクは棺桶のメタファーだったのか―但し、それは彼の意に反し、充足感に満たされたものではなく虚無感に包まれたものだった(ますます寓話的。結末にはドンデン返しがあって、この通りにはならないのだが)。

 4人の女を演じた女優達に比べると、加賀まりこはやや影が薄いと言うか、最後にもう一度出てきて、ああ、そういうことだったのかと思わせる部分はありますが、ミステリとしてもイマイチだし、再登場によって凄味が増すとかいったことはありません。

 女性の強さと弱さ、優しさと怖さ、それと対比的に男の哀しさを描いた作品ともとれますが、むしろ、出自が貧乏であることを割り引いても、脇坂の子供っぽさの方が目立った作品のように思えました(懐かしい作品ではあるが)。

『悦楽』大島渚.jpg文芸坐.jpg「悦楽」●制作年:1965年●監督・脚本:大島渚●撮影:高田昭●音楽:湯浅謙二●原作:山田風太郎「棺の中の悦楽」●時間:96分●出演:中村賀津雄/加賀まりこ/野川由美子/清水宏子/樋口年子/八木昌子/小沢昭一/戸浦六宏/小松方正/渡辺文雄/草野大悟/佐藤慶●公開:1965/08●配給:松竹●最初に観た場所:池袋・文芸地下(82-11-03)(評価:★★☆)●併映:「儀式」(大島渚)

「●み 宮本 輝」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2574】 宮本 輝 「螢川
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正統派の抒情文学。「泥の河」と、その映画化作品にはグッときた。
「泥の河」.jpg  映画 「泥の河」.jpg 螢川 (1978年) 200_.jpg  道頓堀川 dvd 1.jpg
蛍川 (角川文庫)』映画「泥の川」タイアップカバー版 小栗康平監督「泥の河」(1978)『螢川』(筑摩書房) 「あの頃映画 「道頓堀川」 [DVD]
蛍川・泥の河 (新潮文庫)
蛍川・泥の河 (新潮文庫) 0_.jpg泥の河-2.jpg 単行本『螢川』の刊行は'78年で、太宰治賞の「泥の河」と芥川賞の「螢川」の中篇2作を所収しています。「螢川」は思春期を、「泥の河」は少年期を扱っていますが、30歳で書いたというわりには、抒情性豊かな正統派文学に仕上がっているように思えました(さすが、後に芥川賞の選考委員になるだけのことはある?)。

 それぞれの舞台となる大阪と富山は、作者が5歳から9歳まで大阪に育ち、その後父親の仕事の関係で一時富山に移り住んだことに符号します。作者の家庭は、父親の事業の失敗などにより惨憺たるものであったらしいけれど、そうしたことが大学受験浪人の時に海外文学に耽溺する契機となり、作家・宮本輝を形成していったのではないでしょうか。

泥の河.jpg 「川」は流転の象徴であり、作者の小説には運命に翻弄される人々が時に生々しく描かれています。「螢川」「泥の河」のどちらも傑作だと思いました。芥川賞作品の「螢川」は、ホタルを少女に見せようとする少年の思いを透明感をもって描こうとしていて「性の目覚め」がモチーフにあって甘酸っぱささがあり、一方、「泥の河」の方は、下町の少年と錨船に住む母子との交流と別れを描いたもので、こちらの方は主要人物の年齢が低いせいか、鼻の奥にツンとくるような、ストレートに切ない読後感でした。

小栗 康平 「泥の河」2.png 「泥の河」は1981年に小栗康平監督で映画化され、第55回キネマ旬報ベストテンで第1位に選ばれましたが、最初に映画の製作発表の記者会見を行った際は、取材に来たマスコミは2社だけで、当初は上映館もなかなか決まらず自主上映だったとのとです。

「泥の川」田村高廣/藤田弓子

 朝鮮動乱の新特需を足場に高度経済成長へと向かおうとしていた昭和31年の大阪安治川河口が舞台。ある朝、河っぷちの食堂に住む食堂の息子、信雄(朝原靖貴)は置き去りにされた荷車から鉄屑を盗もうとしていた少年、喜一(桜井稔)に出会う。喜一は、対岸に繋がれているみすぼらしい舟に住んでおり、信雄は銀子(柴田真生子)という優しい姉にも会った。信雄の父、晋平(田村高広)は、夜、あの舟に行ってはいけないという。しかし、父と母(藤田弓子)は姉弟を夕食に呼んで、温かくもて泥の河-2-3.jpgなした。楽しみにしていた天神祭りがきた。初めてお金を持って祭りに出た信雄は人込みでそれを落としてしまう。しょげた信雄を楽しませようと喜一は強引に船の家に誘った。泥の河に突きさした竹箒に、宝物の蟹の巣があった。喜一はランプの油に蟹をつけ、火をつけた。蟹は舟べりを逃げた。蟹を追った信雄は窓から喜一の母(加賀まりこ)の姿を見た。裸の男の背が暗がりに動いていた。次の日、喜一の舟は岸を離れた。信雄は「きっちゃーん!」と呼びながら追い続けた-。

「泥の河」    .jpg「泥の河」  .jpg 原作の"原色の街"のイメージに反して映画は白黒映画で、それがかえって良く、昭和31年の大阪下町のひと夏をノスタルジックに描いていました。蟹に油を塗って火をつけ遊ぶ2人の少年が、船べりを逃げる蟹を追って眼にしたものは―、ラストの「きっちゃーん」という少年の呼びかけに応えることなく出て行く"船"―等々。
映画 「泥の河」ポスター
泥の河 ポスター.jpg 信雄の父、晋平(田村高廣)には実は前妻がいて、母親(藤田弓子)が父親と結ばれた経緯が信雄を妊娠したことを契機とする略奪婚であり、その前妻が死に目に信雄に会いたがっているので京都の病院まで見舞いに行き、そこで後妻が前妻に謝る―というのは原作には無い設定ですが、その辺りは多分に「螢川」のストーリーを下敷きにしているようです。こうした原作からの改変こそありましたが、夏の強い日差しを表すコントラストの強い画面や、子ども目線でのカメラ位置などの効「泥の河」 加賀.jpg泥の河 加賀まりこ.jpg果的な技巧が窺え、出演者の演技もベテラン、子役ともになかなか良かったです。特にラストはグッときます。登場場面が数カットしかなかった加賀泥の川.bmpまりこ(当時の加賀まりこは多忙を極め、スケジュールの合間をぬって僅か6時間で彼女の出る全シーンを撮泥の河 映画es.jpg小栗 康平 「泥の河」3.jpgった)が「キネマ旬報助演女優賞」を受賞しましたが、確かに情感たっぷりの堂々たる演技ぶりでした。
泥の河〓81東映セントラル〓 [VHS]

スティーブン・スピルバーグ5Q.jpg 但し、個人的に思うに、一番上手かったのは子役達ではなかったかと(特に、姉弟の姉の方を演じた柴田真生子がいい)。この映画の子役の演技にはスティーブン・スピルバーグも感嘆し、演出の秘密を知ろうとして来日時に小栗康平に面会を求めたそうです。


映画 道頓堀川 0.jpg ちくま文庫版は「川三部作」として、「泥の河」「螢川」に加えて「道頓堀川」が収録してしますが、こちらは、両親を亡くした大学生の主人公・邦彦が、生活の糧を求めて道頓堀の喫茶店に住み込んだところ、邦彦に優しい目を向ける店主の武内は、実はかつてビリヤードに命をかけ、妻に去られた無頼の過去を持つ男であり、邦彦もビリヤードを巡る男の勝負の世界へ没入していくというもの。

「道頓堀川」松坂慶子/真田広之

 「螢川」の主人公が思春期の終わり頃にあるとすれば、こちらは青年期の始めになりますが、それ以上に前2作とは雰囲気が違ったようにも思います。そう感じるのは、深作欣二(1930-2003)監督による映画化作品「道頓堀川」('82年/松竹)を観たせいもあるかもしれません。真田広之主演ということもあって、後に観た和田誠監督の「麻雀放浪記」('84年/東映)とイメージがダブりました(妻や愛人をかたに賭け事をするエピソードなど共通項多し)。松坂慶子が出ていることもあって深作欣二のこの次の監督作「蒲田行進曲」('82年/松竹)ともダブったりしましたが、原作よりウェットな感じになっていて、作者独特のドロった背景の中にもある透明感のようなものが感じられなかった気がします。映画の方はあくまで、深作欣二監督の作品として観るべきものだったのかも(深作欣二監督は、「道頓堀川」と「蒲田行進曲」の"合わせ技"で、この年の毎日映画コンクール監督賞を受賞している)。

泥の河00.jpg泥の河images.jpg「泥の河」●制作年:1981年●監督:小栗康平●脚本:重森孝子●撮影:安藤庄平●音楽:毛利蔵人●原作:宮本輝●時間:105分●出演:田村高廣/藤田泥の河01.jpg弓子/朝原靖貴/桜井稔/柴田真生子/加賀まりこ/殿山泰司/芦屋雁之助/西山嘉孝/蟹江敬三/八木昌子/初音泥の河 殿山泰司9.JPG泥の河 芦屋雁之助.jpg礼子●劇場公開:1981/01●配給:東映セントラル●最初に観た場所:日比谷・第一生命ホール(81-05-22)●2回目:池袋・テアトル池袋(82-07-24)(併映:「駅 STATION」(降旗康雄))●3回目:キネカ大森(85-02-02) (評価★★★★☆)
殿山泰司(屋形船の男)/芦屋雁之助(荷車の男)
キネカ大森2.jpg
第一生命館.jpg旧・第一生命ホール(左) 1952年9月15日、第一生命館6Fにオープン、1989年閉館。2001年11月、晴海アイランド・トリトンスクエアに2代目第一生命ホールオープン キネカ大森(右) 1984年3月30日、西友大森店内に都内初のシネコンとしてオープン(3スクリーン)
     
道頓堀川 ポスター.jpg映画 道頓堀川 1.jpg「道頓堀川」●制作年:1982年●監督:深作欣二●製作:織田明/斎藤守恒●脚本:野上龍雄/深作欣二●撮影:川又昂●音楽:若草恵(テーマ曲:上田正樹「哀しい色やねん」)●原作:宮本輝●時間:130分●出演:松坂道頓堀川 山崎努.jpg慶子/真田広之/佐藤浩市/古館ゆき/大滝秀治/渡瀬恒彦/山崎努/柄本明/カルーセル麻紀/加賀まりこ/名古屋章/片桐竜次/加島潤/成瀬正/岡本麗●劇場公開:1982/06●配給:松竹●最初に観た場所:吉祥寺松竹(82-07-04) (評価★★★)
渡瀬恒彦・佐藤浩市・真田広之/大滝秀治
道頓堀川  watase .jpg 大滝秀治 道頓堀川.jpg
加賀まりこ
加賀まりこ 道頓堀川.jpg 道頓堀川8.jpg

[下写真]吉祥寺スカラ座・吉祥寺オデヲン座(旧・吉祥寺松竹)・吉祥寺セントラル・吉祥寺東宝
吉祥寺オデヲンhoka.jpg吉祥寺オデヲン座 .jpg吉祥寺松竹/吉祥寺オデヲン座 1954(昭和29)年、吉祥寺駅東口付近に「吉祥寺オデヲン座」オープン。1978(昭和53)年10月、吉祥寺オデヲン座跡に竣工の吉祥寺東亜会館地下1階に「吉祥寺松竹オデヲン」オープン(5階「吉祥寺セントラル」、3階「吉祥寺スカラ座」、2階「吉祥寺アカデミー」(後に「吉祥寺アカデミー東宝」→「吉祥寺東宝」)、地下1階「吉祥寺松竹オデヲン」(後に「吉祥寺松竹」→「吉祥寺オデヲン座」)。 2012(平成24)年1月21日、同会館内の全4館を「吉祥寺オデヲン」と改称。 2012(平成24)年8月31日、地階の前 吉祥寺オデヲン座(旧 吉祥寺松竹)閉館。

吉祥寺東亜会館
吉祥寺オデオン.jpg吉祥寺オデヲン.jpg 

泥の河・螢川・道頓堀川 (ちくま文庫)00_.jpg【1978年単行本[筑摩書房(『螢川』)]/1980年文庫化[角川文庫(『螢川』)]/1986年再文庫化[ちくま文庫(『泥の河・螢川・道頓堀川』)]/1994年再文庫化・2005年改版[新潮文庫(『螢川・泥の河』)]】 

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伝わる時代の雰囲気、キャラクターやイカサマ対決の面白さ。

麻雀放浪記1.bmp 麻雀放浪記2.bmp 麻雀放浪記3.bmp 麻雀放浪記.bmp 麻雀放浪記.jpg 阿佐田哲也.jpg
 『麻雀放浪記』 (全4巻)/『麻雀放浪記』 角川文庫(全4巻) (表紙イラスト:黒鉄ヒロシ)/阿佐田哲也

麻雀放浪記  .jpg '69年に「週刊大衆」で連載が始まった阿佐田哲也(1929‐1989/享年60)のギャンブル小説ですが、「青春編」「風雲編」「激闘編」「番外編」と続き、彼の代表作となりました。この作品のヒットのお陰で、当時倒産の危機にあった双葉社は経営が持ち直して新社屋を建てたというから、昭和40年代って麻雀ブームだったんだなあと、改めて思いました。

 しかしこの小説で描かれているのは昭和40年代ではなく、終戦後まもなくの時代。上野のドヤ街をはじめ、その時代の情景やそこに生きた人々の息吹が、麻雀という勝負事を通して、圧倒的シズル感をもって伝わってきます。さすが、後に「色川武大」の本名で直木賞をとることだけはある筆力!

 ギャンブル小説なのでほとんど全編ヤクザな世界を描いたものなのですが、同時に、(明らかに阿佐田哲也がモデルであるところの)〈坊や哲〉の子どもから大人への成長物語にもなっています。〈坊や哲〉以外にも、〈ドサ健〉、〈上州虎〉、〈出目徳〉といった魅力的なキャラが多く登場し、随所で紹介されるイカサマ技も面白かったです。最初から、お互いにイカサマで最高の手で上がることしか考えていない麻雀とか、自分の情婦から果ては自宅の権利書まで賭けて、何と死人が出ても続けている麻雀って、「ちょっとスゴ過ぎ」という感じでした。

麻雀.bmp麻雀放浪記2.jpg麻雀放浪記3.jpg イラストレーターの和田誠氏の監督により'84年に映画化されましたが、配役がまずまずハマっていて、白黒で撮影したのも成功していたと思います(和田誠氏の初監督作品とよく言われるが、和田氏は60年代に「殺人 MURDER!」('64年)という短篇アニメーション映画を自主制作・監督している)。
映画「麻雀放浪記」('84年/東映)(映画パンフ :和田誠

高品格.jpg 〈ドサ健〉の鹿賀丈史も悪くなかったのですが、〈出目徳〉の高品格が特に良かったです(麻雀をしていて九蓮宝燈を和了ったまま死んでしまうのはこの〈出目徳〉)。「大都会」などのドラマに刑事役で多く出演した俳優で、俳優になる前はプロボクサーを目指していたらしいですが、味のあるバイプレーヤーでした。

『麻雀放浪記』(1984)2.jpg『麻雀放浪記』(1984).jpg「麻雀放浪記」●制作年:1984年●製作:角川春樹事務所●監督:和田誠●脚本:和田誠/澤井信一郎●撮影:安藤庄平●原作:阿佐田哲也(色川武麻雀放浪記06.jpg大)●時間:109分●出演麻雀放浪記49.jpg:真田広之/鹿賀丈史/高品格/加藤健一/名古屋章/大竹しのぶ/加賀まりこ/内藤陳/天本英世/笹野高史/篠原勝麻雀放浪記 kaga.jpg麻雀放浪記 加藤.jpg之/城春樹/佐川二郎/村添豊徳/木村修/鹿内孝/山田光一/逗子とんぼ/宮城健太郎●劇場公開:1984/10●配給:東映 (評価★★★★)

加賀まりこ(オックスクラブのママ・八代ゆき)/加藤健一(女衒の達)

麻雀放浪記1 青春篇.jpg麻雀放浪記 1 青春篇 (1) (文春文庫)』 ['07年]

田中小実昌・色川武大(阿佐田哲也)・殿山泰司
田中小実昌 色川武大 殿山泰司 .jpg

【1979年文庫化[角川文庫(全4巻)]/2007年再文庫化[文春文庫(全4巻)]】

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