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〈ラーメン・ウエスタン〉のスタイル。人物造型もウェットでないのがいい。

「タンポポ」米国版ポスター.jpgタンポポ図2.jpgタンポポ 1985.jpg tampopo.jpg
タンポポ<Blu-ray>」/「Tampopo」米国版DVD

米国版ポスター['16年]

タンポポ6.jpg 長距離タンクローリーの運転手ゴロー(山﨑努)とガン(渡辺謙)がとある寂れたラーメン屋に入ると、店主のタンポポ(宮本信子)がタンポポ1.jpg幼馴染の土建屋ビスケン(安岡力也)にしつこく交際を迫られていたところだった。それを助けようとしたゴローだが逆にやられてしまう。翌朝、タンポポに介抱されたゴローはラーメン屋の基本を手解きしタンポポに指導を求められる。そして次の日から「行列のできるラーメン屋」を目指し、厳しい修行が始まる―。

タンポポ8.jpg 1985(昭和60)年公開の伊丹十三(1933-1997/64没)脚本・監督による「ラーメンウエスタン」と称したコメディ映画で、伊丹十三監督作としては、長「タンポポ」es.jpg編第1作「お葬式」('84年)と第3作「マルサの女」('87年)の間にくる作品ですが、公開当時は「お葬式」ほど注目されず、「マルサの女」が伊丹十三監督としての3年ぶりのブレイク作品になったように思います。実際、「お葬式」と「マルサの女」はそれぞれ第58回と第61回のキネマ旬報ベスト・テン第1位に選ばれていますが、この「タンポポ」はベストテンにも入っていません(ベストテン第11位)。やはり、ラーメン店の再興というのが、テーマ的に小粒と思われたのでしょうか(三谷幸喜監督の「ラヂオの時間」('97年/東宝)で渡辺謙がタンクローリ0「藤田「タンポポ」.jpgーの運転手役で出演しており、この作品へのオマージュととれるし、三谷幸喜監督がこの作品を高く評価していることが窺える)。

藤田敏八(歯が沁みる男)

 「お葬式」は名画座で観て、「タンポポ」は90年頃ビデオで観ましたが(この作品はその後なかなかDVD化されず、先にDVD化された米国からの輸入版で観た人も多いようだ)、意外と「タンポポ」の方が面白かったのではないかと後で思いました。「タンポポ」米国版ポスター2.jpg伊丹十三作品の人気ランキングなどを見ると、「お葬式」「マルサの女」と並んでこの「タンポポ」はベスト3に入っていることが多いですし、個人的には、「マルサの女」に匹敵する面白さだとは思っていましたが、今回観直して、これは「マルサの女」よる上ではないかと(評価○から◎に変更!)。

 米国では日本公開の翌年の1986年12月にニューヨークのジャパン・ソサエティーにて初上映され、翌年3月、近代美術館(MOMA)で新人監督シリーズの一本として上映されるとたちまち話題を呼び、一般公開にて大ヒットを記録、その年の全米の外国映画興行成績第5位にランクインし、その後も長きに渡り"海外でヒットした日本映画"として、世界中に記憶されることとなったといいます。

2016年10月、4Kデジタルリマスター版での30年ぶりの全米公開が決まり、皮切り上映されたニューヨークで、新たに制作された米国版ポスターを前に舞台挨拶をする宮本信子氏[写真:産経新聞(三品貴志氏撮影)]
  
タンポポ山崎.jpg 米国で受け入れられたのは、〈ラーメン・ウエスタン〉のスタイルで「シェーン」('53年)を換骨奪胎したストーリータンポポ図2 (2).jpgを作り上げたことが大きいと思います。ラーメン店を一人で営む宮本信子の下にふらりと店に入ってきたトラック運転手の山崎努にしても常にカウボーイハットだし、自分たちの店のラーメンの味を貶された男たりがタンポポの店に押し掛ける時も、4人の男の内1人はさりげなくカウボーイハットで大いなる西部J.jpgした(ここは「OK牧場の決斗」('57年)風か)。そう言えば、土建屋の安岡力也も洋風の帽子でした。山崎努と殴り合った末に友情を築くのは、グレゴリー・ペックとチャールトン・ヘストンの延々と続く殴り合いのシーンで知られる「大いなる西部」('58年)へのオマージュではないでしょうか。アメリカ人は観ていてぴんとくるのでしょう。

「大いなる西部」('58年)チャールトン・ヘストン/グレゴリー・ペック

 山田洋次監督、高倉健主演の「遙かなる山の呼び声」('80年)なども「シェーン」へのオマージュ作品(ほぼパクリか)ですが、「タンポポ」の場合、ストーリー的には予定調和でありながらも、日本人的なウエットなキャラクターではなく、アメリカ映画的なドライな人物造形を意図的に模倣している点が、アメリカでスムーズに受け入れられる要因となったのではないかと思います。

「タンポポ」ロード.jpg また、この作品の中には、13の食べ物にまつわるエピソードが織り交ぜられているということで、それらも愉しめたし、今思うと、錚々たる面子(メンツ)の俳優がそれらサブストーリーに出ていたことが思い起こされ、暫く観ていない人は観直してみるのもいいのではないでしょうか。メインストーリーに関わる登場人物が主役の宮本信子、山崎努らを含め23名なのに対し、サブストーリーの登場人物が冒頭の役所広司、黒田福美(ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」のパロディか。黒田福美はこの作品以降、伊丹作品の常連に)を筆頭に46名と倍以上いるといいいます。

タンポポ 大友.jpg また、渡辺謙演じるガンが本を読みながら頭の中で描き出しているラーメンの先生を演じた大友柳太朗(1912‐1985/73歳没)は、この映画が公開される前の1985年9月27日、東京都港区の自宅マンション屋上から飛び降り自殺しています。したがって、この「タンポポ」が遺作となったわけですが、死の前日には自ら監督の伊丹十三(この人も'97年に自殺することになるのだが)に電話をかけ、自分の出番がすべて撮影済みであることを確認していたそうです。

市川右太衛門・大友柳太朗「大江戸七人衆」('58年)/大友柳太朗「酒と女と槍」('60年)/「赤穂浪士」('61年)
大江戸七人衆6.jpg酒と女と槍002.jpg赤穂浪士 大友.jpg この大友柳太朗という人は、1950年代には「片岡千恵蔵・市川右太衛門の両御大、中村錦之助・東千代之介・大川橋蔵の三羽烏よりも稼ぎ頭だ」と言われたほどの人気で、松田定次監督の「大江戸七人衆」('58年/東映)の七人衆の一人、旗本の平原役は市川右太衛門と同格か次席格で、大川橋蔵や東千代之介より上の格付けでしたし、内田吐夢監督、海音寺潮五郎原作の「酒と女と槍」('60年/東映)では主人公の富田高定を演じ(この映画、高定の"上司"格である前田利長役で片岡千恵蔵が客演している)、これも松田定次監督の「赤穂浪士」('61年/東映)でも原作者・大佛次郎が創造したキャラクターでフジテレビ「北の国から」 .jpgある、千坂兵部(市川右太衛門)の命により大石内蔵助(片岡千恵蔵)ら赤穂浪士の動向を探る浪人「堀田隼人」という重要な役どころでした。80年代には現代劇において老人役として人気を博しましたが、次第に台詞覚えに苦労するようになり「老人性痴呆にかかった」と悲観しはじめ、不眠症にも悩まされるようになり、特に後輩の杉良太郎からの執拗なダメ出し・批判に悩まされ、自信を喪失していったとのことです。

フジテレビ「北の国から」右は吉岡秀隆


タンポポs.jpg 因みに、西洋レストランで行われていた岡田茉莉子が講師を務めるマナー講座の近くの席で、パスタをすすったりげっぷを放つなどの騒音を出し、生徒たちが全員真似てパスタをすすって食べる元凶となった太った外人は、フランス出身のパティシエで日本で初となるフランス菓子専門店を開店させたアンドレ・ルコント(1932-1999)という人です。東京オリンピックを翌年に控えた1963年、ホテルオークラのシェフ・パティシエとして初めて日本を訪れ、本格的な砂糖菓子の彫刻を日本で最初に広めた人物です。


タンポポ5.jpgタンポポ4.jpg「タンポポ」●制作年:1985年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:田村正毅●音楽:村井邦彦●時間:115分●出演:山﨑努/宮本信子/渡辺謙/役所広司/安岡力也/加藤嘉/桜金造/大滝秀治/黒田福美/岡田茉莉子/高橋長英/橋爪功/大犮柳太朗/津川雅「タンポ」ポ 橋爪.jpg彦/原泉/藤田敏八/高見映/ギリヤーク尼ヶ崎/洞口依子/アンドレ・ルコント/中村伸郎/林成年/田武謙三/井川比佐志/三田和代/大月ウルフ/上田耕一●公開:1985/11●配給:東宝(評価:★★★★☆)

橋爪功(ホテルのボーイ)

《読書MEMO》
●挿入されるエピソード(順不同。とりあえず13?)
タンポポ 紹興酒 海老.jpg・白服の男(役所広司)とその情婦(黒田福美)が冒頭に登場し、映画館の最前列を陣取って食事をしようとする。
・白服の男と情婦が口移しで生卵の黄身を崩さず何度もやりとりする(このほかに、白服の男が生きたままのエビに紹興酒をかけ、情婦の下腹に乗せ、情婦がくすぐったがって悶絶するというシーンもある)。
・白服の男が海辺の若い海女(洞口依子)から買った生牡蠣を食べ、殻で切った唇の血をその若い海女が舐める。
・ガンが頭の中で創造した老人(大友柳太朗)が、彼にラーメンの由緒正しい食べ方を教える。
・レストランで食事マナーを生徒に教える講師(岡田茉莉子)の傍で外国人がズズッーとスパゲッティを啜って食べる。
・接待での場でフランス語メニューの読めない顧客と上司が当たり障りない注文し、フランス語は読めるが空気が読めない新米社員が高級料理や高級ワインを次々にオーダーする。やり取りを見たボーイ(橋爪功)は密かにほくそ笑む。
・そば屋で餅を喉につまらせた老人(大滝秀治)が、ゴローらに助けられて、御礼にとスッポン料理を一同に振舞う。
・食の細いターボー(タンポポの息子)にホームレスのシェフ(高見映)が、自分がリストラされたレストランに夜忍び込み、本物のオムライスを作って食べさせてやる(高見映は"ノッポさん"の帽子を被っている)。
・親から自然食しか与えらない子がソフトを食べる男(藤田敏八)をじっと見るので、男は自分のソフトをやる。
・食品店の柔らかい食材を触り回る老婆(原泉)とそれを見張る店長(津川雅彦)が深夜の店内で追っかけっことなる。
・東北大名誉教授を装うスリ(中村伸郎)に北京ダックを奢り、偽投資話で騙そうとする詐欺師(林成年)だったが...。
・幼い子どもらを持つ男(井川比佐志)が、危篤の妻(三田和代)にどうしてよいか分からずチャーハンを作らせる。
・ラスト‥クレジットロールの背景に映し出される「授乳」シーン(人間にとって最初の食事であるということか)

タンポポ13.jpg

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やはり一筋縄ではいかない。「怒り」というタイトルは複数形と捉えるべきなのか。
吉田修一  怒り.jpg怒り 上.jpg 怒り 下.jpg 怒り dvd.jpg
怒り(上)(下)』['14年] 『怒り 上下巻セット』['14年] 「怒り DVD 通常版['17年]2016年映画化(出演:渡辺謙/森山未來/松山ケンイチ/綾野剛/広瀬すず/高畑充希/宮崎あおい)

 八王子市の新興住宅街で夫婦が惨殺され、現場には「怒」の血文字が残されていた。事件から1年後の夏、千葉・房総の漁港で暮らす洋平・愛子父子の前に「田代」という若者が現われ、東京で大手IT企業に勤め、末期がんの母を見舞いながら暮らすゲイの優馬は、新宿のサウナで「直人」と出会って同居するようになり、沖縄の離島へ母と引っ越し母娘でペンションの手伝いをする女子高生・泉は、無人島で「田中」という男と知り合う。それぞれに前歴不詳の「田代」「直人」「田中」という3人の男。一方、事件を捜査する八王子署の刑事・北見らは、整形手術をして逃亡を続ける犯人・山神一也が一体どこにいるのかを追っていた―。

 2013年に「読売新聞」朝刊に半年にわたって連載された作品で、2007年に起きた英会話学校講師リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件の犯人・市橋達也(当時28歳)の逃避行(2009年逮捕、手記を発表している)など、現実の事件を想起させるものがありました。市橋達也は逃亡期間中に整形手術をし、建設現場で働き、更に沖縄の離島に潜伏していた時期があったとされているため(しかもゲイのハッテン場にいたという目撃情報もあったらしい)、少なくともあの事件はモチーフになっているものと思われます。

 意外と早いうちに犯人らしきが登場するなあと思ったら、そのうち3人も「犯人候補」が出てきて、流石、やっぱりこの作家は一筋縄ではいかないなあという印象でしょうか。謎解きもさることながら、こうした「枠組み」に独自性があって、そのことは前作『愛に乱暴』('13年/新潮社)でも言えますが、但し前作は、ある種"叙述トリック的"な「枠組み」の方が勝ち過ぎてしまったのと、登場人物たちに共感できなかったために△。今回は、指名手配の山神の情報に触れた千葉・東京・沖縄の各舞台の当事者・関係者たちの心の中に浮かんだ疑惑の念や、それが当事者にとって大切な人になればなるほど膨らむ猜疑心と信じたい気持ちとの葛藤がよく伝わってきて○、といった自分の中での評価です。

 雰囲気的には初期作品『パレード』('02年/幻冬舎)を想起させる部分もあったように思います。最も意外な人物が犯人でした。ただ、「怒り」というタイトルから、犯人の犯行動機にある種テーマがあるのかと思いましたが、この部分は解明されておらず、犯人はある意味、人格的に「壊れていた」というだけのことだったともとれます。さらに、真犯人へと導く伏線も特に無かったように思われ、純粋に推理小説として読んでしまうと、後半はカタルシス不全が生じるかもしれません。

 そうしたことなども踏まえると、この「怒り」というタイトルは、複数形と捉えるべきなのかもしれません。沖縄の辰也の怒りなのかもしれないし、「犯人候補」となった2人の男たちの怒りなのかもしれません。辛くやるせない話が多いストーリー展開の中で、愛子の物語をハッピーエンドにし、泉にも将来に向けて幾許かの光明を見出せるような終わり方にしたのは救いでした。

 一方で、独身の刑事・北見と深い関係を持つようになった美佳については、その過去は明かされず、二人の関係も発展しないままで、これでこの話がお終いであるならばやや中途半端かも。「刑事・北見」でシリーズ化して、再登場させるのでしょうか。そうなったらおそらく自分はまた読むだろなあ。正直、自分自身この作品に対し、若干のカタルシス不全があっただけに...。

ポスター撮影:篠山紀信
映画 怒り_0_m.jpg映画 怒りド.jpg(●2016年に監督が「悪人」('10年/東宝)の李相日(リ・サンイル)、主演が渡辺謙で映画化された。千葉篇が松山ケンイチ(田代)・宮崎あおい(愛子)、東京編が綾野剛(直人)・妻夫木聡(優馬)、沖縄編が森山未來(田中)・広瀬すず(泉)という配役で、豪華キャストと言えるかも。 映画化にあたり「映画『オーシャンズ11』のようなオールスターキャストを配してほしい」というのが原作者・吉田修一氏の要望だったらしい。役者一人一人の演技は悪くなく、ストーリーも映画「怒り」.jpg映画「怒り」2.jpg原作にほぼ忠実だったように思う。但し、愛子の父・洋平(渡辺謙)が比較的映画 怒り 7.jpg前面に出て、北見刑事(三浦貴大)は後退し、美佳も出てこない。それと、"伏線"が無かった原作に対し、犯人の「壊れていた」感を出すためか、途中で原作に無いエピソードを入れている。また、愛子の物語をハッピーエンドにしているのは原作と同じだが、泉は何か気の毒なまま終わったように思えた。ただ、原作を読んでなくて犯人を知らないで観た人にとっては、プロセスにおいては結構面白かったのではないか。行定勲監督により映画化された「パレード」('10年/ショウゲート)と原作からして構造がやや似ている。)

映画 怒りc.jpg「怒り」●制作年:2016年●監督・脚映画 怒り.jpg本:李相日(リ・サンイル)●製作:市川南●撮影:笠松則通●音楽:坂本龍一●原作:吉田修一●時間:142分●出演:渡辺謙/森山未來/松山ケンイチ/綾野剛/広瀬すず/佐久本宝/ピエール瀧/三浦貴大/高畑充希/原日出子/池脇千鶴/宮崎あおい/妻夫木聡●公開:2016/09●配給:東宝(評価:★★★☆)

「怒り」1松山.jpg 「怒り」2綾野.jpg 「怒り」3森山.jpg
「怒り」1宮崎.jpg 「怒り」2高畑.jpg 「怒り」3広瀬.jpg

【2016年文庫化[中公文庫(上・下)]】

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事実にフィクションを織り交ぜることで、長編としての完成度が高まった 『総員玉砕せよ!』。

総員玉砕せよ! 1973.jpg 総員玉砕せよ!.jpg    硫黄島からの手紙 dvd.jpg 硫黄島からの手紙   00.jpg
『総員玉砕せよ!!―聖ジョージ岬・哀歌』『総員玉砕せよ! (講談社文庫)』「硫黄島からの手紙 [DVD]」渡辺謙/二宮和也

 '73(昭和48)年8月に講談社より刊行された書き下ろし長編戦記漫画(刊行時タイトルは『総員玉砕せよ!!―聖ジョージ岬・哀歌』、原型は初期の絵巻風作品『ラバウル戦記』)で、作者の戦記モノには、『敗走記』など自らの従軍体験に基づくものと、『白い旗』など戦争史料に基づくものがありますが、ニューブリテン島を舞台に「ラバウル玉砕」を描いたこの作品は、作者自身は'91 年版のあとがきで「90%以上は事実」としています。

 但し、『ラバウル戦記』が殆ど作者の実体験に基づいた記録風の作品であるのに対し、講談社文庫版解説の足立倫行氏によると、この物語で描かれている1回目の"不完全な"玉砕と2回目の玉砕の内、2回目の玉砕は現実には無く、1回目の玉砕を果たせなかった責任を負って将校2名が自決させられたのは事実だそうですが(これは、この作品でも描かれている)、残った将校たちは次の戦闘が無かったために生き延びたとのこと。更には、作者自身は、マラリアで寝込んでいた時に空爆を受け、左腕を失って後方に退き、ラバウル近郊の傷病兵部隊で療養していたため、不完全に終わった最初の玉砕の際にも現地にはいなかったとのことです。

 しかし、この長編作品を書き下ろすに際し(作者の戦記マンガの殆どは短編)、作品中の丸山二等兵に自身を仮託し、自らが所属した部隊の日常と非日常を描くとともに(仲間が鰐に食べられたり、魚が口に飛び込んで死んだりしたというのは"日常"と解すべか"非日常"と解すべきか、ともかく尋常では無い日常なのだが)、その丸山二等兵を"幻の"2回目の玉砕に登場させるなどのフィクションを織り込んでいることは、足立氏が指摘するように、この作品の長編としての成功に繋がっているように思いました。

 結局、当時の南方の島で追い詰められた日本兵達は、悪化する戦況の中で「精神論」を最大の拠り所に戦っていたように思われ、そのため敵前逃走や玉砕の失敗に過敏になり、自らの部隊の士気を維持するために仲間内で処刑を行ったりして"裏切り者"を排除しようとしたのだなあ。「そうしないと示しがつかない」という意識から「示しをつける」ということ自体が目的化してしまうところが日本的であるように思われました。

 責任をとらされて腹を切らされる将校も辛いけれど、兵隊は兵隊で大変。作者は「将校、下士官、馬、兵隊といわれる順位の軍隊で兵隊というのは"人間"ではなく馬以下の生物と思われていた」とし、その実態が作品中にも描かれていますが、「玉砕で生き残るというのは卑怯ではなく、"人間"としての最後の抵抗ではなかったか」と書いています。

水木しげる「総員玉砕せよ」.jpg そもそも、「ラバウルの場合、後方に十万の兵隊が、ぬくぬく生活しているのに、その前線で五百人の兵隊に死ねと言われても、とても兵隊全体の同意は得られるものではない」とも書いており、物語の中で、部下に突入を命じながら「君達の玉砕を見届ける義務がある」といって自身はそこに留まろうとしている内に流れ弾に当たって死んだ参謀も、実際には「テキトウな時に上手に逃げた」とのこと(この部分は事実の改変部分であると作者自身が書いている)。

「総員玉砕せよ!」より

 日本において戦争が映画化され、その悲惨さが描かれることがあっても、こうした部隊内の矛盾が描かれることはあまり無く、国家のために命を落とした人達を英霊として尊ばなければならないという意識の方が優先された描き方になっていることが多いように思います(最近その傾向が強まってきているし、また、そうした意識の強い人が映画を撮っている)。

硫黄島からの手紙2.jpg 最近の映画の中では強いて言えば、太平洋戦争末期の硫黄島攻防の際の日本側最高司令官であった栗林忠道陸軍中将を主人公にした「硫黄島からの手紙」('06年)の中で、そうした軍隊の内部粛清などの非人間的な面も比較的きっちり描いていたように思われますが、これはクリント・イーストウッドが監督した「アメリカ映画」です(ゴールデングローブ賞「外国語映画賞」、ロサンゼルス映画批評家協会賞「作品賞」受賞作)。

 栗林忠道が人格者であったことは間違いないと思われ、映画での描かれ方においても、その"悲劇のヒーロー"ぶりが強調され、これもある種ハリウッド・スタイルの作品と言えますが、一方で、軍隊というものを美化せずに、その組織内部の矛盾をも描いている点は、さすがクリントイーストウッド、とも言えるのかも。

鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争.jpg 尚、『総員玉砕せよ!』は、NHKスペシャルで'07 年 8 月 12 日に「鬼太郎が見た玉砕」というタイトルで香川照之主演でドラマ化されたものが放映されていますが個人的には未見です。

鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争~ [DVD]

「鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争~」●演出:柳川強●作:西岡琢也弘●撮影:毛利康裕●音楽:大友良英●原作:水木 しげる●出演:香川照之/田畑智子/塩見三省/嶋田久作/榎木孝明/北村有起哉/石橋蓮司/神戸浩/壌晴/瑳川哲朗/木村彰吾/今村雅美/高田聖子/(声)野沢雅子/田の中勇/大塚周夫●放映:2007/8/12(全1回)●放送局:NHK

硫黄島からの手紙1.jpg「硫黄島からの手紙」●原題:LETTERS FROM IWO JIMA●制作年:2006年●制作国:アメリカ●監督:クリント・イーストウッド●製作:クリント・イーストウッド/スティーヴン・スピルバーグ/ロバート・ロレンツ●脚本:アイリス・ヤマシタ●撮影:トム・スターン●音楽:カイル・イーストウッド/マイケル・スティーヴンス●時間:141分●出演:渡辺謙/二宮和也/伊原剛志/加瀬亮/中村獅童/渡辺広/坂東工/松崎悠希/山口貴史/尾崎英二郎/裕木奈江/阪上伸正/安東生馬/サニー斉藤/安部義広/県敏哉/戸田年治/ケン・ケンセイ/長土居政史/志摩明子/諸澤和之●日本公開:2006/12●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)      中村獅童 in「硫黄島からの手紙」

【1985年単行本[ほるぷ平和漫画シリーズ(25)(『総員玉砕せよ―聖ジョージ岬・哀歌』)]/1991年単行本[講談社・水木しげる戦記ドキュメンタリー(1)]/1995年文庫化[講談社文庫]/2007年ムック版[集英社(SHUEISHA HOME REMIX)』)(『総員玉砕せよ!―戦記ドキュメント』]】

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「黄粱一炊の夢」乃至「胡蝶の夢」。自殺した妻との邂逅は「惑星ソラリス」へのオマージュか。

インセプション チラシ.jpgインセプション dvd.jpg   マトリックス dvd.jpg  惑星ソラリス dvd.jpg
インセプション [DVD]」「マトリックス 特別版 [DVD]」「惑星ソラリス [DVD]
「インセプション」チラシ

 人の夢に入り込むことでアイデアを"盗み取る"産業スパイ・コブ(レオナルド・ディカプリオ)に、大企業のトップ・サイトー(渡辺謙)が、ライバル企業の社長の息子ロバート(キリアン・マーフィー)に父親の会インセプション2.jpg社を解体させるアイデアを"植えつける(インセプション)"仕事を依頼する。自殺した妻モル(マリオン・コティヤール)殺害の容疑をかけられ子供に会えずにいたコブは、犯罪歴抹消と引き換えに仕事を引き受けることにし、コブ及びサイトーに、コブの仕事仲間のアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)、夢の世界の「設計士」アリアドネ(エレン・ペイジ)、ターゲットの思考を誘導する「偽装師」イームス(トム・ハーディ)、夢の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合師」ユスフ(ディリープ・ラオ)の4人を加えた計6人で、ロバートの夢の中に潜入する―。

Inception(2010).jpgInception.jpg 最初は6人がこれからやろうとしていることの説明(理屈)が多くてややダルかったけれども、実際に夢への潜行が始まると、「夢」から「夢の中の夢」に、更に「夢の中の夢の中の夢」に降りて行くという発想が面白く、思いつかないことでもないけれど、よくこれを「お話」にして「映像化」したものだと―。突っ込み所は多いのですが、つい先月['11年7月]発表された英国の映画誌「TOTAL FILM」の投票による"史上最高のSF映画べスト10"で、今世紀の作品として唯一8位にランクインしています。
Inception(2010)
                  
インセプション1.jpg 実際に夢の第1階層(雨のL.A.)、第2階層(ホテル)、第3階層(雪の要塞)のそれぞれで繰り広げられるのは、カーチェイスだったり銃撃戦だったりと定番のアクションなのだけれど(敵はロバートの潜在意識に既にインセプションされているライバル企業側の輩)、下の階層に行くにつれて相対的に上の層より時間の流れが遅くなり、その分だけ時間稼ぎ出来るといった着想などはなかなか秀逸ではないかと思われ(「黄粱一炊の夢」「邯鄲の夢」の"二乗"ということか)、ラストも、コブは本当に現実世界に戻ってきたのか、ちょっと気を持たせる終わり方でした(この辺りはむしろ「胡蝶の夢」か)。(2010年度・第37回「サターンSF賞」受賞作)
                      
マトリックス 映画.jpg 仮想現実世界での戦いと言えば、ウThe Matrix(1999).jpgォシャウスキー兄弟の「マトリックス」('99年/米)(1999年度・第26回「サターンSF賞」受賞作)を想起しますが、ストーリー的にはこの 「インセプション」 の方が凝っているのでは。但し、「マトリックス」は、シリーズを通してファッションの方に凝っていて、夢と現実世界を結ぶのが"公衆電話"や"黒電話"であるなどというキッチュな味付けもありましたが、それに比べると「キック」というのはやや原始的。物理的な衝撃によって眠り(夢)から覚めるというのは、オーソドオクスと言えばオーソドックスですが。

The Matrix(1999)

 全体としては、いろんなものを詰め込み過ぎた(オタク系でもあり恋愛系でもある)「マトリックス」よりも、ストレートなアクション系に近いこっちの方が好みですが、いっそのこと、"亡き妻への追慕"といったモチーフも織り込まないで、「夢の階層構造」のみを中心モチーフに据えたアクションに徹しても良かったように思います。

惑星ソラリス11.jpg 映像面でスタンリー・キューブリックの「惑星ソラリス12.jpg2001年宇宙の旅」('68年/米)や、アンドレイ・タルコフスキー作品へのオマージュが見られますが、モチーフとして特に似ているのはタルコフスキーの「惑星ソラリス」('72年/ソ連)ではないでしょうか。

惑星ソラリス1.jpg 「惑星ソラリス」の宇宙飛行士であり科学者でもある主人公(ドナタス・バニオニス)は、"意識を持つ"惑星ソラリスを調査する中で、ソラリスが主人公の記憶の中から再合成して送り出してきた「かつて自殺した妻」(ナタリア・ボンダルチュク)と邂逅し(「インセプション」も同じ)、その仮想現惑星ソラリスSOLARIS 1972.jpg実世界の虜囚となってしまうのですが、クリストファー・ノーランは、どうしてもあの作品のモチーフを使いたかったのでしょうか。

「惑星ソラリス」のナタリア・ボンダルチュク(「戦争と平和」の監督セルゲイ・ボンダルチュクの娘)とドナタス・バニオニス

Wakusei Solarisu (1972).jpg 「惑星ソラリス」はタルコフスキー監督の中でも最も有名な作品ですが(カンヌ国際映画祭で「審査員特別グランプリ」及び「FIPRESCI(国際映画批評家連盟)賞」を受賞)、前半は何となく人間ドラマ風で、それが後半になるとぐっと哲学的で難解になるため、自分自身どこまで理解できたかやや心もとない? タルコフスキー監督の作品は晩年に向けてますます哲学的になっていき、同監督の作品の中では個人的にはどちらかと言えば抒情的な作風の「」('75年/ソ連)が好みです。「惑星ソラリス」のラストは所謂"解"を示さない終わり方でしたが、「インセプション」の終わり方もやや似ていて(思わせぶり?)、「インセプション」には、「惑星ソラリス」へのオマージュが相当に込められているように思われました。
Wakusei Solarisu (1972)

インセプション 富士川.jpg 「インセプション」には、700系新幹線「のぞみ」が富士川鉄橋を走る映像が出てきますが、「惑星ソラリス」では、未来都市のイメージとして、首都高速道路の赤坂惑星ソラリスSolaris-Highway-Scene-Tokyo-640x277.jpgトンネル付近を走行するクルマの車内から見た映像があり、こうした日本からの素材の抽出なども「惑星ソラリス」を意識しているのではないかと思いました。
Solaris-Highway-Scene-Tokyo
 
「インセプション」 クリストファー・ノーラン.jpgインセプション マリオン・コティヤール.jpg「インセプション」●原題:INCEPTION●制作年:2010年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クリストファー・ノーラン●製作:エマ・トーマス/クリストファー・ノーラン●撮影:ウォーリー・フィスインセプション 映画.jpgター●音楽:ハンス・ジマー●時間:148分●出演:レオナルド・ディカプリオ/渡辺謙/キリアン・マーフィー/トム・ベレンジャー/マイケル・ケイン/マリオン・コティヤール/ジョセフ・ゴードン=レヴィッド/エレン・ペイジ/トム・ハーディー/ディリープ・ラオ/ルーカス・ハ―ス/ロバート・フィッシャー/キリアン・マーフィ●日本公開:2010/07●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)
             
THE MATRIX title.jpgマトリックス チラシ.jpg「マトリックス」●原題:THE MATRIX●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ウォシャウスキー兄弟(アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー)ウォシャウスキー姉弟(アンディ・ウォシャウスキー&ラナ・ウォシャウスキー(性転換前はラリー・ウォシャウスキー))→2016年弟アンディ・ウォシャウスキーも性転換手術をしてリリー・ウォシャウスキーとなり、ウォシャウスキー姉妹に)●製作:ジョエル・シルバー●撮影:マトリックス 1999.jpgビル・ポープ●時間:136分●出演:キアヌ・リーブス/ローレンス・フィッシュバーン/キャリー=アン・モス/ヒューゴ・ウィービング/グローリア・フォスター/上野東急2.jpgジョー・パントリアーノ/マーカス・チョン/ジュリアン・アラハンガ/マット・ドーラン/ベリンダ・マクローリー/レイ・パーカー/ポール・ゴダード/ロバート・テイラー/デビッド・アストン/マーク・グレイ/エイダ・ニコデモ/ビル・ヤング/デヴィッド・オコナー●日本公開:1999/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:上野東急(99-10-11)(評価:★★☆)
上野東急 場所.jpg上野東急1.jpg上野東急閉館8.jpg上野東急 1957年1月19日「上野東急」オープン、1981年10月休館。1982年12月4日「上野とうきゅうビル」に建て替えられ、3階に「上野東急」、1階に「上野東映」(1998年3月「上野東急2」に改称)の2館体制で再オープン。2012年4月30日「上野とうきゅうビル」解体により閉館。

惑星ソラリス パンフレット.jpg惑星ソラリスs.jpg「惑星ソラリス」●原題:SOLARIS●制作年:1972年●制作国:ソ連●監督:アンドレイ・タルコフスキー●脚本:アンドレイ・タルコフスキー/フリードリッヒ惑星ソラリス チラシ.jpg・ガレンシュテイン●撮影:ワジーム・ユーソフ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●原作:スタニスワフ・レム「ソラリス」(「ソラリスの陽のもとに」)●時間:165分●出演:ナタリア・ボンダルチュク/ドナタス・バニオニス/ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー/アナトーリー・ソロニーツィン/ソス・サルキシャン/ユーリー・ヤルヴェト/ニコライ・グリニコ/タマーラ・オゴロドニコヴァ/オーリガ・キズィローヴァ●日本公開:1977/04●配給:日本海映画●最初に観た場所:大井武蔵野館(83-05-29)(評価:★★★☆) 「惑星ソラリス」1977年岩波ホール公開時パンフレット
 
鏡 Blu-ray.jpg鏡 パンフレット.jpg「鏡」●原題:ZERKALO●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:アンドレイ・タルコフスキー●脚本:アレクサンドル・ミシャーリン/アンドレイ・タルコフスキー●撮影:ゲオルギー・レルベルグ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●挿入詩:アルセニー・タルコフスキー●時間:108分●出演:マルガリータ・テレホワ/オレーグ・ヤンコフスキー/イグナト・ダニルツェフ/フィリップ・ヤンコフスキー/アナトーリー・ソロニーツィン●日本公開:1980/06●配給:日本海映画●最初に観た場所:岩波ホール (80-07-03) (評価:★★★★★  「鏡 Blu-ray」['13年]

「鏡」 1980年岩波ホール公開時パンフレット

《読書MEMO》
●英国の映画誌「TOTAL FILM」の投票による"史上最高のSF映画べスト10"(2011/07)
1位『ブレードランナー』('82)
2位『スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』('80)
3位『2001年宇宙の旅』('68)
4位『エイリアン』('79)
5位『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』('77)
6位『E.T.』('82)
7位『エイリアン2』(86)
8位『インセプション』('10)
9位『マトリックス』('99)
10位『ターミネーター』('84)

「●シドニー・ポラック監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2613】 S・ポラック「ザ・ヤクザ
「●「ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「ひとりぼっちの青春」)「●は行の外国映画の監督②」の インデックッスへ「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●「全米映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「トッツィー」) 「●ロバート・レッドフォード 出演作品」の インデックッスへ(「追憶」「愛と哀しみの果て」)「●メリル・ストリープ 出演作品」の インデックッスへ(「愛と哀しみの果て」)「●ダスティン・ホフマン 出演作品」の インデックッスへ(「トッツィー」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●ま行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●「報知映画賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「ラヂオの時間」)「●渡辺 謙 出演作品」の インデックッスへ(「ラヂオの時間」)「●桃井 かおり 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ(「ラヂオの時間」) 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(三鷹東映/渋谷文化)

邦題より原題が相応しいシビアな内容。ジェーン・フォンダの演技には鬼気迫るものがある。

ひとりぼっちの青春.jpg  彼らは廃馬を撃つ.jpg ホレス・マッコイ「彼らは廃馬を撃つ」.jpg    .映画「バーバレラ」(1968).jpg   追憶パンフ.jpg 
ひとりぼっちの青春 [DVD]」 「彼らは廃馬を撃つ」['70年/角川文庫]['88年/王国社]「バーバレラ」「追憶

『ひとりぼっちの青春』(1969)2.jpgひとりぼっちの青春1.png 1932年、不況下にハリウッドで行われた「マラソン・ダンス」の会場には、賞金を狙って多くの男女が集まっていた。ロバート(マイケル・サラザン)もその1人で、彼は、大会のプロモーター兼司会者(ギグ・ヤング)の手配により、グロリア(ジェーン・フォンダ)と組んで踊ることになるのだが―。

『ひとりぼっちの青春』(1969).jpg 「ひとりぼっちの青春」('69年/米)は、不況時のアメリカの世相と、一攫千金を願ってコンテストに参加し、ぼろぼろになっていく男女を通して、世相の退廃と人生の孤独や狂気を描いた作品で、 甘ちょろい感じのする邦題タイトルですが、原題は"They Shoot Horses, Don't They?"(「廃馬は撃つべし」とでも訳すところか)というシビアなもの(オープニングで馬が撃たれるイメージ映像が流れる)。

By Jeffrey Ressner.jpg 余興で行われた二人三脚競走で足がつって踊れなくなったロバートを、今までの苦労が水の泡になるとして無理やり引きずって踊ろうとするグロリアを演じたジェーン・フォンダの演技には、鬼気迫るものがありました(ジェーン・フォンダはこの作品でゴールデングローブ賞、ニューヨーク映画批評家協会賞の各「主演女優賞」を受賞)。

 グロリアは、もはや賞金のためではなく、自らの尊厳のために踊り続けようとする。しかし、このダンス・コンテスト自体がある種のヤラセ興行であることに気づいたとき、彼女はロバートに自殺幇助を頼み果てる―。"They Shoot Horses Don't They?"は、ロバートが子供の頃、父親から言い聞かされていた言葉だったというのが、強烈な皮肉として効いています。 

バーバレラ 1993.jpgBARBARELLAes.jpg 雑誌モデル出身のジェーン・フォンダは、この映画に出るまではセクシーさが売りの女優で、ピンク・コメディのようなものによく出演しており、この映画の前の出演作は、ロジェ・ヴァディム監督の「バーバレラ」('68年/伊・仏)というSFコミックの実写版でした。偶々テレビで観たという作品だったため、相対的に印象が薄かったのですが、この作品のオープニング、今観ると凄いね。ジェーン・フォンダの格好もスゴかったけれども、アニタ・パレンバーグの格好もスゴかった。

 そんな彼女が演技開眼したのが、この「ひとりぼっちの青春」であったことは本人も後に語っているところであり、その後2度もアカデミー主演女優賞を獲得しています。しかも、「黄昏」("On Golden Pond")の映画化権を買取り、父ヘンリー・フォンダに初のアカデミー主演男優賞をもたらす契機を作ってさえいます。一方、映画でアクの強いプロモーターを演じたギグ・ヤングは、この映画の8年後に、妻を射殺して自らも命を絶っています。シドニー・ポラック.jpg この作品は、今年('08年)5月に亡くなったシドニー・ポラック(1934‐2008/享年73)監督作で、この人の代表作には、「追憶」や「愛と哀しみの果て」などの大物俳優の組み合わせ作品や「トッツィー」('82年、アカデミー助演女優賞)などがあります。
 

『追憶』(1973) 3.jpg 「追憶」('73年)は、やはりあくまでもバーブラ・ストライサンドの映画という感じで、バーブラ・ストライサンドが政治活動に熱心な苦学生を、ロバート・レッドフォードがノンポリの学生を演じていますが、2人の20年後の再会から自分たちの歩んできた道を振り返る構成になっていて、よって「追憶(THE WAY WE WER)」というタイトルになるわけです。

『追憶』(1973) 1.jpg 何事にもひたむきにしか生きられない、不器用だが一途な女性をバーブラ・ストライサンドが好演、人間ってそう簡単には変われないのかもと...。

 テーマ曲もバーブラ・ストライザンドが歌っているわけで、これだけの歌唱力と演技力を兼ね備えているというのは考えてみれば凄い才能ということになります。一時期、ネスカフェ・コーヒーのCMが流れる度に思い出す映画でもありましたが、個人的にはこの映画のお陰で、暫くはロバート・レッドフォード自体にノンポリのイメージを抱いていました。

The way we were

愛と哀しみの果て  0.jpg そのロバート・レッドフォードがメリル・ストリープと共演したのが「愛と哀しみの果て」('85年)で、原作は「バベットの晩餐会」の原作者でもあるカレン・ブリクセン(イサク・ディーネセン)の文芸作品で、池澤夏樹氏が自身の個人編集の世界文学全集においてもチョイスしている『アフリカの日々』ですが、アカデミーの作品賞や監督賞を獲ったにしては中身はハーレクイン・ロマンスみたいだなあと...(原作から何か抜け落ちているのでは?)。でも、メリル・ストリープってコンプレックスを持った女性を演じるのが上手いなあとは思わされ、実際彼女ははこの作品でロサンゼルス映画批評家協会賞の「主演女優賞」受賞していますが、映画自体は全く自分の好みに合わなかったです(この他に、男爵を演じたクラウス・マリア・ブランダウアーがゴールデングローブ賞「助演男優賞」とニューヨーク映画批評家協会賞「助演男優賞」を受賞している)。

トッツィー1.jpg 「トッツィー」('82年)は、女装のダスティン・ホフマンがアカデミー主演男優賞(女優賞?)を獲るかと言われた映画ですが、むしろ共演トッツィーのジェシカ・ラング.jpgジェシカ・ラングの方が進境著しく、彼女はこの作品で、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ニューヨーク映画批評家協会賞全米映画批評家協会賞の各「助演女優賞」を受賞しています。個人的には、ソープオペラって収録が間に合わなくなると"生撮り"するというのが興味深かった...。日本でも昔のNHKの「お笑い三人組」や民放の「てなもんや三度笠」などは公開録画だったようですが。

 こうして見ると、男優よりもむしろ女優の方の魅力を引き出しているものが並び、「ひとりぼっちの青春」もその類ということになるのかも知れませんが、「ひとりぼっちの青春」に関しては、シドニー・ポラック監督作の中では忘れてはならない作品だと個人的には思っています。

ラヂオの時間1.jpg そう言えば、1993年に上演された劇団東京サンシャインボーイズの演劇で、三谷幸喜の初監督作品として映画化された「ラヂオの時間」('97年/東宝)が、ラジオドラマを生放送でやるという設定でした。主婦(鈴木京香)が初めて書いた脚本が採用されたのだったが、本番直前、主演女優(戸田恵子)が自分の役名が気に入らないと文句を言い出し、急きょ脚本に変更が加えられ、さらに辻褄を合わせようと次々と設定を変更していくうちに、熱海を舞台にしたメロドラマのはずだった物語がアメリカを舞台にした破天荒なSFドラヂオの時間2.jpgラマへと変貌していき、プロデューサー(西村雅彦)やディレクター(唐沢寿明)がてんてこ舞いするというもの。生放送ならではのドタバタが面白かったです。キネマ旬報ベストテンの第3位。この年の1位は宮崎駿監督んの「もののけ姫」で2位は今村昌平監督のパルムドールを獲った「うなぎ」でしたから、かなり高く評価されたと言えるのではないでしか(第22回「報知映画賞 作品賞」を受賞している)。日本ではコメディへの評価が低いので、十分に健闘したと言えるし、いいことだと思います(ただしその後、三谷幸喜監督作品は、「読者選出」の方でベストテンラジオの時間 渡辺謙.jpgに入ることはあっても、本チャンの選考委員選出の方ではなかなかベストテンに入ってこない。)。渡辺謙がラジオ番組ファンのタンクローリーの運転手役で出ているのは、彼が同じくタンクローリー運転手のゴン役で出ていた伊丹十三(1933-1997/64没)監督の〈ラーメン・ウエスタン〉ムービー「タンポポ」('85年/東宝)へのオマージュなのでしょう。カウボーイハットも被っているし―(「タンポポ」でカウボーイハットを被っていたのは、相方ゴロー役の山崎努だったが)。

  
「ひとりぼっちの青春」米国版 ポスター&ビデオカバー
[ひとりぼっちの青春.jpgThey Shoot Horses Don't They? video.jpgThey Shoot Horses Don't They?.jpg「ひとりぼっちの青春」●原題:THEY SHOOT HOURSES,DON'T THEY?●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:ジョン・グリーン●原作:ホレース・マッコイ 「彼らは廃馬を撃つ」●時間:133分●出演:ジェーン・フォンダ/マイケル・サラザン/スザンナ・ヨーiひとりぼっちの青春 の画像.jpgク/ギグ・ヤング/ボニー・ベデリア/マイケル・コンラッド/ブルース・ダーン/アル・ルイス/セヴァン・ダーデン/ロバート・フィールズ/アリン・アン・マクレリー/マッジ・ケネディ/レッド・バトンズ●日本公開:1970/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映ひとりぼっちの青春09.jpg78-01-17) (評価★★★★☆)●併映:「草原の輝き」(エリア・カザン)/「ジョンとメリー」(ピーター・イェイツ)

ジェーン・フォンダ(ニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞・ゴールデングローブ賞主演女優賞)

三鷹オスカー.jpg三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

ぴあ 三鷹東映.jpg 「ぴあ」1978年1月号
  
BARBARELLAs.jpgバーバレラ [DVD].jpgBARBARELLA.jpg「バーバレラ」●原題:BARBARELLA●制作年:1968年●制作国:イタリア/フランス●監督:ロジェ・ヴァディム●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ジャン=クロード・フォレ/クロード・ブリュレ/クレメント・ウッド/テリー・サザーン/ロジジェーン・フォンダ9.pngバーバレラes.jpgアニタ・パレンバーグ in 『バーバレラ』.jpgェ・ヴァディム/ヴィットーリオ・ボニチェッリ/ブライアン・デガス/テューダー・ゲイツ●撮影:クロード・ルノワール●音楽:チャールズ・フォックス●原作:ジャン=クロード・フォレスト「バーバレラ」●時間:98分●出演:ジェーン・フォンダ/ジョン・フィリップ・ロー/アニタ・パレンバーグ/ミロ・オーシャ●日本公開:1968/10●発売元:パラマウント(評価★★★)
バーバレラ [DVD]」アニタ・パレンバーグ/ジェーン・フォンダ in 「バーバレラ」
    

THE WAY WE WERE .jpg追憶 dvd.jpgThe way we were.gif「追憶」●原題:THE WAY WE WER●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:マービン・ハムリッシュ●原作:アーサー・ローレンツ●時間:118分●出演:バーブラ・ストライサンド/ロバート・レッドフォード渋谷文化劇場.png/ブラッドフォード・ディルマン/ロイス・チャイルズ/パトリック・オニール/ヴィヴェカ・リンドフォース●日本公開:1974/04●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:渋谷文化劇場(77-10-23) (評価★★★☆)●併映:「明日に向かって撃て!」(ジョージ・ロイ・ヒル)

渋谷文化劇場 1952年11月17日、渋谷東宝会館地下にオープン 1989年2月26日閉館(1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーがオープン)
    
愛と哀しみの果てdvd.jpg愛と哀しみの果て パンフ.jpg愛と哀しみの果てs.jpg「愛と哀しみの果て」●原題:OUT OF AFRICA●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:ジョン・バリー●原作:アイザック・ディネーセン(カレン・ブリクセン)「アフリカの日々」●時間:161分●出演:メリル・ストリープ/ロバート・レッドフォード/クラウス・マリア・ブランダウアー/マイケル・キッチン/マリック・ボーウェンズ●日本公開:1986/03●配給:ユニヴァーサル愛と哀しみの果て meriru .jpgクラウス・マリア・ブランダウアー.jpg映画●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12) (評価★★)●併映:「恋におちて」(ウール・グロスバード) メリル・ストリープ(ロサンゼルス映画批評家協会賞主演女優賞)ラウス・マリア・ブランダウアー(ゴールデングローブ賞助演男優賞・ニューヨーク映画批評家協会賞助演男優賞)
    
トッツィー ジェシカ・ラング.jpgトッツィー.jpg「トッツィー」●原題:TOOTSIE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:デイブ・グルーシン●時間:113分●出演:ダスティン・ホフマン/ジェシカ・ラング/ビル・マーレイ/テリー・ガー/ダブニー・コールマン/チャールズ・ダーニング●日本公開:1983/04●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:自由が丘武蔵野推理 (85-07-14) (評価★★★)●併映:「プレイス・イン・ザ・ハート」(ロバート・ベントン) ダスティン・ホフマン(全米映画批評家協会賞主演男優賞)ジェシカ・ラング(ニューヨーク映画批評家協会賞助演女優賞・全米映画批評家協会賞助演女優賞・ゴールデングローブ賞助演女優賞・アカデミー賞助演女優賞)

ラヂオの時間 スタンダード・エディション [DVD]
ラヂオの時間 1997.jpgラヂオの時間3.jpg「ラヂオの時間」●制作年:1997年●監督・脚本:三谷幸喜●製作:村上光一/高井英幸●音楽:服部隆之●原作:三谷幸喜/東京サンシャインボーイズ『ラヂオの時間』●時間:103分●出演:唐沢寿明/鈴木京香/西村雅彦/戸田恵子/布施明/井上順/細川俊之/小野武彦/藤村俊二/小野武彦/梶原善/並樹史朗/奥貫薫/近藤芳正/モロ師岡/田口浩正/梅野泰靖/(以下、特別出演)市川染五郎/桃井かおり/佐藤B作/宮本信子/渡辺謙●公開:1997/11●配給:東宝(評価:★★★★)

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