Recently in 溝口 健二 監督作品 Category

「●溝口 健二 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒「●山田 洋次 監督作品」【1469】 山田 洋次「家族
「●「芸術選奨(映画監督)」受賞作」の インデックッスへ(溝口 健二)「●宮川 一夫 撮影作品」の インデックッスへ 「●早坂 文雄 音楽作品」の インデックッスへ「●長谷川 一夫 出演作品」の インデックッスへ 「●香川 京子 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

江戸時代の人って、今われわれがこの映画を観るような感じで浄瑠璃を愉しんだのではないかと思わせる作品。
近松物語1poster.jpg近松物語 dvd.jpg 近松物語 00chikamatsu.jpg
近松物語 4K デジタル修復版 Blu-ray」香川京子(おさん)/長谷川一夫(茂兵衛)

近松物語chikamatsu1.jpg 京烏丸四条の大経師内匠は、宮中の経巻表装を職とし、町人ながら名字帯刀も許されていて、傍ら毎年の暦の刊行権を持ちその収入も大きかった。当代の以春(進藤英太郎)はその地位格式財力を鼻にかけて傲岸不遜の振舞が多かった。その二度目の若い妻おさん(香川京子)は、外見幸福そうだったが何とか物足らぬ気持で日を送っていた。おさんの兄・道喜(田中春男)は借金の利子の支払いに困ってその始末をおさんに泣きつく。金銭に関しては厳しい以春に断わられ、止むなくおさんは手代・茂兵衛(長谷川一夫)に相談、彼は内証で主人の印判を用い、取引先から暫く借りておこうとしたが、それが主手代の助右衛門(小沢栄太郎)に見つかる。彼は潔く以春に詫びるが、以春の厳しい追及近松物語 05.jpgにもおさんのことは口に出さない。ところがかねがね茂兵衛に思いを寄せていた女中のお玉(南田洋子)が心中立に罪を買って出る。以前からお玉を口説いていた以春の怒りは倍加して、茂兵衛を空屋に檻禁する。お玉はおさんに以春が夜になると屋根伝いに寝所へ通ってくることを打明ける。憤慨近松物語 04.jpgしたおさんは、一策を案じて、その夜お玉と寝所を取り替えて寝る。ところがその夜その部屋にやって来たのは茂兵衛だった。彼はお玉へ一言礼を言いに来たのだが、思いがけずそこにおさんを見出し、しかも運悪く助右衛門に見つけられて不義密通だと騒がれる。遂に二人はそこを逃げ出す。琵琶湖畔で茂兵衛はおさんに思慕を打明けて二人は強く結ばれ、以後役人の手を逃れつつも愛情を深めていく―。

近松物語5.jpg 1954年公開の溝口健二監督作で、近松門左衛門作の「大経師昔暦」を川口松太郎が劇化(オール読物所載「おさん茂兵衛」)し、それをもとに依田義賢が脚色したもの。近松門左衛門作は30年以上前に起きた京都四条烏丸の大経師の妻おさんが手代の茂兵衛と不義に陥り処刑された事件をベースに(この事件は井原西鶴も「好色五人女」で近松に先駆けて元ネタにしている)、処刑された男女の三十三回忌に合わせてその事件の顛末を世話浄瑠璃に仕立てたとのことですが、観ていて、江戸時代の人って、今われわれがこの映画を観るような感じで浄瑠璃を愉しんだのだろうなあと思わせる作品です。

進藤英太郎(大経師以春)/南田洋子(お玉)

近松物語6-4.jpg 一方で、映画は原作から改変されている部分もあり(川口松太郎によるものと思われるが)、近松の「大経師昔暦」では、茂兵衛がお玉の親切に報いるために、かねてから自分を慕っていたお玉の気持ちに応えようとお玉の寝所に忍び込み、その時、お玉の代わりに控えていたおさんは、以春が忍んできたと思い込み、暗闇のなかでそのまま茂兵衛と実際に交情を交わしてしまい、これが二人の結びつく契機となったことになっています。それを映画では、その場で交情に至らなかったものの以春にその関係を疑われ、不義の濡れ衣を被せられたように改変近松物語 kagawa.jpgされていてます。こうして二人が逃避行に至るまでがテンポ良く描かれ、更に、二人のプラトニックな関係を中盤以降に引っ張る作りとなって、その分観る者の感情移入を促すし、香川京子という女優のイメージとも合致していて良かったのではないかと思います(これが当初予定されていた小暮実千代や京マチ子だとまた違った展開になったのか?)。

香川京子(おさん)

 茂兵衛役の長谷川一夫は、大映社長・永田雅一の強い要請での起用でしたが、スター嫌いだった溝口健二監督は、貧しい育ちで"素朴な"手代・茂兵衛を構想していたのに、長谷川一夫が徹頭徹尾"洗練された"演技姿勢を崩さなかったため、作品全体に対して不満を抱いていたとのことです。個人的には、歌舞伎役者時代に女形で鳴らした長谷川一夫だけに、手代という受け身的な立場の人間の仕草をさらっと演じているのは流石だと思いました。

近松物語 00.jpg 「西鶴一代女」('52年/新東宝)で1952年・第13回ヴェネツィア国際映画祭の「国際賞」を受賞し、それに続いて翌年、翌々年と「雨月物語」('53年/大映)、「山椒大夫」('54年/大映)で共に「銀獅子賞」受賞と3年連続でヴェネツィア国際映画祭での受賞を果たしていた溝口健二監督ですが、この作品は1955年・第8回カンヌ映画祭に出品されたものの、賞の選からは漏れています。賞を獲れなかった原因は、一説には、直前に大映社長の永田雅一が日本経済新聞の対談で「パリが大嫌い」「フランス人は真心がない、舌先三寸で世界を牛耳ってやろうと思っている」とフランスの悪口を延々と述べたことがカンヌ映画祭組織委員会に伝わり、委員の激怒を招いたためとされています。当時の溝口健二監督の海外での高い評価からすると、そのままの勢いでカンヌでの受賞があっても不思議ではなく、また(溝口健二監督自身はどう思っているかは別として)作品のレベルからしても、永田雅一の軽率な発言がなければ結果は違っていたかもしれません(この作品は日本では、溝口健二監督が1954年に芸術選奨を受賞した際の対象作品となっている)。

近松物語10.jpg 最後にはおさんと茂兵衛は捕らえられ、磔となる前の市中引き回しで、二人は馬上に背中合わせに縛られ、大経師屋の前を通りますが、その様を見た大経師屋の奉公人が、「おさんさんのあんな明るいお顔は見たことがない。茂兵衛さんも晴れ晴れとした顔色で、ほんまにこれから死なはんのやろか・...」と言います。しかし、実際にはおさんは晴れ晴れとした表情をしているものの、茂兵衛はどことなく浮かない顔をしていると言っていいのでは。これは愛する人と共に処刑されることを恋の成就と見做しているおさんにとって、市中引き回しは心中の「道行」を皆に見てもらっているようなものでどこか晴れがましさがあり、一方の茂兵衛にとっては、自らを犠牲にしてもおさんの命だけは助けようとしたのにこのような結果になってしまったことへの慙愧の念があるためではないかと思います。セリフと演技が整合していないとも言えますが、長谷川一夫の演技の方が"正解"でしょうか? この辺りにも、溝口健二監督と長谷川一夫の考え方の違いが表れたのかなとも思ってしまいました。でも、「雨月物語」と並ぶ溝口健二監督の傑作だと思います。

近松物語_9.jpg「近松物語」●制作年:1954年●監督:溝口健二●製作:永田雅一●脚本:依田義賢●撮影:宮川一夫●音楽:早坂文雄●原作:近松門左衛門●劇化:川口松太郎●時間:102分●出演:茂兵衛:長谷川一夫/香川京子/南田洋子/進藤英太郎/小沢栄太郎/菅井一郎/田中春男/石黒達也/浪花千栄子/十朱久雄/荒木忍/東良之助/葛木香一/水野浩/天野一郎/橘公子/金剛麗子/小松みどり/小林加奈枝/仲上小夜子/小柳圭子/伊達三郎/石原須磨男/横山文彦/藤川準/玉置一恵●公開:1954/11●配給:大映(評価:★★★★☆)

「●溝口 健二 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2637】 溝口 健二 「近松物語
「●「ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞」受賞作」の インデックッスへ 「●宮川 一夫 撮影作品」の インデックッスへ 「●早坂 文雄 音楽作品」の インデックッスへ 「●田中 絹代 出演作品」の インデックッスへ「●香川 京子 出演作品」の インデックッスへ 「●津川 雅彦 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●森 鷗外」の インデックッスへ

ある面で原作を超え(カメラ)、ある面で原作とは別物に(ストーリー)。
Sanshô dayû (1954) .jpg 山椒大夫.jpg山椒大夫 dvd.jpg 山椒大夫 映画1.jpg
Sanshô dayû (1954) /「山椒大夫」ポスター/「山椒大夫 [DVD]」(左から浪花千栄子・津川雅彦・田中絹代)
山椒大夫 4K デジタル修復版 Blu-ray
山椒大夫_.jpg香川京子の安寿1.bmp ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を獲得した溝口健二監督の「山椒大夫」('54年/大映)は、宮川一夫のカメラワークが素晴らしく、海へゆっくりとパンしていくラストシーンは、後年ジャン・リュック・ゴダール監督が「気狂いピエロ」のラストで再現したことでも有名ですが、香川京子が演じる安寿の入水シーンでは、画面の手前にかかる笹に"墨汁"を塗ってコントラストを出したりもしたとか(宮川一夫は「七人の侍」でも"墨汁"の雨を降らせた。この人、「無法松の一生」の頃から色々な創意工夫をしている)。これらの場面についての鷗外の記述があまりに簡潔であるため、映像でそれを補って余りあるものとなっています。

山椒大夫 映画2.jpg 但し、一応は鷗外作を「原作」としているものの改変部分も多くあり、まず目立つのが、姉の安寿と弟の厨子王の"姉弟"が"兄妹"に逆転していて、厨子王(花柳喜章、少年時代は津川雅彦)が兄、安寿(香川京子)が妹、となっている点で、これは、花柳喜章、香川京子という配役が先に決まっていたためにこうなったとか。

香川京子の安寿2.bmp 奴隷として売られてかれこれ10年、美少年だった安寿は肉体労働に明け暮れ半ば自暴自棄の単なるダメ男になっていて、そうした兄・厨子王の様変わりに密かに心を痛める健気な妹・安寿-それがある日突然に兄が逃亡を思い立ったら、妹に兄さんだけ逃げて...と言われる―。安寿は自らを犠牲にして、後の厨子王を支える守り本尊となったわけで、こうした設定からも、妹より姉の方がやはり良かったのでは(第一、妹を置いて逃亡する兄...というのも如何なものか)。
香川京子 in「山椒大夫」(1954)

山椒大夫 鴎外原作.jpg 更に原作には、焼きゴテで拷問された安寿の顔のやけどが、仏像の加護でみるみる傷が癒えるという場面がありますが映画には無く、またラストは、厨子王が盲目となった母親と再会した際に、守り本尊を額に押し付けると目が開くというものですが、映画では母親の眼は明かなかったように見え、意図的に霊験譚的なものを排しているように思えます(あの「雨月物語」を撮った監督にして)。

少年時代の厨子王(津川雅彦)
山椒大夫 津川雅彦.jpg 一方で、安寿と厨子王の父親・平正氏が、朝廷の意に反して困窮する農民を救おうとして筑紫国へ左遷されたことや、両親の"教育方針"など、「原作」には無い部分はしっかり描かれていて、後半は厨子王の出世に至る経緯や「奴隷解放」的施策も描かれていますが("上からの改革"であることには違いない)、この辺りはうんと膨らませていて、完全に一本の"政治時代劇"になってしまっています(いかにも「元禄忠臣蔵」('41‐'42年/松竹)を撮った溝口らしい。ここまで改変していても、「原作:森鴎外」と謳っているところは律儀なのか図太いのか?)。結果として、全体としても社会風刺的色合いが強くなっていますが、悪く言えば"通俗時代劇"風で、花柳喜章を筆頭に演技も"現代劇"風で平安時代とは思えず、テーマ的にも、果たして1950年代の日本で、「山椒大夫」という説話をベースとした作品の映画化において、こうした観点からの社会風刺が必要だったのか、やや疑問にも思いました。

山椒大夫4.jpg ラストが母子再会で終わるのは原作通りで、ベースとしては母子モノでありながらも、リアリズム乃至"娯楽性"の追求が、結果として土着民話的な説話色の強い原作を、勧善懲悪的な話に変えてしまった感もしなくもなく、「原作」とは別物とみた方が妥当かも(宮川一夫のカメラで星半個から1個プラス)。

「山椒大夫」(花柳喜章、田中絹代)

香川京子.jpg 因みに、安寿役の香川香子にとっては、同年公開の溝口健二監督作品「近松物語」('54年/大映)の1つ前の出演作品となります。映画会社と専属契約を結んだ俳優は他社の作品には出られないという「五社協定」が1953年に締結されましたが、彼女はその前年にフリーとなっていたため、小津安二郎監督の「東京物語」('53年/松竹)、黒澤明監督の「悪い奴ほどよく眠る」('60年/東宝)、「天国と地獄」('63年/東宝)など、各映画会社それぞれの黄金期の巨匠らの作品に出演することになりました。黒澤作品において、三船敏郎との共演回数が最も多かった女優(9回)でもあります。

山椒大夫 vhs.jpg「山椒大夫」●制作年:1954年●製作:永田雅一●監督:溝口健二●脚本:八尋不二/依田義賢●撮影:宮川一夫●音楽:早坂文雄●原作:森鷗外「山椒大夫」●時間:124分●出演:田中絹代/花柳喜章/加藤雅彦(津川雅彦)/香川京子/榎並啓子/進藤英太郎/河野秋武/菅井一郎/見明凡太郎/浪花千栄子/毛利菊江/三津田健/清水将夫/香川良介/橘公子/相馬幸子/小園蓉子/小柴幹治/荒木忍/大美輝子/金剛麗子/南部彰三/伊達三郎●公開:1954/03●配給:大映(評価:★★★☆)
山椒太夫 [VHS]

「●溝口 健二 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1552】 溝口 健二「山椒大夫
「●「ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞」受賞作」の インデックッスへ「●宮川 一夫 撮影作品」の インデックッスへ「●早坂 文雄 音楽作品」の インデックッスへ「●森 雅之 出演作品」の インデックッスへ「●田中 絹代 出演作品」の インデックッスへ「●京 マチ子 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

「幽玄美女」と「糟糠の妻」。ラストは主人公が真実を知ったところで終わった方が余韻が出た?

雨月物語.jpg雨月物語 ps.jpg 雨月物語 dvd.jpg 雨月物語2.jpg
「雨月物語」ポスター/「雨月物語 [DVD]

雨月物語 田中絹代.jpg 戦国時代(天正11年)の琵琶湖周辺の地。陶器が良い儲けになることを知った貧農の源十郎(森雅之)は、妻・宮木(田中絹代)と子、更に実妹(水戸光子)とその夫・藤兵衛(小沢栄)を連れて、焼き上がった陶器を長浜まで運ぼうとするが、海賊が出ることを知り、源十郎は自分の妻子だけ家に帰す。長浜に辿り着いた3人は、順調に陶器を売り捌いて大儲けするが、武士「雨月物語」 (1953 大映).jpgとなって立身出世する野心を捨て切れない藤兵衛は武具を買い求めに行き、藤兵衛の妻は夫を捜す間に狼藉者らに犯されてしまう。一方の源十郎は、臈たけた元御姫様(京マチ子)という女性と出会い、陶器を届けに行った姫の邸で彼女と契りを交わしてしまった揚句、その邸で焼き物を作っては売りに行くという生活を始めてしまう。何年か後、藤兵衛は戦の武勲が認められ、出世した自分の姿を見せに村へ子分を引き連れ戻ろうとする途中、子分達を慰労しようと女郎部屋に立ち寄り、そこで零落し遊女となった妻と出会う。恨み事を言う妻に藤兵衛はひたすら謝るのみ。源十郎の方は、行商の途中で僧侶に死霊に憑かれていると言われて、姫の正体が亡霊であることを知り、やっとの思いで故郷の村に戻る。そこには妻・宮木が優しく待ち受けていたのだが―。

京マチ子 雨月物語.jpg 溝口健二の「雨月物語」('53年/大映)は、1953年のヴェネツィア映画祭サン・マルコ銀獅子賞をはじめ数々の賞に輝いた作品で、この年のヴェネツィア国際映画祭は金獅子賞が"該当無し"だったので、実質的には出品作中トップ評価だったことになります。

京マチ子 雨月物語.jpg 原作は、1776年に発表された上田秋成の「雨月物語」の中の「浅芽が宿」「蛇性の淫」で、2つの話を糾える縄の如くに仕上げた脚本は巧みであり(「蛇性の淫」は本来、中国の古典的説話「白蛇伝」や、能の「道成寺」の由来である"安珍・清姫伝説"と重なる)、更にモーパッサンの短篇「勲章」もモチーフとして織り込まれていたりして、相当に原作を翻案しているようですが、森鷗外の原作を膨らませ過ぎている感のある「山椒大夫」('54年/大映)ほど気にはならなかったです。「原作」と言われているものを実際に読んでいると、それにこだわってしまうのかも。但し、時代設定が近世初期なので(「山椒大夫」は中世)、セリフの言い回しが多少現代風であっても許せてしまうというのもあるかもしれません。

雨月物語 田中絹代2.jpg雨月物語1.jpg 原作自体が優れているわけですが、原作を分かり易く翻案したエンタテインメントとして充実していて、一方で、ジャン=リュック・ゴダールをして「涙が出てくる」と言わしめたほどの霧立ち込める湖に舟を漕ぎだす場面の美しさや、映画史に残るとされる京マチ子の彼岸の妖艶ぶりなど、随所で幽玄美を醸して古典的雰囲気を保持しているのは、宮川一夫のカメラワークによるところが大きいのでしょう(溝口監督からの注文は「絵巻物を撮るように」とのことだったそうだが、それに応えている)。

森雅之 雨月物語.bmp 京マチ子の現実離れした「幽玄美の妖女」と田中絹代や水戸光子の土臭い「糟糠の妻」(結局、男達の野望は叶わないため、最終的にはこの表現は的確でないのだが)の異質の両者のコントラストが良く、それを繋ぐ森雅之(作家・有島武郎の長男)の演技も活き活きしていていいのですが、ラストは、妻・宮木(この時だけ顔のライティングが「姫」と同じ)の真実を源十郎が知ったところで終わった方が、余韻が出たような気もします。

Ugetsu monogatari(1953).jpg雨月物語|.jpg ラストの宮木の母性的なナレーション(田中絹代)も心に滲みて悪くはないですが、その他にも藤兵衛夫婦の「テレビ時代劇のエピローグ」風のやり取りなどもあって、やや解説的と言うか、「幸せの青い鳥は...」的な人生訓風になった感じもします。でも、やはり傑作だと思います。

Ugetsu monogatari(1953)

 因みに、メキシコの作家カルロス・フエンテスが、この溝口の「雨月物語」に想を得て、「アウラ」という作品を書いていますが、これも傑作です。

京マチ子とソフィア・ローレンD.jpg 京マチ子とソフィア・ローレン.jpg 京マチ子とソフィア・ローレン(1955年・ヴェネチア)

雨月物語 田中絹代8.jpg「雨月物語」●制作年:1953年●製作:永田雅一●監督:溝口健二●脚本:川口松太郎/依田義賢●撮影:宮川雨月物語 dvd.gif一夫●音楽:早坂文雄●原作:上田秋生「雨月物語」●時間:96分●出演:森雅之/田中絹代京マチ子/水戸光子/小沢栄太郎/青山京マチ子.jpg杉作/羅門光三郎/香川良介/上田吉二郎/毛利菊枝/南部彰三/光岡龍三郎/天野一郎/尾上栄五郎/伊達三郎/小柳圭子/大美輝子/金剛麗子/横山文彦/玉置一恵/沢村市三郎●公開:1953/03●配給:大映(評価:★★★★☆)

京マチ子(1959年)[共同通信]

《読書MEMO》
●マーティン・スコセッシ監督の選んだオールタイムベスト10["Sight & Sound"誌・映画監督による選出トップ10 (Director's Top 10 Films)(2012年版)]
 ●2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック)
 ●8 1/2(フェデリコ・フェリーニ)
 ●灰とダイヤモンド(アンジェイ・ワイダ)
 ●市民ケーン(オーソン・ウェルズ)
 ●山猫(ルキノ・ヴィスコンティ)
 ●戦火のかなた(ロベルト・ロッセリーニ)
 ●赤い靴(マイケル・パウエル & エメリック・プレスバーガー)
 ●河(ジャン・ルノワール)
 ●シシリーの黒い霧(フランチェスコ・ロージ)
 ●捜索者(ジョン・フォード)
 ●雨月物語(溝口健二)
 ●めまい(アルフレッド・ヒッチコック)

About this Archive

This page is an archive of recent entries in the 溝口 健二 監督作品 category.

清水 宏 監督作品 is the previous category.

山田 洋次 監督作品 is the next category.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1