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シリーズでいちばん凝った「道行」。なぜシリーズ後半の作品に"一押し作品"が多いのか。

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昭和残侠伝 死んで貰います」[Prime Video]/「昭和残侠伝 死んで貰います [DVD]」高倉健/池部良/藤純子
    
「昭和残侠伝 死んで貰います」11.jpg 花田秀次郎(高倉健)は東京深川の老舗料亭「喜楽」に生まれたが、父・清吉(加藤嘉)が後妻を迎えたときに家を出て、そのまま裏街道を歩き始めた。賭場で袋だたきにあった秀次郎は、銀杏の木の下でうずくまっているところを、芸者になったばかりの幾江(藤純子)に救われた。3年後、いかさま師を怪我させた秀次郎は逮捕され、刑に服することに。だが服役中に父が死去、関東大震災が起こり義理の妹も死亡、継母のお秀(荒木道子)は盲目となってしまう。窮地に立たされた「喜楽」を救ったのは、板前の風間重吉(池部良)と小父の寺田(中村「昭和残侠伝 死んで貰います」2.jpg竹弥)だった。昭和2年、出所した秀次郎は偽名で板前として働くこととなり、その姿を寺田は涙の出る思いで見守っていた。一方幾江は売れっ妓芸者となって秀次郎の帰りを待っていて、重吉と寺田の計いで二人は7年ぶりに再会する。そんな頃、寺田一家のシマを横取りしようとことあるごとに目を光らせていた新興博徒の駒井(諸角啓二郎)が、「喜楽」を乗っとろうとしていた。秀次郎の義弟・武史(松原光二)は相場に手を染め、むざむざと「喜楽」の権利書を取り上げられてしまう。それを買い戻す交渉に出かけた寺田が、帰り道で襲撃され殺される―。

「昭和残侠伝 死んで貰います」3.jpg 1970(昭和45)年9月公開のマキノ雅弘監督の「昭和残侠伝」シリーズの第7作品主演は高倉健、共演は池部良、藤純子。高倉健が演じるのは唐獅子牡丹の刺青を背中に仁侠道に生きる昭和初期の渡世人・花田秀次郎で、1965(昭和40)年から1972(昭和47)年までのシリーズ9作のうち7作がこの役名であり、東映やくざ映画全盛時代の最大のヒーローといってもいいかと思います。

「昭和残侠伝 死んで貰います」4.jpg 義理と人情のしがらみに苦悩し、堪えに堪えた新興やくざへの怒りをついには爆発させる―というのがほぼすべてに共通のパターン。ここでも最後、それまで駒井の執拗な挑発に耐えてきた秀次郎でしたが、かけがえのない恩人の死に遂に怒りを爆発させ、重吉と共に駒井の元に殴りこみます(幾江は行かないでとは言わず、死なないでと言う)。

「昭和残侠伝 死んで貰います」m2.jpg ホントは、秀次郎は重吉に、堅気のあんたが行ってはいけない、俺一人で行くと言っていたのですが、結局、死地へ向かおうとする秀次郎の前に重吉が現れ、その流れで「道行」の図となります。この「道行き」を二人が共にするのもシリーズのパターンですが、シリーズ作でいちばん出会いのシチュエーションが凝っているのがこの第7作の「昭和残侠伝 死んで貰います」であるとも言われています。

 秀次郎が暗い夜道を長ドスを携えて歩いて行く途中、街角に重吉が待っており、秀次郎の前に立って懐から短刀を取り出して、「見ておくんなせえ! 恩返しの花道なんですよ」と言って、封印をされていた短刀の封を握った右手親指で切ります。短刀を見つめていた秀次郎は、目だけを上に上げて無言で重吉を見つめると、重吉は「ご一緒、願います」と。そして二人が並んで歩いて行くところに主題歌「唐獅子牡丹」が被さってきます。

 池部良もシリーズ全9作に出演していますが、9作で高倉健(花田秀次郎)・池部良(風間重吉)の二人ともが生還するのは1作のみ。ほとんどが池部良の役の方が命を落とし(風間重吉は何回死ぬのか(笑))、この作品も例外ではなく、必ずしもハッピーエンドとは言えないものとなっています。これは池部良が当時俳優協会の理事をしており、ヤクザ賛美には賛同しかねるゆえの最低ラインを守るための条件だったそうですが、ここでも池部良は志半ばで後を高倉健に託して斃れ伏し、それに気づいた高倉健の表情が何とも言えません。息を引き取る"兄弟"を抱きしめるというのが一つのパターンとして出来上がっています。

 9作作られているこのシリーズ、第1作・2作・3作・8作・9作の監督が佐伯清、第4作・5作、7作がマキノ雅弘、第6作が山下耕作で、このマキノ雅弘監督の第7作をベストとして推す人も多いほか、その他のシーリーズ後半の作品をベストとする人も多いようです。これは、同じ高倉健主演の「日本侠客伝」シリーズ('64年~'71年・全11作)や「網走番外地」シリーズ('65年~67年・全10作)には見られない傾向で、11作中9作がマキノ雅弘が監督した「日本侠客伝」シリーズや、全作が石井監督作品で短い期間に多く作られた「網走番外地」シリーズに対し、主に二人の監督により撮られたこのシリーズは、監督が入れ替わり立ち替わり撮ることで競争原理が働いて、シリーズの後半になってもダレることが無かったのではないかと思います。

 また、普通シリーズものが続けていくうちにダレてくるのは、マンネリ化やそれに伴う粗雑化のせいであったり、あるいはその逆の間違った方向転換のせいであったりするものですが、このシリーズも「日本侠客伝」シリーズと似ている点もあったりして、批評家からは早くからマンネリとの批判があったようです。ただ興行面では、観客が映画館に入り切らないといった盛況ぶりが毎回だったようです。そうした成功の要因を考えるに、マンネリ化を逆手に取って定型パターン化を武器にし、義理人情物語としての純粋性、様式美的な完成度を高めることにいずれの監督も注力したためではないかと思います。

 「日本侠客伝」シリーズが高倉健33歳の時の'64年に始まり、翌年には「網走番外地」シリーズと「昭和残侠伝」シリーズが始まり、各シリーズ年2本撮ったりすることもあって、高倉健はそこから5年間ぐらいは毎年10本以上映画出演していたことになります。しかもそのほとんどが主役。本人は、映画館に人が溢三島由紀夫  2.jpgれるのを見て、繰り返し量産されるワンパターンの作品でも観客が求めるならばと自らに言い聞かせて、同じような役どころを演じ続けたのだそうです(体力維持のため、ジムに通って筋力トレーニングに励み始めたのも各シリーズが始まったこの頃から)。因みに、あの三島由紀夫は、高倉や鶴田浩二主演の任侠映画を好み、特にこの「昭和残侠伝 死んで貰います」を高く評価していたとのことです。

1970(昭和45)年(三島由紀夫が亡くなる年)の雑誌「映画芸術」(「戦争映画とヤクザ映画」)での三島由紀夫と石堂淑朗の対談(一部抜粋)
編集部「「昭和残侠伝 死んで貰います」はどこがよかったのですか」
三島 「何よりも池部良が良かった。...他人のためにやっていることを、自分のこととしている...。なんと言うか、自分の中に消えていく小さな火をそっと大切にしているような、あの淋しさと暗さが何ともいえない。わかっているという感じだ。タンスにしまっておいた短刀出して、封印を指でブスリと切るところもすばらしかった」
「昭和残侠伝 死んで貰います」ぁ.jpg編集部「あそこは質屋から間に合わせにもってきたドスと対照的だったけれど、なんか健さんのほうが良かった」
三島 「あなたは武士じゃないんだ」
(中略)
三島 「うーん、ぼくはホモ的要素があるのかな、ホモじゃあないと思うけれど。最後に池部と高倉が目と目を見交わして、何の言葉もなく行くところなどをみると、胸がしめつけられてくる。キューッとなってくるんだ。日本文化の伝統を伝えるのは今ややくざ映画しかない」
石堂 「(略)礼儀作法をよく守る奴が結局人殺しをやる、これが泣かせるんですね」
(中略)
三島 「(略)あのラストの道行きだけあればいいんだよ。あとはいらない」
石堂 「(略)要するに同じパターンのくりかえしで、擬似神話の魅力ですね」

●「昭和残侠伝」シリーズ(全9作)一覧
第1作『昭和残侠伝』(1965年10月1日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:佐伯清、脚本:村尾昭、山本英明、松本功
 出演:高倉健、池部良、三田佳子、江原真二郎、松方弘樹、梅宮辰夫、他
第2作『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』(1966年1月13日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:佐伯清、脚本:山本英明、松本功
 出演:高倉健、池部良、三田佳子、津川雅彦、三島ゆり子、芦田伸介、他
第3作『昭和残侠伝 一匹狼』(1966年7月9日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:佐伯清、脚本:松本功、山本英明
 出演:高倉健、池部良、藤純子、島田正吾、扇千景、他
第4作『昭和残侠伝 血染の唐獅子』(1967年7月8日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:マキノ雅弘、脚本:鈴木則文、鳥居元宏
 出演:高倉健、池部良、藤純子、津川雅彦、金子信雄、加藤嘉、他
第5作『昭和残侠伝 唐獅子仁義』(1969年3月6日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:マキノ雅弘、脚本:山本英明、松本功
 出演:高倉健、池部良、藤純子、待田京介、志村喬、他
第6作『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』(1969年11月28日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:山下耕作、脚本:神波史男、長田紀生
 出演:高倉健、池部良、片岡千恵蔵、大木実、小山明子、他
第7作『昭和残侠伝 死んで貰います』(1970年9月22日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:マキノ雅弘、脚本:大和久守正
 出演:高倉健、池部良、藤純子、加藤嘉、中村竹弥、長門裕之、他
第8作『昭和残侠伝 吼えろ唐獅子』(1971年10月27日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:佐伯清、脚本:村尾昭
 出演:高倉健、池部良、鶴田浩二、松方弘樹、松原智恵子、他
第9作『昭和残侠伝 破れ傘』(1972年12月30日公開 東映東京撮影所製作)
 監督:佐伯清、脚本:村尾昭
 出演:高倉健、池部良、鶴田浩二、星由里子、北島三郎、安藤昇、他

長門裕之(坂井(ひょっとこの松))/津川雅彦(書生節を歌う男)
「昭和残侠伝 死んで貰います」長門.jpg 「昭和残侠伝 死んで貰います」 津川雅彦2.jpg
加藤嘉(秀次郎の父・花田清吉)
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下沢広之(真田広之[当時9歳])(秀次郎の甥・花田康男)
「昭和残侠伝 死んで貰います」さなだ.jpg 「昭和残侠伝 死んで貰います」さなだ2.jpg 0真田広之.jpg 真田広之

「昭和残侠伝 死んで貰います」m1.gif「昭和残侠伝 死んで貰います」m2.jpg「昭和残侠伝 死んで貰います」●制作年:1970年●監督:マキノ雅弘●脚本:大和久守正●撮影:林七郎●音楽:菊池俊輔●時間:92 分●出演:高倉健/藤純子/加藤嘉/池部良/永原和子/荒木道子/山本麟一/津川雅彦/三島ゆり子/松原光二/永原和子/八代万智子/石井富子/高野真二/諸角啓二郎/赤木春恵/小倉康子/日尾孝司/下沢広之(真田広之)/永山一夫/南風夕子/「昭和残侠伝 死んで貰います」13.jpg小林稔侍/久地明/久保一/伊達弘/田甲一/土山登士幸/花田達/木川哲也/佐川二郎/山浦栄/畑中猛重/青木卓司/五野上力/高月忠/長門裕之●公開:1970/09●配給:東映●最初に観た場所:新宿昭和館(01-03-22)(評価:★★★★)●併映:「日本女侠伝 血斗乱れ花」(山下耕作)/「博徒対テキ屋」(小沢茂弘)
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木村拓哉は軽い感じだったが、原作の良さ、周囲の演技陣に助けられていた。

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木村拓哉/壇れい
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「武士の一分」01.jpg 幕末時代の海坂藩。優れた剣技を生かされることなく毒見役の職を務める小侍の三村新之丞(木村拓哉)は、毒味の仕事の最中倒れ、城内は藩主の暗殺未遂の疑いで騒然となるが、原因はつぶ貝の貝毒と判明。城内は落ち着きを取り戻したものの「武士の一分」02.jpg、御広敷番頭の樋口作之助(小林稔侍)は責任を取らされ切腹の運びとなる。三日後に意識を取り戻した新之丞は、自分の「武士の一分」03.jpg目が見えなくなっていることに気がつく。妻・加世(檀れい)は医師の玄斎(大地康雄)を頼るが、彼は「新之丞の目はもう治らない」と告げる。視力を失ったかわりに、他の感覚に鋭さが増し、加世の化粧の臭い等から男の影を感じ取る。最初に加世に関する話を持ってきたのは「武士の一分」04.jpg従妹の波多野以寧(桃井かおり)だった。ある場所、加世を見たという噂を持ち込んだのだ。その場所が武家の妻女が夜分出入りすべき町ではなかった。視力を失って以来、久方ぶりに新之丞は剣の稽古をした。だが、以「武士の一分」木村.jpgで前と勝手が違う。最初は戸惑いを覚えることが多かった。ある時、新之丞は徳蔵(笹野高史)に加世の尾行を命じた。その結果、噂は本当だったのが判明した。相手は新之丞の上司・島村藤弥(坂東三津五郎)。新之丞はそうなった経緯を加世に問いただし、離縁を申し伝えた。その後、新之丞は同僚の加賀山(近藤公園)からあることを聞かされる―。

「武士の一分 ベルリン国際映画祭.jpg 山田洋次の監督の「たそがれ清兵衛」('02年)、「隠し剣 鬼の爪」('04年)と並ぶ「時代劇三部作」の'06年公開の完結作で、興行収入は41.1億円で、松竹配給映画としての歴代最高記録(当時)を樹立したとのことです。ただし、それでも'06年公開作の興行収入ランキングは11位で、トップ10から漏れています(1位は「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」で100.2億円)。日本上映に先駆けて、第57回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門オープニング作品として上映されています。

檀れい・桃井かおりin 第57回ベルリン国際映画祭(2007年2月9日)

「武士の一分」07.jpg 原作は「たそがれ清兵衛」、「隠し剣 鬼の爪」と同じく藤沢周平の短編であり。短編集『隠し剣 秋風抄』('81年/文藝春秋)の中の一編である「盲目剣谺返し」(昭和55年発表)です(「隠し剣 鬼の爪」の原作と同じシリーズということになる)。文庫本で50ページ弱の話であるため、映画では少しだけ話を膨らませている部分があります。

 まず、原作は新之丞がすでに視力を失っているところから始まりますが、映画はそこに至る経緯を現在進行形で描いていきます。毒見役の仕事が(まるでEテレの番組内の解説映像のように)丁寧に描かれていますが、小林稔侍が演じる御広敷番頭の樋口作之助は原作に登場しないので、責任を取らされ切腹させられるのも映画のオリジナル(こっちの方が主人公より気の毒?)。

 しかし、新之丞が失明してからラスト、かたき討ちを果たした後の後日譚までは、比較的原作に忠実に作られていたように思いました。ただし、新之丞が島村と斬り合って彼を斃した際に、原作ではすでに島村はそこで絶命しいているのに、映画では腕を切り落とされたものの生きていて、自ら切腹したことになっていて「彼にも武士の一分があった」と他人に言われていますが、これは映画のオリジナルです。個人的には、新之丞の言う「武士の一分」だけでよく、こっちは蛇足だったように思えました。

「武士の一分」4.jpg 木村拓哉は頑張っている印象でしたが、SMAP(スマップ)の先入観があるせいか、ちょっと軽い感じも。原作の良さ、山田洋次監督の演出力、そして何より徳蔵を演じた笹野高史、加世を演じた檀れい、剣の師匠・木部孫八郎を演じた緒形拳など周囲の多くの俳優陣(桃井かおりや小林稔侍もいる)に助けられていたように思います(笹野高史はこの演技で第30回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞)。作品自体の個人的評価は、「たそがれ清兵衛」★★★☆、「隠し剣 鬼の爪」★★★★に対して、その間くらいでしょうか(一応、★★★★としたが、やや甘いか)。

桃井かおり/笹野高史
小林稔侍/坂東三津五郎

「武士の一分」6.jpg そう言えば、緒形拳は前作「隠し剣 鬼の爪」では、主人公(永瀬正敏)の親友の妻(高島礼子)を騙して寝とってしまう家老の役(敵役)で、つまりこの作品における坂東三津五郎が演じる島村と似たような、いわば悪役でしたが、今回は主人公の剣の師匠で、主人公の「武士の一分」の意を汲む人物の役でした。「隠し剣 鬼の爪」で主人公の剣の師匠役を演じた舞踏家の田中泯は、その前作「たそがれ清兵衛」では、上意討ちにより主人公に斃される役だったので、前作で敵役だと、次は主人公を助ける役とかが回ってくるのかも。坂東三津五郎も、山田洋次監督の次の作品「母べえ」('08年)では、一家の良き父親で反戦思想を抱く文学者を演じていたから、そうやってバランスをとっているのかな。

「武士の一分」p.jpg 「武士の一分」●制作年:2006年●監督:山田洋次●製作:久松猛朗●脚本:山田洋次/平松恵美子/山本一郎●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平●時間:121分●出演:木村拓哉/檀れい/笹野高史/坂東三津五郎/小林稔侍/緒形拳/岡本信人/左時枝/綾田俊樹/桃井かおり/赤塚真人/近藤公園/歌澤寅右衛門/大地康雄●公開:2006/10●配給:松竹(評価:★★★★)
   

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「東京家族」に続いて蒼井優が演じる憲子に原節子を被せたか。
『家族はつらいよ』.jpg 家族はつらいよ01.gif 家族はつらいよ02.jpg
あの頃映画 松竹DVDコレクション 家族はつらいよ」吉行和子/橋爪功
家族はつらいよ 集合.jpg 平田家は主・周造(橋爪功)と妻・富子(吉行和子)、長男・幸之助(西村雅彦)と妻・史枝(夏川結衣)とその息子二人、次男・庄太(妻夫木聡)と3世代で同居をする家族。周造は妻・富子の誕生日であることを忘れていたことに気付き、彼女に何か欲しいものはないかと尋ねてみると、何と離婚届を突き付けられる。思わぬ事態に呆然とする中、金井家に嫁いだ長女・成子(中嶋朋子)が夫・泰蔵(林家正蔵)が骨董趣味で購入した皿を誤って割ったことで泰蔵と口論となり、別れたいと泣きついてくる。彼女を追ってきた泰蔵の言い訳を聞いているうちに苛ついた周造は、思わず自分たちも離婚の危機にあることをぶちまける。それを聞いて長男・長女夫婦は、次男の庄太を交え、長男の息子二人抜きの大人だけによる「家族会議」を開くことに。事情を知らない庄太が、恋人の憲子(蒼井優)を親兄弟に紹介しに実家に来たものだから、成り行きで憲子も「家族会議」に参加することになったが、周造が途中で卒倒して離婚どころか会議できる状態でなくなった―。

東京物語111.jpg 山田洋次(1931年生まれ)監督の2016年公開作で、小津安二郎監督の「東京物語」('53年)をモチーフとして制作した(実質的にリメイク)「東京家族」('13年)と主要俳優陣が同じで、配役もほぼ前作に倣っており、その後この配役パターンで、「家族はつらいよ2」('17年)、「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」('18年)が作られていて、この作品が「家族はつらいよ」シリーズの第1作という位置づけになっています。

 小津安二郎監督の「東京物語」の出演者の役名と、この「家族はつらいよ」シリーズで「東京家族」から引き継がれてる出演者の役名とを比べてみると、

          「東京物語」            「東京家族」→「家族はつらいよ」シリーズ
 父   : 平山周吉(笠智衆)         平山周造 → 平田周造(橋爪功)
 その妻 : 平山とみ(東山千栄子)       平山富子 → 平田富子(吉行和子)
 長 男 : 平山幸一[内科医](山村聡)    平山幸一[小児科医]→ 平田幸之助[商社マン](西村雅彦)
 その嫁 : 平山文子(三宅邦子)        平山文子 → 平田史枝(夏川結衣)
 長 女 : 金子志げ[美容院経営](杉村春子) 金井滋子[美容院経営]→ 金井成子[税理士](中嶋朋子)
 その婿 : 金子庫造(中村伸郎)        金井庫造 → 金井泰蔵[妻の事務所の雑務担当](林家正蔵)
 次 男 : 平山昌二(戦死)          平山昌次[舞台美術助手] → 平田庄太[調律師](妻夫木聡)
 その嫁 : 平山紀子(原節子)         間宮紀子[書店員]→ 間宮(平田)憲子[看護師](蒼井優)

家族はつらいよ 小林」.jpg家族はつらいよ 風吹 .jpgとなります。「東京物語」の方はこの他に、三男・平山敬三(大坂志郎[国鉄マン])、次女・平山京子(香川京子[小学校教員])がいますが、「東京家族」には無いので、五人兄弟を三人兄弟に減らしたことにな東京物語 笠・東野.jpgります。また、小林稔侍(周造の旧友・沼田)も「東京家族」と同じ役で出演していますが、これに該当する「東京物語」の役は、東野英治郎が演じた「沼田」でしょう。さら東京物語 桜・笠・東野・十朱.jpg東京物語 桜笠・東野・十朱.jpgに、風吹ジュン(居酒屋の女将・加代)も「東京家族」と同じ役で出演していますが、これに該当する「東京物語」の役は、桜むつ子が演じたおでん屋の女将だと思われます(桜むつ子は「東京暮色」「彼岸花」「秋日和」でも飲み屋の女将やマダム役で出演している)。

桜むつ子・東野英治郎・笠智衆・十朱久雄(「東京物語」)

「東京家族」蒼井.jpg 「東京家族」では、「東京物語」で原節子が演じた紀子役を蒼井優が演じた間宮紀子が引き継いでいましたが、この「家族はつらいよ」では、橋爪功が演じる周造が自宅の居間で小津の「東京物語」を観ている場面があって(「男はつらいよ」のDVDもテレビの傍にあったが)、あの有名な原節子と笠智衆の会話シーンと原節子が泣くシーンが映し出され、さらに「東京家族」同様、映画の終盤で蒼井優演じる憲子(「東京家族」では「紀子」)と橋爪功演じる周造の直接会話シーンがあるため、ここでも蒼井優に原節子的なものを被せているのが感じられました。

 因みに、蒼井優が演じた間宮憲子の「間宮」という姓は、小津安二郎監督の「紀子三部作」の2作目にあたる「麦秋」('51年)での原節子の役名が間宮紀子だったので(三部作の1作目「晩春」('49年)では、笠智衆の役名が曾宮周吉で原節子の役名は曾宮紀子)、山田洋次監督は、「紀子三部作」全体の原節子のイメージを蒼井優に重ねたのではないかと推察します。

家族はつらいよ03.gif.jpg ただ、蒼井優演じる憲子が、紛糾する平田家の「家族会議」を羨ましいと言うので、皆が不思議がって理由を訊くと、子どもの頃に両親のいきなりの離婚を経験していたというのは、ちょっとあざとさも感じました。蒼井優は「おとうと」('10年)で山田洋次監督に気に入られたのか、「東京家族」にしてもこの「家族はつらいよ」にしても結構難しい役をやらされている気もします(原節子版紀子のイメージをストレートに負わされていた「東京家族」の方がプレシャーは大きかっただろうとは思うが)。でも、蒼井優、安藤サクラ、宮﨑あおい、満島ひかりという'85年度生まれの四人組は強そう!

 そう演技の下手な俳優が出ておらす、しかもベースがコメディなので、細部においてはそこそこ楽しめましたが、全体としてはイマイチだったでしょうか(個人的評価は「東京家族」が★★★★に対して、こちらは★★★☆)。吉行和子演じる離婚を望んでいた妻が、ラストであれほどくるっと急展開するかなあ。「言葉」の力は認めるけれど、むしろ、「予定調和」路線に乗っかっている感じ。言い換えれば、舞台風の演出も含め、「コメディ」であることに乗っかっている感じですが、第2作が作られた段階で、そっか、単発作品ではなくて「寅さんシリーズ」と同じパターンだったのかと思って納得した面もあります(星3つ半は高齢でも頑張ってシリーズを撮り続けている山田洋次監督に敬意を表してやや甘めの評価)。

『東京家族』.jpg東京家族 01.jpg 「東京家族」と同じ感覚で観るのではなく、「寅さんシリーズ」を観るのと同じ感覚で向き合った方が良かったのか(次回作からはそうなったが)。もっとも、「東京家族」('13年)の方も、オリジナルの小津版「東京物語」(個人的評価は★★★★☆)の良さに負うている部分が大きいので、純粋に一つの作品として評価するのが難しい面はあるのですが...。広島側の舞台を、オリジナルの尾道から島(豊田郡大崎上島)に移すことで"故郷(ふるさと)"感を東京家族 02.jpg醸すなどの工夫はされていますが、大家族の崩壊が1つのテーマだった「東京物語」に比べると、「東京家族」の方は5人兄弟を3人兄弟に減らしたことでその部分の色合いは弱まっていると言うか変質しており、家族が離散していく寂しさよりも、むしろタイトル通り、家族のやっかいさ(やっかいなものとして扱われる家族)が前面に出ていたように思いました。ただ、山田監督が敬愛する小津監督の代表作のリメイクということもあって、東日本大震災による公開延期と主演の老夫婦の配役変更(当初は菅原文太と市原悦子の予定だったのが、橋爪功と吉行和子に変更)を経ながらも、丁寧な演出のもとに撮られていたように思います。

家族はつらいよ 題字.jpg横尾忠則 山田洋次.jpg 「東京家族」のイメージポスターおよび「家族はつらいよ」シリーズのタイトル題字とポスターを横尾忠則氏が担当していますが、「東京家族」のポスターは横尾氏の写真集『東京Y字路』('09年)または画集『Y字路』('06年)をモチーフにしたようです(一人暮らし昌次の住まいもY字路付近となっている)。こうしてコラボした二人ですが、最近になって横尾氏が「男はつらいよ お帰り 寅さん」('19年)は山田監督が横尾氏のアイデアを勝手に盗んだものであるとして家族はつらいよ ポスター.jpg怒りを露わにするという騒動がありました。あれは決着したのでしょうか。

家族はつらいよ08.jpg「家族はつらいよ」●制作年:2016年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●製作:大角正●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:山田洋次●時間:113分●出演:橋爪功/吉行和子/西村雅彦(西村まさ彦)/夏川結衣/中嶋朋子/林東京家族  題字 ポスター.jpg家正蔵/妻夫木聡/蒼井優/風吹ジュン/小林稔侍/中村鷹之資/丸山歩夢/徳永ゆうき/笹野高史/笑福亭鶴瓶●公開:2016/03●配給:松竹(評価:★★★☆)

東京家族 04.jpg「東京家族」●制作年:2013年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●製作:秋元一孝●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:山田洋次●時間:146分●出演:橋爪功/吉行和子/西村雅彦(西村まさ彦)/夏川結衣/中嶋朋子/林家正蔵/妻夫木聡/蒼井優/風吹ジュン/小林稔侍/茅島成美/柴田龍一郎/丸山歩夢/荒川ちか●公開:2013/01●配給:松竹(評価:★★★★)
  
「85年度組」蒼井優、安藤サクラ、宮﨑あおい、満島ひかり in「第30回東京国際映画祭」(2017)
蒼井優、安藤サクラ、宮崎あおい、満島ひかり.jpg

1985年生まれ.gif

蒼井優 in「フラガール」(2006)
 1985年8月17日生まれ

安藤サクラ in「万引き家族」(2018)
 1986年2月18日生まれ

宮﨑あおい in「舟を編む」(2013)
 1985年11月30日生まれ

満島ひかり in「悪人」(2010)
 1985年11月30日生まれ

「●山田 洋次 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【2983】 山田 洋次 「小さいおうち
「●冨田 勲 音楽作品」の インデックッスへ 「●吉永 小百合 出演作品」の インデックッスへ 「●小林 稔侍 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●「菊池寛賞」受賞者作」の インデックッスへ(吉永小百合) ○あの頃映画 松竹DVDコレクション

やや"べた"だが、ラストの吟子(吉永小百合)が涙ぐむシーンにはほろっときた。

『おとうと』2010.jpg 「おとうと」0.jpg 「おとうと」40.jpg
あの頃映画 松竹DVDコレクション おとうと」笑福亭鶴瓶/吉永小百合

「おとうと」蒼2.jpg 結婚してすぐに夫を亡くし、小さな薬局を営みながら、女手一つで娘の小春(蒼井優)を育てた姉・吟子(吉永小百合)と、役者としての成功を夢み、無為に歳を重ねてしまった風来坊の弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)。鉄郎は姉・吟子の夫の十三回忌の席で酔っ払って大暴れし、親類中の鼻つまみ者となっていた。以後10年近く吟子との連絡も途絶えていたが、娘のように可愛がっていた姪の小春が結婚することをたまたま知り、披露宴に駆けつけた。歓迎されざる客を追い返そうとする親類「おとうと」 1.jpgを吟子は取りなし、鉄郎に酒は一滴も飲まないと約束させて披露宴に参加させた。しかし鉄郎は目の前に置かれた酒の誘惑に抵抗できず、あっさりと約束を破ったばかりか酔っぱらって大騒ぎを演じ、披露宴を台無しにしてしまう。その事件は、後に小春の結婚が破綻する一因ともなる。結婚式での乱行に激怒した親類らが次々と絶縁を決め込む中、ただ一人、吟子だけは鉄郎の味方だったが、その吟子も、ある事件をきっかけについに鉄郎に絶縁を言い渡してしまう。鉄郎は悪態を吐いて出て行くが、 このときすでに鉄郎は死の病に取り付かれていた―。
山田洋次監督in 第60回ベルリン国際映画祭(2010年2月20日) photo:KAZUKO WAKAYAMA
「おとうと」山田監督ベルリン.jpg「おとうと」山田吉永ベルリン.jpg 山田洋次(1931年生まれ)監督の2010年1月30日公開作で、同年2月11日開催の第60回ベルリン国際映画祭でクロージング上映されて、この時、山田洋次監督は特別功労賞に当たるベルリナーレ・カメラ賞を受賞しています(日本人では過去、2000年に市川崑監督、2001年に熊井啓監督の2名が受賞)。前作「母べい」('08年)が第58回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、受賞を逃したものの好評だったことが伏線としてあるのかもしれません(この映画祭では後に「小さいおうち」('14年)で黒木華が最優秀女優賞(銀熊賞)を取ることになる)。

市川崑監督「おとうと」('60年/大映)岸惠子
「おとうと」kisi.jpg 「おとうと」('60年/大映)を撮った市川崑監督に捧げられた作品となっていて、病に倒れた弟に姉が鍋焼きうどんを食べさせるシーンや、二人がリボンで手をつないで眠るシーンがオマージュとして反復されていると言われていますが、これは共に幸田文による原作『おとうと』にある場面です。ただし、原作は17歳の姉から見た14歳の弟を描いたものであり、市川崑版は岸惠子が28歳で姉を演じたということはあるものの、一応原作をベースとしているのに対し、この山田洋次版は原作とはうんと年齢差があり、時代背景や家庭環境も異なるので、ほとんどこの二つのモチーフだけを原作から借りてきたと言ってもいいくらいではないかと思います。

「おとうと」末後.jpg 映画は、前作「母べい」よりもっと"べた"になった感じがしなくもないですが、昔はこういう映画をあまり評価しなかったけれど、最近はいいなあと思うようになって、これは年齢のせいでしょうか? 批判しようと思ったらいくらでもできるのですが、山田洋次監督に山田洋次的でないものを求めても仕方がないという気がするといのもあります。

「おとうと」 l1.jpg.png でも、鉄郎が亡くなった後のラストで、小春(蒼井優)の亨(加瀬亮)との結婚式を前にして、加藤治子(1922-2015)演じる母のボケからくる「あの変わり者の弟を呼んであげないとかわいそうだ」という言葉に絡めて、小春の結婚式に鉄郎はもう来ることないという現実が吟子を涙ぐませる場面にはさすがにほろっときました(このシーンが一番。笑福亭鶴瓶もラッシュうを観て「涙が出ましたわ」「あのラストは最高」と言っている)。小春の最初の結婚式に鉄郎がきて、式をぶち壊しにしてしまったこととの対比で、上手いなあと思いました。亡くなった人って、こういう時にふっと今そこにいるかのように目に浮かぶのだろなあ。

 考えてみれば、夢破れたもののそれなりに好き勝手やって、本来なら野垂れ死にしてもおかしくないところ(笑福亭鶴瓶は前作「母べい」では、同じ叔父さん役でも野垂れ死する役だった)、最期は最愛の肉親に看取られて死ねるというのは、ある意味ハッピーエンドなのかも。

 そのハッピーエンドを生み出したものとして、身寄りのない人のための民間ホスピス「みどりのいえ」とそこで働く所長の小宮山進(小日向文世)、小宮山千秋(石田ゆり子)ら親切な人々の存在があったわけで、そういう施設や人々にフォーカスしている点はいいと思いました。実在の施設を取材しているそうですが、ただし、在阪ではなく台東区の山谷にある「きぼうのいえ」だそうです。

「おとうと」1蒼.jpg 吉永小百合は、33歳の女性をやつれ感を出しながら演じた「母べえ」の時よりもさらに綺麗になっている感じ。笑福亭鶴瓶は、最後の方は、朝7時に起きてサウナスーツで走って、サウナに1時間くらい入って、水も飲まずにボクシングを9ラウンドまでやって減量したそうですが、その努力もさることながら、演技の方で魅せることも忘れてなかったように思います。

 「母べえ」とどちらが上か人によって意見は分かれるかと思いますが、個人的には、全体を通して「母べえ」が良かったけれど、最後で「おとうと」が追いついたという感じでしょうか。ああ、年齢と共に山田作品への評価がどんどん甘くなってくる(笑)。

「おとうと」syutuen.jpg「おとうと」●制作年:2010年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●撮影:近森眞史●音楽:冨田勲●原作:幸田文●時間:126分●出演:吉永小百合/笑福亭鶴瓶/蒼井優/加瀬亮/小林稔侍/森本レオ/芽島成美/ラサール石井/佐藤蛾次郎/池乃めだか/田中壮太郎/キムラ緑子/笹野高史/小日向文世/横山あきお/近藤公園/石田ゆり子/加藤治子●公開:2010/01●配給:松竹(評価:★★★★)

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「女性vs.女性」のドラマになっていた。ワインのぶっかけ合い」は「エール交換」?

疑惑 [DVD].jpg 疑惑  2.jpg 松本清張 疑惑 文庫.jpg
<あの頃映画> 疑惑 [DVD]」岩下志麻/桃井かおり/三木のり平『新装版 疑惑 (文春文庫)
疑惑 0.jpg 富山県新港湾埠頭で車が海中に転落、乗っていた地元の財閥・白河福太郎(仲谷昇)は死亡したが、後妻の球磨子(桃井かおり)はかすり傷ひとつ負わなかった。後に球磨子は過去に情夫の豊崎(鹿賀丈史)と共謀して数数の犯罪を起こしていたことが判明。しかも、彼女は夫に三億円の保険金をかけており、この事故も、泳げない福太郎を殺すための擬装ではないかと誰もが疑う。北陸日日新聞社会部記者の秋谷(柄本明)もその一人だった。物的証拠がないまま球磨子は身柄を拘束された。球磨子の弁護は、白河家の顧問弁の原山弁護士(松村達雄)が持病を理由に降り、その後輩で刑事専門の弁護士としては日本屈指とされる岡村弁護士(丹波哲郎)も断ってしまい弁護人の引き受け手がいない中、民事専門の佐原律子弁護士(岩下志麻)が国選弁護人として選ばれ、検事の宗方(小林稔侍)と法廷で対峙する。球磨子と律子は、互いに反感を抱きながらも、球磨子の無実を証明しようとする―。

松本清張 疑惑 単行本.jpg 野村芳太郎監督の1982年9月公開作で、松本清張の「オール讀物」同年2月号発表の中編小説「疑惑」の映画化ですが(発表して半年くらいで映画になってしまうところが、当時の松本清張の人気を物語っていてスゴイが)、原作者自身が脚色したとのことです(撮影台本は古田求と野村芳太郎)。白河福太郎を仲谷昇、球磨子を桃井かおり、その弁護人を岩下志麻が演じており、新聞記者の秋谷に柄本明、検事の宗方に小林稔侍、といった配役も楽しめます。映画の後半は法廷劇となりますが、証言者として、鑑定した大学教授に小沢栄太郎、事故の目撃者に森田健作、球磨子が元いた東京のクラブの経営者に山田五十鈴、球磨子の情夫・豊崎に鹿賀丈史、と配役も今見るとなかなか豪華です。

疑惑 柄本明.jpg 原作は、主に北陸日日新聞の社会部記者の秋谷の視点で描かれており、自社の新聞で、球磨子が犯人であるのは間違いなく、彼女は稀にみる毒婦であるといった論調を展開した秋谷が、国選弁護人の42歳の佐原卓吉弁護士が地道な検証を行った結果、球磨子の無実が立証される可能性が出てきたため、そうなると、球磨子が無罪放免になった際に彼女とその情夫の"お礼参り"に遭うのではないかと、次第に戦々恐々たる不安心理に陥っていき、遂に...という展開です(マスコミ報道の在り方に対する風刺がテーマになっているともとれる)。

疑惑 映画 iwashita.jpg 一方、映画の方は、桃井かおり演じる球磨子を弁護する国選弁護人が、原作の見た目はぱっとしない佐原卓吉弁護士から、岩下志麻演じる、やはり民事専門だが見るからに頭が切れそうな東大法学部卒の女性弁護士・佐原律子に改変されています。それによって、殺人容疑者の女と彼女を弁護することになった女性弁護士の間の確執を描く「女性vs.女性」の構図になっており、柄本明演じる新聞記者の秋谷は、原作よりかなり後退した印象を受けるし、小林稔侍演じる検事もあまりぱっとしません。仲谷昇演じる白河福太郎からして、原作以上に球磨子に振り回されっぱなしであり、男性陣は法廷の証言台に立ってもは皆おどおどしていて、頼りなさげな描かれ方になっているのは、監督の計算の内ではないでしょうか。

疑惑 7.jpg 脚本は途中で変更があったりしたようですが、桃井かおり、岩下志麻という配役が決まった時点で「女性vs.女性」のドラマとなるのは自明のことだったかもしれません。二人は被告人と弁護人という関係でありながら常に確執があり、事件解決後にはむしろ、それはより明白になるという展開でした。まったく境遇の異なる二人でありながら、共に、男性社会を生き抜く上でのしたたかさ、逞しさを持っているという点で両者は通底しているように思われました。映画終盤の「ワインのぶっかけ合い」をある種の「エール交換」との捉え方をする人もいますが、なかなか穿った見方だと思います。

疑惑 映画 momoi.jpg 桃井かおりの演技が高く評価されましたが、桃井かおりは、球磨子役のオファーを受けた際、「週刊誌的には私自身がわけもなく嫌われていて最悪な状態だったんで、『いまさらこの役をやる必要はないでしょ』と、うちの事務所は全員大反対(笑)。でも、(中略)等身大の桃井ネタは尽きたと思っていたので、いっそすごく嫌な人とかダメな人を少し作って演じてみたい、とにかく演じたいという気持ちが強かったんですね。球磨子のような人だと思われてこそ大成功くらいの気持ちで、思いっきりやってみようと思ったんです」と語っています。

疑惑6.jpg 桃井かおりは彼女なりのふっきれた演技だったと思いますが、ただ、個人的には、「影の車」('70年/野村芳太郎監督)、「内海の輪」('71年/斎藤耕一)、「鬼畜」('78年/野村芳太郎監督)と松本清張原作の作品に出演してきた岩下志麻がやはり印象が強かったでしょうか(ラストは佐原律子にとっても厳しいものだったが、この辺りも映画のオリジナルである)。この作品の翌年、「迷走地図」('84年/野村芳太郎監督)にも出演し、これら作品で相手方の男優の方は、加藤剛、中尾彬、緒形拳、勝新太郎と変わっていますが、この「疑惑」だけ、拮抗する相方が女優(桃井かおり)であり、その意味ではユニークな位置づけにあるかもしれません。

疑惑5.jpg もう一つ、原作からの改変点として、佐原弁護士が、水没した車の車内にあった「脱げた靴とスパナ」から真相に迫るのは原作も同じですが、映画の後半は裁判シーンが主となり、これだけでは公判が維持できないと考えたのか、映画の方には、白河福太郎の息子の決定的証言というのがあります。これは大きな改変かと思いますが、判決まで描くとすれば、やはり「靴とスパナ」だけでは弱く、理にかなった改変だったように思います(子どもに証言を迫る岩下志麻がちょっと怖くて、「鬼畜」の時の彼女を思い出した(笑))。

疑惑 jikeknn.jpg別府三億円保険金殺人事件2.jpg 車の「転落事故」の実証検分のための実験などは、原作より丁寧に描いていましたが、原作が、1974年11月発生の「別府三億円保険金殺人事件」からヒントを得たものであり、この事件において実際に何度か転落実験が実施され、その様子がテレビで報じられているため、撮影前から大体のイメージは掴めていたのではないでしょうか。

疑惑 kagaya.jpg 舞台を別府から富山に移しているのは、原作がそうなっているためです。ロケで石川・和倉温泉の「加賀屋」を使っているのは、松本清張の好み?でしょうか。「ゼロの焦点」('61年) のロケでも使われ、原作執筆時の松本清張も宿泊していた旅館ですが、「ゼロの焦点」の時から建て替えられて綺麗になっているよゼロの焦点 1961年.jpgうに見えます。ロケ中は富山と石川の往復が激しかったそうですが、富山のロケ先で桃井かおりがと松本清張と食事をした際、富山湾名物のオコゼの唐揚げを注文した松本清張を見て、桃井かおりが「オコゼ食べちゃうんですか」と言ったところ、清張は「似ているからって、僕が食べちゃいけないの」と返し、それまでの緊張が一気にほぐれて和んだという、彼女自身の回顧談があります。

「ゼロの焦点」('61年)
           

疑惑 tanba.jpg「疑惑」●制作年:1982年●監督:野村芳太郎●製作:野村芳太郎/杉崎重美●脚色:松本清張●撮影台本:古田求/野村芳太郎●撮影:川又昂●音楽:芥川也寸志●原作:松本清張●時間:127分●出演:桃井かおり/岩下志麻/鹿賀丈史/柄本明/仲谷昇/内藤武敏/小林稔侍/小沢栄太郎/山田五十鈴/森田健作/松村達雄/丹波哲郎/三木のり平/北林谷栄/名古屋章/新田昌玄/河原崎次郎/山本清/飯島大介/梅野泰靖/小林昭二/水谷貞雄/真野響子●公開:1982/09●配給:松竹=富士映画(評価:★★★★)
松村達雄(白河家の顧問弁護士・原山正雄)/丹波哲郎(原山の大学の後輩の弁護士・岡村謙孝。原山は球磨子の弁護を降り、後任を要請された岡村も結局は辞退する)

中谷昇 in「にごりえ(第2話:大つごもり)」('53年)/「砂の上の植物群」('64年)/「キイハンター」('68-73年)/「疑惑」('82年)/「カノッサの屈辱」('90-91年)
にごりえ 大つごもり 中谷.jpg 中谷昇 砂の上の植物群9.png 仲谷昇 キイハンター.jpg 中谷昇 疑惑.png 仲谷昇 カノッサの屈辱.jpg


《読書MEMO》
●「疑惑」のテレビドラマ化
・1992年「松本清張スペシャル・疑惑」(フジテレビ)いしだあゆみ(白河球磨子)・小林稔侍(佐原卓吉)
・2003年「松本清張没後10年特別企画・疑惑」(テレビ朝日)余貴美子(白河球磨子)・中村嘉葎雄(佐原卓吉)
・2009年「松本清張生誕100年特別企画・疑惑」(TBS)沢口靖子(白河球磨子)・田村正和(佐原卓吉)
・2012年「松本清張没後20年特別企画・疑惑」(フジテレビ)尾野真千子(白河球磨子)・常盤貴子(佐原千鶴)
・2019年「松本清張ドラマスペシャル・疑惑」(テレビ朝日)黒木華(白河球磨子)・米倉涼子(佐原卓子)

1992年「疑惑」(フジテレビ)いしだあゆみ(白河球磨子)・小林稔侍(佐原卓吉)/2009年「疑惑」(TBS)沢口靖子(白河球磨子)・田村正和(佐原卓吉)
松本清張スペシャル・疑惑1.jpg 松本清張生誕100年特別企画・疑惑.jpg

2012年「疑惑」(フジテレビ)常盤貴子(佐原千鶴)・尾野真千子(白河球磨子)/2019年「疑惑」(テレビ朝日)米倉涼子(佐原卓子)・黒木華(白河球磨子)
松本清張没後20年特別企画・疑惑.jpg 松本清張ドラマスペシャル・疑惑.jpg

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"混沌"が魅力の「ロケーション」、アナーキーでパワフルな「党宣言」、"ごった煮"の「ニワトリはハダシだ」。
ロケーション 森崎東 1984.jpg ロケーション 美保2.jpg ロケーション 美保.jpg
あの頃映画 松竹DVDコレクション ロケーション」美保純/西田敏行
生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言 dvd.jpg 生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言 (1).jpg 生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言2.jpg
生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言【DVD】」平田満/倍賞美津子/原田芳雄
ニワトリはハダシだ 2004.jpg ニワトリはハダシだ 倍賞・原田.jpg ニワトリはハダシだ 肘井・加瀬.jpg
ニワトリはハダシだ [DVD]」倍賞美津子/原田芳雄   肘井美佳/加瀬亮

ロケーション1.jpg『ロケーション』1.jpg ピンク映画のキャメラマンであるべーやんこと小田辺子之助(西田敏行)は、妻で主演女優の奈津子(大楠道代)が自殺未遂し、撮影がストップし困り果てていた。たまたまロケ現場として借りた連れ込み宿の掃除婦・笑子(美保純)を強引に主演女優の代役に仕立てて、撮影を続行させる。しかし撮影中、監督(加藤武)は病気で倒れ、笑子は自分の田舎に墓参りに帰るので撮影は降りると言い出す。笑子の帰郷を逆手にとり、ロケ場所を笑子の故郷である福島の湯本に代え、その場その場で脚本を変えながら撮影していく―。(「ロケーション」)

「ロケーション」1.jpg 「ロケーション」('84年)は、ピンク映画のスチールマンだった津田一郎の『ザ・ロケーション』('80年/晩声社)を原作に、ピンク映画づくりの現場を描き出したもので、森崎東監督は、映画作りの参考にするため、滝田洋二郎監督による「真昼の切り裂き魔」('84年/新東宝)の撮影現場に足を運んだとのこと(滝田洋二郎ってあの、第81回アカデミー賞外国語映画賞受賞作「おくりびと」('08年)の監督だが)。それでも森崎東監督らしく、とにかくごちゃごちゃのストーリーです。
  
0映画 ロケーション.jpgロケーション vhs.jpg まず、西田敏行演じるキャメラマンと、大楠道代演じるその女房の女優と、柄本明演じる脚本家の三角関係があり、映画の撮影が始まるや、主役の彼女が降りてしまい、やっと見つけた代役も逃げ出し、監督は入院するという始末で、カメラマンと竹中直人演じる助監督が中心になり、美保純演じる連れ込み旅館の掃除婦をヒロインに仕立てて撮影を続けるも、彼女が福島へ墓参りに帰ると言い出し、それを追ってロケに行くと、彼女の過去が一家心中、父親殺し、母親殺しと錯綜し、ロケ隊一行は映画の内容を変更して、彼女と母親(大楠道代・二役)の愛僧劇をドキュメンタリーのように撮影することになるといった具合。映画内映画のもともとのストーリーは、3人の男に襲われ海で溺死した母親の娘が男たちに復讐する設定だったので、随分と話が違っていきますが、これもこの映画の脚本の内なのでしょうか。

ロケーション2.jpg 美保純が演じる笑子が、、最初の内は幼児体験の影響でロケーション 6.jpg無口だったのが、ラストの方では大楠道代演じる母親と拮抗して互いの情念をぶつけあっており、美保純としては最高傑作ではないでしょうか。美保純と同様にそれまで主にピンク映画に出ていた竹中直人が、最初に一般映画に出演した作品でもあります。作品全体としても、「喜劇 女は男のふるさとヨ」('71年)などよりは上ではないでしょうか。
西田敏行/大楠道代/美保純
ロケーション1984  竹中直人.jpg 竹中直人/西田敏行/美保純


倍賞美津子 in「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」
党宣言1.jpg党宣言 倍賞.jpg バーバラ(倍賞美津子)は15年前、19歳の時にコザ暴動で沖縄を離れたヌードダンサー。恋人の宮里(原田芳雄)は、原子力発電所の定期検査に携わる、所謂"原発ジプシー"だが、今は暴力団の手先に。バーバラは、元教師の野呂(平田満)と一緒に旅に出て、福井県で昔馴染み党宣言  o-00.pngのアイコ(上原由恵)と再会、彼女は頭の弱い娼婦で、足抜けを図ったためにヤクザに追われている。そんなアイコには、原発で働く安次党宣言o-00.png(泉谷しげる)という恋人がいたが、死んだという。ところが安次の墓に出向いたバーバラと野呂は、実は安次が生きていることを知る。安次は、原発事故で放射能を浴び、原発での事故のことを知っていることがばれるのを恐れ、死んだ060党宣言.jpgふりをしていたのだ。アイコと安次は、"じゃぱゆきさん"マリア(ジュビー・シバリオス)と一緒に逃亡するが、暴力団殿山 泰司 党宣言.jpgに見つかって殺されてしまう。アイコ殺しの罪を着せられそうになった宮里は、暴力団の戸張(小林稔侍)を猟銃で射殺、バーバラたちは、マリアをフィリピンに帰してやろうと密航を企て、それを阻止しようと、暴力団や悪徳刑事の鎧(梅宮辰夫)が港にやってくる。撃たれて息を引き取った宮里に代わって、バーバラは猟銃をぶっ放して追っ手を撃退。結局マリアの乗った船は、船長(殿山泰司)が油を積み忘れ止まってしまうが、最終的に彼女はフィリピンに送還されることに。移送される船上からバーバラの姿を見「生きているうちが」izumiya.jpg「生きているうちが」umemiya 2.jpg「生きているうちが」32.jpgつけたマリアは、アイコと安次のスローガンの言葉「溢れる情熱、みなぎる若さ、協同一致団結、ファイト!」と呼び掛ける―。(「党宣言」)
殿山泰司(真志城亀吉船長)
泉谷しげる(アイコの恋人・原発の作業員・姉川安次)/梅宮辰夫(鎧刑事)/小林稔侍(ヤクザ組織組員・戸張)

党宣言747.jpg 「ローケーション」の翌年に撮られたのが「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」('85年)ですが、森崎東監督のインタビューによれば、この作品の最初の構想では、原発内部の実態を暴露しようと教師ら多数の人質とともに立て籠もる男(原発ジプシー)の物語で、彼の要求で現場からの生中継が実現しそうになった時、突然天皇崩御の情報が入り、現場からの生中継が吹っ飛んでしまうという展開で、物語のオープニングでは犯人である主人公がトイレに入りながら天皇陛下の遺体を運ぶパレードがテレビで放映されている場面を見るという場面が用意されていたそうです(この映画の公開は1985(昭和60)年)。そして、その物語の主人公で立て籠もり犯のモデルは金嬉老だったそうです。

 こちらは、監督自身によるオリジナル脚本による作品であるため、撮影中にもセリフはどんどん変わったようでが、それは、森崎作品の多くに共通することだったようで、この作品でもセリフでけでなく、現場でどんどん物語や配役が変えられていったようです。

党宣言 8.jpg この映画の配役も、当初は平田満が演じた教師の役を原田芳雄が演じる予定だったといいます。しかし、原田芳雄が「俺に先生役は無理です」と監督に直訴し宮里を演じることになり、そのキャラクターも彼に合わせて変わっていったそうです。もちろん、野呂の役も平田に合わせて変えられたのでしょう。こうした、行き当たりばったり的な映画作りの手法は、完成度の高い作品を生み出すのには向いていないかもしれませんが、完成された芸術作品にはない、見るものを元気にするエネルギーを持つことあるとも思いました。

 昨年['20年]7月16日の森崎東次監督の逝去を受け、同月31日付の朝日新聞夕刊でこの作品をフィーチャーしていましたが、この映画には「虐げられた者への人間賛歌」であり、「ごった煮に落とし込んだ『怒り』」が込められているとしています。非常によくまとまった記事でした(さすが朝日新聞の映画担当記者。的を射た表現をするものだ)。

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2020年7月31日朝日新聞夕刊

 一言で言えば、「ロケーション」は、ごちゃごちゃしていて、もう何だか「わけわかんない」、言わば先の読めない"混沌"がむしろ魅力的であり、この映画の神髄であるのかも。「党宣言」の方も、アナーキーでパワフルであり、こうして2作比べてみると、通じ合う部分もあるように思え、故・森崎東監督の作品の持ち味がみえてくるように思いました。また、これは、「党宣言」の19年後に、脚本・撮影・音楽などの主要スタッフはすべて「党宣言」と同じメンバーで撮られた「ニワトリはハダシだ」('04年)にも見られた特徴のように思います。

ニワトリはハダシだ6.jpgニワトリはハダシだps.jpg 舞鶴に住む養護学校中学部3年生のサムこと大浜勇(浜上竜也)は重度の知的障害をもちながらも意外な記憶力を持つ。在日朝鮮人のハハこと金子澄子(倍賞美津子)は潜水夫のチチこと大浜守(原田芳雄)とサムの教育方針をめぐって対立し、現在は小学生の妹・チャルこと金子千春(守山玲愛)を連れて別居中である。そんなある日、サムとチャルが暴力団に拉致されてしまう。養護学校でサムを担任する桜井直子(肘井美佳)がサムたちの行方を追う―。(「ニワトリはハダシだ」)

ニワトリはハダシだin.jpgニワトリはハダシだド.jpg 森崎東監督の'04(平成16年)年度「芸術選奨」受賞対象となったこの作品においても、現代日本が抱える社会問題を詰め込められるだけ詰め込んで、その混沌とした中での猥雑で骨太な笑いから庶民の逞しさを描く構図になっています。20年近く経てもまったく枯れていないと言えば枯れていないと言えますが、相変わらずのごった煮感にはやや胃もたれがしそう(笑)。ただ、倍賞美津子、原田芳雄など森崎映画ならではの常連キャストの演技は安定感があってさすがであり、また養護学校教師役の肘井美佳の初々しい快活さも印象的でした(「時代屋の女房」の夏目雅子へのオマージュと思われる演技シーンがあった)。


シネマブルースタジオorigin.jpgロケーション s.jpg「ロケーション」●制作年:1984年●監督:森崎東●製作:中川滋弘/赤司学文●脚本:近藤昭二/森崎東●撮影:水野征樹●音楽:佐藤允彦●原作:津田一郎●時間:99分●出演:西田敏『ロケーション』un.jpg行/大楠道代/美保純/柄本明/加藤武/竹中直人/アパッチけん/大木正司/草見潤平/イヴ/パルコ/河原さぶ/殿山泰司/初井言榮/愛川欽也/乙羽信子/根岸明美/花王おさむ/和由布子/矢崎滋●公開:1984/09●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-12-23)(評価:★★★★)


「生きているうちが」1.jpg「生きているうちが」2.jpg党宣言9.jpg「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」●制作年:1985年●監督:森崎東●製作:木下茂三郎●脚本:近藤昭二/森崎東/大原清秀●撮影:浜田毅●音楽:宇崎竜童●時間:105分●出演:倍賞美津子/原田芳雄/平田満/片石隆弘/竹本幸恵/久野真平/上原由恵/泉谷しげる/梅宮辰夫/河原さぶ/小林稔侍/唐沢民賢/左とん平/水上功治/小林トシエ/殿山泰司/ジュビー・シバリオス●公開:1985/05●配給:ATG●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(20-01-12)(評価:★★★★)

「生きているうちが」vhs.jpg


「ニワトリはハダシだ」●制作年:2004年●監督:森崎東●製作:シマフィルム/ビーワイルド/衛星劇場●脚本:近藤昭二/森崎東●撮影:浜田毅●音楽:宇崎竜童●時間:114分●出演:倍賞美津子/原田芳雄/肘井美佳/石橋蓮司/余貴ニワトリはハダシだ00.jpg美子/浜上竜也/守山玲愛/加瀬亮/李麗仙/岸部一徳/塩見三省/笑福亭松之助/柄本明/河原さぶ/不破万作/三林京子/露の五郎/眞島秀和●公開:2004/11●配給:ザナドゥー●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(20-01-27)(評価:★★★★)
「ニワトリはハダシだ」vhs.jpg

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三角関係? 同性愛? 映画も原作も悪くはないが、共にややすっきりしない。

小さいおうち 2014 2.jpg 小さいおうち  1.jpg 小さいおうち 単行本.jpg
あの頃映画 松竹DVDコレクション 小さいおうち」黒木華/松たか子『小さいおうち

小さいおうち 映画1.jpg 昭和11年、田舎から出てきた純真な娘・布宮タキ(黒木華)は、東京郊外に建つモダンな赤い三角屋根の小さな家で暮らす一家の元で女中として働き始める。若く美しい奥様の時子(松たか子)、家の主人で玩具会社に勤める平井雅樹(片岡孝太郎)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を送っていたある日、雅樹の部下で板倉正治(吉岡秀隆)という青年が現れ、時子の心は揺れていく。タキは複雑な思いを胸に、その行方を見つめ続ける。それから60数年後、晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートに綴った自叙伝を読んだタキの親類・荒井健史(妻夫木聡)は、それまで秘められていた真実を知る―。

小さいおうち 金熊賞.jpg小さいおうち 黒木.jpg 2010(平成22)年上半期・第143回直木賞を受賞した中島京子の原作『小さいおうち』の映画化作品で、当時82歳の山田洋次監督は、本作が通算82作目となるとのこと。昭和初期からの時代を背第64回ベルリン国際映画祭.jpg景に、赤い屋根の小さな家で起きた密やかな"恋愛事件"を巡る物語で、時子役を松たか子、晩年のタキを倍賞千恵子が演じましたが、若き日のタキに扮した黒木華(「クラシックな顔立ち」が決め手となり起用されたという)が、第64回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞しています(「にっぽん昆虫記」の左幸子、「サンダカン八番娼館 望郷」の 田中絹代、「キャタピラー」の寺島しのぶに次いで日本人4人目の受賞)。

黒木華 in 第64回ベルリン国際映画祭(2014年2月15日)(c) JEAN−LOUIS TORNATO

 山田洋次監督が"不倫映画"を撮った―といった言われ方で話題になったりもしましたが、この作品の前年に撮った「東京家族」('13年)が小津安二郎の「東京物語」('53年)のリメイクと考えられることからすると、この「小さいおうち」は、小津の「早春」('56年)あたりと呼応する作品かなと思ったりもしました。

小さいおうち 映画4.jpg 本作は、黒木華が演じる「女中」タキ、松たか子が演じる「奥様」時子、吉岡秀隆演じる「青年」板倉の三人が主要登場人物で、タキの視点で語る時子と板倉の不倫関係が物語の中心になりますが、ネットでの映画評の中には、この三人が三角関係にあり、それゆえにタキは、出征することになった板倉に会いに行こうとする時子に、板倉と会う代わり、板倉の方から訪ねるよう手紙を書かせておきながら、その時子の手紙を板倉に渡さなかったのだという解釈のものがありました(中には、タキと板倉はすでに肉体関係があり、時子を裏切ったという思いから、二人は生涯結婚をせずに通したのだというのもあった)。

小さいおうち 2014 b.jpg 老齢となったタキが、甥っ子の健史に今書き綴っている回想録を読まれていることを意識しているため、タキが回想録に書いていることが必ずしもすべて本当ではないという可能性はもともとあったわけですが、三人が三角関係にあったというのはちょっと穿ち過ぎた見方のように思いました。個人的は、タキは、自分が奉公する平井家の崩壊を見たくなかったということが、手紙を板倉に渡さなかった理由かと思いましたが、そうした極端小さいおうち0.jpgな説に出くわすと、ちょっとこれでは理由としては弱いかなとも思ってしまいます(自信なさ過ぎ?)。

 一方、まったく別の見方として、タキと時子は精神的な同性愛の関係にあり、ゆえに、異性愛に奔ろうとする時子をそうさせまいとして、時子の手紙を板倉に渡さなかったのだという解釈もあって、最初はちょっとビックリしました。確かにそうなると、今度は板倉をめぐる時子とタキの三角関係ではなく、時子をめぐる板倉とタキの三角関係ということになり、板倉はタキにとっての"恋敵"のような位置づけになりますが、映画を見る限り、二人が抱き合ったりする場面はあっても、そこまでの雰囲気は感じられませんでした。

小さいおうち wkaba.jpg ところが、原作を読むと、タキの時子への思いが滔々と綴られていて、それだけでは「奥様」に憧れる「女中」というだけにすぎないのですが、時子の友人で婦人誌(女性誌)の編集者であるいわば職業婦人(キャリアウーマン)の女性が、そういう関係もあっていいと言って、タキと時子が精神的な同性愛関係にあることを示唆していました。従って、この同性愛論は、原作を読んだ人から出てきたのではないかと思います。映画だけではわからないように思いました。というか、「山田洋次監督は同性愛の物語を男女の不倫物語に確信犯的に改変してしまった」と言っている人もいます。

 原作を読むと、タキの平井家を守りたいという気持ちと、時子との精神的な関係を続けたいという気持ちは重なっているように思え、さらに、この二人に時子の息子・恭一を加えた三人の関係を「守りたいもの」として板倉が捉えていることがじわっと伝わってきます。その部分で、映画よりも原作の方が深い気がしました。

小さいおうち 映画6.jpg 映画では、板倉は時子に会わずに出征し(時子からみれば会えずに終わり)、それはタキが時子からの手紙を板倉に渡さなかったためで、そのことをタキは一生悔やみ続け、未開封の手紙を生涯持ち続けるととれる作りになっていますが、原作では、板倉は出征のため弘前に行く前に"小さいおうち"にやって来て時子と話をし、その間タキは庭仕事をしていたと回想録にあります(それでこの小さな恋愛事件は終わったと)。実際にはタキは板倉に手紙を渡さなかったため、板倉がやってくるはずはなく、この部分はタキがによるウソの記述ということいなります。映画では、板倉が最後に"小さいおうち"にやって来た〈偽エピソード〉を描くと"映像のウソ"になるため描いてはいませんでした。原作では、最後に健史は、渡されなかった手紙を見つけ、タキの回想録にあるその日の記録は虚偽であると知って、タキは時子に恋をしていたのかもしれないと悟ります。

 映画も原作も、共に悪くはないですが、ややもやっとした印象が残りました。直木賞の選評で浅田次郎氏が、「丹念な取材と精密な考証によって時代の空気を描き切った著者の作家としての資質の評価、及び次作への期待の高まりが感じられる」と述べているのは確かにそう思いました。選考で強く推したのはあと北方謙三氏など。一方、宮部みゆき氏の「この設定ならもっといろいろなことができるのにもったいない」、渡辺淳一氏の「昭和モダンの家庭的な雰囲気はある程度書けてはいるが、肝心のノートに秘められていた恋愛事件がこの程度では軽すぎる」といった評もありました。

 個人的には、同じく直木賞受賞作の、昭和初期の上流家庭の士族令嬢とお抱え女性運転手の活躍する、北村薫氏の『鷺と雪』('09年/文芸春秋)を想起したりもしましたが、この『小さいおうち』の方が上だったように思います。よく書けていると思いつつも星5つにならないのは、前述の通りやっぱりすっきりしないところがあるためです。

小さいおうち 松.jpg小さいおうち 映画 9.jpg「小さいおうち」●制作年:2014年●監督:山田洋次●脚本:平松恵美子/山田洋次●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:中島京子「小さいおうち」●時間:137分●出演 松たか/黒木華/片岡孝太郎/吉岡秀隆/妻夫木聡/倍賞千恵子/橋爪功/吉行和子/室井滋/中嶋朋子/林家正蔵/ラサール石井/あき竹城「小さいおうち」小林.jpg/松金よね子/螢雪次朗/市川福太郎/秋山聡/笹野高史/小林稔侍/夏川結衣/木村文乃/米倉斉加年●公開:2014/01●配給:松竹(評価:★★★☆)

小林稔侍(健史の叔父・荒井軍治)


橋爪功(タキが最初に奉公する家の小説家・小中先生)
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【2012年文庫化[文春文庫]】
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wカバー版

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「風物を撮っているだけでも映画が成り立ってしまうのが日本映画」ということの証明?

珈琲時光-movie-posters-cinema.jpg珈琲時光 2004 .jpg珈琲時光01.jpg
珈琲時光 [DVD]」浅野忠信/一青窈

珈琲時光02.jpg 2003年夏、東京。フリーライターの陽子(一青窈)は、古本屋を営む鉄道マニアの肇(浅野忠信)の力を借りて、30~40年代に活躍した台湾出身の音楽家・江文也について調べている。お盆の帰省で実家のある高崎へ戻った際、父(小林稔侍)と継母(余貴美子)に妊娠していることを告げる。相手は台湾に住む恋人だが、結婚する気は無い。東京へ戻った彼女は、肇と一緒に文也の足跡を辿る取材に出かけるが、その途中、気分を悪くする。彼女の妊娠を知り心配した肇は、何かと世話を焼こうとするも、その胸の内に秘めた彼女に対する想いを伝えることは出来なかった。ある日、知人の葬儀に出席する為、両親が上京して来た。あくまでも、シングルマザーの道を選ぼうとする陽子のことを心配する二人。だが、彼らもまたその想いを上手く口に出せない。翌日、陽子は電車の中で眠ってしまう。そんな彼女の側には、いつの間にか肇がいた―。

珈琲時光coffee.jpg 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の2004年公開作で、台湾の映画監督による作品であるため一応ここでは分類上"外国映画"としましたが、小津安二郎監督の生誕100周年、逝去40周年を記念して日本映画として撮られたものです。従って、「東京物語」など小津作品へのオマージュがいっぱい込められているのかなあと思いましたが、確かに東京を描くも(そのほかに高崎なども出てきて、北海道・夕張でもロケしているが)その撮影時点での"今"を切り取っているため、当然のことながら「東京物語」などと違った作りになっています。

侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督、一青窈、浅野忠信(2003年7月29日「珈琲時光」製作発表会見(帝国ホテル))

珈琲時光es.jpg 例えば、旧来の日本的な大家族が崩壊して、家族の関係性が変遷していく過渡期的状況を描いた「東京物語」などに比して、この「珈琲時光」の主人公の家族は既に核家族を通り越して親子が離れて住み、娘である一青窈演じる主人公・陽子は親が知らない間に妊娠しているという状況。しかも彼女は、シングルマザーの道を選ぶことを既に独りで決めていて、そうした重大な決意をしつつも淡々としており、「紀子三部作」と呼ばれる「晩春」('49年)、「麦秋」('51年)、「東京物語」('53年)の原節子演じる紀子が、いずれの作品でも最後の方で結婚に関する大きな決断をする度に号泣していたのとは対照的です。

珈琲時光b892.jpg 一方で、大きな事件が無いまま映画が進行していく点は小津作品と似ていると思いました。時代は異なりますが、背景に日本人的な日常の生活風景や風俗を多く織り込んでいる点でも似ているかもしれません。主人公の下宿アパートから始まり、神田の古書店街や鬼子母神周辺、御茶ノ水駅、都電荒川線やJR中央線・山手線の電車等々。この映画に関しては、「監督は結局何を何を撮りたかったの?」「電車じゃないか」という遣り取りのジョークがあるくらいです。

 外国人が撮った映画なのだと思いながら観るから一層意識されるのだろうと思いますが、双葉十三郎(1910-2009)の日本映画「風物病」論を思い出しました。双葉十三郎は、小津安二郎の「晩春」や清水宏の「小原庄助さん」をそれなりに優れた作品であるとしながらも、日本映画につきものの風物ショットが多く、映画そのものは内容に乏しいとしています。裏を返せば、仮に90分なら90分の映画の殆どを、主に風物(風景・風俗)を撮っているだけでも映画として成り立ってしまうのが日本映画であるということではないでしょうか珈琲時光03.jpg。そして、侯孝賢監督はこの作品で、小津作品へのオマージュが先にあったのは勿論だと思いますが、結果としてそのことを逆説的に証明しているような気がします。個人的にはそのことが日本映画の弱点珈琲時光04.jpgだとは思いませんが、たとえば外国人が小林稔侍が演じる陽子の父親や浅野忠信が演じる肇を観た場合、どうして喋るべき時にセリフが無く、ただただ山手線ホームに入ってくる電車や卓袱台を囲む家族などといった絵ばかりを撮っているのだろうかと思うかも。

珈琲時光 ド.jpg 侯孝賢監督は一青窈のコンサートを観て、彼女の起用しようと考えたそうで、ストーリーはそれから考えたのかなという気もします。一青窈はこの作品が映画デビュー作ですが、2年前の2002年に「もらい泣き」で歌手デビュー、2003年には紅白疑戦に出場し、2004年には「ハナミズキ」が大ヒットと、かなり忙しい時期だったのではないでしょうか。でも、浅野忠信ほかベテランで脇を固めていたというのもあったかと思いますが、ごく自然に演技できているように思いました(ウォン・カーウァイ(王家衛)監督の「恋する惑星」('94年/香港)に出た香港の歌手フェイ・ウォン(王菲)を想起した。そう言えば、あの映画に出ていた金城武も一青窈と同じ日台ハーフだった)。

 喫茶店のマスターとか、どこまでがプロの役者でどこまでが素人なのかよく分からない部分がありました(蓮實重彦が古本屋の客の役で出演したシーンは早々にカットされたらしいがクレジットだけは残っている)。一部に完全にドキュメンタリーっぽい撮り方をしているシーンもあって(江文也の妻本人に陽子が取材するところなど)、これらの点はむしろ小津映画に無い特徴であったと思います。

『珈琲時光』 平成16年.jpg「珈琲時光」●原題:珈琲時光●制作年:2004年●制作国:日本●監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)●脚本:侯孝賢/朱天文(チュー・ティエンウェン)●製作:宮島秀司/廖慶松(リャオ・チンソン)/山本一郎/小坂史子●主題歌:「一思案」(作詞:一青窈 作曲:井上陽水)●撮影:李屏賓(リー・ピンビン)●衣装デザイン:星野和美/山田洋次●時間:103分●出演:一青窈/浅野忠信/萩原聖人/余貴美子/小林稔侍/江乃ぶ●日本公開:2004/09●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(13-10-26(評価:★★★☆)

神保町シアター「神保町、御茶ノ水、九段下―"本の街"ぶらり映画日和」

ロケ地のマップ

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作りすぎというか、盛り込み過ぎという感じだが、奈良岡朋子の「知覧の母」は良かった。

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ホタル [DVD]」/VHS  高倉健・田中裕子
Hotaru2.jpg「ホタル」2001年図1.jpg 桜島を望む鹿児島県知覧町で、元特攻隊員の生き残りの山岡(高倉健)はこの日も漁船「とも丸」から養殖カンパチの生簀に餌を撒いていた。それを見守る妻の知子(田中裕子)と二人の間には子はなく、「とも丸」を我が子のように大事に乗りこなしてきた。知子が14年前に腎臓を患い人工透析が必要になったのを機に、沖合漁をやめカンパチの養殖を始めたのだった。昭和が終わり、平成が始まった頃、山岡は同じ特攻隊の生き残りだった藤枝(井川比佐志)が自殺したという知らせを聞き、青森に住む藤枝がホタル  2001 .jpg毎年のように山岡にリンゴを送っていただけに衝撃を受ける。数日後、藤枝の孫・真実(水橋貴己)が山岡の元を訪れる。真美(水橋貴己)が携えた藤枝の遺品のノートには、山岡から「生きろ」と励まされているように感じたこと、昭和が終わり自分の役目は終わったと感じることなど、その想いが綴られていた。数日後、山岡はかつて特攻隊員らから「知覧の母」と呼ばれて慕われていた富屋食堂の店主・山本富子(奈良岡朋子)から、特攻で命を落とした金山文隆少尉ことホタル  2001es.jpgキム・ソンジェ(小澤征悦)の遺品である面飾りのついた財布を韓国の実家に届けてほしいと託される。折しも医師(中井貴一)から知子の余命が僅か1年半と宣告されており、山岡は最後の思い出にと知子との韓国行きを決める。戦争時、知子(戦時中:笛木優子)は金山と婚約していて、当時は遺言さえ検閲される時代であり、山岡(戦時中:高杉瑞穂)は金山から口頭で、自分は大日本映画 ホタル2_m.jpg帝国のためではなく、知子や実家の家族、そして朝鮮民族の誇りのために死ぬのだという言葉を託されていた。山岡と知子は韓国の金山の実家を訪ねるが、遺族はなぜ金山が死に日本人の山岡が生き残ったのかと山岡を責める。しかし、山岡が金山の遺言を伝えると遺族は山岡を責めるのを止め、遺品を受け取る。山岡は知子に、今まで金山の遺言を伝えなかったことを謝罪すると、知子は「ありがとう」と泣きながら寄り添う。月日が流れ、21世紀のある日、老いた山岡は海辺で、役目を終えた「とも丸」が炎に包まれるのを見つめていた―。 

映画「ホタル」監督.jpg 2001年公開の降旗康男監督作で、その2年前に高倉健(1931-2014)が鹿児島県知覧町の「特攻平和祈念館」を訪ね、同行していた降旗康男監督に自ら映画化を持ちかけた作品で(高倉健が自ら製作を持ちかけたのは初めて)、降旗康男監督はこの作品で2001 年度・第52回「芸術選奨」を受賞しています。日本アカデミー賞で13部門ノミネートされ、70歳で203本目の出演映画となった高倉も主演男優賞にノミネートされましたが、後輩の俳優に道を譲りたい」として辞退、富屋食堂の店主・山本富子を演じた奈良岡朋子がブルーリボン賞助演女優賞を受賞しています。

高倉健/降旗康男

 山本富子のモデルは、「知覧の母」乃至は「特攻隊の母」と呼ばれた富屋食堂の主人・鳥濱トメ(1902-1992)で、小澤征悦が演じる金山文隆のモデルは、出撃の前日、鳥濱トメに自身が朝鮮人ということを明かした上で、アリランを歌ったという卓庚鉉(1920-1945)です。但し、鳥濱トメに別れを言いに行った際に「ホタルになって戻ってくるよ」と言ったエピソードの主は、宮川三郎(1925-1945)という人です。この2人の人物のエピソードが一緒にされるようになったのは、河内音頭の鉄砲光三郎(1929-2002)作詞作曲の「知覧の母~ホタル~」あたりからでしょうか。後年の、石原慎太郎脚本・製作総指揮、新城卓監督の「俺は、君のためにこそ死ににいく」('07年/東映)にもこのエピソードが出てきますが(個人的には未見)、そちらでは、宮川三郎がモデルの役と卓庚鉉がモデルの役を分けているようです。

 高倉健は、降旗康男監督の前作「鉄道員」('99年/東映)のように鉄道員を演ずれば鉄道員らしく、この映画のように漁師を演じれば漁師らしくて、その意味では"名優"ですが、「役」である以前に「高倉健」であるという意味では"名優"と言うより"スター"ということになるのかも。でも、やはり"名優"であることも否定できないといった感じでしょうか。以前、この「ホタル」の撮影の頃かと思いますが、NHKが高倉健を特集取材したことがあり、本番直前の現場スタッフの全員がピリピリした雰囲気の中で、これから演技に向かう主役たる高倉健が番組スタッフのインタビューに気さくに応じ、気を使う番組スタッフに「あまり準備しない方がいいんだ」というようなことを言っていたのが印象的でした。同時期の「クローズアップ現代」の高倉健特集の中では、降旗康男監督が高倉健のことを、「涙を流すようなことが出来る俳優ではなかったのが最近変わった」というようなことを述べています。また、高倉健本人へのインタビューで国谷裕子キャスターが、「俳優・高倉健は、ご自身・小田剛一(高倉健の本名)に近づいているのではありませんか」と問うたところ、「小田剛一よりも高倉健の方が遥かに長くなりましたから、どちらが本当の自分なのか分からなくなってきています」と答えたのことです。

映画ホタル-l.jpg 映画の方は、「卓庚鉉」と「宮川三郎」を「金山文隆」ということで一緒にしてしまったのはともかく、金山に許婚がいて、それが主人公である山岡の今の妻の知子であり、その知子は不治の病に冒されていて余命いくばくもなく、最期に金山の遺言を伝えるため遺族のいる韓国へ夫婦で向かう―という、やや作りすぎというか、前半部分には同じ特攻隊の生き残りだった藤枝映画 ホタル 05.jpgの自殺もあったりして、それでその娘(水橋貴己)が山岡を訪ねてくるわけですが、こうなると盛り込み過ぎという感じで、何映画 ホタル 奈良岡.jpgれの話も中途半端になってしまった印象を拭えません。個人的評価としては本来は△ですが、「知覧の母」を演じた奈良岡朋子の、まさに「ホタル」のエピソードを語る部分の演技が光っていて(舞台劇風でありながらも映画向けの演技をしている)、星半個加点して○にしました。舞台出身俳優の中でも上手いです、この人。「鉄道員」にも幌舞駅前「だるま食堂」の店主役で出ていましたが、個人的には、やや遡って、須川栄三監督の「螢川」('87年/松竹)で、この人の演技のところでぐっときました。

映画 ホタル.jpgホタル (映画).jpg 高倉健はこの映画においてもカッコいいにはカッコいいですが、ヤクザ映画ならともかく「鉄道員」やこうした映画になると「高倉健」だけでは成立せず、それを支えているのが、それぞれ妻役を演じた「鉄道員」の大竹しのぶであり、この「ホタル」の田中裕子のような女優と言えるかもしれません。大竹しのぶも上手いことは上手いですが、いかにも"演技派"風の大竹しのぶよりも田中裕子の方が脇役の本分を心得ている感じもします(この人も故・蜷川幸雄に「近松心中物語」の英国公演('89年)などで鍛えられた女優ではある)。但し、奈良岡朋子はその上を行く感じでしょうか。彼女鉄道員 大竹しのぶ2.jpgが「ホタル」のエピソードを語るシーンが前半部にあって、終盤それを超えるシーンが無いのも、"盛りだくさん"なのに"もの足りなさ"を感じる一因かもしれません。

大竹しのぶ in「鉄道員」(1999年)
   
Hotaru (2001)
Hotaru (2001).jpg「ホタル」●制作年:2001年●監督:降旗康男●脚本:竹山洋/降旗康男●撮影:木村大作●音楽:国吉良一●時間:114分●出演:高倉健/田中裕子/水橋貴己/奈良岡朋子/井川比佐志/小澤征悦/小林稔侍/夏八木勲/原田龍二/石橋蓮司/中井貴一/高杉瑞穂/今井淑未/笛木夕子/小林綾子/田中哲司/伊藤洋三郎/小林滋央/永倉大輔/好井ひとみ/町田政則/姿晴香●公開:2001/05●配給:東映(評価:★★★☆) 

奈良岡朋子 in「蛍川」(1987)/「鉄道員」(1999年)
螢川2es.jpg鉄道員 大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子.jpg

   
       

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"死者が顕われて生者に語りかける"という趣向において力を発揮する作家?

鉄道員(ぽっぽや)単行本.jpg 鉄道員(ぽっぽや)文庫.jpg 鉄道員poster.jpg 鉄道員 dvd.jpg 駅station poster.jpg
鉄道員(ぽっぽや)』『鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)』「鉄道員(ぽっぽや)」映画ポスター「鉄道員(ぽっぽや) [DVD]」「駅 STATION」チラシ

 1997(平成9)年上半期・第117回「直木賞」受賞作。

 道央の廃止寸前のローカル線「幌舞線」の終着駅「幌舞駅」の駅長・佐藤乙松(おとまつ)は。鉄道員一筋に生きてきたが近く定年を迎え、また同時に彼の勤める幌舞駅も路線と共に廃止の時を迎えようとしていた。彼は生まれたばかりの一人娘を病気で失い、妻にも先立たれ、孤独な生活を送っていた。ある雪の日、ホームの雪掻きをする彼のもとに、忘れ物をしたと一人の鉄道ファンの少女が現れる。乙松が近所にある寺の住職の孫だと思い込んだ彼女の来訪は、彼に訪れた優しい奇蹟の始まりだった―(「鉄道員」)。

 「鉄道員(ぽっぽや)」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」の8編を収録し、何れも1995(平成7)年から1997(平成9)年にかけて発表された作品で、作者によれば「奇蹟」をモチーフにしたものを集めたとのことです。

井上ひさし2.jpg 直木賞の選評を見ると、8人の選考委員のうち田辺聖子、黒岩重吾、井上ひさし、五木寛之の各氏が◎で、他の委員も概ね推している印象ですが、故・井上ひさしが、「高い質を誇っていた」と評価しつつも、「8つの短編が収められているが、内4つは大傑作であり、残る4つは大愚作である」とし、「大傑作群に共通しているのは、"死者が顕われて生者に語りかける"という趣向」であると指摘しているのが興味深いです(「この趣向で書くときの作者の力量は空恐ろしいほどだ」とも述べている)。

 "死者が顕われて生者に語りかける"作品となると、冒頭の、鉄道員の男のもとへ亡き娘の甦りとも思える少女が現われる「鉄道員」と、ポルノショップの店長である主人公に、自分との偽装結婚の末に亡くなった戸籍上の妻で出稼ぎ外国人の白蘭という女性が、手紙を通してまだ見ぬ夫である自分への想いを語る「ラブ・レター」、海外配転が決まったサラリーマンの主人公が、40年前自分が幼い頃に自分を捨てた父親と歌舞伎町で再会する「角筈にて」、子どもの頃に肉親を亡くして身寄りが無くなり、薬剤師となって医師と結婚した主人公が、嫁いだ先で夫の親族に苛められているところへ亡くなった祖父が現われ、主人公の力になるという「うらぼんえ」の4つということになるのでしょうか。

 文庫解説の北上次郎氏が、この短編集を「すごくよかった」と言う人が「鉄道員」「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」の4派に分かれるとし、それを派ごとの主張争いに模して解説していますが、そもそもこの4作品が選ばれていることが、故・井上ひさしの"死者が顕われて生者に語りかける"作品という指摘と合致しているように思いました。

 それ以外の作品はどうかと言うと、ややベタが過ぎたり気味悪かったりして、やはり個人的もこの4つかなあと。更に自分の好みを言えば、「ラブ・レター」はやはりベタ過ぎる印象があるし(北上次郎氏は女性読者には好評な作品としている)、上手さから言えばやはり「鉄道員」になるのかなあ。これだって、斎藤美奈子氏に言わせれば、「怪談、死んだ娘だから父に優しい(生きていたらグレてる)」ということになるのであって、直木賞選考委員の中にも阿刀田高氏のように、「悪くはないけれど、あまりにも型通りで、涙腺をふくらませながらも、こんなことで泣けるかと、しらけるところなきにしもあらず」ということにもなるのかも(考えてみればすべて乙松の頭の中で起きたこととも取れるし)。

鉄道員  02.jpg 「鉄道員」は降旗康男監督、高倉健主演で映画化されましたが('99年/東映)、昔劇場で観た、同じ降旗康男監督、高倉健主演の「駅 STATION」('81年/東映)が、倉本聰が高倉健のために書き下ろした脚本だったためか、何だか高倉健のプロモーション映画みたいで、日本映画ワースト・テンに名を連ねることも多く、個人的にも、自殺した円谷選手の遺書のナレーションを映画の中で使うことなどに抵抗を感じ、いいと思えませんでした(小谷野敦氏が「日本語をローマ字読みしてくっつけた作品のタイトルはダサい」と言っていた(『頭の悪い日本語』('14年/新潮新書))。先にそのイメージと何となくあって、結局「鉄道員」の方は劇場で観ることはなく、テレビがビデオで観たように思います。

鉄道員 志村けん.jpg 原作が短編なので、志村けんが酒癖の悪い炭坑夫として出て来きて炭鉱事故で亡くなる話や、その息子が成長してイタリアへ料理修業に行く話など、原作に無いエピソードで膨らませている部分はありますが、原作の持ち味(ひとことで言えば気持よく泣けるということか)はまずまず保たれていたのではないでしょうか。志村けん志村けん.jpg自宅の留守番電話に主演の高倉健直々の出演依頼のメッセージが入っていて驚いたとのこと。志村けんが俳優として映画出演したのは、ドリフターズの付き人時代に志村康徳名義で端役出演した「ドリフターズですよ!冒険冒険また冒険」('68年/東宝)、「ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓」('69年/東宝)の2作以外ではこの作品のみとなります(志村けんは山田洋次監督の「キネマの神様」に菅田将暉とダブル主演の予定だったが、'20年に新型コロナウイルスによる肺炎で急逝したため叶わなかった)

鉄道員 02.jpg これも一歩間違えばどうしようもない映画になりそうなところを、高倉健をはじめとする俳優陣の演技力で強引に持たせていたという感じがします。実際、日本アカデミー賞の主要7部門のうち、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(高倉健)、主演女優賞(大竹しのぶ)、助演男優賞(小林稔侍)の6部門を受賞していて、高倉健主演映画で、主要7部門中"6冠"達成は山田洋次監督の「幸福鉄道員 大竹しのぶ.jpgの黄色いハンカチ」('77年/松竹)以来ですが、「幸福の黄色いハンカチ」の方は第1回日本アカデミー賞ということもあって、監督賞や脚本賞は「『男はつらいよ』シリーズ」との合わせ技でした(因みに、「駅 STATION」も作品賞、脚本賞、主演男優賞を獲っている)。「鉄道員」で獲らなかったのは助演女優賞だけで、これは広末涼子のパートになるかと思いますが、その広末涼鉄道員  s.jpg子さえも、けっして上手いとは言えませんが、そう悪くもなかったように思います(最優秀賞の候補にはなっている)。大竹しのぶは流石に上手ですが、やはりこの映画は高倉健なのでしょう(高倉健は'99年モントリオール世界映画祭で主演男優賞受賞)。「駅STATION」の頃より年齢を重ねて良くなっていて、これなら泣ける? 泣けるかどうかと評価はまた別だとは思いますが。降旗康男監督、高倉健のコンビは2年後に再タッグを組み「ホタル」('01年/東映)を撮りますが、こちらも日本アカデミー賞で13部門ノミネートされ、高倉も主演男優賞にノミネートされましたが、後輩の俳優に道を譲りたい」として辞退しています。

鉄道員 s.jpg鉄道員  1s.jpg「鉄道員(ぽっぽや)」●制作年:1999年●監督:降旗康男●脚本:岩間芳樹/降旗康男●撮影:木村大作●音楽:国吉良一(主題歌:坂本美雨「鉄道員」)●原作:浅田次郎●時間:112分●出演:高倉健/大竹しのぶ/広末涼子/吉岡秀隆/安藤政信/志村けん/奈良岡朋子/田中好子/小林稔侍/大沢さやか/安藤政信/山田さくや/谷口紗耶香/松崎駿司/田井雅輝/平田満/中本賢/中原理恵/坂東英二/きたろう/木下ほうか/田中要次/石橋蓮司/江藤潤/大沢さやか●公開:1999/06●配給:東映(評価★★★☆)

高倉健、小林稔侍、田中好子(1956-2011)  大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子
鉄道員 高倉健、小林稔侍、田中好子.jpg 鉄道員 大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子.jpg

吉岡 秀隆            撮影の合間に談笑する志村けんと高倉健
鉄道員 吉岡 秀隆.jpg撮影の合間に談笑する志村けんと高倉健.jpg


駅station dvd.jpg駅station 01.jpg「駅 STATION」●制作年:1981年●監督:降旗康男●製作:田中寿一●脚本:倉本聰●撮影:木村大作●音楽:宇崎竜童●時間:132分●出演:高倉健/倍賞千恵子/いしだあゆみ/岩淵建/名古屋章/大滝秀治/八木昌子/池部良/潮哲也/寺田農/渡会洋幸/高橋雅男/榎本勝起/烏丸せつこ/田中邦衛/竜雷太/小林念侍/根津甚八/宇崎竜童/北林谷栄/藤木悠/永島敏行/古手川祐子/今福将雄/名倉良/平田昭彦/阿藤海/室田日出男●公開:1981/11●配給:東宝●最初に観た場所:テアトル池袋(82-07-24)(評価★★☆)●併映:「泥の河」(小栗康平)
駅 STATION [DVD]
駅 station.jpg

駅 STATION 池部良.JPG 駅station 06.jpg 駅Station 大滝秀治2.jpg
「駅 sutation」.jpg


【2000年文庫化[集英社文庫]/2004年再文庫化[講談社文庫(『鉄道員/ラブ・レター』)]/2013年文庫化[集英社みらい文庫]】

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高倉健の作品の中ではちょっと変わった味がある? この映画のお蔭で黒澤映画に出られなかった。

居酒屋兆治 poster.jpg居酒屋兆治 dvd.jpg
居酒屋兆治 昭和58年.jpg
居酒屋兆治 [DVD]高倉健伊丹十三/細野晴臣
題字:山藤章二
居酒屋兆治 2.jpg 函館で居酒屋「兆治」を営む藤野英治(高倉健)は、輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。かつての恋人で、今は資産家と一緒になった「さよ」(大原麗子)の転落を耳にするが、現在の妻・茂子(加藤登紀子)との生活の中で何もできない自分と、振り払えない思いに挟まれていく。周囲の人間はそんな彼に同情し苛立ち、さざなみのような波紋が周囲に広がる。「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」と学校の先輩の河原(伊丹十三)に挑発されても頭を下げるだけの英治。そんな夫を見ながら茂子は、人が人を思うことは誰にも止められないと呟いていた―。

居酒屋兆治 3.jpg 今月['14年11月]10日に亡くなった高倉健(1931-2014/享年83)の52歳の時の出演作。文春文庫ビジュアル版の『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年)に監督・男優・女優の各ベスト10のコーナーがあって、男優ベスト10は、1位・坂東妻三郎、2位・高倉健、3位・笠智衆、4位・三船敏郎、5位・三國連太郎、6位・森雅之、7位・志村喬、8位・石原裕次郎、9位・市川雷蔵、10位・緒形拳となっており、この中で存命していたのは高倉健のみだっただけに、その死は尚更に寂しく思えます。'12年の菊池寛賞の受賞式を欠席したのはともかく、'13年の文化勲章受賞式に出席したのを見て逆にもしかしてちょっとヤバいのかなと思ったけれど...。

居酒屋兆治 4.jpg この作品は最初に観た時は、大原麗子(当時37歳)のあまりの暗さに引いてしまいましたが(「網走番外地 北海篇」('65年)などで見せた勝気で明るい女性キャラとは真逆)、改めて観直してみるとそう悪くも感じないのは自分の年齢のせいか。その大原麗子(1946-2009/享年62)も亡くなってしまったわけですが、河原役の伊丹十三(1933-97/享年64)、居酒屋の親爺で英治の師匠役の東野英治郎(1907-94/享年86)、「兆治」の常連客役の池部良(1918-2010/享年92)(高倉健とは「昭和残侠居酒屋兆治 大滝秀治.jpg伝」シリーズ('65-'72年)以来、正確には「君よ憤怒の河を渉れ」('76年)、「冬の華」('78年)、「駅STATION」('81年)に続く共演)、英治が元いた会社の専務役の佐藤慶(1928-2010/享年81)、小学校長役の大滝秀治(1925-2012/享年87)など、'84年にテアトル新宿で初めてこの作品を観てから亡くなった人が随分いるなあと。高倉健、伊丹十三、池部良のスリーショットなんて、観ていてしみじみしてしまいます。

居酒屋兆治 山藤.jpg居酒屋兆治 1.jpg 俳優だけでなく、原作者の山口瞳(1926-1995/享年68)や、この映画の題字を担当した山藤章二(共に右写真中央)、ミュージシャンの細野晴臣なども出演していて(水色のランニング姿。カメオ出演というより役者として出ている。'82年から'83年にかけてYMOの活動休止期があり、それを機に坂本龍一が「戦場のメリークリスマス」('83年)、高橋幸宏が「だいじょうぶマイ・フレンド」('83年)、「天国にいちばん近い島」('84年)などに出演したりした)、皆で楽しく作っている作品という印象もあり、女性陣も、ちあきなおみ加藤登紀子といった役者が本業ではない人が活き活きと演技しています。
ポスター・題字:山藤章二

 高倉健はこの「居酒屋兆治」への出演準備をしていた矢先に黒澤明監督から「鉄修理(くろがねしゅり)」役で「乱」への出演を打診されていますが、「でも僕が『乱』に出ちゃうと、『居酒屋兆治』がいつ撮影できるかわからなくなる。僕がとても悪くて、計算高い奴になると追い込まれて、僕は黒澤さんのところへ謝りに行きました」と述懐しています。黒澤明は自ら高倉宅へ足繁く黒澤明2.jpg4回も通って、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗康男君のところへ謝りに行きます」と口説いたけれども、高倉健は「いや、それをされたら降旗監督が困ると思いますから。二つを天秤にかけたら誰が考えたって、世界の黒澤作品を選ぶでしょうが僕には出来ない。本当に申し訳ない」と断ったため、黒澤明から「あなたは難しい」と言われたそうです(結局、鉄修理は井川比佐志が演じることになった。高倉健はその後、偶然「乱」のロケ地を通る機会があり、「畜生、やっていればな」と後悔の念があったとも語っている。但し、高倉健の後期の黒澤作品に対する評価はイマイチのようだ)。

居酒屋兆治 7.jpg 今観ると、高倉健の降旗監督に寄せる信頼が、この作品のアットホームな雰囲気を醸しているのかもしれないという気もします。高倉健と田中邦衛がやり合う場面で、田中那衛のオーバーアクションに高倉健が噴き出したように見えるシーンがあって、最初に観た時はそれがものすごく引っかかったのですが(普通はNGではないかと)、そうした雰囲気の中で撮られた作品だと思うとさほど気にはならず、高倉健の出演作の中ではちょっと変わった味があると思えるようにもなってきました。

   高倉健・ちあきなおみ  /  高倉健・東野英治郎  /  伊丹十三・細野晴臣
居酒屋兆冶 ちあき.jpg 居酒屋兆冶 東野.jpg 居酒屋兆冶 細野.jpg
  高倉健・田中邦衛    /    田中邦衛・大滝秀治
田中邦衛 「居酒屋兆治」2.jpg田中邦衛 「居酒屋兆治」.jpg

チャン・イーモウ監督と高倉健さん.jpg    高倉健 訃報.png
チャン・イーモウ監督と高倉健(2005年東京国際映画祭)[毎日新聞]/2013年文化勲章受章

池部 良 居酒屋兆治1.jpg池部 良 居酒屋兆治2.jpg「居酒屋兆治」●制作年:1983年●監督:降旗康男●製作:田中プロモーション●脚本:大野靖子●撮影:木村大作●音楽:井上堯之(主題歌「時代おくれの酒場」 歌:高倉健/作詞・作曲:加藤登紀子)●時間:125分●原作:山口瞳「居酒屋兆治」●出演:高倉健/大原麗子/加藤登紀子/伊丹十三/田中邦衛/小林稔侍/左とん平/池部良/ちあきなおみ/東野英治郎/佐藤慶/平田満/河原さぶ/小松政夫/美里英二/あき竹城/大滝秀治/石野真子/山谷初男/細野晴臣/三谷昇/石山雄大/武田鉄矢/好井ひとみ/伊佐山ひろ子/板東英二/山藤章二/山口瞳●公開:1983/11●配給:東宝●最初に観た場所:テアトル新宿(84-02-12)(評価:★★★☆)●併映:「魚影の群れ」(相米慎二)

大原麗子メモリー ずっと好きでいて」('10年/講談社)
大原麗子メモリー ずっと好きでいて200_.jpg 大原麗子メモリー ずっと好きでいてWL.jpg 大原麗子メモリー ずっと好きでいて1L.jpg
「居酒屋兆治」05.jpg

《読書MEMO》
●ロングインタビュー(時事ドットコム 2012年)より
 「降旗監督の「居酒屋兆治」の準備が進んでいたとき、黒澤さんの「乱」に(鉄修理=くろがね・しゅり=役で)出演できるという話があった。でも、僕が「乱」に出ちゃうと「居酒屋兆治」がいつ撮影できるか分からなくなる...。とても僕が悪くて、計算高いやつになるという風に追い込まれて、僕は黒澤さんのところへ謝りに行きました。
 あの時、黒澤さんは僕の家に4回いらして、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗君のところへ謝りに行きます」とまで言ってくれた。でも、僕は「いや、それをされたら降旗さんが困ると思いますから。二つをてんびんに掛けたら、誰が考えたって世界の黒澤作品を選ぶのが当然でしょうが、僕にはできない。本当に申し訳ない」と謝った。黒澤さんには「あなたは難しい」って言われましたね。
 その後、「乱」のロケ地を偶然通ったことがあって、「畜生、やっていればな」と思いましたよ。
 ただ、黒澤監督の晩年の作品には、良いものがないと思うんですよね。僕は、監督が(作品の常連だった)三船敏郎さんと別れたのが大きい気がする。志村喬さんもそうだったけれど、三船さんは(黒澤作品の)エンジンの大きな出力だったのでしょう。二人が抜けたことで、その出力がどーんと落ちた。怖いですよね。映画は絶対に一人ではできないんですよ。」

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群像活劇。配役の"混乱"が作品の"混沌(カオス)"的雰囲気と重なった。

仁義なき戦い dvd.jpg   女奴隷船 dvd.jpg
仁義なき戦い [DVD]」/「仁義なき戦い」テーマ(津島利章)/「女奴隷船 [DVD]

6 仁義なき戦い.jpg 広能昌三(菅原文太)は復員後、遊び人の群れに身を投じていたが、山守組々長・山守義雄(金子信雄)はその度胸と気風の良さに感心し、広能を身内にする。まだ小勢力だった山守組は、土居組との抗争に全力を注ぐ。その土居組を破門された若頭・若杉(梅宮辰夫)が山守組に加入し、若杉による土居(名和宏)殺害計画が進む―。 

 「仁義なき戦い」シリーズの作曲家の津島利章の訃報が入ってきました(1936-2013.11.25/享年77)。キネマ旬報が'09(平成21)年に実施した「オールタイム・ベスト映画遺産200(日本映画編)」で、歴代第5位という上位にランクされた作品ですが、個人的にはあの作品で最も印象に残ったのはテーマ曲だったかも。

 任侠道を美化して描くそれまでの"時代劇風の舞台演劇"っぽいヤクザ映画から、ヤクザの行動原理も結局は金と権力に拠るという視点に立った、"リアルな群像活劇"へのターニングポイントとなった作品と言われていますが、裏切りに続く裏切りの一方で、主人公の広能だけは、従来の任侠道を貫く者として美化されているような感じで、やや矛盾を感じなくもありません。但し、そのことが作品としての救いにもなっています。「その他大勢」はストレートに「我欲に忠実」な人々とでも言うべきでしょうか。そうした点も含め、深作欣二の作品の中では、その演出力が最も発揮された作品だと思います。

梅宮辰夫の若杉.jpg仁義なき戦いAL_.jpg仁義なき戦い5_AL_.jpg 「仁義なき戦い 広島死闘篇「('73年)、「仁義なき戦い 代理戦争」('73年) 、「仁義なき戦い 頂上作戦('74年)、「仁義なき戦い 完結篇」('74年)も続けて観ましたが、広能の他にも、松方弘樹演じる板井や梅宮辰夫演じる若杉などサブヒーロー的な登場人物がいることはいますが、彼らは皆、この第1作の中で死んでしまいます。
獄中の広能を訪ねる若杉(梅宮辰夫)
明石組幹部 岩井信一(梅宮辰夫)
梅宮辰夫 仁義なき戦い.jpg シリーズの後の方になると、死んだ人物の役を演じた俳優がまた別の役で出てくるので、観ていて妙な感じがします。第1作における梅宮辰夫の「若杉」などは結構キーパーソンだったのですが、第3作「仁義なき戦い 代理戦争」と第4作と「仁義なき戦い 頂上梅宮辰夫 アンナ2.jpg作戦」には「明石組幹部 岩井信一」の役で出演しています。この役を演じるのに際して眉毛を剃り落としましたが、これは、岩井のモデルで梅宮ア辰夫ンナ.jpgある三代目山口組若頭の山本健一に眉毛がなかったためで、眉のない父の顔を見た娘の梅宮アンナ(1972年生まれ)は、怖くて泣いたそうです。でも、このシリーズの演技で最も飛躍した俳優の一人が彼、梅宮辰夫であり、異なった役を演じ切ったこともその要因としてあったのでは。違った役と言えば、第3作に第1作と別の役で出てくるのは渡瀬恒彦も然り。しかも、ストーリー的には、この第3作が第1作の続編となっているのでややこしいです。松方弘樹は第4作「頂上作作戦」で別の役で登場、第5作「完結篇」でさらに別の役で出てきます。

「仁義なき戦い」シリーズ松方.jpg松方弘樹 in「仁義なき戦い」(坂井鉄也・射殺される)/「仁義なき戦い頂上作戦」(藤田正一(射殺される)/「仁義なき戦い完結編」(市岡輝吉・射殺される)

「仁義なき戦い」73.jpg 準主役級でさえそうですから、主に殺され役である川谷拓三などは第1作から第5作まで全部異なる役で登場しており、一方で、小林旭は第3作から第5作まで、山城新伍は第2作から第5作まで同じ役で出ていたりもします。流れとしては、誰か特定の個人の生き様を追うというよりは、次第に"群像活劇"の色合いを濃くしていくという感じでしょうか(広能が結構長く刑務所に入っている期間があって、必ずしも毎回は表舞台に出てはこないということもある)。
「仁義なき戦い」('73年)

 個人的には、配役から受ける"混乱"が、そのまま、作品の"混沌(カオス)"的雰囲気と重なりました(笑)。その他、千葉真一(第2作)、北大路欣也(第2作・第5作)、丹波哲郎(第3作、写真のみ)、宍戸錠(第5作)といった面々も登場します。因みに第5作「完結篇」は、当初4作で終わる予定が、シリーズ続行でオマケ的に作られた作品です。

吉祥寺東映.jpg このシリーズを通しで観た「吉祥寺東映」は、自分が30年前に通った当時は座席数の割には狭い映画館で、「仁義なき戦い」上映時は満席で立ち見も出る状態でした。但し、席にアルプス・スタンドのようなかなり急勾配の段差が設けられて(最前列には手すりがあった)、前の人が邪魔になるということはありませんでした。東宝配給の「もののけ姫」('97年)の吉祥寺地域での上映誘致を契機に、'96年7月に館名を「吉祥寺プラザ」に変えていますが、その前にいつの間にかロード館になっていて、あの座席はかなり早い時期に取り壊されたみたいです。
吉祥寺東映 1978(昭和53)年に吉祥寺駅北方面・五日市街道沿いにオープン、1996年7月~吉祥寺プラザ

「女奴隷船」(新東宝)1.jpg 菅原文太は、'60(昭和35)年の正月映画「女奴隷船」(新東宝)に26歳で主演しています。この作品は舟崎淳の「お唐さん」を基にした和風海洋アドベンチャー(?)で、これ、昭和20年初頭の時代設定なのですが(「仁義なき戦い」と大差ない)、日本女性を上海まで運んでセリにかけて売り飛ばす「お唐さん船」というものがストーリー背景となっています。

「女奴隷船」(新東宝)2.jpg菅原文太 「女奴隷船」.jpg 善玉主人公が菅原文太で(この頃は何となく的場浩司と似ている)、悪役は丹波哲郎(この人は昔からこんな感じだったんだなあと)、女優陣は新東宝のセクシー看板女優・三原葉子に、この映画を撮った小野田嘉幹監督と結婚することになる三ツ矢歌子など。

「女奴隷船」(新東宝)3.jpg 菅原文太は丹波哲郎とのアクション対決を演じたりしましたが、う~ん、スゴイ「B級」の冒険アクション&お色気映画。ダサいセットが微笑ましく、但し、東映風のミニチュア特撮を駆使したりしている努力は買えます。音楽は、東大文学部卒心理学科卒で作曲家になった渡辺宙明(1925-font color=red>2022/96歳没)です。
三原葉子/三ツ矢歌子

女奴隷船l2.jpg 丹波哲郎の海賊の統領役はあまりに漫画チックで笑女奴隷船 1シーン.jpgえますが(洋画の影響?)、これでも作品全体としては新東宝作品群の中では相対的にみてゴージャスな方女奴隷船il2.jpgと言ってよく(この作品は'60年の新東宝のお正月映画であり、新東宝は翌'61年に倒産する)、三原葉子三原葉子のベリーダンス.jpgベリーダンスもどきの踊り(これも洋画の影響?)が見ることができるなど、「珍品」的意味合いで星1個オマケという感じ大井武蔵野館 閉館日2.jpg大井武蔵野館 閉館日22.jpgでしょうか(大井武蔵野館って変わった作品を上映していた)。
大井武蔵野館 1999(平成11)年1月31日閉館

 菅原文太は、新東宝の経営が倒産して東映に移籍してからは10年間くらい「雌伏の時」がありましたが(というと聞こえはいいが、セリフさえない端役時代が長らくあった)、やがて徐々に頭角を現し、この「仁義なき戦い」シリーズでブレイク、この人、東北出身ですが(井上ひさしの「吉里吉里人」の映画化権を持っている)、どうしても「仁義なき戦い」のイメージがあって「じゃけんの~」という広島弁の方が似合ってしまう役者です。

Jingi naki tatakai (1973)
Jingi naki tatakai (1973) .jpg「仁義なき戦い」1973年.jpg仁義なき戦い 1973年1月13日公開.jpg「仁義なき戦い」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:99分●出演:菅原文太/松方弘樹/田中邦衛/金子信雄/梅宮辰夫/成田三樹夫/渡瀬恒彦/曽根晴美/川地民夫/田中邦衛/名和宏/内田朝雄/伊吹吾郎/川谷拓三/中村英子/木村俊恵/渚まゆみ/内田朝雄/三上真一郎/高野真二/高宮敬二/林彰太郎/中村錦司/野口貴史/大前均/志賀勝/岩尾正隆●公開:1973/01●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)●併映:「仁義なき戦い 広島死闘篇」/「仁義なき戦い 代理戦争」/「仁義なき戦い 頂上作戦」/「仁義なき戦い 完結篇」(何れも深作欣二)  

「女奴隷船」ポスター/スチール写真
女奴隷船 ポスター.jpg女奴隷船 スチール.jpg女奴隷船ps.jpg「女奴隷船」●制作年:1960年●監督:小野田嘉幹●製作:大蔵貢●脚本:田辺虎男●撮影:山中晋●音楽:渡辺宙明●原作:舟崎淳「お唐さん」●時間:83分●出演:菅原文太/三原葉子/三ツ矢歌子/丹波女奴隷船 vhs.jpg映画「女奴隷船」【TBSオンデマンド】_.jpg哲郎/左京路子/沢井三郎/大友純/杉山弘太郎/川部修詩/中村虎彦●公開:1960/01●配給:新東宝●最初に観た場所:大井武蔵野館(86-10-04)(評価:★★☆)●併映:「女獣」(曲谷守平)主演:菅原文太
女奴隷船 [VHS]」「映画「女奴隷船」【TBSオンデマンド】」   
        

Hiroshima shitô hen (1973)  
Hiroshima shitô hen (1973) .jpg仁義なき戦い 広島死闘篇12.jpg仁義なき戦い 広島死闘篇.jpgHiroshima shitô hen _.jpg「仁義なき戦い 広島死闘篇」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:100分●出演:菅原文太/前田吟/松本泰郎/司裕介/金子信雄/木村俊恵/名和宏/成田三樹夫/北大路欣也/山城新伍/宇崎尚韶/笹木俊志/木谷仁義なき戦い 広島死闘篇   .jpg仁義なき戦い 広島死闘篇 1973年.jpg仁義なき戦い 広島死闘篇_梶.jpg邦臣/小池朝雄/堀正夫/遠藤辰雄/国一太郎/川谷拓三/藤沢徹夫/白仁義なき戦い 広島死闘篇 加藤嘉.JPG川浩二郎/千葉真一/大木晤郎/室田日出男/八名信夫/志賀勝/広瀬義宣/北川俊夫/加藤嘉/中村錦司/梶芽衣子●公開:1973/04●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)

加藤嘉(大友連合会々長・大友長次)

Jingi naki tatakai:Dairi sensô (1973)
Jingi naki tatakai:Dairi sensô (1973).jpg
仁義なき戦い 代理戦争3.jpg仁義なき戦い 代理戦争dvd.jpg「仁義なき戦い 代理戦争」●制作年:1973年●監督:深作仁義なき戦い 代理戦争  .jpg欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:102分●出演:菅原文太/小林旭/渡瀬恒彦/山城新伍/池玲子/金子信雄/木村俊恵/仁義なき戦い 代理戦争 田中邦衛.jpg0仁義なき戦い 代理戦争 1973年.png成田三樹夫/加藤武/山本麟一/川谷拓三/北村英三/汐路章/内田朝雄/遠藤辰仁義なき戦い 代理戦争 丹波.jpg雄/室田日出男/大前均/野口貴史/曽根晴美/名和宏/丹波哲郎梅宮辰夫田中邦衛●公開:1973/09●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)

Jingi naki tatakai:Chôjô sakusen (1974)
Jingi naki tatakai:Chôjô sakusen (1974) .jpg
仁義なき戦い 頂上作戦.jpg仁義なき戦い 頂上作戦 1974年1月.jpg「仁義なき戦い 頂上作戦」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:101分●出演:菅原文太/梅宮辰夫/黒沢年男/田中邦仁義なき戦い 頂上作戦t.jpg衛/小林旭/松方弘樹/堀越光恵/木村俊恵/中原早苗/渚まゆみ/金子信雄/小池朝雄/山城新伍/加藤武/夏八木勲/遠藤太津朗/内仁義なき戦い 頂上作戦 小林旭2.jpg田朝雄/長谷川明男/小倉一郎/葵三津子/城恵美/八名信夫/汐路章/室田日出男/鈴木瑞穂/野口貴仁義なき戦い 頂上作戦 小林稔侍2.jpg頂上作戦 渚まゆみ2.jpg史/小林稔侍/岡部正純/高月忠/白川浩二郎/有川正治/●公開:1974/01●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)
小林稔侍・岡部正純・高月忠/渚まゆみ/小林旭(中央)

Jingi naki tatakai:Kanketsu-hen (1974)
Jingi naki tatakai:Kanketsu-hen (1974) .jpg
仁義なき戦い 完結篇.jpg仁義なき戦い 完結篇 1974.jpg「仁義なき戦い 完結篇」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:高田宏治●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:98分●出演:菅原文太/伊吹吾郎/野口貴史/寺田誠/桜木健一/松方弘樹/唐沢民賢/白川浩三郎/小林旭/北大路欣也/西田良/曽根晴美/成瀬正孝/宍戸錠/山田吾一/誠直也/織本順吉/高並功/八名信夫/山城新伍/木谷邦臣/田中邦衛/国一太郎/川谷拓三/金子<第五作  槇原政吉(田中邦衛).jpg仁義なき戦い 完結篇ド.jpg信雄/岩尾正隆/鈴木康弘/天津敏/内田朝雄/野川由美子/藤浩子/中原早苗/橘麻紀/賀川雪絵●公開:1974/06●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)

田中邦衛(槇原組組長・槇原政吉)

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共演の男優・女優を追悼。シェイクスピアを下敷きにした見所多い(?)作品「禁断の惑星」。

禁断の惑星 dvd.jpg 禁断の惑星 英語ポスター.jpg 禁断の惑星 ポスター.jpg 昆虫型ミュータントがアダムス博士を襲う.jpg
禁断の惑星 [DVD]」「禁断の惑星」輸入版ポスター/日本版ポスター 「宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg 宇宙移民が行われている2200年代、アダムス機長(レスリー・ニールセン)が率いる宇宙船は、20年前に移住して消息を絶った移民団の捜索のために、惑星第4アルテアへ着陸するが、アルテア移民団の生き残りは、モービアス博士(ウォルター・ピジョン)と、アルテアで誕生した彼の娘アルティラ(アン・フランシス)の2人と、博士が作った万能ロボット・ロビーだけだった。博士によれば、アルテアにはかつて高度に進化し、発達した科学を創り上げた先住民族が存在したが、原因不明の滅亡を遂げ、そして移民団も正体不明の怪物に襲われて自分達以外は死んでしまったという―。

アン・フランシス_3.jpgForbidden Planet2.jpgForbidden Planet.jpg アダムス機長を演じたレスリー・ニールセンが昨年('10年)11月に亡くなった(享年84)のに続いて、アルティラを演じたアン・フランシスも今年('11年)1月に亡くなり(享年80)、寂しい限りです。TV番組「ハニーにおまかせ」('56年~)の私立探偵役のアン・フランシスも、「裸の銃(ガン)を持つ男」('86年)のレスリー・ニールセンも、この映画では2人とも20代でしょうか。この作品を観ると、永遠に2人とも若いままでいるような錯覚に陥ります。

禁断の惑星 名画座ミラノ2.jpg 「禁断の惑星」がシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにしていることはよく知られていて、最初に劇場(名画座ミラノ、すでに「名画座料金」ではなくなっていた)で観た時も、同時期の作品「宇宙水爆戦」('55年)などに比べてよく出来ているように思いました。

宇宙水爆戦1.jpg 「宇宙水爆戦」の方は結構キッチュ趣味と言えるかも。惑星間戦争で絶滅の危機にある星の異星人の科学者が、地球の科学者に協力を依頼するが、実はその星の指導者は地球を支配して移り住むことを企んでいた―というストーリーですが、最後、事件が一見落着したかと思ったら、宇宙船内に潜んでいた宇宙昆虫人間みたいなミュータントに襲われそうになるという―このとってつけたように出現するミュータントがポスターなどではメインになっていて、それだけストーリーは印象に残らないといことでしょうか。ストーリー的にも怪物キャラクター的にも、当時流行ったSFパルプマガジンの影響を強く受けているようです(そのこともキッチュ感に繋がる要因か。でもこのキッチュ感こそが、この作品の根強い人気の秘密かも)。

宇宙家族ロビンソン3.jpg 一方、「禁断の惑星」に出てくる有名キャラクターは万能ロボット「ロビー」で、これを参照したのが60年代に作られたテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」に出てくるロボット(愛称:フライデー)だったりし、先駆的な要素も結構あったわけです(「宇宙家族ロビンソン」には外にも「宇宙水爆戦」も参考にしている箇所が幾つかある)。

刑事コロンボ 愛情の計算2.png刑事コロンボ 愛情の計算.jpg 因みに、このロボットは、「刑事コロンボ」の第23話「愛情の計算」('74年)にも"ゲスト出演"してロビーとフライデー.jpgおり(下半身の造りが二本脚から台座型に変わっている)、人工知能研所の所長である犯人のアリバイ作りに一役買っていますが、ロボットのキー・ボードを叩く手つきの大雑把さを見ると、ちょっと所長の代役をさせるには無理な感じも。

ロビー(「禁断の惑星」)とフライデー(「宇宙家族ロビンソン」)のおもちゃ

 事件の鍵を握る天才少年の名は、スティーブン・スペルバーグで、これは勿論、コロンボ・シリーズ第3話「構想の死角」を撮ったスピルバーグ監督の名前をもじったもの。息子を庇う親心を利用して犯人を自白に追い込むというのは、後のフェイ・ダナウェイが犯人役を演じた第62話「恋におちたコロンボ」('93年)でもFaye Dunaway & Peter Falk.jpg恋におちたコロンボ2.jpg(こちらは娘を庇ってだが)使われましたが、真犯人ではないと分かっていながら拘束するのはいかがなものでしょうか(「恋におちたコロンボ」の脚本はピーター・フォーク自身が手掛けている)。但し、フェイ・ダナウェイの演技力はさすが。70年代のシリーズ作に比べ見劣りがする90年代のシリーズ作(特に後期作品)の中では、ひときわ映える名犯人役と言っていいのではないでしょうか。
Faye Dunaway & Peter Falk

アン・フランシス「死の方程式」「溶ける糸
死の方程式 アン・フランシス.jpg溶ける糸3 アン・フランシス.jpg 因みに「刑事コロンボ」シリーズに出たのはロボットだけではなく、アン・フランシスも「刑事コロンボ」の第8話「死の方程式」('72年)にロディ・マクドウォール(「猿の惑星」)演じる犯人の秘書兼愛人役で、第15話「溶ける糸」('73年)にレナード・ニモイ(「スタートレック」)演じる犯人に殺されてしまう看護婦役で出ているし、レスリー・ニールセンも、第7話の「もう一つの鍵」で、犯人である広告会社役員役のスーザン・クラークの恋人役で、第34話「仮面の男」('75年)で、元同僚のスパイに殺害される被害者役仮面の男2.jpg刑事コロンボ 仮面の男2.jpgで出ています。

レスリー・ニールセン 「仮面の男

 レスリー・ニールセンはこの頃もまだ二枚目俳優で(コメディ初出演は「フライング・ハイ」('80年))、「禁断の惑星」や「刑事コロンボ」の演技と「裸の銃(ガン)を持つ男」('88年)の演技を比べてみるのも一興でしょうか。コメディ俳優としてブレイクするきっかけとなった「裸の銃を持つ男」ではエリザベス女王裸の銃(ガン)を持つ男(1988).jpgをはじめフセイン大統領、ホメイニなど様々な人物をコケにし、「裸の銃を持つ男PART2 1/2」('88年)では当時のアメリカ大統領裸の銃(ガン)を持つ男2.jpgジョージ・ブッシュをコケにしています。「裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱」('94年)までプリシラ・プレスリー、ジョージ・ケネディ、O・J・シンプソンという共演トリオは変わらず和気藹々といった雰囲気でしたが、O・J・シO・J・シンプソンs.jpgンプソンは'94年に発生した元妻の殺害事件(「O・J・シンプソン事件」)の被疑者となってしまいました(刑事裁判で殺人を否定する無罪判決となったが、民事裁判では殺人を認定する判決が下った)。


Forbidden Planet3.jpg 「禁断の惑星」という作品は、ストーリーも凝っているように思われ、「テンペスト」をなぞるだけでなく、「イドの怪物」という精神分析的な味付けがされていて、ファーザー・コンプレックスがモチーフになっているように、フロイディズムの影響も濃く滲んでいます。
 また、ロボット・ロビーが博士に怪物の攻撃を止めるよう命じられても出来ないのは、アイザック・アシモフの「ロボット3原則」が下敷きになっているわけですが、この「ロボット3原則」は「ロボコップ」('87年/米)のラストなどにも援用されていたなあ。

 「禁断の惑星」も、時代ものSFパルプマガジンをそのまま映像化したような雰囲気はあるものの、それでいて結構おシャレな、レトロ・モダン感満載の"未来"像が楽しめるし、アン・フランシスがパルプマガジンの表紙そのままに超ミニで歩き回るし、この作品が実質的には映画デビュー作であるアダムス機長を演じたレスリー・ニールセンは、多分大多数の日本人がイメージしキャプテンウルトラ222.jpgている彼の演技とは全く異なる演技をしているし(昔の怪獣映画の宝田明や夏木陽介の感じ、乃至は、背景も含めると「キャプテンウルトラ」('67年)の中田博久の方がより近いか)、いろいろと見所が多い作品です(「なぜウチの中にビオトープがあるのか?」とか、突っ込み所も含めて)。

キャプテンウルトラ ハック2.jpg 尚「キャプテンウルトラ」にも、「宇宙警察パトロール隊」と共に「宇宙船シュピーゲル号」(なぜか「鏡」を意味するドイツの有名週刊誌の名前)に乗り込み、バンデル星人や怪獣たちと戦い続ける万能ロボット「ハック」が登場しますが、こちらは「ゴジラ」以来の日本の"伝統"か(この番組の制作城野ゆき.jpg会社は東映)、着ぐるみっぽいロボットでした。このシリーズは、脚本が番組放送に追いつかなくなった「ウルトラマン」と、その後継番組として構想されていた「ウルトラセブン」との間の所謂「つなぎシリーズ」だったので、書割りのような背景からも察せられる通り、番組制作予算は限られていたようです。その後ウルトラ・シリーズでお決まりとなる"紅一点"の女性隊員は、ここでは「アカネ隊員」ですが、「ウルトラマン」で桜井浩子が演じた「フジ・アキコ隊員」、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「アンヌ隊員」と並んで、この「キャプテンウルトラ」で城野ゆきが演じた「アカネ隊員」も、今も第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」.jpgって人気があるようです。いわばフジ・アキコ隊員の後輩格、アンヌ隊員の先輩格になりますが、アカネ隊員は紅一点と言うより"準主役"と言った方がいいかも。アカネ隊員は番組の最初から準主役級でいたわけでなく、レギュラーメンバーだった「キケロ星人ジョー」(演じていたのは無名時代の小林稔侍)が子供たちに不人気で12回までで降板(キケロ星に帰郷したことにされてしまった)、それと入れ替わるようにして(重なっている時期がある)レギュラーメンバーとして準主役となったものです。このアカネ隊員、もともと変装を得意とし、一度だけコスプレっぽい服を着ていたことがありましたが(第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」)、あれは一体なんだったのか(「禁断の惑星」のアン・フランシスを意識したのか)。
 

禁断の惑星 11 アンフランシス.jpg SFパルプマガジン風ファッション

禁断の惑星 21 アン・ニールセン.jpg 万能ロボット・ロビー登場

禁断の惑星 20 アン.jpg なぜウチの中にビオトープがあるのか?

禁断の惑星 04 アン・レスリー.jpg アン・フランシス/レスリー・ニールセン
Forbidden Planet(1956)
Forbidden Planet(1956).jpg
「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98しねまみらの.jpgシネマミラノ.jpg分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシスレスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス/ボブ・ディックス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
名画座ミラノ 1971年11月30日、歌舞伎町「東急ミラノビル」4Fに「名画座ミラノ」オープン、→1987年10月26日~封切館「シネマミラノ」、2006年6月1日~「新宿ミラノ3」(209席) 2014(平成26)年12月31日閉館。
新宿東急ミラノビル4館(シネマミラノ・ミラノ座・新宿東急・シネマスクエアとうきゅう)2005年8月
新宿ミラノ会館4館 20051.08.jpg

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]」 

宇宙家族ロビンソン dvd.jpg宇宙家族ロビンソン l.jpg宇宙家族ロビンソンの一コマ.jpg「宇宙家族ロビンソン」Lost in Space (CBS 1965~68) ○日本での放映チャネル:TBS(1966~68)
(全3シーズン。第1シーズンはモノクロ、第2シーズンからカラー)

宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン DVDコレクターズ・ボックス 通常版」 
  
刑事コロンボ 愛情の計算 vhs.bmp「刑事コロンボ/愛情の計算」●原題:MIND OVER MAYHEM●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●脚本:スティーブン・ボッコ/ディーン・ハーグローブ/ローランド・キビー刑事コロンボ 愛情の計算3.bmp●原案:ロバート・スペクト●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ホセ・ファーラー/ロバート・ウォーカー/ジェシカ・ウォルター/リュー・エヤーズ/リー・H・モンゴメリー/アーサー・バタニデス/ジョン・ザレンバ/ウィリアム・ブライアント/ルー・ワグナー/バート・ホランド●日本公開:1974/08●放送:NHK総合(評価:★★★)特選 刑事コロンボ 完全版「愛情の計算」【日本語吹替版】 [VHS]

恋におちたコロンボ1.jpg「新・刑事コロンボ/恋におちたコ恋におちたコロンボ dvdブック.jpgロンボ」●原題:IT'S ALL IN THE GAME●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ビンセント・マクビーティ●製作:クリストファー・セイター●脚本:ピーター・フォーク●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/フェイ・ダナウェイ/アルマンド・プッチ/クローディア・クリスチャン/ジョン・フィネガン/ビル・メイシー/シェリー・モリソン/ブルース・E・モロー/ジョニー・ガーデラ/ダグ・シーマン/ダニエル・T・トレント/トム・ヘンシェル日本公開:1999/05●放送:NTV(評価:★★★☆)
新刑事コロンボDVDコレクション 17号 (恋におちたコロンボ) [分冊百科] (DVD付)

裸の銃(ガン)を持つ男 dvd.jpg裸の銃(ガン)を持つ男 1.jpg「裸の銃(ガン)を持つ男」●原題:THE NAKED GUN:FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・ザッカー●製作:ロバート・K・ウェイス●脚本:ジェリー・ザッカー/ジム・エイブラハムズ/デヴィッド・ザッカー/パット・プロフト●撮影:ロバート・スティーヴンス●音楽:アイラ・ニューボーン●時間:85分●出演:レスリー・ニールセン/プリシラ・プレスリー/ジョージ・ケネディ/O・J・シンプソン/リカルド・モンタルバン/ナンシー・マルシャン●配給:UIP映画配給●日本公開:1989/04(評価:★★★☆)
裸の銃(ガン)を持つ男 [DVD]

「キャプテンウルトラ」中田.jpgキャプテンウルトラ.jpg「キャプテンウルトラ」●演出:佐藤肇/田口勝彦/加島昭/竹本弘一/山田稔/富田義治ほか●制作:平山亨/植田泰治●脚本:大津皓一/高久進/長田紀生/井口達/伊上勝ほか●音楽:冨田勲●出演:中田博久/城野ゆき小林稔侍/伊沢一郎/安中滋/相馬剛三/都健二/田川恒夫●放映:1967/04~09(全24回)●放送局:TBS 「キャプテンウルトラ Vol.2 [DVD]

(第9話怪生物バンデルエッグあらわる .jpgキャプテンウルトラ」第9話42.jpg「キャプテンウルトラ(第9話)/怪生物バンデルエッグあらわる」●制作年:1967年●監督:加島昭●脚本:鈴木良武/伊東恒久●音楽:冨田勲●時間:92 分●出演:中田博久(第9話)怪生物バンデルエッグあらわる kobayasi.jpg小林稔侍城野ゆき/伊沢一郎/安中滋/佐川二郎/桐島好夫/川田信一/(以下、非レギュラー)八名信夫/三重街恒二/大槻憲/木内博之/比良元高●放送局:TBS●放送日:1967/06/11(評価:★★★)

中田博久(キャプテンウルトラ=本郷武彦)/城野ゆき(アカネ隊員)第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」
キャプテンウルトラ」9.jpg キャプテンウルトラ」第9話61PQCFU.jpg
「キャプテンウルトラ」第1話「バンデル星人襲来す」 
」第1話「バンデル星人襲来す」.jpg

キャプテンウルトラ 第1話 「バンデル星人襲来す」.jpg 城野ゆき(アカネ隊員)1_500.jpg アカネ隊員cp.jpg 城野ゆき(アカネ隊員)
小林稔侍(キケロ星人ジョー)[当時26歳]/「シュピーゲル号」プラモデル
キャプテンウルトラ 小林稔侍.jpg シュピーゲル号.jpg

「●さ行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2513】 斎藤 寅次郎 「エノケンの法界坊
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荒削りだが骨太感がある崔洋一監督のデビュー作「十階のモスキート」。

十階のモスキート パンフ.jpg 十階のモスキート.jpg    月はどっちに出ているL.jpg 月はどっちに出ている.jpg
パンフレット/「十階のモスキート [DVD]」/「月はどっちに出ている [VHS]」「月はどっちに出ている [DVD]

十階のモスキートt.jpg十階のモスキート チラシ.jpg 出世の見込みも無く、妻にも離婚された警察官の男は、原宿のロックンロール族に狂って家を出た娘がたまに金をせびりに男の住まう団地の十階を訪ねた時だけは甘い父親になるが、それ以外では酒とギャンブルとセックスに浸る虚無的で堕落し切った暮らしぶりで、元妻への慰謝料や毎月の養育費、バーのツケやギャンブルの借金に追われ、ついには昇進試験の勉強のためにサラ金から借金して購入したパソコンを団地の窓から放り投げ、そのまま郵便局へ駆け込み強盗を図る―。

「十階のモスキート」チラシ(内田裕也/中村れい子)

十階のモスキート_0.jpg十階のモスキート2.jpg 「十階のモスキート」('83年/ATG)は崔洋一監督のデビュー作で、映画としての作りは粗く、主人公の警察官の短絡行動にはただ呆れるばかりであるはずであるのに、何か観ていて身につまされるようなリアルな痛々しさを感じるのはなぜでしょうか。

十階のモスキート 小泉今日子.jpg 若松孝二監督の「水のないプール」('82年/東映セントラル)などで既に俳優としても注目されていた内田裕也が、経済的に追い詰められることで徐々に精神的にも追い詰められていく主人公を好演していて、最後はちょっとシュールな感じですが、こうした現実感覚を喪失しているようなヤケクソ気味の犯罪は、最近はたまにあったりするのではないでしょうか。(内田裕也小泉今日子(映画デビュー作))

内田裕也/佐藤慶(署長)
十階のモスキート 佐藤慶 - 署長.jpg十階のモスキート ビートたけし.jpg十階のモスキート 横山.jpg デビュー間もない小泉今日子が、内田裕也の娘の女子高校生役で登場するほか(この映画が上映される少し前に流行っていた"竹の子族"の少女役)、漫才師の横山やすし(1944-1996)が競艇場の観客役でカメオ出演し、更にはビートたけしがこれもチョイ役ながら競艇の予想屋の役で出てきますが、ビートたけしは存在感充分でした(この人、役者としては"脇"で出た方がいいような...)。
  
月はどっちに出ている (1993/日).jpg「月はどっちに出ている」.png 後に「月はどっちに出ている」('93年/シネカノン)で国内の映画賞を総なめにする月はどっちに出ている1.jpg崔監督ですが(「月はどっちに出ている」は第67回「キネマ旬報ベスト・テン」の第1位になったほか、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「ブルーリボン賞 作品賞」「報知映画賞 作品賞」「芸術選奨」などを受賞)、在日コリアンのタクシー運転手とフィリピーナの恋を軸に描いたこの作品は、在日外国人の日常をコミカルに描いていて細部の描写も冴えていたように思います(原作は梁月はどっちに出ている モレノ.jpg石日の自伝的小説『タクシー狂騒曲』)。また、岸谷五朗や絵沢萠子をはじめ役者陣も良く、有薗芳記の「ホソ」は特に秀逸、ルビー・モレノも多くの演技賞を受賞しましたが、これは監督の演出力のお陰だったのではないかと。(岸谷五朗ルビー・モレノ

 「月はどっちに出ている」の方が完成度では勝るように思いますが、ただ、こういう映画を撮るのだという骨太感ではこのデビュー作もそう劣っていないように思います(メジャーになると、だんだんそうしたものが失われることが往々にしてあるが)。 

小泉今日子(1966- )
十階のモスキート0.jpg小泉今日子.jpg十階のモスキート1.jpg「十階のモスキート」●制作年:1983年●監督:崔洋一●製作:結城良煕●脚本:内田裕也/崔洋一●撮影:森勝●音楽:大野克夫●時間:108分●出演:内田裕也/アン・ルイス/吉行和子/中村れい子/小泉今日子/ビートたけし/宮下順子/小林稔侍/風祭ゆき/阿藤海/安岡力也/横山やすし/清水宏/下元史朗/ 鶴田忍/梅津栄/佐藤慶/仲野茂/高橋大井ロマン.jpg大井武蔵野館.jpg明/草薙良一/庄司三郎/浅見小四郎/飯田浩幾/伊藤公子●公開:1983/07●配給:ATG●最初に観た場所:大井ロマン(83-11-20)(評価:★★★☆)●併映:「シャッフル」(石井聰互)

大井ロマン(大井武蔵野館) 1999(平成11)年1月31日閉館
 
大井武蔵野館・大井ロマン(1985年8月/佐藤 宗睦 氏)
大井武蔵野館・大井ロマン.jpg

絵沢萠子
「月はどっちに出ている」2.png月はどっちに出ている 絵沢萌子.jpg「月はどっちに出ている」●制作年:1993年●監督:崔洋一●製作:李鳳宇/青木勝彦●脚本:内田裕也/崔洋一●撮影:藤澤順一●音楽:佐久間正英●原作/梁石日「タクシー狂操曲」●時間:108分●出演:岸谷五朗/ルビー・モレノ/絵沢萠子/小木茂光/遠藤憲一/有薗芳記/麿赤児/國村隼/芹沢正和/金田明夫/内藤陳/古尾谷雅人/萩原聖人●公開:1993/11●配給:シネカノン(評価:★★★★)

《読書MEMO》
●「キネマ旬報」が創刊100周年企画「キネマ旬報が選ぶ1990年代の日本映画ベスト1」で「月はどっちに出ている」を選出(「キネマ旬報」2019年10月上旬特別号)
1990年代日本映画ベスト「月はどっちに出ている」.jpg

「●森田 芳光 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●是枝 裕和 監督作品」 【3179】 是枝裕和 「誰も知らない
「●さ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●大林 宣彦 監督作品」の インデックッスへ「●は行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●あ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●「キネマ旬報ベスト・テン」(第1位)」の インデックッスへ(「家族ゲーム」「それから」)「●「毎日映画コンクール 日本映画大賞」受賞作」の インデックッスへ(「Wの悲劇」)) 「●「報知映画賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「家族ゲーム」「それから」) 「●「山路ふみ子映画賞」受賞作」の インデックッスへ(「それから」) 「●「ヨコハマ映画祭 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「家族ゲーム」「転校生」「の・ようなもの」)「●「芸術選奨新人賞(監督)」受賞作」の インデックッスへ(森田芳光「家族ゲーム」)「●久石 譲 音楽作品」の インデックッスへ(「Wの悲劇」) 「●松田 優作 出演作品」の インデックッスへ(「家族ゲーム」「探偵物語」「それから」)「●藤田 進 出演作品」の インデックッスへ(「探偵物語」)「●岸田 今日子 出演作品」の インデックッスへ(「探偵物語」)「●蟹江敬三 出演作品」の インデックッスへ(「探偵物語」)「●岸部 一徳 出演作品」の インデックッスへ(「時をかける少女」)「●笠 智衆 出演作品」の インデックッスへ(「それから」)「●小林 稔侍 出演作品」の インデックッスへ(「天国に一番近い島」「バカヤロー!2 幸せになりたい。」)「●橋爪 功 出演作品」の インデックッスへ(「バカヤロー!2 幸せになりたい。」)「●竹中 直人 出演作品」の インデックッスへ(「バカヤロー!2 幸せになりたい。」)「●柄本 明 出演作品」の インデックッスへ(「バカヤロー!2 幸せになりたい。」)「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●日本のTVドラマ (~80年代)」の インデックッスへ(「探偵物語」)「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(渋谷松竹)インデックッスへ(テアトル吉祥寺/大井武蔵野館)インデックッスへ(東急名画座/旧・新宿武蔵野館)「●つ 筒井 康隆」の インデックッスへ

森田作品は出来にムラあり(?)。80年代前半の松田優作と秋吉久美子がいい。

家族ゲーム(ポスター).jpg 家族ゲーム.jpg   森田 芳光 「それから」.jpg  の・ようなもの.jpg   ウィークエンド・シャッフル.png
「家族ゲーム」チラシ/「家族ゲーム [DVD]」「それから [DVD]」 「の・ようなもの [DVD]」「映画パンフレット 「ウィークエンド・シャッフル」監督 中村幻児 出演 秋吉久美子/泉しげる/風間舞子/池波志乃/秋川リサ/渡辺えり子

家族ゲーム1.jpg「家族ゲーム」2.jpg「家族ゲーム」1.jpg 森田芳光(1950-2011)監督・脚本の「家族ゲーム」('83年/ATG)は、家族が食卓に横一列に並んで食事するシーンなど凝ったカットの多い作品でしたが、個人的には、川沿いの団地へ松田優作(1949‐1989/享年40)が演じる家庭教師が小舟に乗って赴く冒頭シーンと、教え子が無事に志望校に合格した後の家族全員の食事の席で、その家庭教師が食卓をぐちゃぐちゃにしてしまうラストが印象的でした。
Kazoku gêmu (1983)
Kazoku gêmu (1983) .jpg 冒頭シーンはアクション映画のパロディ(?)。ラストはかなり唐突な気もしましたが、おそらく家族が一緒に後かたずけをすることを余儀なくされ、その結果初めて家族が一体となる―という、ある意味、カタストロフィではなくハッピーエンドと見るべきなのかもしれません。全体を通して、松田優作のぼそぼそっと小声で早口で話す演技は、映画の家庭教師の特異なキャラクターとよくマッチしていたように思います(第57回「キネマ旬報ベスト・テン」第1位作。第5回「ヨコハマ映画祭」作品賞受賞作。森田芳光監督は、その演出・脚色に対して「芸術選奨新人賞」を受賞)。

探偵物語 松田優作.jpg 松田優作は、翻訳家でハードボイルド作家でもある小鷹信光(1936-2015)の原案によるNTV系ドラマ「探偵物語」や、作家赤川次郎薬師丸ひろ子のために書き下ろした小説探偵物語 パンフレット.jpg探偵物語.jpgが原作である根岸吉太郎監督の映画「探偵物語」('83年/角川春樹事務所)で見せたような、コミカルな面のある軽めのキャラクターがハマっていたように思い、また彼自身、自然体でそうした役柄を演じているように感じました。

 映画「探偵物語」('83年)予告/音楽:加藤和彦(主題歌:薬師丸ひろ子)
探偵物語 松田優作 薬師丸ひろ子1.pngtantei-thumb-240x131-836.jpg 「探偵物語」はTV版に比べて映画の方のストーリーはイマイチで(TV版「探偵物語」とは全く別物の話。先にも述べたように、テレビは小鷹信光が原案者、映画は赤川次郎原作なので違って当然だが)、恋愛ドラマ的要素が入る分、薬師丸ひろ子の演技力不足が痛く、澤井信一郎監督の 「Wの悲劇」('84年/角川春樹事務所)より前の彼女の演技は素人並Wの悲劇.jpgみではなかったでしょうか。「セーラー服と機関銃」('82年/角川春樹事務所)では相米慎二(1948-2001)監督の魔術的演出に救われていましたが、「探偵物語」では、岸田今日子のような演技達者を起用して脇を固めようとしてはいるものの、そんな演技未熟の薬師丸ひろ子を相手に演技している松田優作の苦闘ぶりが目につきました。玉川大学文学部就学のため一時芸能活動を休止していた薬師丸ひろ子の復帰第一弾を角川事務所が企画した作品であり、あくまでも薬師丸ひろ子が主人公の探偵(ごっこ)物語であって、脇だけ固めても主役があまりに未熟では...。それでも映画はヒットし、ラストの新東京国際空港での松田優作と薬師丸ひろ子の"身長差30センチ"キスシーンは当時話題となったのは、彼女がアイドルとしていかに人気があったかということでしょう。松田優作に関して言えば、TV版の方がハードボイルド・ヒーローでありながらずっこけたような面があるという点で、より"優作らしい"演技だったと言えるかも。

Wの悲劇 薬師丸 三田.jpg 薬師丸ひろ子が舞台女優を目指す劇団員を演じた「Wの悲劇」は、夏樹静子(1938- 2016)の原作は劇中劇として用いられているだけで、ストーリーは別物です("原作者"の夏樹静子氏は、劇場にこの作品を観に行って初めてそのことを知り、唖然としたという)。劇団の演出家蜷川幸雄.jpg役で蜷川幸雄(1935-2016)が出演し、実際に劇中劇の演出も担当しています。三田佳子がベテランらしい渋い演技を見せ(日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞)、薬師丸ひろ子もそれに触発されwの悲劇 高木美保.jpg演技開眼したのか、そう悪くない演技でした(高木美保の映画デビュー作でもあり、主人公を陥れようとする敵役だった)。夏樹静子の原作は、その後、テレビドラマとしてそれそれアレンジされながら繰り返し作られることとなります('83年TBS(秋吉久美子主演)、'86年フジテレビ(高峰三枝子主演)、'01年テレビ東京(名取裕子主演)、'10年TBS(菅野美穂主演)、'12年テレビ朝日(武井咲主演))。

時をかける少女 1983 併映.jpg 因みに、「探偵物語」と「Wの悲劇」の併映作品はそれぞれ「時をかける少女」('83年/角川春樹事務時をかける少女 1983 2.jpg所)、「天国にいちばん近い島」('84年/角川春樹事務所)でした。共に大林宣彦監督、原田知世主演で、「時をかける少女」は、原作は筒井康隆が学習研究社の「中三コース」1965(昭和40)年11月号にて連載開始し、「高一コース」1966(昭和41)年5月号まで全7回掲載したものであり、原田知世の映画デビュー作でした。 筒井康隆「時をかける少女」長尾みのる.jpg配役発表の時点では原田知世は当時圧倒的人気を誇っていた薬師丸ひろ子「時をかける少女」図1.jpgのアテ馬的存在でしたが、「時をかける少女」一作で薬師丸ひろ子と共に角川映画の二枚看板の一つになっていきます。「時をかける少女」は筒井康隆の原作の舞台を尾道に移して、大林監督の「尾道三部作」(他の2作は「転校生」「さびしんぼう」)の第2作目という位置づけになっていますが、後に「SFジュブナイルの最高傑作」とまで言われるようになった原作に対し、原田知世の可憐さだけでもっている感じの映画になってしまった印象がなくもない作品でした。

「時をかける少女」主題歌作詞・作曲:松任谷由実/筒井康隆『時をかける少女』('72年/鶴書房盛光社・SFベストセラーズ)カバー:長尾みのる/挿絵:谷俊彦/解説:福島正実

大林宣彦 転校生8.jpg「転校生」vhs.jpg 「尾道三部作」の中でいちばんの秀作と思われる「転校生」('82年/松竹)に比べるとやや落ちるでしょうか。「転校生」は、原作は山中恒(この人も「高一コース」とかにちょっとエッチな青春小説を連載していた)の『おれがあいおれがあいつであいつがおれで.jpgつであいつがおれで』で、旺文社の「小6時代」に1979年4月号から1980年3月号まで連載されたもの。男の子と女の子が0転校生 1982.jpg神社の階段から転げ落ち、そのはずみで心と身体が入れ替わってしまう話ですが、二人が入れ替わるまでをモノ田中小実昌 .jpgクロで、入れ替わってからはカラーで描き分け、また8ミリ映像も効果的に挿入しながら、古き良き町・尾道を魅力的に活写していました。この作品にはまだ、自主制作映画のようなテイストがあったなあ。第4回「ヨコハマ映画祭」作品賞受賞作(田中小実昌(1925-2000)が「喜劇映画ベスト10」に選んでいたことがある)。
山中 恒『おれがあいつであいつがおれで (旺文社創作児童文学)』['80年/旺文社]

 「転校生」は公開当時はそれほど注目されませんでしたが、「時をかける少女」の方は、角川の「探偵物語」との抱き合わせでの宣伝活動もあってヒットし、角川では'97年に白黒映画でリメイク作品が作られましたが個人的には未見、'06年には細田守監督によるアニメ映画も作られました。細田守監督のアニメ「時をかける少女」は、原作の出来事から約20年後を舞台に、原作の主人公であった芳山和子の姪である紺野真琴が主人公として繰り広げる青春ドラマになっています(原作:筒井康隆となっているが中身は別物と言っていい)。筒井康隆は「新しく付け加えられたシチュエーションというのは、突っ込もうと思えばいくらでも突っ込める」としながらも、「本当の意味での二代目」とコメントしています。また、富野由悠季は「演出が優れており、実写より上手くまとまっている」としながらも、「高校生しか出てこないのでただの風俗映画に見える、キャラクターが活かしき時をかける少女 (2006).jpg時をかける少女 2006 2.jpgれていない」としていますが、(昨年['08年]7月にCXで2度目のテレビ放映されたのを観た)個人的感想は筒井氏の前者と富野氏の後者に近いでしょうか。主人公たちの「告白したい!」という台詞が「SEXしたい!」と自分には聞こえるとまで富野由悠季は言い切りましたが、鋭い指摘だと思います('10年に更にそのアニメの実写版のリメイクが作られている(主演はアニメ版の主人公の声を務めた仲里依紗)。'16年に日本テレビでテレビドラマ化された「時をかける少女」はまたオリジナルに戻っている(主演は黒島結菜)。テレビドラマ化はこれが5回目になる)
時をかける少女 限定版 [DVD]

天国にいちばん近い島 Wの悲劇s.jpg天国に一番近い島 2.jpg 「Wの悲劇」の併映作品だった「天国にいちばん近い島」は、個人的にはイマイチもの足りない映画でしたがこれもヒットし、舞台となったニューカレドニアに初森村桂.jpgめてリゾート・ホテルが建ったとか(バブルの頃で、日本人観光客がわっと押しかけた)。原作者・森村桂(1940-2004)が行った頃はリゾート・ホテルなど無かったようです。舞台は美しいけれど、バブルは崩壊したし、原作者が自殺したということもあって、今となってはちょっと侘しいイメージもつきまとってしまいます(森村桂の自殺の原因はうつ病とされている)。

それから 松田優作/小林薫.jpg 「家族ゲーム」の後、松田優作が森田芳光監督と再び組んだ「それから」('85年/東映)は、評論家の評価は高かったですが(松田優作は、「家族ゲーム」「探偵物語」の前年、鈴木清順監督の「陽炎座」('81年/日本ヘラルド映画)で文芸作品デビューを果たし、既に高い評価を得ていた)、個人的にはミスキャストだったように思え(何だか肩に力入り過ぎ)、松田優作や小林薫のロボットのような独特のエロキューションもちょっと違和感が感じられたし、作品自体も漱石の原作のイメージ(勝手に自分が抱いているイメージだが)とやや食い違ったものになってしまったような気がします。
「それから」松田優作/小林薫

「の・ようなもの」(1981 ヘラルド).jpgの・ようなもの1.jpg 森田芳光監督には、「の・ようなもの」('81年/N.E.W.S.コーポレーション)というある若手の落語家の日常と恋を描いた劇場用映画デビュー作があり、映画のつくりそのものはやや荒削りな面もありましたが、落語家の世界の描写に関しては丹念な取材の跡がみてとれ(森田監督は日大落研出身)、落語家志望の青年に扮する伊藤克信のとぼけた個性もいいし、彼が通うソープ嬢エリザベス役の秋吉久美子も"軽め"のしっとりした演技で好演しています(第3回「ヨコハマ映画祭」作品賞受賞作)。

愛と平成の色男/.jpg愛と平成の色男.png 愛と平成の色男/バカヤロー2.jpg「愛と平成の色男/バカヤロー!2 幸せになりたい。」
財前直見 写真集「とってもいいよ!」.jpg武田久美子 1989 .bmp 結局、森田芳光という監督の演出力はよくわかりません。監督の力量なのか役者のお陰なのか...。「愛と平成の色男」('89年/松竹)などは、ストーリーもどうしょうもないし(石田純一にぴったりとも言えるが)、役者もみんな下手くそなのに、結果として、当時はグラビアアイドルで、役者としては殆ど新人に近かった鈴木保奈美、財前直美、鈴木京香、武田久美子の4人を女優としていっぺんに発掘したことになっているし...映画初出演だった鈴木京香などは、この映画の出演を機にNHKの朝の連ドラに抜擢されています。
とってもいいよ!―財前直見写真集』(1988/11)/『マイディア ステファニー―武田久美子写真集』(1989/09)
鈴木保奈美/鈴木京香
鈴木保奈美.jpg鈴木京香2.jpg 鈴木保奈美はカネボウのCMモデル、財前直美は東亜国内航空の沖縄キャンペーンガール、鈴木京香はカネボウの水着キャンペーンガール出身。少女モデルから歌手になった武田久美子は中学生時代の1981年11月、東大駒場祭「第2回東大生が選ぶアイドルコンテスト'81」に自身で応募し、総数1263人の中で優勝、「東大生が選んだアイドル」として一時人気を博し、後に「逆噴射家族」('84年/Aシャッフル 1983.jpgTG)を撮る石井聰亙監督の34分の短編映画「シャッフル」('81年/ATG)にヒロインとして映画初出演(製作は'81年12月、一般劇場公開は'83年秋)したりしたものの、やがてマイナーに(「シャッフル」は大友克洋の短編漫画「RUN」の映画化で、自分を裏切った女を殺したチンピラと、彼を追う刑事の話で、日本版43才でもなぜ武田久美子でいられるのか.jpg「タクシードライバー」とも言われたが、個人的にはよくわからなくてイマイチ)。それが、昭和が終わったこの年に刊行された"貝殻ビキニ"の写真集が売れに売れて人気復活。この頃は、CMもグラビアも撮影と言えば3泊4日でハワイでというのが当たり前のバブル期でした。時の流れを感じますが、武田久美子だけ今もって肉体派路線を継続中? 「シャッフル [DVD]
43才でもなぜ武田久美子でいられるのか: 美ホルモンをアップして更年期を迎え撃つ』['11年]

 因みに、「愛と平成の色男」と併映の「バカヤロー!2 幸せになりたい。」('89年/松竹)は、森田監督の製作総指揮・脚本による4人の若手監督によるオムニバスで、岩松了監督(第3話)のチェッカーズの藤井郁弥が、山のようなレコードを抱え、CD全盛の世に取り残された男に扮する「新しさについていけない」と、成田裕介バカヤロー2 幸せになりたい 新しさについていけない.jpgバカヤロー2 幸せになりたい 女だけがトシとるなんて.jpg監督(第4話)の山田邦子が再就職に苦戦するハイミスに扮した「女だけがトシとるなんて」が良かったように思います。あとの2話は、本田昌広監督(第1話)の小バカヤロー2 幸せになりたい 小林.jpg林稔侍が家族のためにとったニューカレドニア旅行のチケットを会社から顧客に回すように言われた旅行代店社員を演じた「パパの立場もわかれ」と、堤真一が深夜のバカヤロー!2 堤.jpgコンビニでバイトしてお客の扱いで頭を悩ますうちに妄想ノイローゼになっていく男を演じた鈴木元監督(第二話)の「こわいお客様がイヤだ」(堤真一にとっては初主演映画。他に爆笑問題の太田光・田中裕二が映画初出演、太田光は後に「バカヤロー!4」('91年)の第1話を監督している)でした。

ウィークエンド・シャッフル 秋吉久美子.jpgウィークエンド・シャッフル(1982) ぴあ.gif 秋吉久美子は柳町光男監督の「さらば愛しき大地」('82年/プロダクション群狼)のような重い作品でその演技力を見せつける一方、ピンク映画出身の中村幻児監督の「ウィークエンド・シャッフル」('82年/幻児プロ=らんだむはうす)では、「の・ようなもの」以上に軽いノリで演じています。強盗(泉谷しげる)が主婦らに児童誘拐犯と間違えられ、さらに主婦(秋吉久美子)の偽夫の役回りを演じさせられるというハチャメチャなストーリーの原作は筒井康隆で、秋吉久美子、池波志乃、秋川リサら女ウィークエンド・シャッフル 秋吉久美子 泉谷しげる.jpgウィークエンド・シャッフル スチール.jpg優陣が惜しげもなく脱いでいますが、スラップスティク・コメディ調であるためにベタベタした現実感がなく、さらっと乾いた感じの作品に仕上がっています(ただ、原作のシュールな雰囲気までは出し切れていないか)。秋吉久美子って「70年代」というイメージのある女優ですが、80年代の作品を観ても、演技の幅が広かったなあと、改めて思わされます。
「ウィークエンド・シャッフル」('82年/幻児プロ=らんだむはうす)(秋吉久美子/泉谷しげる) 
「ウィークエンド・シャッフル」9.jpg「ウィークエンド・シャッフル」T.jpg
 

「家族ゲーム」12.jpg「家族ゲーム」●制作年:1983年●監督・脚本:森田芳光●製作:佐々木志郎/岡田裕/佐々木史朗●撮影:前田米造●原作:本間洋平「家族ゲーム」●時間:106分●出演:松田優作伊丹十三/由紀さおり/宮川一朗太/辻田順一/松金よね子/岡本かおり/鶴田忍/戸川純/白川和子/佐々木志郎/伊藤克信/加藤善博/土井浩一郎/植村拓也/前川麻子/渡辺知美/松野真由子/中森いづみ/佐藤真弓/小川隆宏●公開:1983/06●配吉祥寺パーキングプラザ.jpgテアトル吉祥寺.jpg吉祥寺ピカデリー.jpg給:ATG●最初に観た場所:テアトル吉祥寺 (84-02-11)(評価:★★★★☆)●併映:「転校生」(大林宣彦)
テアトル吉祥寺 (1999年〜吉祥寺ピカデリー) 1979年、吉祥寺パーキングプラザ(右写真・現)地下1階にオープン。2000(平成12)年5月22日閉館

探偵物語38.jpg探偵物語 松田優作 dvd.jpg「探偵物語」(TVドラマ)●演出:村川透/西村潔/澤田幸弘/長谷部安春/加藤彰/小澤啓一/小池要之助●制作:伊藤亮爾/紫垣達郎/山口剛●脚本:丸山昇一/那須真知子/佐治乾/柏原寛司/宮田雪●音楽:鈴木清司●原案:小鷹信光●出演:松田優作/成田探偵物語 松田優作2.jpg探偵物語 倍賞美津子.jpg三樹夫/山西道広/竹田かほり/ナンシー・チェニー/平田弘美/橘雪子/重松収/倍賞美津子/佐藤蛾次郎/中島ゆたか/片桐竜次/草薙幸二郎/清水宏/広京子/川村京子/三原玲奈/真辺了子/戸浦六宏/熊谷美由紀(松田美由紀)●放映:1979/09~1980/04(全27回)●放送局:日本テレビ

左から竹田かほり、倍賞美津子、松田優作、ナンシー・チェニー

探偵物語 熊谷美由紀.jpg
第1話「聖女が街にやって来た」 松田優作/熊谷美由紀(松田美由紀)

岸田今日子
探偵物語 .jpg探偵物語 松田優作 薬師丸ひろ子ru1.jpg探偵物語 長谷沼君江/岸田今日子1.jpg 「探偵物語」●制作年:1983年●監督:根岸吉太郎●製作:角川春樹●脚本:鎌田敏夫●撮影:仙元誠三●音楽:加藤和彦(主題歌:薬師丸ひろ子)●原作:赤川次郎●時間:106分●出演:薬師丸ひろ子/松田優作/秋川リサ/岸田今日子/北詰友樹/坂上味和/藤田進/中村晃子/鹿内孝/荒井注/蟹江敬三/財津一郎/三谷昇/林家木久蔵/ストロング金剛/山西道広/清水昭博/草薙良一/清水宏●公開:1983/07●配給:角川春樹事務所●最初に観た場所:東急名画座 (83甦れ!東急名画座3.jpg甦れ!東急名画座1.jpg東急文化会館.jpg東急名画座 1.jpg-07-17)(評価:★★☆)●併映:「時をかける少女」(大林宣彦) 東急名画座 (東急文化会館6F、1956年12月1日オープン、1986年〜渋谷東急2) 2003(平成15)年6月30日閉館

Wの悲劇 [DVD].jpg「Wの悲劇」●制作年:1984年●監督:澤井信一郎●製作:角川春樹●脚本:荒井晴彦/澤井信一郎●撮影:仙元誠三●音楽:久石譲(主題歌:薬師丸ひろ子)●原作:夏樹静子●時間:108分●出演:薬師丸ひろ子/三田佳高木美保 Wの悲劇.jpg子/世良公則/三田村邦彦/仲谷昇/高木美保/蜷川幸雄/清水浩治/内田稔/草薙二郎/南美江/絵沢萠子/藤原釜足/香野百合子/志方亜紀子/幸日野道夫/西田健/堀越大史/渕野俊太/渡瀬ゆき●公開:1984/12●配給:東映/角川春樹事務所●最初に観た場所:新宿武蔵野館 (85-01-15)(評価:★★★★)●併映:「天国にいちばん近い島」(大林宣彦)
新宿武蔵野館(2019(令和元)年5月)
新宿武蔵野館42.JPG新宿 武蔵野館(1936年).jpg旧・新宿武蔵野館 (1920年武蔵野館オープン、1928年に現在の「新宿武蔵野館」の地に新築移転(モノクロ写真:新宿 武蔵野館(1936年))。1968年、武蔵野ビルを改装し7階に「新宿武蔵野館」として再オープン。1994年には同一ビルの3階にミニシアターとして「シネマ・カリテ(中黒あり)1・2・3」がオープン。2002年「新宿武蔵野館」を「新宿武蔵野館1」に改称し、同時に「シネマ・カリテ1・2・3」を「新宿武蔵野館2・3・4」に改称。2003(平成15)年9月30日「新宿武蔵野館1」閉館。それに伴い3階の「新宿武蔵野館2・3・4」を「新宿武蔵野館1・2・3」に改称し4館体制から3館体制となる。(2012年12月22日、武蔵野興業により新宿NOWAビル地下1階に2スクリーンの「シネマカリテ」がオープン)

岸部一徳 in「時をかける少女」
「時をかける少女」岸部2.jpg時をかける少女 原田c47.jpg「時をかける少女」●制作年:1983年●監督:大林宣彦●製作:角川春樹●脚本:剣持亘●撮影:前田米造●音楽:松任谷正隆(主題歌:原田知世(作詞・作曲:松任谷由実))●原作:筒井康隆●時間:104分●出演:原田時をかける少女 dvd.jpg時をかける少女 1983 3.jpg知世/高柳良一/尾美としのり/津田ゆかり/岸部一徳/根岸季衣/内藤誠/入江若葉/高林陽一/きたむらあきこ/上原謙/入江たか子●公開:1983/07●配給:東映●最初に観た場所:東急名画座 (83-07-17)(評価:★★★)●併映:「探偵物語」(根岸吉太郎)
時をかける少女 [DVD]
転校生 [DVD]
転校生 1982 .jpg転校生 1982ド.jpg転校生 1982 01.jpg「転校生」●制作年:1982年●監督:大林宣彦●製作:森岡道夫/大林恭子/多賀祥介●脚本:剣持亘●撮影:阪本善尚●原作:山中恒「おれがあいつであいつがおれで」●時間:112分●出演:尾美としのり/小林聡美/佐藤允/樹木希林/宍戸錠/入江若葉/中川勝彦/井上浩一/岩本宗規/大転校生 1982 02.jpg山大介/斎大林宣彦 転校生ド.jpg藤孝弘/柿崎澄子/山中康仁/林優枝/早乙女朋子/秋田真貴/石橋小百合/伊藤美穂子/加藤春哉/鴨志田和夫/鶴田忍/人見きよし/志穂美悦子●公開:1982/04●配給:松竹●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (83-07-17)●2回目:テアトル吉祥寺 (84-02-11)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「の・ようなもの」(森田芳光)/「ウィークエンド・シャッフル」(中村幻児)●併映(2回目):「家族ゲーム」(森田芳光)
「転校生」志穂美悦子/小林聡美
 
時をかける少女 文庫.jpg時をかける少女2006 1.jpg「時をかける少女(アニメ)」●制作年:2006年●監督:細田守●製作:渡邊隆史/齋藤優一郎●脚本:奥寺佐渡子●音楽:吉田潔●原作:筒井康隆●時間:98分●声の出演:仲里依紗/石田卓也/板倉光隆/原沙知絵/谷村美月/垣内彩未/関戸優希子●公開:2006/07●配給:角川ヘラルド映画(評価:★★☆)
        
天国に一番近い島 lp.jpg天国に一番近い島 dvd.jpg「天国にいちばん近い島」●制作年:1984年●監督:大林宣彦●製作:角川春樹●脚本:剣持亘●撮影:阪本善尚●音楽:朝川朋之(主題歌:原田知世)●原作:森村桂●時間:102分●出演:原田知世/高柳良一/朝川朋之/赤座美代子/泉谷しげる/高橋幸宏/小林稔侍/小河麻衣子/入江若葉/室田日出男/松尾嘉代/乙羽信子●公開:1984/12●配給:東映●最初に観た場所:新宿武蔵野館 (85-01-15)(評価:★★☆)●併映:「Wの悲劇」(澤井信一郎) 「天国にいちばん近い島 デジタル・リマスター版 [DVD]
天国にいちばん近い島 高橋幸宏.jpg 高橋幸宏(YMO)

藤谷美和子 それから.jpgそれから 笠智衆.jpegそれから.jpg「それから」●制作年:1985年●監督:森田芳光●製作:黒沢満/藤峰貞利樹●脚本:筒井ともみ●撮影:前田米造●音楽:梅林茂●原作:夏目漱石●時間:130分●出演:松田優作藤谷美和子/小林薫/笠智衆/中村嘉葎雄/草笛光子/風間杜夫/美保純/イッ「それから」1985年.jpgセー尾形/森尾由美/羽賀研二/それから 笠智衆.jpg川上麻衣子/遠藤京子/泉じゅん/一の宮あつ子/小林勝彦/佐原健二/加藤和夫/水島弘/小林トシエ/佐藤恒治/伊藤洋三郎●公開:1985/07●配給:東映●最初に観た場所:新宿ミラノ座 (85-11-17)(評価:★★☆)
 

の・ようなもの3.gifの・ようなもの2.jpg「の・ようなもの」●制作年:1981年●監督・脚本:森田芳光●製作:鈴木光●撮影:渡部眞●音楽:塩村宰●原作:本間洋平●時間:103分●出演:秋吉久美子/伊藤克信/尾藤イサオ/でんでん/小林まさひろ/大野貴保/麻生えりか/五十嵐知子/風間かおる/直井理奈/入船亭扇橋/内海好江/鷲尾真知子/吉沢由起/小宮久美子/三遊亭大井武蔵野館・大井ロマン.jpg大井武蔵野館 地図.jpg楽太郎/芹沢博文/加藤治子/春風亭柳朝/黒木まや●公開:1981/09●配給:N.E.W.S.コーポレーション=日本へラルド映画●最初に観た場所:大井武蔵野館 (83-03-13)(評価:★★★☆)●併映:「転校生」(大林宣彦)/「ウィークエンド・シャッフル」(中村幻児)
大井武蔵野館・大井ロマン(1985年8月/佐藤 宗睦 氏)
大井武蔵野館(閉館日)(1999年1月/ぼうすの小部屋・おでかけ写真展より)
大井武蔵野館 閉館日2.jpg
大井武蔵野館2.jpg大井武蔵野館.jpg大井武蔵野館 1999(平成11)年1月31日閉館。
                                              
                         
 
                                                                                                   
鈴木保奈美/財前直見/武田久美子/鈴木京香
鈴木保奈美.jpg財前直美.jpg武田久美子.jpg鈴木京香.jpg「愛と平成の色男」●制作年:1989年●監督・脚本:森田芳光●製作:鈴木光●撮影:仙元誠三●音楽:野力奏一●時間:96分●出演:石田純一/鈴木保奈美/財前直見/武田久美子/鈴木京香/久保京子/桂三木助/佐藤恒治●公開:1989/07●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(89-07-15)(評価:★☆)●併映:「バカヤロー!2」(本田昌広/鈴木元/岩松了/成田裕介、製作総指揮・脚本:森田芳光)
渋谷松竹1.jpg渋谷松竹sibuyatoei1.jpg渋谷東映・松竹・全線座shibuya.jpg渋谷松竹 1938年、前身の松竹系「東京映画劇場」オープン。1990(平成2)年9月16日、隣接の「渋谷東映」と共に開館 (1985年道玄坂「ザ・プライム」6Fにオープンしていた渋谷松竹セントラル(2003年~「渋谷ピカデリー」)が後継館となる(2009(平成21)年1月30日「渋谷ピカデリー」閉館))(⑦渋谷東映/⑨渋谷松竹/⑬全線座(1977年閉館))


p映画シャッフル.jpg91syahhuru.jpg「シャッフル」●制作年:1981年大井武蔵野館・大井ロマン2.jpg●監督・脚本:石井聰亙(石井岳龍)●製作:秋田光彦●撮影:笠松則通●音楽:ヒカシュー●原作:大友克洋●時間:34分●出演:中島陽典/森達也/室井滋/武田久美子●公開:1981/12(1983)●配給:ATG●最初に観た場所:大井ロマン(89-07-15)(評価:★★☆)●併映:「レッドゾーン」(神 有介)

第2話「こわいお客様がイヤだ」堤真一/第3話「新しさについていけない」竹中直人
バカヤロー2 幸せになりたい こわいお客様がイヤだ.jpgバカヤロー2 幸せになりたい 竹中.jpg「バカヤロー!2 幸せになりたい。」●制作年:1989年●製「バカヤロー!2 幸せになりたい。」2.jpg作総指揮・脚本:森田芳光●監督:本田昌広(第1話「パパの立場もわかれ」)/鈴木元(第2話「こわいお客様がイヤだ」)/岩松了(第3話「新しさについて「バカヤロー!2 幸せになりたい。」.jpgいけない」)/成田裕介(第4話「女だけがトシとるなんて」)●製作:鈴木光●撮影:栢原直樹/浜田毅●音楽:土方隆行●時間:98分●出演:(第1話)小林稔侍/風吹ジュン/高橋祐子/橋爪功/(第2話堤真一/金子美香/イッセー尾形/太田光/田中裕二/金田明夫/島崎俊郎/銀粉蝶/ベンガル/宮田早苗(第3話)藤井郁弥/荻野目慶子/尾「バカヤロー2」橋本2.jpg美としのり/柄本明/佐藤恒治/竹中直人/広岡由「バカヤロー2」柄本.jpg里子/(第4話)山田邦子/香坂みゆき/辻村真人/水野久美/加藤善博/桜金造●公開:1989/07●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(89-07-15)(評価:★★★)●併映:「愛と平成の色男」(森田芳光)

第1話「パパの立場もわかれ」小林稔侍/橋爪功

第3話「新しさについていけない」柄本明

池波志乃/秋川リサ/渡辺えり子/泉谷しげる
「ウィークエンド・シャッフル」スチール.jpgウィークエンド・シャッフル ビデオカバー.jpg「ウィークエンド・シャッフル」●制作年:1982年●監督:中村幻児●製作:渡辺正憲●脚本:中村幻児/吉本昌弘●撮影:鈴木史郎●音楽:山下洋輔(主題歌:ジューシィ・フルーツ)●原作:筒井康隆「ウィークエンド・シャッフル」●時間:104分●出演:秋吉久美子/伊大井武蔵野館 閉館日.jpg大井武蔵野館.jpg武雅刀/泉谷しげる/池波志乃/渡辺えり子/秋川リサ/新井康弘/村上不二夫/尾口康生/永井英里/野上正義/芦川誠/春風亭小朝/美保純●公開:1982/10●配給:幻児プロ=らんだむはうす●最初に観た場所:大井武蔵野館 (83-03-13)(評価:★★★)●併映:「転校生」(大林宣彦)/「の・ようなもの」(森田芳光) 大井武蔵野館 閉館日(1999(平成11)年1月31日)


さらば愛しき大地3.jpgさらば愛しき大地 poster.jpg「さらば愛しき大地」●制作年:1982年●監督:柳町光男●製作:柳町光男/池田哲也/池田道彦●脚本:柳町光男/中上健次●撮影:田村正毅●音楽:横田年昭●時間:120分●出演:根津甚八/秋吉久美子/矢吹二朗/山口美也子/蟹江敬三/松山政路/奥村公延/草薙幸二郎/小林稔侍/中島葵/白川和子/佐々木すみ江/岡本麗/志方亜紀子/日高シネマスクエアとうきゅうMILANO2L.jpgシネマスクエアとうきゆう.jpgシネマスクウエアとうきゅう 内部.jpg澄子●公開:1982/04●配給:プロダクション群狼●最初に観た場所:シネマスクウェア東急(82-07-10)(評価:★★★★☆)
シネマスクエアとうきゅう 1981年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」3Fにオープン。2014年12月31日閉館。

《読書MEMO》
筒井康隆『時をかける少女』
『時をかける少女 (ジュニアSF)』(1967年3月20日/鶴書房盛光社)(時をかける少女/悪夢の真相/果てしなき多元宇宙)/『時をかける少女 (SFベストセラーズ)』(1972年/鶴書房盛光社)/『時をかける少女』(1976年/角川文庫)
『時をかける少女』図2.jpg 時をかける少女 (SFベストセラーズ).jpg  時をかける少女 (角川文庫).jpg
『時をかける少女 (SFベストセラーズ)』奥付・目次(併録:「悪夢の真相」)
時をかける少女 目次2.jpg.png.jpg

筒井康隆『ウィークエンド・シャッフル』
『「ウィークエンド・シャッフル」』単行本.jpg『「ウィークエンド・シャッフル」』講談社文庫.jpg『「ウィークエンド・シャッフル」』角川.jpgウィークエンド・シャッフル (1974年9月24日)』(装幀:下田一貴)(佇むひと/如菩薩団/「蝶」の硫黄島/ジャップ鳥/旗色不鮮明/弁天さま/モダン・シュニッツラー/その情報は暗号/生きている脳/碧い底/犬の町/さなぎ/ウィークエンド・シャッフル)/『ウィークエンド シャッフル (講談社文庫) 』/『ウィークエンド・シャッフル (角川文庫)』(カバーイラスト:山藤 章二


田中小実昌 .jpg田中小実昌(作家・翻訳家,1925-2000)の推す喜劇映画ベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))
○丹下左膳餘話 百萬兩の壺('35年、山中貞雄)
○赤西蠣太('36年、伊丹万作)
大林宣彦 転校生ロード.jpg○エノケンのちゃっきり金太('37年、山本嘉次郎)
○暢気眼鏡('40年、島耕二)
○カルメン故郷に帰る('51年、木下恵介)
○満員電車('57年、市川昆)
○幕末太陽傳('57年、川島雄三)
転校生('82年、大林宣彦)
○お葬式('84年、伊丹十三)
○怪盗ルビイ('88年、和田誠)


●【文化庁メディア芸術祭アニメ部門シンポジウム】
リメーク映画の金字塔「時をかける少女」が大賞受賞
細田守監督が富野由悠季監督と公開"辛口"トーク
富野由悠季:細田守.jpg富野「僕が細田監督の『時かけ』の嫌な点は、現代の高校生を安易に描いているんじゃないのかと。主人公たちの『告白したい!』という台詞が『SEXしたい!』と僕には聞こえるんです。ただの風俗映画になっているんじゃないかという危うさを感じるんです。アニメという実写映画以上に記号的なものを使って、映画的構造の中で単に風俗映画にしてしまうのはもったいないぞと。作品としてスタイリッシュな分、若者たちが無批判で受け入れてしまう可能性があるわけです。ウラジミール・ナブコフの小説を原作にした『ロリータ』('62)や文化革命を背景にした『小さな中国のお針子』(2002)といった素晴らしい作品があります。映画をつくる人間は、これぐらいの社会的視野を持っていて欲しいんです。その点、奥寺さん脚本の『時かけ』は高校生しか出てこないのが不満なんです。せっかく叔母さんという面白いキャラクターがいるのに、活かしきれてなくもったいない。もっと社会性があってよかったと思います。演出力が優れているだけに残念です」

「●今村 昌平 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2392】 今村 昌平 「復讐するは我にあり
「●黛 敏郎 音楽作品」の インデックッスへ(「人間蒸発」)「●「カンヌ国際映画祭 パルム・ドール」受賞作」の インデックッスへ(「楢山節考」)「●池辺 晋一郎 音楽作品」の インデックッスへ(「楢山節考」)「●緒形 拳 出演作品」の インデックッスへ(「楢山節考」)「●倍賞 美津子 出演作品」の インデックッスへ(「楢山節考」)「●殿山 泰司 出演作品」の インデックッスへ(「楢山節考」)「●小林 稔侍 出演作品」の インデックッスへ(「楢山節考」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(日劇文化劇場/旧・渋谷東映)

「ドキュメンタリーもまたフィクションなり」ということを鮮やかに示した作品「人間蒸発」。

人間蒸発.jpg 人間蒸発2.jpg 今村昌平.jpg
人間蒸発 [DVD]」    早川佳江/今村昌平(1926-2006)

Ningen jôhatsu(1967.jpg 結婚の直前に突然失踪した婚約者を探す早川佳江という女性。露口茂がレポーターとなり、カメラと共に捜索を続ける彼女を追うが、やがて婚約者の二重生活が明らかになる。社会における人と人の繋がりの脆さに自分自身をも見失って呆然とする女性―。

人間蒸発2.jpg 松本清張の『ゼロの焦点』('58年発表)の"ドキメンタリー版"みたいな装いですが、この作品の狙いは"人と人の繋がりの脆さ"を描くと言うよりもむしろ、ドキメンタリーと言われるもの自体の脆さ、ドキメンタリー成立の不可能性を示すことにあったと思います。
Ningen jôhatsu(1967)

『人間蒸発』.jpg人間蒸発1.jpg 途中から佳江さんの実の姉が婚約者と密会していたなどという証言も出てきて、幼い頃から姉を憎んでいた佳江さんはカッとなり、婚約者の捜索をめぐる家族会議に証言者を交えこぞって姉を糾弾し始める―(弩号は飛び交うは、佳江さんは泣き出すは、まさに修羅場の様相)。人間蒸発3.jpgそのようにして家族会議の場で大いに激昂し口角泡飛ばしていた関係者たちですが、監督の「セット飛ばせ」の一言で、何処からともなく現れたスタッフらが"セット"の障子や襖を片付け始める―(観客はここで初めて、家族会議が人間蒸発4.jpg行われていたのは茶の間ではなく映画の撮影スタジオであったことに気づく)。スタッフが大道具、小道具を片付ける間、彼らは一瞬我に返ったかのように見えましたが、カメラが回り始めると、再び口角泡飛ばし猛然人間蒸発 早川佳枝_4.jpgと話し出します。この時彼らは、事件当事者と言うよりも"出演者"になっているということが、面白いほどよく分かる、(ドキュメンタリー)映画史に残る名場面です。

今村監督がネズミと呼んだ早川佳枝さん  

ネズミの後見人兼レポーターを務める露口茂氏/日本海に立つネズミと露口氏 
人間蒸発 露口茂氏_4.png人間蒸発_4.jpg 佳江さんはやがて婚約者を探す気力を失い、彼女の後見人としてこの作品のレポーターを務める俳優の露口茂氏が好きになったことをカメラに向かって告白しますが、その時の彼女はまるで物語の"主役"を演じている(しかも自分で脚本を書いている)"女優"のように見えます。思わぬ告白に戸惑う露口茂の方が、よほど"ドキメンタリー"的。今村監督は「ドキュメンタリーもまたフィクションなのだ」ということを、この"作品"で鮮やかに示しているように思います。

「楢山節考」ポスター/グランプリ受賞を今村監督に報告する坂本スミ子
楢山節考 ps.jpg楢山節考 洋.jpg楢山節考 グランプリ受賞.jpg その今村監督が世界的に注目されるきっかけとなったのが、「楢山節考」('83年/東映)で、深沢七郎の原作は、1958(昭和33)年にも木下恵介監督が映画化しています。'83年のカンヌ国際映画祭では大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」との熾烈な争いを経てグランプリに該当するパルム・ドールを獲得(前評判では「戦メリ」の方が本命視されていた)、今村監督自身は、姥捨伝説の話など外国人に分かるわけがなくどうせ受賞しないのだからと映画祭を欠席していました。前歯を短く削り歯が抜けたように見せる演出をして役作りした主演の坂本スミ子(1936-2021/84歳没)は、カンヌ映画祭へ出品に消極的だった今村昌平を、プロデューサーと一緒に説得して出品させた当事者であり、それがパルム・ドール受賞に繋がったわけですが、帰国直後、受賞報告をしたと思いきや「大麻取締法違反」で書類送検され、彼女自身が芸能界から干される結果を生んでいます。

Narayama Bushiko, 1958.jpg楢山節考3.jpg 寒村の中で因習に捉われながらも力強く生き抜いていく村人たちの姿を描いた作品で、「姥捨て」をはじめ農村の風習の不気味さと恐ろしさが存分に表現されている一方で、「人間蒸発」に衝撃を受けた自分としては、この作品はやや作り過ぎている印象も受けました(ラストで母と子の愛情が強調されている)。今村監督の作品の中ではベストワンに挙げる人も多い作品ですが、個人的には、「神々の深き欲望」('68年/日活)の方がパワーが感じられ、この作品はそこまで行かなかったかな。観る側との相性を選ぶ作品だとも思うのですが、カンヌに行く前は殆ど話題になっていなかったのに、パルム・ドール受賞で当時誰もが絶賛するようになっていたことに対する反発も若干あったかもしれません。
              
人間蒸発_05.jpg人間蒸発ド.jpg「人間蒸発」●制作年:1967年●製作:今村プロ=ATG●監督・企画:今村昌平●音楽:黛敏郎●時間:130分●出演:露口茂/早川佳江/早川サヨ/今村昌平●劇場公開:1967/06●配給:ATG=日活●最初に観た場所:有楽町・日劇文化劇場(80-07-05) ●2回目:池袋文芸地下(83-07-30)(評価★★★★★)●併日劇文化.jpg映(1人間蒸発es.jpg回目):「肉弾」(岡本喜八)●併映(2回目):「神々の深き欲望」(今村昌平)
日劇文化入口.jpg日劇文化劇場 1935年12月30日日劇ビル地下にオープン、1955年8月12日改装/ATG映画専門上映館)。日劇ビルの再開発による解体工事のため、1981(昭和56)年2月22日閉館。/「日本劇場」(左写真:「銀座百点」624号より(1980年当時))[右下「日劇文化劇場」地下入口]/「日劇文化劇場」地下入口(「音楽・映画・生活雑筆」より)
楢山節考 dvd.jpg
Narayama bushikô(1983).jpgNarayama bushikô(1983)
「楢山節考」●制作年:1983年●製作:友田二郎●監督・脚本:今村昌平●撮影:栃沢正夫●音楽:池辺晋一郎 ●時間:131分●出演:緒形拳/坂本スミ子/あき竹城/倉崎青児/左とん平/辰巳柳太郎/深水三章/清川虹子 江藤漢/常田富士男/小林稔侍/三木のり平/ケーシー高峰/倍賞美津子/殿山泰司/樋浦勉/小沢昭一/志村幸江/岡本正己/岩崎聡子/長谷川秀夫/村瀬賢二●劇場公開:1983/04●配給:東映=今村プロ●最初に観た場所:渋谷東映(83-04-29) (評価★★★☆)  「楢山節考 [DVD]

「楢山節考」パンフレット/倍賞美津子(おえい)ほか   左とん平(利助)・小林稔侍(常)
楢山節考 01.jpg 楢山節考  左とん平 小林稔侍.jpg 
倍賞美津子
「楢山節考」倍賞美津子1.jpg 「楢山節考」倍賞美津子2.jpg

渋谷TOEI.jpg渋谷東映.jpg渋谷東映 旧.jpg旧・渋谷東映 1953年11月、宮益坂下交差点前に東映の直営モデル劇場としてオープン(モノクロ写真は「渋谷フォトミュージアム」より(1953年当時))。隣渋谷東映 -2.jpg接の「渋谷松竹」と共に、1990(平成2)年9月16日閉館。跡地に「渋谷東映プラザ」が建設され、1993年2月20日、渋谷東映(7階)と渋谷エルミタージュ(9階)渋谷東映s-touei.jpgがオープン(2004年10月9日~渋谷TOEI1・渋谷TOEI2)。
[左]菅野正写真展 「平成ラストショー hp」より(1999(平成2)年9月13日撮影)

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フォークナーか? 中上健次か? と思いきや、エンタテインメントだった。構築力は凄い。

シンセミア 上.jpg シンセミア下.jpg 阿部和重.png 八月の光.jpg  さらば愛しき大地ポスター.jpg さらば愛しき大地2.jpg
シンセミア(上)(下)』['03年/朝日新聞社] 阿部和重 氏/フォークナー 『八月の光 (新潮文庫)』/中上健次・柳町光男脚本 「さらば愛しき大地」秋吉久美子/根津甚八

 2004(平成16)年・第58回「毎日出版文化賞」(文学・芸術部門)及び第15回「伊藤整文学賞」受賞作。

 山形県・神(じん)町のあるパン屋の戦後史から話は始まり、2000年の夏にこの小さな田舎町で、高校教師の自殺、幽霊スポットでの交通事故死、老人の失踪といった事件が立て続けに起きるとともに、それまで町を牛耳ってきた有力者たちのパワーバランスに変化が起き、一方そうした有力者の息子たちをはじめ町のゴロツキ連中たちは盗聴・盗撮活動に精を出し、町は次なる犯罪の温床を育んでいく―。

 町の有力者とのしがらみを断ち切れないパン屋の主人と、ゴロツキ連中たちとのしがらみを断ち切れないその息子の共々の失墜を、地縁・血縁で繋がった多くの登場人物とともにロバート・アルトマンの群像劇の如く(例えば映画「ナッシュビル」('75年)は24人の"主人公"がいた)描いていますが、出てくる人間がどれもこれもろくでもない奴ばかりで、結局、暗い過去を持つこの町こそが主人公なのではないかと思わせます。

 そうした意味では、作中にもその名があるフォークナーの『八月の光』を思い起こさせますが、フォークナーは架空の町を舞台に小説を書いたのに対し、「神町」は作者の故郷で、作者の実家はパン屋だし、中山正とかいう人もロリコン警察官なのかどうか知らないけれど実在するらしく、よくここまで書けるなあという感じです。むしろ、閉塞した田舎町で麻薬に溺れてダメになっていく登場人物などは、中上健次が初めて映画脚本に参画した「さらば愛しき大地」('82年)を想起させました。

「さらば愛しき大地」ポスター&パンフレット
さらば愛しき大地 poster.jpg 「さらば愛しき大地」は、茨城県の鹿島地方という田舎を舞台に、高度成長期における巨大開発により工業化・都市化が進む中、農家の長男でありながら時代の波に乗れず破滅していく男を描いたもので、農家の長男(根津甚八)が農業を嫌って鹿島開発に関わる砂利トラックの運転手をやっているのですが、事故で2人の息子を亡くしてから人生の歯車が狂いだす―。

さらば愛しき大地ges.jpg 女房(山口美也子)ともうまくゆかなくなり、家を出て馴染みの店の女(秋吉久美子)と同棲をし、いつしか覚醒剤にも手を出すようになってしまい、荒む一方の生活の中、遂に同棲の女を包丁で刺し殺してしまうというもので、覚醒剤に溺れて破滅していく男と、献身的に男に尽くしながら最後にその男に刺されてしまう女を、根津甚八・秋吉久美子が凄絶に演じたものでした(田園シーンのカメラは、小川プロの田村正毅。「ニッポン国古屋敷村」('82年)でもそうだったが、田圃を撮らせたら天下一の職人)。

さらば愛しき大地s.jpgさらば愛しき大地es.jpg「さらば愛しき大地」根津甚八・蟹江敬三/秋吉久美子
 「さらば愛しき大地」においては、そうした鬱々とした男女の営みや事件もまるで風景の一部でもあ「さらば愛しき大地」蟹江・根津.jpgるかのように時間は淡々と流れていきますが、『シンセミア』における様々な出来事に関する記述もまた叙述的であり、文学作品としては大岡昇平『事件』などに近いのかなあとも思いました(中山巡査のロリコンぶりだけがやけに思い入れたっぷりなのはなぜ?)。

 しかし、最後に読者のカタルシス願望を満たすかのようなカタストロフィが用意されていて、ああ、これって「文学」というより「ノワール」で、要するにエンタテインメントだったんだなと納得(「さらば愛しき大地」も「ノワール」であると言えるし、最後はカタストロフィで終わるが、こんなハチャメチャな終わり方ではない。その点では、映画の方が"文学的")。

 ただし、小説全体の構築力は凄いと思いました。凡庸とは言い難いものがあります。 文庫版には人物相関図と年表が付いているそうですが、何かマニアックな気色悪ささえ感じました。

さらば愛しき大地 ド.jpgさらば愛しき大地  0.jpg「さらば愛しき大地」●制作年:1982年●監督:柳町光男●製作:柳町光男/池田哲也/池田道彦●脚本:柳町光男/中上健次●撮影:田村正毅●音楽:横田年昭●時間:120分●出演:根津甚八/秋吉久美子/矢吹二朗/山口美也子/蟹江敬三/松山政路/奥村公延/草薙幸二郎/小林稔侍/中島葵/白川和子/佐々木すみ江/岡本麗/志方亜紀子/日高澄子●公開:1982/04●配給:プロダクション群狼●最初に観た場所:シネマスクウエアとうきゅう(82-07-10)●2回目:自由が丘・自由劇場(85-06-08)(評価:★★★★☆)●併映(2回目):「(ゴッド・スピード・ユー! ブラック・エンペラー」(柳町光男)
「さらば愛しき大地」。6.jpg

シネマスクエアとうきゅうMILANO2L.jpgシネマスクエアとうきゆう.jpgシネマスクウエアとうきゅう 内部.jpgシネマスクエアとうきゅう 1981年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」3Fにオープン。2014年12月31日閉館。

【2006年文庫化[朝日文庫(全4巻)]】

《読書MEMO》
●『観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88
』 (2015/06 鉄人社)
さらば愛しき大地 7892.JPG

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多くの読者を得る"理由"の1つは、社会への問題提起にあるのでは。

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単行本『理由』['98年]『理由 (朝日文庫)』〔'02年〕『理由 (新潮文庫)』〔'04年〕映画「理由」(2004) 岸部一徳
宮部 みゆき 『理由』.JPG 1998(平成10)年下半期・第120回「直木賞」受賞作で、1998 (平成10) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(国内部門)第1位。「日本冒険小説協会大賞」も併せて受賞。  

 東京・荒川区の超高層マンション「ヴァンダール千住北ニューシティー」で起きた殺人事件は、一家3人が殺され1人が飛び降り自殺するという奇怪なものだったが、被害者たちの身元を探っていくとそこには―。

 直木賞受賞作ですが、事件状況とその意外な展開という着想が素晴らしいと思いました。事件の解明を通して住宅ローン地獄や家族の崩壊という現代的テーマが浮き彫りになってきますが、そこにルポルタージュ的手法が効いています。

火車.jpg 『火車』('92年/双葉社)において、戸籍が本人であることを詐称することで簡単に書き換えられることをプロットに盛り込んだ著者は、この作品では「占有権」という一般の目には不可思議な面もある法的権利と、それを利用する「占有屋」という商売に注目していて、こうした着眼とその生かし方にも、著者の巧さを感じます。

カバチタレ!3.jpg (「占有屋」は、後に『カバチタレ!』(青木雄二(監修)・田島隆(原作)・東風孝広(漫画))というコミックでもとりあげられ、テレビドラマ化された中でも紹介された、法の網目を潜った奇妙な商売。)

 作品の冒頭の特異な事件展開にはグンと引き込まれましたが、それに対し、事実がわかってしまえばそれほど驚くべき結末でもなかったのでは...みたいな感じもあります。

 しかし、ミステリーとしての面白さもさることながら、それ以上に、現代社会に対する鋭い問題提起が、この多才な作家の真骨頂の1つであり、幅広い世代にわたり多くの読者を獲得している"理由"は、そのあたりにあるのではないかと思いました(とりわけそれは、社会派推理の色合いが強い『火車』と『理由』の2作品に最も言えることではないか)。

宮部みゆき『理由』新潮文庫.jpg映画「理由」.jpg '04年に大林宣彦監督が映画化していますが、元々はWOWOWのドラマとして145分版がその年のゴールデンウィーク中の4月29日に放映されています。12月劇場公開版は160分となります。

 関係者の証言を積み重ねていくドキュメンタリー的なアプローチは原作と同じで、出演者107人全員を主役と見做し("主要"登場人物に絞っても約40名!)、全員ノーメークで出演と頑張っているのですが、「キネマ旬報」に載った大林宣彦監督のインタビュー記事で、こうした作り方の意図するところを知りました。

 個人的には、原作に忠実である言うより(登場人物のウェイトのかけ方は若干原作と異なる)、原作のスタイルを損なわずにそのまま映像化したら(つまり、この作品における膨大な関係者証言の部分を、一切削らずに、「証言」のままの形で映像化したら)どのようになるかとという推理小説の映像化に際しての1つの実験のようにも思えました。

新潮文庫 映画タイアップカバー版

アクロシティタワーズ.jpg 但し、実際映像化されてみるとやや散漫な印象も受けました。森田芳光監督の「模倣犯」('02年/東宝)みたいな"原作ぶち壊し"まではいかなくとも(あれはひどかった)、もっと違ったアプローチもあってよかったのではないかとも思いました。因みに、この小説の舞台となった荒川区の超高層マンション「ヴァンダール千住北ニューシティー」のモデルは「シティヌーブ北千住30」(足立区)だと思っていたけれど、どうやら南千住の「アクロシティタワーズ」(荒川区)みたいです(「千住北」という地名は存在せず、北千住は足立区になる)。[参照:大腸亭氏「宮部みゆき『理由』の舞台を歩く」/「宮部みゆき作品の舞台を散策する」(「私の宮部みゆき論」)]
   
理由 岸部2.jpg「理由」●制作年:2004年●製作:WOWOW●監督・脚本:大林宣彦●音楽:山下康介/學草太郎●原作:宮部 みゆき●時間:160分(TVドラマ版144分)●出演:岸部一徳/柄本明/古手川祐子/風吹ジュン/久本雅美/立川談志/永六輔/片岡鶴太郎/小林稔侍/高橋かおり/小林聡美/渡多部未華子 映画 理由 篠田いずみ2.jpg辺えり子/菅井きん/石橋蓮司/南田洋子/赤座美代子/麿赤兒/峰岸徹/宝生舞/松田洋治/根岸季衣/伊藤歩/宮崎あおい/裕木奈江/村田雄浩/山田辰夫/大和田伸也/松田美由紀/ベンガル/左時枝/入江若葉/山本晋也/渡辺裕之/嶋田久作/柳沢慎吾/島崎和歌子/中江有里/加瀬亮/勝野洋/多部未華子●劇場公開:2004/12(TVドラマ版放映 2004/04/29)●配給:アスミック・エース (評価★★★☆)
多部未華子(810号室住人 篠田いずみ)
多部未華子/宮崎あおい/裕木奈江
理由 多部未華子1.jpg 理由 宮崎あおい2.jpg 理由 裕木奈江3.jpg

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 【2002年文庫化[朝日文庫]/2004年再文庫化[新潮文庫]】

●大林宣彦監督インタビュー(「キネマ旬報」(2004.1.下)
 「今回の『理由』は、WOWOWの企画で出発してるんですけど、実はその枠にははまらない。というのは、WOWOWの番組としての予算も枠も決まったシリーズの中の一本なんですけど、宮部みゆきさんの原作は、その枠に合わせて作るのが不可能な小説なんですよ。これまでも多くの人が映画化やテレビドラマ化を試みたんだけど、宮部さんは一度も首を縦に振らなかった。その理由は、ひとつの殺人事件にいかに多くの人が絡み合っているかという、ぼく流に言えば人間や家族の絆が失われた時代に、殺人事件がむしろ哀しき絆となったような人間群像の物語なので、ぼくのシナリオの中でも主要な人物だけで107人もいるんですよ。強引にまとめていけば、10人くらいの物語にはできる。普通の映画やテレビの場合では、そうやって作るんです。しかし、それでは宮部さんが試みた集団劇としての現代の人間の絆のありようが描ききれないんですね。つまりこれをやる以上は、107人総てを画面に出さなければいけない。
 宮部さんは、ぼくに監督をお願いしたとWOWOWから知らされた時点で、すべてぼくにお任せしますとおっしゃったんです。任された以上、ぼくは原作者が意図したものを映画にするのが礼節だと思います。ぼくはいつも原作ものを映画にするときは、作者がはじめからこの物語を映画に作ったら、どういうものになるだろうと考えるんですね。だから紙背にこめられた作者の願いを文学的にではなく映画的に表現したらこうなるよというものを作ろうという意味で、決して原作どおりではないんだけど、原作者の狙いや願いを映画にしようと」

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隠れた剣客というだけではなく、自分なりの価値観を持つ男たち。

たそがれ清兵衛 映画タイアップカバー.jpgたそがれ清兵衛2.jpg たそがれ清兵衛 dvd.jpg m020937a.jpg
たそがれ清兵衛』 単行本新装改訂版 ['02年] 「たそがれ清兵衛 [DVD]」 (松竹/監督:山田 洋次/出演:真田広之, 宮沢りえ)
たそがれ清兵衛 (新潮文庫)』(カバー:村上 豊)  Tasogare Seibei (2002)
Tasogare Seibei (2002).JPG

 表題作「たそがれ清兵衛」のほか、「うらなり与右衛門」「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「かが泣き半平」「日和見与次郎」「祝い人助八」の全8編を収録。

 一見すると情けないほど貧相だったり頼りなさげだったりするため普段は侮られているのだけれど、いざという時には毅然とした行動をとる男たちの話。彼らは何れも、しがない宮仕えの下級武士なのですが、実は知られざる(知る人ぞ知る)凄腕の剣客なのである―こうした「スーパーヒーロー」と言うよりむしろ「アンチヒーロー」達による剣豪小説は、サラリーマンの心をくすぐるものがあるのかも知れません。

 表題作「たそがれ清兵衛」のように、意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうといった話が多いのですが、命令には従い、そしてやり遂げる。しかし、そのことを足掛かりに出世しようなどという気は毛頭ない―。 "逆刺客"を倒した直後も番所へ届けず、とっとと家路を急ぐ主人公の姿に、夫婦愛というより、自分なりの価値観を持った人間が描かれていると思いました。

 「うらなり与右衛門」「日和見与次郎」などは義憤による敵討ちの話で、外見や日頃の立ち振る舞いでは窺えない主人公の心意気が伝わってきます。風呂敷包みに隠されていた"うらなり"与右衛門のしたたかさ、黒幕を絶対に許さない"日和見"与次郎の徹底ぶりが、"うらなり"や"日和見"といった外見とは対照的であり、強く印象に残りました。 

たそがれ清兵衛 0.jpg 「たそがれ清兵衛」は2002年に山田洋次監督によって映画化され、同監督初の時代劇でしたが、第76回キネマ旬報ベスト・テンの第1位に選ばれるなど多くの賞を受賞しました(「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「ブルーリボン賞 作品賞」「報知映画賞 作品賞」「山路ふみ子映画賞」「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」など作品賞を総嘗めした)。

宮沢りえ(朋江)/真田広之(清兵衛)

 元が短編であるだけに、他と短編と組み合わせて話を膨らませている部分があり、真田広之演じる清兵衛は、最近妻に死なれ、認知症の母と幼い娘2人を抱えており、残業しないのも無理はないという感じで(しようと思っても出来ない)、 宮沢りえ演じるヒロインの朋江は、夫の家庭内暴力で出戻りとなった親友の妹という設定になっています(何だか現代的)。

田中泯(一刀流の使い手・余吾善右衛門)/真田広之
たそがれ清兵衛 殺陣.jpg 清兵衛と朋江の相互の切ない想いの描き方は感動的でしたが、原作はもっと軽い感じだったという印象。但し、意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうというのは原作通りで、真田広之と田中泯の殺陣シーンはなかなかリアリティがありました。こうした、テレビ時代劇などにある従来のお決まりの殺陣シーンとは違った演出ばかりでなく、時代考証も細部に行き届いているようで、山田洋次監督の初時代劇作品への意気込みが感じられ、真田広之、宮沢りえの演技も悪くなかったです(それぞれ日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞・女優賞を受賞)。
   
丹波哲郎(清兵衛の本家の叔父・井口藤左衛門)/岸恵子(清兵衛の娘・井口以登(壮齢期))
たそがれ清兵衛 丹波哲郎2.pngたそがれ清兵衛 岸恵子2.jpg でも、恋愛を描いたことで、完全に原作とは別物の作品になった印象もありました。話の枠組みを岸恵子(壮齢となった清兵衛の娘)の語りにする必要もなかったし(岸恵子は「男はつらいよ 私の寅さん」('73年/松竹)以来の山田洋次監督作品への出演)、その語りによるエピローグで清兵衛を戊辰戦争で死なせる必要も無かった―更に言えば、どうせここまで改変するならば、2人を結婚させず悲恋物語にしても良かったように思います。
     
たそがれ清兵衛 01.jpg「たそがれ清兵衛」●制作年:2002年●製作:大谷信義/萩原敏雄/岡素之/宮川たそがれ清兵衛 丹波哲郎.jpg智雄/菅徹夫/石川富康●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平「たそがれ清兵衛」「竹光始末」「祝い人助八」●時間:129分●出演:真田広之/宮沢りえ/田中泯/小林稔侍/大杉漣/吹越満/深浦加奈子/神戸浩/伊藤未希/橋口恵莉奈/草村礼子/嵐圭たそがれ清兵衛   .jpg史/岸惠子/中村梅雀/赤塚真人/佐藤正宏/桜井センリ/北山雅康/尾美としのり/中村信二郎/丹波哲郎たそがれ清兵衛   .jpg/佐藤正宏/水野貴以●劇場公開:2002/11●配給:松竹(評価★★★☆)
[右写真]小林稔侍/宮沢りえ/山田洋次監督/真田広之/丹波哲郎

 【1988年単行本・2002年新装版[新潮社]/1991年文庫化・2006年改版[新潮文庫]】

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