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ジョン・ヒューストン監督の夢を追いかける男を描いた映画の系譜上にある作品。

王になろうとした男 pannhuretto .jpg になろうとした男 dvd.jpg 王になろうとした男0s.jpg 王になろうとした男3s.jpg
映画パンフレット 「王になろうとした男」 監督 ジョン・ヒューストン/「王になろうとした男 [DVD]」マイケル・ケイン/クリストファー・プラマー/ショーン・コネリー

王になろうとした男7s.jpg 英領インド帝国ラホールの北極星新聞の記者キップリング(クリストファー・プラマー)の事務所に、乞食のような男が現れ、「君の前で契約を交わした」と言われて、キップリングは彼が3年前に出会ったカーネハン(マイケル・ケイン)だと気づく。キップリングは、契約を交わしたもう一人の男王になろうとした男5s.jpgドレイボット(ショーン・コネリー)の行方を訊くが、カーネハンは彼は死んだと言い、彼らの「王になる」という夢の顛末を語る。3年前にカーネハンは、偶然にドレイボット、カーネハンと知り合うが、二人は「王になる」という夢を抱いていて、キップリングを証人に「王になるまでは女と酒を断つ」という契約を交わしたのだ。銃を入手した二人はアフガニスタン辺境カフィリスタンに向けて出発、何とかカフィリスタンに到達した二人は、女性を襲う仮面の部族に出くわし銃で追い払う。襲われていた部族の城に英語を話す男ビリー(サイード・ジャフリー)がいて、二人はビリーを仲間に引き込み、首長を丸め込み英国式軍事訓練を施し、カフィリス王になろうとした男ages.jpgタン支配を企む。仮面の部族に戦争を仕掛け降伏に追い込むが、その際、ドレイボットの胸に矢が命中するも、ベルトに当たり王になろうとした男as.jpg命拾いする。それを見た部族たちは、ドレイボットが、伝説で語られる大昔カフィリスタンを征服した神シカンダー(アレクサンダー大王)の息子だと信じる。カーネハンは伝説を利用してドレイボットを「神の息子」に仕立て上げ、戦わずに周辺部族を従属させるが、聖都シカンダルグルの大司祭に出頭を命じられる。大司祭は「本当の神か確かめる」としてドレイボットを剣で刺そうとするが、彼がフリーメイソンの紋章を所持しているのを見てシカンダーの息子として認める。祭壇に刻まれた古来の紋章は、フリーメイソンのと同じ意匠だった。「シカンダー2世」としてカ王になろうとした男 2s.jpgフィリスタン王に即位したドレイボットは人々から崇められ、シカンダーが残した莫大な財宝を手に入れる。悲願達成を喜ぶカーネハンは、「財宝を手にインドに戻ろう」と提案するが、王座の魅力に憑りつかれたドレイボットは、留まって美女ロクサネ(シャキーラ・ケイン)を王妃に迎えることを決める。「神と人間の結婚」に高僧は反発し、カーネハンも正体の露見を恐れて反対するが、ドレイボットは聞き入れず強引に結婚を宣言する。カーネハンはドレイボットに別れを告げて出発しようとするが、懇願されて結婚式だけは参列する。式の際に、「神に愛された女は灰になる」という言い伝えを信じたロクサネは、恐怖のあまりドレイボットの頬を噛む。不死身のはずのドレイボットから血が流れる姿を見た大司祭らは、彼が神を騙る偽物だと気づき、二人は怒り狂う群衆から逃れようとするが―。

ラドヤード・キップリング.jpg 1975年公開のアメリカ・イギリス映画で、『ジャングル・ブック』などで知られるノーベル文学賞受賞作家のラドヤード・キップリング(1865-1936)の同名小説の映画化作品。キップリングは英国人で初めての(1907年)、且つ史上最年少(41歳)でのノーベル文学賞受賞作家です。ジョン・ヒューストン監督はキップリングの愛読者で、「王になろうとした男」は王になろうとした男2s.jpg20年来の念願の企画だったそうです。当初はハンフリー・ボガートとクラーク・ゲイブルが主演候補でしたが、ゲイブルの死で頓挫し、後にポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの主演で企画が再スタートしまたが、ポール・ニューマンが英国人を主演に据えるべきだと主張し、マイケル・ケインとショーン・コネリーになったとか。ポール・ニューマンの主張は正しかったように思います。

王になろうとした男es.jpg 途中まで結構コミカルなシーンがあるために、ラストのトレイボットが英国の歌を歌いながら吊り橋を渡っていくシーンは一気に悲壮感が増します。結局、「王」になるつもりが「神」にまでなってしまって、それがトレイボットに災いしました。ジョン・ヒューストン自身は、「この映画にも欠点はないとはいえない。でもそんなことを誰が気にするだろうか。これは遮二無二前に突き進む映画である。前方の瀑布に向かってひたすら泳いでいくそういう映画なのである」と述べています。結末こそ悲壮感が漂いますが、夢を追いかける生き方をした男を肯定的に捉えたと言うか、むしろ讃えた映画なのでしょう。

黄金 002.jpgマルタの鷹 b.jpg そう言えば、同監督の「マルタの鷹」('41年)でも、ハンフリー・ボガート演じるサム・スペードは、"マルタの鷹"の争奪に明け暮れる男達を警察に引き渡しながらも、"鷹"を手に取った刑事の「重いな、これは何だ」という問いに「夢のかたまりさ」と答えているし、「黄金」('48年)はまさに、一獲千金を夢見てシエラ・マドレ山中に金鉱を求める男達の話でした。その意味では、「マルタの鷹」「黄金」の流れを汲むものがあると思います。

王になろうとした男0as.jpg 原作であるラドヤード・キップリングの短編小説「王になろうとした男」(1888)(「王になろうとした男」(『諸国物語』('08年/ポプラ社)所収)/「王を気取る男」(『キプリング・インド傑作選』('08年/鳳書房)所収))は、冒険家ジェームズ・ブルックとジョシア・ハーランの二人の経験を元にしていて、ジェームズ・ブルックは、ボルネオ島にあるサラワクで白人王に成った英国人であり、ジョシア・ハーランは、ゴール王子の称号を、彼自身のみ成らず、彼の子孫インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説es.jpgにまで与えられた米国人冒険家でした。こうした秘境に冒険し、お宝や理想郷を求める話は、同じく英国作家のジェームズ・ヒルトンの『失われた地平線』(1933)などに受け継がれ(『失われた地平線』は1937年にフランク・キャプラ監督で映画化されている)、更には、フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)や、スティーヴン・スピルバーグ監督の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」('81年/米)をはじめとするインディ・ジョーンズ・シリーズなどにも影響を与えているように思います。「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年)

 「王になろうとした男」の舞台カフィリスタンはアフガニスタンとパキスタンの国境付近で、その谷に住むカラーシャ族は独自の宗教を信仰するため「異教(カフィール)徒の地=カフィリスタン」と呼ばれ、人々は白い肌、青い瞳の特徴を持ち、古代マケドニアの将軍アレキサンダー大王の軍隊の末裔という伝説があるそうです。但し、撮影の大半はモロッコで行われたとのことです。カフィリスタンの首長や司祭を演じた俳優はこの作品しか出演記録がないので、モロッコでの現地調達だったのではないでしょうか。

王になろうとした男mages.jpg王になろうとした男ges.jpg ドレイボットが結婚式を挙げる相手のロクサネ役は、ロアルド・ダールとパトリシア・ニールの娘テッサ・ダール(1957年生まれ)が予定されていましたが、ジョン・ヒューストンがよりアラブ的な女性を求め、「私たちはどこかでアラブの姫を探さなければいけない」という話をマイケル・ケインとした食事した時に話した際に、同席したマイケル・ケインの妻シャキーラ・ケイン(1947年生まれ)が南米ガイアナ出身でエキゾチックな容貌だったため、ヒューストンが彼女を説得してロクサネ役に起用したそうです。減量や歯の矯正までして撮影に備えたというテッサ・ダールには気の毒ですが、演技力より容貌の方が重要だったということでしょう。モデル出身のシャキーラ・ケインも"Carry on Again Doctor" (1969)などにノンクレジットのチョイ役で出ている他はこの作品ぐらいしか出演記録が無いテンポラリー(特別出演)で(アイーシャと呼ばれていた頃、英APフィルムズの「謎の円盤UFO」(1970)というSFテレビドラマにアイーシャ・ジョンソン少尉役で出ていて、これがマイケル・ケインの目にとまり二人の結婚に至った)、こちらは"現地調達"ならぬ"自前調達"といったところでしょうか。

SHAKIRA CAINE in CARRY ON AGAIN DOCTOR (1969)/THE MAN WHO WOULD BE KING (1975)
SID JAMES <font color=deeppink><strong>SHAKIRA CAINE</strong></font> & JIM DALE CARRY ON AGAIN DOCTOR (1969) .jpg Shakira Caine .jpg
アイーシャ(in「謎の円盤UFO」)=シャキーラ・ケイン/マイケル・ケイン in「鷲は舞いおりた」('76年/英)
アイーシャ・ジョンソン少尉.jpg シャキーラ ケインSH.jpg 鷲は舞いおりた ケイン サザーランド 2 .jpg

「dr。パルナサスの鏡」.jpgクリストファー・プラマー in 「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)/「王になろうとした男」(1975)/「Dr.パルナサスの鏡」(2009)/「手紙は憶えている」(2015)
クリストファー・プラマー サウンド・オブ・ミュージック.jpg クリストファー・プラマー 王になろうとした男.jpg 手紙は憶えている .jpg

The Man Who Would Be King (1975).jpg王になろうとした男5.jpg「王になろうとした男」●原題:THE MAN WHO WOULD BE KING●制作年:1975年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジョン・フォアマン●脚本:ジョン・ヒューストン/グラディス・ヒル●撮影:オズワルド・モリス●音楽:モーリス・ジャール●原作:ラドヤード・キップリング「王になろうとした男」●時間:129分●出演:ショーン・コネリー/マイケル・ケイン/クリストファー・プラマー/サイード・ジャフリー/ドラミ・ラルビ/ジャック・メイ/カルーム・ベン・ボウリ/モハマド・シャムシ/アルバート・モーゼス/ポール・アントリム/グラハム・エイカー/シャキーラ・ケイン●日本公開:1976/06●配給:コロムビア・ピクチャーズ(評価:★★★☆)
The Man Who Would Be King (1975)

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曲者俳優に事欠かない作品。その中でサム・スペード像をよく体現していたH・ボガート。

マルタの鷹dvdド.jpg マルタの鷹dvd500.jpg マルタの鷹dvd ド.jpg マルタの鷹 DVD.jpg マルタの鷹dvd  .jpg
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マルタの鷹03.jpgマルタの鷹Bogart.jpg サンフランシスコの私立探偵サム・スペード(ハンフリー・ボガート)は、家出した妹を連れ戻したいという女性(メアリー・アスター)の依頼を受け、相棒のマイルズ・アーチャー(ジェローム・コーワン)に、フロイド・サースビーという男を尾行させる。しかし、その夜サースビーとアーチャーは死体となって発見される。スペードはアーチャーの妻(グラディス・ジョージ)と密通しており、警察は彼に嫌疑を向ける。スペードはジョエル・カマルタの鷹AstorMaltFalc1941Trailer.jpgマルタの鷹GeorgeMaltFalc1941Trailer.jpgイロ(ピーター・ローレ)という男の訪問を受け、彼はスペードが何かを握っていると考えており、それを探ろうとしている様子だった。女依頼人に再会したスペードは、彼女が最初に名乗ったのは偽名で、本名はブリジッド・オショーネシーであること、カイロとも関係していることを知る。2人を引き合わせたスペードは、彼らの会話からその関心がある鳥の彫像にあること、「G」なる人物もまたそれを求めてマルタの鷹LorreMaltFalc1941Trailer.jpgマルタの鷹GreenstreetMaltFalc1941Trailer.jpgいるらしいことを知る。やがて「G」ことガットマン(シドニー・グリーンストリート)もスペードに接触してくる。スペードはハッタリを仕掛け、彼らの捜し求めるマルタ騎士団にゆかりを持つ「マルタの鷹」の存在を聞き出す。ガットマンは、ロシアの将軍が「鷹」を所持していることを知り、カイロ、サースビー、オショーネシーの3人を代理人として派遣したが、「鷹」の価値に勘付いた3人はそれを秘匿してしまったのだという。やがて、オショーネシーの意を受けて、貨物船「ラ・パロマ」号の船長がスペードの事務所を訪れるが、彼は「鷹」をスペードに託して息絶える。「鷹」を手に入れたスペードはそれを切り札にガットマンらと交渉し、すべての経緯を炙り出す―。

マルタの鷹 b.jpgマルタの鷹〔改訳決定版〕.jpg 1941年のジョン・ヒューストンの脚本・監督作で、監督デビュー作でもある作品。ダシール・ハメットの同名探偵小説の3度目の映画化作品ですが、この作品が圧倒的に有名です(2007年の American Film Institute による「ベスト映画100」では第31位にランクインしている。因みに、先に取り上げた「黄金」('48年)は第38位)。日本公開は本国公開の10年後の1951年ですが、ハメットの原作の本邦初訳は更に後で1954年のハヤカワ・ポケット・ミステリなので、翻訳者(砧一郎)も先に映画の方を観たのではないでしょうか。まあ、読者側からすれば、原作を先に読もうと映画を先に観ようと、映画のイメージが強烈なので、原作に対するイメージに影響を与えることは必至のような気がします。

マルタの鷹S (2).jpg ハンフリー・ボガートが40代で初めてタイトルでトップになった作品ですが、カイロを演じたピーター・ローレとガットマンを演じたマルタの鷹s.jpgシドニー・グリーンストリートの曲者ぶりが強烈で、ガットマンの手下の用心棒役で性格俳優のエリシャ・クック・Jrなども出ていたりして、ハンフリー・ボガートのアクの強さが中和され、むしろ爽やかに見えるくらいです。とりわけ、ぬめっとした異様さを漂わすピーター・ローレは、風貌も演技も何とも言えず薄気味悪いですが、この人、「カサブランカ」('42年)にも、出国ビザを売買するブローカー役で出ていました(ヒッチコックの「暗殺者の家」('34年)にも出ていた)。

マルタの鷹the-maltese-falcon.jpg ストーリーは概ね原作に忠実ですが、ラ・パロマ号の中で何があったのかが全く説明されておらず、交渉上「マルタの鷹」を所持しているとハッタリをかましたスペードのところへ「鷹」が偶然転がり込んできて、ややご都合主義に見えてしまうキライがなくもありません。原作では、ラ・パロマ号の中での出来事は登場人物の一人によって語られる形になっており、これを映像化すると"映像のウソ"になるし、"語り"でやると、せっかくそこまでテンポよく話が展開していたのに間延びしてしまうことになり、敢えて説明をすっ飛ばしたのではないかと、個人的には推察します。

マルタの鷹09.jpg 実は登場人物の"語り"でストーリーを展開させている部分が既に結構あり(フィルム・ノアールに特有の作劇法で、この作品がその原型になったとも言われている)、とりわけハンフリー・ボガートがよく喋っているので(しかも早口で)、これ以上やるとセリフばかりになってしまうという危惧もあったのかも。まあ、その他にもサスペンスの要素はあるし、ハードボイルド作品の場合、謎解きも大事ですがテンポや雰囲気も大事なので、ラ・パロマ号での出来事の説明を省いてしまったのは、これはこれで妥当な選択だったのかもしれません。

マルタの鷹mages.jpg サム・スペードがいなければ、レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウも、ロス・マクドナルドのリュウ・アーチャーも存在しなかったと言われています。原作者ハメットはサム・スペードについて「スペードにはモデルはいない。彼は私が一緒に働いていた私立探偵の多くがこうでありたいと願い、時にうぬぼれて少しは近づけたと思い込んだという意味で、夢に描いた男なのである」「彼はいかなる状況も身をもってくぐり抜け、犯罪者であろうと無実の傍観者であろうと、はたまた依頼人であろうと、関わりを持った相手に打ち勝つことの出来る強靭な策士であろうと望んでいる男なのである」と述べていますが、ハンフリー・ボガートはそうしたサム・スペード像をよく体現していたように思います。

マルタの鷹08.jpgマルタの鷹  0.jpg「マルタの鷹」●原題:THE MALTESE FALCON●制作年:1941年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・ヒューストン●撮影:アーサー・エディソン●音楽:アドルフ・ドイチュ●原作:ダシール・ハメット●時間:101分●出演:ハンフリー・ボガート/メアリー・アスター/グラディス・ジョージ/ピーター・ローレ/バートン・マクレーン/リー・パトリック/シドニー・グリーンストリート/ウォード・ボンド/ジェローム・コーワン/エリシャ・クック・Jr/ジェームズ・バーク/マレイ・アルパー/ジョン・ハミルトン/ウォルター・ヒューストン(ノン・クレジット)●日本公開:1951/01●配給:セントラル●最初に観た場所:新宿・シアターアプル(85-10-13)(評価:★★★★)

ピーター・ローレ in「マルタの鷹」('41年)
ピーター・ローレ.jpg
ピーター・ローレ in「暗殺者の家」('34年)/「カサブランカ」('42年)/ヒッチコック劇場「南部から来た男」(1960) (日本放送時のタイトル「指」)with Steve McQueen
暗殺者の家 ピーター・ローレ.jpg ウーガーテ(ピーター・ローレ)_.jpg ダール 南から来た男es.jpg
黒猫の怨霊」('62年)エドガー・アラン・ポー原作
Tales of Terror 1962 1.jpg

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人間劇として優れている。J&W・ヒューストンが親子でアカデミー賞(監督賞・助演男優賞)を獲った作品。

黄金 poster.jpg黄金 THE TREASURE OF THE SIERRA MADRE.jpg黄金 1948_.jpg
黄金 スペシャル・エディション [DVD]

黄金 01.jpg 1920年代のメキシコ。革命の混乱は収まっていたが、地方では山賊がはびこり人々を脅かし続けていた。新政府により、地方の統制と山賊の排除は通称フェデラルズという有能だが非情な連邦警察に任されていた。外国人にとって、山賊に出くわすことは死を意味するほど危険なことで、山賊もフェデラルズに捕まれば、自分の墓穴を掘り、銃殺されるのだった。そんな中、ダブズ(ハンフリー・ボガート)、ハワード(ウォルター・ヒューストン)、カーティン(ティム・ホルト)の3人の白人のアメリカ人がメキシコの港町タンピコで出会い、一獲千金を夢黄金 02.jpg見てシエラ・マドレ山中に金鉱を求め旅立つ。男たちは途中、ゴールド・ハット(アルフォンソ・ベドヤ)率いる山賊の列車襲撃に遭いながらも切り抜ける。列車旅を終え砂漠に出ると、これまで老人然としていたハワードが、屈強で知識豊富な山師であることを見せつける。ハワードの活躍で金鉱が見つかり砂金が掘り出されてゆくが、黄金の魅力にとりつかれたダブズは、金を独り占めしたい衝動に駆黄金 03.jpgられるようになってゆく。コーディ(ブルース・ベネット)という一人旅の男が現れ仲間に入れてくれと申し出る中、ゴールド・ハットたちがフェデラルズのふり黄金es.jpgをして接近してくるが、山賊の正体を男たちは見抜き、銃撃戦となる。コーディが銃弾に倒れ、形勢が不利になったところで本物のフェデラルズが現れ山賊を蹴散らす。やがて、砂金の取れ高が減り、十分な金を手にした男たちは、山を下りることに。ロバを引く道すがら、インディオの少年を助けたハワード黄金 07.jpgは村人に請われて礼を受けるため、残りの2人と一時別れる。彼を裏切り金を山分けにしようと言うダブズと、コーディも入れた4人で分けるべきだとするカーティンは対決し、勝ったダブズは瀕死のカーティを置いて町へと向かうが、寸前でゴールド・ハットに遭遇し、あえなく命を落とす。一方、カーティスは一命を取りとめハワードと合流し、2人は町に着くが、既にダブズは死に、ゴールド・ハット一党も処刑されたと知る。ようやく砂金が捨てられた場所へと辿り着くも、折からの季節風が金を空中へと吹き飛ばしてしまう。全てが無に帰したことを知った2人は笑うしかなかった。ハワードは彼を必要とするインディオの村へ、カーティンはコーディの残した家族に会うためテキサスへ、それぞれの道へと馬を向ける―。

黄金in.jpg黄金 04.jpg 1948年公開のジョン・ヒューストン監の作品。ハンフリー・ボガートは「マルタの鷹」('41年)に続く、2度目のヒューストン監督作品への出演でした(その後、同年公開の「キー・ラーゴ」('48年)でもコンビを組んだ)。この作品は同年のアカデミー賞で監督賞と脚色賞、助演男優賞双葉十三郎.jpgに輝いたほか、ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞なども受賞。2007年の American Film Institute による「ベスト映画100」では第38位にランクイン村上春樹 09.jpgしています。日本でも、双葉十三郎(1910-2009)が「ぼくの採点表」で☆☆☆☆★(85点)というジョン・ヒューストン監督作の中でも、またハンフリー・ボガート主演作の中でも最も高い評価をしています。因みに、作家の村上春樹氏は川本三郎氏との共著『映画をめぐる冒険』('85年/講談社)の中で、「僕は学生時代にこの『黄金』のシナリオを何度も何度も読みかえして作劇術の勉強をしたことがある」と述べています・

黄金 11.jpg 初めて観た時は、「マルタの鷹」でハンフリー・ボガートが演じたサム・スペードの冷静なタフガイのイメージがあったので、彼が演じる主人公ダブズが、次第に冷静さを失って仲間へ不信を抱き、金を独り占めようとして、最期は(映画の"最後"まで行かないうちに)山賊たちにあっけなく殺されてしまったのには驚きました(30代の脇役だった頃のハンフリー・ボガートは、例えば「汚れた顔の天使」('39年)でジェームズ・キャグニー演じるギャングにあっさり殺されたりしていたが)。ウォルター・ヒューストンが演じたベテラン山師ハワード(その演技によりアカデミー賞の"助演"男優賞を獲得した)の方がむしろ主役である映画だったような気もします。ティム・ホルト演じるカーティンの視点で、ダブズとハワードの生き方を対比させた作品とも言え、人間劇として優れていると思います。ハワードの方も、人間性に溢れた面と、ややそれを超越したようなエキセントリックな面(聖人?)を併せ持っており、一筋縄ではいかないキャラでした。

黄金 alfonso-bedoya.jpg ダブズはあっさり殺されてしまいますが、タブズを殺した山賊たちも警察に捕まり即座に処刑されることになります。処刑される前にゴールド・ハットは、落ちた自分の帽子を拾って被ってもよいかと銃殺隊に願い出て、それが許されるとひょいと帽子を拾い、そして銃殺されます。この記念撮影でもするかのようなトボケた一見ユーモラスな振る舞いに、他人の命を奪うことを何とも思っていないどころか、自分に命さえあまり重いものと思っていないような刹那的なものが感じられます。

黄金97.jpg 最初の方で、ダブズに何度か小銭を施すアメリカ人紳士役で、ジョン・ヒューストン監督自身が出演しています。ハワード役のウォルター・ヒューストンは彼の実父であり、この作品はアカデミー賞の監督賞も受賞しているので、1つの作品で親子でアカデミー賞を獲った最初の作品になります。

Ougon (1948).jpgジョン・ヒューストン  Ougon (1948)

「黄金」●原題:THE TREASURE OF THE SIERRA MADRE●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・ヒューストン●製作:ヘンリー・ブランク●撮影:テッド・マッコード●音楽:マックス・スタイナー/レオ・F・フォ親子で受賞.jpgーブステイン●原作:B・トレヴン●時間:126分●出演:ハンフリー・ボガート/ウォルター・ヒューストン/ティム・ホルト/ブルース・ベネット/バートン・マクレーン/アルフォンソ・ベドヤ●日本公開:1949/05●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★★☆)

父・ウォルター・ヒューストン/アカデミー「助演男優賞」受賞
息子・ジョン・ヒューストン/「監督賞」「脚色賞」受賞
 

 
《読書MEMO》
スタンリー・キューブリックが選ぶベスト映画10(from 10 Great Filmmakers' Top 10 Favorite Movies)
1 『青春群像』(1953年/監督:フェデリコ・フェリーニ)
2 『野いちご』(1957年/監督:イングマール・ベルイマン)
3 『市民ケーン』(1941年/監督・主演:オーソン・ウェルズ)
『黄金』(1948年/監督:ジョン・ヒューストン /主演:ハンフリー・ボガート)
5 『街の灯』(1931年/監督・主演:チャールズ・チャップリン)
6 『ヘンリー五世』(1945年/監督・主演:ローレンス・オリヴィエ)
7 『夜』(1961年/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ)
8 『バンク・ディック』(1940年/監督:エドワード・クライン)
9 『ロキシー・ハート』(1942年/監督:ウィリアム・ウェルマン)
10『地獄の天使』(1931年/監督:ハワード・ヒューズ)

「●た ロアルド・ダール」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2568】 ロアルド・ダール 『キス・キス
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個人的ベスト3は、①「南から来た男」、②「おとなしい凶器」、③「プールでひと泳ぎ」。

あなたに似た人Ⅰ .jpg あなたに似た人Ⅱ .jpg あなたに似た人hpm(57).jpg あなたに似た人hm(76)文庫.jpgあなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫.jpg
あなたに似た人〔新訳版〕 I 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕』『あなたに似た人〔新訳版〕 II 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕』『あなたに似た人 (1957年) (Hayakawa Pocket Mystery 371)』『あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))』(カバーイラスト・和田誠)
南から来た男 指.jpg「ヒッチコック劇場(第136話)/指」('60年)スティーブ・マックイーン/ニール・アダムス/ピーター・ローレ
「新・ヒッチコック劇場(第15話)/小指切断ゲーム」('85年)スティーヴン・バウアー/メラニー・グリフィス/ジョン・ヒューストン/ティッピ・ヘドレン
New York: Alfred A. Knopf(1953)
Alfred A. Knopf 1st edition.jpgRoald Dahl2.jpg 『あなたに似た人(Someone Like You)』はロアルド・ダール(Roald Dahl、1916-1990/享年74)の1953年刊行の第二短編集で、1954年の「アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)」受賞作です(短編賞)。因みに第一短編集は1946年刊行の『飛行士たちの話』('81年/ハヤカワ・ミステリ文庫)、第三短編集は1960年刊行の『キス・キス』('74年/早川書房)になります(『キス・キス』所収の「女主人」で再度「エドガー賞」(短編賞)を獲っている)。また、この作家は、1964年に発表され映画化もされた『チョコレート工場の秘密』('05年/評論社)など児童小説でも知られています。

ハヤカワミステリ文庫創刊 あなたに似た人.png 『あなたに似た人』は、田村隆一訳で1957年にハヤカワ・ポケットミステリで刊行され、その後1976年にハヤカワ・ミステリ文庫で刊行(創刊ラインアップの一冊)されましたが、その際には、「味」「おとなしい兇器」「南から来た男」「兵隊」「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」「海の中へ」「韋駄天のフォックスリイ」「皮膚」「毒」「お願い」「首」「音響捕獲機」「告別」「偉大なる自動文章製造機」「クロウドの犬」の15編を所収していました。そして、この田口俊樹氏による〔新訳版〕は、「Ⅰ」に「味」「おとなしい凶器」「南から来た男」「兵士」「わが愛しき妻、可愛あなたに似た人Ⅰ.jpgあなたに似た人Ⅱ.jpgい人よ」「プールでひと泳ぎ」「ギャロッピング・フォックスリー」「皮膚」「毒」「願い」「首」の11篇、「Ⅱ」に「サウンドマシン」「満たされた人生に最後の別れを」「偉大なる自動文章製造機」「クロードの犬」の4編と、更に〈特別収録〉として「ああ生命の妙なる神秘よ」「廃墟にて」の2篇を収めています。

  
「Ⅰ」所収分
「味」 "Taste"
 私はある晩餐会に妻を連れて参加していた。客の1人は有名な美食家リチャード・プラットで、招いた側のマイク・スコウフィールドは、銘柄を見せずにワインを出し、いつどこで作られたワインか当てられるか、プラットに尋ねる。君にも絶対わからないと自信満々のマイクに対し、プラットは絶対に当てると余裕の表情。そこで、2人は賭けをすることにし、賭けの対象となったのはマイクの娘。プラットが勝てば娘を嫁にもらい、逆にマイクが勝てば、プラットから家と別荘をもらうという約束が取り交わされる。プラットは、ワインの入ったグラスをゆっくりと持ち上げて―。面白かったですが、わりかしオーソドックスにあるパターンではないかなあ。

Tales of the Unexpected  1979.jpgTales of the Unexpected.jpg この作品は、BBCで1979年から1988年に放映された、ロアルド・ダール自身がシリーズ番組で毎回案内役を務める「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(Tales of the Unexpected)」の中では、全9シリーズ・112話の内の、第2シリーズ第16話(全シーズン通し番号。以下、同じ。)「ワインの味」(1980)(日本での放映時またはソフト化時の邦題。以下、同じ。)としてドラマ化されています。「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」は日本では1980年、東京12チャンネル(現テレビ東京)で土曜夜10時30分の時間帯に28作品が初放送されていますが、「ワインの味」はそのラインアップには無く、後にCS放送(ミステリチャンネル)で放映されたりTales of the Unexpected - Taste(1979).jpgDVD化されたりしています(このように当時放映されず後にDVD化されたエピソードや、今も本邦未ソフト化のエピソードもあるため、ロアルド・ダール劇場の「話数」は原則通り本国のものを採用。ドラマ版は原作をどう表現しているかを観る楽しみもあり、この原作のドラマ化作品「ワインの味」に関して言えば、まずまず楽しめました(緊迫感のあとのスッキリした気分は、ドラマの方が効果大だったかも)。
Tales of the Unexpected -Roald Dahl、Season 2 #16."Taste"(1980)(「ワインの味」)

「おとなしい凶器」"Lamb to the Slaughter"
松本清張11.jpg 料理の支度をしながら愛する夫の帰りを待っている妻メアリ。しかし、帰ってきた夫からもたらされたのは別れの言葉だった。彼女は絶望して、とっさに夫を殺害するが、凶器の仔羊の冷凍腿肉を解凍して調理し、それを刑事たちにふるまう。刑事たちは何も知らずに殺人の凶器となった証拠を食べてしまう―。松本清張の短編集『黒い画集』('60年/カッパ・ノベルズ)の中に「凶器」という作品があって、殺人の容疑者は同じく女性で、結局、警察は犯人を挙げることは出来ず、女性からぜんざいをふるまわれて帰ってしまうのですが、実は凶器はカチンカチンの「なまこ餅」で、それを刑事たちが女性からぜんざいをふるまわれて食べてしまったという話があり、松本清張自身が「ダールの短篇などに感心し、あの味を日本的なものにヒッチコック劇場傑作選「兇器 vhs.jpgAlfred Hitchcock Presents - Lamb to the Slaughter.jpgAlfred Hitchcock Presents Lamb to the Slaughter 兇器.jpg移せないかと考えた」(渡辺剣次編『13の凶器―推理ベスト・コレクション』('76年/講談社))と創作の動機を明かしています。この作品は次に述べる「南から来た男」と同じく、CBSで1955年から1962年に放映された「ヒッチコック劇場(Alfred Hitchcock Presents)」で第84話「兇器」(1958)ヒッチコック劇場の「話数」は邦順を採用として映像化されています。映像化してどれくらいリアリティがあるかと思われるプロットですが、そこはさすがにヒッチコックでした。作品の核であるユーモアは、リアティによって支えられているのだなあと。ラストの主人公の笑みは、2年後に撮られる「サイコ」('60年)を想起させます。
Alfred Hitchcock Presents - Season 3 Episode 28 #106."Lamb to the Slaughter"(1958)(「兇器」)

Lamb to the Slaughter 1979 2.jpglamb to the slaughter 1979.jpg 因みに、「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中では、第1シリーズ第4話でドラマ化(「おとなしい凶器」(1979))されていますが(主演は「わらの犬」('71年)のスーザン・ジョージ)、最初に実際に外部の者の犯行であったような映像を見せていて、観る者に対するある種"叙述トリック"的な造作になっています。好みはあると思いますが、個人的には、実際に無かったことを映像化するのはどうかなと思いました。
Tales of the Unexpected: Lamb to the Slaughter(1979)(「おとなしい凶器」)Susan George

「南から来た男」 "Man from the South"
ダール 南から来た男 ド.jpgダール 南から来た男.jpg プールそばのデッキチェアでのんびりしている私は、パナマ帽をかぶった小柄な老人が、やって来たのに気づく。アメリカ人の青年が、老人の葉巻に火をつけてやる。いつでも必ずライターに火がつくと知って、老人は賭けを申し出、あなたが、そのライターで続けて十回、一度もミスしないで火がつけzippo.gifられるかどうか、自分はできない方に賭けると。十回連続でライターに火がついたら、青年はキャデラックがもらえ、その代り、一度でも失敗したら、小指を切り落とすと言う。青年は迷うが―。この作品は、金原瑞人氏の訳で『南から来た男 ホラー短編集2』('12年/岩波少年文庫)にも所収されています。
 
●ヒッチコック劇場(第136話)「指」(1960)スティーブ・マックイーン/ピーター・ローレ(老人)/ニール・アダムス Alfred Hitchcock Presents - Season 5 Episode 15 #168."The Man from the South"(1959)
南から来た男.JPGダール 南から来た男es.jpg この「南から来た男」は「ヒッチコック劇場」で1960年にスティーブ・マックイーンニール・アダムス(当時のマックイーンの妻)によって演じられ((第136話「指」)、監督はノーマン・ロイド(ヒッチコックの「逃走迷路」('42年)で自由の女神から落っこちる犯人を演じた俳優でもあり、「ヒッチコック劇場」で19エピソード、「ヒッチコック・サスペンス」で3エピソードを監督している)、"南から来た男"を演じたのはジョン・ヒューストン監督の「マルタの鷹」('41年)でカイロという奇妙な男を演じたピーター・ローレでした。更に1985年に「新・ヒッチコック劇場」スティーヴン・バウアーメラニー・グリフィス主演でリメイクされ(第15話「小指切断ゲーム」)新・ヒッチコック劇場の話数は邦順を採用。「小指切断ゲーム」は本国ではパイロット版として放映された)、メラニー・グリフィスの母親ティッピ・ヘドレンも特別出演しています。"南から来た男"を演じたのは「マルタの鷹」の監督ジョン・ヒューストン、最後に出てくる"女"を演じたのは「めまい」('58年)のム・ノヴァクでした。共に舞台はカジノに改変されていますが、出来としてはマックイーン版がかなり良いと思いました。スティーブ・マックイーンはテレビシリーズ「拳銃無宿」('58-'61年)で人気が出始めた頃で、この年「荒野の七人」('60年)でブレイクしますが、この作品はアクションは無く、マックイーンは怪優ピーター・ローレを相手に純粋に演技で勝負しています。但し、マックイーンが演じるとどこかアクション映画っぽい緊迫感が「小指切断ゲーム」(1985)0.jpg「小指切断ゲーム」(1985).jpg出るのが興味深く、緊迫感においてスティーヴン・バウアー版を上回っているように思います(IMDbのスコアもマックイーン版は8.7とかなりのハイスコア)。
●新・ヒッチコック劇場(第15話)「小指切断ゲーム」(1985)メラニー・グリフィス/キム・ノヴァク/スティーヴン・バウアー/ジョン・ヒューストン(老人)/ティッピ・ヘドレン
●ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第1話)「南から来た男」ホセ・フェラー(老人)/マイケル・オントキーンTales of the Unexpected - Season 1 #1."The Man from the South"(1979)
The Man from the South 1979.jpgTales of the Unexpected - The Man from the South.jpg 「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中では第1シリーズ第1話として1975年に、ホセ・フェラー(老人)、マイケル・オントキーン(青年)主演でドラマ化(邦題も「南から来た男」)されています。舞台は原作通りリゾートになっていて、老人はちゃんとパナマ帽を被っています。派手さは無いけれど原作にほぼ忠実です(IMDbのスコアは7.3)。映画化作品では、オムニバス映画「フォー・ルームス」('95年/米)の第4話「ペントハウス ハリウッドから来た男」(クエンティン・タランティーノ監督、ティム・ロス主演、ブルース・ウィリス共演)があります(内容はかなり翻案されている)。

吉行 淳之介.jpg 吉行淳之介はこの短編の初訳者である田村隆一との対談で、あのラストで不気味なのは「老人」ではなく「妻」の方であり、夫の狂気に付き合う妻の狂気がより強く出ていると指摘しています。そう考えると、結構"深い"作品と言えるかと思います。


「兵士」 "The Soldier"
 戦争で精神を病んでしまい、何もかもが無感覚になってしまった男。足を怪我しても気がつかず、物に触っても触っている感触が無い。女と暮らしているが、その女が誰なのかも分からなくなってしまう―。ホラー・ミステリですが、ミステリとしての部分は、女が妻であることはかなり明確であり、ホラーの方の色合いが濃いかもしれません。

「わが愛しき妻、可愛い人よ」 "My Lady Love, My Dove"(旧訳「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」)
Tales of the Unexpected - My Lady Love, My Dove.jpg 私と妻はブリッジをやるためにスネープ夫妻が来るのを待っている。私も妻も夫妻のことはあまり好きではないが、ブリッジのために我慢する。妻はふと、いったい、スネープ夫妻が2人きりの時はどんな様子をしているのか、マイクを取り付けて聞いてみようと言う。そいて、それを実行に移し、聞こえてきた2人の会話は、ブリッジにおけるインチキの打ち合わせだった。それを聞いた妻は―。夫婦そろって悪事に身を染める場合、妻主導で、夫は妻の尻に敷かれていたという状況もあり得るのだなあ(「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中では、第2シリーズ第17話でドラマ化(1980)されているが、日本でDVD化はされていない)。
Tales of the Unexpected - My Lady Love, My Dove (1980)

「プールでひと泳ぎ」 "Dip in the Pool"(旧訳「海の中へ」)
 船旅中のミスター・ウィリアム・ボディボルは、ある時間帯までに船がどのくらいの距離を進むか賭ける懸賞Dip In The Pool 01.jpg(オークション・プール)に参加する。嵐が来ているので、ミスター・ボディボルは有り金全部を短い距離につぎ込むが、朝起きると嵐は収まり、船は快走していて、彼は大いに嘆く。しかし、ある作戦を思いつき、それは、船から人が落ちれば船は救助のため遅れるはずだというもので、自分が落ちた現場を目撃するのに最適な人を探し始める―。ブラックでコミカルと言うか、悲喜劇といった感じ。他人を突き落とすことを考えないで、自分で飛びこんだ分、悪い人ではないのでしょうが。この作品も「ヒッチコック劇場」で第103話「賭」(1958)として映像化されていて、「兇器」と同じく、ヒッチコックDip In The Pool 02o.jpg自身が監督しています。クルDip in the Pool.jpgーズ船は借り切ったのかなあ。主役の俳優は、この体形で海に飛び込んで大丈夫かな思ったけれど、見事な飛込みぶりでした。スタントだとは思いますが、「落ちる」のではなく「飛び込み」をしていました。老婦人が見ていない隙に落ちるのだから、これでもいいのかも(でも、アスリートぽかった)。
Alfred Hitchcock Presents - Season 3 Episode 35 #113."A Dip in the Pool"(1958)(「賭」)

ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事/海の中へ01.jpg この作品は「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中では、第1シリーズ第8話「海の中へ」(1979)としてドラマ化されていて、やはり主人公は太っていますが、こちらは「落ちて」いました。こちらも立派なクルーズ船を使っていましたが、ヒッチコック版の方がモノクロフィルムの強みと言うか、重厚感がロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事/海の中へ03.pngあったように思います。この映像化作品単独で観ても面白いのですが、それは原作の面白さに依るものであり、ヒッチコック版と比べると、同じ短編でありながら、ヒッチコック自身が演出したことで醸されている重厚感には及ばないでしょうか。繰り返しになりますが、コメディ映画は、リアルかつシリアスに作り込めが作り込むほど、ユーモアが映えるように思います(因みに原題が "Dip in the Sea"でなく"Dip in the Pool"となっているのは、"Dip in the Sea"だと「海水浴」になってしまうのと、"Dip"とすることで「賭場(Pool)に浸る」という意味に懸けたのではないか)。
Tales of the Unexpected - Dip in the Pool(1979)(「海の中へ」)
   
「ギャロッピング・フォックスリー」 "Galloping Foxley"(旧訳「韋駄天のフォックスリイ」)
 ある日私は、電車に乗ろうとした時、ホームに知った顔を見つける。"ギャロッピング・フォックスリー"と呼ばれ少年の頃に私を苛めていた相手ブルース・でフォックスリーだった。私は彼が自分にした仕打ちを一つ一つ思い出していき、彼にどんな復讐をしてやろうかと考える―。子どもの頃に苛められた記憶って大人になっても消えないのだろうなあ。苛められたことが無い人でも、主人公の気持ちは分かるのでは。それにしても、名乗り合ったら、相手の方がより名門校(イートン校)の出身で、しかも9つも年下だったというのが可笑しいです。こGalloping Foxley.jpgれもドラマシリーズ「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出01見知らぬ乗客.jpg来事」の中で第2シリーズ第12話「見知らぬ乗客」(1980)として映像化されています。主演のジョン・ミルズ(「ライアンの娘」('70年/英・米)のオスカー俳優でサーの称号が与えられている)はさすがの演技達者ぶりで、若き日のフォックスリーを演じたジョナサン・スコット=テイラー(前年に「オーメン2」('79年/米)でダミアン少年を演じている)のいじめっ子ぶりも強烈でした。
Tales of the Unexpected - Galloping Foxley (1980)(「見知らぬ乗客」)

「皮膚」"Skin"
 ドリオリという老人は、ある画廊でシャイム・スーチンの絵が飾られているのを見つける。それは自分がかつて可愛がっていた少年の描いた絵だった。画廊にいる人々かTales of the Unexpected' - Skin(1980)1.jpgら追い払われそうになったドリオリは、自分はこの絵描きの描いたものを持っていると叫ぶ―。タイトルから何となくどういうことか分かりましたが、さすがにラストはブラックで、ちょっと気持ち悪かったです。とは言え、同時に、主人公の哀れさも滲みます。これも「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中で第2シリーズ第11話「永遠の名作」(1980)として映像化されています。カンヌには画商が老人を住まわせると言っていたホテルは存在しないというところまではよく分からなかったですが、ラストの額縁に入った一枚の絵を見せられれば、それだけで充分でした。
Tales of the Unexpected - Skin(1980)(「永遠の名作」)

「毒」"Poison"
 真夜中のベンガル。私がバンガローに戻って来ると、ベッドで寝ていたハリーの様子が変で、「音をたてないでくれ」と言い、汗びっしょり。本を読んでいたら毒蛇がやってきて、今も腹の上に乗っていると言うので、私は医者のガンデルバイを呼び、どう刺激しないように毒蛇を毒 alfred hitchcock presents poison.jpg動かすか、万が一噛まれた時の処置はどうするか等々、様々な作戦を立てるが―。ハリーのインド人医師に対する人種差別意識と重なり、風刺っぽい皮肉が効いています。この作品もまた「ヒッチコック劇Alfred Hitchcock Presents - S 4 E 1 poison.jpg場」で第124話「毒蛇」として映像化されていますが、原作をいくつか変えています。大きなものとしては、ハリーと"ティンバー"(原作の「私」)の一人の女性をめぐる微妙な関係と、結末のドラマ独自のどんでん返しがあります。普通、原作をいじるとダメになることが多いですが(特に結末)、ヒッチコック自身が演出しているこの作品は原作とはまた違った"味"がありました。
Alfred Hitchcock Presents - Season 4 Episode 1 #118."Poison"(1958)(「毒蛇」)

Tales of the unexpected Poison 2.jpgTales of the unexpected Poison.jpg また、「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中では第2シリーズ第14話「或る夜の事件」(1980)としてドラマ化されていて、こちらもハリーの妻と"ティンバー"の不倫などを織り込んで話を膨らませていますが、その部分をここまで"見える化"してしまったのはどうだったかなと思いました(同じく改変はしているが、ヒッチコック版の方がいいか)。
Tales of the Unexpected - Poison(1980)(「或る夜の事件」)

「願い」"The Wish"
 絨毯の上にいる少年は想像を膨らませる。絨毯の赤い所は石炭が燃えている固まりで、黒い所は毒蛇の固まり、黄色の所だけは歩いても大丈夫な所。焼かれもしないで、毒蛇に噛まれもしないで向こうへ渡れたら、明日の誕生日にはきっと仔犬がもらえるはず。少年はおそるおそる黄色の所だけを歩き始めて―。子供の他愛の無い空想遊びの話ですが、最後の一行で、本当に空想に過ぎなかったのか不安が残ります。

「首」 "Neck"
故ウィリアム・タートン卿所蔵の芸術品に興味のある私は、バシル・タートン卿の招待を受けて屋敷へ行く。執事の口ぶりから察するに、レディ・タートンとジャック・ハドック少佐はただならぬ関係らしい。庭園には様々な芸術品があるが、中でもヘンリイ・ムーアの木製の彫刻が素晴らしい。彫刻には穴がいつかあり、レディ・タートンがふく第6話「首」 .jpgざけて穴に頭を突っ込んで抜けなくなってしまう。バジル卿は、鋸と斧を持ってくるよう執事に命じるが、彼が手にしたのは斧だった―。芸術至上06 首 ジョン・ギールグッド.jpg主義の本分からして、実際、斧で妻の首を切落としかねない感じでしたが...。浮気妻への"心理的"復讐と言ったところだったでしょうか。「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中では、第1シリーズ第6話でドラマ化(「首」(1979))されています。実際に広大な庭にムーアっぽい彫刻を幾つも据えていました。ラストは、斧を振り下ろすところでストップモーションになっています。
Tales of the Unexpected - Neck (1979)(「首」)John Gielgud Joan Collins


「Ⅱ」所収分 
「サウンドマシン」 "The Sound Machine"(旧訳「音響捕獲機」)
 クロースナーは人間の耳では聞くことの出来ない音をとらえる機械を作った。早速、イヤホンをしてダイヤルを回すと、ミセス・ソーンダースの庭から、茎が切られる時のばらの叫び声が聞こえてきて―。昔、サボテンが、傍でオキアミを第41話 サウンドマシン  The Sound Machine 1.jpg茹でたりすると電磁波を発信するという話がありましたが、最近は園芸店やホームセンターで、「電磁波を吸収する効果があるサボテン」というのが売られています。「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」の中では、第4シリーズ第41話でドラマ化(「音響捕獲機」(1981))されていますが、 ハリー・アンドリュースが演じるクロースナーは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」('85年/米)でクリストファー・ロイドが演じた"ドグ"っぽい感じのマッドサイエンティストぶり(でも、こっちの方が4年早い)。ただ、映像化したからと言って何か新たな発見があるような内容でもなかったです。
Tales of the Unexpected - The Sound Machine (1979)(「音響捕獲機」)Harry Andrews

「満たされた人生に最後の別れを」 "Nunc Dimittis"
 私はある婦人からジョン・ロイデンという画家の話を聞く。ロイデンは素晴らしい肖像画を描くのだが、まず裸の絵を描いて、その上に下着を描いて、さらにその上に服を重ねて描くという手法を使っているらしい。その婦人から、恋人のジャネット・デ・ペラージアが自分のことを影では嘲笑っていると聞き、ある復讐を思いつく。ロイデンにジャネットの肖像画を描かせた私は、脱脂綿に液体をつけて、少しずつドレスの絵の具をこすっていく―。旧訳のタイトルは「告別」で、原題の意はシメオンの賛歌から「今こそ主よ、僕を去らせたまわん」。陰険な独身男の主人公はキャビア大好き男でもあり、復讐相手から和解の印にキャビアを贈られて...。

「偉大なる自動文章製造機」 "The Great Automatic Grammatizator"
大型自動計算器を開発しているアドルフ・ナイプは、自分の好きな物語を作ることのできる機械を発明する。ちょっとしたアイディアだけで、素敵な文章の面白い小説を作ることができるのだ。ナイプはミスター・ボーレンと組んで小説を次々と作り、既存作家の代作まで始めることに。リストアップされた作家の7割が契約書にサインし、今も多くの作家たちがナイプと手を組もうとしている―。2016年に、AI(人工知能)が書いた小説が文学賞で選考通過というニュースがあり(「星新一文学賞」だったと思う)、まったくのSFと言うより、今や近未来小説に近い感じになっているかも。

「クロードの犬」 "Claud's Dog " 
 「ねずみ捕りの男」 "The Ratcatcher"
 私とクロードのいる給油所に保健所の依頼を受けたねずみ捕りの男がやって来る。彼は、ボンネットの上に年老いたドブネズミをくくりつけ、私たちに手を使わずにねずみを殺せるということについて賭けを持ちかける―。このねずみ捕りの男、何者じゃーって感じです。
 「ラミンズ」 "Rummins"
 ラミンズと息子のバードが草山を束に切っていると、ナイフの刃がなにか硬いものをこするようなガリガリいう音を立てる。ラミンズは「さあ、続けろ!そのまま切るのだ、バート!」と言う。それを見ていた私は、みんなで乾草の束を作っていた時のことを思い出す。これって、純粋に事故なのでしょうか。
 「ミスター・ホディ」 "Mr. Hoddy"
 クラリスと結婚することを決めたクロードは、クラリスの父親のミスター・ホディに会いに行きく。どうやって生計を立てて行くか聞かれたクロードは、自信満々に、蛆虫製造工場を始める計画を語る―。こりゃ、破談になるわ。
 「ミスター・フィージィ」 "Mr. Feasey"
私とクロードは、ドッグレースで儲ける作戦を思いつく。クロードは走るのが速いジャッキーという犬を飼っているが、そのジャッキーとそっくりの走るのが全然早くない犬をも飼っていた。そこで、参加するドッグレースに初めはその偽ジャッキーを出しておいて、レベルの低い犬として認定されるようにし、本番の大勝負では、本物のジャッキーを参加させれば大穴になり、大儲けができるという作戦だった。この作戦はうまく行ったかに見えたが―。やっぱりズルはいけないね、という感じしょうか。

 (追加収録)
「ああ生命の妙なる神秘よ」北を向いてすれは雌が生まれる? 人間にも応用できるのかあ(笑)。

「廃墟にて」食料も無くなった未来の廃墟で、自分の脚を切って食べる男。それを見つめていた少女にも分けてやるが―。何となく、どこかで読んだことがあるような気がします。

 因みに、最後の2篇は、邦訳短編集としては初収録ですが、「ああ生命の妙なる神秘よ」は「ミステリマガジン」1991年4月号、「廃墟にて」は同誌1967年3月号に掲載されたことがあるとのことです。

 個人的ベスト3は、①「南から来た男」、②「おとなしい凶器」、③「プールでひと泳ぎ」でしょうか。とりわけ「南から来た男」は、吉行淳之介の読み解きを知った影響もありますが◎(二重丸)です。「ギャロッピング・フォックスリー」「首」もまずまずでした。

「人喰いアメーバの恐怖」 [VHS]/「マックイーンの絶対の危機 デジタル・リマスター版 [DVD]
マックィーンの絶対の危機_9.jpg人喰いアメーバの恐怖 .jpgマックィーンの絶対の危機(ピンチ)dvd.jpg 因みに、スティーブ・マックイーンの初主演映画は、「ヒッチコック劇場」の「指」に出演した2年前のアービン・S・イヤワース・ジュニア監督の「マックイーンの絶対の危機(ピンチ)」('58年)で、日本公開は'65年1月。日本での'72年のテレビ初放送時のタイトルは「SF人喰いアメーバの恐怖」で、'86年のビデオ発売時のタイトルも「スティーブ・マックィーンの人喰いアメーバの恐怖」だったので、「人喰いアメーバの恐怖」のタイトルの方が馴染みがある人が多いのではないでしょうか。宇宙生物マックィーンの絶対の危機_1.jpgが隕石と共にやって来たという定番SF怪物映画で、怪物は田舎町を襲い、人間を捕食して巨大化していきますが、これ、"アメーバ"と言うより"液体生物"でしょう(原題の"The Blob"はイメージ的には"スライム"に近い?)。この液体生物に立ち向かうのがマックイーン(当時、クレジットはスティーブン・マックイーンで、役名の方がスティーブになっている)らが演じるティーンエイジャーたちで、スティーブン・マックイーンは実年齢27歳で高校生を演マックィーンの絶対の危機_2.jpgじています(まあ、日本でもこうしたことは時々あるが)。CGが無い時代なので手作り感はありますが、そんなに凝った特撮ではなく、B級映画であるには違いないでしょう。ただそのキッチュな味わいが一部にカルト的人気を呼んでいるようです。スティーブ・マックイーン主演ということで後に注目されるようになったことも影響しているかと思いますが、「人喰いアメーバの恐怖2」(ビデオ邦題「悪魔のエイリアン」)('72年)という続編や「ブロブ/宇宙からの不明物体」('88年)というリメイク作品が作られています。
       


ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事 第四集.jpg「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第16話)/ワインの味●原題:Tales of the Unexpected -TASTE●制作年:1980年●制作ワインの味.jpg国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:1980/04/12●監督:アラステア・リード●脚本:ロナルド・ハーウッド●原作:ロアルド・ダール「味」●時間:26分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/ロン・ムーディー/アントニー・キャリック/Mercia Glossop/デビー・ファーリントン●DVD発売:2008/01●発売元:JVD(評価★★★☆)
ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事 第四集 BOX [DVD]」(「ワインの味 /Taste」「風景画 /Picture of a place」「盗み聴き /The Eavesdropper」 「動物と話す少年 /The Boy who talked with Animals」「 かも /There's One Born Every Minute」 「ブルー・マリーゴールド /Blue Marigold」 「確実な方法 /The Way to do it」「顔役 /The Man at tha Top」「クリスマスに帰る /Back for Christmas」)

Alfred Hitchcock Presents Lamb to the Slaughter. (1958) f.jpg「ヒッチコック劇場(第84話)/兇器●原題:Alfred Hitchcock Presents(S 3 E 28-#106)LAMB TO THE SLAUGHTERヒッチコック劇場 第ニ集 バリューパック.jpg●制作年:1958年●制作国:アメリカ●本国放映:1958/04/13●監督:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:ロアルド・ダール●原作:ロアルド・ダール「やさしい凶器」●時間:30分●出演:アルフレッド・ヒッチコック(ストーリーテラー)/バーバラ・デル・ゲデス/ハロルド・J・ストーン●日本放映:「ヒチコック劇場」(1957-1963)●放映局:日本テレビ(評価★★★★)
ヒッチコック劇場 第ニ集 バリューパック [DVD]」【Disc1】「兇器」「亡霊の見える椅子」「女性専科第一課 中年不夫婦のために」所収

ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事 dvd.jpgLamb to the Slaughter 1979 1.jpg「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第4話)/おとなしい凶器●原題:Tales of the Unexpected -LAMB TO THE SLAUGHTER●制作年:1979年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:1979/04/14●監督:アラン・ピックフォード●脚本:ロビン・チャップマン●原作:ロアルド・ダール「おとなしい凶器」●時間:24分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/スーザン・ジョージ/マイケル・バーン/ブライアン・ブレスト●日本放映:1980/05/10●放映局:東京12チャンネル(現テレビ東京)(評価★★★)
予期せぬ出来事 3枚組BOX [DVD] JVDD1157」(「南から来た男」「ヴィクスビー夫人と大佐のコート」「ウィリアムとメリー」「おとなしい凶器」「女主人」「首」「暴君エドワード」「海の中へ」「天国へのエレベーター」)

マっクィーン 指.jpg「ヒッチコック劇場(第136話)/●原題:Alfred Hitchcock Presents(S 5 E 15-#168)MAN FROM THE SOUTH●制作年:1959年●制作国:アメリカ●本国放映:1960/01/03●監督:ヒッチコック劇場 第四集.jpgノーマン・ロイド●製作:ジョーン・ハリソン●脚本:ウィリアム・フェイ●音楽:ジョセフ・ロメロ●原作:ロアルド・ダール「南から来た男」●時間:26分●出演:アルフレッド・ヒッチコック(ストーリーテラー)/スティーブ・マックイーンニール・アダムス/ピーター・ローレ/キャサリン・スクワイア●日本放映:「ヒチコック劇場」(1957-1963)●放ヒッチコック劇場 マックイーン版 南から来た男.jpgヒッチコック劇場 マックイーン版 南から来た男 2.jpg映局:日本テレビ(評価★★★★)
ヒッチコック劇場 第四集2 【ベスト・ライブラリー 1500円:第4弾】 [DVD]」(「脱税夫人(The avon emeralds)」「悪徳の町(The crooked road)」「指(Man from the south)」「ひき逃げを見た(I saw the whole thing)」)
      
スティーヴン・バウアー/ティッピ・ヘドレン/メラニー・グリフィス(背)/ジョン・ヒューストン
小指切断ゲーム2.jpg小指切断ゲーム3.jpg小指切断ゲーム4.jpg「新・ヒッチコック劇場(第15話)/小指切断ゲーム●原題:Alfred Hitchcock Presents -P-2.MAN FROM THE SOUTH●制作年:1985年●制作国:アメリカ●本国放映:1985/05/05●監督:スティーブ・デ・ジャネット●製作:レビュー・スタジオ●脚本:スティーブ・デ・ジャネット/ウィリアム・フェイ●音楽:ベイジル・ポールドゥリス●原作:ロアルド・ダール「南から来た男」●時間:24分●出演:アルフレッド・ヒッチコック(ストーリーテラー)/スティーヴン・バウアー(青年)/メラニー・グリフィス(若い女)/ジョン・ヒューストン(カルロス老人)/キム・ノヴァク(女)/ティッピ・ヘドレン(ウェートレス)●日本放映:1988/01/0新・ヒッチコック劇場 5.jpg7●放映小指切断ゲーム1.jpg小指切断ゲーム5.jpg小指切断ゲーム6.jpg局:テレビ東京●日本放映(リバイバル):2007/07/08●放映局:NHK-BS2(評価★★★☆)

アルフレッド・ヒッチコック(ストーリーテラー)/キム・ノヴァク(特別ゲストスター)/メラニー・グリフィス 「新・ヒッチコック劇場 5 日本語吹替版 3話収録 AHP-6005 [DVD](「誕生日の劇物」「ビン詰めの魔物」「小指切断ゲーム」)

Man From The South (1985).jpg新・ヒッチコック劇場 小指切断ゲーム.jpg新・ヒッチコック劇場「南部から来た男」(1985)"Man From The South"(日本放送時のタイトル「小指切断ゲーム」)  
ALFRED HITCHCOCK PRESENTS, John Huston, Tippi Hedren, The Man From the South , 1985, Universal Television

The Man from the South


ロアルド・ダール劇場The Man from the South.jpg「The Man from the South」1.jpg「The Man from the South」2.jpg「The Man from the South」3.jpg「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第1話)/南から来た男●原題:Tales of the Unexpected -MAN FROM THE SOUTH●制作年:1979年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:1979/03/24●監督:マイケル・タクナー●脚本:ケビン・ゴールドスタイン・ジャクソン●原作:ロアルド・ダール「南から来た男」●時間:24分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/ホセ・フェラー/マイケル・オントキーン/パメラ・スティーヴンソン/シリル・ルッカム/ケティ・フラド●日本放映:1980/04/19●放映局:東京12チャンネル(現テレビ東京)(評価★★★☆)

Dip In The Pool 02.jpg「ヒッチコック劇場(第103話)/●原題:Alfred Hitchcock Presents(S 3 E 35-#113)A DIP IN THE POOL●制作年:1958年●制作国:アメリカ●本国放映:1958/06/01●監督:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:フランシス・コックレル●原作:ロアヒッチコック劇場 第一集 バリューパック.jpgヒッチコック劇場1-25_.jpgルド・ダール「プールでひと泳ぎ」●時間:30分●出演:アルフレッド・ヒッチコック(ストーリーテラー)/キーナン・ウィン/フィリップ・バーネフ/ルイーズ・プラット/フェイ・レイ/ドゥリーン・ラング●日本放映:「ヒチコック劇場」(1957-1963)●放映局:日本テレビ(評価★★★★)
「ヒッチコック劇場 第一集 バリューパック」「生と死の間」「ペラム氏の事件」「酒蔵」「もうあと1マイル」「賭」「神よ許し給え」所収
        
ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事 dvd.jpgロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事/海の中へ02.jpg「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第8話)/海の中へ●原題:Tales of the Unexpected -A DIP IN THE POOL●制作年:1979年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:1979/05/19●監督:マイケル・タクナー●脚本:ロナルド・ハーウッド●原作:ロアルド・ダール「賭」●時間:24分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/ジャック・ウェストン/グラディス・スペンサー/マイケル・トラウトン/ジャナ・シェルドン/ポーラ・ティルブルック●日本放映:1980/06●放映局:東京12チャンネル(現テレビ東京)(評価★★★)
   
「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第12話)/見知らぬ乗客●原題:Tales of the Unexpected -GALLOPING FOXLEY●制作年:1980年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:1980/03/15●監督:クロード・ウィーサム●脚本:ロビ予期せぬ出来事 第二集 BOX.jpgン・チャップマン●原作:ロアルド・ダール「ギャ02見知らぬ乗客.jpgロッピング・フォックスリー」●時間:25分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/ジョン・ミルズ/アンソニー・スティール/ポール・スパリアー/ジョナサン・スコット・テイラー●日本放映:1980/06●放映局:東京12チャンネル(現テレビ東京)(評価★★★☆)
      
予期せぬ出来事 第二集 BOX [DVD]」(「永遠の名作」「見知らぬ乗客」「ママの面影」「或る夜の事件」「新案育児法」「ヒッチハイク」「父親になる日」「男の夢」「疑惑」「ハエとり紙」「骨董屋の結婚」「太りすぎに注意」)
        
「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第11話)/永遠の名作●原題:Tales of the Unexpected -SKIN●制作年:1980年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:●1980/04/28●監督:ハーバート・ワイズ11 皮膚 Tales of the Unexpected - Skin(1980).jpg●脚本:ロビン・チャップマン●原作:ロアルド・ダール「首」●時間:24分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/デレク・ジャコビ/ルーシー・ガッテリッジ/ボリス・イザロフ/ドナルド・ピカリング/Teris Hebrew●日本放映:1980/06●放映局:東京12チャンネル(現テレビ東京)(評価★★★☆)
Derek Jacobi/Lucy Gutteridge/Boris Isarov/Donald Pickering/Teris Hebrew
Derek Jacobi.jpgLucy Gutteridge.jpgBoris Isarov.jpgDonald Pickering.jpgTeris Hebrew  Tales of the Unexpected'(1980).jpg                        


     
   
          
                      
       
ヒッチコック劇場 第二集 (2).jpgPoison_AL_.jpg「ヒッチコック劇場(第124話)/毒蛇●原題:Alfred Hitchcock Presents(S 4 E 1-#118)POISON●制作年:1958年●制作国:アメリカ●本国放映:1958/10/05●監督:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:ケイシー・ロビンソン●原作:ロアルド・ダール「毒」●時間:30分●出演:アルフレッド・ヒッチコック(ストーリーテラー)/ウェンデル・コーリー/ジェームズ・ドナルド/アーノルド・モス/ドゥリーン・ラング●日本放映:「ヒチコック劇場」(1957-1963)●放映局:日本テレビ(評価★★★★)
ヒッチコック劇場 第二集 (2) (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】 [DVD]」【Disc2】「毒蛇」「殺人経験者」「バアン ! もう死んだ」
  
Tales of the Unexpected  poison 009.jpg「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第14話)/或る夜の事Tales of the Unexpected  poison 00.jpg●原題:Tales of the Unexpected -POISON●制作年:1980年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:1980/04/28●監督:グレアム・エヴァンズ●脚本:ロビン・チャップマン●原作:ロアルド・ダール「毒」●時間:23分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/アンドリュー・レイ/アンソニー・スティール/ジュディ・ギーソン/サイード・ジャフリー●日本放映:1980/07●放映局:東京12チャンネル(現テレビ東京)(評価★★★)
   
06首ジョン・ギールグッド01.jpg「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第6話)/●原題:Tales of the Unexpected -NECK●制作年:1979年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国放映:1980/04/28●監督:クリストファー・06首ジョン・ギールグッド02.jpgマイルズ●脚本:ロビン・チャップマン●原作:ロアルド・ダール「首」●時間:25分●出演:ロアルド・ダール(Self-Introduced)/ジョーン・コリンズ/マイケル・オルドリッジ/ピーター・ボウルズ/ジョン・ギールグッド●日本放映:1980/05●放映局:東京12チャンネル(現テレビ東京)(評価★★★☆)

第41話 音響捕獲機The Sound Machine.jpg第41話 サウンドマシン  The Sound Machine 2.jpg「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事(第41話)/音響捕獲機●原題:Tales of the Unexpected -THE SOUND MACHINE●制作年:1981年●制作国:イギリス●放映局:BBC●本国ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事 第三集.jpg放映:1981/05/17●監督:ジョン・ゴリエ●脚本:ロナルド・ハーウッド●原作:ロアルド・ダール「サウンドマシン」●時間:30分●出演:ハリー・アンドリュース/ジェームズ・ワーウィック●DVD発売:2006/09●発売元:JVD(評価★★★)
ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事 第三集 [DVD]」(「負け犬」「動かぬ証拠」「最高の同居人」「死者の悪口にご用心」「隠された悪意」「アンティークの家具」「音響捕獲機」「満ち潮」「望みすぎた女」「パーティ」「妻の遺産」「おとり捜査」)

The Blob
The Blob (1958).jpgマックィーンの絶対の危機_.jpg「マックイーンの絶対の危機(ピンチ)(人喰いアメーバの恐怖)」●原題:THE BLOB●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:アービン・S・イヤワース・ジュニア●製作:ジャック・H・ハリス●脚本:ケイト・フィリップス/セオドア・シモンソン●撮影:トーマス・スパルディング●音楽:ラルフ・カーマイケル●原案:アービン・H・ミルゲート●時間:86分●出演:スティーブ・マックイーン/アニタ・コルシオ/アール・ロウ/ジョージ・カラス/ジョン・ベンソンTHE BLOB 1958es.jpgTHE BLOB 1958  .jpg/スティーヴン・チェイス/ロバート・フィールズ/アンソニー・フランク/ジェームズ・ボネット/オーリン・ハウリン●日本公開:1965/01●配給:アライド・アーティスツ(評価★★★)


Alfred Hitchcock Presents.jpgヒッチコック劇場00.jpgヒッチコック劇場01.jpgヒッチコック劇場_0.jpg■TVシリーズ「ヒッチコック劇場」Alfred Hitchcock Presents (CBS 1955.10.2~62.7.3)○日本での放映チャネル:日本テレビ(1957~63)声:熊倉一雄(アルフレッド・ヒッチコック)
Alfred Hitchcock Presents  

新・ヒッチコック劇場 dvd amazon.jpg新・ヒッチコック劇場 5.jpg新・ヒッチコック劇場 4.jpg■TVシリーズ「新・ヒッチコック劇場」Alfred Hitchcock Presents (NBC 1985.4.5~89.6.22)○日本での放映チャネル:テレビ東京(1985~87)声:熊倉一雄(アルフレッド・ヒッチコック)
           
Tales of the Unexpected  1979.jpgTales of the Unexpected.jpgロアルド ダール劇場 予期せぬ出来事 第二集 全4巻.jpg■TVシリーズ「ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事」Tales of the Unexpected (BBC 1979.3.24~88.5.13)○日本での放映チャネル:東京12チャンネル(現テレビ東京)(1980)/ミステリチャンネルなど

●「ロアルド ダール劇場 予期せぬ出来事」東京12チャンネルで1980年放映時のラインアップ(本国での全9シリーズ112作中)()内は放映時タイトル。
1 南から来た男 Man From the South [#1]
2 ヴィクスビー夫人と大佐のコート Mrs Bixby and the Colonel's Coat [#2]
3 ウィリアムとメリー(永遠の結婚) William and Mary [#3]
4 おとなしい凶器 Lamb to the Slaughter [#4]
5 女主人 The Land lady [#5]
6 首 Neck [#6]
7 暴君エドワード Edward the Conqueror [#7]
8 海の中へ(イチかバチか) A Dip in the Pool [#8]
9 天国へのエレベーター The Way Up to Heaven [#9]
10 永遠の名作 Skin [#11]
11 見知らぬ乗客 Galloping Foxley [#12]
12 ママの面影 Georgy Porgy [#18]
13 或る夜の事件 Poison [#14]
14 新案育児法 Royal Jelly [#10]
15 ヒッチハイク The Hitch-Hiker [#13]
16 父親になる日 Genisis and Catastorophe [#21]
17 男の夢 Mr Botibol's First Love [#22]
18 疑惑 The Umbrella Man [#20]
19 ハエとり紙 The Flypaper [#26]
20 骨董屋の結婚 The Ordery World of Mr. Appleby [#24]
21 太りすぎにご注意 Fat Chance [#15]
22 顔役 The Man at the Top [#25]
23 クリスマスに帰る Back for Christmas [#23]
24 風景画 A Picture of a Place [#27]
25 負け犬 The Stinker [#32]
26 動かぬ証拠 Shattorproof [#40]
27 最高の同居人 The Best of Everything [#38]
28 死者の悪口にご用心 Never Speak Ill of the Dead [#42]
       

 【1957年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(田村隆一:訳)]/1976年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(田村隆一:訳)]/2013年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(田口俊樹:訳)(Ⅰ・Ⅱ)]】

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骨太感のある娯楽映画。ボガートの好演を凌ぐエドワード・G・ロビンソンの悪役ぶり。

キー・ラーゴ dvd.jpg キー・ラーゴ ポスター.jpg KEY LARGO.jpg key largo movie.jpg
キー・ラーゴ [DVD]」/輸入版ポスター  ローレン・バコール、ハンフリー・ボガート

キー・ラーゴ2.jpg 第2次世界大戦の復員将校フランク(ハンフリー・ボガート)は、戦死した部下の遺族に会いにフロリダ半島南端の小島キー・ラーゴを訪ねるが、当地で部下の父親(ライオネル・バリモア)と未亡人ノーラ(ローレン・バコール)が経営するホテルは、ギャングの頭目ロッコ(エドワード・G・ロビンソン)とその一味らの隠れ家になっていた。大きな取引を控え、ハリケーンの接近に苛立つギャング達は横暴になっていき、ノーラや父親に暴力を奮い、遂には保安官助手を殺してしまうが、戦争のため虚脱感に陥っているフランクはそれを見て何の反応も示さず、ノーラはその腑甲斐なさを歯がゆく思う―。

「キー・ラーゴ」ローレン・バコール.jpg 1948年の作品。1939年にブロードウェイで上演されたマックスウェル・アンダーソンの戯曲「キー・ラーゴ」を、ジョン・ヒューストンとリチャード・ブルックスが映画用に脚色したもので、「脱出」('44年)「三つ数えろ」('46)、「潜行者」('47年)に続く、ボガートとバコールの4度目にして最後の夫婦共演作でもあります。

 オリジナルが戯曲であったことは後に知りましたが、それほど多くない登場人物、密室状態のホテル、フランクとロッコの心理的駆け引きやノーラのフランクに対する見方の変化など、確かに心理劇的要素が強い作品かも。

キー・ラーゴ 1.jpg それでいてスカッとしたカタルシスがあるのは、最初の内は"男気"をなかなか見せないフランクが、徐々にその本分を発揮し、最後に...というプロセスから結末までの描き方の上手さによるものでしょう。

 ロッコの情婦ゲイ(クレア・トレヴァー)が、アル中の元歌手か何かで、ロッコからそんなに酒が飲みたいなら歌えと言われて一生懸命歌いますがそんな下手なんじゃやれないと言われたりして、最後はフランクがロッコに逃亡用の船の操縦を命じられた際にそっとフランクにピストルを手渡すところなどは、定番と言えば定番なのですが、役者陣がしっかりしている分、シンプルなストーリーが活き、骨太感のある娯楽映画に仕上がっています(クレア・トレヴァーはこれら一連の演技でアカデミー助演女優賞受賞)。

「キー・ラーゴ」E・G・ロビンソン.jpg とりわけ、その演技が光るのはエドワード・G・ロビンソンで、その強面の悪役ぶりは、ボガートの好演をも喰ってしまっているほどです。エドワード・G・ロビンソン 十戒.jpg「十戒」('57年)でも、チャールトン・ヘストン演じるモーゼに逆らって民衆を堕落へと扇動する男を演じていましたが、こうした心理劇的要素の強い作品では、ますますその凄味が増してくる俳優だったように思います(スティーブ・マックイーンと共演した「シンシナティ・キッド」('65年)などもそう)。

キー・ラーゴ エドワード・G・ロビンソン.jpg エドワード・G・ロビンソン(1893-1973/享年79)という人は8カ国語を操るインテリだったそうで、そのリベラルな思想のため40年代後半はハリウッドでも冷遇され、この作品でも"後輩スター"であるハンフリー・ボガートの脇に回ることになりましたが、仕事と割り切って出演を承諾、ボガートの方もロビンソンに対し"先輩スター"として接し、他のスタッフもこれに倣うよう命じたという逸話があります。

 この作品は吉祥寺の「ジャヴ50」で観ましたが(当時は自主上映館としての色合いが強かった)、現在は「バウスタウン」内の「バウスシアター2」というミニシアター(席数50)になっています。当時の「ジャヴ50」の客席フロアは"個席"ではなく、長椅子(ビニール張りのソファー)が並べられているだけであり、「席数50」と言うより「収容観客数50」という意味でのネーミングだったのでしょう。

Key Largo (1948)
KEY LARGO3.jpgKey Largo (1948).jpg「キー・ラーゴ」ローレン・バコール2.jpg「キー・ラーゴ」●原題:KEY LARGO●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:リチャード・ブルックス/ジョン・ヒューストン●撮影:カール・フロイント●音楽:マックス・スタイナー●原作戯曲:マックスウェル・アンダーソン「キー・ラーゴ」●時間:138分●出演:ハンフリー・ボガート/エドワード・G・ロビンソン/ローレン・バコール/ライオネル・バリモア/クレア・トレヴァー/ジョン・リッジリー/モンテ・ブルー/トーマス・ゴメス●日本公開:1951/11●配給:セントラル●最初に観た場所:吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50(85-12-21)(評価:★★★★)

吉祥寺バウスシアター2(旧ジャヴ50)           
じゃv50.jpgバウスシアター.jpg.png吉祥寺バウスシアター.jpg吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50 1951年~「ムサシノ映画劇場」、1984年3月~「吉祥寺バウスシアター」(現・シアター1/218席)と「ジャヴ50」(現・シアター2/50席)の2館体制でリニューアルオープン。2000年4月29日~シアター3を新設し3館体制に。 2014(平成26)年5月31日閉館。

吉祥寺バウスシアター映画から船出した映画館』(2014/05)
吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館.jpg じゃv 50.jpg
   
バウスシアター2.JPG吉祥寺バウスシアター3.jpg吉祥寺バウスシアター内

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評伝としての部分も、日本を含む文化に与えた影響の部分についても前著より詳しい。

アメリカでいちばん美しい人.jpg マリリン・モンロー 岩波新書.jpg   荒馬と女2.gif「荒馬と女」(1961)亀井 俊介.jpg 亀井 俊介 氏 (東大名誉教授・岐阜女子大大学院教授(アメリカ文学・比較文学))
アメリカでいちばん美しい人―マリリン・モンローの文化史』 ['04年] 『マリリン・モンロー (岩波新書 黄版 (381))』 ['87年]

Andy Warhol "Marilyn (pink)"
Andy Warhol.jpg 著者の新書版『マリリン・モンロー』('87年/岩波新書)は、著者自身によれば、モンローをめぐる「文化」についての本であって「伝記」を目指したものではなかったとしていますが、本書では、Ⅰ・Ⅱ章でモンローの生涯を前著より掘り下げ、多くの伝記や評論を参照しつつ、写真も豊富に交えて(表紙の"ジャンプするマリリン"もいい)より評伝風に記す一方、Ⅲ・Ⅳ章で、モンローの人間性と女優としての系譜を探るとともに、死後、彼女が「愛の女神」としてイコン(偶像)化される過程を、アンディ・ウォーホルの作品に代表されるようなアメリカ文化の展開と合わせて論じています。

 新書版にあったことと重なる内容も少なくないのですが、これも前著にもあった日本の大衆文化やアーティストたちに与えた影響についても、近年のものまで含めてより詳細に紹介されていて、新書版の方が入手しにくいこともあり、これはこれで堪能できる1冊と言えるのではないでしょうか。

 Monroe and Arthur Miller  Monroe and Truman Capote
Marilyn Monroe with Arthur Miller.jpgMarilyn Monroe and Truman Capote.jpg 文学者との関係において、前著ではノーマン・メイラーが重点的にとりあげられていましたが、本書ではその他に、アーサー・ミラー(モンローの最後の夫でモンロー主演の遺作「荒馬と女」のシナリオを書いている)、トルーマン・カポーティ(自作「ティファニーで朝食を」の主演にモンローを推したがハリウッドはオードリー・ヘップバーンを選んだ)なども取り上げています。

 アーサー・ミラーは大男、トルーマン・カポーティは小男でしたが、モンローの好みは長身の男? 「荒馬と女」の撮影ではクラーク・ゲーブルに好意を寄せたようだし。もっとも、もう1人の共演者、モンゴメリー・クリフトはホモセクシュアルでしたが(因みに、モンローに恋したトルーマン・カポーティもホモセクシュアルだった)。

荒馬と女 パンフ.jpg 上のモンローとアーサー・ミラーの写真は、アーサー・ミラーが「荒馬の女」(1961年)の撮影現場を訪れた時のものですが、この時はもう既に夫婦仲は冷え切っていたものになっていたようです。

「荒馬と女」リバイバル公開時チラシ
荒馬と女 リバイバル公開時チラシ.jpg 映画自体はいかにも劇作家らしい脚本、砂漠で繰り広げられる心理劇という感じで、個人的にはイマイチでしたが、モンローの遺作となっただけでなく(1962年没(享年36))、クラーク・ゲーブル(1960年没(享年59))にとっても遺作となった作品で(ゲーブルはこの作品の公開前に亡くなっている)、モンゴメリー・クリフト(1966年没(享年45))もこの作品の公開後5年ほどで亡くなっていることに因縁めいたものを感じます(因みに、モンローは生前、モンゴメリー・クリフトについて、「私よりネがクライ人なんてモンティーしかいないわ」と言っていたという)。

 本書に何度か引用されている「ヘミングウェイとモンロー。彼らの名前はそっとしておけ。彼らは私たちにとって、2人のアメリカでいちばん美しい人だった」という言葉を述べたノーマン・メイラー).jpgのはノーマン・メイラーですが、モンロー自身はヘミングウェイを、彼がハンティングを好んだという理由で好きでなかったというのは面白いエピソードです。大女優には動物愛護主義者が多いのかな(「荒馬と女」での彼女の役どころもそれに近い要素を持ったキャラクターなのだが)。

 全体を通して著者の最も言わんとしていることは、「マリリンの前にマリリンなく、マリリンの後にマリリンなし」ということであるように思えました。

Jayne Mansfield
Jayne Mansfield.jpg モンローの後継者とされたジェーン・マンスフィールドが、モンロー以上の巨乳である上に「知能指数158」という宣伝文句だったというのは、モンローの死後、「白痴美」と思われた彼女の言動を後で振り返ってみると、実はモンローかなり頭のいい女性だったと思われたということと関係しているのではないだろうかと、個人的には思いました。よくモンローに比されるマドンナも、知能指数は140以上あると聞きますが、ただし著者は、両者を異質のものとして捉えているようです。両者の時代の間にフェニミズム運動があって女性からの受容のされ方が異なり、またイメージ的にも、マドンナの基調は"黒"であるのに対し、モンローは"白"であるとのことです。

 モンローがドストエフスキー作品などを読んで自分を高める努力をし、リー・ストラスバーグ主宰の「アクターズ・スタジオ」に通って演技を学んだことは、自らの人気と実力のギャップを埋めようした葛藤として知られていますが、周囲はそうした彼女の努力が逆に彼女の魅力をスポイルするのではと危惧した―そうした中で、演技の大家ストラスバーグ(「ゴッド・ファーザーPARTII 」に役者としても出ていたなあ、この人)が、モンローとマーロン・ブランドが、彼の門下で最も優れた才能の持ち主であると認めていたというのは、大変興味深いことです。

ティファニーで朝食を.jpg でも、トルーマン・カポーティからの「ティファニーで朝食を」の出演依頼を断ったポーラ・ストラスバーグは、リー・ストラスバーグの妻でアクターズ・スタジオのコーチだった人なんだなあ。作家の井上篤夫氏によると、彼女は「荒馬の女」に関しても、「私は『荒馬と女』のひとコマひとコマに携わってきたわ。私の仕事ぶりはスクリーンに表われている」と言っており、ジョン・ヒューストンは、「ポーラには思い知らせてやるつもりだ。この映画を牛耳っている」と怒っていますから、相当干渉したのでしょう。

荒馬と女.jpg「荒馬と女」●原題:THE MISFITS●制作年:1961年●制作国:アメリカ 「荒馬と女 [DVD]」 ●監督:ジョン・ヒューストン●製作:フランク・E・テイラー●脚本:アーサー・ミ大井ロマン.jpg大井武蔵野館.jpgラー●撮影:ラッセル・メティ●音楽:アレックス・ノース●時間:124分●出演:マリリン・モンロー/クラーク・ゲーブル/モンゴメリー・クリフト/イーライ・ウォラック/セルマ・リッター/ジェームズ・バートン/エステル・ウィンウッド●日本公開:1961/06●配給:セントラル●最初に観た場所:大井ロマン (85-09-22) (評価:★★★)●併映:「白鯨」(ジョン・ヒューストン) 
大井ロマン(大井武蔵野館) 1999(平成11)年1月31日閉館

大井武蔵野館・大井ロマン(1985年8月/佐藤 宗睦 氏)
大井武蔵野館・大井ロマン.jpg

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