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トキワ荘に集った才能豊かな面々を描くとともに、自伝になっていて、貴重な記録。

『章説 トキワ荘の青春』.jpg

章説-トキワ荘の青春2018.jpg 章説・トキワ荘・春 1981.jpg トキワ荘の青春―ぼくらの1986.jpg   トキワ荘の青春 [DVD].jpg
章説-トキワ荘の青春 (中公文庫)』['18年]/『章説・トキワ荘・春』['81年]/『トキワ荘の青春―ぼくらの漫画修行時代 (講談社文庫 い 43-1)』['86年]/「トキワ荘の青春 [DVD]
章説・トキワ荘・春』['96年]『章説 トキワ荘の春 (石ノ森章太郎生誕70年叢書シリーズ)』['08年]
章説・トキワ荘・春 1996.jpg章説 トキワ荘の春叢書シリーズ) 2008.jpg 石ノ森章太郎(1938-1998/60歳没)が、豊島区椎名町トキワ荘に集まった漫画家との熱き日々を自らの視点から描いたエッセイ。寺田ヒロオ、藤子不二雄(藤本弘・安孫子素雄)、鈴木伸一、森安直哉、つのだじろう、園山俊二、赤塚不二夫、横田徳男、長谷邦夫、水野英子らにまつわる笑いと涙の交友録です。

 '81(昭和56)年9月に刊行された『章説・トキワ荘・春』(講談社)の改題で、著者が生前に「仕掛け的には、順番をこう変えてもいいかもなぁ...」と語っていた記憶を辿り、森プロとの協議で、章立ての順序等が原本より再構成・編集されているとのことです。この間に文庫『トキワ荘の青春―ぼくらの漫画修行時代』('86年/講談社文庫)、単行本『章説・トキワ荘・春』('96年/風塵社)、単行本『章説 トキワ荘の春』('08年/清流出版・石ノ森章太郎生誕70年叢書シリーズ)が刊行されていますが、底本が同じなので内容も基本的には同じです(風塵社版の『章説・トキワ荘・春』には、プロローグにまんが版「トキワ荘物語」が加えられている)。

 トキワ荘に集った才能豊かな面々を著者の視点から描いていて、同時に著者の自伝になっています(プロローグと終わりの方に、著者と3歳違いで23歳で亡くなった姉の話が出てくるのが切ない)。しかし、著者は高校生時代から漫画雑誌に連載漫画を画いていたというから、その才能はスゴイ。最初は上京して別の所に住んでいたのが、途中からトキワ荘へ。結局、最後一人になるまでトキワ荘に残った漫画家になりました。

がんばれゴンベ1.jpg 冒頭に挙げたトキワ荘の「青春の仲間たち」では、園山俊二が、『がんばれゴンベ』を「毎日小学生新聞」でリアルタイムで読んだ自分としては懐かしいです。「新漫画党」唯一の大学卒(早稲田大学の漫画研究会出身)でしたが、トキワ荘の「半住人」だったと。結局「がんばれゴンベ」は1958年から1992年まで、通算連載回数は9775回となりましたが、肝臓癌で1993年1月20日に57歳で死去したのが惜しまれます(手塚治虫も石ノ森章太郎も60歳で亡くなっている。漫画家ってどうして長生きしないのか)。

『名画座面白館』赤塚.jpg 石ノ森章太郎の赤塚不二夫、長谷邦夫との交流は、赤塚不二夫の『赤塚不二夫の名画座面白館』('89年/講談社)でも見ることができます。

 そのほかに、手塚治虫はもちろんのこと、高井研一郎高橋留美子つげ義春といった人々も登場し、著者が「一度きりのサラリーマン生活」を経験した「東映動画」では、「天才」の異名を取ったアニメーターの月岡貞夫などとも仕事をしたのだなあ、これは知らなかった。全編を通して貴重な記録でもあると思います。

「トキワ荘の青春」p2.jpg「トキワ荘の青春」4.jpg トキワ荘について書かれた書籍は当事者によるものも含め数多くあり、また、アニメやドキュメンタリー、ドラマなどにもなっていますが、映画では、昨年['21年]四半世紀ぶりにデジタルリマスター版で公開された、市川準(1948-2008/59歳没)監督の「トキワ荘の青春」('96年)があります(「ロッテルダム国際映画祭」招待作品。1996年キネマ旬報ベストテン第7位、読者選出第7位)。

「トキワ荘の青春」11.jpg 映画は、トキワ荘におけるリーダー的存在であった寺田ヒロオが主人公であり、その寺田ヒロオを本木雅弘が演じています。コミカルな描写もありますが、自身が理想とする「子供たちに理想を教える漫画」と、雑誌編集者が要求する「商業主義漫画」との間で思い悩む寺田ヒロオの姿などが描かれていて、全体に盛り上がりを抑えた物静かなトーンの作品となっており、それが、ラストで寺田ヒロオが黙ってトキワ荘を去るという結末に繋がっていきます。

 視点としては、藤子不二雄の自伝的漫画作品『まんが道』(藤子不二雄によるシリーズとしては最長連載作品で、シリーズの連載は'13年に完結するまで43年間続いた)に近いかなという気がしますが(寺田ヒロオを頼もしくて理想的な先輩として描いている)、この映画の原案は、梶井純の『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道』('93年/ちくまライブラリー、'20年/ちくま文庫)です。

阿部サダヲ(藤本弘(藤子・F・不二雄))/鈴木卓爾(安孫子素雄(藤子不二雄Ⓐ))
0フジコフジオ.jpg 当時はまだ無名に近かった自主映画・小劇団関係者で、後年人気スターや映画監督となった俳優が多く起用されていて、安孫子素雄に鈴木卓爾(後に「ゲゲゲの女房」('10年)を監督)、藤本弘に阿部サダヲ(映画デビュー3年目、当時25歳)、石森章太郎にさとうこうじ(映画デビュー作)、赤塚不二夫に大森嘉之、森安直哉に古田新太(映画デビュー翌年・当時31歳)、鈴木伸一に生瀬勝久(映画デビュー作・当時35歳)などを配しています。

「トキワ荘の青春」s.jpg 結局、寺田ヒロオは後に漫画の筆を折ることになり、本書でも著者が「寺さんの"絶筆宣言"はショックだった。漫画がひどくなる。もう書きたくない」というのが理由だったとありますが、やがてトキワ荘時代のメンバーとの交流も絶ったのは謎です(本人は後に病気が原因と語ったという)。晩年は一人自宅の庭の離れに籠って、母屋に住む家族ともほとんど会話しなかったそうで、1992年9月24日に61歳で亡くなっています。

「スポーツマン金太郎」.jpg 映画では、若い新進映画化の台頭に(ただし、石森章太郎・藤子不二雄らが早くに売れっ子漫画家となったのに対し、赤塚不二夫・森安直哉らはなかなか芽が出なかった風に描かれている)、本木雅弘が演じる寺田ヒロオが徐々に時流から取り残されていっているように描写されているともとれます(断定的ではないが)。個人的には、『スポーツマン金太郎』をリアルタイムで読んだ世代ですが、その頃からこの人の漫画は、ちょっとレトロな感覚があったように思われ、やはり、作風が時代に合わなくなったことが筆を折る理由になったのではないかと思います。

「トキワ荘の青春」赤塚.jpg石森の姉:安部聡子.jpg 因みに、石森章太郎者と3歳違いで23歳で亡くなった姉は、映画にも上京した弟のことを思い遣る女性としてとして登場します(演:安部聡子)
     
映画「トキワ荘の青春」で舞台挨拶する赤塚不二夫(後ろは藤子不二雄Ⓐ氏)['96年/日刊スポーツ」
  

「トキワ荘の青春」m.jpg「トキワ荘の青春」●英題:TOKIWA:THE MANGA APARTMENT●制作年:1996年●監督:市川準●製作:塚本俊雄/里中哲夫●脚本:市「トキワ荘の青春」2.jpg川準/鈴木秀幸/森川幸治●撮影:小林達比古/田沢美夫●音楽:清水一登/れいち●原案:梶井純『トキワ荘の時代』●時間:110分●出演:本木雅弘/鈴木卓爾/阿部サダヲ/さとうこうじ/大森嘉之/古田新太/生瀬勝久/翁華栄/松梨智子/北村想/安部聡子/土屋良太/柳ユーレイ/桃井かおり/原一男/向井潤一/広「トキワ荘の青春」桃井.jpg岡由里子/内田春菊/きたろうメモリーズ・オブ・市川準.jpg神保町シアター.jpg/時任三郎●公開:1996/03●配給:カルチュア・パブリッシャーズ●最初に観た場所:神保町シアター(10-09-13)(評価:★★★☆)

桃井かおり(藤本弘(藤子・F・不二雄)の母)
トキワ荘の青春(1996年).jpg
     
  
【1981年単行本[講談社(『章説・トキワ荘・春』)]/1986年文庫化[講談社文庫(『トキワ荘の青春―ぼくらの漫画修行時代』)]/2018年再文庫化[中公文庫(『章説 トキワ荘の青春』)]】

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原作ミステリを塚本晋也風ホラー映画に改変。元木雅弘が兄弟二役を怪演。原作より上。

「双生児」d.jpg『双生児 (角川ホラー文庫』.jpg 『人間椅子 (江戸川乱歩文庫) 』.jpg 屋根裏の散歩者 文庫.jpg
双生児-GEMINI- 特別版 [DVD]」『双生児 (角川ホラー文庫)』『人間椅子 (江戸川乱歩文庫)』(「双生児」所収)『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)』(「双生児」所収)
「双生児」01.jpg 明治末期、大徳寺雪雄(本木雅弘)は、大徳寺医院の跡取りとして医師の地位と名誉、そして美しい記憶喪失の妻りん(りょう)を手にした充実した日々を送っていた。ところが、大徳寺家で不審な出来事が続き、彼の父・茂文(筒井康隆)と母・(藤村志保)が謎の死を遂げる。そんなある日雪雄は庭を散歩していると、自分と瓜ふたつの男に襲われ、古井戸に投げ捨てられた。彼を井戸に落とした男・捨吉(本木雅弘、二役)は、何くわぬ顔をして雪雄に成りすまし、大徳寺「双生児」03.jpg家の当主に収まった。捨吉は井戸の中の雪雄に、二人は実は双生児であり、捨吉は両親に捨てられて貧民窟で育ったのだと惨めな生い立ちを語り、復讐のため両親の死に関わったのだと打ち明ける。さらに、貧民窟では、りんと恋仲であったことを話す。捨吉は、井戸の中の雪雄に最低限の飲食物を与え、奇妙な関係を続ける。一方、りんも今の雪雄は捨吉ではないかと気付くが、成りすました捨吉はシラを切り続ける。必死の思いで井戸を脱した雪雄と捨吉は争い、捨吉は死に至る。生還した雪雄は、りんと新たな絆を結び、かつては蔑み、忌避していた貧民窟への往診を行う医師となっていた―。

沈黙 サイレンスs.jpg鉄男 TET.jpg鉄男 dvd.bmp 1999年に公開された、あのカルトムービー「鉄男 TETSUO」('89年)の塚本晋也監督(「シン・ゴジラ」('16年)、「沈黙-サイレンス-」('17年)[右]など俳優としても活躍しているが)による作品です。原作は、江戸川乱歩が1924(大正13)年10月に「新青年」に発表した短編小説(正式タイトル「双生児~ある死刑囚が教誨師にうちあけた話~」)で、ある種「ドッペルゲンガー小説」と言えます。

世にも怪奇な物語 影を殺した男1.jpg 因みに、自分そっくりな存在(ドッペルゲンガー)との遭遇によってアイデンティティが揺らぐというモチーフの文学作品(ドッペルゲンガー小説)の嚆矢はエドガー・アラン・ポーの「ウィリアム・ウィルソン」(1839)で、こちらはオムニバス映画「世にも怪奇な物語」('67年)の第2話「影を殺した男」[左]として、ルイ・マル監督、アラン・ドロン、ブリジット・バルドー主演で映画化されています。

「双生児」04.jpg 江戸川乱歩の原作とはずいぶん違う話になってはいますが、江戸川乱歩作品の雰囲気は出ていたように思います。登場人物が全員眉を剃っていて、それだけで乱歩的な雰囲気が出てしまうのが不思議ですが、全体を通しても映像的に成功していて、塚本晋也監督ならではの作品になっているように思いました。

 ホラー映画であり、後を引くような怖い話になるのかなと思ったけれども、最後、雪雄がこれまで忌避していた貧民窟へ往診に向かうという"いい人"になっていて、後に引きません(笑)。しいて言えば、以前に彼を見ていたはずの乞食僧(石橋蓮司)がそれを見て慄くというのが、解釈の入る部分でしょう(彼は延命治療に疑問を感じた末に、安楽死推進派に転じたとする説もあるようだが、それだと逆に怖いラストだけれども、ちょっと無理がある?)。

 原作の乱歩の真意を読み取ろうにも、原作は、ある殺人犯死刑囚が教誨師に、まだ告白していなかった殺人の告白をするという、全然違う話なので...。この死刑囚は、親からのすべての財産を相続し、美しい妻もいる兄に対し、弟の自分は何も持たざる身であることを妬ましく思い、ある日遂に兄を殺害して井戸に死体を捨て、何食わぬ顔して兄に成り代わるというもので、兄側から見ればいわば「入れ替わり怪談」のようなモチーフです。このパターンは昔からあり、ここでは兄にとって井戸が冥界への入り口になっていますが、トイレや鏡が媒介になっているものが結構あるように思います。

「双生児」05.jpg ただし、原作はどちらかと言うとホラー怪談ではなくミステリ―であり、井戸に捨てられた兄(映画で言えば雪雄の立場になるが)は上から土を盛られてもう甦ることはなく、弟である自分(捨吉の立場?)は兄の指紋を採取しておいて、それを利用して強盗殺人を犯すのですが、犯行現場にゴム手袋に写し取った兄の指紋を遺しておいたので、自分の指紋と一致するはずがなく、自分は絶対に安全だったはずが―。

 原作は、オチはケアレスミスだったわけで、主人公はそのために捕まって死刑にはなるわけですが、プロット的には「双生児」06.jpg乱歩の初期作品に多く見られる比較的軽い感じのミステリ―といったところでしょうか。映画は、完全に塚本晋也風ホラーで(貧民窟時代の捨吉やりょうらのメイクは「鉄男」のイメージを一部踏襲している)、浅野忠信がパンク風な格好で出てくるほか、田口トモロヲ、麿赤兒、竹中直人、石橋蓮司といった癖のある役者が癖のある演技を見せます。しかしながら、それらを凌駕して余るのが、雪雄・捨吉兄弟の二役を演じた元木雅弘の怪演ではなかったかと思います。原作より映画の方が上です。

りょう/藤村志保/筒井康隆/田口トモロヲ/浅野忠信/麿赤兒/竹中直人/石橋蓮司
「双生児」02.jpg

「双生児」08.jpg「双生児」09.jpg「双生児-GEMINI-」●制作年:1999年●監督・脚本:塚本晋也●製作:中澤敏明/古里靖彦●撮影:森下彰生●音楽:久石譲●原作:石川忠●時間:84分●出演:本木雅弘/りょう/藤村志保/筒井康隆/もたいまさこ/石橋蓮司/麿赤兒/竹中直人/浅野忠信/田口トモロヲ/村上淳/内田春菊/今福将雄/大方斐紗子/広岡由里子/猪俣由貴/溝口遊/金守珍●公開:1999/09●配給:東宝(評価:★★★★)

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ヤクザの資金を強奪した男たちの壮絶な運命。前半はスタイリッシュだが...。"ホラー"シーンは秀逸。
10『GONIN』.jpg GONIN 1995 0.jpg GONIN 1995 1.jpg GONIN 1995 8.jpg
あの頃映画 「GONIN」 [DVD]」佐藤浩市・本木雅弘
GONIN 1995.jpg 借金まみれのディスコ・バーズのオーナー・万代(佐藤浩市)、男性相手のコールボーイ・三屋(本木雅弘)、元刑事・氷頭(根津甚八)、リストラされたサラリーマン・荻原(竹中直人)、パンチドランカーの元ボクサー・ジミー(椎名桔平)。社会から弾き出された5人は大胆にも暴力団・大越組の事務所から大金を強奪する計画を企て、辛くも成功する。しかし、ジミーを拷問し万代たち5人の仕業と突き止めた大越組は、二人組のヒットマン・京谷(ビートたけし)と柴田(木村一八)を雇って報復に出る―。

GONIN 1995 6.jpgGONIN 1995 本木・佐藤.jpg 1995年に公開された石井隆監督による「スタイリッシュバイオレンス・アクション映画」作品とのこと。ヤクザの資金強奪計画を企てた男たちの壮絶な運命を描いています。当初の公開は8月中旬を予定していたのが、内容的に重いので夏場の番組として相応しくないとのことで9月公開になったそうです。

GONIN 199594.jpg '95年度の「キネマ旬報ベストテン」でベスト10入りはしていませんが、「読者選出ベスト・テン」の方で4位にランクインしていて、この辺りも何となくわかる気がします。人気を受けてか、翌年には「GONIN2」('96年/松竹)が緒形拳、大竹しのぶ主演で撮られていますが、これはまったく別のストーリーです。

GONIN 1995 takesi.jpg 確かに前半はスタイリッシュで、金をかけずともここまで撮れるのかと、監督の技量を感じました。万代が暴力団事務所から金を奪うためにメンバーを集めるのは、「七人の侍」と言うより「オーシャンと十一人の仲間」の雰囲気でしょうか。ただし、この映画の場合、あくまでも5人ですが(もっと多くても面白いのではないかとも思うのだが)。

GONIN 1995 nezu.jpg根津甚八.jpg 佐藤浩市、本木雅弘、竹中直人、そして殺し屋役のビートたけし等々の怪演が見られるのは貴重で、さらにその上に君臨するのが「さらば愛しき大地」('82年/プロダクション群狼)で「キネマ旬報ベストテン主演男優賞」を獲った根津甚八(1947-2016)。この頃はまだギラギラしていました。この人、どうして〈うつ病〉などに罹ったのかなあ。「GONIN サーガ」('15年/KADOKAWA)で11年ぶりに一度限りの銀幕復帰を果たしましたが、翌年、肺炎で69歳で亡くなっています。

GONIN 1995 last.png ストーリーが各々の破滅に向かっていくことは想像に難くなく、椎名桔平演じるジミーは恋人のナミィー(横山めぐみ(「真珠夫人」('02年/フジテレビ))を殺された大越組に乗り込むが射殺され、荻原は自宅に戻ったところをビートたけし演じる京谷に射殺される。根津甚八演じる氷頭は、元妻(永島暎子(「女教師」」('77年/日活))と娘との会食中を襲われ、元妻と娘が射殺されたものの逃げ延びる。佐藤浩市演じる万代と本木雅弘演じる三屋は逃走のため共に新宿バスターミナルに来たところを襲われ、万代は死に、三屋は逃げ延びる。合流した三屋と氷頭は大越組事務所を襲い、組長の大越(永島敏行(「サード」('78年/ATG))のほか、久松(鶴見辰吾)ら組員を殺すが、氷頭は京谷によって射殺される。逃げ延びた三屋は長距離バスで逃走するが―。

GONIN 1995 takenaka.jpg ただ、後半、竹中直人演じるリストラされたことを家族に言えないサラリーマンの荻原だけでなく、根津甚八演じる氷頭までが、離婚こそしてはいるが「家庭人」になっていて、愛する者が殺されるというシビアな状況に持ち込むための設定なのもしれませんが、切りたくても切れない家族の関係というか、スタイリッシュでなくなってきたような気がしました(ラストで本木雅弘演じる三屋の手に万代の遺骨があるが、誰に届けるつもりかと思ったら、シリーズ第3作で本作の正統派続編である「GONIN サーガ」では、万代にも妻子がいることが判明する)。

ganin 76020.jpgGONIN 1995 栗山.jpg栗山千明.jpg ビートたけしの殺し屋は、やっぱりビートたけしにしか見えない(笑)というのはありますが、一応は最後までバイオレンス・アクションではありました。そんな中、竹GONIN 1995ges.jpg中直人演じるサラリーマン荻原が、大金の強奪を終えて自宅に戻ってきたところだけはホラーだったなあ。「大仕事してきたんだよ~」とご機嫌で妻(夏川加奈子)と風呂に入るが...。この"ホラー"の場面が一番秀逸だったかも。ピアノをたしなむ荻原の娘を演じていたのは、当時10歳の栗山千明。彼女、初期はホラー専門だった?

荻原は息子に話しかけているが、息子の顔色は異様で、目の前をハエが飛ぶ。/風呂のタイルに血しぶきの跡が見える。 
GONIN 竹中.jpg GONIN hagiwara.jpg

goninmain2021.jpg「GONIN」●制作GONIN 1995_1280.jpg年:1995年●監督・脚本:石井隆●製作総指揮:奥山和由●撮影:佐々木原保志●音楽:安川午朗(挿入歌:ちあきなおみ「紅い花」)●時間:103分●出演:佐藤浩市(万代樹彦、ディスコ「Birds」のオーナー)/本木雅弘(三屋純一、金持ちの男相手のコールボーイを装い金を巻き上げている)/根津甚八(氷頭要、元刑事、現在は場末のキャバレー「ピンキー」にて用心棒)/椎名桔平(ジミー、元ボクサーで大越組のチンピラ、新GONIN 1995 ナミィー.jpg宿のバッティングセンターでも働いている)/竹中直人(荻原昌平、リストラされたサラリGONIN 1995s.jpgーマン)/ビートたけし(京谷一郎、式根に雇われた殺し屋、一馬とはサディスティックな恋仲)/木村一八(柴田一馬、京谷の相棒兼恋人)/鶴見辰吾(久松茂、大越組の若頭)/横山めぐみ(ナミィー、ジミーの恋人。タイ出身で大越組にパスポートを奪われ売春婦をやっている) /永島敏行(大越組の組長)/室田日出男(式根、数々の暴力団を束ねる五誠会の会長)/永島暎子(早GONIN 1995 ges2.jpg「GONIN」図3.jpg紀、氷頭の元妻。右足に障害がある)/川上麻衣子(ぼったくりキャバレー「ピンキー」の摺れたホステス)/滝沢涼子(「ピンキー」のホステス)/五十嵐瑞穂(氷頭の娘)/夏川加奈子(萩原の妻)/栗山千明(荻原の娘。ピアノをたしなむ)/山田哲也(荻原の息子)/不破万作(ピンキーのマスター)/松岡俊介(式根専属ドライバー)/伊藤洋三郎(式根ボディーガード)/飯島大介(野本)/岩松了(トイレの男)/小形雄二(高速バス運転手)/津田寛治(暴力団組員)/渡辺真起子(ディスコの客)●公開:1995/09●配給:松竹●最初に観た場所:シネマブルースタジオ(21-07-28)(評価:★★★☆)

         

「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1532】 谷口 千吉 「銀嶺の果て  
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「メメント・モリ」映画の"傑作"と言うか、むしろ"快作"と言った方が合っている?

Okuribito (2008).jpgおくりびと 2008 .jpgおくりびと1.jpg
おくりびと [DVD]」 山崎努・本木雅弘
Okuribito (2008)

おくりびと2.jpg チェロ奏者の小林大悟(本木雅弘)は、所属していた楽団の突然の解散を機にチェロで食べていく道を諦め、妻・美香(広末涼子)を伴い、故郷の山形へ帰ることに。さっそく職探しを始めた大悟は、"旅のお手伝い"という求人広告を見て面接へと向かう。しかし旅行代理店だと思ったその会社の仕事は、"旅立ち"をお手伝いする"納棺師"というものだった。社長の佐々木生栄(山崎努)に半ば強引に採用されてしまった大悟。世間の目も気になり、妻にも言い出せないまま、納棺師の見習いとして働き始める大悟だったが―。

おくりびと アカデミー賞.jpg 2008年公開の滝田洋二郎監督作で、脚本は映画脚本初挑戦だった放送作家の小山薫堂。第32回「日本アカデミー賞」の作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞(本木雅弘)・助演男優賞(山崎努)・助演女優賞(余貴美子)・撮影賞・照明賞・録音賞・編集賞の10部門をを独占するなど多くの賞を受賞しましたが(第63回「毎日映画コンクール 日本映画大賞」、第33回「報知映画賞 作品賞」、第21回「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」も受賞)、その前に第32回モントリオール国際映画祭でグランプリを受賞しており、更に日本アカデミー賞発表後に第81回米アカデミー賞外国語映画賞の受賞が決まり、ロードショーが一旦終わっていたのが再ロードにかかったのを観に行きました(2009年(2008年度)「芸術選奨」受賞作。脚本の小山薫堂は第60回(2008年)「読売文学賞」(戯曲・シナリオ賞)、本木雅弘と映画製作スタッフは第57回(2009年)「菊池寛賞」を受賞している)。

滝田洋二郎監督、本木雅弘、余貴美子、広末涼子(第81回アカデミー賞授賞式/2009年2月23日(日本時間))

おくりびと3.jpg 主演の本木雅弘のこの映画にかけた執念はよく知られていますが、"原作者"に直接掛け合ったものの、原作者から自分の宗教観が反映されていないとして「やるなら、全く別の作品としてやってほしい」と言われたようです。もともとは、本木雅弘が20歳代後半に藤原新也の『メメント・モリ―死を想え』('83年/情報センター出版局)を読み、インドを旅して、いつか死をテーマにしたいと考えていたとのことで、まさに「メメント・モリ」映画と言うか、いい作品に仕上がったように思います(結局、原作者も一定の評価をしているという)。

おくりびと4.jpg 特に、前半部分で主人公が"納棺師"の仕事の求人広告を旅行代理店の求人と勘違いして面接に行くなどコメディタッチになっているのが、重いテーマでありながら却って良かったです(逆に後半はややベタか)。技術的な面や宗教性の部分で原作者に限らず他の同業者からも批判があったようですが、それら全部に応えていたら映画にならないのではないかと思います。こうした仕事に注目したことだけでも意義があるのではないかと思いますが(ジャンル的には"お仕事映画"とも言える)、米アカデミー賞の選考などでは、同時にそれが作品としてのニッチ効果にも繋がったのではないでしょうか(アカデミーの外国語映画賞が、前3年ほど政治的なテーマや背景の映画の受賞が続いていたことなどラッキーな要素もあったかも)。

おくりびと5.jpg Wikipediaに「地上波での初放送は2009年9月21日で21.7%の高視聴率を記録したが、2012年1月4日の2回目の放送は3.4%の低視聴率」とありましたが、2回目の放送は日時が良くなかったのかなあ。こうした映画って、ブームの時は皆こぞって観に行くけれど、時間が経つとあまり観られなくなるというか、《無意識的に忌避される》ことがあるような気がしなくもありません。そうした傾向に反発するわけではないですが、個人的には、最初観た時は星4つ評価(○評価)であったものを、最近観直して星4つ半評価(◎評価)に修正しました(ブームの最中には◎つけにくいというのが何となくある?)。「メメント・モリ」映画の"傑作"と言うか、むしろ"快作"と言った方が合っているかもしれません。

 これもWikipediaに、「本作では、一連の死後の処置(エンゼルメイク)を納棺師が行っているが、現在では、臨終全体の8割が病院死であり、実際には、看護師が病院で行うことが多い」(小林光恵著『死化粧の時―エンゼルメイクを知っていますか』('09年/洋泉社))とありましたが、病院側がやるエンゼルメイクとは別に葬儀会社に「湯灌」などを頼めば、有料の付加サービスとしてやってくれるでしょう。納棺師と湯灌師の違いの厳密な規定はないそうですが、そうした人たちもある意味"おくりびと"であるし(最近若い女性の湯灌師が増えているという)、エンゼルメイクする看護師もその仕事をしている時は、広い意味での"おくりびと"であると言えるのではないでしょうか。

木村家の人びとド.jpg 滝田洋二郎監督は元々は新東宝で成人映画を撮っていた監督で、初めて一般映画の監督を務めた「コミック雑誌なんかいらない!」('86年/ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)でメジャーになった人です。個人的には、鹿賀丈史、桃井かおり主演の夫婦で金儲けに精を出す家族を描いた「木村家の人びと」('88年/ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)を最初「木村家の人びと」0.jpgに観て、部分部分は面白いものの、全体として何が言いたいのかよく分からなかったという感じでした(ぶっ飛び度で言えば、石井聰互監督の「逆噴射家族」('84年/ATG)の方が上)。その後、東野自圭吾原作の「秘密」('99年/東宝)、浅田次郎原作の「壬生義士伝」('03年/松竹)を観て、比較的原作に沿って作る"職人肌"の監督だなあと思いました(結果として、映画に対する評価が、原作に対する好き嫌いにほぼ対応したものとなった。「木村家の人びと」の原作は未読)。「おくりびと」はいい作品だと思いますが、このタイプの監督が米アカデミー賞の表彰式の舞台に立つのは、やや違和感がなくもないです。菊池寛賞も、「本木雅弘と映画製作スタッフ」が受賞対象者となっていて、その辺りが妥当な線かもしれません(まあ、アカデミー外国語映画賞も監督にではなく作品に与えられた賞なのだが)。因みに、「木村家の人びと」はビデオが絶版になった後DVD化されておらず[2017年現在]、ファンがDVD化を待望しているようですが、個人的にはどうしても観たいというほどでもありません。
   
おくりびとes.jpg「おくりびと」●制作年:2009年●監督:滝田洋二郎●製作:中沢敏明/渡井敏久●脚本:小山薫堂●撮影:浜田毅●音楽:久石譲●時間:130分●出演:本木雅弘/広末涼子/山崎努/杉本哲太/峰岸徹/余貴美子/吉行和子/笹野高史/山田辰夫/橘ユキコ/飯森範親/橘ゆかり/石田太郎/岸博之/大谷亮介/諏訪太郎/星野光代/小柳友貴美/飯塚百花/宮田早苗/白井小百合●公開:2008/09●配給:松竹●最初に観た場所:丸の内ピカデリー3(09-03-12)(評価:★★★★☆)

丸の内ルーブル.jpg丸の内ピカデリー3.jpg丸の内ピカデリー3ド.jpg丸の内ブラゼール4.jpg丸の内ブラゼールes.jpg丸の内松竹(丸の内ピカデリー3) 1987年10月3日「有楽町マリオン」新館5階に「丸の内松竹」として、同館7階「丸の内ルーブル」とともにオープ「丸の内ピカデリー ドルビーシネマ」.jpgン、1996年6月12日~「丸の内ブラゼール」、2008年12月1日~「丸の内ピカデリー3」) (「丸の内ルーブル」は2014年8月3日閉館) 2018(平成30)年12月2日休館、2019(令和元)年10月4日~ドルビーシネマ専用劇場「丸の内ピカデリー ドルビーシネマ」として再オープン。
「サロンパス ルーブル丸の内/丸の内ブラゼール」(2008)
 

木村家の人びと vhs.jpg木村家の人びとf5.jpg「木村家の人びと」●制作年:1988年●監督:滝田洋二郎●脚本:一色伸幸●撮影:志賀葉一●音楽:大野克夫●原作:谷俊彦●時間:113分●出演:鹿賀丈史/桃井かおり/岩崎ひろみ/伊崎充則/柄本明/木内みどり/風見章子/小西博之/清水ミチ木村家の人びと4.jpg「木村家の人びと」柄本明.jpgコ/中野慎/加藤嘉/木田三千雄/奥村公延/多々良純/露原千草/辻伊万里/今井和子/酒井敏也/鳥越マリ/池島ゆたか/上田耕一/江森陽弘/津村鷹志/竹中木村家の人びと 加藤嘉_0.jpg直人/螢雪次朗/ルパン鈴木/山口晃史/三輝みきこ/小林憲二/野坂きいち/江崎和代/橘雪子/ベンガル●劇場公開:1988/05●配給:東宝 (評価★★★)

秘密DVD2.jpg映画 秘密2.jpg「秘密」●制作年:1999年●監督:滝田洋二郎●製作:児玉守弘/田上節郎/進藤淳一●脚本:斉藤ひろし●撮影:栢野直樹●音楽:宇崎竜童●原作:東野圭吾●時間:119分●出演:広末涼子/小林薫/岸本加世子/金子賢/石田ゆり子/伊藤英明/大杉漣/山谷初男/篠原ともえ/柴田理恵/斉藤暁/螢雪次朗/國村隼/徳井優/並樹史朗/浅見れいな/柴田秀一●劇場公開:1999/09●配給:東宝 (評価★★★☆)

壬生義士伝(DVD).jpg壬生義士伝m.jpg「壬生義士伝」●制作年:2003年●監督:滝田洋二郎●製作:松竹/テレビ東京/テレビ大阪/電通/衛星劇場●脚本:中島丈博●撮影:浜田毅●音楽:久石譲●時間:137分●出演:中井貴一/佐藤浩市/夏川結衣/中谷美紀/山田辰夫/三宅裕司/塩見三省/野村祐人/堺雅人/斎藤歩/比留間由哲/神田山陽/堀部圭亮/津田寛治/加瀬亮/木下ほうか/村田雄浩/伊藤淳史/藤間宇宙/大平奈津美●公開:2003/01●配給:東宝 (評価:★★☆)

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東野圭吾原作。大掛かりは大掛かりだったけれど、やはりやや大味に。

天空の蜂ps.jpg 天空の蜂 .jpg 天空の蜂 dvd.jpg   天空の蜂  i.jpg
映画「天空の蜂」イメージポスター/映画「天空の蜂」ポスター/「天空の蜂 [DVD]」/東野 圭吾『天空の蜂』単行本

天空の蜂G.jpg 1995年8月8日、最新鋭の超巨大ヘリ《ビッグB》が、突然動き出し、子供を一人乗せたまま、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止した。遠隔操縦によるハイジャックという手口を使った犯人は〈天空の蜂〉と名乗り、"全国すべての原発の破棄"を要求、従わなければ、大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に墜落させると宣言する。機内の子供の父天空の 蜂W1.jpg親であり《ビッグB》を開発したヘリ設計士・湯原(江口洋介)と、原子力発電所の設計士・三島(本木雅弘)は、上空に取り残された子供の救出と、日本消滅の危機を止めるべく奔走するが、政府は原発破棄を回避しようとする。燃料が尽きてヘリが墜落するまで残された時間は8時間―。その頃愛天空の蜂C.jpg知県では、《ビッグB》と原発を開発した錦重工業本社に、家宅捜索が入っていた。総務課に勤める三島の恋人・赤嶺(仲間由紀恵)は、周囲に捜査員たちが押し寄せる中、密かに恋人の無事を祈る。一方、事件現場付近で捜査にあたる刑事たちは、《ビッグB》を奪ったと思われる謎の男・雑賀(綾野剛)の行方を追う―。

 原作は東野圭吾が20年前に発表した書き下ろし長編で('95年講談社刊)で、作者にとっては最も思い入れのある作品であるとのこと。これまで映画化されていなかったのは、映像化が困難であったためとのことですが、まあ、それだけスケールの大きな作品であることには違いないのかも。その分、大味なのではないかと勝手に決め込んで、こういうのは原作を読み返すより映画を観てしまった方がよいのではないかと思い、先に劇場に行きました。

 CGも使ってはいますが(こうした作品はもうCG無しでは作れないみたいになっているなあ)、大掛かりは大掛かりでした。その分逆に、東野圭吾らしい捻ったプロットは見られないのかなあと思ったら、一応、ストーリー上はありました。ただ、この"二重構造の犯人"はちょっと天空の蜂 ehara.jpg天空の蜂 motoki.jpg分かりにくかったように思われ、138分は少し長く感じられたでしょうか。全部アクションシーンで撮るわけにもいかないでしょうが、ドラマ部分がちょっとダルく感じられ、むしろ、三島と雑賀の繋がりなど、プロットに関わる部分をもっとしっかり描いて欲しかったように思います(結果として、やはり、やや大味だったというところか)。

天空の蜂 amino.jpg天空の蜂 D1.jpg 江口洋介、本木雅弘は初共演ということで、まずまずの"競演"ぶりでしたが、ややオーバーアクション気味のところもあって、逆にイマイチ胸に響かない面も。更には、綾野剛、仲間由紀恵などの演技も何となくワンパターンに感じられ、むしろ、刑事役の手塚とおる、落合モトキなどの"脇の脇"の演技が光ったかも。ラストで、湯原の子供が自衛官(向井理)になっていて2011年3月13日、東日本大震災の2日後に現地で支援活動任務に服しているという設定は、当然のことながら原作には天空の蜂E.jpg天空の蜂T70.jpg天空の蜂 向井.jpgありません。自衛隊のリクルートも兼ねたシーンかと思いきや、自衛隊はこの映画には協力していないようです。自衛隊どころか、川崎重工業 富士重工業といった国産ヘリコプター・メーカーも協力しておらず(協力はエアバス社)、やはり、国からの受注企業は原発は危険というイメージが伴う作品には協力出来ないのでしょう(原発で頑張っている人も描いているのだけど)。

天空の蜂 ビッグB.jpg ラスト近くで、仮に《ビッグB》が原子炉建屋に墜落して建屋が壊れても格納容器までは壊れないだろうという犯人の読みが明かされていたように思いましたが(その理屈に従って、緊急時の格納容器内への避難を提案している場面が既にあった)、むしろ、使用済み核燃料庫の上に墜落する方が危険であるならば、ヘリ落下の際にリモコンで位置をずらすのも、落下に要する時間が数秒しかないということからみて、それなりに危険なのではないでしょうか。

 また、超巨大ヘリの後部ハッチが、缶コーヒーの缶と懐中電灯を挟んだだけで閉まらなくなるというのもどうかとか、こういうのって細かい部分にケチをつけ始めると際限が無くなるのかもしれません。

天空の蜂 cast.jpg「天空の蜂」●制作年:2014年●監督:堤幸彦●製作:大角正/木下直哉/古川公平/坂本健/宮本直人●脚本:楠野一郎●撮影:唐沢悟●音楽:リチャード・プリン●原作:東野天空の蜂 文庫.jpg圭吾「天空の蜂」●時間:138分●出演:江口洋介/元木雅弘/仲間由紀恵/綾野剛/國村隼/柄本明/石橋蓮司/竹中直人/手塚とおる/松島花/石橋けい/落合モトキ/向井理/佐藤二朗/光石研/やべきょうすけ/永瀬匡●公開:2015/09●配給:松竹●最初に観た場所:シネマサンシャイン池袋(15-09-22)(評価:★★★)天空の蜂 新装版
  
           
シネマサンシャインes.jpgサンシャインシネマ池袋47.jpg池袋シネマサンシャイン 1985年7月6日池袋サンシャイン60通りに「池袋シネマサンシャイン」オープン、2009年5月1日「シネマサンシャイン池袋」に改称(6館体制)。2019(令和元)年7月12日閉館
サンシャインシネマ池袋 tizu.png1番館:234席
2番館:176席
3番館:135席
4番館:264席
5番館:409席
6番館:139席

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すっかりハマってしまった「シコふんじゃった。」。取材がしっかりしている。
シコふんじゃった。.jpg シコふんじゃった 6.jpg Shall We ダンス?.jpg Shall We ダンス22.jpg
シコふんじゃった。 [DVD]」本木雅弘 「Shall We ダンス? [DVD]」役所広司/草刈民代Shall we ダンス? [DVD]

シコふんじゃった2.jpgシコふんじゃった.jpg 就職先も決まっていた教立大学4年の秋平(本木雅弘)は、ある日、卒論指導教授の穴山(柄本明)に呼び出され、授業に一度も出席しなかったことを理由に、卒業と引き換えに穴山が顧問をする相撲部の試合に出るよう頼まれる―。

 「シコふんじゃった。」('91年/東宝)は、ひょんなことから相撲部に入ることになった大学生の奮闘を描いたもので、スポ根モノとして良くできている"佳作"―と言うより、観ていてすっかり嵌ってしまった自分を振り返れば、個人的には"大傑作"だったということになるでしょうか(第70回「キネマ旬報ベスト・テン」第1位、第47回「毎日映画コンクール 日本映画大賞」、第35回「ブルーリボン賞 作品賞」、第17回「報知映画賞 作品賞」、第5回「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」受賞作品。第16回「日本アカデミー賞」で最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞(周防正行)、最優秀主演男優賞(本木雅弘)、最優秀助演男優賞(竹中直人)の5部門制覇)。

シコふんじゃった8.jpgシコふんじゃった2.jpg 何故そんなに面白かったのかを考えるに、劇画チックではあるけれど、スポ根モノとしては極めてオーソドックな展開で、観る側に充分なカタルシス効果を与えると共に、きっちりした取材の跡が随所に窺えること、何よりもそのことが大きな理由ではないかと思いました。

 大学相撲部(それも弱小の)という特殊な世界に関して、その背景が細部までしっかり描き込まれているから、"8年生"部員を演じる竹中直人のオーバーアクション気味の演技も、線画のしっかりしたマンガのようにすっと受け容れることが出来、楽しめたのかも知れません。

Shall We ダンス.jpg 同じく周防監督の「Shall We ダンス?」('96年/東宝)も、充分な取材の跡が感じられ、内容的にみても、多くの賞を受賞し(第70回「キネマ旬報ベスト・テン」第1位作品)、ハリウッド映画としてリメイクされるぐらいですからそう悪くはないのですが、この監督のカタルシス効果の編成方法が大体見えてきてしまったというのはある...。

 それと、「シコふんじゃった。」で竹中直人が演じていたコミカルな部分を、今度は竹中直人と渡辺えり子(最近、美輪明宏の助言で「渡辺えり」に改名した)の2人が演じていて、片や役所広司と草刈民世のストイックなメインストーリーがあるにしても、2人分に増えたオーバーアクション(加えて竹中直人分は「シコふんじゃった。」の時より増幅されている)にはやや辟易させられました。

Shall We ダンス.jpg 但し、草刈民世を(演技的には無理させないで)キレイに撮っているなあという感じはして、外国の映画監督でもそうですが、ヒロインの女優が監督の恋愛対象となっている時は、女優自身の魅力をよく引き出しているということが言えるのでは。

 キャリアの初期に、ユニークで面白い、或いは骨太でパワフルな作品を撮っていた監督が、メジャーになってから、大作ながらもその人らしさの見えない、誰が監督しても同じようなつまらない作品ばかり撮っているというケースは多いけれども、この監督は、綿密な取材を通しての自分なりの映画づくりの路線を堅持するタイプに思え、引き続き期待が持てました。(渡辺えり子/竹中直人

Shall We ダンス 01.jpg 因みに「Shall we ダンス?」は、第20回「日本アカデミー賞」において史上最多の13冠を獲得しています。主要7部門に限っても、最優秀作品賞、 最優秀監督賞、 最優秀脚本賞(周防正行)、最優秀主演男優賞(役所広司)、最優秀主演女優賞(草刈民代)、最優秀助演男優賞(竹中直人)、最優秀助演女優賞(渡辺えり子)と7冠全て制覇して他の作品の共同受賞さえ許さなかったのは('09年現在)この作品だけです(残り6冠は、音楽・撮影・証明・美術・録音・編集。残るは新人賞や外国作品賞だから、実質完全制覇と言っていい)。「キネマ旬報ベスト・テン」第1位のほか、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「報知映画賞 作品賞」「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」も受賞しています。「シコふんじゃった。」がこれらに加えて受賞した「ブルーリボン賞 作品賞」は受賞していませんが、英「ロンドン映画批評家協会賞 作品賞」、米「ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 外国語映画賞」など、海外で賞を受賞しています(2004年にアメリカにて「Shall We Dance?」のタイトルで、リチャード・ギア、ジェニファー・ロペス、スーザン・サランドンらが出演するアメリカ版のリメイク作品が製作された)

「シコふんじゃった」0「.jpgシコふんじゃった9.jpg「シコふんじゃった。」●制作年:1991年●監督・脚本:周防正行●撮影:栢野直樹●音楽:周防義和/おおたか静流●時間:105分●出演:本木雅弘/清水美砂/柄本明竹中直人/水島かおり/田口浩正/六平直政/宝井誠明/ロバート・ホフマン/梅本律子/松田勝/宮坂ひろし/村上冬樹/桜むつ子/片岡五郎/佐藤恒治/みのすけ●公開:1992/01●配給:東宝(評価:★★★★☆
「シコふんじゃった」09.jpg 「シコふんじゃった」柄本2.jpg

Shall We ダンスes.jpg「Shall We ダンス?」●制作年:1996年●監督・脚本:周防正行●製作:徳間康快●撮影:栢野直樹●音楽:周防義和/おおたか静流●時間:136分●出演:役所広司/草刈民代/竹中直人/田口浩正/徳井優/宝井誠明/渡辺えり子/柄本明/原日出子/草村礼子/森山周一郎/本木雅弘/清水美砂/上田耕一/宮坂ひろし/井田州彦/田中英和/峰野勝成/片岡五郎/大杉漣/石山雄大/本田博太郎/香川京子/田中陽子/東城亜美枝/中村綾乃/石井トミコ/川村真樹/松阪隆子/馬渕英俚可●公開:1996/01●配給:大映(評価:★★★☆)
(上段)役所広司/草刈民代/竹中直人/渡辺えり子/柄本明
(下段)森山周一郎/上田耕一/大杉漣/本木雅弘/香川京子
「Shall We ダンス?」.jpg

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