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ゴーシュが「印度の虎狩」を選ぶところが白眉。彼の飢えは満たされていない?

宮沢賢治全集〈7〉2.jpg宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎2.jpg銀河鉄道の夜 童話集 他十四編.jpg セロ弾きのゴーシュ 1982.jpg
宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか (ちくま文庫)(「ちくま文庫」1985/12/1 創刊ラインナップの1冊)カバー画:安野光雅/『童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇 (岩波文庫)』高畑 勲「セロ弾きのゴーシュ [DVD]

 町の活動写真館でチェロを弾く係のゴーシュは、楽団で一番下手なチェリストだった。一週間後に演奏会が控えているため、楽長はピリピリしている。ゴーシュは家に帰って猛特訓するが、深夜になるとなぜか、猫、かっこう、狸、野鼠がといった小動物たちが毎日変わって彼の家にやってきた。たとえば野鼠が来た理由は、ゴーシュのチェロを聞くと病気が治るからだという。そのことを知ると、彼は病気を治すために曲を弾いてやる。演奏会当日、彼の楽団は大いに成功し、アンコールになってゴーシュ一人が舞台に引っ張り出される。彼はやけくそになって曲を弾き、素早く楽屋に逃げ込むが、みんながゴーシュの演奏を褒め、楽長までも彼の演奏を認めるのだった―。

 宮沢賢治の童話で、これも「風の又三郎」と同じく、賢治が亡くなった翌年の1934(昭和9)年に発表された作品で、「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」と並んで賢治の最もよく知られた作品であると思います。因みに、実際に賢治は農民楽団の実現と自作の詩に曲を付けて演奏することを目指して、1926年にチェロを購入し、練習したそうで、そのチェロは宮沢賢治記念館館にあるそうです(賢治自身もチェロを弾くのははあまり上手くなかったらしい)。

高畑勲監督「セロ弾きのゴーシュ」('82年)/「セロ弾きのゴーシュ」('53年)
セロ弾きのゴーシュ1982年.jpg「セロ弾きのゴーシュ」1953年.jpg 映像化作品では、高畑勲(1935-2018/82歳没)監督が自主製作し、オープロダクションが5年の歳月をかけて完成させた「セロ弾きのゴーシュ」('82年/63分)があります。また、それ以前には、田中喜次監督の影絵アニメーション「セロひきのゴーシュ」('49年/19分)、森永健次郎、川尻泰司の共同監督の人形劇をカメラで撮影して制作され「日本で最初の長編・総天然色・人形劇・音楽映画」と宣伝された「セロ弾きのゴーシュ」('53年/45分)、神保まつえ監督の学研の人形アニメーション作品「セロひきのゴーシュ」('63年/19分)があり(学研が、昭和30年代に学校や地域で、アートアニメーションとして映像教育を行っていたころの代表作になる)、高畑勲作品以降では学研アニメの「セロひきのゴーシュ」('98年/20分)がありますが、「風のセロひきのゴーシュ 63.jpgセロひきゴーシュ アニメ 学研.jpg又三郎」がこれまでの5度の映像化のうち3度が実写映画化、2度がアニメ映画化なのに対し、こちらは動物が出てくることもあってか、5度の映像化のすべてが通常アニメまたは人形劇アニメとなっています。
神保まつえ監督「セロひきのゴーシュ」('63年)/学研アニメ「セロひきのゴーシュ」('98年)

セロ弾きのゴーシュ図3.jpg 高畑勲監督の「セロ弾きのゴーシュ」は、高畑監督・脚本作品として時期的には「赤毛のアン」('79年)や「じゃりン子チエ」('81年)の次にくるものですが、それら以前の'75年から制作にとりかかっており、背景の描写などは飛躍的に精緻なものとなっています。主人公のゴーシュは、宮沢賢治の原作では、ウダツのあがらない中年男性ともとれますが、映画では18歳ぐらいの若者として描かれています。ただし、このことは、それまでのアニメ作品もそうであるし、賢治作品を描いて最高の画家と言われた茂田井武の『セロひきのゴーシュ』('56年/福音館書店)などの頃から賢治は若者として描かれていて、それを引き継いだともとれます。
高畑勲監督「セロ弾きのゴーシュ」('82年)

高畑 勲.jpg 水車小屋に住んでいるゴーシュのところに夜ごと現れる様々な動物たち―それらのキャラクターに細やかな演技をさせてデティールに凝っているのが高畑勲のアニメ演出の特徴だったと思いますが、ところで、ゴーシュの家を夜ごと日替わりで訪れた動物たちにはどのような意味が込められていたのか、彼らはゴーシュに何をもたらしたのかということについては、いろいろ議論になっているのではないでしょうか。

高畑勲「セロ弾きのゴーシュ」猫.png 最初の晩に訪れた猫から、ゴーシュにトロメライ(トロイメライ)を演奏してくれと頼まれますが、不機嫌な彼はサディズティックな気持ちから「印度の虎狩」という曲を弾きます。これを聴いて猫はのたうち回りますが、ゴーシュが「印度の虎狩」という曲を選んで猫に意地悪したというより、ゴーシュの技量が劣っていて、聞くに堪えないものであることを象徴しているようにとれます。

セロ弾きのゴーシュ かっこう.png 次の晩に家に来たのはかっこうで、最初はこの音楽を教えてほしいと頼み込むかっこうとも生意気だと言い争いをしますが、今度はゴーシュは猫の時ほど敵対的な態度ではなく、かっこうと音程の練習をすることで、自身の音感を鍛え上げていきます。また、かっこうとの交流から、ゴーシュは少しづつ相手の言うことを聞き入れるようになっていきます。それでも、最後ゴーシュは癇癪を起してしまい、かっこうは頭を硝子にぶつけたりしながら、逃げるように去っていきます。

セロ弾きのゴーシュ tanuki.png 三日目の晩に来たのは狸で、狸は「愉快な馬車屋」という曲を一緒に演奏しようとゴーシュに言い、彼はその申し出を受け入れます。これだけでも、猫のときと比べると大きな変化ですが、小太鼓を演奏する狸とともに、二人はセッションをします。ここではゴーシュはリズム感を鍛えます。

セロ弾きのゴーシュ nezumi.png そして、最後の晩に来たのがは野鼠の親子です、ゴーシュは野鼠のお母さんから、子鼠の病気を治して欲しいと頼まれてその訳を聞きくと、ゴーシュのチェロを聞くと病気が治るからだといいいます。ゴーシュは納得すると、子鼠のためにチェロを弾きます。ここでは明らかに、ゴーシュが、自分のためではなく他人のために演奏するようになることを表しています。

 以上、ざっと振り返ると、猫とはお互い喧嘩別れみたいになったものの、かっこうからは音程(&相手の言うことを聞き入れること)を学び、狸からはリズム(&相手の申し出を受け入れること)を学び、野鼠からは演奏の「こころ」(自分のためではなく他人のために演奏すること)を学んだということでしょうか。

 この作品の白眉は、ゴーシュが最後アンコールに応えるために(このアンコールはゴーシュ一人に対してではなく楽団の演奏に対してだったが)、楽長に「何か出て弾いてやってくれ」と言われて、なんで自分がという「ばかにするな」との思いから、その猫を苦しめたのと同じ曲である「印度の虎狩」を選んで弾いたところ、観客を魅了してしまうところかと思います。

 ただ、当のゴーシュにしてみれば、やけになって弾いた曲がまさか観客を魅了したとの意識はがなく、「こんやは、変な晩だなあ」ぐらいの感覚であり、楽長や楽団の仲間から「よかった」と褒められてもそれに対する彼の気持ちはどこにも書かれておらず、動物たちとの交流を通して自分の技量が上達したのだという意識がないらしいところが可笑しいです。

 ゴーシュは家に帰ってから、かっこうには怒って「あのときすまなかったなあ」と思います。でも、もし反省するのであれば、最初の猫とのことをもっと反省しなければならないのでしょうが、そこまではいっていないところが変に中途半端で、これまた可笑しいいのと同時に興味深いです。

 ゴーシュが水を飲む場面が、彼の満たされない気持ちを表しているのではないかと考える見方もあるようです。そうすると、最後に演奏を無事終えて帰ってきた彼は、いつも通り水をかぶがぶ飲んでおり(作中で4回目)、結局、彼の精神的な飢えは満たされていないともとれることになるかと思います(アニメではこの部分は表現せず、ゴーシュは人間的に成長してすっかり生まれ変わったように見える)。

 このあたり、どうなのでしょうか。「銀河鉄道の夜」などは初期第一次稿から初期第三次稿までが残っているし(途中、随分と変わっている)、「風の又三郎」などは、同じく賢治の死後に発表された作品であっても、1931(昭和6)年から1933(昭和8)年の間に成ったものとされており、一方、この「セロ弾きのゴーシュ」は、これが最終稿かどうかもまったくわからないです。ただ、賢治は「銀河鉄道の夜」「ポラーノの広場」など、中編作品を改稿する傾向があり、この「セロ弾きのゴーシュ」は短編なので、この曖昧さを残した結末が最終稿なのかもしれません(ある意味、カタルシス効果を選んだアニメに対して、原作はアンチカタルシスとも言える)。

「セロ弾きのゴーシュ」('82年)01.jpg「セロ弾きのゴーシュ」('82年)02.jpg「セロ弾きのゴーシュ」●制作年:1982年●監督・脚本:高畑勲●企画:小松原一男●製作:村田耕一●原画:才田俊次●美術:椋尾篁●音楽:間宮芳生( 「星めぐりの歌」(作詞・作曲:宮沢賢治 歌:児童合唱団トマト))●制作:オープロダクション●原作:宮澤賢治●時間:63分●声の出演:佐々木秀樹/雨森雅司/白石冬美/肝付兼太/高橋和枝/横沢啓子/高村章子/横沢啓子/千葉順二/槐柳二/矢田耕司/三橋洋一/峰あつ子/横尾三郎●公開:1982/01●配給:オープロダクション(後ににっかつ)(評価:★★★★)

【1951年文庫化・1966年文庫改訂[岩波文庫(『童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』)]/1957年文庫化[角川文庫(『セロ弾きのゴーシュ―他十篇』)/1957年再文庫化[岩波少年文庫(『セロ弾きのゴーシュ』)/1969年再文庫化[角川文庫(『セロ弾きのゴーシュ』)/1985年再文庫化[ちくま文庫(『宮沢賢治全集〈7〉』)]/1989年再文庫化[新潮文庫(『新編銀河鉄道の夜』)]/1998年再文庫化[角川mini文庫(『セロ弾きのゴーシュ』)/2009年再文庫化[PHP文庫(『銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュ』)]】

童話集 風の又三郎 他十八篇.jpg童話集 風の又三郎 他十八篇 (岩波文庫)
■収録作品(十九篇)
風の又三郎 どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ......
セロひきのゴーシュ ゴーシュは町の活動写真館でセロをひく係りでした.けれども......
雪渡り 雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり,空も冷たいなめらかな......
蛙のゴム靴 松の木や楢の林の下を,深い堰が流れておりました.岸には......
カイロ団長 あるとき,三十匹のあまがえるがいっしょにおもしろく仕事を......
猫の事務所 軽便鉄道の停車場の近くに,猫の第六事務所がありました.......
ありときのこ 苔いちめんに,霧がぽしゃぽしゃ降って,蟻の歩哨は鉄の帽子......
やまなし 小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です.......
十月の末 嘉っこは小さなわらじをはいて,赤いげんこを二つ顔の前に......
鹿踊りのはじまり そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから,夕日は赤く......
狼森と笊森,盗森 小岩井農場の北に,黒い松の森が四つあります.いちばん南が......
ざしき童子のはなし ぼくらのほうの,ざしき童子のはなしです. あかるいひるま......
とっこべとら子 おとら狐のはなしは,どなたもよくご存じでしょう. おとら狐にも......
水仙月の四日 雪婆んごは遠くへ出かけておりました. 猫のような耳をもち......
山男の四月 山男は金色の目を皿のようにし,せなかをかがめて,西根山の......
祭りの晩 山の神の祭りの晩でした. 亮二は新しい水色のしごきをしめて......
なめとこ山の熊 なめとこ山の熊のことならおもしろい.なめとこ山は大きな山だ......
虔十公園林 虔十はいつも縄の帯をしめて,わらって森の中や畑の間をゆっくり......
グスコープドリの伝記 グスコープドリは,イーハトーヴの大きな森の中に生まれました.....

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原作より訓話的かつ現実的(解説的)。大人の鑑賞にも耐え得る作品にするための戦略か。

風の又三郎 vhs.jpg風の又三郎 映画1.jpg風の又三郎 片山明彦.jpg 童話集  風の又三郎.bmp
「風の又三郎」'40年 日活 /片山明彦(又三郎) 『童話集 風の又三郎 他十八篇 (岩波文庫)

風の又三郎 [VHS]」日活文芸コレクション(1997)

風の又三郎 1940vhs.jpg 北海道から東北の山間の小学校へ転校してきた5年生の少年・高田三郎(片山明彦)に、地元の子供達は、転校してきた日が二百十日であったため「風の又三郎」という綽名を付ける。新参者に興味を示し、一緒に遊んだりしながらも距離を置く子供達―ある日、ガキ大将の一郎(大泉滉)が相撲を挑み、三郎少年は投げ飛ばされてしまう。調子に乗ったガキ大将が「くやしかったら風を呼んでみろ」とからかった直後、本当に大風が吹き、台風が来襲する。そして、その翌日、彼は別の学校へ転校していったため、子供達は少年が本物の「風の又三郎」だったのだと確信する―。

『風の又三郎』2.jpg  宮澤賢治(1896‐1933)による原作は、作者没後の1934(昭和9)年に発表されたもので、大正年中に書いたものをコラージュして1931(昭和6)年から1933(昭和8)年の間に成ったものとされており、これまで何度か映画化されていますが、最初に映画化された島耕二(1901‐1986)監督のこの作品が、最も原作の雰囲気を伝えているとされているようです。

『風の又三郎』1.jpg風の又三郎1940年.jpg 前半部分は野山を廻って遊ぶ子供達を生き生きと描いた野外シーンが殆どで、そうした中、子供達は三郎(片山明彦)との距離を狭めたり(子供達が三郎少年を守ろうとする場面もある)、また遠ざけたりを繰り返します。

風の又三郎 1940.bmp 最初、教師が詰襟っぽい制服姿で出てきたので、時代設定を映画制作時の昭和15年に置き換えたのかと思いましたが、そうではなく原作通りでした(学校も藁ぶき屋根! 但し「分校」なのだが)。洋服の三郎少年に対し地元の子供達は着物姿であるため、映像で観るとよりその対比が際立ち、冒頭で既に三郎少年と子供達は一つになることはないような予感がしてしまいました。実際に原作も、子供達が自らのコミュニティ(「地元の子供」という1つの村社会)で結束して部外者を排除したプロセスを描風の又三郎ro.jpgいたととれなくもありません(その場合「又三郎」そのものに"魔的"な意味合いが加味される)。

 映画でも、「台風」が子供の成長の通過儀礼としての象徴的役割を果たしているように思いましたが、"魔的"な体験をくぐり抜けた(三郎少年と同学年の嘉助(星野和正)については特にそのことが言える)ことと併せて、三郎少年が去った後の子供達の「もっと一緒に遊びたかった」という言葉の中に自責の念のようなものも感じられ、その分、"大人になった"という捉え方もできるかもしれません(ある意味、訓話的。まさか、疎開してきた子とは仲良くしましょうという意味ではないと思うが-この映画は太平洋戦争勃発の前年に作られているわけだし)。

 映像技術的には、子供達が牧場で悪戯して馬群が野を駆けだすシーンは圧巻、モノクロ映画の良さが滲み風の又三郎d6.jpg風の又三郎L.jpg風の又三郎Z.jpg出ています。一方で、嘉助が霧の中で迷って昏倒した際に、三郎少年がガラスのマントを着て空を飛ぶ姿を見る場面で、「ガラスのマント」が濡れたビニールにしか見えなかったりもしますが、とにかく特撮からアニメまで駆使して頑張ってるなあという感じ。

風の又三郎 (新潮文庫.jpg宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎.jpg【映画チラシ】風の又三郎島耕二注文の多い料理.jpg 最も原作と異なると感じたのは、原作は、三郎少年は「風の又三郎」だったかも知れない的な、子供達の心象に沿った捉え方も出来る終わり方をしていますが、映画では、例えば、「風を呼んでみろ」と言われた時に三郎少年がちらっと空模様を窺ったりする演出があるなど(『三国志』吉川英治版「諸葛孔明」か)、彼が「風の又三郎」ではないことをはっきりさせている点でしょうか(言わば単なる頭のいい子に過ぎない)。

新編 風の又三郎 (新潮文庫)』['89年(初版'61年)]/『宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか (ちくま文庫)』(「ちくま文庫」1985/12/1創刊ラインアップ)

 彼が2週間足らずでまた転校していたのも、その地のモリブデン(当時日本の軍用ヘルメット等の素材として需要があった)の鉱脈がさほどのものでなかったことが判明したため鉱山技師の父が次の調査地へ赴任することになったのが理由であることが教師の言葉から解り、賢治は後期作品ほどリアリズムの色彩が濃くなりますが(三郎少年のような垢抜けた子が、こんな田舎の子と接触することになる状況設定としては巧み)、映画は更に現実的(解説的)に作られていると言えるかも。

 そのことと、子供達、とりわけ嘉助が「又三郎」信奉を深めていくこととは別に描いており(最後は一郎(大泉滉)も"信奉者"に巻き込み、この部分はある意味原作に近い)、大人の鑑賞にも耐え得る作品に仕上げながら、子供の夢をも壊さないという1つの戦略かなとも思いました。

 賢治が教え子(沢里武治)に作曲を頼んだが成らなかったという「どっどどどどうど」の唄(ピアニスト・杉原泰蔵による作曲)が聴けます(NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」の野村萬斎のとは随分違うなあ)。

風の又三郎 映画2.jpg『風の又三郎』.jpg大泉 晃.gif 三郎少年を演じた片山明彦(1926-2014/享年86)は島耕二監督の実子、子供達のリーダーで学校で唯一の6年生の一郎を演じているのは大泉滉(1925‐1998/享年73)、そのほか、嘉助の姉(原作には出てこない)役で風見章子(1921‐2016/享年95)が出演しています。

左:大泉滉(一郎)/右:片山明彦(三郎)

 1957(昭和32)年に村山新治監督、1989(平成元)年に伊藤俊也監督によりリメイク作品が撮られています。

風の又三郎y8sA.jpg神保町シアター.jpg「風の又三郎」●制作年:1940年●監督:島耕二●脚本:永見隆二/池慎太郎●撮影:相坂操一●音楽:杉原泰蔵●時間:98分●出演:片山明彦/星野和正/大泉滉/風見章子/中田弘二/北竜二/林寛/見明凡太郎/西島悌四朗/飛田喜佐夫/小泉忠/久見京子/中島利夫/南沢昌平/杉俊成/大坪政俊/河合英一/田中康子/南沢すみ子/川島笑子/美野礼子●公開:1940/10●配給:日活●最初に観た場所:神保町シアター(10-07-24)(評価:★★★☆) 神保町シアター 2007(平成19)年7月14日オープン

片山明彦

「風の又三郎 ガラスのマント」(1989年/監督:伊藤俊也)
「風の又三郎」1940年 日活.jpg 風の又三郎 [VHS]500_.jpg

童話集 風の又三郎 他十八篇.jpg童話集 風の又三郎 他十八篇 (岩波文庫)
■収録作品(十九篇)
風の又三郎 どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ......
セロひきのゴーシュ ゴーシュは町の活動写真館でセロをひく係りでした.けれども......
雪渡り 雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり,空も冷たいなめらかな......
蛙のゴム靴 松の木や楢の林の下を,深い堰が流れておりました.岸には......
カイロ団長 あるとき,三十匹のあまがえるがいっしょにおもしろく仕事を......
猫の事務所 軽便鉄道の停車場の近くに,猫の第六事務所がありました.......
ありときのこ 苔いちめんに,霧がぽしゃぽしゃ降って,蟻の歩哨は鉄の帽子......
やまなし 小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です.......
十月の末 嘉っこは小さなわらじをはいて,赤いげんこを二つ顔の前に......
鹿踊りのはじまり そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから,夕日は赤く......
狼森と笊森,盗森 小岩井農場の北に,黒い松の森が四つあります.いちばん南が......
ざしき童子のはなし ぼくらのほうの,ざしき童子のはなしです. あかるいひるま......
とっこべとら子 おとら狐のはなしは,どなたもよくご存じでしょう. おとら狐にも......
水仙月の四日 雪婆んごは遠くへ出かけておりました. 猫のような耳をもち......
山男の四月 山男は金色の目を皿のようにし,せなかをかがめて,西根山の......
祭りの晩 山の神の祭りの晩でした. 亮二は新しい水色のしごきをしめて......
なめとこ山の熊 なめとこ山の熊のことならおもしろい.なめとこ山は大きな山だ......
虔十公園林 虔十はいつも縄の帯をしめて,わらって森の中や畑の間をゆっくり......
グスコープドリの伝記 グスコープドリは,イーハトーヴの大きな森の中に生まれました......

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宮沢賢治の集大成であり、読めば読むほど謎に満ちた作品。

銀河鉄道の夜  s16 新潮社.jpg銀河鉄道の夜 童話集 他十四編.jpg  新編 銀河鉄道の夜.jpg 新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫).jpg オーディオブック(CD) 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」.png
童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』岩波文庫/『新編銀河鉄道の夜』新潮文庫 [旧版/2009年限定カバー版] アイオーディオブック(CD) 「銀河鉄道の夜」
『銀河鉄道の夜』1941(昭和16)年新潮社
新潮文庫2018年プレミアムカバー宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか (ちくま文庫)』(「ちくま文庫」1985/12/1 創刊ラインアップ)カバー画:安野光雅
新潮文庫 プレミアムカバー 2018 銀河鉄道の夜.jpg宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎.jpg 1924(大正13)年頃に初稿が成ったとされる宮沢賢治(1896‐1933)の「銀河鉄道の夜」は、37歳で亡くなった彼の晩年まで改稿が重ねられ、完成までに10年位かかっていることになります("生前未発表"のため、これで完成しているのかどうかもよくわからないという)。因みに、ちくま文庫版『宮沢賢治全集〈7〉―銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか』には、「銀河鉄道の夜」の初期第一次稿から初期第三次稿までが(逸失部分があって全部ではないが)収録されていますが、途中、随分と変わっていることが分かります。

 最後(第4稿)の頃には既に病臥と一時回復を繰り返す生活だったわけですが、研ぎ澄まされた感性、みずみずしい叙情、達観した宗教観が窺える一方、現実と幻想の巧妙なバランスと融合ぶり(完全な幻想物語だった初稿に比べ、最終稿は「授業」「活版所」など"現実"部分の比重が大きくなった)や、幅広い自然科学の事象の表象的用い方などに理知的なものが感じられ、賢治の集大成と呼ぶにふさわしい作品だと思います。

 カムパネルラとジョバンニのシンクロニティ(共時性)がモチーフになっていますが、再読してみると、タイタニック号(の乗客であったこと)を思わせる乗客の話から、列車がどういう人を乗せているのかがその時点で察せられ、また、人々の宗教の違いを表している部分があるなど、いろいろと再認識することもありました(因みにタイタニック号が沈没したのは、1912(明治45)年4月15日。作者15歳の時)。

 一方ラストの、息子を今亡くしたばかりのカムパネルラの父が、ジョバンニにかけた言葉の内容など、テーマに深く関わると思われる謎から、ジョバンニの父親の本当の仕事は何かとか、カムパネルラが自らを犠牲にして助けたザネリという子は男の子なのか女の子なのかといったトリビアルな謎まで、新たな謎も浮かんできます。

銀河鉄道の夜 藤城.jpg         銀河鉄道の夜 (大型本).jpg               銀河鉄道の夜 田原.jpg 
藤城清治/影絵と文       東逸子/絵                   田原田鶴子/絵
銀河鉄道の夜 藤城清治.jpg  銀河鉄道の夜 東逸子.jpg  銀河鉄道の夜 田原田鶴子.jpg

 絵本化したものでは、影絵作家の藤城清治氏のもの('82年/講談社)が、文章を小さな子にも読み聞かせできるようにうまくまとめていて、絵の方もさすがという感じ、ただし、完全に"藤城ワールド"という印象も(評価 ★★★☆)。

 原文を生かしたまま絵を入れたものでは、東逸子氏の挿画のもの('93年/くもん出版)がいいかなあという感じで、人物はやや少女マンガみたいだけれど、透明感のある背景は素晴らしい(評価 ★★★★)。

 田原田鶴子氏の油彩画によるもの('00年/偕成社)も美しいし、何と言っても挿入画の点数が多いのが嬉しいですが、一方で、ここまでリアルに描かれると、やはり自分の当初のイメージとはいろいろな点でズレがあるような感じも受けなくもなかったです(評価 ★★★☆)。

銀河鉄道の夜・風の又三郎・ポラーノの広場 (講談社文庫 み 13-1)
銀河鉄道の夜・風の又三郎・ポラーノの広場.jpg 【1951年文庫化・1966年文庫改訂[岩波文庫(『童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』)]/1971年再文庫化[講談社文庫(『銀河鉄道の夜、風の又三郎,ポラーノの広場 ほか3編』)]/1981年再文庫化[旺文社文庫]/1982年再文庫化[ポプラ社文庫]/1985年再文庫化[偕成社文庫]/1985年再文庫化[ちくま文庫(『宮沢賢治全集〈7〉』)]/1989年再文庫化[新潮文庫(『新編銀河鉄道の夜』)]/1990年再文庫化[集英社文庫]/1996年再文庫化[角川文庫]/1996年再文庫化[扶桑社文庫]/2000年再文庫化[岩波児童文庫]/2009年再文庫化[PHP文庫(『銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュ』)]/2011年再文庫化[280円文庫]】


童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇2.jpg童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』岩波文庫
■収録作品(十五篇)
北守将軍と三人兄弟の医者 むかしラユーという首都に,兄弟三人の医者がいた.いちばん上の......
オッペルと象 オッペルときたらたいしたもんだ.稲こき器械の六台も据えつけて......
どんぐりと山猫 おかしなはがきが,ある土曜日の夕がた,一郎のうちにきました.......
蜘蛛となめくじと狸 赤い手の長い蜘蛛と,銀色のなめくじと,顔を洗ったことのない狸が......
ツェねずみ ある古い家の,まっくらな天井裏に,「ツェ」という名前のねずみが......
クねずみ クという名前のねずみがありました.たいへん高慢でそれにそねみ深......
鳥箱先生とフウねずみ あるうちに一つの鳥かごがありました. 鳥かごというよりは鳥箱という方......
注文の多い料理店 二人の若い紳士が,すっかりイギリスの兵隊のかたちをして,ぴかぴか......
からすの北斗七星 つめたいいじの悪い雲が,地べたにすれすれにたれましたので, 野はら......
雁の童子 流沙の南の楊で囲まれた小さな泉で,私は炒った麦粉を水にといて......
二十六夜 旧暦の六月二十四日の晩でした. 北上川の水は黒の寒天よりも......
竜と詩人 竜のチャーナタは洞のなかへさして来る上げ潮からからだをうねり出し......
飢餓陣営 砲弾にて破損せる古き穀倉の内部,からくも全滅を免かれしバナナン軍団......
ビジテリアン大祭 私は昨年九月四日,ニュウファウンドランド島の小さな山村,ヒルティで...
銀河鉄道の夜「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたり......

《読書MEMO》
●「銀河鉄道の夜」...1922(大正11)年頃〜1932(昭和7)年頃執筆

●新潮文庫2018年プレミアムカバー
新潮文庫 プレミアムカバー 2018.png

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