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「21世紀」が「20世紀」の"解題"になってない。大風呂敷、拡げてたたまずの感。編集者が作品に口出しするのも良し悪し。

20世紀少年 全巻.jpg21世紀少年下.jpg21世紀少年 上.jpg20世紀少年22.jpg『20世紀少年 22』
映画「20世紀少年」.jpg『21世紀少年 (上・下)』

 '99(生成11)年から'07(平成19)年まで「ビッグコミックスピリッツ」で連載され、「小学館漫画賞」「講談社漫画賞」「文化庁メディア芸術祭優秀賞」などを受賞した作品。'08年には堤幸彦監督により映画化されました('08年公開は全3部作のうち第1部のみ)。

 ケンヂたちが少年時代に遊びで作った「世紀末預言書」の内容が、成長した彼らに現実となって襲いかかり、ケンジとその仲間たちは地球を救うため立ち上がる―。

 話は、ケンヂ達の少年時代('70年前後)と「血の大晦日」('00年)前後を行き来し、そして「ともだち暦」(2015年)にはいり、最終章では『21世紀少年』と改題されていますが、24巻で一つの作品と見てよいものです。

プロフェッショナル仕事の流儀 0701.jpg ストーリーテラーらしい複雑な物語構成と、世界制覇を企む「ともだち」とは何者かという〈大きな謎〉で、ぐいぐい読む者を引っぱっていく力量はさすがで、相変わらず飽きさせません。ところが、気宇壮大であることは結構なのですが、「21世紀少年」と改題までされた結末部分が、実際の"解題"とはなっておらず、「大風呂敷、拡げてたたまず」といった感じで終わってしまっていて、『MONSTER』の読後感のようなカタルシスは得られませんでした。

漫画家・浦沢直樹 氏 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」('07年1月18日放送)

 NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に、'07年1月に作者・浦沢氏が、11月には漫画原作者で浦沢作品の編集者でもある長崎尚志氏が出演していましたが(両方の放送を見ると、長崎氏の浦沢作品に対する関与の度合いの大きさがわかる)、長崎氏に言わせれば、浦沢作品は複雑なことをわかりやすく伝えているのが魅力であり、また、わからないものにこそ人は魅力を感じると―。

長崎尚志.jpg 今回は、「ともだち」とは誰かという謎を敢えて謎のまま残そうとした意図が見てとれますが、これは長崎氏の強い意向ではないだろうかと思いました。ところが、その答えが意外とミエミエなのは、浦沢氏のサービス精神(?)が出てしまったためで、それなのに無理矢理ミステリアスに仕立てようとする、そうした不整合が、ストーリーを収束し切れなかったり、矛盾を生じたりする原因になっているような気もしました。

漫画原作者・長崎尚志 氏 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」('07年11月6日放送)

20世紀少年 一場面.jpg 少年期の壮大な想いや仲間同士の結束・反目というのは、大人になっても無意識に抱えているものかも知れず、それが表面化し再現されるという設定も悪くないのですが、やはり結末が...。

 スティーブン・キングの作品(この人のも、途中から何でもありになってしまうものが多いと思うが)や映画「ターミネーター2」を想起させられる部分がありましたが、読後は、ストーリー(編集者の影響が及ばぶ部分)よりも、作者の自分史に重ねた昭和の時代(万博とか)への郷愁や、昭和漫画(ナショナルキッドとか)に捧げたオマージュの方が印象に残りました(編集者の影響が及ばない部分)。

 編集者が作品に口出しすることの良し悪しを考えさせられます(ましてや、長崎氏は自身が漫画原作者でもある)。良い方向に転ぶ場合が無いとは言えませんが...。

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導入部分がいい。状況設定が昔流行ったST(感受性訓練)と似ている?

11人いる!.jpg11人いる! (小学館文庫)』〔'94年/新編集版〕11人いる!2.jpg11人いる! (フラワーコミックススペシャル 萩尾望都パーフェクトセレクション 3)』('07年/小学館)

 1975(昭和50)年の「別冊少女コミック」9月号~11月号が初出誌。1975(昭和50)年・第21回「小学館漫画賞」(少年少女部門)受賞作(「ポーの一族」と併せて受賞)。

 宇宙の最高学府「宇宙大学」入試の最終試験として、1つの宇宙船につき10人のグループで53日間過ごすという課題が出されるのだが、主人公の乗り込んだ宇宙船には何故か11人いた。爆発事故やウィルス発生などのトラブルが船内で続発するが、それも試験のうちなのか、11人目の誰かの仕業なのかわからない。彼らは互いに疑心暗鬼を抱きながらも、接近し協働して課題をクリアしようとする―。

 小中学生の頃からアシモフ、クラーク、ハインライン、F.ブラウンなどのSFを読みふけったという作者らしい作品で、読者を引き込む状況設定が巧いなあと思いました。

 '60年代から'70年代にかけて企業研修などで流行った「エンカウンターグループ」や「ST(感受性訓練)」などと少し似ていると思いました(しかしあのSTブームは何だったのか。福本博文氏の体験ルポ『心をあやつる男たち』('93年/文芸春秋)によると死者まで出たとか)。このマンガが発表されたのが'75(昭和50)年ですから、「試験」と「研修」の違いはありますが、作者はその辺りから着想したのではないかと思ったりもしました。

萩尾望都「11人いる!」ドラマcd.jpg 本作は『ポーの一族』と併せて小学館漫画賞を受賞していて、『トーマの心臓』などとともに作者の代表作であるには違いないでしょう。
 11人のキャラクターが限られた紙数の中でよく書き分けられています。
 ただ、ミステリーにはありがちなことですが、導入部分が素晴らしい分、結末の凡庸さに落差を感じました。

 この作品は、'86年にアニメ映画化されていますが、それ以前、'70年にNHKの少年ドラマシリーズ(1972年~1983年)の一環として全1回40分のドラマとして実写化されたものが放映されているようです(個人的には共に未見)。

ドラマCD『11人いる! 』

 【1976年文庫化・1994年新編集版[小学館文庫]/1986年単行本[小学館]/2007年単行本[小学館フラワーコミックススペシャル]】

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設定に引き込まれた。「トーマの心臓」より重層的で厚みがある。

ポーの一族 74.bmp 『ポーの一族』(全4巻) 〔'74年〕 ポーの一族.jpg 小学館叢書 (全3巻)〔'88年〕 ポーの一族 パーフェクトセレクション.jpgポーの一族 1 (1) (フラワーコミックススペシャル 萩尾望都パーフェクトセレクション 6)』 〔'07年〕

 1972(昭和47)年から1976(昭和51)年にかけて発表された萩尾望都の代表的長編作品で、1975(昭和50)年・第21回「小学館漫画賞」(少年少女部門)受賞作(「11人いる!」と併せて受賞)。
 バンパネラの一族として生きるエドガーと、彼により一族に引き込まれたアランの物語ですが、14歳の少年のままの美貌を保つ彼らが、18世紀から20世紀のヨーロッパ各地に出没するという設定にまず引き込まれました。

 時代が前後しながら展開される15編のストーリーで、最初はテレビドラマ「タイムトンネル」(古い!)みたいに恣意的に時間移動しているのかと思いましたが、実はそれらがすべて関連付けられていて、謎が徐々に読者に明かされていくという―この構築力は、作者20代前半の作品とは思えないほどのものでした。
 この作品の〈年代表〉を作る熱心なファンもいるようですが、自分はそこまではしないものの、気持ちはわかる...。

 永遠の生を持ちながらも、それは人間の血で贖われていて、それをバラのエキスで"代替可能"としている点はロマンチックですが、結局のところ彼らは正体が人に知られれば迫害される存在であり、一方、彼らが愛する美しい女性たちはやがて老いて死を迎える、いわば時間に蝕まれていく存在である―。
 しかし生身の人間であっても、生きている限りにおいて、思い出としての青春は「今」自分の中に在る、または在ると信じたいもので、エドガーらは、そうした人間の思いを投射した存在に思えました。

トーマの心臓.jpg "少年愛"ものの出始めの時期だったこともあり、15編の中では、ギムナジウムを舞台とした「小鳥の巣」などが好評でしたが、このテーマは『トーマの心臓』でより端的に描かれています。
 個人的にはむしろ、エドガーの妹に対する犠牲的精神が描かれた「メリーベルと銀のバラ」などが良く、全体に『トーマの心臓』よりもテーマが重層的で厚みのある物語だと思います。

 '77年に出た小学館のプチコミックス版「萩尾望都作品集」、'88年に出たこの「叢書版」、'98年に出た「文庫版」、'00年に出た「フラワーコミクッス版」など、みんな話の並べ方が微妙に違うようです。それでも読めるストーリーですが...。

 【1974年コミックス版(全5巻)・1977年コミックス版「萩尾望都作品集」(全4巻)・1988年叢書版(全3巻)[小学館]/1998年文庫化[小学館文庫(全3巻)]/2007年単行本[小学館フラワーコミックススペシャル(全2巻)]】

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読んでいる間は24時間"ミステリーツアーのお客様"状態。

MONSTER.jpg MONSTER2.jpg Monster (3).jpg Monster (4).jpg MONSTER 5.jpg MONSTER 6.jpg MONSTER7.jpg MONSTER8.jpg MONSTER9.jpg MONSTER10.jpg 『MONSTER 全18巻セット

 1994(平成6)年から2001(平成13)年にかけてコミック雑誌に連載された浦沢直樹氏の長篇ミステリーコミック。1997(平成9)年・第1回「文化庁メディア芸術祭マンガ部門(優秀賞)」受賞作、並びに1999(平成11)年・第3回「手塚治虫文化賞(マンガ大賞)」、2000(平成12)年・第46回「小学館漫画賞(青年一般部門)」受賞作。

 独デュッセルドルフのアイスラー病院に勤務する天才外科医ドクター・テンマ(天馬賢三)は、院長の娘との結婚を約し、順風満帆の将来を保障されていた。しかし、利潤優先で人の命を平等に扱わない病院に対し疑問を抱いた彼は、頭を撃たれ病院に担ぎ込まれた貧しい少年の手術を、資産家の手術に優先して敢行したために、自らの将来を棒に振る。だが実は、彼が命を救ったその少年は、大量殺人を繰り返す怪物の心を持っていた―。

 最初は軽い気持ちで第1巻を手に取ったのが、読み終わるまでの間は、仕事していても食事していても頭の中は"ミステリーツアーのお客様"状態で、あっという間に18巻まで読み進み、最後にガーンと壁に激突させられて、しばらくは何がどうだったのかよくわからないという感じ。

 これだけの長編で、かつ密度の濃いストーリーを構築できる人は今までそういないのではないかと思いました。すべての挿話がラストに繋がっていくため、ラストの謎を自分なりに整理してストーリーを遡及していく楽しみもあります。個人的にはロバート・ラドラムの小説を連想したりもしましたが、やはりこの作品はストーリーでもインパクトでも、その高いオリジナリティを認めなければならないものだと思います。
 
MONSTER アニメ.jpgMONSTER アニメ dvd.jpg '04年には日テレ系でアニメ化されていますが、放送時間帯が平日深夜で、それもこの作品らしいかなと思ったりしました(DVDレコーダーが普及がしたせいでもある? どちらかというと、時間のあるときに腰を落ち着けて一気に見たい作品)。
 アニメに限らず、できれば全巻続けて一気に読んだ方がいいタイプの作品であるし、先入観を持たないで読んだ方が楽しめると思います。
   
「MONSTER」●演出:小島正幸●脚本:浦畑達彦●音楽:配島邦明●原作:浦沢直樹●出演(声)木内秀信/小山茉美/佐々木望/能登麻美子/池田勝/磯部勉●放映:2004/04~2005/09(全74回)●放送局:日本テレビ

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手塚治虫の歴史物の中では最高傑作。「伊武谷万二郎」のモデルは?
陽だまりの樹 (全8巻).jpg
陽だまりの樹.jpg
 陽だまりの樹1.jpg  陽だまりの樹2.jpg 
陽だまりの樹 全巻セット (小学館文庫)』 (全8巻) ['95年]/小学館ビックコミックス(全11巻) ['83年]/日本テレビ系列「陽だまりの樹」['00年]

陽だまりの樹001.jpg 1981(昭和56)年4月から1986(昭和61)年12月まで「ビッグコミック」に掲載の、幕末を舞台に、蘭学医・手塚良仙の息子の良庵と、府中藩士の伊武谷万二郎の2人の生き方を描いた手塚治虫後期の作品で1983(昭和58)年・第29回「小学館漫画賞」(青年一般部門)受賞作。手塚良庵(後の良仙)は実在の人物で作者の曽祖父にあたる人、主人公の伊武谷万二郎は一応架空の人物とされているようです。

伊佐新次郎.jpg 手塚治虫の歴史物の中では最高傑作の1つではないかと思います。しっかりした時代考証の上に生き生きとした創作を織り込むところは、司馬遼太郎の初期作品などを想起させます。

 米国総領事として下田に逗留したハリスと通訳のヒュースケンの周辺は相当詳しく調べたようです。「唐人お吉」は実在の人物ですが、お吉にハリスの侍妾として仕えるよう説得したのが下田奉行頭取の「伊佐新次郎」という人であるようです。

お吉を説得する下田奉行頭取・伊佐新次郎

陽だまりの樹002.jpg 主人公「伊武谷万二郎」はこの実在の人物をモデルにしたのではないかと思われます。「伊佐新次郎」という人は実際に熱血肌の人だったようです。お吉がハリスに仕えたのは僅かの期間ですが、その後の彼女の運命に大きな影響を与えました(個人的にはその辺りの経緯を、下田の観光バスガイドの話で初めて知った)。

 このシリーズを買うならば、講談社の全集のものより小学館文庫の方をお薦めします。小学館叢書として'88年に刊行された四六判 (全7巻)の文庫化ですが、セピア調の写真入りのカバーが良く、第2巻表紙のスフィンクス像の前での武士たちの記念写真なども珍しいものです。

 個人的には、文庫版第3巻の巻末解説で、横内謙介氏が手塚治虫と三島由紀夫を対比して、両者の共通点と相違点を述べているのがたいへん興味深かったです。

陽だまりの樹 dvd.jpg 尚、この作品は2000年4月から9月まで日本テレビ系で連続アニメドラマとして放送され(全25話)、第4回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門(テレビシリーズ・長編)で優秀賞を受賞していますが、午前1時近くから始まる深夜の放映だったので、どれだけの人の目に触れたかなあ(自分自身、全編を通して観たわけではないが、安易にストーリーをいじらず、ほぼ原作通りだったのではないか)。

陽だまりの樹(八) [DVD]

陽だまりの樹 アニメ.jpg「陽だまりの樹」●監督:杉井ギサブロー●脚本:高屋敷英夫/水上清資/川嶋澄乃/大久保智康●音楽:松居慶子●原作:手塚治虫●出演(声):山寺宏一/宮本充/折笠富美子/永井一郎/松本梨香/納谷六朗/大木民夫/堀越真己/幸田直子/三石琴乃/沢海陽子/根谷美智子/家中宏/関智一/郷里大輔/小形満/有本欽隆/くればやしたくみ/前田剛/志村和幸●ナレーション:中井貴一●放映:2000/04~2000/09(全25回)●放送局:日本テレビ

 【1983年コミックス版(全11巻)・1988年四六判(全7巻)・1999年ワイド判(全6巻)[小学館]/1993年全集[講談社(全11巻]/1995年文庫化[小学館文庫(全8巻)]/2008年ビックコミックスペシャル改装版(全6巻)[小学館]/2012年再文庫化[講談社・手塚治虫文庫全集(全6巻)]】

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