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講談調で娯楽性が高く、伝説的虚構性を重視。「忠臣蔵」の初心者が大枠を掴むのに良い。

忠臣蔵(1958).jpg
忠臣蔵 1958_0.jpg
忠臣蔵 [DVD]」(2004) 主演:長谷川一夫

忠臣蔵 [DVD]」(2013)

滝沢修 忠臣蔵1958.jpg 元禄14年3月、江戸城勅使接待役に当った播州赤穂城主・浅野内匠頭(市川雷蔵)は、日頃から武士道を時世遅れと軽蔑する指南役・吉良上野介(滝沢修)から事毎に意地悪い仕打ちを受けるが、近臣・堀部安兵衛(林成年)の機転で重大な過失を免れ、妻あぐり(山本富士子)の言葉や国家老・大石内蔵助(長谷川一夫)の手紙により慰められ、怒りを抑え役目大切に日を過す。しかし、最終日に許し難い侮辱を受けた内匠頭は、城中松の廊下で上野介に斬りつけ、無念にも討忠臣蔵(1958)市川.jpgち損じる。幕府は直ちに事件の処置を計るが、上野介贔屓の老中筆頭・柳沢出羽守(清水将夫)は、目付役・多門伝八郎(黒川弥太郎)、老中・土屋相模守(根上淳)らの正論を押し切り、上野介は咎めなし、内匠頭は即日切腹との処分を下す。内匠頭は多門伝八郎の情けで家臣・片岡源忠臣蔵  昭和33年.jpg右衛門(香川良介)に国許へ遺言を残し、従容と死につく。赤穂で悲報に接した内蔵助は、混乱する家中の意見を籠城論から殉死論へと導き、志の固い士を判別した後、初めて仇討ちの意図を洩らし血盟の士を得る。その中には前髪の大石主税(川口浩)と矢頭右衛門七(梅若正二)、浪々中を馳せ参じた不破数右衛門(杉山昌三九)も加えられた。内蔵助は赤穂城受取りの脇坂淡路守(菅原謙二)を介して浅野家再興Chûshingura(1958).jpgの嘆願書を幕府に提出、内蔵助の人物に惚れた淡路守はこれを幕府に計るが、柳沢出羽守は一蹴する。上野介の実子で越後米沢藩主・上杉綱憲(船越英二)は、家老・千坂兵部(小沢栄太郎)に命じて上野介の身辺を警戒させ、兵部は各方面に間者を放つ。内蔵助は赤穂退去後、京都山科に落着くが、更に浅野家再興嘆願を兼ねて江戸へ下がり、内匠頭後室・あぐり改め瑤泉院を訪れる。瑤泉院は、仇討ちの志が見えぬ内蔵助を責める侍女・戸田局(三益愛子)とは別に彼を信頼している。内蔵助はその帰途に吉良方の刺客に襲われ、多門伝八郎の助勢で事なきを得るが、その邸内で町人姿の岡野金右衛門(鶴田浩二)に引き合わされる。伝八郎は刃傷事件以来、陰に陽に赤穂浪士を庇護していたのだ。一方、大石襲撃に失敗した千坂兵部は清水一角(田崎潤)の報告によって並々ならぬ人物と知り、腹心の女るい(京マチ子)を内蔵助の身辺に間者として送る。江戸へ集った急進派の堀部安兵衛らは、出来れば少人数でもと仇討ちを急ぐが、内蔵助は大義の仇討ちをするには浅野家再興の成否を待ってからだと説く。半年後、祇園一力茶屋で多くの遊女と連日狂態を示す内蔵助の身辺に、内蔵助を犬侍と罵る浪人・関根弥次郎(高松英郎)、内蔵助を庇う浮橋(木暮実千代)ら太夫、仲居姿のるいなどがいた。内蔵助は浅野再興の望みが絶えたと知ると、浮橋を身請けして、妻のりく(淡島千景)に離別を申渡す。長子・主税のみを残しりくや幼い3人の子らと山科を去る母たか(東山千栄子)は、仏壇に内蔵助の新しい位牌を見出し、初めて知った彼の本心にりくと共に泣く。るいは千坂の間者・忠臣蔵  昭和33年tyu.jpg小林平八郎(原聖四郎)から内蔵助を斬る指令を受けるがどうしても斬れず、平八郎は刺客を集め内蔵助を襲い主税らの剣に倒れる。機は熟し、内蔵助ら在京同志は続々江戸へ出発、道中、近衛家用人・垣見五郎兵衛(二代目中村鴈治郎)は、自分の名を騙る偽者と対峙したが、それを内蔵助と知ると自ら偽者と名乗忠臣蔵e.jpgって、本物の手形まで彼に譲る。江戸の同志たちも商人などに姿を変えて仇の動静を探っていたが、吉良方も必死の警戒を続け、しばしば赤穂浪士も危機に陥る。千坂兵部は上野介が越後へ行くとの噂を立て、この行列を襲う赤穂浪士を一挙葬る策を立てるが、これを看破した内蔵助は偽の行列を見送る。やがて、赤穂血盟の士47人は全員江戸に到着し、決行の日は後十日に迫るが、肝心の吉良邸の新しい絵図面だけがまだ無い。岡野金右衛門は同志たちから、彼を恋する大工・政五郎(見明凡太朗)の娘お鈴(若尾文子)を利用してその絵図を手に入れるよう責められていて、決意してお鈴に当る。お鈴は小間物屋の番頭と思っていた岡野金右衛門を初めて赤穂浪士と覚ったが、方便のためだけか、恋してくれているのかと彼に迫り、男の真情を知ると嬉し泣きしてその望みに応じ、政五郎も岡野金右衛門の名も聞かずに来世で娘と添ってくれと頼む。江戸へ帰ったるいは、再び兵部の命で内蔵助を偵察に行くが、内蔵助たちの美しい心と姿に打たれる彼女は逆に吉良家茶会の日を14日と教える。その帰途、内蔵助を斬りに来た清水一角と同志・大高源吾(品川隆二)の斬合いに巻き込まれ、危って一角の刀に倒れたるいは、いまわの際にも一角に内蔵助の所在を偽る。るいの好意とその最期を聞いた内蔵助は、12月14日討入決行の檄を飛ばす。その14日、内蔵助はそれとなく今生の暇乞いに瑤泉院を訪れるが、間者の耳目を警戒して復讐の志を洩らさChûshingura (1958) .jpgず、失望する瑤泉院や戸田局を後に邸を辞す。同じ頃、同志の赤垣源蔵(勝新太郎)も実兄・塩山伊左衛門(竜崎一郎)の留守宅を訪い、下女お杉(若松和子)を相手に冗談口をたたきながらも、兄の衣類を前に人知れず別れを告げて飄々と去る。勝田新左衛門(川崎敬三)もまた、実家に預けた妻と幼児に別れを告げに来たが、舅・大竹重兵衛(志村喬)は新左衛門が他家へ仕官すると聞き激怒し罵る。夜も更けて瑤泉院は、侍女・紅梅(小野道子)が盗み出そうとした内蔵助の歌日記こそ同志の連判状であることを発見、内蔵助の苦衷に打たれる。その頃、そば屋の二階で勢揃いした赤穂浪士47人は、表門裏門の二手に分れ内蔵助の采忠臣蔵 1958_1.jpg配下、本所吉良邸へ乱入。乱闘数刻、夜明け前頃、間十次郎(北原義郎)と武林唯七(石井竜一)が上野介を炭小屋に発見、内蔵助は内匠頭切腹の短刀で止めを刺す。赤穂義士の快挙は江戸中の評判となり、大竹重兵衛は瓦版に婿の名を見つけ狂喜し、塩山伊左衛門は下女お杉を引揚げの行列の中へ弟を探しにやらせお杉は源蔵を発見、大工の娘お鈴もまた恋人・岡野金右衛門の姿を行列の中に発見し、岡野から渡された名札を握りしめて凝然と立ちつくす。一行が両国橋に差しかかった時、大目付・多門伝八郎は、内蔵The Loyal 47 Ronin (1958).jpg忠臣蔵 _V1_.jpg助に引揚げの道筋を教え、役目を離れ心からの喜びを伝える。その内蔵助が白雪の路上で発見したものは、白衣に身を包んだ瑤泉院が涙に濡れて合掌する姿だった―。[公開当時のプレスシートより抜粋]
若尾文子(お鈴)・鶴田浩二(岡野金右衛門)

忠臣蔵 1958 長谷川一夫.jpg 1958(昭和33)年に大映が会社創立18年を記念して製作したオールスター作品で、監督は渡辺邦男(1899-1981)。大石内蔵助に大映の大看板スター長谷川一夫、浅野内匠頭に若手の二枚目スター市川雷蔵のほか鶴田浩二、勝新太郎という豪華絢爛たる顔ぶれに加え女優陣にも京マチ子、山本富士子、木暮実千代、淡島千景、若尾文子といった当時のトップスターを起用しています。当時、赤穂事件を題材とした映画は毎年のように撮られていますが、この作品は、その3年後に作られた同じく大作である松田定次監督、片岡千恵蔵主演の「赤穂浪士」('61年/東映)とよく比較されます。「赤穂浪士」の方は大佛次郎の小説『赤穂浪士』をベースとしています。

 "忠臣蔵通"と言われる人たちの間では'61年の東映版「赤穂浪士」の方がどちらかと言えば評価が高く、一方、この'58年の大映版「忠臣蔵」は、「戦後映画化作品の中で最も浪花節的かつ講談調で娯楽性が高く、リアリティよりも虚構の伝説性を重んじる当時の風潮が反映されている作品であり、『忠臣蔵』の初心者が大枠を掴むのに適していると言われている」(Wikipedia)そうです。概ね同感ですが、東映版「赤穂浪士」にしても、大佛次郎の小説『赤穂浪士』を基にしているため、史実には無い大佛次郎が作りだしたキャラクターが登場したりするわけで、しかも細部においては必ずしも原作通りではないことを考えると、この大映版「忠臣蔵」は、これはこれで「伝説的虚構性を重視」しているという点である意味オーソドックスでいいのではないかと思いました。

 「赤穂浪士」の片岡千恵蔵の大石内蔵助と、3年先行するこの「忠臣蔵」の長谷川一夫の大石内蔵助はいい勝負でしょうか。「赤穂浪士」が浅野内匠頭に大川橋蔵を持ってきたのに対し、この「忠臣蔵」の浅野内匠頭は市川雷蔵で、「赤穂浪士」が吉良上野介に月形龍之介を持ってきたのに対し、この「忠臣蔵」の吉良上野介は滝沢修です。この「忠臣蔵」の長谷川一夫と滝沢修は、6年後のNHKの第2回大河ドラマ「赤穂浪士」('64年)でも忠臣蔵 1958.jpgそれぞれ大石内蔵助と吉良上野介を演じています(こちらは大佛次郎の『赤穂浪士』が原作)。また、「赤穂浪士」が「大石東下り」の段で知られる立花左近に大河内傳次郎を配したのに対し、こちら「忠臣蔵」は立花左近に該当する垣見五郎兵衛忠臣蔵 1958 中村.jpg二代目中村鴈治郎を配しており、長谷川一夫が初代中村鴈治郎の門下であったことを考えると、兄弟弟子同士の共演とも言えて興味深いです。但し、この場面の演出は片岡千恵蔵・大河内傳次郎コンビの方がやや上だったでしょうか。
二代目中村鴈治郎(垣見五郎兵衛)

勝新太郎(赤垣源蔵)
忠臣蔵_V1_.jpg この作品は、講談などで知られるエピソードをよく拾っているように思われ(このことが伝説的虚構性を重視しているということになるのか)、先に挙げた内蔵助が武士の情けに助けられる「大石東下り」や、同じく内蔵助がそれとなく瑤泉院を今生の暇乞いに訪れる「南部坂雪の別れ」などに加え、赤垣源蔵が兄にこれもそれとなく別れを告げに行き、会えずに兄の衣服を前に杯を上げる「赤垣源蔵 徳利の別れ」などもしっかり織り込まれています。赤垣源蔵役は勝新太郎ですが、この話はこれだけで「赤垣源蔵(忠臣蔵赤垣源蔵 討入り前夜)」('38年/日活)という1本の映画になっていて、阪東妻三郎が赤垣源蔵を演じています。また、浪々中を馳せ参じた不破数右衛門(杉山昌三九)もちらっと出てきますが、この話も「韋駄天数右衛門」('33年/宝塚キネマ)という1本の映画になっていて、羅門光三郎が不破数右衛門忠臣蔵 1958 simura.jpgを演じています。こちらの話ももう少し詳しく描いて欲しかった気もしますが、勝田新左衛門の舅・大竹重兵衛(演じるのは志村喬)のエピソード(これも「赤穂義士銘々伝」のうちの一話になっている)などは楽しめました(志村喬は戦前の喜劇俳優時代の持ち味を出していた)。
志村喬(大竹重兵衛)

 映画会社の性格かと思いますが、東映版「赤穂浪士」が比較的男優中心で女優の方は脇っぽかったのに対し、こちらは、山本富士子が瑤泉院、京マチ子が間者るい、木暮実千代が浮橋太夫、淡島千景が内蔵助の妻りく、若尾文子が岡野金右衛門(鶴田浩二)の恋人お鈴、中村玉緒が浅野家腰元みどりと豪華布陣です。それだけ、盛り込まれているエピソードも多く、全体としてテンポ良く、楽しむところは楽しませながら話が進みます。山本富士子はさすがの美貌というか貫禄ですが、京マチ子の女間者るいはボンドガールみたいな役どころでその最期は切なく、若尾文子のお鈴は、父親も絡んだ吉良邸の絵図面を巡る話そのものが定番ながらもいいです。
1山本・京・鶴田.jpg忠臣蔵 鶴田浩二 若尾文子.jpg
山本富士子(瑤泉院)/京マチ子(女間者おるい)/鶴田浩二(岡野金右衛門)  若尾文子(お鈴)・鶴田浩二

山本富士子 hujin.jpg「婦人画報」'64年1月号(表紙:山本富士子)

忠臣蔵 1958es.jpg忠臣蔵(1958)6.jpg滝沢修(吉良上野介)・市川雷蔵(浅野内匠頭)

 渡辺邦男監督が「天皇」と呼ばれるまでになったのはとにかく、この人は早撮りで有名で、この作品も35日間で撮ったそうです(初めて一緒に仕事した市川雷蔵をすごく気に入ったらしい)。でも、画面を観ている限りそれほどお手軽な感じは無く、監督の技量を感じました。ストーリーもオーソドックスであり、確かに、自分のような初心者が大枠を掴むのには良い作品かもしれません。松田定次監督、片岡千恵蔵主演の「赤穂浪士」('61年)と同様、役者を楽しむ映画であるとも言え、豪華さだけで比較するのも何ですが、役者陣、特に女優陣の充実度などでこちらが勝っているのではないかと思いました。
 
【新企画】二大大型時代劇映画「忠臣蔵1958」「赤穂浪士1961」を見比べてみた。(個人ブログ「映画と感想」)


「忠臣蔵」スチール 淡島千景(大石の妻・りく)/長谷川一夫(大石内蔵助)/木暮実千代(浮橋太夫)
淡島千景『忠臣蔵』スチル1.jpg
淡島千景/東山千栄子(大石の母・おたか)
淡島千景『忠臣蔵』スチル5.jpg

小沢栄太郎(千坂兵部)・京マチ子(女間者おるい)    船越英二(上杉綱憲)
忠臣蔵 小沢栄太郎・京マチ子.jpg 忠臣蔵 船越英二.jpg

Chûshingura (1958)
Chûshingura (1958).jpg忠臣蔵 1958 08.jpg「忠臣蔵」●制作年:1958年●監督:渡辺邦男●製作:永田雅一●脚本:渡辺邦男/八尋不二/民門敏雄/松村正温●撮影:渡辺孝●音楽:斎藤一郎●時間:166分●出演:長谷川一夫/市川雷蔵/鶴田浩二/勝新太郎/川口浩/林成年/荒木忍/香川良介/梅若正二/川崎敬三/北原義郎/石井竜一/伊沢一郎/四代目淺尾奥山/杉山昌三九/葛木香一/舟木洋一/清水元/和泉千忠臣蔵 1958 10.jpg太郎/藤間大輔/高倉一郎/五代千太郎/伊達三郎/玉置一恵/品川隆二/横山文彦/京マチ子/若尾文子/山本富士子淡島千景/木暮実千代/三益愛子/小野道子/中村玉緒/阿井美千子/藤田佳子/三田登喜子/浦路洋子/滝花久子/朝雲照代/若松和子/東山山本富士子『忠臣蔵(1958).jpg千栄子/黒川弥太郎/根上淳/高松英郎/花布辰男/松本克平/二代目澤村宗之助/船越英二/清水将夫/南條新太郎/菅原謙二/南部彰三/春本富士夫/寺島雄作/志摩靖彦/竜崎一郎/坊屋三郎/見明凡太朗/上田寛/小沢栄太郎/田崎潤/原聖四郎/志村喬/二代目中村鴈治郎/滝沢修●公開:1958/04●配給:大映(評価:★★★★)

山本富士子(瑤泉院)・三益愛子(戸田局)

2020年2月20日NHK-BSプレミアム
千坂兵部(小沢栄太郎)と女間者おるい(京マチ子)/岡野金右衛門(鶴田浩二)と大工の娘・お鈴(若尾文子)
忠臣蔵_0182.JPG 忠臣蔵_0183.JPG
立場を転じて内蔵助に秘密情報を漏らすおるい(京マチ子)/「徳利の別れ」赤垣源蔵(勝新太郎)
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娘婿・勝田新左衛門(川崎敬三)を叱る大竹重兵衛(志村喬)/「南部坂雪の別れ(後段)」瑤泉院(山本富士子)
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エノケンと柳家金語楼の「江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ」の掛け合いが見所か。

エノケンの森の石松 vhs1.jpg エノケンの森の石松 yanagiya .jpg
「エノケンの森の石松」VHS        柳家金語楼/榎本健一 リンク「石松三十石船道中

エノケンの森の石松 vhs2.jpg 清水次郎長(鳥羽陽之助)の子分・森の石松(榎本健一)は、次郎長親分に呼ばれ、親分の代参で讃岐の金比羅宮に刀と奉納金50両を納めに行くことを命じられる。小遣いに30両を別に持たせるというが、但し道中いっさい酒を飲んではならないと言われ、酒好きの石松は断りかける。しかし、誰も見ている者はいないという仲間の入れ知恵で、次郎長親分には言いつけを守ると言って引き受ける。恋人の茶店のお夢(宏川光子)にしばしの別れを告げ、お夢から貰った肌守りを懐に旅に出る石松。金比羅宮で無事に代参を済ませた帰路、草津の追分に身受山の謙太郎(北村武夫)を訪ねて一宿の仁義を切り、親分への百両の香典を親分へと託される。その翌日、幼い頃から兄貴分だった小松村の七五郎(柳田貞一)を訪ねる道すがら都鳥の吉兵衛(小杉嘉男)に偶然出逢い、吉兵衛の家に草履を脱ぐことに。しかし、吉兵衛の狙いは石松の持つ百両であり、石松は吉兵衛兄弟の騙し討ちに遭って重傷を負う。何とか危地を脱し、一旦は七五郎とその女お民(竹久千恵子)の住家に匿われた石松だったが―。

エノケンの森の石松zj.jpeg 「エノケンの森の石松」('39年/東宝東京)は中川信夫(1905-1984)監督による1939(昭和14)年5月公開作。原作は「エノケンの法界坊」('38年)の脚本も手掛けた和田五雄ですが、冒頭、2代目広沢虎造(1899-1964)の浪曲で始まり、途中でも何度か虎造の口演が入ることからも窺えるように、浪曲「清水次郎長伝」の中の「石松金比羅代参」などをオーソドックスになぞっています。

「エノケンの森の石松」公開時(1939.8.15)チラシより

 個人的には、吉兵衛兄弟との結構本格的な剣戟シーンがあるのが意外だったでしょうか。まあ、エノケンの運動神経ならば剣戟くらいは充分にこなしたのかもしれませんが、「石松金比羅代参」などを知って観ている人は、これが石松の最期に繋がるものであることを知っているため、エノケン喜劇には珍しくやや悲壮感も感じられるかもしれません。石松が都鳥の吉兵衛に殺害されたのは1860年7月と言われ、清水次郎長こと山本長五郎(1820-1893)は翌1861年1月に駿河国江尻追分で都鳥の吉兵衛こと都田吉兵衛を仇討ちにしています。

エノケンの森の石松  21.jpg 喜劇的要素の面での見所は、浪曲「清水次郎長伝」の中の「石松三十石船道中」から引いた例の「飲みねぇ、飲みねぇ、鮨を食いねぇ、江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ」で知られる石松と江戸ッ子留吉(柳家金語楼)との掛け合いです。船客同士で街道一の親分は誰かと言う話題になって、「身受山の謙太郎」の名前が挙がったところへ留吉がケチをつけ、「清水の次郎長」と言おうとしますが思い出せず、「国定村の...」とか言ってしまいます(史実では国定忠治は1851年に刑死している)。やっと次石松三十石船道中」 広沢虎造ド.jpg郎長の名を思い出したところへ、今度は同じ船に乗っていた次郎長の子分の中で一番強いのは誰だか知ってっか」と問うて自分の名を導き出そうとするがなかなか石松の名が出てこない―。定番であるだけに喜劇俳優同士"両雄"競演の様相も呈していますが、金語楼って味があって上手いなあと思わせます。この場面などは、この作品で前振りの口上を述べている2代目広沢虎造の浪曲がネットで聴けたりするので、比較してみると面白いかもしれません。エノケンは遣り取りの最後に得意のアクションも加えています。

「清水港」1939.jpg 因みに、マキノ正博監督の「清水港代参夢道中(続清水港)」('40年/日活)は、現実の世界で「森の石松」の舞台の監続清水港 kataoka .jpg督をしている男・石田勝彦(片岡千恵蔵)が夢の世界でタイムスリップして自身が「石松」になってしまうというパロデイです。この映画での例の「三十石船」の場面では広沢虎造自身が浪花節語りの船客役(現実の世界では舞台の照明係役)で出演しており、片岡千恵蔵と掛け合いをしています。タイトルから"夢落ち話だと分かってしまい、タイムスリップした当事者が歴史の真実を知っているというのもタイムスリップものの定番ですが、それでも惹き込まれるのは「続清水港」daf.jpg続清水港 片岡.jpg、マキノ正博の演出の上手さのためか、小国英雄(1904-1196)の脚本の上手さのためか、或いは森の石松という素材の面白さのためでしょうか(小松村の七五郎を志村喬が演じていて、これも現実世界での劇場専務役との1人2役)。


「清水港代参夢道中(続清水港)」('40年/日活)
片岡千恵蔵・志村喬・轟夕起子・澤村アキヲ(子役・長門裕之)・広沢虎造

 この「エノケンの森の石松」では、浪曲の「石松と見受山鎌太郎」に該当するシーンがすっぽり抜けていて、これは当初あった巻が一部逸失したのでしょう。57分となっていますが、元は74分あったらしいです。石松が身受山の謙太郎を訪ねたのは「三十石船道中」でその名を知ったためで、鎌太郎が7年前に次郎長の妻・お蝶が亡くなった時の香典をまだやっていないとのことで百両の香典を石松に託すというもの。この金が石松の命取りになるわけですが、見受山の鎌太郎のシーンが抜けているため、50両を代参奉納した石松がなぜ100両持っているのかが分かりにくい気がしました。この辺りのエノケン作品は、年3本から5本くらいと量産している割には、スタイル的には出来上がっていて一定のレベル以上にあるものが多く、むしろフィルムがどれくらい完全な形で残っているかが評価の分かれ目になってしまう印象も受けます。そうした意味では、この作品などは逸失部分があるために繋がりがスムーズでないことが残念です。

「続次郎長富士」('60年/大映)勝新太郎
続次郎長富士(1960) suti-ru.jpg 但し、その後、森繁久彌、中村錦之助、勝新太郎など多くの役者が森の石松を演じるようになる中で(美空ひばりまで演じた)、喜劇俳優である榎本健一によって比較的早い時期に演じられたものであるということで、観る機会があれば観ておくのもいいのでは。ウィキペディアに拠れば、この「エノケンの森の石松」以降で森の石松が映画の中で題材となった作品は40作近くあるのに、「エノケンの森の石松」以前で森の石松が映画の題材となったのは前年の大河内傳次郎が石松をやった「清水次郎長」('38年/東宝)しかないことになっていますが、実際には無声映画時代から直前の羅門光三郎の「金毘羅代参 森の石松」('38年/新興キネマ)までエノケン以前にも石松を演じた役者はもっといます。
 
大村千吉(石松)・大河内傳次郎(次郎長)・横山運平・千葉早智子(お蝶)
清水次郎長1.jpg清水次郎長(1938年)oomura .jpg その萩原遼監督、大河内傳次郎主演の「清水次郎長」('38年/東宝)は、次郎長と森の石松の出会いの頃を描いたもので、大河内傳次郎が演じる次郎長はまだ駆け出し時代(というよりヤクザから足を洗って堅気暮らしをしている)、大村千吉が演じる石松に至ってはまだ全くの少年であり、子分にして欲しいとすがる石松少年に対し、次郎長の方は石松を清水次郎長vhsvhs_ura.jpg何とか堅気にしよう商家に丁稚奉公させたりするなど骨を折るというものです。身寄りのない石松を不憫に思い、次郎長とともに何かと面倒をみるのがお蝶(千葉早智子)で、彼女がやがて次郎長の妻になるわけですが、そこまでは描かれていません。だた、結局石松が堅気にならないのは観る側も分かっているだけに、この話ちょっと引っ張り過ぎた印象も。石松が使い込みをやってしまって、次郎長は自らを頼ってきた駆け落ち男女に逃亡資金を施したばかりで手元に金が無かったため、以前助太刀をしてやったやくざの保下田久六(鳥羽陽之助)の所へ、その時は受け取らなかった礼金を貸してはくれまいかと頼みに行くが拒否され、やがて久六によって自分が助けた者を殺害された次郎長は久六を仇討ちにする―という「桜堤の仇討ち」をモチーフとしてものとなっています。実際にはこの間にお蝶は病いを得て(次郎長が久六に金を借りに行ったのは家が貧しく金の無かったお蝶を医者にみせるため)亡くなっており(次郎長が森の石松を讃岐の金毘羅様へお礼参りの代参に出すのはその7年後)、金を貸すのを断った久六は、亡くなる前に次郎長の妻になっていたお蝶の葬式にも顔を見せなかったいう伏線があるのですが、映画では、久六討ちを果たした後、次郎長・石松・お蝶(生きている)で一緒に清水に帰るような終わり方になっています。半ば過ぎまではやや悠長な展開だったのが、終盤は若干ペースアップしたという感じでしょうか。最後は活劇調で、大河内傳次郎ならではの剣戟となりますが、大河内傳次郎が剣戟をやると、清水次郎長と言うより丹下左膳に見えてしまうのは先入観のためでしょうか。

続次郎長富士(1960) .jpg 最近観直してまあまあ楽しめたのが、森一生監督、八尋不二脚本の「続次郎長富士」('60年/東映)で、これは前年に公開された「次郎長富士」の続編です。本作では富士川の決戦の直後から石松の弔い合戦までが描かれていて、出演者には長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎など前作と同じメンバーが顔を揃えていますが、役どころは一部変更されています。
続次郎長富士 [DVD]

ZOKUJIROTYOFUJI1960.jpg 黒駒の勝蔵を倒して清水へ引上げてきた次郎長(長谷川一夫)に、新たな押しかけ子分の小松村の七五郎(本郷功次郎)が待っていた。石松(勝新太郎)と七五郎は、桝川の仙右衛門(中村豊)の仇討を買って出、八角一家を斬りまくり、次郎長の命で旅に出る。七五郎は旧友のお役者の政(月田昌也)に会い、政の女出入りの傍杖を喰った。反次郎長派の親分平続次郎長富士ド.jpg親王の勇蔵(石黒達也)は、政のまちがいを利用し、次郎長陣営の仲間割れを図る。勇蔵の背後には、黒駒の弟分黒竜屋の亀吉(香川良介)や坂東の新助(見明凡太朗)らが糸を引いていた。石松の報告で彼らの奸計を知った次郎長は、二十八人衆を連れて勇蔵の家へ乗り込む。大喧嘩が予想されたが、青年代官の山上藤一郎(市川雷蔵)の裁きで治まった。次郎長と別れた石松は、三河の為五郎(荒木忍)から次郎長へ二百両の金を預って帰途につく。が、その二百両を道で会った都鳥の吉兵衛(杉山昌三九)に貸してしまう。折から都鳥にワラジを脱いだ新助たちが、吉兵衛をそそのかし石松をだまし討ちにかけた。石松は手傷を負い、一度七五郎の家に逃げこんだが、また躍り出して殺される。勇蔵が都鳥兄弟を匿い、吉兵衛を追って来た小政(鶴見丈二)も生捕りにされるハメになる。勇蔵は小政を生きながら棺桶へ入れて清水へ送り、石松の死骸を引取りたいなら次郎長一人で来いと言う―。

「続次郎長富士」('60年/大映)中村玉緒・勝新太郎
続次郎長富士 勝新太郎.jpg 旅の途中の石松(勝新太郎)に絡んでくるのがお亀(中村玉緒)で、この2人はこの共演の2年後に結婚します。中村玉緒は当時20歳で、父は「」('59年/大映東京)、「小早川家の秋」('61年/東宝)の2代目中村鴈治郎。中村玉緒も10代半ばで映画界入りしており、この時点で8歳年上の勝新太郎よりも映画への出演本数は圧倒的に多かったようです(この「続次郎長富士」と同年の出演作「大菩薩峠」('60年/大映)でブルーリボン助演女優賞を受賞している)。勝新太郎の方はまだ売り出し途上で、この作品でも長谷川一夫はもとより、市川雷蔵よりもずっと格下で、本郷功次郎とどっこいどっこいの扱いであるのが分かって興味深いです。序盤はむしろ小松村の七五郎を演じた本郷功次郎の方が目立っていたでしょうか(小松村七五郎が石松の「弟分」として描かれている)。それを、石松の最期のところで勝新太郎が盛り返したといった感じでしょうか。でも、結局最後は、次郎長の1対何百人(?)かの大殺陣で長谷川一夫がおいしいところを全部持っていってしまうのですが。市川雷蔵と根上淳の青年代官vs.刺客対決なんていうのもあったりして、まあ飽きさせない展開ではありました。
 
エノケンの森の石松 vhs3.jpg「エノケンの森の石松」●制作年:1939年●監督:中川信夫●脚本:小林正●撮影:唐沢弘光●音楽:栗原重一●口演:広沢虎造●原作:和田五雄●時間:72分(現存57分)●出演:榎本健一/竹久千恵子1937sep.jpg竹久千惠子エノケンの森の石松1935aug.jpg鳥羽陽之助/浮田左武郎/松ノボル/木下国利/柳田貞一/北村武夫/小杉義男/斎藤勤/近藤登/梅村次郎/宏川光子/竹久千恵子/柳家金語楼●公開:1939/08●配給:東宝(評価:★★★)
竹久千恵子(1937年:雑誌「映画之友」九月號/1935年:雑誌「日の出八月號附録:映画レビュー夏姿寫眞帖」)
 
続清水港  .jpg「清水港代参夢道中(続清水港)」●制作年:1940年●監督:マキノ正博●脚本:小国英雄●撮影:石本秀雄●音楽:大久保徳二郎●原作:小国英雄●時間:96分(現存90分)●出演:片岡千恵蔵/広沢虎造/沢村国太郎/澤村アキヲ/瀬川路三郎/香川良介/清水港 代参夢道中17shimizu.jpg清水港代参夢道中(続清水港)e.jpg志村喬/上田吉二郎/団徳麿/小川隆/若松文男/前田静男/瀬戸一司/岬弦太/大角恵摩/石川秀道/常盤操子/轟夕起子/美ち奴●公開:1940/07●配給:日活(評価:★★★☆)

大河内傳次郎(清水次郎長)
清水次郎長vhs_vhs.jpg清水次郎長2.jpg「清水次郎長」●制作年:1938年●監清水次郎長3.jpg督:萩原遼●製作:青柳信雄●脚本:八住利雄●撮影:安本淳●音楽:太田忠●原作:小島政二郎●時間:87分●出演:大河内傳次郎/大村千吉/鳥羽陽之助/横山運平/清川荘司/小杉義男/鬼頭善一郎/山口佐喜雄/永井柳太郎/河村弘千葉早智子s4.jpg二/千葉早智子/一の宮敦子/音羽久米子/山岸美代子●公開:1938/09●配給:東宝映画(評価:★★★)

千葉早智子(お蝶)

根上淳(用心棒・無明の仙人)/市川雷蔵(代官・山上藤一郎)  
続次郎長富士 NL.jpg続次郎長富士6.gif「続次郎長富士」●制作年:1960年●監督:森一生●製作:三浦信夫●脚本:八尋不二●撮影:牧田行正●音楽:小川寛興●時間:108分●出演:長谷川一夫/市川雷蔵/勝新太郎/本郷功次郎/月田昌也/根上淳/北原義郎/鶴見続次郎長富士(1960)03.jpg丈二/林成年/舟木洋一/中村豊/小林勝彦/近藤美恵子/阿井美千子/中村玉緒/毛利郁子/浜田雄史/石黒達也/香川良介/見明凡太朗/伊達三郎/越川一/光岡龍三郎/志摩靖彦/原聖四郎/東良之助/寺島雄作/小町瑠美子/美川純子/杉山昌三九/千葉敏郎/水原浩一/清水元津/南部彰三/佐々十郎/楠トシエ/寺島貢/羅門光三郎/尾上栄五郎/荒木忍/浜世津子/伊沢一郎市川雷蔵(代官・山上藤一郎).png続次郎長富士s.jpg/南条新太郎●公開:1960/06●配給:大映(評価:★★★☆)                                   
    
市川雷蔵(代官・山上藤一郎)/勝新太郎(森の石松)

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現代劇にもぴったりハマった市川雷蔵の「ある殺し屋」。カルト的珍品?「初春狸御殿」。

ある殺し屋 poster.jpgある殺し屋 dvd2.jpg ある殺し屋の鍵 dvd.jpg  初春狸御殿.jpg
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0ある殺し屋.jpg 「ある殺し屋」('67年/大映)は、普段は一杯飲屋の主人で刺身魚を自ら捌いたりしているというありきたりの市井の男だが、実はその裏の正体は、大物ヤクザの親分の暗殺などの仕事を大金で請け負い、それがどんな困難なものであっても完遂するプロの殺し屋(武器としても用いるのは太い針)―という主人公「新田」の役どころを、市川雷蔵(1931-1969/享年37)がニヒルかつスマートに演じている作品で、続編が1作だけ作られています。

「ある殺し屋」1.jpg「ある殺し屋」2.bmp 助けてやった女(野川由美子)に付きまとわれてもそれを一向に相手にせず、仲間のフリをして寄ってくるヤクザ(成田三樹夫)に裏切られても、全て織り込みで既に手は打ってある―「ある殺し屋」.jpgあまりにストイックかつクールで、ストーリーだけで見ると非現実的なB級(C級とでも言うか)作品になりそうなものですが、市川ある殺し屋dvd.jpg雷蔵が演じると、殺し屋稼業をしている時でも何だかサラリーマン風にも見えたりして、そうしたステレオタイプのハードボイルド・ヒーローとのギャップ感がなかなかいいリアリティを醸していて、時にはそれが却って凄みになったりもしています。ある殺し屋.jpg 口数は少ないが男気も秘めており、結局、女よりもむしろ男が惚れる男というのはこういうものかと納得させられる(勿論、新田の場合は女性にもモテるのだが)、心地よいハードボイルド作品となっています。
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「ある殺し屋の鍵」チラシ/「ある殺し屋の鍵 [DVD]
ある殺し屋の鍵 チラシ.jpgある殺し屋の鍵 dvd.jpg 因みに、同年12月に公開された同じく藤原審爾原作・森一生監督の「ある殺し屋の鍵」('67年/大映)では、市川雷蔵が演じる主人公の新田の表向きの職業は、一杯飲屋の主人から日本舞踊の師匠に替わっており(新田は、流れ包丁だったのか? それにしてもビックリの職替え)、脱税王(内田朝雄)とか建設会社の社長(西村晃)とか政財界の黒幕(山形勲)とか色々出できて話はスケールアップしていますが(3人とも新田に殺される役!)、新田のニヒルでスマートな様は変わっていません。原ある殺し屋の鍵 title.jpgある殺し屋の鍵 1シーン.jpg作ストーリーもしっかりしていますが、ストーリーもさることながら、演じている「市川雷蔵」そのものを楽しめる作品ではないかと思います (両作品とも撮影は宮川一夫)。
「ある殺し屋の鍵」市川雷蔵/佐藤友美

「ある殺し屋」1.bmp 市川雷蔵は映画史上最高の時代劇スターと謳われた名優で、映画も「眠狂四郎シリーズ」や「大菩薩峠シリーズ」など数的には時代劇の方の出演が主なのですが、現代劇でもこんなにしっくり来る歌舞伎界出身の俳優は少ないのではないかと思われ、37歳でガンのため夭折したことが惜しまれます(それでも160本近い映画に出演したのだが)。現代劇に出ている時は歌舞伎役者的なニオイがキレイさっぱり無くなるタイプで、そうした系統では、同じく眠狂四郎を演じた片岡孝男(現・片岡仁左衛門)などがいましたが(田村正和も演じていたなあ)、ちょっとそれらと比較にならないかも(早逝したことも、イメージが損なわれないという意味ではプラスに働いているが)。

木村 恵吾 「初春狸御殿」.jpg初春狸御殿 poster.jpg この人の時代劇の方は劇場ではあまり観ていないのですが、木村恵吾監督の「初春狸御殿」('59年/大映)というのは"珍品"。所謂"マゲものミュージカル"という類で、時代劇なのに若尾文子が演じるお姫様が着物にネックレスをしているというのが可笑しく、市川雷蔵と比較されることの多い、あの勝新太郎が、完璧な二枚目役者として出ています。木村恵吾監督はこれ以前にも「狸御殿」「歌う狸御殿」「春爛漫狸祭」「花くらべ狸御殿」を撮っていて(「初春狸御殿」はシリーズ最終作)、50年代にこうした陽気な大衆映画が受けた時期があったことを知っている人がどれぐらいいるか分かりませんが、今の若い人にとってはある種のカルトムービー的位置づけになるのかも。
勝新太郎 in「初春狸御殿」
初春狸御殿bb.jpg 初春狸御殿77.jpg


市川雷蔵 in「ある殺し屋」
「ある殺し屋」森一生 1967.jpgある殺し屋3.jpg「ある殺し屋」●制作年:1967年●監督:森一生●脚本:増村小林幸子 3.jpg保造/石松愛弘●撮影:宮川一夫●音楽:鏑木創●原作:藤原審爾「前夜」●時間:82分●出演:市川雷蔵/野川由美子/成田三樹夫/渚まゆみ/ある殺し屋小林幸子.jpg小林幸子(当時13歳)/小池朝雄/千波丈太郎/松下達夫/伊達三郎/「ある殺し屋」4.bmp「ある殺し屋」3.bmp浜田雄史●公開:1967/04●配給:大映●最初に観た場所:大井ロマン(87-10-31)(評価:★★★★)●併映:「ある殺し屋の鍵」(森一生)
市川雷蔵/佐藤友美 in「ある殺し屋の鍵」
「ある殺し屋の鍵」森一生 1967.jpgある殺し屋の鍵 vhs.jpg「ある殺し屋の鍵」●制作年:1967年●監督:森一生●構成:増村保造●脚本:小滝光郎●撮影:宮川一夫●音楽:鏑木創●原作:藤1ある殺し屋の鍵 山形.jpgある殺し屋の鍵 山形ド.jpg原審爾「消される男」●時間:82分●出演:市川雷蔵/西村晃/佐藤友美/山形勲/中谷一郎/金内吉男/ 伊達三郎/伊東光一/内田朝雄/玉置一恵/森内一夫/伊東義高/志賀明●公開:1967/12●配給:大映●最初に観た場所:大井ロマン(87-10-31)(評価:★★★★)●併映:「ある殺し屋」(森一生)
山形勲


若尾文子/市川雷蔵 in「初春狸御殿」
初春狸御殿_3.jpg木村 恵吾 「初春狸御殿」2.jpg「初春狸御殿」●制作年:1959年●監督・脚本:木村恵吾●製作:三浦信夫●撮影:今井ひろし●音楽:吉田正●時間:95分●出演:市川雷蔵/若尾文子/若尾文子 市川雷蔵 初春狸御殿a.jpg大井武蔵野館 1989.jpg勝新太郎/中村玉緒/金田一敦子/仁木多鶴子/水谷良重/中村雁治郎/真城千都世/近藤美恵子/楠トシエ/トニー・谷/菅初春狸御殿20.jpg井一郎/江戸屋猫八/三遊亭小金馬/左卜全/藤本二三代/神楽坂浮子/松尾和子/小浜奈々子/岸正子/美川純子/大和七海路/小町瑠美子/毛利郁子/嵐三右衛門●公開:1959/12●配給:大映●最初に観た場所:大井武蔵野館 (86-11-15)(評価:★★★?)●併映:「真田風雲録」(加藤泰)

《読書MEMO》
● 桂 千穂 『カルトムービー本当に面白い日本映画 1945→1980』['13年/メディアックス]
IMG_7ある殺し屋.JPG

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