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実質的な1位は自分が"隠れ"ファンを自認していた作品だった(笑)。

週刊文春「シネマチャート」全記録.jpg イノセント1シーン.jpg 家族の肖像 デジタル修復完全版.jpg ミリオンダラー・ベイビード.jpg
週刊文春「シネマチャート」全記録 (文春新書)』「イノセント」「家族の肖像」「ミリオンダラー・ベイビー」

 「週刊文春」の映画評「シネマチャート」が、1977(昭和42)年6月に連載を開始してから丸40年を迎えたのを記念して企画された本。40年間で4千本を超える映画に29名の評者が☆をつけてきたそうですが、その☆を今回初めて集計し、洋画ベスト200、邦画ベスト50選出しています。

地獄の黙示録01ヘリ .jpg 洋画のベスト1(評者の中で評価した人が全員満点をつけたもの)は10本あって(ただし、2003年までの満点が☆☆☆であるのに対し、2004年以降は☆☆☆☆☆で満点)、その中で評価(星取り)をしなかった(パスした)評者がおらず、全員が満点をつけたものが1977年から2003年までの間で9本、2004年以降が2本となっています。さらに、2003年までは評者の人数にもばらつきがあり、最も多くの評者が満点をつけたのがルキノ・ヴィスコンティ監督の「イノセント」('76年/伊・仏)(☆☆☆8人)、次がフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)(☆☆☆7人、無1人)となっています。

 選ばれた作品を見て、あれが選ばれていない、これが入っていないという思いは誰しもあるかと思いますが、巻頭に選定の総括として、中野翠、芝山幹朗両氏、司会・植草信和・元「キネマ旬報」編集長の座談会があり(中野翠、芝山幹朗両氏は現役の評者)、彼ら自身が選定に偏りがあるといった感想を述べていて、特定の作品が高く評価されたりそれほど評価されなかったりした理由を、その時の時代の雰囲気などとの関連で論じているのが興味深かったです。

 それにしても、全般に芸術映画の評価は高く、娯楽映画の評価はそうでもない傾向があるようですが、洋画ベスト200の実質的なトップにルキノ・ヴィスコンティ監督の「イノセント」がきたのは、この作品の"隠れ"ファンを自認していた自分としては意外でした(全然"隠れ"じゃないね)。しかも、この時の評者が、池波正太郎、田中小実昌、小森和子、品田雄吉、白井佳夫、渡辺淳など錚々たるメンバーだからスゴイ。彼らが「イノセント」を高く評価したというのも時代風潮かもしれませんが、だとすれば、「家族の肖像」('74年)、「ルードウィヒ/神々の黄昏」('80年)が共に62位と相対的に低いのはなぜでしょうか(ただし、個人的評価は、「イノセント」★★★★☆、「ルードウィヒ/神々の黄昏」★★★★、「家族の肖像」★★★★で、今回の順位に符号している)。

家族の肖像 78.jpg家族の肖像00.jpg(●「家族の肖像」は2020年に劇場でデジタルリマスター版で再見した。日本ではヴィスコンティの死後、1978年に公開されて大ヒットを記録し、日本でヴィスコンティ・ブームが起きる契機となった作品だが、上記の通り個人的評価は星5つに届いていない。今回、読書会のメンバーから、「家族」とその崩壊がテーマになっているという点で小津安二郎の「東京物語」に通じるものがあるという見解を聞き、そのあたりを意識して観たが、バート・ランカスター演じる大学教授は平穏な生活を求める自分が闖入者によって振り回された挙句、最後家族の肖像01.jpgには「家族ができたと思えばよかった」と今までの自分の態度を悔やんでいることが窺えた。ただし、「家族の肖像」の場合、主人公の教授がすでに独り身になっているところからスタートしているので、日本的大家族の崩壊を描いた「東京物語」と比べると状況は異なり、「家族」というモチーフだけで両作品を敷衍的に捉えるまでには至らなかった。一方、主人公の教授がヘルムート・バーガー演じる若者に抱くアンビバレントな感情には同性愛的なものを含むとの見解もあるようで、それはどうかなと思ったが、再見して、シルヴァーナ・マンガーノ演じるその若者を自分の愛人とする女性が、教授に対して「あなたも彼の魅力にやられたの」と言って二人の間に同性愛的感情があることを示唆していたのに改めて気づいた。)

 ☆☆☆☆☆で満点となった2004年以降で満点を獲得したのは、ゲイリー・ロス監督の「シービスケット」('03年/米)と クリント・イーストウッド監督の「ミリオンダラー・ベイビー」('04年/米)ですが、クリント・イーストウッド監督は洋画ベスト200に9作品がランクインしており、2位のルキノ・ヴィスコンティ監督の6作品を引き離してダントツ1位。この辺りにも、この「シネマチャート」における評価の1つの傾向が見て取れるかもしれません。クリント・イーストウッド監督の9作品のうち、個人的に一番良かったのは「ミリオンダラー・ベイビー」なので、自分の好みってまあフツーなのかもしれません。

ミリオンダラー・ベイビー01.jpg 「ミリオンダラー・ベイビー」は重い映画でした。女性主人公マギーを演じたヒラリー・スワンクは、イーストウッドに伍する演技でアカデミー主演女優賞受賞。作品自体も、アカデミー作品賞、全米映画批評家協会賞作品賞を受賞しましたが、公開時に、マギーが四肢麻痺患者となった後で死にたいと漏らしフミリオンダラー・ベイビー04.jpgランキーがその願いを実現させたことに対して、障がい者の生きる機会を軽視したとの批判があったようです。批判の起きる一因として、主人公=イーストウッドとして観てしまうというのもあるのではないでしょうか。「J・エドガー」('11年)などもそうですが、イーストウッドのこの種の映画は問題提起が主眼で、後は観た人に考えさせる作りになっているのではないかと思います。

 因みに、邦画ベスト50では1位の「愛のコリーダ2000」('00年)だけが評者全員(5人)が満点(☆☆☆)でした。この作品は、「愛のコリーダ」('76年)における修正を減らしたノーカット版により近いものであり、実質的なリバイバル上映だったと言えます(これ、現時点['19年]でDVD化されていない)。


●週刊文春「シネマチャート」満点作品(評者全員が満点をつけた作品)1977-2017
 (洋画)
 ・1975年「イノセント」 (伊)ルキノ・ヴィスコンティ監督
 ・1979年「地獄の黙示録」(米)フランシス・フォード・コッポラ監督
 ・1983年「風櫃(フンクイ)の少年」(台湾)侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督
 ・1984年「冬冬(トントン)の冬休み」(台湾)侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督
 ・1990年「コントラクト・キラー」(フィンランド)アキ・カウリスマキ監督
 ・1994年「スピード」(米)ヤン・デ・ボン監督
 ・2000年「愛のコリーダ2000」(仏・日)大島渚監督
 ・2001年「トラフィック」(米)スティーヴン・ソダーバーグ監督
 ・2002年「ボウリング・フォー・コロンバイン」(米)マイケル・ムーア監督
 ・2006年「シービスケット」(米)ゲイリー・ロス監督
 ・2004年「ミリオン・ダラー・ベイビー」 (米)クリント・イーストウッド監督

Inosento(1976)
イノセント .jpgInosento(1976).jpg「イノセント」●原題:L'INNOCENTE●制作年:1976年●制作国:イタリア・フランス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ジョヴァンニ・ベルトルッチ●脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ/ルキノ・ヴィスコンティ●撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス●音楽:フランコ・マンニーノ●原作:ガブリエレ・ダヌンツィオ「罪なき者」●時間:129分●出演:ジャンカルロ・ジャンニーニ/ラウラ・アントネッリ/ジェニファー・オニール/マッシモ・ジロッティ/ディディエ・オードパン/マルク・ポレル/リーナ・モレッリ/マリー・デュボア/ディディエ・オードバン●日本公開:1979/03●最初に観た場所:池袋文芸坐 (79-07-13)●2回目:新宿・テアトルタイムズスクエア (06-10-13) (評価★★★★☆)●併映(1回目):「仮面」(ジャック・ルーフィオ)

Jigoku no mokushiroku (1979)
Jigoku no mokushiroku (1979).jpg「地獄の黙示録」●原題:APOCALYPSE NOW●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督・製作:フランシス・フォード・コッポラ●脚本:ジョン・ミリアス/フランシス・フォード・コッポラ/マイケル・ハー(ナレーション)●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:カーマイン・コッポラ/フランシス・フォード・コッポラ●原作:ジョゼフ・コンラッド「地獄の黙示録 デニス・ホッパー_11.jpg闇の奥」●時間:153分(劇場公開版)/202分(特別完全版)●出演:マーロン・ブランド/ロバート・デュヴァル/マーティン・シーン/フレデリック・フォレスト/サム・ボトムズ/ローレンス・フィッシュバーン/アルバート・ホール/ハリソン・フォード/G・D・スプラドリン/デニス・ホッパー/クリスチャン・マルカン/オーロール・クレマン/ジェリー・ジーズマー/トム・メイソン/シンシア・ウッド/コリーン・キャンプ/ジェリー・ロス/ハーブ・ライス/ロン・マックイーン/スコット・グレン/ラリー・フィッシュバーン(=ローレンス・フィッシュバーン)●日本公開:1980/02●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:銀座・テアトル東京(80-05-07)●2回目:高田馬場・早稲田松竹(17-05-07)(評価★★★★)●併映(2回目):「イージー・ライダー」(デニス・ホッパー)

家族の肖像 デジタル・リマスター 無修正完全版 [DVD]
家族の肖像.jpg家族の肖像 dvd.jpg「家族の肖像」●原題:GRUPPO DI FAMIGLIA IN UN INTERNO(英:CONVERSATION PIECE)●制作年:1974年●制作国:イタリア・フランス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ジョヴァンニ・ベルトルッチ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ●撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス●音楽:フランコ・マンニーノ●時間:121分●出演: バート・ランカスター/ヘルムート・バーガー/シルヴァーナ・マンガーノ/クラウディア・マルサーニ/ステファノ・パトリッツィ/ロモロ・ヴァリ/クラウディア・カルディナーレ(教授の妻:クレジットなし)/ ドミニク・サンダ(教授の母親:クレジットなし)●日本公開:1978/11●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋・文芸座(79-09-24)●2回目(デジタルリマスター版):北千住・シネマブルースタジオ(20-11-17)(評価:★★★★)●併映(1回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ルキノ・ヴィスコンティ)

ルートヴィヒ 04.jpgルードウィヒ 神々の黄昏 ポスター.jpg「ルートヴィヒ (ルードウィヒ/神々の黄昏)」●原題:LUDWIG●制作年:1972年(ドイツ公開1972年/イタリア・フランス公開1973年)●制作国:イタリア・フランス・西ドイツ●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ウーゴ・サンタルチーア●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/エンリコ・メディオーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ●撮影:アルマンド・ナンヌッツィ●音楽:ロベルト・シューマン/リヒャルト・ワーグナー/ジャック・オッフェンバック●時間:(短縮版)184分/(完全版)237分●出演:ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー/トレヴァー・ハワード/シルヴァーナ・マンガーノ/ゲルト・フレーベ/ヘルムート・グリーム/ジョン・モルダー・ブラウン/マルク・ポレル/ソーニャ・ペドローヴァ/ウンベルト・オルシーニ/ハインツ・モーグ/マーク・バーンズ1962年の3人2.jpgロミー・シュナイダー.jpg●日本公開:1980/11(短縮版)●配給:東宝東和●最初に観た場所:(短縮版)高田馬場・早稲田松竹(82-06-06) (完全版)北千住・シネマブルースタジオ(14-07-30)(評価:★★★★)
ロミー・シュナイダー(Romy Schneider,1938-1982)
ロミー・シュナイダー(手前)、アラン・ドロン、ソフィア・ローレン(1962年)

シルヴァーナ・マンガーノ in 「ベニスに死す」('71年)/「ルートヴィヒ」('72年)/「家族の肖像」('74年)
シルヴァーナ・マンガーノ.jpg

ナオミ・ワッツ(Naomi Watts1968- )(2012年)
大統領たちが恐れた男 j.エドガー dvd2.jpgナオミ・ワッツ.jpg「J・エドガー」●原題:J. EDG「J・エドガー」01.jpgAR●制作年:2011年●制作国:アメリカ●監督:クリント・イーストウッド●製作:クリント・イーストウッド/ ブライアン・グレイザー/ロバート・ロレンツ●脚本:ダスティン・ランス・ブラック●撮影:トム・スターン●音楽:クリント・イーストウッド●時間:137分●出演:レオナルド・ディカプリオ/ ナオミ・ワッツ/アーミー・ハマー/ジョシュ・ルーカス/ジュディ・デンチ/エド・ウェストウィック●日本公開:2012/01●配給/ワーナー・ブラザーズ(評価★★★☆)

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]」 モーガン・フリーマン(アカデミー助演男優賞)
ミリオンダラー・ベイビー.jpgミリオンダラー・ベイビー02.jpg「ミリオンダラー・ベイビー」●原題:MILLION DOLLAR BABY●制作年:2004年●制作国:アメリカ●監督:クリント・イーストウッド●製作:ポール・ハギス/トム・ローゼンバーグ/アルバート・S・ラディ●脚本:ポール・ハギス●撮影:トム・スターン●音楽:クリント・イーストウッド●原案:F・X・トゥール●時間:133分●出演:クリント・イーストウッド/ヒラリー・スワンク/モーガン・フリーマン/ジェイ・バルチェル/マイク・コルター/ルシア・ライカ/ブライアン・オバーン/アンンソニー・マッキー/マーゴ・マーティンデイル/リキ・リンドホーム/ベニート・マルティネス/ブルース・マックヴィッテ●日本公開:2005/05●配給:ムービーアイ=松竹●評価:★★★★

《読書MEMO》
●『観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88』 (2015/06 鉄人社)
ミリオンダラー・ベイビー_7893.JPG

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ヘンリー・フォンダ、ヴィクター・マチュアが良く、モノクロの味わいがある「荒野の決闘」。

my-darling-clementine.jpg 荒野の決闘 dvd.jpg     GUNFIGHT AT THE O.K. CORRAL.jpg OK牧場の決斗 dvd.jpg
「荒野の決闘」輸入版ポスター/「荒野の決闘 [DVD] ヘンリー・フォンダ/「OK牧場の決斗」輸入版ポスター/「OK牧場の決斗 [DVD]」バート・ランカスター/カーク・ダグラス

Henry Fonda in My Darling Clementine.bmp 牛追いの旅の途中で逗留した墓場の町トゥームストーンで、牛を盗まれ末弟を殺されたワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)ら兄弟は、犯人を捜すべく町に留まり保安官職を引き受けるが、町には賭博師ドク・ホリディ(ヴィクター・マチュア)がいた。ワイアットは根っからの悪人ではないドクに一目置き、友情を抱く。やがてドクを追って東部からクレメンタイン(リンダ・ダーネル)という女性が来て、ワイアットは密かに恋心を抱くも彼女のドクへの想いを知り、その希望を叶えるためにも酒浸りのドクに酒を控えるよう忠告するが、は自らが病気であることを悟るドク、彼女につれない態度をとる―。
ヘンリー・フォンダ/リンダ・ダーネル

my darling clementine.jpg『荒野の決闘』(1946).jpg 「荒野の決闘」は1946年のジョン・フォード作品ですが、ヘンリー・フォンダの映画と言ってもいいかも(そもそも、ジョン・フォードがジョン・ウェインを使わずヘンリー・フォンダを起用している点が興味深い)。もの静かながらも正義感と責任感を裡に秘め、武骨ながらも時にユーモアも見せるヘンリー・フォンダ独特のワイアット・アープ像が印象的でした。

 '82年リヴァイバル公開時の「いとしのクレメンタイン」というタイトル(実はこれが原題)からしても、メロドラマ的要素の強い作品のように思われていますが、ワイアット・アープとドク・ホリディの男の友情(精神的なホモ・セクシュアルに近い感じも)が軸となっている作品であるとも言えるのでは。

 弟を殺した犯人がクラントン一家と分かり、残されたアープ3兄弟はドク・ホリディと共に、牧場主クラントンと4人の息子兄弟を相手に戦うことになりますが、これが有名な「OK牧場の決闘」―。

My Darling Clementine (1946).jpg この作品の他にも「OK牧場の決斗」('57年/ジョン・スタージェス監督、バート・ランカスター、カーク・ダグラス主演)をはじめ何度か映画の素材になっており、90年代に入ってもトゥームストーン('93年/ジョージ・P・コスマトス監督、カート・ラッセル、ヴァル・キルマー主演)、ワイアット・アープ('94年/ローレンス・カスダン監督、ケヴィン・コスナー、デニス・クエイド主演)と続きましたが、比べると細部においてそれぞれ筋立てが異なる部分があって興味深いです。

 実際には「決闘」ではなく、保安官が銃所持者を武装解除しようとした際に牧舎付近で発生した突発的な銃撃戦だったそうですが(タイトル的には「OK牧場の決斗」の原題(Gunfight at the O.K. Corral)が正しく、僅か2分間で決着したという点は「トゥームストーン」が史実に忠実に作られている)、但し、それまでにアープ兄弟やドク・ホリディとクライトン一家の間で様々な確執があったのは事実のようです。

ビクター・マチュア.jpg 「荒野の決闘」では、ワイアット・アープとドグ・ホリディは酒場で出会って意気投合し、ドク・ホリディに惚れていた酒場の女が銃で撃たれる事件が起きて、ドクがその時に彼女の手術をしたために、彼が元医者であることが初めて皆に知れるというようになっていますが、「OK牧場の決斗」「トゥームストーン」「ワイアット・アープ」では2人は以前から親友だったことになっています。

ビクター・マチュア

 この他に、「荒野の決闘」では、町の酒場で酒ですっかりダメになった役者が荒くれ男たちに絡まれて無理矢理「演劇芸」をさせられるものの「ハムレット」の台詞を忘れて絶句したところ、ドグ・ホリディがつぶやくように後を続けるという場面があり、彼が東部で教育を受けたインテリであることが示唆されています(西部育ちの武骨なワイアット・アープは、只々茫然とそれを見遣る)。

 「荒野の決闘」のワイアット・アープが憧憬を抱いたクレメンタインのような清楚なキャラクターの女性は、「トゥームストーン」でもドグに寄り添う恋人が一応は登場しますが「OK牧場の決斗」には登場せず、代わりに「OK牧場の決斗」ではドグ・ホリディの"情婦"ケイト(ジョー・ヴァン・フリート)が登場し、これはかなりのあばずれ女(「荒野の決闘」の酒場女がこれに該当か)、一方のワイアット・アープの方も、「OK牧場の決斗」では美貌の女賭博師ローラ(ロンダ・フレミング)と、「トゥームストーン」では聡明な舞台女優と、「ワイアット・アープ」では町の美しい踊子と結ばれており、この辺りにくるとどれが本当の話かよく分かりませんが、少なくともドグ・ホリディの恋人に想いを馳せるといった三角関係のようなことは他の3作にはありません。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ.jpg 何よりも「荒野の決闘」が他の作品と異なるのは、この決闘でドク・ホリディが自らの命をあっさり投げ出してしまうことで(ジョン・フォードによって美化されている?)、実在の彼は21歳で肺結核に罹り、医師から余命数カ月と宣告されていたため"死に場所"を探していた可能性は高いですが、ホントは「決闘」 後6年間生きていて、享年は36歳、と言うことは、「決闘」時は30歳。一方ワイアット・アープは、「決闘」時は33歳で、80歳まで生きています。

和田 誠 氏3.jpg 和田誠氏は『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』('75年/文藝春秋)の中で「OKコラルの決闘は明治14年、ドグ・ホリディが死んだのは明治20年、ワイアット・アープが死んだのは昭和4年だそうである」と、いつ頃のことか想像し易いよう和暦に置き換えて書いています。
お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ

「OK牧場の決闘」チラシ
OK牧場の決闘 チラシ.jpgGunfight at the O.K. Corral2.jpg 「OK牧場の決斗」も西部劇の傑作には違いなく、アクション味やカタルシスの度合いは「荒野の決闘」より上かも知れませんが、個人的には「荒野の決闘」の静かな雰囲気の方が好きかなあ(モノクロームの味わいもある)。

バート・ランカスター/カーク・ダグラス

OK牧場の決斗09.jpg "娯楽作品"vs."文芸作品"という感じで、比較するのにOK牧場の決斗7.jpg無理があるかも知れませんが、ワイアット・アープ像は、保安官然とした「OK牧場の決斗」のバ―ト・ランカスターよりも、じわっと人間味が出ている「荒野の決闘」のヘンリー・フォンダの方Dennis Hopper  in Gunfight at the O.K. Corral .jpgカーク・ダグラス.jpgが上、ドグ・ホリディは誰が演じても受ける"映画向き"のキャラクターという気はしますが、これもヴィクター・マチュアの存在感が、カーク・ダグラス(これも、この作品でのバ―ト・ランカスターと比べると悪くはないが)を上回っているように思います(但し、先に挙げた和田誠氏の『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』によると、この「荒野の決闘」でのヴィクター・マチュアの一般的評価はあまり高くないようだ)。
カーク・ダグラス(1916-2020/103歳没

デニス・ホッパー/バート・ランカスター

 因みにワイアット・アープは晩年ジョン・フォードと親交を持ち、そのことがフォードの映画作りにも影響しているようであり(結局、「荒野の決闘」が最も創意を含んでいる?)、この作品のワイアット・アープ、と言うよりヘンリー・フォンダは、「アメリカ的騎士道」の体現者といった感じがしました(「駅馬車」('39年)のジョン・ウェインにもそれが当て嵌まる。タイプは"動"のジョン・ウェインと"静"のヘンリー・フォンダで異なるが)。

OK牧場の決闘 ディミトリ・ティオムキン.jpg 「荒野の決闘」のテーマ曲「いとしのクレメンタイン」は、歌詞に"a miner, forty-niner"とあるように、ゴールドラッシュ時代を回顧したアメリカ民謡で、"Clementine"は亡くなった恋人(抗夫の娘)の名、日本では探検・登山家の西堀栄三郎が作詞した「雪山讃歌」として知られています。

 一方の「OK牧場の決斗」のテーマ曲も、同じくジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」('60年)のテーマ曲などと並んで、西部劇のテーマ曲としては超有名で、フランキー・レイン(連続TVドラマ「ローハイド」のテーマもこの人が歌っていた)の歌が作中の場面の変わり目に何度か挿入され、歌詞がドラマの語り手のような役割を果たして効果をあげています。
Frankie Laine :Gunfight At The OK Corral 

墓石と決闘d.jpg墓石と決闘1.jpg ジョン・スタージェス監督自身は「OK牧場の決斗」の内容に不満であったと言われ、この10年後、「OK牧場の決斗」の後日譚をより史実に近い形で描いた「墓石と決闘(Hour of the Gun)」('67年)を撮っていますが、配役はワイアット・アープがジェームズ・ガーナー、ドク・ホリデイがジェイソン・ロバーズに変わっています(OK牧場での決斗シーンから映画が始まるので、正続で描かれ方を比べてみるのもいい)。
墓石と決闘 [Blu-ray]

「荒野の決闘」パンフレット
リンダ・ダーネル.jpg荒野の決闘 パンフレット.jpgMY DARLING CLEMENTINE.jpg「荒野の決闘(いとしのクレメンタイン)」●原題:MY DARLING CLEMENTINE●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・フォード●製作:サミュエル・G・エンゲル●脚本:サミュエル・G・エンゲル/ウィンストン・ミラー●撮影:ジョー・マクドナルド●音楽:シリル・モックリッジ/アルフレッド・ニューマン●原作:サム・ヘルマン/スチュアート・N・レイク●時間:97分●自由ヶ丘劇場2.jpgヒューマックスパビリオン自由が丘.jpg出演:ヘンリー・フォンダ/ヴィクター・マチュア/リンダ・ダーネル/キャシー・ダウンズ/ ウォルター・ブレナン/ウォード・ボンド/ティム・ホルト/ジョン・アイアランド/ジェーン・ダーウェル/アラン・モーブレイ/ラッセル・シンプソン/メエ・マーシュ/フランシス・フォード●日本公開:1947/08●配給:20世紀フォックス=セントラル●最初に観た場所:自由が丘・自由が丘劇場(85-02-17)(評価:★★★★)●併映「わが谷は緑なりき」(ジョン・フォード)
自由が丘劇場 自由が丘駅北口徒歩1分・ヒューマックスパビリオン自由が丘(現在1・2Fはパチンコ「プレゴ」)1986(昭和61)年6月閉館

「OK牧場の決闘」パンフレット
ロンダ・フレミング1.jpgOK牧場の決斗 パンフレット.jpg「OK牧場の決斗」●原題:GUNFIGHT AT THE O.K. CORRAL●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・スタージェス●製作:ハル・B・ウォリス●脚本:レオン・ウーリス●撮影:チャールズ・ラング・Jr●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョージ・スカリン●時間:122分●出演:バート・ランカスター/カーク・ダグラス/ロンダ・フレミング/ライル・ベトガー/ジョン・アイアランド/ジョー・ヴァン・フリート/リー・ヴァン・クリーフ/アール・ホリマン/デニス・ホッパ/ケネス・トビー/デフォレスト・ケリGunfight at the O.K. Corral(1957).jpgー/「OK牧場の決斗」ホッパー.jpgジャック・イーラム/ブライアン・ハットン/フランク・フェイレン/マーティン・ミルナー/オリーヴ・ケリー/テッド・デ・コルシア●日本公開:1957/07●配給:パラマウント映画(評価:★★★☆)

Gunfight at the O.K. Corral(1957) 

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私設部隊による人質奪回。原作も映画も大いに楽しめたのは、"ノンフィクション"だからか。

鷲の翼に乗って (Playboy books).jpg鷲の翼に乗って 集英社文庫 上.jpg 鷲の翼に乗って 集英社文庫 下.jpg 「鷲の翼に乗って」 (86年/米).jpg
鷲の翼に乗って(上) (集英社文庫)』『鷲の翼に乗って(下) (集英社文庫)』 TV-M「鷲の翼に乗って」('86年)
鷲の翼に乗って (Playboy books)

 1978年、イランではパーレヴィ王朝の独裁に対し民衆の怒りが昂り、テヘランでは軍と市民の衝突が繰り返されていたが、そうした中、米テキサス州ダラスに本社を置くコンピュータ関連会社EDSの重役2人が不当逮捕され、EDS会長ロス・ペローは在イラン米大使館やキッシンジャー前国務長官に働きかけて救出を依頼するが失敗、遂に自力での人質救出をすべく、社員による救出チームを組織し、元グリーンベレーのアーサー・D・"ブル"・サイモンズ大佐に協力を依頼する―。

On Wings of Eagles (VHS, 1991).jpg鷲の翼に乗って On Wings of Eagles .jpg 1983年に英国の作家ケン・フォレットが発表した小説で(原題:On Wings of Eagles)、実際にあった事件を取材して作品化したものであり(単行本帯には「ケン・フォレット初のノンフィクション」とあるが、"ノンフィクション小説"という感じか)、本書に登場するEDS会長ロス・ペローという人物は、1992年の大統領選に民主・共和両党とは別に第3政党を立ち上げ立候補したあのロス・ペロー氏です(小柄だが気骨ありそうな老人という印象)。

ロス・ペロー 大統領選.jpg この選挙は、一般投票率が、ビル・クリントン43%、ジョージ・ブッシュ37%、ペロー19%という結果で、彼の善戦は、パパ・ブッシュの票を獲り込んだため、クリントン大統領誕生の副次的要因となったと言われていますが、自分で傭兵部隊を作って直接行動に出るというのは、一部のアメリカ人にはいかにも受けそうだなあと思います。
On Wings of Eagles [VHS] [Import]

 ストーリーは、複雑な政治背景の部分以外は冒険小説風で、比較的すらすら読めてしまうのですが、実話がベースになっていることを思って読めば、それなりの重みも感じられ、但し、どの程度の脚色がされているのかは測りかねるといったところでしょうか(大統領やホワイトハウスはかなり無能・無力な存在として描かれている)。

 そうした憶測は抜きにして、サイモンズ大佐らによる計画立案から必要物資や人員の調達、拠点確保から行動実施までの流れは、ビジネス書によくある「Plan(計画)→Do(実行)→See(統制)」の所謂「PDSサイクル」の実践版のようでもあり、「リーダーシップとは何か」ということのケーススタディのようでもあります。

鷲の翼に乗って 輸入版DVD.jpg鷲の翼に乗って 輸入版VHS.jpg '86年にアンドリュー・V・マクラグレン監督によってTⅤ映画化されており、サイモンズ大佐を演じたバート・ランカスターは貫禄の演技で、ああ、この人なら部下はついてくるなあと。

On Wings of Eagles [VHS] [Import]
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 輸入版VHS(英語・ペルシャ語)

鷲の翼に乗って  ON WING OF EAGLES 1986.jpg 慎重なサイモンズは、社員たちに様々な事態を想定した訓練を施しますが、イランに入ってからの交渉は難航し、革命に乗じて何とか刑務所から2人を脱獄させた後も、トルコへの脱出行の最中に不測の事態が次々発生し、そうした際にそれらの訓練が役立つ―では、サイモンズは超人的な予言者のような人物なのかというとそうではなく、結果的に実行されることの無かった作戦の訓練も数多くこなしていたわけで、要するに、あらゆる不測の事態を想定して、入念に計画し、備えたということことなのでしょう。

 TV版のためか、特別凝った演出がされているわけでもなく、原作を忠実に追うことを主眼としているようで、爆弾を作ったり、暗号を作成したりするといった細部まで映像化されており、そのために約4時間の長尺にはなっていますが、起伏に富んだストーリーを、原作同様に飽きさせず一気に見せます。

地獄の7人.jpg地獄の7人 ちらし.jpg そう言えば、テッド・コチェフ監督の「地獄の7人」(′83年/米)という、ベトナム戦争終結後10年経っても戻らない息子の生存を信じ、息子のかつての戦友を集めて現地へ救出に向かう大佐(「鷲の翼に乗って」 のサイモンズ大佐と同じく退役軍人)の話の映画があって(主演はジーン・ハックマン)、同じ「私設部隊」でも、「地獄の7人」の方はどちらかというと"傭兵"というより"OB会"という感じが色濃かったでしょうか。

地獄の7人 [DVD]

地獄の7人 ジーン・ハックマンs.jpg 「地獄の7人」では、男たちの友情や親子の愛情がテーマとなっていましたが、年寄りにアクションはキツいんじゃないかとつい余計な心配してしまったりするのは、元になっているのがフィクションだからでしょう。そうした意味では、「鷲の翼に乗って」のような「事実に立脚した」とか「実話に基づく」という謳い文句は強みだなあと(それさえ信じ込ませれば怖いもの無し?)。原作も映画も共に大いに楽しめたのは、自分がその"ノンフィクション効果"を、大いに受けたからかも。
ジーン・ハックマン in「地獄の7人」

"On Wings of Eagles" (1986)
鷲の翼に乗ってON WING OF EAGLES 1986.jpgON WING OF EAGLE 1986.jpg「鷲の翼に乗って」●原題:ON WING OF EAGLES●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・V・マクラグレン●音楽:ローレンス・ローゼンタール●原作:ケン・フォレット●時間:235分●出演:バート・ランカスター/リチャード・クレンナ/ポール・ル・マット/ジム・メッツラー/イーサイ・モラレス/ジェームズ・ストリウス/ローレンス・プレスマン/コンスタンス・タワーズ/カレン・カールソン/シリル・オライリー●テレビ映画:1990/10 テレビ東京(評価:★★★★)

地獄の7人 ジーン・ハックマンl.jpg「地獄の7人」●原題:UNCOMMON VALOR●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コッチェフ●製作:ジョン・ミリアス/バズ・フェイトシャンズ●脚本:ジョー・ゲイトン●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ジェームズ・ホーナー●時間:105分●出演:ジーン・ハックマン/ロバート・スタック/フレッド・ウォード/レブ・ブラウン,/パトリック・スウェイジ●日本公開:1984/06●配給/パラマウント映画●最初に観た場所:三軒茶屋映劇(85-05-25)(評価★★★)●併映:「ゴールド・パピヨン」(ジュスト・ジャキャン)

 【1986年文庫化[集英社文庫(上・下)]】 

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世に出るのが早過ぎた(?)エコロジー映画。
ローカル・ヒーロー/夢に生きた男3.jpgローカル・ヒーロー/LOCAL HERO .jpgローカル・ヒーロー夢に生きた男1.jpg ローカル・ヒーロー夢に生きた男2.jpg 
ローカル・ヒーロー 夢に生きた男 [DVD]」「ローカル・ヒーロー [DVD]
バート・ランカスター/ピーター・リガート

ローカル・ヒーローLOCAL HERO.jpg テキサスに本拠を置くアメリカ最大の石油会社のエリート社員マッキンタイヤ(ピーター・リガート)は、石油コンツェルンの会長(バート・ランカスター)から石油コンビナートの土地買収を命じられて、スコットランドの漁村へ派遣されるが、地元住民の反対に合うかと思われた土地買収は、村人の方が「金が入るなら」と意外と積極的で、ところがいよいよ契約という段階で、ベン(フルトン・マッケイ)という入江の小屋に住む老人が所有地を手放すことに強く抵抗していることが判り、交渉が難航し始める―.

local hero 1983 2.jpg 一応はビジネスドラマみたいな体裁で話は進みますが、まさかラストがこうなるとは―。エリート社員マッキンタイヤの趣味は天体観測で、石油コンツェルン会長からは土地買収の交渉状況と併せてスコットランドの星空の模様を電話で知らせることも命じられていたのですが、そしたら、偶然に大流星群を発見することになり、会長はそれを見るため現地へ飛びますが、その前にベン老人との交渉を片付けてしまおうと彼の小屋に寄ることになります。
バート・ランカスター
ビル・フォーサイス 「ローカル・ヒーロー/夢に生きた男」.jpg マッキンタイヤと村人の間で土地買収に向けて親和的基調で話が進むなか、老人との直接交渉のために出向いたバート・ランカスター演じる会長、いかにも強面(こわもて)の石油王と、村の頑固老人の、絶対に「他人の言いなりにはならなさそうな者」同士の一騎打ちの結末はどうなるのか、これは本編を観てのお楽しみといったところでしょうか。

LOCAL HERO3.jpg 英国風ユーモア、スコットランド美しい自然と純朴な人々、心地良い音楽―振り返ればどれもが旨く調和していて、しかも最後に観る側を満たされた気分にしてくれる作品だったと思うのですが、ロードの際もロード終了後も一部でしか評判にならなかったのは、ビジネスドラマなのか、ある種のメルヘンなのか、規定の仕様が無かったという面があるためではないでしょうか(誰をターゲットに告知してよいのかが難しい)。今ならば、「エコロジー映画」ということでドーンと打ち出せるのだろうけれども...。そうした意味では、ちょっと世に出るのが早過ぎた作品です。

「大井武蔵野館」ぼうすの小部屋 - おでかけ写真展より/大井武蔵野館 1999(平成11)年1月31日閉館
大井武蔵野館 閉館日2.jpg大井武蔵野館2.jpg大井武蔵野館.jpg「ローカル・ヒーロー/夢に生きた男」●原題:LOCAL HERO●制作年:1983年●制作国:イギリス●監督・脚本:ビル・フォーサイス●製作:デイヴィッド・パトナム●撮影:クリス・メンゲス●音楽:マーク・ノップラー●時LOCAL HERO 1983.jpg間:112分●出演:バート・ランカスター/ピーター・リガート/デニス・ローソン/ピータ大井武蔵野館 閉館日.jpgー・キャパルディ/フルトン・マッケイ/ジェニー・シーグローヴ/ノーマン・チャンサー/クリス・ロジツキー●日本公開:1986/04●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:大井武蔵野館 (87-11-03)(評価:★★★★☆)●併映:注目すべき人々との出会い」(ピーター・ブルック)
大井武蔵野館 時代屋の女房.jpg大井武蔵野館 閉館日(1999(平成11)年1月31日)

大井武蔵野館・大井ロマン(1985年8月/佐藤 宗睦 氏)
大井武蔵野館・大井ロマン.jpg

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ナショナリズムからスタートし、「スモールタウンの幻像」を携えたベースボール。
ベースボールの夢.jpg      フィールド・オブ・ドリームス [4K.jpg フィールド・オブ・ドリームス22.jpg
ベースボールの夢―アメリカ人は何をはじめたのか (岩波新書 新赤版 1089)』〔'07年〕 フィールド・オブ・ドリームス 4K Ultra HD+ブルーレイ[4K ULTRA HD + Blu-ray]」['19年]

 ベースボールは、南北戦争の将軍アブナー・ダブルデーが若い頃、1839年にニューヨーク州中部の村・クーパーズタウンで始めたのが最初とされ、以来当地は「野球殿堂」が建てられるなど"ベースボール発祥の地"とされていますが、この"ベースボールの起源"論については、英国生まれのジャーナリスト、ヘンリー・チャドウィックが、英国でそれ以前から行われていた「ラウンダーズ」がベースボールの起源であると主張していたとのことです。

Al_Spalding_Baseball.jpg ところが、これを否定し、調査委員会まで設置して「クーパーズタウン伝説」を強引に「事実」にしてしまったのが、往年の名投手でスポーツ用品メーカーの創立者としても知られるアルバート・G・スポルディング(Albert Spalding)で、本書前半部では、こうしたベースボールの成り立ちと歴史の"捏造"過程が描かれていて興味深く読めます。
Albert Spalding (1850-1915) 
      

Ty Cobb.jpg ベースボールは、英国のクリケットなどとの差異において、ナショナル・スポーツとしての色合いを強め、実業家スポルディングが、ベースボールを通じて「ミドルクラス・白人・男性」のイメージを「アメリカ人」のあるべき姿と重ね(これが後に排他的人種主義にも繋がる)、ミドルクラスを顧客としたビジネスとして育て上げていく、そうした中、それを体現したような選手・打撃王タイ・カップが現れ、さらに彼がコカ・コーラの広告に登場するなどして、商業主義とも結びついていく―。
Tyrus Raymond "Ty" Cobb (1886-1961)

 本書では、ややスポルディング個人の影響力を過大評価している感じもありますが、後半部は社会学者らしく、アメリカにフロンティアが無くなった南北戦争後、地方に分散する従来のスモールタウンを基盤とした社会から、産業の発展に伴って大都市に人口が集中する社会への転換期を迎える、そうした過程に呼応した形で、ベースボールが「ゲームの源泉としての農村」、「農村から都市へのゲームの発展」という流れにおいて、「スモールタウンの幻像」を携えながら振興していく構図を捉えていてます。

ナチュラル.jpgフィールド・オブ・ドリームス.gif 個人的はこの部分に関しては、そういう見方もあるかもしれないと思い、確かに、映画「フィールド・オブ・ドリームス」('89年/ケビン・コスナー主演)や「ナチュラル」('84年/ロバート・レッドフォード主演)も、著者の言う「農村神話」というか、田舎(スモールタウン)へのノスタルジーみたいなものを背負っていたなあと。

フィールド・オブ・ドリームス.jpg 「フィールド・オブ・ドリームス」は、アイオワ州のとうもろこし畑で働いていた0フィールド・オブ・ドリームス.jpg農夫(ケビン・コスナー)が、ある日「それを造れば彼が来る」という"声"を聞き、畑を潰して野球場を造ると、「シューレス・ジョー」ことジョー・ジャクソンなど過去の偉大な野球選手たナチュラル レッドフォード.jpgTHE NATURAL 1984.jpgちの霊が現れ、その後も死者との不思議な交流が続くというもので、「ナチュラル」は、ネブラスカ州の農家の息子で若くして野球の天才と呼ばれた男(ロバート・レッドフォード)が、発砲事件のため球界入りを遅らされるが、35歳にして「ニューヨーク・ナイツ」に入団し、"奇跡のルーキー"として活躍するというもの。

 この2作品は、アメリカ中部の田舎が物語の最初の舞台になっていること、"家族の絆"という古典的なテーマのもとにハッピーエンドで収斂していること、「夢」そのもの(「フィールド・オブ・ドリームス」)または「夢みたいな話」(「ナチュラル」ではレッドフォードが最後の公式戦でチームを優勝に導く大ホームランを放つ)である点などで共通していて、一面では日本人のメンタリティにも通じる部分があるように思え、興味深かったです(但し、とうもろこし畑を潰して自力で野球場を建てるというのは、日本人には思いつかないスゴイ発想かも)。

Derek Jeter.jpg こうした今まで観た映画のことを思い浮かべながらでないと、歴史的イメージがなかなか湧かない部分もありましたが、個人的には、例えば、アフリカ系とアングロサクソン系の混血であるデレク・ジーターが、ここ何年にもわたり"NYヤンキースの顔"的存在であり、アメリカ同時多発テロ事件の後はニューヨークそのものの顔になっていることなどは、ベースボールが人種差別という歴史を乗り越え、近年ナショナル・スポーツとしての色合いが強まっているという意味で、何だか象徴的な現象であるような気がしています。

Derek Jeter(New York Yankees)

FIELD OF DREAMS.jpg(2020年8月13日に、映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台となったダイアーズビルの野球場でシカゴ・ホワイトソックス 対 ニューヨーク・ヤンキースの試合を開催することが前年に決まっていたが、そ2フィールド・オブ・ドリームス kyujyo.jpgの後、新型コロナウィルス感染拡大による2020年のMLBのシーズン短縮化に伴い、ホワイトソックスの対戦相手はセントルイス・カージナルスに変更され、さらに、8月3日になって、移動の困難から試合開催の中止が発表された。)

映画「フィールド・オブ・ドリームス」に登場する野球場
(撮影に際し実際に建造されたもの) 
  
      
フィールド・オブ・ドリームス05.jpg「フィールド・オブ・ドリームス」●原題:FIELD OF DREAMS●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督・脚本:フィル・アルデン・ロビンソン●製作:ローレンス・ゴードンほか●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:W・P・キンセラ 「シューレス・ジョー」●時間:107分●出0フィールド・オブ・ドリームス バート・ランカスター.jpg演:ケヴィン・コスナー/エイミー・マディガン/ギャビー・ホフマン/レイ・リオッタ/ジェームズ・アール・ジョーンズ/バート・ランカスター●日本公開:1990/03●配給:東宝東和 (評価:★★★☆)
バート・ランカスター(アーチボルト・グラハム)
 
ナチュラル 03.jpg「ナチュラル」●原題:THE NATURAL●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:バリー・レヴィンソン●製作:マーク・ジョンソン●脚本:ロジャー・タウンほか●音楽:ジTHE NATURAL, Robert Duvall, 1984.jpgェームズ・ホーナー●原作:バーナード・マラマッド●時間:107分●出演:ロバート・レッドフォードロバート・デュヴァル/グレン・クロース/キム・ベイシンガー●日本公開:1984/08●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:自由が丘武蔵野推理(85-01-20) (評価:★★★☆)●併映:「再会の時」(ローレンス・カスダン)

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業界小説だが、多様な登場人物とスピーディでサスペンスフルな展開で楽しめる『ホテル』。

ホテル 上巻.jpg ホテル下巻.jpg Arthur Hailey.jpg   大空港 .jpg 大空港6273b631.jpg
ホテル 上 』 新潮文庫 Arthur Hailey (1920-2004/享年84) 「大空港 [Blu-ray]」 

Arthur Hailey hotel.jpgArthur Hailey's Hotel.bmp 1965年原著発表のイギリス人作家アーサー・ヘイリー(Arthur Hailey, 1920‐2004)の小説で、アメリカ南部の老舗ホテルを舞台にホテル業界を描いた長編小説(この人は途中でアメリカに移住し、活動の場はほとんどアメリカ)。

 ニューオーリンズ最大のホテル、セント・グレゴリーは、町の繁華な一劃に、堂々たる偉容を誇って建っていた。しかし近代的、能率的経営方式全盛の昨今では、この古風な品格にあふれたホテルも時代遅れで、さらに老オーナーの放漫経営で赤字を抱え、他のホテルチェーンの総帥から買収攻勢を受けており、従業員の士気も下がっている。そんな中で、若い副支配人ピーター・マックダーモットは経営不振を打開しようと精力的に奔走する―。

 従業員も従業員なら泊り客も泊まり客で、チップをピン撥ねするボーイ長、スィートルームでレイプ騒ぎを起こす金持ちの息子、轢き逃げ事件のもみ消しを図る公爵夫妻と彼らを脅迫するホテルの警備主任、ホテル専門の泥棒...etc.、副支配人ピーターの対応がすべて事後処理にならざるを得ないのがちょっとどうかなという気もしますが、ホテルの裏側をよく取材していると感じました。

 黒人医師の宿泊をホテル側が拒否してもめるといった、公民権運動時代の名残り的な話もありますが、その後多く現れるホテルを舞台とした小説、コミック、ドラマなどの原型が、この小説には詰まっていると思えました。

ホテル [DVD] .jpgHOTEL (1967)l4.jpg この作品は1966年にリチャード・クワイン監督、HOTEL 1967 .jpgロッド・テイラー、メルヴィン・ダグラス主演で映画化されていますが、日本ではソフト化されておらず(ビデオにもならなかった)個人的には未見です(その後2012年にDVDが発売された)
ホテル [DVD]

 また、この作品をベースとして、'82年に本国にてTVシリーズドラマ化されており(原題:"Hotel"、邦題:「アーサー・ヘイリーのホテル」) 、'88年まで5シーズンにわたり放映されています。時代は'60年代から現代('80年代)に、舞台はニューオリンズからサンフランシスコに置き換えられていて(外観は超高級ホテル「フェアモント サンフランシスコ」を使っているようだ)、ゲストスターとしてベティ・デイヴィスやアン・バクスター、「刑事コロンボ」の名犯人役で知られるロバート・カルプなど様々な役者が出ています(日本では番組としては放映されなかったが、ビデオが出された)。
Arthur Hailey's Hotel 1983 ABC Opening Intro(音楽: ヘンリーマンシーニ)

大空港.jpg この小説は作者のデビュー作ではないですが出世作と言え、その後、映画化作品もヒットした『大空港』('68年)や、『自動車』('71年)、『マネー・チェンジャーズ』('75年)、『エネルギー』('79年)、『ストロング・メディスン』('84年)、『ニュース・キャスター』('90年)と次々に発表しており、それぞれ、航空・自動車・電力・医療・放送といった業界の研究本の小説版としても読めます(『自動車』は、パブリッシャーズ・ウィークリーのアメリカ・ベストセラー書籍(小説/フィクション)の年間トップ10ランキングの'71年の1位、『マネー・チェンジャーズ』は'75年の2位。後者は日本でも、銀行に内定した学生の入社までに読んでおく課題図書だったりした)。

 ただし、作品全般に小説としては登場人物などがややパターン化傾向にあり、そうした中ではこの作品は、登場人物が比較的バラエティに富み、ある週の月曜から金曜までの出来事としてのスピーディな展開が(謎の老人アルバート・ウェルズの正体はややご都合主義ともとれるが)大いにサスペンスフルで面白く(この人は、『殺人課刑事』('97年)という推理小説も書いている)、また、他の作品が問題解決型なのに対し、結末にカタストロフィが仕組まれているのも本書の特徴です。M&A的な話が織り込まれ従業員のモチベーションに関することなどもとりあげられていて、企業小説が好きな人はお薦めですが、そうしたものをあまり読まない読者にも充分楽しめる内容です。
             
大空港a.jpg アーサー・ヘイリー原作の最初の映画化作品「ホテル」('66年)はそれほど話題にならなかったようですが、2番目の映画化作品「大空港」('70年)は大ヒットし、70年代前半から中盤にかけてのパニック映画ブームの先駆けとなりました(右:ハヤカワ文庫NVカバー)。

 シカゴのリンカーン国際空港(架空。オヘア国際空港がモデル)は何年に一度という大雪に見舞われる。そんな中、着陸したトランスグローバル航空(架空)45便のボーイング707旅客機が誘導路から脱輪し、積雪の中に車輪を沈ませてメイン滑走路を閉鎖させてしまう。そこへ、リンカーン発ローマ行きのトランスグローバル2便の飛行中の旅客機内に、爆弾が持ち込まれているという通報が入る。機長と主任客室乗務員は、爆弾の入ったアタッシュ・ケースを確保しようとするが、犯人は爆弾もろとも自殺し、その衝撃で旅客機の胴体に穴が空き、空中分解の危機が訪れる。急遽、旅客機はリンカーン空港へ向けて旋回するが、空港は立往生したボーイング707のため滑走路が閉鎖されたままで、猛吹雪の中、依然機能停止状態だった―。

大空港 1970 01.jpg大空港 1970 03.jpg大空港 1970ド.jpg 空港長にバート・ランカスター、機長にディーン・マーティン、2人とも家庭がありながら不倫をしていて、空港長の不倫相手の地上勤社員にジーン・セバーグ、機長の不倫相手の客室乗務員にジャクリーン・ビセット、加えてベテラン整備士に大空港s.jpgジョージ・ケネディという豪華な顔ぶれ。所謂グランドホテル方式で、ディーン・マーティン演じる機長は家庭不和に悩み、ジーン・セバーグはサンフランシスコ栄転と機長との関係の狭間に悩み、ジャクリーン・ビセットは妊娠し、この日同僚機長の定期テストのため副操縦士としてトランスグローバル2便乗り合わせたディーン・マーティンは、彼女から出産する決意であること聞かされる―といった具合に、をそれぞれの登場人物にまつわるストーリーが交錯する構成大空港 1970 02.jpg大空港 s.jpgになっています。第43回アカデミー賞では最多10部門にノミネートされましたが、結局、飛行機にただ乗りする常連"密航者"の老夫人を演じたヘレン・ヘイズが助演女優賞を受賞したのみでした。続編として、小型機と衝突した旅客機を最後はスチュワーデスが操縦する事態となるチャールトン・ヘストン、カレン・ブラック主演の「エアポート'75」('74年/米大空港 1970 ages.jpg)、ハイジャックされた旅客機がバミューダ海域の海底に不時着するジャック・レモン主演の「エアポート'77/バミューダからの脱出」('77年/米・英)、武器商人が売上拡大を狙ってコンコルド撃墜を企てるアラン・ドロン主演の「エアポート'80」('79年/米)が作られ、「エアポート'77」まで原作者名にアーサー・ヘイリーの名が見エアポートBOX [DVD].jpgられたりしますが、実際には「エアポート'75」以降ストーリーにはアーサー・ヘイリーは関与しておらず、実質的な原作者というより契約上の原案者といったところだったようです(アーサー・ヘイリー自身は続編が作られるなど思ってもいなかったが、「大空港」が映画化された際の契約書を後で確認したところ、続編を作ることが可能となっていたという。外国人でも契約内容を確認せずに契約書にサインすることがあるのか)。アーサー・ヘイリーの原作に比較的忠実に作られている「大空港」は人間ドラマの比重が高いのに対して(主人公の男性2人が共に不倫をしていて、2人とも最終的に妻よりも不倫相手の方に靡くような結末なのがスゴイが)、続編の「エアポート'75」以降はパニック映画の色合いが濃くなっていき、その分大味になっていきます。

エアポートBOX [DVD]
「大空港」「エアポート'75」「エアポート'77 バミューダからの脱出」「エアポート'80」収録

大空港 mages.jpg大空港 1970 dvd.jpg「大空港」●原題:AIRPORT●制作年:1970年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョージ・シートン●製作:ロス・ハンター●撮影:アーネスト・ラズロ●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:アーサー・ヘイリー●時間:137分●出演:バート・ランカスター/ディーン・マーティン/ジーン・セバーグ/ジャクリーン・ビセット/ジョージ・ケネディ/ヘレン・ヘイズ /ヴァン・ヘフリン/モーリン・ステイプルトン/バリー・ネルソン/ダナ・ウィンター/ロイド・ノーラン/バーバラ・ヘイル/ゲイリー・コリンズ/ジェシー・ロイス・ランディス/ラリー・ゲイツ/ウィット・ビセル/ヴァージニア・グレイ/リサ・ゲリッツェン/ジム・ノーラン/ルー・ワグナー/メアリー・ジャクソン/シェリー・ノヴァク/メリー・アンダース/キャスリーン・コーデル/ポール・ピサーニ●日本公開:1970/04●配給:ユニバーサル映画 (評価:★★★☆)
大空港 [DVD]」 

 【1970年単行本〔講談社/ウィークエンド・ブックス〕/1974年文庫化〔新潮文庫(上・下)〕】

《読書MEMO》
●70年代前半の主要パニック映画個人的評価
・「大空港」('71年/米)ジョージ・シートン監督(原作:アーサー・ヘイリー)★★★☆
・「激突!」('71年/米)スティーヴン・スピルバーグ(原作:リチャード・マシスン)★★★☆
・「ポセイドン・アドベンチャー」('72年/米)ロナルド・ニーム監督(原作:ポール・ギャリコ)★★★☆
・「タワーリング・インフェルノ」('74年/米)ジョン・ギラーミン監督(原作:リチャード・M・スターン)★★★☆
・「JAWS/ジョーズ」('75年/米)スティーヴン・スピルバーグ監督(原作:ピーター・ベンチュリー)★★★★

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マフィアの示威行為が狙いともとれる本だが、生々しいだけに興味深く読めた。

アメリカを葬った男2.jpg アメリカ.jpg  『JFK』(1991).jpg 『ダラスの熱い日』(1973).jpg
アメリカを葬った男―マフィア激白!ケネディ兄弟、モンロー死の真相』〔'92年〕/『アメリカを葬った男』光文社文庫/オリバー・ストーン監督「JFK [DVD]」(1991)/デビッド・ミラー監督・ダルトン・トランボ脚色「ダラスの熱い日 [VHS]」(1973)

アメリカを葬った男 原著.jpgSam Giancana.jpg マフィアの大ボスだったサム・ジアンカーナが、自分はマリリン・モンローの死とケネディ兄弟の暗殺に深く関わったと語っていたのを、実の弟チャック・ジアンカーナが事件から30年近い時を経て本にしたもので、読んでビックリの内容で、本国でもかなり話題になりました。
Sam Giancana
"Double Cross: The Story of the Man Who Controlled America"

 「アメリアを葬った男」とは、訳者の落合信彦氏が考えたのかピッタリのタイトルだと思いますが、原題は"Double Cross(裏切り)"で、ケネディ兄弟の暗殺は、移民系の面倒を見てきたマフィアに対するケネディ家の仕打ちや、大統領選の裏工作でマフィアが協力したにも関わらずマフィア一掃作戦を政策展開したケネディ兄弟の "裏切り"行為、に対する報復だったということのようです。

 但し、その他にも、ジョンソンもニクソンも絡んでいたといった政治ネタや、CIAがケネディ排除への関与に際してマフィアと共同歩調をとったとかいう話など、驚かされる一方で、他のケネディ事件の関連書籍でも述べられているような事柄も多く、だからこそもっともらしく思えてしまうのかもしれないけれど、本書の記述の一部に対しては眉唾モノとの評価もあるようです(ただ一般には、「CIA、FBIとマフィアが手先となった政府内部の犯行説」というのは根強いが)。

 確かに「大ボス一代記」のようにもなっているところから、本自体マフィアの示威行為ともとれますが、「マフィアと政府はコインの表裏だと」いう著者の言葉にはやはり凄味があり、モンローを"殺害"した場面は、かなりのリアリティがありました。
 マフィアがジョンとロバートのケネディ兄弟に"女性"を仲介したことは事実らしいし(モンローもその1人と考えられ、さらにケネディ大統領とジアンカーナは同じ愛人を"共有"していたことも後に明らかになっている)、本書によれば、ジョンとロバートは同時期にモンローの部屋に出入りしていた...と。

JFK ポスター.jpgJFK.jpgJFK―ケネディ暗殺犯を追え (ハヤカワ文庫NF).jpg 生々しいけれども、それだけについつい引き込まれてしまい、本書とほぼ同時期に訳出された、オリバー・ストーン監督の映画「JFK」('91年/米)の原作ジム・ギャリソン『JFK-ケネディ暗殺犯を追え』('92年/ハヤカワ文庫)よりもかなり「面白く」読めました。
「JFK」ポスター /「JFK [DVD]」/ジム・ギャリソン『JFK―ケネディ暗殺犯を追え (ハヤカワ文庫NF)
 ジム・ギャリソンは、事件当時ルイジアナの地方検事だった人で、偶然ケネディ暗殺に関係しているらしい男を知り、調査を開始するも、その男が不審死を遂げ、そのため彼の仲間だったクレイ・ショウを裁判にかけるというもので(これが有名な「クレイ・ショウを裁判」)、結局彼はこの裁判に敗れるのですが、その後、彼の追及した方向は間違っていなかったことが明らかになっていて、彼は、ケネディ暗殺事件をCIAなどによるクーデター(ベトナム戦争継続派から見てケネディは邪魔だった)により殺されたのだと結論づけています。
 原作はドキュメントであり、結構地味な感じですが、ジム・ギャリソンを主人公に据えた映画の方は面白かった―。
 オリバー・ストーン監督ってその辺り上手いなあと思いますが、その作り方の上手さに虚構が入り込む余地が大いにあるのもこの人の特徴で、司法解剖の場面で検視医の白衣が血に染まっている...なんてことはなかったと後で医師が言ったりしてるそうな。                                    
Executive Action.jpg"EXECUTIVE ACTION"(「ダラスの熱い日」)/「ダラスの熱い日」予告

ダラスの熱い日 - Executive Action.jpg『ダラスの熱い日』(1973)2.jpgダラスの熱い日パンフレット.jpg むしろ、この映画を観て思ったのは、ずっと以前、ケネディ暗殺後10年足らずの後に作られたデビッド・ミラー監督、バート・ランカスター、ロバート・ライアン主演の「ダラスの熱い日(EXECUTIVE ACTION)」('73年/米)で(脚本は「ジョニーは戦場に行った」('71年/米)のダルトン・トランボが担当)、既にしっかり、CIA陰謀説を打ち出しています。CIAのスナイパー達が狙撃訓練をする場面から始まり、それを指揮している元CIA高官をバート・ランカスターが演じているほか、ロバート・ライアンが暗殺計画を中心になって進める軍人を演じており、それに右翼の退役将校やテキサスの石油王などが絡むという展開。因みに、私生活では、バート・ランカスターは反戦主義者として知られ、ロバート・ライアンもハト派のリベラリストでした(だから、こうした作品に出演しているわけだが)。

Men Who Killed Kennedy 1988.jpgThe Men Who Killed Kennedy.jpg 当時は1つのフィクションとして観ていましたが、その後に出てきた諸説に照らすと―例えばEngland's Central Independent Televisionが製作したTVドキュメンタリー「Men Who Killed Kennedy 」('88年/英)や、英国エクスボースト・フィルム製作、ゴドレイ&クレーム監督によるチャンネル4のTV番組作品JFK・暗殺の真相(The Day The DrThe-Day-The-Dream-Died-001.jpgeam Died、'88年/英)などを見ると―オズワルドを犯人に仕立て上げる過程なども含め、かなり真相(と言っても未だに解明されているわけではないのだが)に近いところをいっていたのではないかと思いました(映画「JFK」とも重なる部分も多い)。

 これらと比べると、本書『アメリカを葬った男』は、この事件にマフィアが及ぼした影響をアピールしている感じはやはりします(マフィアにとって何らかのメリットがなければ、こんなに身内のことをベラベラ語らないのでは)。でも、面白かった。 

JFK 1991.jpg「JFK」●原題:JFK●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:オリバー・ストーン●製作:A・キットマン・ホー/オリバー・ストーン●脚本:オリバー・ストーン/ザカリー・スクラー●撮影:ロバート・リチャードソン●音楽:ジョンドナルド・サザーランド JFK.jpg・ウィリアムズ●原作:ジム・ギャリソンほか●時間:57分●出演:ケビン・コスナー/トミー・リー・ジョーンズ/ジョー・ペシ/ケヴィン・ベーコン/ローリー・メトカーフ/シシー・スペイセク/マイケル・ルーカー/ゲイリー・オールトコン/ドナルド・サザーランド/ジャック・レモン/ウォルター・マッソー/ジョン・キャンディ/ヴィンセント・ドノフリオ/デイル・ダイ/ジム・ギャリソン/(冒頭ナレーション)マーティン・シーン●日本公開:1992/03●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)

ケビン・コスナー(ジム・ギャリソン)/ドナルド・サザーランド(X大佐)

ダラスの熱い日1.jpgダラスの熱い日パンフレット2.jpg「ダラスの熱い日」●原題:EXECUTIVE ACTION●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:デビッド・ミラー●製作:エドワード・ルイス●脚色:ダルトン・トランボ●撮影:ロバート・ステッドマン●音楽:ランディ・エデルマン ●原案:ドナルド・フリードほか●時間:91分●出演:バート・ランカスター/ロバート・ライアン/ウィル・ギア/ギルバート・グリーン/ジョン・アンダーソン●日本公開:1974/01●配給:ヘラルド映画配給●最初に観た場所:池袋テアトルダイヤ(77-12-24)(評価:★★★☆)●併映:「ジャッカルの日」(フレッド・ジンネマン)/「合衆国最後の日」(ロバート・アルドリッチ)/「鷲は舞いおりた」(ジョン・スタージェス) 「ダラスの熱い日」パンフレット(右)

 「JFK 暗殺の真相」.jpg「JFK 暗殺の真相」●原題:THE DAY THE DREAM DIED●制作年:1988年●制作国:イギリス●監督:ゴドレイ&クレーム●製作:エクスボースト・フィルム●音楽:バスター・フィールド/デビッド・ラザロ●時間:45分●日本公開(ビデオ発売):1992/07●配給(発売元):バップ(評価:★★★☆) 「JFK 暗殺の真相」(日本語吹替版ビデオ[絶版・DVD未発売])

 【1997年文庫化[光文社文庫]】

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