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ゴダールのコメディ。ちょっとお洒落でちょっと前衛的。ゴダール作品の原点的要素が多く見られる。

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女は女である 00.jpg パリの小さな書店に勤める青年エミール(ジャン=クロード・ブリアリ)は、コペンハーゲンから来たばかりで、フランス語の「R」がうまく発女は女である カリーナブリアリ.jpg音できないストリップ・ダンサーのアンジェラ(アンナ・カリーナ)と一緒に暮らしていたが、ある日突然アンジェラが赤ちゃんが欲しいと言い出す。赤ちゃんは要らないし、正式な結婚などしない方が気女は女である 02.jpg楽だと考えるエミールとは折り合わず、2人は喧嘩になる。仕舞にアンジェラは、それなら他の男に頼むと啖呵を切り、エミールは動揺す女は女である 10.jpgるが、勝手にしろと答えてしまう。アンジェラもアンジェラで、自分たちの住むアパルトマンの下の階に住む、エミールの友人で以前よりアンジェラにちょっかいを出していた、駐車場のパーキングメーター係のアルフレード(ジャン=ポール・ベルモンド)に頼女は女である 06.jpgむと宣言する。ならばとエミールはアルフレードを呼び出して、アンジェラにけしかけたりした揚句、アンジェラに去られる。エミールはやけになって別の女と寝て、一方女は女である 07.jpgのアンジェラも、アルフレードと本当に寝てしまう。深夜、アンジェラがエミールと住むアパルトマンに戻り、2人はベッドで黙り込む。エミールは、試しに自分の子をつくってみようとアンジェラを抱く。フレッド・アステアのダンスミュージカルが幕を閉じて終わるように、アンジェラは寝室のカーテンを閉じてみせる―。

女は女である000.jpg女は女である ジャン・ポール・ベルモンド.jpg 1961年製作・公開のジャン=リュック・ゴダール監督の長篇劇映画第3作であり、ゴダールのカラー映画第1作であるとともにミュージカル・コメディ第1作。「小さな兵隊」('60年)に次いでアンナ・カリーナが出演したゴダール作品の第2作で、カリーナとの結婚後第1作になります。ゴダールは「勝手にしやがれ」('59年)で有名になりながらも、この作品を自らの原点的作品と位置付けています。

女は女である 05.jpg 音楽はミシェル・ルグランで、美術はベルナール・エヴァン。この2人は本作の2年後に製作されたジャック・ドゥミ監督の「シェルブールの雨傘」('63年)でもコンビを組むことになりますが、「シェルブールの雨傘」が全てのセリフにメロディがついていたのに対し、こちらは、米国ミュージカル映画へのオマージュはあるものの、登場人物はメロディに合わせて歌ったり踊ったりすることは女は女であるs.jpgなく、そのメロディも、コラージュのようなスクリーンプレイに合わせて度々寸断され、ミュージカルというスタイルを完全に換骨奪胎していると言えます。一方の美術面では、カラフルな原色の色彩が多用されていて、これは「シェルブールの雨傘」にも見られるし、ゴダール自身の監督作「気狂いピエロ」('65年)にも連なる特徴かと思われます。

女は女であるes.jpg ジャン=クロード・ブリアリが室内で自転車を乗り回すシーンや、喧嘩して口をきかなくなったジャン=クロード・ブリアリとアンナ・カリーナが本のタイトルで会話をするなど、ちょっとお洒落なシーンが多くあり、また、アンナ・カリーナら登場人物が時折カメラに向けて語りかけるシーンなどがあったりするのがちょっと前衛的と言うか、ストーリー自体はたわいもない話ですが、その分肩肘張らずに楽しめるゴダール作品です。

女は女である  モロー.jpg ジャン=クロード・ブリアリに急に部屋に来るよう呼ばれたジャン=ポール・ベルモンドが、「早く帰ってテレビで『勝手にしやがれ』を見たいんだ」と言ったり、そのジャン=ポール・ベルモンドが、カメオ出演のジャンヌ・モローにバーで、フランソワ・トリュフォー監督によって撮影中の「突然炎のごとく」('62年)について「ジュールとジムはどうしてる?」と訊ねるシーンがあったりするなどの小ネタ的愉しみも(「撮影は順調?」と訊ねているとも解釈可能)。
ジャン=ポール・ベルモンド/ジャンヌ・モロー
女は女であるanna-karina-.jpg女は女である 04.jpg ゴダールは本作でベルリン国際映画祭「銀熊賞」(審査員特別賞)を受賞し、これは前年の同映画祭での「勝手にしやがれ」による「銀熊賞」(監督賞)に続いて2年連続の受賞。映画のアンジェラと同じくコペンハーゲン出身のアンナ・カリーナは、本作で「銀熊賞」最優秀女優賞女は女である 0009-.png受賞。彼女はジャン=ポール・ベルモンド、ジャン=クロード・ブリアリの両雄を(と言っても2人だって共に28歳とまだ若いのだが)振り回してまさに圧巻。アンナ・カリーナを観て楽しむ映画とも言えますが、個人的には、ゴダール自身が後に「本当の意味での自分の処女作」と述べているように、ゴダール作品の原点的要素が多く見られるという点で興味深い作品です。
音楽:ミシェル・ルグラン

女は女である 062.jpg「女は女である」●原題:UNE FEMME EST UNE FEMME/A WOMAN IS A WOMAN●制作年:1961年●制作国:フランス・イタリア●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴ女は女である2.jpgダール●製作:カルロ・ポンティ/ジョルジュ・ド・ボールガール●撮影:ラウール・クタール●音楽:ミシェル・ルグラン●原案:ジュヌヴィエーヴ・クリュニー●時間:84分●出演:アンナ・カリーナ/ジャン=ポール・ベルモンド/ジャン=クロード・ブリアリ/マリー・デュボワ/ジャンヌ・モロー/カトリーヌ・ドモンジョ●日本公開:1961/12●配給:新外映●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(16-09-16)(評価★★★★)

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一人の娼婦の儚い人生の中にも「詩と真実」があった。ミシェル・ルグランの音楽もいい。

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女と男のいる舗道2.jpg 1960年代初頭のパリのとあるビストロで、ナナ・クランフランケンハイム(アンナ・カリーナ)は、別れた夫ポール(アンドレ・S・ラバルト)と近況の報告をし合い女と男のいる舗道1.jpg別れる。ナナは、女優を夢見て夫と別れ、パリに出てきたが、夢も希望もないままレコード店の店員を続けている。ある日、舗道で男(ジル・ケアン)に誘われるままに抱かれ、その代償を得た。ナナは昔からの友人のイヴェット(ギレーヌ・シュランベルジェ)と会う。イヴェットは売春の仲介をしてピンハネして生きている。ナナにはいつしか娼婦となり、ラウール(サディ・ルボット)というヒモがつく。ナナは無表情な女になっていた。バーでナナがダンスをしていると、視界に入っ女と男のいる舗道09.jpg女と男のいる舗道103.jpgてきた若い男(ペテ・カソヴィッツ)にナナの心は動き、彼を愛し始める。ナナの変化に気付いたラウールは、ナナを売春業者に売り渡そうとする。ナナが業者に引き渡される時、業者がラウールに渡した金が不足していた。ラウールはナナを連れて帰ろうとするが、相手は拳銃を放つ。銃弾はナナに直撃した。ラウールは逃走、撃ったギャングも逃走する。ナナは舗道に倒れ、「生きたい!」と叫んで絶命する―。
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女と男のいる舗道94.jpg 1962年製作・公開のジャン=リュック・ゴダール監督の社会風俗ドラマで、ゴダールの長篇劇映画第4作(ヴェネツィア国際映画祭「審査員特別賞」受賞作)。「女は女である」('61年)についでアンナ・カリーナが出演したゴダール作品の第3作で、アンナ・カリーナとの結婚後の第2作です。マルセル・サコット判事のドキュメント「売春婦のいる場所」からゴダール自身が脚色したもので、原題は「自分の人生を生きる、12のタブ女と男のいる舗道 12.jpgローに描かれた映画」の意(「タブロー」はフランス語で持ち運びの可能な絵画(=キャンパス画、板絵)のことで「章」とほぼ同じとみていいのでは)。時期的には「勝手にしやがれ」('59年)と「気狂いピエロ」('65年)の間に位置する作品で、ラストなどは「勝手にしやがれ」の女性版を思わせる部分もあり、また、主人公の名前から、エミール・ゾラの小説『ナナ』が娼婦から女優に成り上がった女性を描いた、その逆を描いているともとれます。原作(原案)がドキュメントであるためか、「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」より分かりやすい展開で、個人的には好きなゴダール作品です。

女と男のいる舗道 哲学者.jpg 第1章でナナが近況を交換する別れた夫ポールを演じるのは、ゴダールの批評家時代からの盟友でドキュメンタリー映画監督のアンドレ・S・ラバルトであり、終盤、ナナと哲学を論じあう碩学として登場するのは、アルベール・カミュやアンドレ・ブルトンと親交のあった哲学者ブリス・パランで、ゴダールの哲学の恩師であるそうです。最初観た時は、その「衝撃的」ラストに、むしろあっけないという印象を抱きましたが、ゴダールが説明的表現を排したドキュメンタリー・タッチで撮っているということもあったかもしれません。ゴダールがアンナ・カリーナの了解を取らずに隠し撮りのように撮ったシーンもあり(そのことをアンナ・カリーナはすごく怒ったらしい)、ナナと哲学者との対話における哲学者の受け答えも即興だそうです。

裁かるるジャンヌ 女と男のいる舗道2.jpg アンナ・カリーナ演じるナナは、生活のために娼婦に転じるわけですが、別に不真面目に生きているわけではなく、むしろ「自分の人生を生きる」という哲学を持っています。彼女は、「裁かるるジャンヌ」を観て涙したり(このシーンのアンナ・カリーナの表情がいい)、偶然に出会った哲学者と真理について語ったりします(第12章のタイトルは「シャトレ広場- 見知らぬ男 - ナナは知識をもたずに女と男のいる舗道 哲学者2.jpg哲学する」)。哲学者との会話のシーンなどは、最初に観た時は、言葉が映画の背景になっているような感じがしたのが、今回改めて観直してみると、結構深いことを言っているなあと(「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」なんて言葉を思い出した)。儚(はかな)くも散った一娼婦の人生においても、その中に確実に「詩と真実」はあったのだ―という見方は、あまりにロマンチックすぎるでしょうか。ミシェル・ルグランの音楽もいいです(この音楽がそんな気分にさせる)。

裁かるゝジャンヌ dvd.jpg 因みに、「女と男のいる舗道」でアンナ・カリーナ演じるナナが観て涙したカール・テオドア・ドライヤー監督映画「裁かるるジャンヌ」('28年/仏)は、火刑に処せられる直前のジャンヌ・ダルクの心情の揺らぎを描いたものですが、オリジナルネガフィルムが1928年にドイツ・ウーファ社の火災によって焼失したため、完全なフィルムは存在しないと言われてきました。更に、ドライヤーがオリジナルに使用しなかったフィルムで再編集した第2版のネガも焼失し、製作元も倒産。その後に観ることが出来た作品は、世の中に出回っていたポジフィルムをかき集めてかろうじて作品の体裁を成したもの、乃至はその海賊版のようですが、製作直後にデンマークでの公開のために送られていた完全オリジナルフィルムが1984年に偶然発見され、日本では1994年に初めて公開されました(2005年にDVD化。それ以前のハピネット版DVDは不完全版)。

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 自分が個人的にこの映画を観たのは、埋もれていたフィルムが再発見される3年前(「女と男のいる舗道」と併映だった)。小津安二郎の「大学は出たけれど」('29年)のように70分の内11分しか現存していなくても充分に堪能出来る作品もありますが、この不完全版「裁かるるジャンヌ」に関してはダメでした。ストーリー部分が後退して、画面もカットされているため、ルネ・ファルコネッティ演じるジャンヌの表情の大写しが前面に出すぎてモンタージュ効果が逆に生きていない印象を持ちました(完全版を観ていないので、きちんとした評価は不能か。但し、映画史的にも一般にも評価の高い作品[IMDbポイント8.3])。ナナが観たのは完全版なんだろうか?

アンナ・カリーナ in 「女と男のいる舗道」    音楽:ミシェル・ルグラン
アンナ・カリーナ 「女と男のいる舗道」.jpg「女と男のいる舗道」●原題:VIVRE SA VIE:FILM EN DOUZE TABLEAUX●制作年:1962年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ピエール・ブロンベルジェ●撮影:ラウール・クタール●音楽:ミシェル・ルグラン●原作(原案):マルセル・サコット「売春婦のいる場所」(ドキュメ女と男のいる舗道27.jpgント)●時間:84分●出演:アンナ・カリーナ/サディ・ルボット /アンドレ・S・ラバル/ギレanna karina.jpgーヌ・シュランベルジェ/ジェラール・ホフマン/ペテ・カソヴィッツト/モニク・メシーヌ/ポール・パヴェル/ディミトリ・ディネフ/エリック・シュランベルジェ/ブリス・パラン/アンリ・アタル/ジル・ケアン●日本公開:1963/11●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会〔四谷公会堂〕 (81-09-12)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ (16-09-06)(評価★★★★☆)●併映(1回目):「裁かるるジャンヌ」(カール・テオドア・ドライヤー)  anna karina

Sabakaruru Jannu (1928).jpg裁かるるジャンヌ 女と男のいる舗道1.jpg「裁かるるジャンヌ (裁かるゝジャンヌ)」●原題:LA PASSION DE JANNE D'ARC●制作年:1927年(1928年4月デンマーク公開、同年10月フランス公開)●制作国:フランス●監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー●撮影:ルドルフ・マテ●時間:96分(短縮版80分)●出演:ルネ・ファルコネッティ/ウジェーヌ・シルヴァン/モーリス・シュッツ/アントナン・アルトー●日本公開:1929年10月25日●配給:ヤマニ洋行●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会〔四谷公会堂〕 (81-09-12) (評価★★★?)●併映:「女と男のいる舗道」(ジャン=リュック・ゴダール)
Sabakaruru Jannu (1928)

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従来の文学作品の類型の何れにも属さず、かつ小説的濃密さを持つムルソーの人物造型。

異邦人 単行本(1951).jpg 異邦人 1984.jpg 異邦人 1999.jpg 異邦人1.jpg   異邦人ポスター.jpg
異邦人 (新潮文庫) ['84年]['99年]映画「異邦人」(1967)ポスター
単行本['51年/新潮社]

異邦人 新潮文庫 1.jpgAlbert Camus.jpg 1942年6月に刊行されたアルベール・カミュ(Albert Camus、1913‐1960/享年46)の人間社会の不条理を描いたとされる作品で、「きょう、ママンが死んだ」で始まる窪田啓作訳(新潮文庫版)は読み易く、経年疲労しない名訳と言えるかも(新潮社が仏・ガリマール社の版権を独占しているため、他社から新訳が出ないという状況はあるが)。

Albert Camus
異邦人 (新潮文庫)』['54年]

 養老院に預けていた母の葬式に参加した主人公の「私」は、涙を流すことも特に感情を露わにすることもしなかった―そのことが、彼が後に起こす、殆ど出会い頭の事故のような殺人事件の裁判での彼の立場を悪くし、加えて、葬式の次の日の休みに、遊びに出た先で出会った旧知の女性と情事にふけるなどしたことが判事の心証を悪くして、彼は断頭台による死刑を宣告される―。

L'Etranger.png 仏・ガリマール社からの刊行時カミュは29歳でしたが、この小説が実際に執筆されたのは26歳から27歳にかけてであり(若い!)、アルジェリアで育ちパリ中央文壇から遠い所にいたために認知されるまでに若干タイムラグがあったということでしょうか。但し、この作品がフランスで刊行されるや大きな反響を呼び、確かに、自分の生死が懸かった裁判を他人事のように感じ、最後には、「私の処刑の日に大勢の見物人が集まり、憎悪の叫びをあげて、私を迎えることだけ」を望むようになるムルソーという人物の造型は、それまでの文学作品の登場人物の類型の何れにも属さないものだと言えるのでは。1957年、カミュが43歳の若さでノーベル文学賞を受賞したのは、この作品によるところが大きいと言われています。

Gallimard版(1982)

 カフカ的不条理とも異なり、第一ムルソーは自らの欲望に逆らわず行動する男であり(ムルソーにはモデルがいるそうだが、この小説の執筆期間中、カミュ自身が2人の女性と共同生活を送っていたというのは小説とやや似たシチュエーションか)、また、公判中に自分がインテリであると思われていることに彼自身は違和感を覚えており(カミュ自身、自らが実存主義者と見られることを拒んだ)、最後の自らの死に向けての"積極"姿勢などは、むしろカフカの"不安感"などとは真逆とも言えます。

サルトル .jpg サルトルは「不条理の光に照らしてみても、その光の及ばない固有の曖昧さをムルソーは保っている」とし、これがムルソーの人物造型において小説的濃密さを高めているとしていますが、このことは、『嘔吐』でマロニエの樹を見て気分が悪くなるロカンタンという主人公の"小説的濃密さ"の欠如を認めているようにも思えなくもないものの、『嘔吐』と比較をしないまでも、第1部の殺人事件が起きるまでと第2部の裁判場面の呼応関係など、小説としてよく出来ているように思いました。
 
The Stranger 1967.jpg異邦人QP.jpg ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti、1906‐1976/享年69)監督がマルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni、1924‐1996/享年72)を主演としてこの『異邦人』を映画にしていますが('67年)、テーマがテーマである上に、小説の殆どはムルソーの内的独白(それも、だらだらしたものでなく、ハードボイルドチックな)とでも言うべきもので占められていて、情景描写などはかなり削ぎ落とされており(アルジェリアの養老院ってどんなのだTHE STRANGER (LO STRANIERO)s.jpgろうか、殆ど情景描写がない)、映画にするのは難しい作品であるという気がしなくもありませんでした。それでもルキノ・ヴィスコンティ監督は果敢に映像化を試みており、当初映画化を拒み続けていたカミュ夫人が原作に忠実に作ることを条件として要求したこともありますが、文庫本に置き換異邦人パンフレット.jpgえるとほぼ1ページも飛ばすことなく映像化していると言えます。第2部の裁判描写はともかく、第1部での主人公とさまざまな登場人物とのやりとりが第2部の裁判場面の伏線となっている面もあり、その第1部のさまざまな場面状況が具体的に掴めるのが有難いです(そう言えばこの作品、かつて日本語吹き替え版がテレビ放映されたこともあるのに、なぜかDVD化されていないなあ)。

映画プレミアパンフレット 「異邦人(A4/紺背景版)」 監督 ルキノ・ビスコンティ 出演 マルチェロ・マストロヤンニ/アンナ・カリーナ/ベルナール・ブリエ/ジョルジュ・ウィルソン/ブルノ・クレメール/ピエール・バルタン/ジャック・エラン/マルク・ローラン/ジョルジュ・ジレー

The Stranger 1967  2.jpgルキノ・ヴィスコンティ監督の『異邦人』.jpg 松岡正剛氏はこの映画を観て、ヴィスコンティはムルソーを「ゲームに参加しない男」として描ききったなという感想を持ったそうで、これは言い得ているのではないかという気がします。原作にも、「被告席の腰掛の上でさえも、自分についての話を聞くのは、やっぱり興味深いものだ」という、主人公の冷めた心理描写があります。一方で、ラストのムルソーの司祭とのやりとりを通して感じられる彼の「抵抗」とその根拠みたいなものは映画ではやや伝わってきにくかったように思われ、映像化することで抜け落ちてしまう部分はどうしてもあるような気がしました。だだ、そのことを考慮しても、ルキノ・ヴィスコンティ監督の挑戦は一定の評価を得てもいいのではないかとも思いました。

映画異邦人2.jpg この世の全てのものを虚しく感じるムルソーは、自らが処刑されることにそうした虚しさからの自己の解放を見出したともとれますが、ああ、やっぱり死刑はイヤだなあとか単純に思ったりして...(小説は獄中での主人公の決意にも似た思いで終わっている)。ムルソーが母親の葬儀の翌日に女友達と海へ水遊びに行ったのは、彼が養老院の遺体安置所の「死」の雰囲気から抜け出し、自らの心身に「生」の息吹を獲り込もうとした所為であるという見方があるようです。映画を観ると、その見方がすんなり受け入れられるように思いました。

映画「異邦人(Lo straniero)」より

lo_straniero1.jpg ママンの出棺を見るムルソー(マルチェロ・マストロヤンニ)
lo_straniero2.jpg 葬儀の翌日、海辺で女友達(アンナ・カリーナ)に声をかける
lo_straniero3.jpg アラブ人達と共同房にて(死刑確定後は独房に移される)

映画 異邦人.jpg映画 「異邦人」.jpg異邦人 .jpg「異邦人」●原題:THE STRANGER (LO STRANIERO/L'ÉTRANGER)●制作年:1967年●制作国:イタリア・フランス・アルジェリア●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エマニュエル・ロブレー/ジョルジュ・コンション●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ピエロ・ピッチオーニ●原作:アルベール・カミュ「異邦人」●時間:104分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ(ムルソー)/アンナ・カリーナ(マリー・カルドナ)/映画チラシ 「異邦人」 岩波シネサロン 8.jpg映画チラシ 「異邦人」 岩波シネサロン 1.jpgジョルジュ・ウイルソン(予審判事)/ベルナール・ブリエ(弁護人)/ジャック・エルラン(養老院の院長)/ジョルジェ・ジュレ(レイモン)/ジャン・ピエール・ゾラ(事務所の所長)/ブリュノ・クレメール(神父)/アルフレード・アダン(検事)/アンジェラ・ルーチェ(マッソン夫人)/ミンモ・パルマラ(マッソン)/ヴィットリオ・ドォーゼ(弁護士)●日本公開:1968/09●配給:岩波ホールビル.jpgパラマウント●最初に観た場所:岩波シネサロン(80-07-13)●2回目:池袋文芸座ル・ピリエ(81-06-06)(評価:★★★★)●併映(2回目):「処女の泉」(イングマル・ベルイマン)
岩波シネサロン(岩波ホール9F)
Ihôjin (1967)
Ihôjin (1967).jpg
IMG_4920.JPG異邦人 新潮文庫.jpg   
    
新潮文庫 旧版・新装版
 
 【1954年文庫化[新潮文庫〕】

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下層社会に暮らす少年の鬱屈と抵抗を、自体験に近いところで描くリアリティ。

『長距離走者の孤独』  .JPG長距離走者の孤独.jpg  長距離ランナーの孤独.jpg Alan Sillitoe.jpg Alan Sillitoe
長距離走者の孤独 (新潮文庫)』/映画「長距ランナーの孤独」('62年)
カバー:池田満寿夫

「長距離走者の孤独」.jpg 新潮文庫版は、1958年に発表された「長距離走者の孤独」(The Loneliness of the Long Distance Runner)をはじめ、アラン・シリトー(Alan Sillitoe、1928‐2010の8編の中短編を収めていますが、貧しい家庭で育ち、盗みを働いて感化院に送られた少年の独白体で綴られた表題作が、内容的にも表現的にも群を抜いています。

 アラン・シリトーにはこの他にも、『土曜の夜と日曜の朝』といった代表作がありますが、それらと比べても印象に残LonelinessLongRunner.jpg長距離ランナーの孤独1.jpgっているし、トニー・リチャードソン(Tony Richardson、1928-1991)監督の映画化作品「長距離ランナーの孤独」('62年/英)も有名です。主人公を演じたのはトム・コートネイで、舞台出身ですが、映画はこの作品が実質初出演で初主演でした(後に、「魚が出てきた日」('67年)、「イワン・デニーソヴィチの一日」('74年)などで主演することになる)。

"Loneliness of Long Distance Runner" (1962/UK)/日本版VHS(絶版)

 もともと原作が手記形式なので、映画で主人公が長距離走において遅れてゴールした後ニヤリと笑うなど、映像での表現上やや説明的にならざるを得ないのはいたし方ないか(原作では、他人からは泣きそうになっているように見えるだろうが、実はこれ、"勝利の嬉し泣き"をこらえていたのだ、ということになっている。映画脚本はシリトー自身)。

ホテル・ニューハンプシャー 1.jpgホテル・ニューハンプシャー 0.jpg トニー・リチャードソンは、文芸作品の映画化の名手で、ジョン・アーヴィング原作の映画化作品「ホテル・ニューハンプシャー」('84年/米・英・カナダ) もこの監督によるものであり、これはホテルを経営する家族の物語ですが、ジョディーフォスター、ロブ・ロウ、ナスターシャ・キンスキーという取り合わせが今思ホテル・ニューハンプシャー 01.jpgえば豪華。少なくとも1人(J・フォスター演じるフラニー)乃至2人(N・キンスキー演じる"熊のスージー")の女性登場人物がレイプされて心の傷を負っており、また家族が次々と死んでいく話なのに、観終わった印象は暗くないという、不思議な映画でした(「ガープの世界」もそうだが、ジョン・アーヴィング作品の登場人物は、何かにつけてモーレツと言うか極端な人が多い)。

マドモアゼル [DVD]」Tony Richardson
マドモアゼル DVD2.jpgトニー・リチャードソン.jpg トニー・リチャードソンは、女優のヴァネッサ・レッドグレイヴと結婚し、2人の娘がいましたが、ジャン・ジュネ原案で、「二十四時間の情事」('59年/日・仏)、「かくも長き不在」('61年/仏)の原作者でもあるマルグリット・デュラス原作の「マドモアゼル」('66年/仏)の撮影でジャンヌ・モローと恋に落ち、1967年にレッドグレイヴと離婚しています。彼はバイセクシュアルで、1991年、エイズによる合併症のため亡くなっていますが、その死を看取ったのはジャンヌ・モローでした。シーラ・ディレーニーの『蜜の味』などの文芸作品も映画化していますが、「マドモアゼル」の翌年に撮られたマルグリット・デュラス原作の「ジブラルタルの追想」('67年/英)と、ウラジミール・ナボコフが原作の「悪魔のような恋人」('69年/英)を名画座ジブラルタルの追想2.pngで二本立てで観ました。

映画プレスシート/ジャンヌ・モロー「ジブラルタルの追想」

「ジブラルタルの追想」.jpgジャンヌ・モロー2.png マルグリット・デュラスTHE SAILOR FROM GIBRALTAR PERFORMER.jpg原作の「ジブラルタルの追想」は、イタリア旅行中の青年がジブラルタルででアンナ(ジャンヌ・モロー)という女性と出会い、アランの方は彼女を真剣に愛し始めるが、アンナは楽しさだけでアランに身を任せている印象で、そんなジブラルタルの追想0_.jpg折、アンナの行方知らずとなっていた恋人が現われたというニュースが飛び込んでくる-というストーリー。一部ミュージカル仕立てで、唄っているジャンヌ・モローが綺麗ですが映画自体は凡庸で(あくまでも個人的印象であって、女性映画の傑作とする人もいる)、やはり文学作品を映画化してその本質を損なわないようにするのは往々にして難しいのかと思いました(因みにジブラルタルはヨーロッパ大陸で唯一今も残る英国植民地で、ここからアフリカ大陸が見渡せるが、自分が旅行した頃は軍事基地があるという理由で近づけなかった。但し、今は観光地化して旅行者に比較的オープンになっている。アフリカ大陸はジブラルタルの手前からでも見渡せた)。
映画プレスシート ジャンヌ・モロー「ジブラルタルの追想」」 ('67年/英)

映画プレスシート/アンナ・カリーナ「悪魔のような恋人」
悪魔のような恋人3.jpg悪魔のような恋人9.jpg「悪魔のような恋人」 vhs.png 一方、ナボコフ原作の「悪魔のような恋人」は、金持ちの画商が小悪のような少「悪魔のような恋人」 カリーナ.jpg 女に破滅させられていく話なのですが、アンナ・カリーナの蠱惑的魅力を十分に引き出して佳作に仕上げており(この作品のアンナ・カリーナが演じる女性はかなり残忍でもある)、「ホテル・ニューハンプシャー」の成功に繋がる"文芸監督"の素地がこの頃からあったと―。

Alan Sillitoe
Alan Sillitoe2.jpg アラン・シリトー原作の『長距離走者の孤独』のストーリー自体はシンプルで、書けば"ネタばれ"になってしまうのですが(もう一部書いてしまったが、と言っても、広く知られているラストだが)、ラスト以外でのこの作品の優れた点は、主人公の少年コリンが友人と共にパン屋に強盗に入ったために捕まる場面で、刑事が自宅に捜索に来た時の主人公の心理などは、作者の体験談ではないかと思われるぐらい目いっぱいの臨場感があります。

 アラン・シリトーは、50年代に登場し偽善的な体制や権力者を糾弾した《怒れる若者たち》と呼ばれる作家グループの1人ですが、このグループに属するとされる『怒りをこめてふりかえれ』のジョン・オズボーンや『急いで駆け降りよ』のジョン・ウェインなどは、概ね一流大学出身で大学に教職を得た知識人であるのに対し、シリトーは、工場労働者の家庭の出身で、自らも熟練工員でした。

 結局、《怒れる若者たち》の作家達の作品群で、今世紀になっても最も読み継がれている作品を1つ挙げるとすれば『長距離走者の孤独』になるわけで、その理由として、シンプルだが象徴的な結末と併せて、下層社会に暮らす少年の鬱屈と抵抗を、自らの体験に近いところで描いていることからくるリアリティが挙げられるのではないかと思います。

長距離ランナーの孤独  .jpg「長距離ランナーの孤独」.jpg「長距離ランナーの孤独」●原題:THE LONELINESS OF THE LONG DISTANCE RUNNER●制作年:1962年●制作国:イギリス●監督・製作:トニー・リチャードソン●脚本:スタンリー・ワイザー/アラン・シリトー●撮影:ウォルター・ラサリー●音楽:ジョン・アディソン●原作:アラン・シリトー●時間:104分●出演:トム・コートネイ/マイケル・レッドグレイヴ/ピーター・マッデン/ウィリアム・フォックス/トプシー・ジェーン/ジュリア・フォスター/フランク・フィンレイ●日本公開:1964/06●配給:昭映(評価:★★★)

イワン・デニーソヴィチの一日0.jpgイワン・デニーソヴィチの一日 チラシ.jpg「イワン・デニーソヴィチの一日」●原題:ONE DAY IN THE LIFE OF IWAN DENISOVICH●制作年:1971年●制作国:イギリス●製作・監督:キャスパー・リード●音楽:アーン・ノーディム●原作:アレクサンドル・ソルジェニーツィン●時間:100分●出演:トム・コートネイ/アルフレッド・バーク/ジェームズ・マックスウェル/エリック・トンプソン/エスペン・スクジョンバーグ●日本公開:1974/06●配給:NCC●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-11-16) (評価★★★)●併映「エゴール・ブルイチョフ」(セルゲイ・ソロビヨフ)

「魚が出てきた日」●原題:THE DAY THE FISH COME OUT●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:マイケル・カコヤニス●撮影:ウォルター・ラサリー●音楽:ミキス・テオドラキス●時魚が出てきた日ps3.jpgTHE DAY THE FISH COME OUT 1967 .jpgキャンディス・バーゲンM23.jpg間:110分●出演:トム・コートネイキャンディス・バーゲン/サム・ワナメーカー/コリン・ブレークリー/アイヴァン・オグルヴィ/ディミトリス・ニコライデス/ニコラス・アレクション●日本公開:1968/06●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:中野武蔵野館(78-02-24)(評価:★★★☆)●併映:「地球に落ちてきた男」(ニコラス・ローグ)

ホテル・ニューハンプシャー dvd.jpgホテル・ニューハンプシャー02.jpg「ホテル・ニューハンプシャー」●原題:THE HOTEL NEW HAMPSHIRE●制作年:1984年●制作国:アメリカ・イギリス・カナダ●監督:トニー・リチャードソン●製作:ニール・ハートレイ/ピーター・クルーネンバーグ/デヴィッド・J・パターソン●脚本:トニー・リチャードソン●撮影:デイヴィッド・ワトキン●音楽:レイモンド・レッパード●原作:ジョン・アーヴィング「ホテル・ニューハンプシャー」●時間:109分●出演:ジョディーフォスタ/ロブ・ロウ/ボー・ブリッジス/ナスターシャ・キンスキー/フィルフォード・ブリムリー/ポール・マクレーン/マシュー・モディン●日本公開:1986/07●配給:松竹富士●最初に観た場所:三軒茶屋東映(87-01-25)(評価:★★★★)●併映:「プレンティ」(フレッド・スケピシ)ホテル・ニューハンプシャー [DVD]

ジブラルタルの追想ド.jpgジブラルタルの追想-orson-welles-ジブラルタルの追想.jpg「ジブラルタルの追想」●原題:THE SAILOR FROM GIBRALTAR PERFORMER●制作年:1967年●制作国:イギリス●監督:トニー・リチャードソン●製作:オスカー・リュウェンスティン●脚本:クリストファー・イシャーウッド/ドン・マグナー/トニー・リチャードソン●撮影:ラウール・クタール●音ジブラルタルの水夫.jpg楽:アントワーヌ・デュアメル●原作:マルグリット・デュラス「ジブラルタルから来た水夫(ジブラルタルの水夫)」●時間:90分●出演:ジャンヌ・モロー/イアン・バネン/オーソン・ウェルズ/ヴァネッサ・レッドグレーヴ●日本公開:1967/11●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-12)(評価:★★☆)●併映:「悪魔のような恋人」(トニー・リチャードソン)

ジブラルタルの水夫

「悪魔のような恋人」●原題:LAUGHTER IN THE DARK●制作年:1969年●制作国:イギリス●監督:トニー・リチャードソン●製作:ニール・ハートリー/エリオット・カストナー●脚本:エドワード・ボンド●撮影:ディック・ブッシュ●音楽:レイモンド・レパード●原作:ウラジミール・ナボコフ「欲望」●時間:104分●出演:ニコル・ウィリアムソ悪魔のような恋人8.jpgLaughter in the Dark2.jpgン/アンナ・カリーナジャン=クロード・ドルオ/ピーター・ボウルズ/シアン・フィリップス/セバスチャン・ブレイク/ケイト・オトゥール/エドワード・ガードナー/シーラ・バーレル/ウィロビー・ゴダード/バジル・ディグナム/フィリッパ・ウルクハート(●日本公開:1969/05●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-12)(評価:★★★★)●併映:「ジブラルタルの追想」(トニー・リチャードソ大塚駅付近.jpg大塚名画座 予定表.jpg大塚名画座4.jpg大塚名画座.jpgン)
大塚名画座(鈴本キネマ)(大塚名画座のあった上階は現在は居酒屋「さくら水産」) 1987(昭和62)年6月14日閉館


『長距離走者の孤独』.JPG【1973年文庫化[新潮文庫]/1978年再文庫化[集英社文庫]】

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シナリオだが(一部、書き起こしあり)読んでそのままに面白く、またヴィヴィッドな印象。

ゴダール全集.jpg「スタジオ・ボイス」1994年2月号特集.jpg勝手にしやがれ.jpg 勝手にしやがれ10.jpg 
ゴダール全集〈3〉ゴダール全シナリオ集 (1970年)』/「Studio Voice」1994.02 ゴダール特集/「勝手にしやがれ」(1959)

ゴダール全集1 .jpg ゴダールの'60年代までの作品の全シナリオを収録したもので、映画が難解なイメージがあるわりには、本として読んでそのままにa bout de souffle.jpg面白いものが多く、またヴィヴィッドな印象を受けるのが意外かも知れません。よく知られているところでは、ジーン・セバーグ、ジャン=ポール・ベルモンド主演の「勝手にしやがれ」('59年)、アンナ・カリーナ、ベルモント主演の「気狂いピエロ」('65年)などの初期作品でしょうか。スチール写真が適度に配置され、読むと再度見たくなり、未見作品にも見てみたくなるものがありました。
ゴダール全集〈1〉ゴダール全シナリオ集 (1971年)
「勝手にしやがれ」('59年)/ 1978年公開時チラシ/DVD
『勝手にしやがれ』(1959).jpg勝手にしやがれ 1978年公開時チラシ.jpg勝手にしやがれ2.jpg 「勝手にしやがれ」の一応のあらすじは―、自動車泥棒のミシェル(ジャン=ポール・ベルモント)が、警官を殺してパリに逃げ、アメリカ人のパトリシア(ジーン・セバーグ)と互いに束縛しない関係を楽しんでいたところ、その『勝手にしやがれ』(1959)2.jpgパトリシアはミシェルとの愛を確認するため、ミシェルの居所をわざと警察に密告する―というもので、この不条理に満ちた話のオリジナル作者はフランソワ・トリュフォーですが、最終シナリオはゴーダルの頭の中にあったまま脚本化されずに撮影を開始したとのこと。台本無しの撮影にジャン=ポール・ベルモントは驚き、「どうせこの映画は公開されないだろうから、だったら好きなことを思い切りやってやろう」と思ったという逸話があります(1960年・第10回ベルリン国際映画祭「銀熊賞(監督賞)」受賞作)。

「気狂いピエロ」 ('65年)1983年公開時チラシ/DVD
気狂いピエロ(ポスター).jpg気狂いピエロ (1965/仏).jpg『気狂いピエロ』(1965) 2.jpg『気狂いピエロ』(1965).jpg「気狂いピエロ」 (65年/仏).jpg『気狂いピエロ』(1965) 3.jpg「気狂いピエロ」は―、フェルディナン(ジャン=ポール・ベルモント)という男が、イタリア人の妻とパーティに行くが、パーティに退屈し戻ってきた家で、昔の恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と再会し、成り行きで彼女のアパートに泊まった翌朝、殺人事件に巻き込まれて、2人は逃避行を繰り返す羽目に。フェルディナンは孤島での生活を夢見るが、お互いにズレを感じたマリアンヌが彼を裏切って情夫の元へ行ったため、フェルディナンは彼女と情夫を射殺し、彼も自殺するというもの(1965年・第26回ヴェネチア国際映画祭「新鋭評論家賞」受賞作)。

 脚本を先に読み、なかなかがいいと思いましたが、映像はほぼそれを裏切らなかったと思います(「勝手にしやがれ」よりギャング映画的な娯楽性を感じるが、前衛性はやや後退する)。これ、日本語タイトルはテレビコードにひっかかるのか、'89年テレビ放映時のタイトルは、原題のフランス語をカタカナ読みにした「ピエロ・ル・フ」になっていました。

「女と男のいる舗道」 ('62年)
「女と男のいる舗道」.jpg女と男のいる舗道2.jpg女と男のいる舗道.jpg "シナリオ"集といっても、この2つの作品やアンナ・カリーナ主演の「女と男のいる舗道」('62年)などは、蓮實重彦氏など本書の翻訳陣が映画を採録し、シナリオのスタイルに「再構成」したものです(「女と男のいる舗道」にはアドリブで撮られている箇所が幾つかある)。

ジャン=リュック・ゴダール 「女と男のいる舗道」 (62年/仏) ★★★★☆

 団地妻の売春という"予想外"の素材を扱った「彼女について私が知っている二、三の事柄」('66年)というのもありましたが、主婦が中産階級の生活を維持するためにパートタイムで売春するという話をドキュメンタリータッチで描いたもので(事実を基にしているらしい)、フランソワ・トリュフォーが共同製作ですが、それほど面白い作品でもなく、ゴダールの意図も個人的には読めませんでした。所収の作品で最後に見たのが政治的メッセージの強い「ヴェトナムから遠く離れて」('67年)あたり、本書所収以外ではローリング・ストーンズの名曲「悪魔を憐れむ歌」のレコーディング風景の記録映画「ワン・プラス・ワン」('68年)あたりまでで、更に政治的実験映画とも言える「ヒア&ゼアこことよそ」('76年)なども観ましたが(ドキュメンタリーだが、これは良かった。但し、観直す機会がなかなか無い)、その後はもう短編しか撮らないのかと思ったら、長篇劇映画「勝手に逃げろ/人生」('79年)で商業映画に復帰、80年代に入ってからも、「パッション」('82年)、「カルメンという名の女」('83年)と次々に発表し、「カルメンという名の女」ではヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲っています。

「勝手にしやがれ」●原題:A BOUT DE SOUFFLE●制作年:1959年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ド・ボールガール●原作・原案・脚本:フランソワ・トリュフォー●撮三百人劇場2.jpg三百人劇場.jpg影:ラウール・クタール●音楽:マルチアル・ソラール●時間:95分●出演:ジャン=ポール・ベルモント/ジーン・セバーグ●日本公開:1960/03●配給:新外映●最初に観た場所:三百人劇場 (78-07-25) (評価★★★★)●併映:「ヒア&ゼア・こことよそ」(ジャン=リュック・ゴダール) 三百人劇場(文京区・千石駅付近)2006(平成18)年12月31日閉館
Kichigai Piero (1965)
Kichigai Piero (1965).jpg
気狂いピエロ s.jpg「気狂いピエロ」●原題:PIERROT LE FOU●制作年:1965年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ド・ボールガール●撮影:ラウール・クタール●音楽:アントワース・デュアメル●原作:ライオネル・ホワイト「十一時の悪魔」●時間:109気狂いピエロ Pierrot Le Fou.jpg分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/アンナ・カリーナ/サミュエル・フラー /レイモン・ドボス/グラツィエッラ・ガルヴァーニ/ダーク・サンダース/ジミー・カルービ/ジャン=ピエール・レオ/アイシャ・アバディ/ラズロ・サボ●日本公開:1967/07●配給:セントラル●最初に観た場所:有楽シネマ (83-05-28) (評価★★★★)●併映:「彼女について私が知っている二、三の事柄」(ジャン=リュック・ゴダール)

「彼女について私が知っている二、三の事柄」●原題:2 OU 3 CHOSES QUE JE SAIS D'ELLE●制作年:1966年●制彼女について私が知っている二、三の事柄.jpg作国:フランス・イタリア●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●撮影:ラウール・クタール●音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン●原案:カトリーヌ・ヴィムネ●時間:90分●出演:ジョゼフ・ジェラール/マリナ・ヴラディ/アニー・デュプレー/ロジェ・モンソレ/ラウール・レヴィ/彼女について私が知っている二、三の事柄01.jpgジャン・ナルボニ/イヴ・ブネトン/エレナ・ビエリシック/クリストフ・ブルセイエ/マリー・ブルセイエ/マリー・カルディナル/ロベール・シュヴァシュー/ジャン=リュック・ゴダール(ナレーション)●日本公開:1970/10●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽シネマ (83-05-28) (評価★★★)●併映:「気狂いピエロ 」(ジャン=リュック・ゴダール)

  
有楽シネマ 1991頃.jpg銀座シネ・ラ・セット  .jpg銀座シネ・ラ・セット.jpg有楽シネマa.jpg有楽シネマ  (1955年11月14日オープン、1994年12月休館、1995年6月16日~シネマ有楽町(成人映画上映館)、1996年~銀座シネ・ラ・セット、159席) 2004(平成16)年1月31日閉館  跡地に建設のイトシアプラザ内に2007年10月シネカノン有楽町2丁目オープン、2009年12月4日ヒューマントラストシネマ有楽町に改称

有楽シネマ(シネ・ラ・セット)解体工事〔2004〕/イトシアプラザ内ヒューマントラストシネマ有楽町[シアター1(16有楽シネマ解体9.jpg2席)・シアター2(63席)]
ヒューマントラストシネマ有楽町.jpgヒューマントラストシネマ有楽町 sinema2.jpg 
     
ゴダール全シナリオ集2.jpg 
  
《読書MEMO》
●ゴダール全シナリオ集・収録作品
Ⅰ 水の話・シャルロットと彼女のジュール・勝手にしやがれ・小さな兵隊・女は女である・立派な詐欺師・カラビニエ
Ⅱ 怠惰の罪・女と男のいる舗道・軽蔑・恋人のいる時間・未来展望・気狂いピエロ
Ⅲ アルファヴィル・男性女性・メイドインUSA・彼女について私が知っている二三の事柄・ヴェトナムから遠く離れて・中国女・ウィークエンド
 『ゴダール全集〈2〉ゴダール全シナリオ集 (1971年)

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