Recently in 高峰 秀子 出演作品 Category

「●か行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2551】 木村 恵吾 「花くらべ狸御殿
「●「キネマ旬報ベスト・テン」(第1位)」の インデックッスへ「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ「●笠 智衆 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●木下忠司 音楽作品」の インデックッスへ(「水戸黄門」) 「●東野 英治郎 出演作品」の インデックッスへ(「水戸黄門」)

この「時代色」「地方色」をリメイクは超えられない。子役の演出も。

二十四の瞳 ポスター.jpg二十四の瞳 dvd.jpg 二十四の瞳 01.jpg 二十四の瞳 岩波.jpg
二十四の瞳 デジタルリマスター 2007 [DVD]」『二十四の瞳 (岩波文庫)

二十四の瞳01a.jpg 1928(昭和3)年、大石久子(高峰秀子)は新任教師として、瀬戸内海小豆島の分校へ赴任する。1年生の磯吉、吉次、竹一、ミサ子、松江、早苗、小ツル、コトエなど12人が初めて教壇に立つ久子には愛らしく思え、田舎の古い慣習に苦労しながらも、良い先生になろうとする。ある日、久子は子供二十四の瞳 02.jpgのいたずらで落とし穴に落ちて負傷し、長期間学校を休んでしまうが、先生に会いたい一心の子供たちは2里の道程を歩いて見舞いに来てくれ、皆で海辺で記念写真を撮る。しかし、自転車に乗れない久子は、住まい近くの本校へ転任することに。1933(昭和8)年、5年生になって子供たちは本校へ通うようになり、久子は結婚していた。子供たちにも人生の荒波が押しよせ、大工の娘・松江は母親が急死し、奉公に出される。久子は修学旅行先の金比羅で偶然に松江を二十四の瞳 03.jpg見かけることになる。軍国主義の影が教室を覆い始めたことに嫌気さした久子は、子供たちの卒業とともに教壇を去る。8年後の1941(昭和16)年、戦争が本格化し、教え子の男子5人と久子の夫は戦争に出征、漁師の娘コトエは大阪へ奉公に出るが、肺病になり物置で寝たきりになる。1945(昭和20)年、久子の夫は戦死し、かつての教え子も、竹一ら3人が戦死、ミサ子は結婚し、早苗は教師に、小ツルは産婆に、二十四の瞳 er9.jpgそしてコトエは肺病でひっそりと死んだ。久子には既に子が3人あったが、2歳の末っ娘は空腹に耐えかねた末に木になる柿の実を採ろうとして転落死する。翌1946(昭和21)年、久子は再び岬の分教場に教師として就任する。児童の中には、松江やミサ子の子供もいた。一夜、ミサ子、早苗、松江、マスノ、磯吉、吉次が久子を囲んで歓迎会を開いてくれ、磯吉は両目の視力を失っていた。かつての教え子たちは久子に自転車をプレゼントする。数日後、岬の道には元気に自転車のペダルを踏む久子の姿があった―。

二十四の瞳s.jpg 木下惠介(1912-1998/享年86)監督の1954(昭和29)年公開作で、同年「キネマ旬報 ベスト・テン」で第1位(2位も同監督の「女の園」('54年/松竹))、1955年度ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞作。文藝春秋刊『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版)第7位。壺井栄(1899-1967/享年67)の原作『二十四の瞳』は第二次世界大戦の終結から7年後の1952(昭和27)年に発表されていて(原作は瀬戸内海に浮かぶ島を舞台としているが、その島の名前は一度も出てこない。但し、小豆島は作者の出身地である)、映画は原作発表の翌年春から撮影が始まり、翌々年に公開されたということになります。

 個人的には1962年のリバイバル時の木下監督自ら再編集等に携わった「ワイド(ビスタビジョン)版」(時間143分、画面の上下がトリミングされている)を親に連れられて劇場で観ているはずですが殆ど記憶がなく、その後学生時代に観て、さらに2007年にデジタルリマスター化されたものを最近劇場で観ました(時間156分)。

 あるこの映画紹介の中にはメロドラマとの表現もありましたが、泣ける映画であり、実際多くの中高年がこの作品を観て、映画を観て泣けた時代を思い出すというのを聞いたこともあります(この作品が今まで観た映画の中で一番泣けた映画であるという人も少なくない)。自分の場合は、学生時代に観た時は、原作よりも生徒たちを"純"な存在として描いていることに若干抵抗があったのですが、今はそうでもないかも。三島由紀夫.jpgあの三島由紀夫は、最も好きな日本の映画監督に木下惠介監督を挙げていますが、「二十四の瞳」に関しては、「間がどうも古いね。泣かせる間がちゃんとできている。(中略)絶対、泣かなくなっちゃう、腹が立ってきてね」と雑誌の読者座談会で発言しており(同じ理由でビットリオ・デ・シーカの「自転車泥棒」('48年/伊)なども嫌いだったらしい)、「泣かせる」演出に嫌悪感があったようです(川内由紀人『三島由紀夫、左手に映画』('12年/河出書房新社))。自分も40代くらいまではあまり好きでなかったし、テレビなどでやっているとチャンネルを変えたりしていたように思いますが、今は年齢と共に素直に(?)"泣ける"ようになったのかも(やっぱり劇場で観る方がいい)。

二十四の瞳10.jpg リメイクされたりもしていますが(映画では田中裕子版('87年)が、テレビドラマでは黒木瞳版('05年)、松下奈緒版('13年)などがある)、戦後10年以内に作られたこの作品が持つ独特の時代的、地方的な雰囲気があり(風光明媚な瀬戸内の風景や、素朴な人々の暮らしぶりといった背景)、それより後の映像化作品でこの作品を超えるのは難しいように思います(同じことが同監督の3年後のカラー作品「喜びも悲しみも幾歳月」('57年/松竹)についても言える。両作品とも季節の違いはあるが波止場で人々が出征兵士を見送るシーンがあり、それがまるで記録映像を観ているように見える)。勿論、「時代色」「地方色」だけでなく、木下惠介監督の演出のきめ細かさも光っているように思います。

二十四の瞳ges.jpg 先に書いたように、物語には1928(昭和3)年、1933(昭和8)年、1941(昭和16)年、そして1945(昭和20)年から1946(昭和21)年という、大まかに言って4つのシークエンスがあり(こうした構成も「喜びも悲しみも幾歳月」に似ている)、この間に子供たちはそれぞれ6歳(小学校1年生)、10歳(小学校5年生)、18歳、22歳と成長し、大石先生も20代から40代になるわけですが、20代から40代の大石先生を巧みに演じ分けている高峰秀子もさることながら、子役たちも子供から大人になるまでが自然に繋がっているという感じです。

二十四の瞳es.jpg 特に、6歳(小学校1年生)と10歳(小学校5年生)の配役は、全国からよく似た兄弟、姉妹を募集し、3600組7200人の子供たちの中から、12組24人が選ばれたとのことで(大人になってからの役者も、その子供たちとよく似た役者を選んだ)、観ていて「あの子が成長してこうなったのだな」などとと分かり、顔立ちや目元まで似ていたりすると結構はっとさせられます。でも、兄弟、姉妹を顔が似てるかどうかを基準に選んだということは、それをどう演出するかは、木下惠介監督には相当な自信があったのではないでしょうか。実際、子役たちから巧まざる上手さを引き出しているように思いました。「泣ける」背景には、こうした戦略的かつ細やかな技巧の積み重ねがあり、それが、声高ではないのに反戦映画としての訴求力があることに繋がっているのだと改めて思われ、評価「◎」としました。

木下忠司.jpg次郎物語%E3%80%80t.jpg 音楽の木下忠司(きのした・ちゅうじ、1916-2018)は木下惠介監督の弟で、この「二十四の瞳」をはじめ、「女の園」('54年/松竹)、「野菊の如き君なりき」('55年/松竹)、「喜びも悲しみも幾歳月」('57年/松竹)など兄・木下恵介が監督した映画の音楽を数多く手掛けていますが、今年['18年]4月に102歳で亡くなっています。木下作品以外では、「白蛇伝」('58年/東映)、「安寿と厨子王丸」('61年/東映)といったアニメ映画や、「点と線」('58年/東映)、「黄色い風土」('61年/ニュー東映)、更水戸黄門 ああ人生に涙あり.jpgには、「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」('66年/大映)や「トラック野郎シリーズ」(東映、全10作中、8作を担当)なども手掛けています。NHKのテレビドラマ「次郎物語」('66-'68年)のペギー葉山が歌っていたテーマ曲の作曲者でもありますが、テレビドラマのテーマ曲と言えば、この人が作曲した中では何と言っても「水戸黄門」の主題歌「あゝ人生に涙あり」が一番よく知られているでしょうか。

二十四の瞳312.jpg「二十四の瞳」●制作年:1954年●監督・脚本:木下惠介●製作:桑田良太郎●撮影:楠田浩之●音楽:木下忠司●原作:壺井栄●時間:156分●出演:高峰秀子(大石久子)/天本英世(大石久子の夫)/夏川静江(久子の母)/笠智衆(分教場の男先生)/浦辺粂子(男先生の奥さん)/明石潮(校長先生)/高橋豊子(小林先生)/小林十九二(松江の父)/草香田鶴子(松江の母)/清川虹子(よろずやのおかみ)/高原駿雄(加部小ツルの父)/浪花千栄子(飯屋のかみさん)/田村高廣(岡田磯吉)/三浦礼(竹下竹一)/渡辺四郎(竹下竹一(本校時代))/戸井田康国(徳田吉次)/大槻義一(森岡正)清水龍雄(相沢仁太)/月丘夢路(香川マスノ)/篠原都代子(西口ミサ子)/井川邦子(川本松江)/小林トシ子(山石早苗)/永井美子(片桐コトエ)●公開:1954/09●配給:松竹●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(18-05-08)(評価:★★★★☆)
天本英世(大石久子の夫)                 田村高廣(岡田磯吉)
二十四の瞳 天本英夫.jpg天本英世.jpg二十四の瞳 田村高廣.jpg田村高廣 .jpg
                                                                                                                       
映画「二十四の瞳」田中裕子版('87年/松竹)
二十四の瞳  田中裕子 (1).jpg 二十四の瞳  田中裕子.jpg
テレビドラマ「二十四の瞳」黒木瞳版('05年/日本テレビ)/松下奈緒版('13年/テレビ朝日)
二十四の瞳 黒木瞳.jpg 二十四の瞳 松下奈緒.jpg

水戸黄門 東野英治郎版.jpg水戸黄門 op.jpg「水戸黄門(第1-13部)(東野英治郎版)」)●監督:内出好吉/田坂勝彦/船床定男/山内鉄也ほか●製作総指揮:松下幸之助●製作:松下正治/丹羽正治●脚本:宮川一郎/窪田篤人/三好伍郎/鈴木則文/飛鳥ひろし/吉田哲郎/梅谷卓司/浅井昭三郎/津田幸夫/中島貞夫/伊上勝/鈴木生朗/鎌田房夫/田坂勝彦/葉村彰子/加藤泰/稲垣俊ほか●音楽:木下忠司●出演:東野英治郎/杉良太郎/横内正/露口茂/弓恵子/岩井友見/中谷一郎/高橋元太郎/伊藤栄子/村井国夫/大原麗子/菅貫太郎/里見浩太朗/成田三樹夫/大和田伸也/三浦浩一/山口いづみ●放映:1969/08~1983/04(全381回)●放送局:TBS

「●ま行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2487】 マキノ 正博 「家光と彦左
「●鈴木 静一 音楽作品」の インデックッスへ「●長谷川 一夫 出演作品」の インデックッスへ 「●山田 五十鈴 出演作品」の インデックッスへ 「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ 「●小国 英雄 脚本作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●は ダシール・ハメット」の インデックッスへ

ハメット原作映画の翻案。コメディ的要素と謎解き的要素の両方を楽しめる。

昨日消えた男 vhs.jpg 昨日消えた男00.jpg 昨日消えた男―小國英雄シナリオ集_.jpg ハメット 影なき男.jpg
「昨日消えた男」VHS    長谷川一夫(文吉)・山田五十鈴(小富)  『昨日消えた男―小國英雄シナリオ集〈2〉』/ハメット「影なき男 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ (109))
昨日消えた男 vhs3.jpg昨日消えた男01.jpg 裏長屋の大家・勘兵衛(杉寛)が何者かに殺された。勘兵衛は鬼勘と言われるほど無情な男で間借人の間では嫌われ者だった。まず日頃から勘兵衛を殺してカンカン踊りを踊らせてやるといっていた文吉(長谷川一夫)と、勘兵衛に借金の返済を迫られていた浪人の篠崎源衛門(徳川夢声)が疑われる。更に長屋には、文吉に惚れている芸者小富(山田五十鈴)、小富に想いを昨日消えた男02.jpg寄せる錠前屋の太三郎(清川荘司)、篠崎源衛門の娘お京(高峰秀子)、その恋人の横山求馬(坂東橘之助)、人形師の椿山(鳥羽陽之助)と女房おこん(清川虹子)、居合抜の松下源蔵(鬼頭善一郎)と女房おかね(藤間房子)などが住んでいた。目明しの八五郎(川田義雄)が探索するも犯人は不明、そこで与力の原六之進(江川宇礼雄)は一同を呼んで取り調べをすることにしたが、それでも埒が明かない。やがて第二の殺人事件が起き、南町奉行・遠山左衛門射(遠山金四郎)が事件解決に乗り出す―。

昨日消えた男03.jpg昨日消えた男b.jpg 1941年1月公開作で、マキノ正博(1908- 1993/享年85)監督が日活を離れてフリーとなって撮っていた「家光と彦左」が古川緑波の病気で撮影中断したため、その代わりに急遽撮った作品であり、原案は、ダシール ハメット原作、ウィリアム・パウエルとマーナ・ロイ主演の「影なき男」('34年)で、脚本の小国英雄(1904-1996/享年91)はこれを江戸時代の長屋に設定、ウィリアム・パウエルが演じる探偵は遠山の金さんに置き換え、それを長谷川一夫が演じました。この映画、僅か9日間で撮られたとかで、徳川夢声はマキノ正博監督の早撮りに驚いたと言います(マキノ正博はこのストーリーを、1956年にも中村扇雀=尾上さくらのコンビで「遠山の金さん捕物控・影に居た男」として、同じ脚本でリメイクしている。この他、森一生監督、小国英雄脚本で市川雷蔵が同心(実は徳川吉宗の仮の姿)を演じた「昨日消えた男」('64年/大映)がある)。

 言われてみれば確かに洋物推理小説っぽい凝った展開だったかも。犯人以外の人物がある動機から死体を動かしたというのは、クリスティの『書斎の死体』('42年)のようでもあるし、実は登場人物の多くが何らかの形で事件に関わっていたというのは、ヒッチコックの「ハリーの災難」('55年)のようでもありますが、それらよりも早くハメット原作映画に目を付け、尚且つ、それを遠山の金さんに置き換えた小国英雄と、このややこしい話を9日間で撮り上げたマキノ正博の両者の才覚はともに驚くべきものなのかもしれません。但し、最後に謎解きされてみれば、伏線となるようなものは殆ど無かったような気もしなくもなかったです(観直してみればまた違った印象を受けるかもしれないが)。

山田五十鈴と長谷川一夫「昨日消えた男」.jpg「昨日消えた男」長谷川・高峰.jpg 当時16歳の高峰秀子の可憐さよりも、長谷川一夫(当時33歳)と山田五十鈴(当時24歳)の息の合った掛け合いの方が楽しかったでしょうか(山田五十鈴の"舌出し"は、後に小津 安二郎監督の「宗方姉妹」('59年/新東宝)で高峰秀子(当時25歳)が見せる"舌出し"よりも自然であるように思えた)。長谷川一夫の剣戟ならぬ棒術アクションもあります(体がよく動いている)。ベースはコメディ調ですが、渡辺篤、サトウロクローの「なるほどね」「いやまったく」のギャグの繰り返しはややくどかったような...。それでも、昭和16年に作られた映画であるにしては国策映画的な雰囲気は殆ど無く(大塩平八郎の一味が幕府転覆を目論む'悪役'になっていることぐらいか)、コメディ的要素と謎解き的要素の両方を楽しめます。

昨日消えた男3.jpg「昨日消えた男」山田五十鈴.jpg 謎解きの方は結局"千里眼"的と言っていい遠山金四郎の登場を待たなければ何が何だか分かりませんでしたが、それでも皆がそれぞれ何となく怪しげな行動をとっていることが緊迫感を醸して最後まで興味を引き、この辺りは演出の巧みさもあるように思いました。

長谷川一夫(遠山金四郎(文吉))/山田五十鈴(小富)(当時24歳)

「昨日消えた男」●制作年:1941年●監督:マキノ正博●製作:滝村和男●脚本:小国英雄●撮影:伊藤武夫●音楽:鈴木静一●原案:ダシール・ハメット●時間:89分●出演:長谷川一夫/山田五十鈴/徳川夢声/高峰秀子/鳥羽陽之助/清川虹子/鬼頭善一郎/藤間房子/坂東橘之助/杉寛/沢井三郎/江川宇礼雄/川田義雄/進藤英太郎/渡辺篤/サトウ・ロクロー/清川荘司●公開:1941/01●配給:東宝東京(評価:★★★☆)

「●は行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1051】 原 一男 「ゆきゆきて、神軍 
「●鈴木 静一 音楽作品」の インデックッスへ「●大河内 傳次郎/長谷川 一夫 出演作品」の インデックッスへ 「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

ダブル主役の大河内傳次郎、長谷川一夫を観るためだけの映画?

「大江戸の鬼」 昭22VHS66.JPG「大江戸の鬼」 昭22VHS1.jpg 「大江戸の鬼」VHS
大河内傳次郎・宮川五十鈴・長谷川一夫・高峰秀子・黒川彌太郎

「大江戸の鬼」 昭22 67.JPG 江戸の街で夜ごと起こる鬼の面を被った殺人鬼による連続殺人事件を早期に解決しようと、北町奉行・遠山金四郎(黒川彌太郎)は与力たちに捜査の徹底を命じ、与力たちも岡っ引きたちにそれを伝える。岡っ引きの稲田屋の傳七(大河内傳次郎)が事件の探査を続ける中、吉五郎(清川荘司)という男が島帰りの挨拶に訪ねて来て、かつて吉五郎と同じ芝居小屋で働き一緒に不良浪人を殺め島流しになった清吉(長谷川一夫)も島から戻ったことを知らされる。清吉は、久々に戻った芝居小屋で歓待されるも、用心棒なのか、黒船(鳥羽陽之助)、牛窓(伊藤雄之助)、雪持(田中春男)らヤクザ風の浪人たちが小屋に居着いていた。実は清吉は江戸では名高い能役者の一人息子であり、その家には先祖伝来の人手に渡ると魔性を現すと伝えられる般若の面があったが、清吉の父・堀池幻雪(汐見洋)は、保管していたその般若の面が最近紛失しているのに気づく。清吉は、自分の子分たちが般若の面をそんな大切なものと知らずに勝手に持ち出し、それを受け取った露天商(高勢実乗)もそれを誰かに売ってしまったと知る。清吉は、群集の中で、ヤクザ者の一人・雪持が町娘おなつ(高峰秀子)の簪をすり取ったのを見つけ、それを取り返してやったことを契機におなつと知り合い、おなつは清吉に想いを寄せる。おなつの父・赤鶴(しゃくづる)彦兵衛(上山草人)は、能面職人であり、彼が火急の仕事の依頼を受け彫っていた般若面の脇に手本として置かれていたのは、盗まれた魔性の面であった―。

「大江戸の鬼」 昭22長谷川一夫高峰秀子68.JPG 1947(昭和22)年5月公開の萩原遼監督作品で、東宝の労働争議の中、脱退組のメンバーらが作った"第二製作部"と呼ばれていた組織が'47年3月に新東宝映画製作所という組織になり、そこでの時代劇第1作がこの作品であるとのことです。大河内傳次郎と長谷川一夫のダブル主役というのが興味深く、新生・新東宝映画製作所の力の入れ具合が窺えなくもないですが、如何せん、ミステリーとしては平凡な展開でだったように思います。

 ミステリー部分が弱いということは自覚されているのか、後半は、ミステリーと並行して、清吉(長谷川一夫)とおなつ(高峰秀子)の恋愛が描かれますが、終盤の高峰秀子演じるおなつが牢内の清吉に語りかけるシーンでは、清吉がずっとと背中を向けていて顔が見えず(明らかにスタンドイン)、おなつの顔ばかりハレーションをかけて撮っていて、そのパターンで繰り広げられる愁嘆場にはやや辟易させられました。

 基本的に、大河内傳次郎、長谷川一夫を観るためだけの映画でしょうか。但し、大河内傳次郎が伝七親分で、長谷川一夫が出自はお坊ちゃんながらも罪人上がりという取り合わせならば、もう少し面白いものが作れたような気もしますが。高峰秀子に関しては、典型的な町娘役の域を出ることが無く、持ち前の演技力が生かされていないように思いました。

高勢実乗44.jpg上山草人   .jpg それ以外では、「丹下左膳余話 百萬両の壺」('35年/日活)などにも出ていた「ワシャ、カナワンヨ」の高勢実乗(たかせ みのる、1897-1947年/享年49)などもチョイ役(露天商)で出ていますが、やはりおなつの父の能面師を演じた上山草人(かみやま そうじん、1884-1954/享年70)が印象に残ります。1919(大正8)年に渡米してから映画界に入り、ダグラス・フェアバンクス主演の活劇映画「バグダッドの盗賊」(1924)にモンゴルの王子の役で出演するなどハリウッドで活躍した人で、帰国後の出演作には「赤西蠣太」('36年/日活、按摩役)、「七人の侍」('54年/東宝、琵琶法師役)などがあります。何を演っても"怪演" という雰囲気の俳優でした。

上山草人 .jpg上山草人「赤西蠣太」撮影風景.JPG上山草人 七人の侍.jpg上山草人 in「バグダッドの盗賊」(1924)/「赤西蠣太」(1936)撮影風景/「七人の侍」(1954)

「大江戸の鬼」長谷川一夫・高峰秀子.jpg「大江戸の鬼」●制作年:1947年●監督:萩原遼●製作:伊藤基彦●脚本:三村伸太郎●撮影:安本淳●音楽:鈴木静一●時間:100分●出演:大河内傳次郎/長谷川一夫/黒川彌太郎/宮川五十鈴/上山草人/汐見洋/岬洋二/鬼頭善一郎/原文雄/小森敏/小島洋々/田中春男/高峰秀子/清川荘司/鳥羽陽之助/伊藤雄之助/阪東橋之助/横山運平/澤井三郎/永井柳太郎/高勢実乗●公開:1947/05●配給:新東宝(評価:★★☆)

高峰秀子・長谷川一夫
 

「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2390】 野村 芳太郎 「鬼畜 
「●橋本 忍 脚本作品」の インデックッスへ 「●黛 敏郎 音楽作品」の インデックッスへ 「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●ま 松本 清張」の インデックッスへ「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「張込み」)

原作者に「原作を超えた」と言わせた作品。ドラマではだんだん原作の雰囲気を伝えにくくなってきている?

張込み dvd.jpg 張込み_.jpg 張込み 映画1.gif  張込み 水曜ミステリー1.jpg 張込み 松本清張 カッパノベルズ.jpg
張込み [DVD]」/「『あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 張込み』 [Blu-ray]」/大木実・宮口精二/TX系「水曜ミステリー9」松本清張特別企画「張込み」2011年11月2日放映(若村麻由美)/『張込み―松本清張短編全集〈3〉 (カッパ・ノベルス)

張込み 映画 dvd.jpg張込み 3.jpg 警視庁捜査第一課の刑事・下岡(宮口精二)と柚木(大木実)は、質屋殺しの共犯者・石井(田村高廣)を追って佐賀へ発った。主犯の自供によると、石井は兇行に使った拳銃を持ってい、三年前上京の時別れた女・さだ子(高峰秀子)に張込み 高峰.jpg会いたがっていた。さだ子は今は佐賀の銀行員横川(清水将夫)の後妻になっていた。石井の立寄った形跡はまだなかった。両刑事はその家の前の木賃宿然とした旅館で張込みを開始した。さだ子はもの静かな女で、熱烈な恋愛の経験があるとは見えなかった。ただ、二十以上も年の違う夫を持ち、不幸そうだった。猛暑の中で昼夜の別なく張込みが続けられた。三日目。四日目。だが石井は現れなかった―。

『張込み』(1958)2.jpg 原作は松本清張が「小説新潮」1955年12月号に発表した短編小説。橋本忍脚本、野村芳太郎監督によるこの映画化作品では、逃亡中の犯人(田村高廣)の昔の恋人(高峰秀子)を見張る刑事が原作の1人に対して2人(大木実・宮口精二)になっており、やはり1人にしてしまうと、見張る側に関してもセリフ無しで心理描写せねばならず、それはきつかったのか...。それでもモノローグ過剰とならざるを得ず、しかも、見張る側の私的な状況など原作には無い描写を多々盛り込んでおり、もともと短篇であるものを2時間にするとなると、こうならざるを得ないのでしょうか。しかしながら、この作品の世評は高く、野村芳太郎はこの作品で一気にメジャー監督への仲間入りを果たすことになります。

 橋本忍・野村芳太郎のコンビは以降も「ゼロの焦点」('61年)、「影の車」('70年)、「砂の器」('74年)と、この作品以降次々と松本清張作品の映画化を手掛けており、そうした一連の作品の中でもこの作品に対する原作者・松本清張の評価・満足度は高かったそうですが、個人的には、最初にこの映画「張込み」を観た際には、後年の作品ほどの演出のキレが感じられませんでした。ただ、田中小実昌などは「砂の器」よりもこっちの方がずっと傑作だと言っおり、エライ人が出てこないのがいいと。確かにそういう見方もあるかもしれないと思った次第です。

松本清張 .jpg 因みに、松本清張本人が評価していた自作の映画化作品は、この「張込み」と、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」('60年/東宝)、「砂の器」('78年/松竹)だけであったといい(3作とも脚本は橋本忍)、特に「張込み」と「黒い画集 あるサラリーマンの証言」については、 「映画化で一番いいのは『張込み』『黒い画集 あるサラリーマンの証言』だ。両方とも短編小説の映画化で、映画化っていうのは、短編を提供して、作る側がそこから得た発想で自由にやってくれるといいのができる。この2本は原作を超えてる。あれが映画だよ」と述べたとのことです。(白井佳夫・川又昴対談「松本清張の小説映画化の秘密」(『松本清張研究』第1号(1996年/砂書房)、白井佳夫・堀川弘通・西村雄一郎対談「証言・映画『黒い画集・あるサラリーマンの証言』」(『松本清張研究』第3号(1997年/砂書房))。

 この「張込み」という作品は、時代劇に翻案されたものも含めると、これまでに少なくとも10回はテレビドラマ化されています。
 •1959年「張込み(KR(現TBS))」沢村国太郎・山岡久乃・安井昌二
 •1960年「黒い断層~張込み(KR(現TBS))」宇津井健・三井弘次
 •1962年「張込み(NHK)」沼田曜一・福田公子・小林昭二
 •1963年「張込み(NET(現テレビ朝日))」江原真二郎・織田政雄・高倉みゆき
 •1966年「張込み(KTV(関西テレビ))」中村玉緒・下条正巳・高津住男
張込み 吉永小百合.bmp •1970年「張込み(NTV)」加藤剛・八千草薫・浜田寅彦
 •1978年「松本清張おんなシリーズ1・張込み(TBS)」吉永小百合・荻島真一・佐野浅夫
 •1991年「松本清張作家活動40年記念・張込み(CX)」大竹しのぶ・田原俊彦・井川比佐志
 •1996年「文吾捕物絵図 張り込み(TX)」中村橋之助・萬屋錦之介・國生さゆり
 •2002年「松本清張没後10年記念・張込み(ANB)」ビートたけし・緒形直人・鶴田真由

張込み 田村高廣/高峰秀子.jpg 女主人公の方は、映画では高峰秀子が演じ、テレビドラマでは八千草薫や吉永小百合などが演じているとなると、女優にとっては演じてみたい役柄なのでしょう。でも、相応かつ相当の演技力が要求される役どころだと思います。

映画「張込み」 田村高廣/高峰秀子

 一方、張り込む側の男優の方は、テレビドラマ版は、見張りの刑事が2人になっているものが多く、その点では映画版を踏襲していますが、だんだんベテラン刑事と若手刑事の取り合わせという風になっていき(但し、吉永小百合版は若手の荻島真一が一人で張り込み)、ベテランがメインになったり若手がメインになったりと色々バリエーションがあるようです(大竹しのぶ版では若手エリート刑事と地元の田舎刑事との取り合わせ、ビートたけし版ではビートたけしと一緒に張り込む緒形直人の方が「年下の上司」ということになっている)。

若村麻由美.bmp そして2011年にまた、TX系の「水曜ミステリー9」で、「松本清張特別企画」として、若村麻由美・小泉孝太郎主演で放送されました(若村麻由美は「無名塾」種出身。90年代にも清張ドラマに何度か出演しており、女優業復帰でこの人も結構長いキャリアになる)。

張込み 水曜ミステリー2.jpg 張り込む刑事は小泉孝太郎1人で、先輩刑事のムダだという意見に抗して張り込むことを主張する熱血漢である一方で、色男でもあり、かつて関与したDV事件の女性被害者に対して、今はストーカーまがいのことをしているという変なヤツ。原作ではラストに1回あるだけの、主人公の女(若村麻由美)との接触場面が矢鱈と多く、逃亡中の犯人(元恋人)と女を引きあわせるお膳立てまでして、結果として女の目の前で犯人は取り押さえられることになり、これって却って残酷ではなかったか。

張込み 水曜ミステリー3 携帯.jpg 原作にはあまり記述の無い女の家庭での妻としての暮らしぶりが描かれることは、これまでのドラマ化作品でもあったかと思いますが、これはやや"描き過ぎ"。しかも、「幸せそうではない」夫婦生活のはずが、一見「幸せそうな」家庭になっていて、夫婦の結婚の経緯から始まって、女の夫が携帯の着信記録から妻の行動に不審を抱き妻を問い詰めると、ストーカーに狙われていると言うので警察に通報するとか、事件解決後に女は家から出奔してしまうとか―何だか余計なものを付け加え過ぎて、原作とはテーマからして別物になった感じ(ベクトル的には原作と真逆。特にラストは)。

張込み 1958.jpg張込み 映画1.jpg ドラマ化されるごとに原作から離れていく感じがしますが、最近のドラマ化作品が原作と別物に見えるのは、野村芳太郎のモノクロ映画の冒頭で10数分間続く夜行列車のシーンに見られるような(その外にも移動シーンで蒸気機関車がふんだんに見られ、S張込み 1958汽車.pngLファン必見?)、高度成長期初期の熱に浮かされたような活気や雑然とした時代の雰囲気みたいなものが、最近のテレビドラマでは再現されにくいということもあるのかもしれません。まあ、半世紀以上経っているのだから仕方が無いか。 [上写真]「張込み」撮影風景(高峰秀子)

 大方が時代設定を現在に置き換えており、最初から原作を再現するつもりも無いわけですが、1回"原点回帰"したものも観てみたい気がするし、間に入る脚色部分とりわけ演出が、近年の刑事ドラマのパターンをステレオタイプで踏襲しているのにはややウンザリもします(このTX系「水曜ミステリー9」版も、若村麻由美はまあまあなのだが、男優陣の演技は"全滅"に近かったように思う)。

張込み タイトル.jpg 野村芳太郎監督の映画化作品を最初に観た時の個人的評価は星3つでしたが(多分、原作との違いが気にかかったというのもあったと思う)、今観直すと、時代の雰囲気をよく伝えているような印象も。後にこれを超えるものが出てこないため、相対的にこちらの評価が高くなって星半分プラスしたという感じでしょうか。

張込み vhs.jpg張込み 映画2.jpg「張込み」●制作年:1958年●製作:小倉武志(企画)●監督:野村芳太郎●脚本:橋本忍●撮影:井上晴二●音楽:黛敏郎●原作:松本清張「張込み」●時間:116分●出演:大木実/宮口精二/高峰秀子/田村張込み 1958汽車2.png高廣/高千穂ひづる/内田良平/菅井きん/藤原釜足/清水将夫/浦辺粂子/多々良純/芦田伸介●公開:1958/01●配給:松竹●最初に観た場所:池袋文芸地下(84-02-22)(評価★★★☆)

張込み 水曜ミステリー1.jpg「張込み」●監督:星田良子●製作:TX・BSジャパン●脚本:西岡琢也●原作:松本清張●出演:若村麻由美/小泉孝太郎/忍成修吾/渡辺いっけい/塩見三省/六平直政/田山涼成/上原美佐●放映:2011/11(全1回)●放送局:テレビ東京 

「●小津 安二郎 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2369】 小津 安二郎 「麦秋
「●斎藤 一郎 音楽作品」の インデックッスへ 「●笠 智衆 出演作品」の インデックッスへ「●田中 絹代 出演作品」の インデックッスへ「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●お 大佛 次郎」の インデックッスへ「●日本のTVドラマ (~80年代)」の インデックッスへ(「七人の刑事」)

主人公(姉)はストイック過ぎて2人の男性を傷つけているようにも思った。

宗方姉妹s.jpg宗方姉妹0.jpg宗方姉妹 dvd1.jpg 宗方姉妹 dvd2.jpg 
宗方姉妹 [DVD]」「宗方姉妹」田中絹代/高峰秀子

宗方姉妹3.png宗方姉妹 田中絹代 .jpg 東京に住む宗方節子(田中絹代)は、京都の大学教授・内田(斉藤達雄)を訪ねた際、父・忠親(笠智衆)はガンであと1年か半年の余命だと知らされる。節子の妹・満里子(高峰秀子)も父を訪ね、父の旧知の田代上原謙  高峰秀子 宗方姉妹.jpg宏(上原謙)と出会う。後日、満里子は神戸で家具屋を営む宏を訪ね、姉の日記を盗み読みしたため、姉がかつて宏と交際していたのを知っていると言うが、宏は笑って聞き流す。節子の夫・三村亮助(山村聰)は失業中で仕事が見つからず、同居の義妹・満里子とソリが合わない。満里子は日記を読んだことを姉にも白状し、なぜ宏と結婚しなかったのか訊ねる。節子は「当時は、あの人のことが好きかどうか分らなかった。そのうちにあの人はフランスへ行ってしまったの」と淡々と答える。節tumblr_m9hl0zPO8b1r9uoamo1_500.gif子は生計のためバー「アカシア」を経営しているが、「アカシア」に訪ねてきた宏にバーの経営が苦しいことを打ち明けると、宏は「僕に任宗方姉妹 高峰.jpgせてください」と言う。ある日、節子が満里子へ帰りの遅いことを注意すると「この家は陰気臭い」と日頃の鬱憤を吐き出す。節子は「結婚とは良いことばかりではない」と諭すが、満里子は「姉さんは古い」と言って立ち去る。後日、満里子は神戸の宏宅に行き、何故姉と一緒にならなかったか問いただすと、宏は「節子さんを幸せにする自信がなかった」と答える。満里子は宏に「満里子と結婚してくれない」と切り出し立ち去る。節子の家では、亮助が節子にバーの資金の事を訊き、「宏から借りたのか。俺には知られたくなかったのか。宏とはちょくちょく会っているのか」と問い詰める。節子は誤解だと答えるが、亮助は二階に上がってしまい、節子が追いかけて店は辞めるというと「好きなようにしろ」と冷たく言う。満里子は東京に来た宏の旅館を訪ね、「結婚してくれ」というのは本気の部分もあるが冗談だったと言い訳し、節子がバーを辞めようとしているので会ってほしいと頼む。満里子が「アカシア」で客待ちしていると亮助が来て、「明日で店は終わりよ」と言うと亮助は「知らんよ」と答える。満里子が「勝手すぎる」と言うと「酒を飲んでふらふらしているのも捨てがたい」と言い壁にコップを投げつける。数日後、亮助は節子へ「俺達は別れたほうがい宗方姉妹 山村聰、高峰秀子.jpgいのか」と切り出し、「何故」と問う節子へ「お前が一番知ってることだ」と口調を荒げて節子を叩く。そのことで節子は亮助と別れる決心をし、宏の居る旅館を訪ねるが、亮助も後から旅館に来て、「仕事が見つかった。ダム建設の仕事だ。喜んでくれ」と話し、祝杯だと言って立ち去ってしまう。その夜雨でずぶぬれになった亮助は、帰宅後心臓麻痺で死んでしまう。宏と会った節子は「亮助は普通の死ではない。そんな暗い影を背負って貴方の所へ行けない」と言い残して宏と別れ、満里子に対しても「自分に嘘をつかないことが、一番いいと思っている」と言い京都御所から山を見上げながら二人で帰宅する―。 

山村聰/高峰秀子

宗方姉妹 ages.jpg 1950(昭25)年8月公開で、小津安二郎にとっては初めて松竹を離れて撮った作品。原作は大佛次郎の同名小説で、古風な姉(田中絹代)と進歩的な妹(高峰秀子)が対比的に描かれている点はよく知られていますが、背景として、死期を悟っている父(笠智衆)がいて、病弱であるのに酒浸りの姉の夫(山村聰)と洋行帰りの姉の元恋人(上原謙)がいて、更にはその恋人に思いを寄せる未亡人(高杉早苗)がいてと、結構複雑な人間関係でした。

 これぞ名作と言う人もいますが、名優と言われる人たちがそれぞれに演技して、それらが何となく噛みあっていない感じで、噛み合っていないことがそのままストーリー上の人間関係とは合致しているような奇妙な"フィット感"がありました。

宗方姉妹B.jpg 一番はじけていたのは妹・宗方満里子を演じた高峰秀子(当時26歳)でしょうか(これはちょっとはじけ過ぎ)。子役時代に「東京の合唱(コーラス)」('31年)で小津作品に出演していますが、大人になって初の小津作品への宗方姉妹 takamine.jpg出演で、やはりこの人は成瀬巳喜男監督の方が相性いいのかと思ったりもしました。但し、『わたしの渡世日記』(朝日新聞社)によれば、あのコミカル過剰な演技の背景では、「瞬きの数まで指導されたばかりか、事あるごとにペロっと舌を出す演技を要求され、その舌の出し方まで厳しく演技指導を受けた」とのことです(個人的には、後年の「秋日和」('60年)の岡田茉莉子のはじけ方の方が自然だったと思う)。

宗方姉妹 tanaka.jpg ただ、その『わたしの渡世日記』によると、この作品で小津安二郎監督から最も多くダメ出しされたのは田中絹代(当時40歳)だったそうで、この頃の彼女は、例の日米親善使節として渡米した際に、出発時は小袖姿だったのが、帰国時はドレスと毛皮のコートで報道陣に「ハロー」と言い、銀座のパレードで投げ宗方姉妹 last.jpgキッスを連発したことでメディアから「アメリカかぶれ」とのバッシングを受け、自殺まで考えていた時期だったとのこと(ロケバスで隣に座った高峰秀子に死にたいと漏らしたそうな)。その割にはしっかり演技している印象ですが、彼女が演じた姉・宗方節子というのが、個人的には最後まで理解しにくかったような...。ある意味、ストイック過ぎて、2人の男を傷つけているようにも感じました。ラストは究極の"忍ぶ恋"か(彼女がそういう時期だったから小津安二郎がわざわざ意図的に古風な女性の役をあてがったとも思えないが)。

 上原謙の優柔不断気味な田代宏役は可もなく不可もなくで、良かったのは山村聰演じる三村亮助役の退廃ぶり(DVまでやっちゃう)だったでしょうか。やはり舞台出身者は上手い(山村聰はこの作品で第1回「ブルーリボン賞」の主演男優賞を受賞)。上原謙は1909年生まれ、山村聰は1910年生まれですが、山村聰の義父を演じた笠智衆は1904年生まれで、実年齢では2人とあまり差が無く、笠智衆は40代半ばで、彼らの一世代上の世代、実年齢で5歳年下の田中絹代(当時40歳)の父親役を演じていることになります。因みに、実年齢から離れた役柄を役者に演じさせるのは小津安二郎に限ったことではなく、成瀬巳喜男監督の「山の音」('54年)では、上原謙と山村聰が親子を演じています(年下の山村聰が父親役で年上の上原謙が息子役。山村聰は当時44歳で62歳の役を演じた)。

高杉早苗1938.jpg宗方姉妹R.jpg 上原謙の田代宏に思いを寄せる未亡人・真下頼子を演じた高杉早苗(1918年生まれ)は「スーパー歌舞伎」の生みの親・二代目市川猿翁(旧名:三代目市川猿之助)の"生みの親"で(香川照之は息子の三代目猿之助と浜木綿子の間にできた孫にあたる)、梨園に入って一度引退した後の出演です。女優復帰は、戦後すぐ疎開先から東京への転居費用等で借金がかさんだことからで、但し、梨園の妻としての行動に支障が出ない範囲ならという条件付きだったとのことです。引退前では、清水宏監督の「金環蝕」('34年/松竹)や「東京の英雄」('35年/松竹)に出ていました。

高杉早苗(1938(昭和13)年:雑誌「映画之友」三月號)
(背景は前年オープンの赤倉観光ホテル)

宗方姉妹 senngoku s.jpg 脇役では、松竹映画ではなく新東宝映画であるということもあって、飲み屋の給仕役で黒澤映画の常連である千石規子(1922年生まれ)が七人の刑事1.jpg堀雄二e.jpg出ていているのが小津作品としては珍しく、節子が経営するバー「アカシア」の従業員で、元特高隊員で今はギャンブルにうつつを抜かしている前島五郎七を演じた堀雄二(1922年生まれ)の演技も良かったです(この作品の前年の稲垣浩監督の「忘れられた子等」('49年/新東宝)に新任教師役で主演し、校長役の笠智衆と共演している)。この人は後にテレビドラマ「七人の刑事」('61 -'69年/TBS)で赤木係長を演じ、芦田伸介演じる沢田部長刑事ら6人を仕切っていました(警視庁からの台東署への派遣であるため、"係長"でも偉い?)。

宗方姉妹264.jpg 一人一人の役者を見ていくと結構興味深い作品。小津作品独自のカメラワークも「晩春」('49年)の翌年、「麦秋」('51年)の前年、「東京物語」('53年)の3年前ということで、ほぼ完成されていると言っていいのではないでしょうか。ただ、ストーリー的には、今の時代の人が観れば、「ラスト、これでいいのか」と思う人も結構多いように思います。穿った見方をすれば、誰かが死ぬことでハッピーエンドになるというのは、"倫理観"的にと言うより、"美学"的に映画にそぐわないということなのかも。

宗方姉妹ges.jpg宗方姉妹72.jpg「宗方姉妹(むねかたきょうだい)」●制作年:1950年●監督:小津安二郎●製作:児井英生郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:小原譲治●音楽:斎藤一郎●原作:大仏次郎「宗方姉妹」●時間:112分●出演:田中絹代/高峰秀子/上原謙/山村聡/高杉早苗/堀雄二/藤原釜足/河村黎吉/千石規子/一の宮あつ子/堀越節子/坪内美子/斎藤達雄/笠智衆●公開:1950/08●配給:新東宝(評価:★★★☆)

七人の刑事3.jpg七人の刑事2.jpg「七人の刑事」●プロデューサー:蟻川茂男●脚本:早坂暁/向田邦子/石堂淑朗/小山内美江子/長谷川公之/砂田量爾/佐々木守/内田栄一/大津皓一/ジェームス三木/山浦弘靖/本田英郎 他●演出:鴨下信一/今野勉/蟻川茂男/川俣公明/山田和也/田沢正稔/和田旭/山本脩/久世光彦/浅生憲章 他●音楽:樋口康雄(第43話まで)/佐藤允彦(第44話以降)(テーマ音楽:山下毅雄)●出演:堀雄二/芦田伸介/美川洋一郎(美川陽一郎)/佐藤英夫/城所英夫/菅原謙二/天田俊明/高松英郎●放映:1961/10~1964/05、1964/08~1969/04(全382回)●放送局:TBS

「●あ行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2512】 荒井 良平「エノケンの豪傑一代男
「●池部 良 出演作品」の インデックッスへ 「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

やや大味とも言える波乱万丈型ストーリーのお蔭で、高峰秀子の演技の幅を実感できる?

愛よ星と共に ポスター.jpg 「愛よ星と共に」ポスター 愛よ星と共に vhs.jpg VHS(国際放映・日本映画傑作全集) 下スチール写真中央:高峰秀子
愛よ星と共に 01.jpg 十年ぶりに北海道の北島牧場を訪れた邦彦(池部良)は、牧夫頭の娘はるえ(高峰秀子)と再会した。とても美しくなったはるえをみた邦彦はとても驚いたが、綺麗になったと言われ自分の姿を小川の水に映しては何時までも自分を見つめる彼女は、まだ無垢な乙女そのものであった。邦彦とはるえは、牧場の小川で一夜を過ごした。はるえは邦彦の語る美しい星の話を興味深く熱心に聞いていた。しかしその話はあまりにも美しくあまりにも巧みな運命の夢だった。邦彦が東京へ帰ってから数月、はるえの腹には美しい星の子供が宿っていた。父からの反対に耐え切れず、はるえは家を飛び出し東京の邦彦を訪ねるが、時すでに遅く、彼がフランスへ旅立った後だった―。

愛よ星と共に4.jpg 阿部豊(1895-1977)監督の1947(昭和22)年「新東宝」作品で(黒澤明の「野良犬」('49年)などと同じく製作会社は「新東宝」で配給会社は「東宝」)、池部良(1918-2010)、高峰秀子(1924‐2010)主演ですが、この2人、同じ2010年、池部良は10月18日(享年92)、高峰秀子は12月28日に(享年86)それぞれ亡くなっていることに改めて思い当った次第です(共に名エッセイストでもあった)。

阿部 豊 「愛よ星と共に」2.jpg 牧場主、つまり上流階級に属する男性と恋し合って一夜を共にするも、娘より自らが仕える本家の方を気遣う牧夫頭の親によって勘当され、北海道の家を出て東京にその男性を追うも、恋人は海外へ渡航した後。身重の身で生活すらままならず、独り寂しく赤ん坊を産むが、その赤ん坊にも病で死なれて、女給の生活に身を窶(やつ)す。しかし、やがてその世界で「花形女給」として名を馳せるようになり、そんな中、男女のもつれからある男を誤って銃で死なせてしまう。世間からは次々と男を渡り歩く毒婦のようにみられ、裁判でも死刑判決を受けるが、自身がこの世界に身を置くようになった契機が、赤ん坊が亡くなったことにあるとは判明するも、その赤ん坊が誰との間の子であったかは公判で明かすことなく、判決を受け入れようとする。そこへ―。

阿部 豊 「愛よ星と共に」3.jpg 女性映画と言うかメロドラマと言うか、しかもハーレクインみたいな波乱万丈(或いはシドニィ・シェルダン風か)。テレビがある時代なら13話連続のテレビドラマだろうけれど、まだテレビが登場する何年か前なので、TVドラマが担っているような役割を、その分も含め映画が担っていたのだなあと思わせる作品でした。

 やや強引な話の展開はともかくとして、やはり注目は、高峰秀子の演技でしょうか。彼女は、天才子役からアイドル女優、そして本格女優へと各ステップにおいて確実に成長を遂げた稀有なケースであり、様々な作品への出演を通して、純真無垢な娘から恋する乙女、社会の底辺に生きる女から生活のために水商売に墜ちる女、そうした世界で妾になったり売れっ子になったりする女などを演じ分けきたわけですが、この作品では、やや大味とも言える波乱万丈型ストーリーのお蔭で、彼女の演技のそうした(全てとまでは言わないまでも)多くのパターンを一作品の中で堪能することができます(結果的にその点がこの作品の一番の見所となっているのでは?)。

 高峰秀子は既に人気アイドル女優だった16歳の時(山本嘉次郎監督の「エノケンの孫悟空」('40年)などに出ていた頃)、豊田四郎監督の「小島の春」('40年)に出演した杉村春子(1909-1997)の演技にショックを受けて演技開眼したそうですが(やがて成瀬巳喜男監督の「流れる」('56年)で2人は共演する)、その後、実に演技の幅が広い女優になっていったように思います。但し、この作品出演時は、彼女自身初めて子を持つ母親役を演じ、タバコを吸う役柄も初めてであって、そのためにタバコを吸う仕草の特訓などもしたそうです。そうした努力の甲斐もあってか、娘役だけでなく、淪落の水商売女の演技なども板についていますが、やはり、当時23歳という若さにして「花形女給」(カリスマ・ホステスといった感じか)を堂々と演じ切っているのは、もともと素養的に華があった女優だったからでしょう。一方で、後の野村芳太郎監督の「張込み」('58年/松竹)などでは、そうした華やかさを完全に封印して市井の女を演じていたりもしています。やはり、スゴイ女優だったなあと改めて思います。

愛よ星と共に.gif愛よ星と共に55.gif 因みに、この作品は北海道・幕別町の新田牧場でロケが行われていますが、なぜ新田牧場がロケ地に選ばれたかというと、この映画のプロデューサーだった青柳信雄が札幌の雪印乳業を訪問した時に新田牧場愛よ星と共に ロケ地.jpgを紹介されたとのこと。戦後間もない食糧難の折、当地では白米、牛乳、玉子、肉等などの供給が豊かで、40日のロケ期間中、ロケ隊には毎日が天国のようだったとも言われています。

北海道・幕別町ロケ・新田牧場での集合スナップ(「映画俳優:伊豆肇と池部良」より)

池部良 宇宙大戦争.jpg「愛よ星と共に」●制作年:1947年●監督:阿部豊●製作:青柳信雄●製作会社:新東宝・映画芸術協会●脚本:八田尚之●撮影:小原譲治●音楽:早坂文雄●時間:95分●出演:高峰秀子/池部良/横山運平/浦辺粂子/川部守一/藤田進/逢初夢子/清川莊司/一の宮あつ子/田中春男/鳥羽陽之助/冬木京三/鬼頭善一郎/江川宇礼雄/山室耕/花岡菊子/條圭子/水島三千代●公開:1947/09●配給:東宝(評価:★★★)

池部 良 in 本多猪四郎監督「宇宙大戦争」('59年/東宝)

高峰秀子 in 小津安二郎監督(原作:大佛次郎)「宗方姉妹」('50年)/木下惠介監督(原作:壺井栄)「二十四の瞳」('54年)/成瀬巳喜男監督(原作:幸田文)「流れる」('56年)/野村芳太郎監督(原作:松本清張)「張込み」('58年)
宗方姉妹 高峰.jpg二十四の瞳0 1a.jpg流れる 1シーン.jpg野村 芳太郎『張込み』(1958).jpg

「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT 【1511】 山本 嘉次郎 「加藤隼戦闘隊
「●円谷 英二 特撮作品」の インデックッスへ 「●鈴木 静一 音楽作品」の インデックッスへ「●榎本 健一 出演作品」の インデックッスへ 「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 

戦前最後にして最大規模のミュージカル・コメディ。先取性、先見性に富む。

エノケンの孫悟空6.jpgエノケンの孫悟空.jpg
「エノケンの孫悟空」VHS

 三蔵法師(柳田貞一)は経典を求めての天竺への旅の途中、岩山に閉じ込められていた孫悟空(榎本健一)を救い出して従者とし、併せて猪八戒(岸井明)、砂悟浄(金井俊夫)らもお供にして、妖怪魔物たちに邪魔をされながらも3人(3匹?)の活躍で危難を乗り越えて目的を果たす―。

エノケンの孫悟空2.jpg 1940(昭和15)年11月公開の山本嘉次郎(1902-1974)監督作。ベース・ストーリーはオリジナル通りですが、登場人物全員が歌いながら芝居をするオペレッタ形式であり、戦時色の濃い中で制作された戦前最後にして最大規模のドタバタ・ミュージカル・コメディと言えるものです。'36年1月に日本劇場でデビューした「日劇ダンシングチーム」総動員のレビュー風の踊りがオープニングから見られ(「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年/米)のオープニングみたい)、ハリウッドの古典的ミュージカルを模した彼女らの中国風であったりアラビア風であったりする集団ダンスシーンが、大掛かりなセットも含め物珍しさもあって印象に残りました。

機上の悟空・八戒・悟乗.jpg「エノケンの孫悟空」タイトルバック.jpg 中国ロケを敢行していて中国人俳優も出演していますが、ハリウッド映画のパロディなどもあり、バタ臭い印象が強いのはそのためでしょうか。それでいて、悟空を演じるエノケンの喋りがもろ江戸弁で、エノケン自身がこれまで演じてきた「鞍馬天狗」や「近藤勇」のパロディもあったりするため、もはや国籍不詳という感じ。しかも、最後はSF風になって「未来国」へ行くという、もう何でもありの世界です(そもそも、悟空の移動手段であるキン斗雲がプロペラ戦闘機に置き換わっており、特殊撮影はあの円谷英二が担当している)。

 猪八戒が歌う「狼なんかこわくない」はディズニ―・アニメ「三匹の子ぶた」('33年/米)の挿入歌、この「孫悟空」の前年にアメリカで公開された「オズの魔法使い」('39年/米)っぽいシーンやアニメ「白雪姫」('37年/米)のパロディと思われる場面もありますが、両作品とも日本での公開は戦後であり、「ピノキオ」('40年/米)のテーマ「星に願いを」なども使われていることを考えると、先取性のみならず、その「先見性」には測り知れないものがあります(国際著作権連盟に日本が未加入の時期の、"パクリ"やり放題の作品と言ってしまえばそういうことになるのだが)。

 "SF風"金角・銀角大王を演じた中村是好・如月寛多などエノケン一座も多数出演していますが、その他、服部富子、渡辺はま子、藤山一郎といった当時の人気歌手も出演し、更に役者陣も豪華。「奇怪国」の大王に「わしゃかなわんよ」のフレーズで当時人気のコメディアン・高勢実乗、アラビアの「煩悩国」の女王に三益愛子(当時29歳)、煩悩国で猪八戒が恋に落ちる歌姫に満映の超人気女優・李香蘭(山口淑子)(当時20歳)、後編の「お伽の国」のお姫様で、金角・銀角らによって「ネバーエンディング・ストーリー」('84年/西独・米)の竜ファルコンそっくりの顔した東洋の女  李 香蘭.jpgお伽の姫  高峰 秀子  .jpg袖珍  中村メイ子.jpg犬に姿を変えられてしまった少女に、当時人気絶頂の国民的アイドル・高峰秀子(当時16歳)、その国の案内役の少女・袖珍に天才子役として人気のあった中村メイコ(当時6歳)といった具合です。
李香蘭(当時20歳)/高峰秀子(当時16歳)/中村メイ子(当時6歳)

エノケンの孫悟空1.jpg 中村メイコの袖珍(いつも小脇に百科辞典を抱えている)は、金角・銀角らの頭脳交換機で記憶を奪われ虚脱状態になった孫悟空らに、ホウレン草の缶詰を与えて元気を回復させるという、これもまた日米開戦直前の作品であるにも関わらず「ポパイ」のパロディで(実際ポパイのテーマ曲が流れる)、「ポパイ」は、'59年から'65年までTBS「不二家の時間」でテレビ放映されたアニメですが(後番組は「オバケのQ太郎」)、ポパイというキャラクター自体は日本でも戦前からよく知られていたようです。

 この作品は、評論家には「中身のない映画」と酷評されたそうですが、確かに「大掛かりな学芸会」といった印象はあります。ただ、前年の'39 年に、戦時体制に合わせ映画法が施行、'40年には、学生・生徒が映画館に行くのは土日・祝祭日に限るという文部省通達が出され、実際に世の中は日中戦争からから日独伊三国同盟締結へと太平洋戦争へ向かいつつある中、日米開戦の前年にこのような作品が作られたのは(ディズニー・アニメのモチーフがふんだんに織り込まれていることだけをとっても)信じられないようなことでもあります。

 評論家の酷評とは裏腹に国民に大受けしたのは、そうした暗い時代であったからこそ、明るい娯楽を求める国民の気持ちに応えたということでしょう。芸術的価値よりも歴史的価値の方が高い作品か。

東洋の女=李香蘭(山口淑子)(当時20歳)/袖珍=中村メイコ(当時6歳)
エノケンの孫悟空   3.jpgエノケンの孫悟空 中村メイ子.bmp「エノケンの孫悟空」●制作年:1940年●監督・脚本:山本嘉次郎●製作:東宝東京●制作:滝村和男●撮影:三村明●特殊技術撮影:円谷英二●音楽:鈴木静一●原作:山形雄策●時間:135分●出演:榎本健一/岸井明/金井俊夫/柳田貞一/北村武夫/高勢実乗/土方健二/中村是好/如月寛多/三益愛子/高峰秀子/中村メイ子/徳川夢声/服部富子/渡辺はま子/李香蘭(山口淑子)/伊達里子/千川照美/藤山一郎●公開:1940/11●配給:東宝映画(評価:★★★☆)

「●小津 安二郎 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2367】小津 安二郎 「父ありき
「●佐野 周二 出演作品」の インデックッスへ(「淑女は何を忘れたか」)「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●斎藤 一郎 音楽作品」の インデックッスへ(「流れる」)「●杉村 春子 出演作品」の インデックッスへ(「流れる」) 「●山田 五十鈴 出演作品」の インデックッスへ(「流れる」)「●中村 伸郎 出演作品」の インデックッスへ(「流れる」)「●田中 絹代 出演作品」の インデックッスへ(「流れる」)「●加東 大介 出演作品」の インデックッスへ(「流れる」)「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ(「流れる」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

日本のホームドラマの基盤がこんなところで着々と築かれていたのだなあと。斎藤達雄、栗島すみ子がいい。

淑女は何を忘れたか vhs.jpg淑女は何を忘れたか1.bmp 流れる dvd .jpg
 「淑女は何を忘れたか [VHS]」(斎藤達雄/栗島すみ子/桑野通子)「流れる [DVD]

ozu  'What Did the Lady Forget?'.jpg節子(桑野通子)と岡田(佐野周二).jpg 大学の医学部教授の小宮(斎藤達雄)は日頃から、口うるさい妻の時子(栗島すみ子)に頭が上がらなかったが、それは、夫婦円満を保つ彼流の秘訣でもあった。そんなある日、大阪より時子の姪・節子(桑野通子)が上京、小宮家にやって来る。自分とは対照的に思ったままに行動する彼女に触発された小宮は、ある揉め事を契機に初めて時子に平手打ちをくらわせてしまう―。

 トーキー時代に入ってもしばらくサイレント映画にこだわり続けた小津安二郎監督の、「一人息子」('36年)に続くトーキー第2作で、サイレント映画時代の彼のコメディ的要素と戦後の家庭劇の要素が混ざった作品のように思えました。

 それまで下町の庶民を題材にすることが多かった小津ですが、この作品では一転して舞台を山の手へ移し(丁度この頃に小津自身も深川から高輪へ転居している)、アメリカ映画から得られた素養をふんだんに生かしたモダニズム溢れるソフィストケティッド・コメディに仕上がっています。

淑女は何を忘れたか3.jpg 31際の若さで夭逝した桑野通子が演じる(当時22歳)姪の節子は、いわば当時のモダンガールといったところでしょうか。未婚だがタバコも酒も嗜むし、車の運転にも興味がある活発な彼女は、妻の尻に敷かれる小宮を見て、夫権の復活を唱えて盛んに小宮をけしかける―そこへ時子がいきなり現れたりして、小宮が節子を叱るフリをする、時子が去ると節子が小宮を軽く小突くなどといった具合に、小宮と節子の遣り取りが、爆笑を誘うというものではないですが、クスッと笑えるものとなっています。

ozu  'What Did the Lady Forget?' 2.jpg この作品の斎藤達雄はいいです。サイレント時代の小津作品では、もてない大学生(「若い日」)やしがないサラリーマン(「生まれてはみたけれど」)を演じたりもしていましたが、この作品で「ドクトル」と世間から呼ばれるインテリを演じてもしっくりきています(独りきりになると結構このドクトルは剽軽だったりするが)。

ozu  'What Did the Lady Forget?' 3.jpg 有閑マダム3人組(栗島すみ子、吉川満子、飯田蝶子)の会話なども、それまでの小津作品には無かったシークエンスですが、関西弁で話しているためかどことなくほんわかした感じがあり、それでいて畳み掛けるところは畳み掛けるという、トーキー2作目にしてこの自在な会話のテンポの操り方には、トーキー参入に際しての小津の周到な事前準備が感じられました。

淑女は何を忘れたか4.jpg その他に、小宮家で家庭教師をすることになる大学の助手・岡田を佐野周二が演じていますが、息子・関口宏より相当濃いハンサム顔に似合わず、この作品では教え子の友達(突貫小僧)に先に算数の問題を解かれてしまって面目を失うというとぼけた役回り。

 小宮は、妻にはゴルフに行ったことにしながら、節子の東京探訪に付き合わされて、その晩は岡田の下宿に泊めてもらいますが、アリバイ工作のためにゴルフ仲間の会社役員(坂本武)に投函を託した葉書に書かれた当日の天候が全く違っていたことに気付いて慌てふためくも、まあ、大丈夫でしょうと、岡田はのんびり構えてしまっています(結局、そのことで小宮の工作は時子にばれてしまう)。

淑女は何を忘れたか2.jpg 岡田と節子の間で何かあるのかなと思いましたが、これは"夫婦"がテーマの映画なのでそうはならず、結局、「雨降れば地固まる」みたいな映画だったんだなあと。

 まあ、全体として他愛の無い話と言えばそうなのですが、こうした細部のユーモラスなシチュエーションの組み入れ方もそうですし、ストーリーの落とし所からも、ああ、日本のホームドラマの基盤がこんなところで着々と築かれていたのだなあと思わせるものがありました。

流れる 栗島すみ子.jpg流れる 栗島すみ子2.jpg また、この作品は、日本映画史上初のスター女優と言われた栗島すみ子(1902-1987)の映画界引退作品でもあり、さすがに堂々たる存在感を見せています。彼女はその後、成瀬巳喜男監督の「流れる」('56年/東宝)で一度だけスクリーンに復帰、田中絹代(1909-1977)、山田五十鈴(1917-2012)、杉村春子(1906-1997)、高峰秀子(1924-2010)らと共演しましたが、それら大女優の更に先輩格だったわけで、まさに貫禄充分!
栗島すみ子、高峰秀子、山田五十鈴、田中絹代
『お嬢さん』栗島すみ子、岡田時彦.jpg そもそも、成瀬巳喜男の監督デビュー(1930年)よりも栗島すみ子の映画デビューの方が先であり(1921年)、年齢も彼女の方が3歳上。成瀬監督を「ミキちゃん」と呼び、「流れる」撮影の際は、「あたしはミキちゃんを信用して来てるのだから」と、セリフを一切覚えず現場入りしたという話があり、小津安二郎の「お嬢さん」('30年/松竹蒲田)で岡田時彦と共演したりしていることから、自分の父親が自分が1歳の時に亡くなったためその記憶が無い岡田茉莉子(1933-)には、「あなたのお父さんは美男子の中でもずば抜けて美男子だった」と「流れる」の撮影現場で話してやっていたそうな。

栗島すみ子、岡田時彦 in「お嬢さん」('30年/モノクロ。フィルムは現存せず)

流れる 映画ポスター.jpg それにしても「流れる」の配役陣は、今になった見れば見るほどスゴいなあという感じ。大川端にある零落する置屋を住込みのお手伝いさん(田中絹代)の視点から描いた作品でしたが、先に挙げた田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子ら大物女優に加えて、岡田茉莉子、中北千枝子、賀原夏子らが脇を固めるという布陣で、成瀬巳喜男作品は個人的には合う合わないがあって、世間で評価されるほど自分としての評価は高くないのですが(若い頃に観たというのもあるかもしれない)、この作品も、ストーリーよりも一人一人の演技が印象に残った感じでした。

流れる 杉村春子.jpg 杉村春子を除いて皆、着物の着こなしがいい、との評がどこかにありましたが、年増芸者を演じた杉村春子は、あれはあれで役に合わせた着こなしだっだのでしょう。個人的には、水野の女将を演じた栗島すみ子の演技は"別格"として、当時、田中絹代・山田五十鈴・高峰秀子の三大女優より一段格下だった杉村春子が一番上手いのではないかと思いました(高峰秀子は子役としてのデビューは早かったが、1940流れる 1シーン.jpg年、豊田四郎監督の「小島の春」に出演した杉村春子の演技にショックを受けて演技開眼したという。杉村春流れる 岡田茉莉子.jpg子を"格下"と言ったら失礼にあたるか)。岡田茉莉子などは実に若々しく、和服を着ると昭和タイプの美女という感じでしたが(着物を着た際にスレンダーで足長に見える)、演技そのものは当時はまだ大先輩たちの域には全然達していなかったのではないでしょうか。機会があれば、また観直してみたいと思います。

岡田茉莉子
 
神保町シアター.jpg桑野通子.jpg「淑女は何を忘れたか」●制作年:1937年●監督:小津安二郎●脚本:伏見晁/ジェームス槇(小津安二郎)●撮影:茂原英雄/厚田雄春●音楽:伊藤冝二●時間:71分●出演:斎藤達雄/栗島すみ子/桑野通子/佐野周二/飯田蝶子/坂本武/吉川満子/葉山正雄/突貫小僧/上原謙●公開:1937/03●配給:松竹大船●最初に観た場所:ACTミニシアター(90-08-05)●2回目:神保町シアター(10-12-11)(評価:★★★)●併映(1回目):「お早よう」(小津安二郎) 神保町シアター 2007(平成19)年7月14日オープン
桑野 通子 (1915-1946/享年31)

淑女は何を忘れたか vhs.jpg


流れる%20(1956年).jpg流れる [DVD]「流れる」●制作年:1956年●監流れる dvd .jpg映画「流れる」.jpg督: 成瀬巳喜男●製作:藤本真澄●脚本:田中澄江/井手俊郎●撮影:玉井正夫●音楽:斎藤一郎●原作:幸田文「流れる」●時間:117分●出演:田中絹代山田五十鈴高峰秀子杉村春子/岡流れる09.jpg 流れる杉村春子.jpg山田五十鈴 流れる.jpg田茉莉子/中北千枝子/賀原夏子/栗島すみ子(特別出演)/泉千代/加東大介/宮口精二/仲谷昇/中村伸郎●公開:1956/11●配給:東宝(評価:★★★☆)
左奥:栗島すみ子・右手前:田中絹代   杉村春子/山田五十鈴

「●小津 安二郎 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1489】 小津 安二郎 「大人の見る繪本 生れてはみたけれど
「●高峰 秀子 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

世界恐慌さなかの失業サラリーマンを小市民的に描く。当時の会社の社内風景が珍しかった。

東京の合唱(吹替・活弁版) [VHS].jpg 小津 安二郎 東京の合唱.jpg 東京の合唱(コーラス .jpg
東京の合唱(吹替・活弁版) [VHS]」1931(昭和6)年  岡田時彦/菅原秀雄(子役)/高峰秀子(子役)

東京の合唱DP.jpg東京の合唱(コーラス) 2.bmp 冒頭は大学の体育の授業のシーンで、体育教師(斎藤達雄)が学生を厳しく指導する様がユーモラスに描かれる。時は流れ、その学生の1人だった岡島(岡田時彦)は、今は保険会社に勤める身であり、3人の子を持つ親でもある。今日は賞与支給日。子供に自転車を買ってやる約束をしていた彼東京の合唱(コーラス)72.jpgは、クビになったベテランの先輩に同情して会社東京の合唱(コーラス)図1.jpgに抗議した末に自分もクビになってしまう。再就職事情の厳しい折、職安の前で母校恩師の元体育教師に偶然出会い、勤め口を探してもらう間、恩師が退職後に始めた洋食屋を手伝うことになるのだが―。

 原作(原案)は北村小松。1931(昭和6)年の作品ということで、世界恐慌による不景気がリアルタイムで物語のバックグラウンドにあり、「フーヴァー案」という言葉が出てきたり(「フーバー・モラトリアム」(1931)のことだろう)、不況だからボーナスは1ヵ月分(120円)くらいかなあという台東京の合唱(コーラス)1.jpg詞があったりもします。 先輩社員の不当谷麗光『東京の合唱』(1931年).png解雇(勧誘したお客が保険に入った翌日に事故死し、会社が損失を被ったというのが解雇理由)に敢然と立ちあがる主人公はなかなかの正義漢。社長(谷麗光)との遣り取りはユーモラスに描かれていますが、クビになった後がたいへん。子供に約束の自転車を買ってやれず詰(なじ)られ、かっときて子供を叱ってしまうし、娘が疫痢に罹って医者代も発生し、妻の着物を売り払ったことにより妻ともぎくしゃくする―。

東京の合唱 1.jpg 同日に解雇された同僚がビラ配りの仕事をしているのを見て、自分は下手に大学を出ているからそんなことは出来ないと言っているのは「大学は出たけれど」の主人公の前半部分と同じスタンス。それが、恩師の洋食屋の仕事で先ずやらされたのが店の宣伝ビラ配りで、自分でも気乗りがしなかったのに、それを奥さん(八雲恵美子(1903-1979/享年75))に見られ、肩身の狭いことはしないでと言われてプライドはずたずたに。

Ozu - Tokyo Chorus(1931).jpg しかし、その奥さんも現実の厳しさを感じて店へ手伝いに。その食堂で、元教師を囲んで昔の教え子たちが集まり同窓会が行われることになり、久々に出会った同級生たちは盛り上がる。そこに元教師宛に手紙が来て、文部省から就職の斡旋があったが、仕事は栃木の女学校の英語教師であるとのこと、主人公は複雑な気持ちで同級生らと校歌を歌うが、歌っているうちに次第にその表情は晴れてくる―(これが、タイトル「合唱(コーラス)」の由縁)。

「東京の合唱(コーラス)」.bmp 東京を離れたことのない夫婦には必ずしも満足とは言えない結末ですが、そこが小津作品らしいところ。結構、自分の都合で教え子をいい加減にこき使っていたかのように見えた元教師も、ちゃんと就職の世話をしてくれていて、師弟関係が就職が絡むのも小津作品のパターン。

高峰秀子(子役)/八雲恵美子/菅原秀雄(子役)/岡田時彦

小津 安二郎 東京の合唱2.gif 総じて、小市民(サラリーマン)を小市民のまま描いた典型的作品と言えますが、主人公が東京に住むことにこだわるのには、やや違和感を覚えました(社命による転勤などは当時でもあったのでは)。東京への執着が、「東京の合唱」というタイトルにまで表れているとなると、これは小津自身のこだわりでもあるのか。

 個人的は、当時の会社の社内風景が一番珍しかったです(冒頭の体育の授業のシーンにも言えるが、冗長感はあるが、記録的な価値あり?)。賞与支給日に社員が出納窓口に列を成し、賞与袋を受け取るとトイレで中身の金額を確認して一喜一憂するという、今こんなことやっている会社は、零細企業でももう殆どないだろうなあ。
    
東京の合唱(吹替・活弁版) [VHS].jpg 主人公の失業サラリーマンを演じた岡田時彦(1903-1934/享年30)は岡田茉莉子7.jpg女優・岡田茉莉子の父。但し、茉莉子1歳の時、30歳の若さで亡くなっているため、娘は父を映画の中でしか知らないとのことです。

「東京の合唱(コーラス)」●制作年:1931年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧●撮影:茂原英朗●原作(原案):北村小松●時間:90分●出演:岡田時彦/八雲恵美子/菅原秀雄/高峰秀子/斉藤達雄/飯田蝶子/坂本武/谷麗光●公開:1931/08●配給:松竹鎌田●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(90-08-19)(評価:★★★)併映:「お茶漬けの味」(小津安二郎)

About this Archive

This page is an archive of recent entries in the 高峰 秀子 出演作品 category.

京 マチ子 出演作品 is the previous category.

大滝 秀治 出演作品 is the next category.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1