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面白かったが、原作を読んだ人からは原作の方がいいと言われ、読後にもう一度皆で鑑賞会を...。

パフューム ある人殺しの物語 2007.jpg パヒューム ある人殺しの物語01.jpg パヒューム ある人殺しの物語02.jpg
パフューム ある人殺しの物語 [DVD]」ベン・ウィショー/ダスティン・ホフマン
ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)
ある人殺しの物語 香水 (文春文庫).jpgパフューム 01.jpg 18世紀のフランス・パリ。悪臭漂う魚市場で、一人の赤子が産み落とされた。やがて孤児院で育てられたその男児の名はジャン=バティスト・グルヌイユといい、生まれながらにして数キロ先の匂いをも感じ取れるほどの超人的な嗅覚を持っていた。成長したグルヌイユ(ベン・ウィショー)はある日、街で素晴らしい香りに出合う。その香りを辿っていくとそこには一人の赤毛の少女がいた。少女の体臭パフューム ある人殺しの物語es.jpgにこの上ない心地よさを覚えるグルヌイユであったが、誤ってその少女を殺害してしまう。少女の香りは永遠に失われてしまった。しかしその香りを忘れられないグルヌイユは、少女の香りを再現しようと考え、橋の上に店を構えるイタリア人のかつて売れっ子だった調香師ジュゼッペ・パフューム 02.jpgバルディーニ(ダスティン・ホフマン)に弟子入りし、香水の製法を学ぶ。同時にその天才的な嗅覚を生かして新たな香水を考え、バルディーニの店に客を呼び戻す。さらなる調香技術を学ぶパフューム ある人殺しの物語 09.jpgため、香水の街・グラースへ旅に出るグルヌイユはその道中、なぜか自分だけ体臭が一切ないことに気づく。グラースで彼は、裕福な商人リシ(アラン・リックマン)の娘ローラ(レイチェル・ハード=ウッド)を見つける。以前街角で殺してしパフューム ある人殺しの物語08.jpgまった赤毛の少女にそっくりなローラから漂う体臭は、まさにあの運命的な香りそのものだった。これを香水にしたい、という究極の欲望に駆られたグルヌイユは、脂に匂いを移す高度な調香法である「冷浸法」を習得する。 そして時同じくして、若い美少女が次々と殺される事件が起こり、グラースの街を恐怖に陥れる。髪を短く刈り上げられ、全裸で見つかる美少女たち。グルヌイユは既に禁断の香水作りに着手していたのだった―。

香水 文庫.jpg 2006年公開のトム・ティクヴァ監督によるドイツ・フランス・スペイン合作映画で、原作は世界中で1500万部を売り上げているパトリック・ジュースキントの1985年発表の小説『パフューム ある人殺しの物語』(ジュースキントはスタンリー・キューブリックとミロス・フォアマンのみが正しく映画化できると考えており、他の者による映画化をを拒否していたという)。

 面白かったですが、原作を読んだ人からは原作の方がいいと言われて、原作を読んでみたら確かにそうでした。その後、4人くらいで新ためてPrime Videoで鑑賞会をしたのですが、原作を先に読んだ人が、映画の方はちょっともの足りないというのも分かったように思いました。

 この作品の翻訳者の池内紀氏が、文庫版の解説で(2003年に映画化の噂を聞いた段階で)「主役にあたる"匂い"をどうやって表現するのだろう。匂いをたどっていくのがおおかたの演技というのは、前代未聞のことではあるまいか。とどのつまりは、あとかたもなく消え失せる男。やはり映像よりも、活字を通してこそふさわしい」と述べていますが、この"予言"は的中したとも言えるかも。

パフューム 06.jpg そもそもスタンリー・キューブリックが映画化に意欲を示しながらも断念しているし、私財を投げ打って映画化権を得た映画プロデューサーのベルント・アイヒンガー(脚本も担当)も、最大の問題は「主人公は自分自身を表現していない。小説家はこれを補うために物語を使用することができる。それは映画ではできない」として苦心し、3人の脚本家による脚本は最終的な撮影台本となるまでに20以上の段階を経たとのことです。

 ただし、それだけの苦労もあり、また、元々ドラマ性を持つ話であるため、結果的には良く出来た(面白い)映画になっていたと思います。このストーリーは、ラスト近くで一気に寓話性を帯びてますが、そこに至るまでをリアリズムにこだわって作っている分、終盤の展開が効いているように思いました(個人的評価としては一応★★★★)。

パフューム ある人殺しの物語07.jpg 映画を観直してみて、ストーリー的にも概ね原作に忠実であったと思いました。それでは、原作との違い(違和感とも言っていい)をどこで感じたかというと、グルヌイユが少女に近づくとき、映画ではどうしても"香り"的なものと性的なものが混然としているように見えてしまう点です。原作ではその点がはっきり峻別されていました。

 結局、グルヌイユは、女性を性的な意味合いも含め人として愛することができない特殊な人物であるということなのでしょう。でも、映像化すると、若干"変態"性欲者っぽく(つまり普通のストーカーっぽく)見えてしまうのは、まさに「主人公は自分自身を表現していない」ことによるかと思います。

 全体を通して、ナレーションによる"ト書き"的表現が多いのも、また、そのナレーションにジョン・ハートという名優を起用しているのも、そうしたことと無関係ではないように思います。

パフューム ある人殺しの物語 ho.jpg ダスティン・ホフマンが調香師バルディーニ役で出演しています。そう言えば、昔から、ヨーロッパの監督の撮る文芸映画に、ハリウッドで活躍するスター俳優が出演するということがあったと思います。ルキノ・ヴィスコンティ(伊)監督の「家族の肖像」('74年/伊・仏)のバート・ランカスター、フェデリコ・フェリーニ(伊)監督の「カサノバ」('76年/伊・米)のドナルド・サザーランドなどがそう。もっと後では、マイケル・ラドフォード(英)監督の「ヴェニスの商人」('04年/米・伊・英)にアル・パチーノがシャイロック役で出ていました。当時、ダスティン・ホフマンのシャイロックを見たいと思ったのですが、ユダヤ系であるダスティン・ホフマンがシャイロックを演じるのは、何か差し障りがあったのでしょうか(調香師バルディーニの方が名前からイタリア系で、アル・パチーノ向きという気がしなくもないが)。

ベン・ウィショー/アラン・リックマン/レイチェル・ハード=ウッド
パフューム 05.gifパフューム 04.jpgパフューム 03.jpg「パフューム ある人殺しの物語」●原題:PERFUME: THE STORY OF A MURDERER●制作年:2006年●制作国:ドイツ・フランス・スペイン●監督:トム・ティクヴァ●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:トム・ティクヴァ/アンドリュー・バーキン/ベルント・アイヒンガー●撮影:フランク・グリーベ●音楽:アトム・ティクヴァ●原作:パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』●時間:147分●出演:ベン・ウィショー/ダスティン・ホフマン/アラン・リックマン/レイチェル・ハード=ウッド/(ナレーション)ジョン・ハート●日本公開:2007/03●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-04-09)(評価:★★★★)

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ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

ジョンとメリー [VHS].jpgジョンとメリー [DVD].jpg 真夜中のカーボーイ dvd.jpg 卒業 [DVD] L.jpg
ジョンとメリー [DVD]」「真夜中のカーボーイ [DVD]」「卒業 [DVD]

ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。ピーター・イエーツは英国人で、映画監督になる前にプロのレーシング・ドライバーだったこともあり、この作品が監督第3作ですが、第1作が犯罪サスペンス映画「大列車強盗団」('67年/英)で、この作品でのアクション・シーンの手腕が買われ、ハリウッドで第2作、スティーブ・マックイーン主演のアクション映画「ブリット」('67年/米)を撮っていますが、今度はがらっと変って男女の出会いを描いた作品に。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時に大方の日本人の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは。アメリカ人だったら普通は最初に名乗るけれど、アメリカ人が見たらどう感じるのだろうか)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも(但し、原作者のジェームズ・レオ・ハーリヒー自身はゲイだったようだ)。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。

ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)

「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113真夜中のカーボーイ2.jpg真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpg分●出演:ジョン・ヴォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]

「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ「卒業」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]

映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
恋におちて [DVD]

YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

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一気に読ませるエンタテインメント性と、陪審制度の脆弱性批判を兼ね添えた佳作。

陪審評決 単行本.jpg 陪審評決 文庫 上.jpg 陪審評決 文庫下.jpg  ニューオーリンズ・トライアル dvd.jpg ジ―ン・ハックマン.jpg
陪審評決』『陪審評決〈上〉 (新潮文庫)』『陪審評決〈下〉 (新潮文庫)』「ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決 プレミアム・エディション [DVD]

The Runaway Jury.jpg 夫が肺癌で死んだのは、長年の喫煙が原因だとして、タバコ会社を相手どって未亡人が訴訟を起すが、結果次第では同様の訴訟が続発する可能性もあり、原告・被告双方の陪審コンサルタントによる各陪審員へのアプローチが開始される。そうした中、選任手続きを巧みにすり抜け、陪審団に入り込んだ青年がいた―

 1996年発表のジョン・グリシャムのリーガル・サスペンスで、この"陪審団に入り込んだ青年"の意図はある程度読み進む内に明らかになりますが、いかにもエンタテイナーの作者らしい設定―但し、現実にこうしたことがあるかと言うとやや疑問で、ただ可能性として、やろうと思えば出来なくもないという意味での、陪審制度の脆弱性の批判になっているように思えました。

 但し、陪審制度への批判の眼目はむしろ、陪審員の選任に関与する陪審コンサルタントの暗躍に対して向けられているように思われ、こちらもかなりサスペンスフルな味付けはされていますが、実際問題として、大企業が陪審コンサルを雇って企業訴訟を有利に導いたり(タバコが肺癌の原因になったという製造物責任訴訟では、タバコ会社側が多額の裁判費用をつぎ込んで敗訴を免れているとの批判が米国法曹界にある)、或いはO・J・シンプソン裁判ではないですが、資力のある被告が自らに同情的な考えを持つであろうと思われる陪審員を揃えることがあったりするようです(シンプソン事件の刑事裁判では"ドリームチーム"と呼ばれた弁護団が結成され、陪審員12人のうち9人が黒人だった)。

 振り返ってわが国の裁判員制度を見れば、裁判員の除外要件は限定列挙的にあるものの、最終的にどういった人を適任としてスクリーニングしているのかよく分からず、なぜ裁判の当事者や一般の国民がそのあたりを突っ込まないのか不思議な気もします(陪審コンサルが暗躍するよりはいいと思うが)。

 結末が『法律事務所』(映画ではなく原作の方)とやや似てはいますが、グリシャムらしい一気に読ませるエンタテインメント性と、制度の脆弱性批判を兼ね添えた佳作だと思います。

 グリシャム作品は、デビュー作の『評決のとき(A Time to Kill)』 ('89年発表) から『ザ・ファーム/法律事務所(The Firm)』 ('91年発表)、『ペリカン文書 (The Pelican Brief)』('92年発表)、『依頼人(The Client)』 ('93年発表)あたりまでは、原題・邦題と映画化作品の原題・邦題がほぼ同じですが、『処刑室(The Chamber)』 ('94年発表) や『原告側弁護人(The Rainmaker)』 ('95年発表)は、映画化作品の邦題は小説の原題をそのまま使用しており、この『陪審評決(The Runaway Jury)』は、映画化作品の原題が"The Runaway Jury"と小説の原題通りであるのに対し、邦題は「ニューオーリンズ・トライアル」となっています。

ニューオーリンズ・トライアル(はっくまん).bmp トライアルは日本における刑事事件の公判に近いものですが、米国では刑事事件・民事事件共通の手続きであり、陪審トライアルだけでなく、陪審無しの裁判官によるトライアルもあり、そもそも刑事・民事ともそこに進む前に司法取引がなされたり和解が成立したりすることが多いため、トライアルにまでいく裁判は少ないとのこと―従って、陪審制(陪審トライアル)の下で行われる事件は実は全体のほんの一部に限られているということですが、映画邦題にこの言葉を選んだのは、リーガル・サスペンスの邦訳タイトルに似たものが多く、とは言え、原題の"The Runaway Jury"(「暴走した陪審員」と「楽勝の陪審員」の二重の意味?)を邦題にしても、日本人にはぴんと来にくいためでしょうか(映画が公開された時、原作がグリシャムとは気付かなかった自分としては「陪審評決」のままでも良かったと思う。「トライアル」でもぴんと来にくいことには変わりない)。

ニューオーリンズ・トライアル(ホフマン).bmp 映画化作品は(タバコ訴訟ではなく、銃乱射事件の被害者が銃器製造会社を訴えるという設定に改変されている)、陪審員に潜り込んだ男にジョン・キューザック、陪審コンサルにジーン・ハックマン、正義を貫こうとする原告側弁護士にダスティン・ホフマンという取り合わせで、映レイチェル・ワイズ ニューオーリンズ・トライアル.jpg画だと三者の細かい遣り取りはどうしても端折りがちにならざるを得ず、むしろ陪審員のプロファイリングに際してFBI顔負けのハイテク機器をも駆使するジーン・ハックマンのやり手ぶりが強調されていたように思います。

評決の値段を"交渉"する2人。ジーン・ハックマンとレイチェル・ワイズ
     
ニューオーリンズ・トライアル(トイレシーン).bmp ダスティン・ホフマンはやや脇に回った感がありますが、ジーン・ハックマンとはお互いの無名時代に、ホフマン夫妻がハックマン夫妻のアパートに転がり込み居候していた時期があったという古い友人同士で、この作品が初共演。一旦クランクアップした後に、そのことに思い当たったゲイリー・フレダー監督が2人を再度召喚し、裁判所のトイレで2人が本音でやり合うシーンを撮ったとのことですが、2人がサシで言葉を交わすのはこの場面しかなく、迫力ある2人の衝突はまさに"共演"と言うより"競演"、レイチェル・ワイズ、ジョアンナ・ゴーイングといった個性派美女も出演している作品ですが、やはりこの二大俳優の激突シーンの迫力が一番印象に残りました(この場面、原作には無いわけだが)。

レイチェル・ワイズ/ジョアンナ・ゴーイング
レイチェル・ワイズ.jpgジョアンナ・ゴーイング.jpg「ニューオーリンズ・トライアル」●原題:THE RUNAWAY JURY●制作年:2003年●制作国:アメリカ●監督:ゲイリー・フレダー●製作:ゲイリー・フレダー/クリストファー・マンキウィッツ/アーノン・ミルチャン/スティーヴン・ブラウン●脚本:ブライアン・コッペルマン/デヴィッド・レヴィーン/マシュー・チャップマン/リック・クリーヴランド●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:クリストファー・ヤング●原作:ジョン・グリシャム「陪審評決」●時間:128分●出演:ジョン・キューザック/ジーン・ハックマン/ダスティン・ホフマン/レイチェル・ワイズ/ブルース・デイヴィソン/ジェレミー・ピヴェン/ブルース・マッギル/ジョアンナ・ゴーイング/ヘンリー・ジャンクル/ニック・サーシー/セリア・ウェストン/ディラン・マクダーモット●日本公開:2004/01●配給:東宝東和)(評価:★★★☆)

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逆境からスターになったマックイーンに相応しい作品。肉食系人種の強さを感じた。

パピヨン ポスター.jpgパピヨン 半券.jpgパピヨン パンフレット2.jpgパピヨン dvd.jpgパピヨン  タイムライフ社 1974 .jpg
映画ポスター/チケット/「映画パンフレット 「パピヨン」監督フランクリン・J・シャフナー 出演スティーブ・マックイーン」/「パピヨン-製作30周年記念特別版- [DVD]」/『パピヨン (1970年) (タイムライフブックス)
Dalton Trumbo
dalton trumbo.jpg1パピヨン001.png 実在の脱獄囚アンリ・シャリエール(1906-1973)が自らの数奇な半生を綴ったベストセラー小説のフランクリン・J・シャフナー監督による'73年の映画化作品。

 脚本はダルトン・トランボ(1905-1976)の遺作で、ハリウッドの赤狩りで映画界から干され、「ジョニーは戦場へ行った」('71年/米)を匿名で書いたという気骨の脚本家兼映画監Dalton Trumbo PAPILLON.jpg督ですが(「ローマの休日」('53年/米)の原作者・脚本家でもある)、映画の冒頭でギアナに送られる囚人達に「お前たちは祖国に見捨てられたのだ!」と威圧的に訓示する刑務所長役で出演しています(極めてアイロニカルな"お遊び"か)。

パピヨン1シーン.jpg パピヨン(スティーブ・マックイーン)が護送船上で債権偽造犯ドガ(ダスティン・ホフマン)に接近したのは、脱獄資金が要ると考えたためで(この時からもう脱獄を考えていた)、ドガは金を金属筒に入れて直腸内に隠し持っており、それを狙ってドガを殺そうとした囚人達からドガを救ったことで両者の絆は強まります。

1パピヨン002.png パピヨンが何度も逃亡を図って重禁固刑になる一方、ドガは隠し金を用いて一時は刑務所長代理のような立場にも就きますが、パピヨンの脱獄を助けようとした際に看守を殴ったため、成り行き上パピヨンと共に脱獄をすることになり、結局は捕まってしまい、パピヨンと同じく悪魔島に送られます。パピヨンの悪魔島からの最後の脱出では、ドガは土壇場で彼と行動を共にすることを躊躇し、そこに2人の生き方の違いが浮き彫りになっていますが、2人が強い友情で結ばれていることには変わりありません。

 ラストでパピヨンを見送るドガの、ダスティン・ホフマンの演技が良かったですが、実在のドガは1度も脱獄には参加することなく、悪魔島で15年の刑期を終えたそうです(しかし、アンリ・シャリエールの特赦活動をするなど、実際に友情関係にあった)。

1パピヨン003.png 一方、映画で2人と共に脱獄に加わったゲイの美男子マチュレットは、実際に1933年のアンリ・シャリエールの9度目の脱獄に、クルジオ(映画の中では看守との格闘に斃れる)と共に参加したそうで、映画ではマチュレットはその後の独房生活で獄死したことになっていますが、実際に獄死したのはクルジオであり、マチュレットは1944年のアンリ・シャリエールの悪魔島からの脱出(10度目)にも同行し成功しているので、ドガ、マチュレット、クルジオのそれぞれの役回りが部分的に置き換えられていることになります。

アンリ・シャリエール.jpg 原作にはこの他にもアンリ・シャリエールと友情関係にあり、彼を助ける多くの人物が登場し、アンリ・シャリエールという人はかなり律儀と言うか粘着気質ではなかったのかと思わせる記述の細かさで(単行本で上下巻2段組み各300ページ超、悪魔島から脱出する場面でまだ全体の3分の1を残している)、一方で、夢の中での審問官との遣り取りやインディオの部落での幻想的な体験がシュールに描かれていて、この部分は"小説(フィクション)"的な印象を受けますが、映画ではその部分も含め映像化されています(インディオの娘との恋物語とか、話を膨らませている部分もある。一夜にしてインディオ達がいなくなってしまうという話は原作には無く、こうした改変を加えるということは、原作に元々"小説(フィクション)"的要素があることを示唆しているのではないか)。

アンリ・シャリエール夫妻とスティーブ・マックイーン夫妻

1パピヨン005.pngPapillon (1973).jpgパピヨン _.jpg 貧しく不幸な家庭に生まれ、逆境から這い上がって大物スター俳優になったスティーブ・マックイーンに相応しい作品であり(この作品への彼の出演料は6億円!)、また、暗く狭い重禁固監獄で、腕立て伏せをして体力を保ち、ムカデやゴキブリまでスープに入れて栄養を摂って生き延びる主人公に、日本人とは異質の肉食系人種的な強さが感じられた作品でもありました。

 音楽はジェリー・ゴールドスミス。テーマ曲も良かったなあと思います(昔、学校の音楽の教科書に載っていた)。

Papillon (1973) 
「パピヨン」●原題:PAPILLON●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:フランクリン・J・シャフナー●製作:ロベール・ドルフマン/フランクリン・J・シャフナー●脚本:ダルトン・トランボ/ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:フレッド・J・キーネカンプ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:アンリ・シャリエール●時間:150分●出演:スティーブ・マックイーン/ダスティン・ホフマンパピヨンのテーマ.jpg/ロバパピヨン3.jpgート・デマン/ウッドロー・パーフリー/ドン・ゴードン/アンソニー・ザーブ/ヴィクター・ジョリー/ラトナ・アッサン/ウィリアム・スミザーズ/バーバラ・モリソン/ドン・ハンマー●日本公開:1974/03●配給:東宝東和●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-10)(評価:★★★★☆)●併映「ゲッタウェイ」(サム・ペキンパー)
"パピヨン"がココナッツ筏に乗っているのを下から安定させているダイバーが見える。

パール座入口(写真共有サイト「フォト蔵」)①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス ③高田馬場パール座 ④早稲田松竹
高田馬場パール座2.jpg高田馬場パール座 地図.pngパール座.jpg高田馬場パール座4.JPGパール座1.jpg高田馬場パール座(高田馬場駅西口、早稲田通り・スーパー西友地下) 1951(昭和26) 年封切館としてオープン。1963(昭和38)年の西友ストアー開店後、同店の地下へ。1989(平成元)年6月30日閉館。 

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とりあえず1回目の予測は外した感があるが、警戒は必要ということか。

パンデミック―2.JPG小林 照幸 パンデミック.jpg  apocalypse-outbreak-431.jpg OUTBREAK3.bmp
パンデミック―感染爆発から生き残るために (新潮新書)』 ['09年]/映画「アウトブレイク」ダスティン・ホフマン/レネ・ルッソ

インフルエンザ.jpg パンデミック(感染爆発)の脅威と、それに対し国や医療機関、個人はどう対応すべきかについて書かれた本で、「新型インフルエンザ」を主として扱ってはいますが、デング熱、マラリア、成人はしかなど、その他の感染症についても言及されています。但し、その分、「新型インフルエンザ」についての解説がやや浅くなった感じがします(帯には「『新型インフルエンザ』の恐怖」と書かれているのだが)。

 本書の刊行は'09年2月で、'03年12月に国内で発生したH5N1型の「鳥インフルエンザウイルス」をベースに、「新型インルエンザ」について、その恐ろしさ、社会に及ぼす影響が近未来小説風の描写を交えて書かれていて(著者はノンフィクションライター兼作家)、"新たな"「新型インフルエンザ」がいつ発生してもおかしくない、或いはパンデミックはすでに始まっているかも知れないとしています。

 そして、実際に本書刊行の2カ月後に「新型インフルエンザ」がメキシコに発生し、その後日本にも上陸、冬季に限らず夏場でも感染拡大する可能性があること、タミフルが一定の治療効果を持つであろうことなど、本書に書かれている幾つかの「予想」も外れていませんでしたが、そもそも、この2009年型の「新型インフルエンザ」はH1N1亜型に属するもので、感染力は強いが致死率はH5型のものよりずっと低いタイプのものでした。

 この点は、WHOも当初は読み違えていたし、また、国や厚労省もそうした弱毒性のインフルエンザを想定していなかったために、却って余計な混乱を招いたという面があり、本書も「新型インフルエンザがH5N1型で発生するかどうかはわからない」と一応は書かれているものの、新型インフルエンザが発生すると「日本で約64万人が死ぬ!」などと帯にも書かれていたりして、こうした混乱を結果として助長した側面も無きにしも非ずか。

 後半部の「対応」の部分は取材源が限定的で、役所やマスコミの発表文書を引き写したような記述も多いように思えましたが、前半部のインフルエンザの特性や、「アウトブレイク」と「パンデミック」の違いなどの解説は分かり易かったです。

OUTBREAK.jpg 映画「アウトブレイク」('95年/米)でモチーフとなった架空のウィルスは、「エイズ」をモデルにしたのかどうかは知りませんが、映画自体はスリリングな娯楽作品であると共に大変恐ろしかったし、結果として'02年にアフリカで発生した「エボラ出血熱」を予見するような内容になっていて、「予言的中度」はかなり高かったと言えるのでは。

 因みに、前世紀初頭(1918年)にアメリカ発で世界中に広まったスペイン風邪(H1N1型)で1年余りの間に4千万人が死亡し、これは中世(14世紀)ヨーロッパで大流行した黒死病(本書ではぺストとされているが腺ペストではなくエボラのような出血熱ウイルスだったという説もある)の死者3千5百万人をも上回るものだったとのことです。

 地球上の人口が増え、交通機関が発達し、日常的に人々が行き来する現代、人類にとってパンデミックが脅威であることは、著者の指摘の通りだと思います。

Rene Russo (レネ・ルッソ) in「アウトブレイク [DVD]
OUTBREAK.bmp「アウトブレイク.jpg 「アウトブレイク」●原題:OUTBREAK●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ウォルフガング・ペーターゼン●製作:ゲイル・カッツ/アーノルド・コペルソン●脚本:ローレンス・ドゥウォレットアウトブレイク01.jpg/ロバート・ロイ・プール●撮影:ミヒャエル・バルハウス●音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●時間:127分●出演:ダスティン・ホフマン/レネ・ルッソモーガン・フリーマン/ケヴィン・スペイシー/キューバ・グッディング・ジュニア/ドナルド・サザーランド/パトリック・デンプシー●日本公開:1995/04●配給:ワーナー・ブラザース映画(評価:★★★★)

レネ・ルッソ in「メジャーリーグ」('89年)映画デビュー作
レネ・ルッソ メジャーリーグ2.jpgレネ・ルッソ メジャーリーグ.jpg

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邦題より原題が相応しいシビアな内容。ジェーン・フォンダの演技には鬼気迫るものがある。

ひとりぼっちの青春.jpg  彼らは廃馬を撃つ.jpg ホレス・マッコイ「彼らは廃馬を撃つ」.jpg    .映画「バーバレラ」(1968).jpg   追憶パンフ.jpg 
ひとりぼっちの青春 [DVD]」 「彼らは廃馬を撃つ」['70年/角川文庫]['88年/王国社]「バーバレラ」「追憶

『ひとりぼっちの青春』(1969)2.jpgひとりぼっちの青春1.png 1932年、不況下にハリウッドで行われた「マラソン・ダンス」の会場には、賞金を狙って多くの男女が集まっていた。ロバート(マイケル・サラザン)もその1人で、彼は、大会のプロモーター兼司会者(ギグ・ヤング)の手配により、グロリア(ジェーン・フォンダ)と組んで踊ることになるのだが―。

『ひとりぼっちの青春』(1969).jpg 「ひとりぼっちの青春」('69年/米)は、不況時のアメリカの世相と、一攫千金を願ってコンテストに参加し、ぼろぼろになっていく男女を通して、世相の退廃と人生の孤独や狂気を描いた作品で、 甘ちょろい感じのする邦題タイトルですが、原題は"They Shoot Horses, Don't They?"(「廃馬は撃つべし」とでも訳すところか)というシビアなもの(オープニングで馬が撃たれるイメージ映像が流れる)。

By Jeffrey Ressner.jpg 余興で行われた二人三脚競走で足がつって踊れなくなったロバートを、今までの苦労が水の泡になるとして無理やり引きずって踊ろうとするグロリアを演じたジェーン・フォンダの演技には、鬼気迫るものがありました(ジェーン・フォンダはこの作品でゴールデングローブ賞、ニューヨーク映画批評家協会賞の各「主演女優賞」を受賞)。

 グロリアは、もはや賞金のためではなく、自らの尊厳のために踊り続けようとする。しかし、このダンス・コンテスト自体がある種のヤラセ興行であることに気づいたとき、彼女はロバートに自殺幇助を頼み果てる―。"They Shoot Horses Don't They?"は、ロバートが子供の頃、父親から言い聞かされていた言葉だったというのが、強烈な皮肉として効いています。 

バーバレラ 1993.jpgBARBARELLAes.jpg 雑誌モデル出身のジェーン・フォンダは、この映画に出るまではセクシーさが売りの女優で、ピンク・コメディのようなものによく出演しており、この映画の前の出演作は、ロジェ・ヴァディム監督の「バーバレラ」('68年/伊・仏)というSFコミックの実写版でした。偶々テレビで観たという作品だったため、相対的に印象が薄かったのですが、この作品のオープニング、今観ると凄いね。ジェーン・フォンダの格好もスゴかったけれども、アニタ・パレンバーグの格好もスゴかった。

 そんな彼女が演技開眼したのが、この「ひとりぼっちの青春」であったことは本人も後に語っているところであり、その後2度もアカデミー主演女優賞を獲得しています。しかも、「黄昏」("On Golden Pond")の映画化権を買取り、父ヘンリー・フォンダに初のアカデミー主演男優賞をもたらす契機を作ってさえいます。一方、映画でアクの強いプロモーターを演じたギグ・ヤングは、この映画の8年後に、妻を射殺して自らも命を絶っています。シドニー・ポラック.jpg この作品は、今年('08年)5月に亡くなったシドニー・ポラック(1934‐2008/享年73)監督作で、この人の代表作には、「追憶」や「愛と哀しみの果て」などの大物俳優の組み合わせ作品や「トッツィー」('82年、アカデミー助演女優賞)などがあります。
 

『追憶』(1973) 3.jpg 「追憶」('73年)は、やはりあくまでもバーブラ・ストライサンドの映画という感じで、バーブラ・ストライサンドが政治活動に熱心な苦学生を、ロバート・レッドフォードがノンポリの学生を演じていますが、2人の20年後の再会から自分たちの歩んできた道を振り返る構成になっていて、よって「追憶(THE WAY WE WER)」というタイトルになるわけです。

『追憶』(1973) 1.jpg 何事にもひたむきにしか生きられない、不器用だが一途な女性をバーブラ・ストライサンドが好演、人間ってそう簡単には変われないのかもと...。

 テーマ曲もバーブラ・ストライザンドが歌っているわけで、これだけの歌唱力と演技力を兼ね備えているというのは考えてみれば凄い才能ということになります。一時期、ネスカフェ・コーヒーのCMが流れる度に思い出す映画でもありましたが、個人的にはこの映画のお陰で、暫くはロバート・レッドフォード自体にノンポリのイメージを抱いていました。

The way we were

愛と哀しみの果て  0.jpg そのロバート・レッドフォードがメリル・ストリープと共演したのが「愛と哀しみの果て」('85年)で、原作は「バベットの晩餐会」の原作者でもあるカレン・ブリクセン(イサク・ディーネセン)の文芸作品で、池澤夏樹氏が自身の個人編集の世界文学全集においてもチョイスしている『アフリカの日々』ですが、アカデミーの作品賞や監督賞を獲ったにしては中身はハーレクイン・ロマンスみたいだなあと...(原作から何か抜け落ちているのでは?)。でも、メリル・ストリープってコンプレックスを持った女性を演じるのが上手いなあとは思わされ、実際彼女ははこの作品でロサンゼルス映画批評家協会賞の「主演女優賞」受賞していますが、映画自体は全く自分の好みに合わなかったです(この他に、男爵を演じたクラウス・マリア・ブランダウアー(「ネバーセイ・ネバーアゲイン」('83年/米・英))がゴールデングローブ賞「助演男優賞」とニューヨーク映画批評家協会賞「助演男優賞」を受賞している)。

トッツィー1.jpg 「トッツィー」('82年)は、女装のダスティン・ホフマンがアカデミー主演男優賞(女優賞?)を獲るかと言われた映画ですが、むしろ共演トッツィーのジェシカ・ラング.jpgジェシカ・ラング(「キングコング」('76年/米))の方が進境著しく、彼女はこの作品で、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ニューヨーク映画批評家協会賞全米映画批評家協会賞の各「助演女優賞」を受賞しています。個人的には、ソープオペラって収録が間に合わなくなると"生撮り"するというのが興味深かった...。日本でも昔のNHKの「お笑い三人組」や民放の「てなもんや三度笠」などは公開録画だったようですが。

 こうして見ると、男優よりもむしろ女優の方の魅力を引き出しているものが並び、「ひとりぼっちの青春」もその類ということになるのかも知れませんが、「ひとりぼっちの青春」に関しては、シドニー・ポラック監督作の中では忘れてはならない作品だと個人的には思っています。

ラヂオの時間1.jpg そう言えば、1993年に上演された劇団東京サンシャインボーイズの演劇で、三谷幸喜の初監督作品として映画化された「ラヂオの時間」('97年/東宝)が、ラジオドラマを生放送でやるという設定でした。主婦(鈴木京香)が初めて書いた脚本が採用されたのだったが、本番直前、主演女優(戸田恵子)が自分の役名が気に入らないと文句を言い出し、急きょ脚本に変更が加えられ、さらに辻褄を合わせようと次々と設定を変更していくうちに、熱海を舞台にしたメロドラマのはずだった物語がアメリカを舞台にした破天荒なSFドラヂオの時間2.jpgラマへと変貌していき、プロデューサー(西村雅彦)やディレクター(唐沢寿明)がてんてこ舞いするというもの。生放送という設定ならではのドタバタ劇が面白かったです。キネマ旬報ベストテンの第3位。この年の1位は宮崎駿監督んの「もののけ姫」で2位は今村昌平監督のパルムドールを獲った「うなぎ」でしたから、かなり高く評価されたと言えるのではないでしか(第22回「報知映画賞 作品賞」を受賞している)。日本ではコメディへの評価が低いので、十分に健闘したと言えるし、いいことだと思います(ただしその後、三谷幸喜監督作品は、「読者選出」の方でベストテンラジオの時間 渡辺謙.jpgに入ることはあっても、本チャンの選考委員選出の方ではなかなかベストテンに入ってこない)。渡辺謙がラジオ番組ファンのタンクローリーの運転手役で出ているのは、彼が同じくタンクローリー運転手のゴン役で出ていた伊丹十三(1933-1997/64歳没)監督の〈ラーメン・ウエスタン〉ムービー「タンポポ」('85年/東宝)へのオマージュなのでしょう。カウボーイハットも被っているし―(「タンポポ」でカウボーイハットを被っていたのは、相方ゴロー役の山崎努だったが)。

2022年・第70回「菊池寛賞」受賞(同時受賞の宮部みゆき氏と)
2022菊池寛賞.jpg

  
「ひとりぼっちの青春」米国版 ポスター&ビデオカバー
[ひとりぼっちの青春.jpgThey Shoot Horses Don't They? video.jpgThey Shoot Horses Don't They?.jpg「ひとりぼっちの青春」●原題:THEY SHOOT HOURSES,DON'T THEY?●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:ジョン・グリーン●原作:ホレース・マッコイ 「彼らは廃馬を撃つ」●時間:133分●出演:ジェーン・フォンダ/マイケル・サラザン/スザンナ・ヨーiひとりぼっちの青春 の画像.jpgク/ギグ・ヤング/ボニー・ベデリア/マイケル・コンラッド/ブルース・ダーン/アル・ルイス/セヴァン・ダーデン/ロバート・フィールズ/アリン・アン・マクレリー/マッジ・ケネディ/レッド・バトンズ●日本公開:1970/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映ひとりぼっちの青春09.jpg78-01-17) (評価★★★★☆)●併映:「草原の輝き」(エリア・カザン)/「ジョンとメリー」(ピーター・イェイツ)

ジェーン・フォンダ(ニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞・ゴールデングローブ賞主演女優賞)

三鷹オスカー.jpg三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。
    
ぴあ 三鷹東映.jpg 「ぴあ」1978年1月号

バーバレラ [DVD]」アニタ・パレンバーグ/ジェーン・フォンダ in 「バーバレラ」   
BARBARELLAs.jpgバーバレラ [DVD].jpgBARBARELLA.jpg「バーバレラ」●原題:BARBARELLA●制作年:1968年●制作国:イタリア/フランス●監督:ロジェ・ヴァディム●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ジャン=クロジェーン・フォンダ9.pngバーバレラes.jpgード・フォレ/クロード・ブリュレ/クレメント・ウッド/テリー・サザーン/ロジアニタ・パレンバーグ in 『バーバレラ』.jpgェ・ヴァディム/ヴィットーリオ・ボニチェッリ/ブライアン・デガス/テューダー・ゲイツ●撮影:クロード・ルノワール●音楽:チャールズ・フォックス●原作:ジャン=クロード・フォレスト「バーバレラ」●時間:98分●出演:ジェーン・フォンダ/ジョン・フィリップ・ロー/アニタ・パレンバーグ/ミロ・オーシャ●日本公開:1968/10●発売元:パラマウント(評価★★★)

「バーバレラ」サントラ.jpg

THE WAY WE WERE .jpg追憶 dvd.jpgThe way we were.gif「追憶」●原題:THE WAY WE WER●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:マービン・ハムリッシュ●原作:アーサー・ローレンツ●時間:118分●出演:バーブラ・ストライサンド/ロバート・レッドフォード渋谷文化劇場.png/ブラッドフォード・ディルマン/ロイス・チャイルズ/パトリック・オニール/ヴィヴェカ・リンドフォース●日本公開:1974/04●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:渋谷文化劇場(77-10-23) (評価★★★☆)●併映:「明日に向かって撃て!」(ジョージ・ロイ・ヒル)

渋谷文化劇場 1952年11月17日、渋谷東宝会館地下にオープン 1989年2月26日閉館(1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーがオープン)
    
愛と哀しみの果てdvd.jpg愛と哀しみの果て パンフ.jpg愛と哀しみの果てs.jpg「愛と哀しみの果て」●原題:OUT OF AFRICA●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:ジョン・バリー●原作:アイザック・ディネーセン(カレン・ブリクセン)「アフリカの日々」●時間:161分●出演:メリル・ストリープ/ロバート・レッドフォード/クラウス・マリア・ブランダウアー/マイケル・キッチン/マリック・ボーウェンズ●日本公開:1986/03●配給:ユニヴァーサル愛と哀しみの果て meriru .jpgクラウス・マリア・ブランダウアー.jpg映画●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12) (評価★★)●併映:「恋におちて」(ウール・グロスバード) メリル・ストリープ(ロサンゼルス映画批評家協会賞主演女優賞)ラウス・マリア・ブランダウアー(ゴールデングローブ賞助演男優賞・ニューヨーク映画批評家協会賞助演男優賞)
    
トッツィー ジェシカ・ラング.jpgトッツィー.jpg「トッツィー」●原題:TOOTSIE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:デイブ・グルーシン●時間:113分●出演:ダスティン・ホフマン/ジェシカ・ラング/ビル・マーレイ/テリー・ガー/ダブニー・コールマン/チャールズ・ダーニング●日本公開:1983/04●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:自由が丘武蔵野推理 (85-07-14) (評価★★★)●併映:「プレイス・イン・ザ・ハート」(ロバート・ベントン) ダスティン・ホフマン(全米映画批評家協会賞主演男優賞)ジェシカ・ラング(ニューヨーク映画批評家協会賞助演女優賞・全米映画批評家協会賞助演女優賞・ゴールデングローブ賞助演女優賞・アカデミー賞助演女優賞)

ラヂオの時間 スタンダード・エディション [DVD]
ラヂオの時間 1997.jpgラヂオの時間3.jpg「ラヂオの時間」●制作年:1997年●監督・脚本:三谷幸喜●製作:村上光一/高井英幸●音楽:服部隆之●原作:三谷幸喜/東京サンシャインボーイズ『ラヂオの時間』●時間:103分●出演:唐沢寿明/鈴木京香/西村雅彦/戸田恵子/布施明/井上順/細川俊之/小野武彦/藤村俊二/小野武彦/梶原善/並樹史朗/奥貫薫/近藤芳正/モロ師岡/田口浩正/梅野泰靖/(以下、特別出演)市川染五ラヂオの時間 渡辺謙.jpg郎/桃井かおり/佐藤B作/宮本信子/渡辺謙●公開:1997/11●配給:東宝(評価:★★★★)

「ラヂオの時間  .jpg

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「作品力」の源はダスティン・ホフマンとトム・クルーズの挑戦意欲。

『レインマン』(1988).jpg 映画パンフレット『レインマン』.jpg レインマン.jpgRAIN MAN (1988).jpg みんなの精神科2.jpg
RAIN MAN (1988)/「レインマン」パンフレット/「レインマン [DVD]」 きたやまおさむ『みんなの精神科―心とからだのカウンセリング38 (講談社プラスアルファ文庫)』  

アカデミー賞 レインマン.jpg この作品は、ロードショー公開時の平日夜に新宿グランドヲデオン座で観ましたが、ロード中にアカデミー賞受賞が決まり、劇場は超満員でした(1988年の作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞)。その前に、ゴールデングローブ賞の作品賞も受賞してはいましたが...(第39回ベルリン国際映画祭「金熊賞」(グランプリ)も受賞)。

RAIN MAN film.jpg 精神科医の北山修氏(=元ザ・フォーク・クルセダーズの「きたやまおさむ」氏)は、その著書『みんなの精神科―心とからだのカウンセリング38』('97年/講談社)の中で「『レインマン』の中の自閉症という病気から出てくる面白いエピソードは、ひょっとしたら現実には20人の自閉症患者と20年付き合ってやっと経験できるかもしれない話であって、それが1週間で1人の自閉症の人に起こってしまうところは完全にフィクションである」と書いていますが、それは多分正しい指摘であるのだろうと思います。それでもこの映画が評価されるところがアメリカらしいと思うし、北山修氏自身も、そうした専門家からの指摘をねじ伏せてしまう「作品の力」は認めています。

RAIN MAN (1988)es.jpg その力の源は、「自閉症者は火星人のようなものだから理解できるとは思わない方がいい」と著名な学者に言われ(『レナードの朝』『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者』のオリヴァー サックスじゃないかなあ)、かえって発奮したというダスティン・ホフマンと、LD(学習障害)であるためbとd、pとqの区別がつかないなどの識字困難により教科書が読めず幼い頃から苦労したトム・クルーズの、両俳優の挑戦意欲だと思います。

RAIN MAN (1988)s.jpg アメリカのTVドラマなどには、自閉症やアスペルガー症候群の登場人物が結構出てきますが、わざとらしい説明的な描写は少ないようです。アメリカ社会での自閉症に対する認知度・理解度を高める上で、この映画の果たした役割は大きかったのではないかと思いますが、日本でのヒットが国内でのそうしたムーブメントに繋がったかというと、どうでしょうか。

RAIN MAN (1988)ges.jpg 「君が教えてくれたこと」('00年/TBS系列)とか「光とともに...〜自閉症を抱えて〜」('04年/日本テレビ)といったテレビドラマがあり、それぞれは良質な作品なのですが、全体のムーブメントで捉えた場合、結果として単発的な"感動狙い"で終わっている感じもしなくもないのですが。

「レインマン」●原題:RAIN MAN●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:バリー・レヴィンソン●撮影:ジョン・シール●音楽:ハンス・ジマー●原作・脚本:バリー・モロー●時間:133分●出演:ダスティン・ホフマン/トム・クルーズ/バレリア・ゴリノ/ジェリー・モルデン/ジャック・ マードック/マイケル・D・ロ新宿グランドオデヲン.jpg新宿グランドオデヲン座.jpg新宿グランドヲデオン座(内観).jpgバーツ/ボニー・ハント●日本公開:1989/02●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:新宿グランドヲデオン座(89-04-15) (評価★★★★)
新宿グランドオデヲン座 (1975年12月「第一東亜会館」新装に伴い1Fにオープン)2009(平成21)年11月30日閉館

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トップは自分の考えと同意見の参謀の声しか聞かず。

『司令官たち』.jpg 司令官たち .jpg   大統領の陰謀100_.jpg大統領の陰謀 [Blu-ray]
司令官たち―湾岸戦争突入にいたる"決断"のプロセス』['91年/文藝春秋]

大統領の陰謀.jpg大統領の陰謀 ニクソンを追いつめた300日.jpg 『大統領の陰謀』(映画にもなった)で、カール・バーンスタインとともにニクソンを追いつめて名を馳せたワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワードによる湾岸戦争の〈軍事上の意思決定〉の記録-と言っThe Commanders_.jpgても、'88年11月のジョージ・ブッシュ大統領就任から'91年1月の湾岸戦争突入までの話ですが、同年3月の停戦協定の2ヵ月後には本国出版されていて、短期間に(しかも戦争中に)よくこれだけの証言をまとめたなあと驚かされます。

Colin Powell.gif  戦争に対して様々な考えを持った司令官たちの、彼らの会話や心理を再現する構成になっていて、小説のように面白く読めてしまいますが、大統領制とは言え、戦争がごく少数の人間の考えで実施に移されることも思い知らされ、その意味ではゾッとします。

Colin Powell

 パパ・ブッシュは、直下のチェイニー国防長官や慎重派のコリン・パウエルよりも、好戦的なスコウクロフトの主戦論になびいた―。トップが自分の考えと同意見の参謀の声しか聞かず、逆に反対派の参謀には事前相談もしなくなるというのはどこにでもあることなのだけど、この場合その結果が〈戦争〉突入ということになるわけで、穏やかではありません。

 個人的に興味深かったのは、「砂漠の嵐」作戦の指揮官シュワルツコフが、部下が悪い話を持ってきただけでその部下に怒鳴り散らすタイプだったのに対し、彼の部下のパウエルは、自分の部下の話をじっくり聞くタイプだったということで、戦後、両者の地位の上下は逆転しています。

Colin Luther Powell.jpg とは言え本書は、コリン・パウエルをカッコ良く書き過ぎている傾向もあり、一軍人としてキャリアを全うするという彼の内心の決意が描かれているものの、実際には彼はその後、国務長官という政治的ポストに就いています("初の黒人大統領"待望の過熱ぶりを本書によって少し冷まそうとした?)。 

Condoleezza Rice2.jpg また、本書で主戦派として描かれているスコウクロフトは、イラク戦争ではパウエルと協調し、息子の方のジョージ・ブッシュ(父親と同じ名前)の強硬姿勢にブレーキをかける立場に回っています。しかし、息子ブッシュは、パウエルの後任として自身が国務長官に指名したコンドリーザ・ライスの"攻撃的現実主義"になびいた―。最初から戦争するつもりでタカ派の彼女を登用したともとれますが...。
 

大統領の陰謀1.jpg 因みに、映画「大統領の陰謀」('76年/米)は、以前にテレビで観たのを最近またBS放送で再見したのですが(カール・バーンスタイン役のダスティン・ホフマンもボブ・ウッドワード役のロバート・レッドフォードも若い!)、複雑なウォーターゲート事件の全体像をかなり端折って、事件が明るみになる端緒となった共和党工作員の民主党本部への不法侵入の部分だけを取り上げており、侵入した5人組の工作員は誰かということと、それが分らないと事件を記事として公表できず、そのうち新聞社への政治的圧力も強まってきて、取材のために残された時間は限られているがあと1人がわからない―という、その辺りの葛藤、鬩ぎ合いの1点に絞って作られているように思いました。それなりに面白く、再度見入ってしまったこの作品の監督は、後に「推定無罪」などを撮るアラン・J・パクラで、やはりこの監督は、政治系ではなく、この頃からサスペンス系だと。「ディープ・スロート」という2人の記者に情報提供した人物が、後に実在かつ生存中の政府高官だと分った、その上で観るとまた興味深いです。

大統領の陰謀 ジェイソン・ロバーズ .jpgジェイソン・ロバーズin「大統領の陰謀」[ワシントン・ポスト紙編集主幹ベン・ブラッドリー](1976年ニューヨーク映画批評家協会賞助演男優賞、全米映画批評家協会賞助演男優賞、1977年アカデミー賞助演男優賞受賞

「大統領の陰謀」●原題:All THE PRESIDENT'S MEN●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:アラン・J・パクラ ●製作:ウォルター・コブレンツ●脚本:ウィリアム・ゴールドマン●撮影:ゴードン・ウィリス●音楽:デヴィッド・シャイア●時間:138分●出演:ダスティン・ホフマン/ロバート・レッドフォード/ジャック・ウォーデン/マーティン・バルサム/ジェイソン・ロバーズ/ジェーン・アレクサンダー/ハル・ホルブルック/ネッド・ビーティ/スティーヴン・コリンズ/リンゼイ・クローズ/F・マーリー・エイブラハム/ジェームズ・カレン●日本公開:1976/08●配給:ワーナーブラザーズ (評価:★★★★)

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