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「集団主人公」映画。「アメリカン・アイドル」の地方予選を想起させる「ナッシュビル」。

ナッシュビル Nashville.jpg ナッシュビル チラシ.jpg   グランド・ホテル ポスター.jpg  マッシュ dvd_1L.jpg
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ナッシュビル 1場面.jpg カントリー音楽のメッカ、ナッシュビルで、ある大統領候補のキャンペーンのためにコンサートが行われる準備が進められていて、町には、イベント関係者や働き口ナッシュビル 映画.jpgを求める者、野次馬、音楽ファンなど、多くの人間が集まってきていた。その中には、自分がカントリー歌手であることに疑問を感じている黒人や、芸能界で生きることを夢見る運転手、歌手希望の音痴のウエイトレス、家出してきたノイローゼ青年、カントリー歌手になりたくて田舎の農家の夫から逃れきた女など、様々な人間がいた―。

 「ナッシュビル」('75年/米)はロバート・アルトマン(Robert Altman、1925-2006)監督の1975年の作品で(Nashville)、主人公が24人もいるという所謂「グランド・ホテル」形式の映画ですが、最初に観た時はむしろ、「主人公がいない映画」という印象でした。

「グランド・ホテル」米国版パンフレット(1932)
グランドホテル(GRAND HOTEL)パンフレット.jpgグランドホテル オールキャスト.jpg 「グランド・ホテル」形式という呼び方の起源となった、エドマンド・グールディング監督の「グランド・ホテル」('32年/米)を後に観ましたが、ベルリンの一流ホテルのそれぞれの部屋で1日の間に起きる人間ドラマを描いた映画で、旧い映画のわりには面白かったです。但し、この"元祖"作品よりも、新「グランド・ホテル」形式とも言われた「ナッシュビル」の方がより面白かったと言うか、インパクトありました。

マンハッタン乗換駅.jpg こうした試みは、文学では既に先行して行われていて、例えば、ジョン・ドス=パソス(John Roderigo Dos Passos, 1896-1970)が1925年に発表した『マンハッタン乗換駅(Manhattan Transfer)』(中央公論社「世界の文学36」)は、ニューヨークの一画に住み、同じ乗換駅を利用する何人もの人々の、彼らの意識を1つ1つ切り取るように描いた作品ですが、これもある種「グランド・ホテル」的形式と言えるのではないでしょうか(コーラスグループ「マンハッタン・トランスファー」の名は、この小説に由来する。「マンハッタン乗換駅」とは要するに「グランド・セントラル駅」なのだが)。
     
『グランド・ホテル』.jpg 「グランド・ホテル」は、オーストリアの作家ヴィッキー・バウム(Vicki Baum、1888-1960)の小説『ホテルの人びと』を、アメリカで舞台化した戯曲に基づき映画化したもので、ヴィッキー・バウムはこの小説を書くために実際にホテルでメイド(客室係)として働いたそうな(実際にあった有名企業経営者と速記者とのスキャンダルがストーリーに使われているが、ホテル従業員としての守秘義務違反にならないのか?)。映画は第5回アカデミー賞の作品賞を受賞しましたが、他部門でのノミネートは無く作品賞でしか候補に挙がらずに受賞を果たした珍しいケースです(主演○○賞とか助演○○賞とかを与えようとしても、誰が主演で誰が助演なのか判別しにいくい作品であるというのも一因か)。

ジョーン・クロフォード&ウォーレス・ビアリー in 「グランド・ホテル」

 「グランド・ホテル」の出演者には有名スターが名を連ねていて、彼らが演じている役柄がそのまま中心的登場人物ということになり、こちらの方は「集団」と言うより「複数主人公」というイメージに近いかも。その中でもグレタ・ガルボとジョーン・クロフォードが目を引きますが、今思い起こしても、"共演"していたという印象はあまりないです(その辺りはまさに「グランド・ホテル」形式と言える面かもしれないが)。

Joan Crawford
ジョーン・クロフォード.jpg これ、実は、『淀川長治究極の映画ベスト100』('03年/河出文庫)によれば、撮影初日、ホテルのセットが出来上がって、グレタ・ガルボが一段高い所に立っていた、そこにジョーン・クロフォードが入ってきて、ガルボの所へ行って「お早うございます」と言ったら、ガルボは上から見下ろして、「ご苦労さん」と言ったもので、クロフォードはかんかんに怒って、「私だって主役よ。何がご苦労さんなの。絶対にこんな映画淀川長治究極の映画ベスト100_1.jpgになんか出ません」と言い出す騒ぎになり、それで二人が一緒に映る場面がこの映画には無いそうです。ジョーン・クロフォードはこの悔しさから、雨 マイルストン.jpgハリウッドの第一級プロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンに泣きついて、生涯最高の作品に出演させて欲しいと頼み込み、そこでゴールドウィンはサマセット・モームの小説の映画化作品「」('32年/米)の主演の娼婦の役を与えたとのことです。 『淀川長治 究極の映画ベスト100 (河出文庫)

 但し、「雨」におけるクロフォードが演じた娼婦サディ・トンプソン役は、後の高評価はともかく、公開当時は評判がよくなくて、興行的にも失敗作となっています。一方、「雨」の1ヵ月前に公開され、第5回アカデミー作品賞を受賞した「グランド・ホテル」は1932年度のMGMで興行成績ナンバー1作品であり、この年に「モーション・ピクチャー・ヘラルド誌」が実施した「もっとも興行成績をあげられるスター」の投票企画で、クロフォードはマリー・ドレスラー、ジャネット・ゲイナーに続く3位となっています。マリー・ドレスラーは1931年に、ジャネット・ゲイナーは1928年に、それぞれアカデミー主演女優賞を獲得していましたが、クロフォードはその後も映画に出続けるも傑作に恵まれない状態が続きます。クロフォードが復活を果たすのは、ワーナー・ブラザースへ移籍してから出演したマイケル・カーティスミルドレッド・ピアース poster.jpgミルドレッド・ピアース 01.jpg監督の「ミルドレッド・ピアース」('45年/米)で、劇場未公開作ですが、「深夜の銃声・偽りの結婚」や「ミルドレッド・ピアース 深ミルドレッド・ピアース 幸せの代償.jpg夜の銃声」といったタイトルでテレビ放映されたこともある作品です(2011年にケイト・ウィンスレット主演でテレビドラマ化され、同年WOWOWで放映(「ミルドレッド・ピアース 幸せの代償」全5話)された)(2012年9月にWOWOWシネマでオリジナルが「深夜の銃声・偽りの結婚」のタイトルで再放映され、2013年5月、原題通りの「ミルドレッド・ピアース」のタイトルでDVDが発売された)。クロフォードはこの作品で初のノミネートミルドレッド・ピアース02.jpgでアカデミー主演女優賞を獲得、女優としての評価を蘇らせ、その後の数年間、ハリウッドで最も成功した女優として君臨することになります。「ミルドレッド・ピアース」は『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『殺人保険』の作者ジェイムズ・M・ケインの1941年発表の同名小説が原作のフィルム・ノワールであり、深夜のビーチハウスでひとりの男が銃撃され、やがて警察の取調室で、殺された男性モンティの妻ミルドレッド(クロフォード)が自らの過ミルドレッド・ピアース  001 .jpg去を振り返りつつ、供述を始めるという構成です(但し、原作には殺人事件は無く、サスペンスでもなく、純粋な人間ドラマである)。彼女は、最初の夫と別れた後、苦しい家計を支えるために外で働き出し、やがて自分のレストランを経営、チェーン店化するまでに成功し、モンティと再婚しやっと幸せを手に入れたものの、娘のケイが考えもしなかったようなわがミルドレッド・ピアース04.jpgまま娘に育ってしまうというもの(この流れ自体は原作通り)。ビジネス界での成功と引き換えに、母親の役割に失敗して娘を思わぬ悪女へと成長させ、苦悩するヒロインをクロフォードが熱演しています。クロフォードはこの映画出演の10年後に後にペプシコの会長CEOとなるアルフレッド・スティールと4度目の結婚をし、その夫の死後もペプシコ社で重役として経営に関わっていた期間がありますが、実人生でそうなる前に「ミルドレッド・ピアース」でやり手実業家を演じていて、それが板についているというのが興味深いです。因みに、ジェイムズ・M・ケイン原作、ローレンス・カスダン監督の映画「白いドレスの女」('81年/米)は、原作『殺人保険』('43年)と同じく犯人が"完全犯罪"をやり遂げますが、この映画では犯人が罰を受けるような結末になっています(前述通り、原作では殺人事件そのものが無いが、母娘の関係が破綻で終わるのは同じ)。
 
ナッシュビル 映画002.jpgNashville (1975).jpg 「グランド・ホテル」からジョーン・クロフォードの話になりましたが、 話を戻して、ロバート・アルトマン監督の「ナッシュビル」はどのようにして作られたかと言うと、アルトマン監督がスタッフをナッシュビルに滞在させて毎日日記を書かせ、それを繋ぎ合せてストーリーを作り上げたのだそうで、ナッシュビルでの撮影期間中も、スタッフやキャストは全員同じモーテルに泊まっていたそうです(出演者のギャラは均一だった)。そのためか、観ていてアドリブ感があると言うか、いかにも撮りながら作り、作りながら撮っていったという感じがします(カレン・ブラックが"カントリーの女王"という役どころで自作の歌を歌うなどのお遊び感も)。当時としては抜きん出て有名なスター俳優は(カメオ出演以外は)使っていないということもあって(当時無名で、後に有名になる役者も多く出ているが)、結果として「集団主人公」という映画の特質がよく出ているように思いました。

アメリカン・アイドル.bmp ロバート・アルトマンは「M★A★S★H マッシュ」('70年/米)の監督でもあり、ある意味、ベトナム戦争終結当時の「病めるアメリカ社会」の断片像ともとれますが、オーデション歌番組「アメリカン・アイドル」の地方予選などは、いまだにこの「ナッシュビル」とう映画の雰囲気と重なる部分があるような気もします。

M★A★S★H マッシュ ポスター.jpg★A★S★H マッシュ 3.jpg 「M★A★S★H」は、朝鮮戦争を舞台にしたブラック・コメディで、野戦病院(マッシュ)に派遣されたドナルド・サザーランド、エリオット・グールド、トム・スケリット演じる3人の医師が、軍規を無視して婦長の尻を追いかけたり、女性将校(サリー・ケラーマン)をからかったりとやりたい放題をやる話。でも、この3人、実は極めて優秀な外科医であって、負傷して血だらけの患者を面白可笑しく冗談を言いながら手術するけれど、結局は治してしまうし、いたずらや悪「M☆A☆S☆H」.jpg事を企んだりはするけれど、人情味もあるということで、ちょっと憎めない...コメディ部分にもやや毒気のある鬼才ロバート・アルトマンらしい作品でしたが(1970年の第23回カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞(現在の最高賞パルム・ドールに該当))、個人的には「ナッシュビル」の方がやや上でしょうか(「ナッシュビル」は全米映画批評家協会賞・作品賞&監督賞受賞)。両作品について言えることですが、アルトマンの社会批判精神はストレートな表され方をするのはでなく、ユーモアを介するなどして屈折した形で表現されるので、背景が掴めていないと、ただ面白かったで終わってしまうこともあるかもしれません(その面白さにもクセがあって、人や作品によって評価が分かれるが)。

Nashville(1975) ヘンリー・ギブソン in「ナッシュビル」(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞) リリー・トムリン in「ナッシュビル」(ニューヨーク映画批評家協会賞「助演女優賞」、全米映画批評家協会賞「助演女優賞」受賞)
Nashville(1975).jpgナッシュビル ヘンリー・ギブソン.jpgリリー・トムリン ナッシュビル.jpg「ナッシュビル」●原題:NASHVILLE●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督・製作:ロバート・アルトマン●脚本:ジョーン・テューケスベリー●撮影:ポール・ローマン●音楽:リチャード・バスキン/キース・キャラダイン●時間:160分●出演:ヘンリー・ギブソン/カレン・ブラック/アレン・ガーフィールド/ネッド・ビーティー/マイケル・マーフィー/ジェフ・ゴールドブラム/リリー・トムリン/ジェラルディン・チャップリン/キース・キャラダイン/ロニー・ブレイクリー/グウェン・ウェルズ/バーバラ・ハリス/スコット・グレン/エリオット・グールド/ジュディー・クリスティー/デイヴィッド・アーキン/バーバラ・バクスレイ/ティモシー・ブラウン/ロバート・ドキ/シェリー・デュヴァル/アラン・ニコルズ/デイヴィッド・ピール/バート・レムゼン/新宿西口パレス3.jpg新宿三葉ビル.bmpキーナン・ウィン●日本公開:1976/04●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:新宿西口・新宿(西口)パレス(78-02-08)(評価:★★★★)●併映:「バーブラ・ストライサンド スター誕生」(フランク・ピアスン) 
新宿(西口)パレス 新宿西口小田急ハルクそば「新宿三葉ビル(三葉興行ビル(現・三葉興業本社ビル))」内。1986(昭和61)年11月閉館。


有楽座(旧)3.bmpみゆき座.jpg「グランド・ホテル」●原題:GRAND HOTEL●制作年:1932年●制作国:アメリカ●監督:エドマンド・グールディング●製作:ポール・バーン/アーヴィング・G・サルバーグ●脚本:ウィリアム・A・ドレイク●撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ●音楽:ウィリアム・アックスト/グランド・ホテル dvd ivc.jpgチャールズ・マックスウエル●原作:ヴィッキー・バウム●時間:112分●出演:グレタ・ガルボ/ジョン・バリモア/ジョーン・クロフォード/ウォーレス・ビアリー/ライオネル・バリモア/ロバート・テイラー/ジョージ・キューカー●日本公開:1933/10●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:日比谷・みゆき座(86-11-18)(評価:★★★)●併映:「暗黒街の顔役」(ハワード・ホークス)グランド・ホテル《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
>旧・みゆき座 1957(昭和32)年、東宝会館ビル(東宝本社ビル)竣工に伴い、同年4月、1階に邦画の「千代田劇場」、地下1階に洋画の「みゆき座」オープン。2005(平成17)年3月31日閉館(同年4月1日「日比谷スカラ座2」が「みゆき座」の名を引き継ぐ)。[写真]千代田劇場・みゆき座[1984(昭和59)年9月]「ぼくの近代建築コレクション」より

ミルドレッド・ピアース 00 .jpgミルドレッド・ピアース03.jpg「ミルドレッド・ピアース」●原題:MILDRED PIERCE●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティス●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:ラナルド・マクドゥガル●撮影:アーネスト・ホーラー●音楽:マックス・スタイナー●原作:ジェイムズ・M・ケイン●時間:111分●出演:ジョーン・クロフォード/ブルース・ベネット/ザカリー・スコット/アン・ブライス/ジャック・カーソン/イヴ・アーデン●DVD発売:2013/05●発売元:ブロードウェイ(評価:★★★★)

マッシュ [DVD]
★A★S★H マッシュ dvd.jpgM★A★S★H マッシュ ケラーマン.jpg「M★A★S★H マッシュ」●原題:M*A*S*H●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルトマン●製作:インゴ・プレミンジャー●脚本:リング・ランドナーJr.●撮影:ハロルド・E・スタイン●音楽:ジョニー・マンデル●時間:116分●出演:ドナルド・サザーランド/トム・スケリット/エリオット・グールド/ロバート・デュヴァル/サリー・ケラーマン●日本公開:1970/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹オスカー(79-05-13)(評価:★★★★)●併映:「まぼろしの市街戦」(フィリプド・ロカ)/「博士の異常な愛情」(スタンリー・キューブリック)

ドナルド・サザーランド(ホークアイ・ピアース大尉)/ロバート・デュヴァル(フランク・バーンズ少佐)
M★A★S★H マッシュ サザーランド.jpg M★A★S★H マッシュ  .jpg

アメリカン・アイドル1.jpgアメリカン・アイドル2.bmp「アメリカン・アイドル」American Idol (FOX 2002/06~ ) ○日本での放映チャネル:FOX(2006~)

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非情さと人間臭さを併せ持ったスパイ像。ひと癖ありそうなドナルド・サザーランド向きだった?

針の眼.jpg 針の眼 創元推理文庫.jpg 針の眼 dvd.jpg 針の眼 映画チラシ.jpg  鷲は舞いおりた_.jpg
針の眼 (ハヤカワ・ノヴェルズ)』['80年]『針の眼 (創元推理文庫)』['09年]「針の眼 [DVD]」/映画チラシ 「鷲は舞いおりた [DVD]

針の眼 新潮文庫.jpg 第2次世界大戦の最中、英国内で活動していたドイツの情報将校ヘンリー・フェイバー(コードネーム"針")は、連合軍のヨーロッパ進攻に関する重大機密を入手、直接アドルフ・ヒトラーに報告するため、英国陸軍情報部の追跡を振り切り、Uボートの待つ嵐の海へ船を出したが、暴風雨の影響で離れ小島に漂着してしまう―。

針の眼 (新潮文庫)』['96年]

針の眼 .jpg 1978年にイギリスの作家ケン・フォレット(Ken Follett)が発表したスパイ小説で(原題:The Eye of the Needle)、1979年「アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)」を受賞した作品。この人は『大聖堂』以来、歴史小説家の趣きがありますが、この作品でエドガー賞などを受賞し、『トリプル』(Triple)、『レベッカへの鍵』 (The Key to Rebecca)と相次いで発表していた頃は、米国のロバート・ラドラム(1927-2001)に続くエスピオナージュの旗手という印象でした。

 この作品には相変わらず根強いファンがいるようで、集英社文庫、新潮文庫にそれぞれ収められ、'09年には創元推理文庫からも新訳が出たり、 映画化作品がWOWOWでハイビジョン放送されるなどしていますが、もともと原文が読み易いのではないでしょうか。畳み掛けるようなテンポの良さがあります。

ジャッカルの日 73米.jpg スパイの行動を追っていくという点では、同じ英国の作家フレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』と似て無くもないし、『ジャッカルの日』を読む前からドゴールが暗殺されなかったのを知っているのと同じく、連合軍の欧州侵攻の上陸地点がカレーであるかのように見せかけて実はノルマンディだという"針"ことヘンリーが掴んだ"機密情報"が、結局ヒトラーにもたらされることは無かったという既知の事実から、彼が目的を果たすことは無かったということは事前に察せられます。

針の眼 映画eye-of-the-needle.jpg 但し、そのプロセスがやや異なり、マシーンのように非情に行動する"ジャッカル"に対し、ヘンリーは、同じく非情な人物ではあるものの、流れついた島の灯台守の夫婦に世話になるうちに、その妻と"本気"の恋に落ちてしまうという人間臭い設定になっています(夫針の眼 洋モノチラシ.jpgが下半身不随で、妻は欲求不満気味だった?)。そして、そのことが結局は、彼が任務を遂行し得なかった原因に―。

ドナルド・サザーランド in「針の眼」(1981)

 '81年にリチャード・マーカンド監督によって映画化され、ヘンリー役がドナルド・サザーランド(Donald Sutherland、1935‐)というのには当初は違和感がありましたが、実際に映画を観てみたら、結局は向いていたかもしれないと思いました。

鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)_.jpg このひと癖もふた癖もありそうな人物を演じるのが上手いカナダ出身の俳優は、ロバート・アルトマン監督の「M★A★S★H」('70/米)からフェデリコ・フェリーニ監督の「カサノバ」('76年/伊)まで幅広い役柄をこなし、ジャク・ヒギンズが1975年に著したベストセラー小説『鷲は舞いおりた』('81年/ハヤカワ文庫NV)の映画化作品でジョン・スタージェス監督の遺作となった「鷲は舞いおりた」('76年/英)にも戦争スパイ役で出ていました(同じ年に「カサノバ」と「鷲は舞いおりた」というこのまったく毛色の異なる2本の作品に出ているというのもスゴイが)。
鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)』('97年改版版)

鷲は舞いおりた 00.jpg鷲は舞いおりた_.jpg 「鷲は舞いおりた」は、第二次世界大戦末期、保養地滞在中の英国首相チャーチルを暗殺しようとするナチス親衛隊長ヒムラーによる「イーグル計画」(架空?)を描いたも鷲は舞いおりた サザーランド.jpgので、ドイツのパラシュート部隊の精鋭を率いるシュタイナーを演じたマイケル・ケインが主役でした。ドナルド・サザーランドの役どころは、部隊に先んじて英国に潜入する元IRAのテロリストで現大学教授のリーアム・デヴリン。スパイである男性(デヴリン)が潜入先で地元の女性と恋に陥るところが「針の眼」と似ていますが、シュタイナーの部隊の人間がどんどん死んでいく(計画を指揮したラードル大佐(ロバート・デュヴァル)も失敗の責を取らされ銃殺される。但し、ヒトラーの命令によ鷲は舞いおりた 11.jpg鷲は舞いおりた .jpgる形をとっているが、元々からヒムラー(ドナルド・プレザンス、本物そっくり!)の独断的計画であったことが示唆されていて、ヒムラー自身は何ら責任を取らない)という状況の中で、愛に目覚めたデヴリンは最後に生き残ります(ドナルド・サザーランドについて言えば、「針の眼」とちょうど逆の結末と言えるかもしれない。ケン・フォレットとジャック・ヒギンズの作風の違いか?)。

「鷲は舞いおりた」(1976)出演:マイケル・ケイン/ドナルド・サザーランド/ロバート・デュヴァル

カサノバ 1シーン.jpgカサノバ サザーランドs.jpg 「カサノバ」は全編スタジオ撮影で、巨大なセットがカサノバの人生の虚しさとだぶっていると言われているそうです(フェリーニ監督は彼の人生を演技的と捉えたのか)。カサノバ(ドナルド・サザーランド)が自らの強壮ぶりを誇示する"連続腕立て伏せ"シーンなどは凄かったというか、むしろ悲壮感、悲哀感があった...(ある精神分析家によれば、好色家には、"女性なら誰とでも"という「カサノバ型」と"高貴な女性を落とす"ことに喜びを感じる「ドンファン型」があるそうだが、何れもマザー・コンプレックスに起因するそうな)。

「カサノバ」.jpgカサノバ フェリーニ.jpg この映画のカサノバ役は、ロバート・レッドフォードをはじめ多くの自薦他薦の俳優が候補にあがったようですが、「最もそれらしくない風貌」をフェリーニ監督に買われてドナルド・サザーランドに決定したそうです。

ドナルド・サザーランド in「カサノバ」(1976)

Donald Sutherland and Kate Nelligan.jpg 「針の眼」の映画の方は、「カサノバ」及び「鷲は舞いおりた」の5年後に撮られた作品ですが、ここでのサザーランドは、冷徹非情ながらもやや"もっそり"した感じもあって、それでいて目付きは鋭く(こういう病的に鋭い目線は、後のロン・ハワード監督の「バックドラフト」('91年/米)の放火魔役に通じるものがある)、半身不随の灯台守の夫を自身の正体を知られたために殺害する場面などは、(相手を殺らなければ自分が殺られるという状況ではあるが)"卑怯者ぶり"丸出しで、普通のスパイ映画にある"スマートさ"の微塵も無く、それが却ってリアリティありました。

針の眼 シーン2.jpg ケイト・ネリガン(この人もカナダ出身で演技を学ぶためにイギリスに渡った点でドナルド・サザーランドと重なる)が演じる灯台守の妻がヘンリーの正体を知り、突然愛国心に目覚めたため?と言うよりは、ヘンリーの行為を愛情に対する裏切りととったのでしょう、「何もかも戦争のせいだ。解ってくれ」と弁解する彼に銃を向けるという、直前まで愛し合っていた男女が殺し合いの争いをする展開は、映像としてはキツイものがありましたが、それだけに反戦映画としての色合いを強く感じました。

ケイト・ネリガン in「針の眼」
       
ダーティ・セクシー・マネー.jpg 因みに、ドナルド・サザーランドの息子のキーファー・サザーランド(英ロンドン出身)も俳優で、今は映画よりもTVドラ24 -TWENTY FOUR-ド.jpgマ「24-TWENTY FOUR-」のジャック・バウアー役で活躍していますが(どの場面を観ても、いつも銃と携帯電話を持って、無能な大統領補佐官らに代わって大統領から直接指令を受け、毎日"全米を救うべく"駆け回っていた)、父親ドナルド・サザーランドの方も、「ダーティ・セクシー・マネー」の大富豪役などTVドラマで最近のその姿を観ることができるのが嬉しいです(相変わらず、どことなく不気味さを漂わせる容貌だが)。キーファーが自身の演じるジャック・バウアーの父親役として「24」への出演を依頼した際、ドナルドは「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年/米)におけるショーン・コネリーとハリソン・フォードのような親子関係ならOKだと答えましたが、息子を殺そうとする役だと聞いて断ったということです。
 
針の眼ード.jpg針の眼 ド.jpg「針の眼」●原題:EYE OF THE NEEDLE●制作年:1981年●制作国:イギリス●監督:リチャード・マーカンド●製作:スティーヴン・フリードマン●脚本:スタンリー・マン●撮影: アラン・ヒューム●音楽:ミクロス・ローザ●時間:154分●出演:ドナルド・サザーランド/ケイト・ネリガン/イアン・バネン/クリストファー・カザノフ/フィリップ・マーティン・ブラウン/ビル・ナイン●日本公開:1981/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)

「カサノバ」●原題:IL CASANOVA DI FEDERICO FELLINI●制作年:1976年●制作国:イタリア●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:アルベルト・グリマルディ●脚本:フェデリコ・フェリーニ/ベルナルディーノ・ザッポーニ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:154分●出演:ドナルド・サザーランド/ティナ・オーモン/マルガレート・クレマンティ/サンドラ・エレーン・アレン/カルメン・スカルピッタ/シセリー・ブラウン/クラレッタ・アルグランティ/ハロルド・イノチェント/ダニエラ・ガッティ/クラリッサ・ロール●日本公開:1980/12●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町スバル座(81-02-09)(評価:★★★☆)

鷲は舞いおりた [Blu-ray]
「鷲は舞いおりた」09.jpg鷲は舞いおりた b.jpg鷲は舞い降りた9_2.jpg「鷲は舞いおりた」●原題:THE EAGLE HAS LANDED●制作年:1976年●制作国:イギリス●監督:ジョン・スタージェス●製作:ジャック・ウィナー/デイヴィッド・ニーヴン・ジュニア●脚本:トム・マンキーウィッツ●撮影:アンソニー・B・リッチモンド●音楽:ラロ・シフリン●原作:ジャック・ヒギンズ「鷲は舞いおりた」●時間:123分(劇場公開版)/135分(完全版)●出演:マイケル・ケイン/ドナルド・サザーランド/ロバート・デュヴァル/ジェニー・アガター/ドナルド・プレザンス/アンソニ鷲は舞いおりた ケイン サザーランド.jpg鷲は舞い降りた ロバート・デュヴァル.jpg鷲は舞い降りた D・プレザンス.jpgー・クエイル/ジーン・マーシュ/ジュディ・ギーソン/トリート・ウィリアムズ/ラリー・ハグマン/スヴェン=ベッティル・トーベ/ジョン・スタンディング●日本公開:1977/08●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋テアトルダイア (77-12-24)(評価:★★★☆)●併映:「ジャッカルの日」(フレッド・ジンネマン)/「ダラスの熱い日」(デビッド・ミラー)/「合衆国最後の日」(ロバート・アルドリッチ)(オールナイト)

ロバート・デュヴァル(ラードル大佐)/ドナルド・プレザンス(ナチス親衛隊長ヒムラー)

24 (2001)
24 (2001).jpg24 TWENTY FOUR.jpg「24 -TWENTY FOUR-」24 (FOX 2001/11~2009) ○日本での放映チャネル:フジテレビ(2004~2010)/FOX
24 -TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン DVDコレクターズBOX

Dirty Sexy Money.jpg「ダーティ・セクシー・マネー」Dirty Sexy Money (ABC 2007/09~2009) ○日本での放映チャネル:スーパー!ドラマTV(2008~)
Dirty Sexy Money: Season One [DVD] [Import]

 

 【1983年文庫化[ハヤカワ文庫(鷺村達也:訳)]/1996年再文庫化[新潮文庫(戸田裕之:訳)]/2009年再文庫化[創元推理文庫(戸田裕之:訳)]】 

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とりあえず1回目の予測は外した感があるが、警戒は必要ということか。

小林 照幸 パンデミック.jpg       apocalypse-outbreak-431.jpg OUTBREAK3.bmp
パンデミック―感染爆発から生き残るために (新潮新書)』 ['09年]/映画「アウトブレイク」ダスティン・ホフマン/レネ・ルッソ

インフルエンザ.jpg パンデミック(感染爆発)の脅威と、それに対し国や医療機関、個人はどう対応すべきかについて書かれた本で、「新型インフルエンザ」を主として扱ってはいますが、デング熱、マラリア、成人はしかなど、その他の感染症についても言及されています。
 但し、その分、「新型インフルエンザ」についての解説がやや浅くなった感じがします(帯には「『新型インフルエンザ』の恐怖」と書かれているのだが)。

 本書の刊行は'09年2月で、'03年12月に国内で発生したH5N1型の「鳥インフルエンザウイルス」をベースに、「新型インルエンザ」について、その恐ろしさ、社会に及ぼす影響が近未来小説風の描写を交えて書かれていて(著者はノンフィクションライター兼作家)、"新たな"「新型インフルエンザ」がいつ発生してもおかしくない、或いはパンデミックはすでに始まっているかも知れないとしています。

 そして、実際に本書刊行の2カ月後に「新型インフルエンザ」がメキシコに発生し、その後日本にも上陸、冬季に限らず夏場でも感染拡大する可能性があること、タミフルが一定の治療効果を持つであろうことなど、本書に書かれている幾つかの「予想」も外れていませんでしたが、そもそも、この2009年型の「新型インフルエンザ」はH1N1亜型に属するもので、感染力は強いが致死率はH5型のものよりずっと低いタイプのものでした。

 この点は、WHOも当初は読み違えていたし、また、国や厚労省もそうした弱毒性のインフルエンザを想定していなかったために、却って余計な混乱を招いたという面があり、本書も「新型インフルエンザがH5N1型で発生するかどうかはわからない」と一応は書かれているものの、新型インフルエンザが発生すると「日本で約64万人が死ぬ!」などと帯にも書かれていたりして、こうした混乱を結果として助長した側面も無きにしも非ずか。

 後半部の「対応」の部分は取材源が限定的で、役所やマスコミの発表文書を引き写したような記述も多いように思えましたが、前半部のインフルエンザの特性や、「アウトブレイク」と「パンデミック」の違いなどの解説は分かり易かったです。

OUTBREAK.jpg 映画「アウトブレイク」('95年/米)でモチーフとなった架空のウィルスは、「エイズ」をモデルにしたのかどうかは知りませんが、映画自体はスリリングな娯楽作品であると共に大変恐ろしかったし、結果として'02年にアフリカで発生した「エボラ出血熱」を予見するような内容になっていて、「予言的中度」はかなり高かったと言えるのでは。

 因みに、前世紀初頭(1918年)にアメリカ発で世界中に広まったスペイン風邪(H1N1型)で1年余りの間に4千万人が死亡し、これは中世(14世紀)ヨーロッパで大流行した黒死病(本書ではぺストとされているが腺ペストではなくエボラのような出血熱ウイルスだったという説もある)の死者3千5百万人をも上回るものだったとのことです。

 地球上の人口が増え、交通機関が発達し、日常的に人々が行き来する現代、人類にとってパンデミックが脅威であることは、著者の指摘の通りだと思います。

Rene Russo (レネ・ルッソ) in「アウトブレイク [DVD]
OUTBREAK.bmp「アウトブレイク.jpg 「アウトブレイク」●原題:OUTBREAK●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ウォルフガング・ペーターゼン●製作:ゲイル・カッツ/アーノルド・コペルソン●脚本:ローレンス・ドゥウォレットアウトブレイク01.jpg/ロバート・ロイ・プール●撮影:ミヒャエル・バルハウス●音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●時間:127分●出演:ダスティン・ホフマン/レネ・ルッソ/モーガン・フリーマン/ケヴィン・スペイシー/キューバ・グッディング・ジュニア/ドナルド・サザーランド/パトリック・デンプシー●日本公開:1995/04●配給:ワーナー・ブラザース映画(評価:★★★★)

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多才な人だったマイケル・クライトン。年下の女性上司からの強烈な「逆セクハラ」を描く。

Disclosure 1994.bmpディスクロージャー.jpg デミ・ムーア DISCLOSURE.bmp ディスクロージャー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV).jpg ディスクロージャー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV).jpg
ディスクロージャー [DVD]」 マイケル・ダグラス、デミ・ムーア/マイケル・クライトン『ディスクロージャー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)』『ディスクロージャー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

DISCLOSURE 2.jpg「ディスクロージャー」.jpg ハイテク企業に勤めるトム・サンダース(マイケル・ダグラス)は、自分に内定していた副社長ポストに、社の創設者ボブ・ガーヴィン(ドナルド・サザーランド)が目をかけてきた野心溢れる女性メレディス(デミ・ムーア)が就任したことを知らされ唖然とする。彼女はかつてのトムの恋人だったのだ。そしてトムは就任したばかりの彼女に部屋に呼び出されて誘惑され、その誘いに負けそうになるも、かろうじて踏み止まり部屋を出る。しかし今度は、彼女から部屋でレイプをされそうになったと訴えられる―。

DISCLOSURE 1994 .jpg マイケル・クライトン.jpg 今月('08年11月)亡くなったマイケル・クライトン(Michael Crichton、1942‐2008/享年66)の原作で、この人のデビュー作が『アンドロメダ病原体』('69年)であり、『ジュラシック・パーク』('90年)などのバイオ・サスペンスやTVドラマ『ER』のようなメディカル系に強かった印象があるけれども(ハーバード・メディカルスクールの出身でもある)、『大列車強盗』('75年)などのミステリもあれば、『ライジング・サン』('92年)のようなビジネスドラマ(ビジネス・サスペンス)もあり、何でもござれといった多才さというか、守備範囲の広さを感じさせ、まだバリバリの現役であっただけに、66歳でのガン死は、壮絶な戦死といった印象も受けます。

 この作品もビジネスドラマ(ビジネス・サスペンス)であり、年下の女性上司による「逆セクハラ」を扱っていますが、日本では「セクシャル・ハラスメント」が「新語・流行語大賞」の"新語"部門金賞に選ばれたのが'89年です(この段階ではまだ"新モノ"扱いか)。男女雇用機会均等法に「性的嫌がらせへの配慮」が盛り込まれたのが8年後の'97年改正に於いてであり、「男性への性的嫌がらせ」も配慮の対象となったのが更に10年後の'07年4月ですから、この作品の原作が1993年に発表され'94年に映画化されたことを思うと、向こうは随分と先を行っていたなあと。但し、米国では、原著発表時点で既に「テーマが古い」との批評もあったとのこと...。

音楽:エンニオ・モリコーネ

 セクハラ事件を契機に主人公は、野望渦巻く企業のパワーゲームに巻き込まれていきますが、映画におけるマイケル・ダグラスは、「ウォール街」('87年)で若僧チャ-リー・シーンを翻弄するやり手の投資銀行家ゲッコー氏のイメージよりも、「危険な情事」('87年)で不倫相手のグレン・クローズに翻弄される弁護士のイメージに近いかも。

ドナルド・サザーランド ディスクロージャー .jpg 映画としては凡作になってしまったと思いますが、マイケル・クライトンへの追悼と、「ライジング・サン」よりはまだ映画らしい映画になっているということで本作品を取り上げました。DISCLOSURE film.gif上司デミ・ムーアの誘いを断った主人公に対する上司の仕打ちの1つに、会社のサーバーへのアクセス権を奪ってしまうというのがあって、そのことで主人公は仕事が完全にストップしてしまいパニックに陥るというのが当時としてはすごく"現代風"の恐怖だなあと思われ、印象的に残りました。

ドナルド・サザーランド ディスクロージャー.jpg「ディスクロージャー」●原題:DISCLOSURE●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:バリー・レヴィンソン●音楽:エンニオ・モリコーネ●原作:マイケル・クライトン 「ディスクロージャー」●時間:128分●出演:マイケル・ダグラス/デミ・ムーア/ドナルド・サザーランド/キャロライン・グッドオール/デニス・ミラー/ロマ・マフィア/ニコラス・サドラー/ローズマリー・フォーサイス/ディラン・ベイカー/ジャクリーン・キム/ドナル・ローグ/アラン・リッチ/ スージー・プラクソン●日本公開:1995/02●配給:ワーナー・ブラザース (評価★★★)

 【1994年単行本〔早川書房〕/1995年文庫化[ハヤカワ文庫NV(上・下)]】

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マフィアの示威行為が狙いともとれる本だが、生々しいだけに興味深く読めた。

アメリカを葬った男2.jpg アメリカ.jpg  『JFK』(1991).jpg 『ダラスの熱い日』(1973).jpg
アメリカを葬った男―マフィア激白!ケネディ兄弟、モンロー死の真相』〔'92年〕/『アメリカを葬った男』光文社文庫/映画「JFK [DVD]」(1991)/映画「ダラスの熱い日 [VHS]」(1973).

アメリカを葬った男 原著.jpgSam Giancana.jpg マフィアの大ボスだったサム・ジアンカーナが、自分はマリリン・モンローの死とケネディ兄弟の暗殺に深く関わったと語っていたのを、実の弟チャック・ジアンカーナが事件から30年近い時を経て本にしたもので、読んでビックリの内容で、本国でもかなり話題になりました。
Sam Giancana
"Double Cross: The Story of the Man Who Controlled America"

 「アメリアを葬った男」とは、訳者の落合信彦氏が考えたのかピッタリのタイトルだと思いますが、原題は"Double Cross(裏切り)"で、ケネディ兄弟の暗殺は、移民系の面倒を見てきたマフィアに対するケネディ家の仕打ちや、大統領選の裏工作でマフィアが協力したにも関わらずマフィア一掃作戦を政策展開したケネディ兄弟の "裏切り"行為、に対する報復だったということのようです。

 但し、その他にも、ジョンソンもニクソンも絡んでいたといった政治ネタや、CIAがケネディ排除への関与に際してマフィアと共同歩調をとったとかいう話など、驚かされる一方で、他のケネディ事件の関連書籍でも述べられているような事柄も多く、だからこそもっともらしく思えてしまうのかもしれないけれど、本書の記述の一部に対しては眉唾モノとの評価もあるようです(ただ一般には、「CIA、FBIとマフィアが手先となった政府内部の犯行説」というのは根強いが)。

 確かに「大ボス一代記」のようにもなっているところから、本自体マフィアの示威行為ともとれますが、「マフィアと政府はコインの表裏だと」いう著者の言葉にはやはり凄味があり、モンローを"殺害"した場面は、かなりのリアリティがありました。
 マフィアがジョンとロバートのケネディ兄弟に"女性"を仲介したことは事実らしいし(モンローもその1人と考えられ、さらにケネディ大統領とジアンカーナは同じ愛人を"共有"していたことも後に明らかになっている)、本書によれば、ジョンとロバートは同時期にモンローの部屋に出入りしていた...と。

JFK ポスター.jpgJFK.jpgJFK―ケネディ暗殺犯を追え (ハヤカワ文庫NF).jpg 生々しいけれども、それだけについつい引き込まれてしまい、本書とほぼ同時期に訳出された、オリバー・ストーン監督の映画「JFK」('91年/米)の原作ジム・ギャリソン『JFK-ケネディ暗殺犯を追え』('92年/ハヤカワ文庫)よりもかなり「面白く」読めました。
「JFK」ポスター /「JFK [DVD]」/ジム・ギャリソン『JFK―ケネディ暗殺犯を追え (ハヤカワ文庫NF)
 ジム・ギャリソンは、事件当時ルイジアナの地方検事だった人で、偶然ケネディ暗殺に関係しているらしい男を知り、調査を開始するも、その男が不審死を遂げ、そのため彼の仲間だったクレイ・ショウを裁判にかけるというもので(これが有名な「クレイ・ショウを裁判」)、結局彼はこの裁判に敗れるのですが、その後、彼の追及した方向は間違っていなかったことが明らかになっていて、彼は、ケネディ暗殺事件をCIAなどによるクーデター(ベトナム戦争継続派から見てケネディは邪魔だった)により殺されたのだと結論づけています。
 原作はドキュメントであり、結構地味な感じですが、ジム・ギャリソンを主人公に据えた映画の方は面白かった―。
 オリバー・ストーン監督ってその辺り上手いなあと思いますが、その作り方の上手さに虚構が入り込む余地が大いにあるのもこの人の特徴で、司法解剖の場面で検視医の白衣が血に染まっている...なんてことはなかったと後で医師が言ったりしてるそうな。                                    
Executive Action.jpg"EXECUTIVE ACTION"(「ダラスの熱い日」)/「ダラスの熱い日」予告

ダラスの熱い日 - Executive Action.jpg『ダラスの熱い日』(1973)2.jpgダラスの熱い日パンフレット.jpg むしろ、この映画を観て思ったのは、ずっと以前、ケネディ暗殺後10年足らずの後に作られたデビッド・ミラー監督、バート・ランカスター、ロバート・ライアン主演の「ダラスの熱い日(EXECUTIVE ACTION)」('73年/米)で(脚本は「ジョニーは戦場に行った」のダルトン・トランボが担当)、既にしっかり、CIA陰謀説を打ち出しています。
 CIAのスナイパー達が狙撃訓練をする場面から始まり、それを指揮している元CIA高官をバート・ランカスターが演じているほか、ロバート・ライアンが暗殺計画を中心になって進める軍人を演じており、それに右翼の退役将校やテキサスの石油王などが絡むという展開。因みに、私生活では、バート・ランカスターは反戦主義者として知られ、ロバート・ライアンもハト派のリベラリストでした(だから、こうした作品に出演しているわけだが)。

Men Who Killed Kennedy 1988.jpgThe Men Who Killed Kennedy.jpg 当時は1つのフィクションとして観ていましたが、その後に出てきた諸説に照らすと―例えばEngland's Central Independent Televisionが製作したTVドキュメンタリー「Men Who Killed Kennedy 」('88年/英)や、英国エクスボースト・フィルム製作、ゴドレイ&クレーム監督によるチャンネル4のTV番組作品JFK・暗殺の真相(The Day The DrThe-Day-The-Dream-Died-001.jpgeam Died、'88年/英)などを見ると―オズワルドを犯人に仕立て上げる過程なども含め、かなり真相(と言っても未だに解明されているわけではないのだが)に近いところをいっていたのではないかと思いました(映画「JFK」とも重なる部分も多い)。

 これらと比べると、本書『アメリカを葬った男』は、この事件にマフィアが及ぼした影響をアピールしている感じはやはりします(マフィアにとって何らかのメリットがなければ、こんなに身内のことをベラベラ語らないのでは)。でも、面白かった。 

JFK 1991.jpg「JFK」●原題:JFK●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:オリバー・ストーン●製作:A・キットマン・ホー/オリバー・ストーン●脚本:オリバー・ストーン/ザカリー・スクラー●撮影:ロバート・リチャードソン●音楽:ジョンドナルド・サザーランド JFK.jpg・ウィリアムズ●原作:ジム・ギャリソンほか●時間:57分●出演:ケビン・コスナー/トミー・リー・ジョーンズ/ジョー・ペシ/ケヴィン・ベーコン/ローリー・メトカーフ/シシー・スペイセク/マイケル・ルーカー/ゲイリー・オールトコン/ドナルド・サザーランド/ジャック・レモン/ウォルター・マッソー/ジョン・キャンディ/ヴィンセント・ドノフリオ/デイル・ダイ/ジム・ギャリソン/(冒頭ナレーション)マーティン・シーン●日本公開:1992/03●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)

ケビン・コスナー(ジム・ギャリソン)/ドナルド・サザーランド(X大佐)

ダラスの熱い日1.jpgダラスの熱い日パンフレット2.jpg「ダラスの熱い日」●原題:EXECUTIVE ACTION●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:デビッド・ミラー●製作:エドワード・ルイス●脚色:ダルトン・トランボ●撮影:ロバート・ステッドマン●音楽:ランディ・エデルマン ●原案:ドナルド・フリードほか●時間:91分●出演:バート・ランカスター/ロバート・ライアン/ウィル・ギア/ギルバート・グリーン/ジョン・アンダーソン●日本公開:1974/01●配給:ヘラルド映画配給●最初に観た場所:池袋テアトルダイヤ(77-12-24)(評価:★★★☆)●併映:「ジャッカルの日」(フレッド・ジンネマン)/「合衆国最後の日」(ロバート・アルドリッチ)/「鷲は舞いおりた」(ジョン・スタージェス) 「ダラスの熱い日」パンフレット(右)

 「JFK 暗殺の真相」.jpg「JFK 暗殺の真相」●原題:THE DAY THE DREAM DIED●制作年:1988年●制作国:イギリス●監督:ゴドレイ&クレーム●製作:エクスボースト・フィルム●音楽:バスター・フィールド/デビッド・ラザロ●時間:45分●日本公開(ビデオ発売):1992/07●配給(発売元):バップ(評価:★★★☆) 「JFK 暗殺の真相」(日本語吹替版ビデオ[絶版・DVD未発売])

 【1997年文庫化[光文社文庫]】

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