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懐かしさより、これってあの「ウルトラマン」なの? という思いの方が強かった。

シン・ウルトラマン_poster04 - コピー.jpg シン・ウルトラマン 02.jpg シン・ウルトラマン 03.jpg
「シン・ウルトラマン」メフィラス星人&ウルトラマン  西島秀俊/長澤まさみ/斎藤工/有岡大貴/早見あかり

「シン・ウルトラマン」p.jpg 次々と巨大不明生物【禍威獣(カイジュウ)】が現れ、その存在が日常となった日本。通常兵器は全く役に立たず、限界を迎える日本政府は、禍威獣対策のスペシャリストを集結し、【禍威獣特設対策室専従班】通称【禍特対(カトクタイ)】を設立。班長・田村君男(西島秀俊)、作戦立案担当官・神永新二(斎藤工)、非粒子物理学者・滝明久(有岡大貴)、汎用生物学者・船縁由美(早見あかり)が選ばれ、任務に当たっていた。禍威獣の危機が迫る中、大気圏外から突如現れた銀色の巨人。禍特対には、巨人対策のために分析官・浅見弘子(長澤まさみ)が新たに配属され、神永とバディを組むことに―。

「シン・ウルトラマン」1・2・3.jpg 企画・脚本の庵野秀明、監督の樋口真嗣など「シン・ゴジラ」('16年/東宝)の製作陣による第2弾。高く評価する声がある一方で、若い人の間では、TVの「ウルトラマン」を観ていた人たち向けで、「そういう年齢層の人は懐かしさで100点だろうけど、純粋にストーリーとしてはどうか」との声もあったようです(一緒に観に行った息子には感想を聞かなかったが)。

 ただ、TVの「ウルトラマン」を観ていた世代の一人としては、ウルトラマンの復活を喜び、懐かしさを感じると言うよりは、これってあの「ウルトラマン」なの? という思いの方が個人的には強かったです。

「シン・ウルトラマン」4.jpg 最初の方で、巨大不明生物としてゴメスマンモスフラワーぺギラなど「ウルトラQ」の怪獣・怪生物が出てきたのは確かにちょっと懐かしかったけれど、それらをわざわざ【禍威獣(カイジュウ)】と呼ぶ必要があるのかなあ。フツーに怪獣でいいのではないでしょうか。科学特捜隊隊まで【禍特対(カトクタイ)】に改変されてしまって、しかもユニフォームではなくスーツ勤務。学者中心のメンバー構成で、皆パソコンに向かってばかりいるので、スーツなのか。神永がウルトラマンだとすぐにばれてしまうのは、一話完結だから仕方がないのでしょう。

「シン・ウルトラマン」y2.jpg「シン・ウルトラマン」y3.jpg 話が散漫にならないように、「ウルトラマン(第33話)/禁じられた言葉」('66年7月24日放映)のストーリーを主軸に据えているのはいいとして、メフィラス星人の人間の姿を演じる山本耕史が(オリジナ「メフィラス星人.jpgルでは、メフィラス星人は人間サイズの時もメフィラス星人の姿)、ビジネスマンさながらに名刺を出したり、ウルトラマン=神永を演じる斎藤工と二人、居酒屋でサラリーマン同士の商談かアフターファイブみたいに酒を酌み交わしたり、ドラマか昔の映画の1シーンのようブランコで並んで語り合っていたりするのは、パロディか、はたまた何かの間違いかとずっこけました(オリジナルのメフィラス星人も、知能指数1万の割には、子どもを騙すことで地球制覇を目論むという"怪しいおっさん"キャラではあるのだが)。

 浅見弘子を演じる長澤まさみが、気合いを入れるごとに自分の尻を叩く、ハイヒールを履く際にドアップになる、スカートを履いたまま横たわるなど、しばしばフェティシズム的な視点から撮られているのも、今の時代、こんなので大丈夫なのかなと思いました。極めつけは、斎藤工が長澤まさみの匂いを執拗に嗅ぐシーンで、(斎藤工のイメージには合っているのかもしれないが)こんなセクハラをやったら、ウルトラマンのイメージが崩壊します。

「ウルトラマン」f3.jpg「シン・ウルトラマン」n3.jpg 長澤まさみが演じる浅見弘子が巨大化するのは、「禁じられた言葉」で桜井浩子が演じたフジ・アキコ隊員がメフィラス星人により巨大化させられたことへのオマージュですが、このストーリーの流れだけ見ていると、彼女がどうしてそんな目に遭うのか分からないのではないかなあ。自分が観た時は、上映後に「ウルトラマン(第33話)/禁じられた言葉」が上映されたので分かるようになっていましたが、この併映は期間限定のようです。この併映も加味して評価しても、星3つくらいでしょうか(これでも、同じ映画館で観た「トップガン マーヴェリック」('22年/米)よりはいい評価なのだが)。この作品への違和感を通して、自分なりに「ウルトラマン」への思い入れ(?)があることを図らずも再認識させられることになりました。

「シン・ウルトラマン」6.jpg「シン・ウルトラマン」●制作年:2022年●監督:樋口真嗣●脚本:庵野秀明●製作:和田倉和利/青木竹彦/西野智也/川島正規●撮影:市川修/鈴木啓造●音楽:宮内國郎/鷺巣詩郎(主題歌:米津玄師「M八七」)●時間:113分●出演:斎藤工/長toho上野 ウルトラマン・トップガン.jpg澤ま「シン・ウルトラマン」5.jpgさみ/有岡大貴/早見あかり/田中哲司/西島秀俊/山本耕史/岩松了/嶋田久作/益岡徹/長塚圭史/山崎一/和田聰宏/(声の出演)高橋一生/ 山寺宏一/津田健次郎●公開:2022/05●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ上野(スクリーン5)(22-07-12)(評価:★★★)

DVD ウルトラマン VOL.9
「ウルトラマン(第33話)/禁じられた言葉」10.jpg「ウルトラマン(第33話)/禁じられた言葉」03.jpg「ウルトラマン(第33話)/禁じられた言葉」 196702.jpg「ウルトラマン(第33話)/禁じられた言葉」●制作年:1967年●監督:鈴木俊継●脚本:金城哲夫●特殊技術:高野宏一●音楽:宮内国郎●時間:30分●出演:小林昭二/黒部進/石井伊吉(毒蝮三太夫)/二瓶正也/桜井浩子/津沢彰秀/(ゲスト出演)伊藤久哉/川田勝明/中島春雄/岩本弘司/(声)加藤精三(ノンクレジット)/(スーツアクター)古谷敏/扇幸二/中島春雄/渡辺白洋児(ナレーター)石坂浩二●放送局:TBS●放送日:1967/02/26(評価:★★★☆)●放送局:TBS(評価:★★★☆)

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3話ともそれぞれに違った味があって、話としても面白かった。

「偶然と想像」00.jpg
「偶然と想像」
魔法(よりもっと不確か)
「偶然と想像」第1話).jpg ファッションモデルの芽衣子(古川琴音)は、撮影スタッフの一人で親友のへアメイクアーティストつぐみ(玄理)と、都心での撮影が終わって一緒にタクシーに乗る。つぐみは最近出会った運命の相手との夜を話し始める。その相手は、若くしてビジネスで成功したハンサムな起業家で、ふとしたことで出会い、話し始めると趣味や価値観がことごとく一致していることに二人は驚喜し、どれだけ長く話しても飽きるということがく、会ったその日の夜に、これがずっと探していた運命の相手だとお互いに確信、その確信はあまりに揺るぎなかったので、肉体的な接触も要らず、目を見ているだけで満ち足りた時間を過ごすことができたと。芽衣子はこの話に喜んで耳を傾け、つぐみを羨んでみせ、幸運を祝福する。しかし幸福に顔を輝かせているつぐみを家の前で降ろすと、芽衣子は運転手に、いま来た道を後戻りするよう伝え、あるビルの前で降りる。オフィスに入ると、青年が一人残って働いている。青年と芽衣子は、旧知の仲らしい。しばらく言葉を交わしたのち、なぜか芽衣子はいま聞いたばかりのつぐみの体験を語り始める。その男は、つぐみの元恋人の和明(中島歩)だった―。

扉は開けたままで
「偶然と想像」第2話).jpg 大学生の佐々木(甲斐翔真)は、フランス文学教授の瀬川(渋川清彦)を深く憎んでいた。瀬川の授業で単位が足りず、佐々木は必死になって瀬川の前で土下座までしてみせたのだが、謹厳な瀬川は頑として聞き入れず、佐々木は決まっていた大手企業への就職を棒に振ってしまったのだった。佐々木は、同じ大学に通っている奈緒と(森郁月)いう人妻との情事に溺れるようになったが、奈緒と抱き合っているとき、あの瀬川が書いた小説で芥川賞を受賞したというTVニュースを目にする。佐々木は瀬川へ復讐するため、奈緒を使って瀬川にハニートラップを仕掛けることを企てる。瀬川の研究室を訪ねた奈緒は、自分は瀬川の大ファンなのだと告げ、今回の受賞作を朗読させてほしいと申し出る。あくまで冷ややかに応じる瀬川だったが、その小説には過激なセックスシーンが含まれており、朗読がその場面にさしかかって淫猥な言葉を奈緒が淡々と読み上げ始めると―。

もう一度
「偶然と想像」第3話).jpg 2019年、未知の強力なコンピュータ・ウィルスが大発生し、インターネットは遮断され、世界は郵便と電話をつかった古いシステムへ逆戻りしていた。女子校の同窓会に参加するため故郷の仙台市にやってきた夏子(占部房子)は、20年ぶりに会った顔ぶれとは全く話が噛み合わず、若干の落胆を覚えつつ東京へ戻ろうとして、仙台駅のエスカレーターで同世代の女(河井青葉)とすれちがう。夏子が驚いて駆け寄ると、女も思わぬ再会に驚いている。夏子が同窓会のために仙台に来たのだというと、女は招待状を受け取っていないという。あの社会の大混乱が原因かもしれない。女は、どこかでゆっくり話そうと近くの自宅へ夏子を招く。自宅に着いて、二人は高校時代の思い出を少しずつ語り始める。しかし細かなところで話は噛み合わず、話を続けるうちにその齟齬はどんどん大きくなってくる―。

「偶然と想像」b.jpg 濱口竜介監督の2021年に公開された3つの短編からなるオムニバス映画で、2021年(3月)、第71回「ベルリン国際映画祭」に出品され、最高賞に次ぐ銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した作品(「ロカルノ国際映画祭」で濱口竜介監督の「ハッピーアワー」を推したイタリア人ディレクターのカルロ・シャトリアンが、2020年からは「ベルリン国際映画祭」のディレクターを務めていたという巡り合わせもあった)。前作「寝ても覚めても」('18年)の後、濱口監督のはいくつかの作品製作を進めていたものの、コロナ禍によるスケジュールの混乱で、本作「偶然と想像」は長編「ドライブ・マイ・カー」('21年8月公開)と並行して撮影されたとのことです。

「偶然と想像」第1話0).jpg 第1話「魔法(よりもっと不確か)」は、「偶然と想像」というタイトルに最も沿っていたように思います。親友の"おのろけ"に近い打ち明け話に出てくる男が実は自分の元カレだったという偶然。そこからの主人公・芽衣子の行動がちょっとエグくて、最後、「ああ、とうとうやっちゃったなあ」と思って観ていたら―。タクシーの中でのろけ話を話すつぐみとそれを聴く芽衣子のやり取りの演出が巧みで、本当にプライベートな会話のようであり、この作品の中で最も"濱口調"が冴えている箇所かも。このリアティが後の展開に効いているのだと思いました。

「偶然と想像」第2話0).jpg 第2話「扉は開けたままで」は、瀬川と瀬川を色仕掛けで陥れようとする奈緒のやり取りが、緊迫感の中にもちょっとユーモラスなところもあって良かったです。性に奔放だった奈緒と(彼女が佐々木のハニートラップの企てに乗ったのも、佐々木のためと言うよりそのあたりに動機があるのでは)、後日譚に現れる彼女のやつれた感じのギャップが良く出ていたなあ。メールの誤送信がすべてを変えてしまったということでしょう。あの時、ヤマトだか佐川だかの宅急便が来なければ...。

「偶然と想像」第3話0).jpg.png 第3話「もう一度」は、夏子が出会って家まで行って羊羹まで呼ばれた女性はあやという名で、夏子が思っていた相手とは別人だったという、互いに20年前の級友に出会ったと思ったら、互いに勘違いしていたという話。でも、そこからの展開がなかなか楽しかったです。演技性を排した演出をする濱口監督作ですが、その中で、夏子とあやは、互いに相手が思っていた人物を演じようとするという、濱口マジックの"上級編"という印象を受けました。第2話がちょっとやるせない結末だっただけに、第3話でほんわかした感じにしたのでしょうか。こうなると、並べ方も重要になってきます。コンピュータ・ウィルス云々の話は要らなかったのでは。

「偶然と想像」6に.jpg 3話ともそれぞれに違った味があって、話としても面白かったです。主に、フツーに生きている人に起こりうることを映画にしているわけで、この映画に着眼した「ベルリン国際映画祭」の審査員のセンスもいい。濱口監督は昨年['21年]銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞したばかりですが、今年['21年]2月開催の第72回「ベルリン国際映画祭」のコンペティション部門の国際審査員団の一人に抜擢されています。

「偶然と想像」●英題:WHEEL OF FORTUNE AND FANTASY●制作年:2021年●監督・脚本:濱口竜介●製作:高田聡●撮影:飯岡幸子●音楽:阿部海太郎●●時間:121分●出演:(第1話)「魔法(よりもっと不確か)」古川琴音/中島歩/つぐみ/(第2話)「扉は開けたままで」渋川清彦/森郁月/甲斐翔真 /(第3話)「もう一度」占部房子/河井青葉●公開:(ドイツ)2021/03/(日本)2021/12●配給:Incline●最初に観た場所:渋谷・Bunkamura ル・シネマ2(22-03-27)(評価:★★★★)
  
  
Bunkamura ル・シネマ1.jpgBunkamura ル・シネマ内.jpgBunkamura ル・シネマ2.jpgBunkamura ル・シネマ1・2 1989年9月、渋谷道玄坂・Bunkamura6階にオープン  
  
    

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良かった。村上春樹作品がモチーフだが、もう一つの原作は「ワーニャ叔父さん」か。

「ドライブ・マイ・カー」2021.jpg「ドライブ・マイ・カー」01.jpg 「ドライブ・マイ・カー」02.jpg
「ドライブ・マイ・カー」西島秀俊/三浦透子
「ドライブ・マイ・カー」12.jpg 舞台俳優で演出家の家福(西島秀俊)は、妻・音(霧島れいか)と穏やかに暮らしていた。そんなある日、思いつめた様子の妻がくも膜下出血で倒れ、帰らぬ人となる。2年後、演劇祭に参加するため広島に向かっていた彼は、寡黙な専属ドライバーのみさき(三浦透子)と出会い、これまで目を向けることのなかったことに気づかされていく―。

 2021年公開の濱口竜介監督の商業映画3作目となる作品で、妻を若くして亡くした舞台演出家を主人公に、彼が演出する多言語演劇の様子や、そこに出演する俳優たち、彼の車を運転するドライバーの女性との関わりが描かれています。

『ドライブ・マイ・カー』文庫.jpg「ドライブ・マイ・カー」22.jpg 村上春樹の短編集『女のいない男たち』('14年/文藝春秋)所収の同名小説「ドライブ・マイ・カー」より主要な登場人物の名前と基本設定を踏襲していますが、家福の妻・音が語るヤツメウナギや女子高生の話は同短編集所収の「シェエラザード」から、家福が家に戻ったら妻・音が見知らぬ男と情事にふけっていたという設定は、同じく「木野」から引いています(家福の妻・音はクモ膜下出血で急死するのではなく、原作では、物語の冒頭ですでにガンで亡くなっている設定となっている)。

「ドライブ・マイ・カー」ws2021.jpg 映画は、原作では具体的内容が書かれていないワークショップ演劇に関する描写が多く、そこで演じられるアントン・チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」の台詞を織り交ぜた新しい物語として構成されていて、村上春樹作品がモチーフではあるけれど、もう一つの原作は「ワーニャ叔父さん」であると言っていいくらいかもしれません。

「ドライブ・マイ・カー」32.jpg テーマ的にも、喪失感を抱きながらも人は生きていかねばならないという意味で、「ワーニャ叔父さん」に重なるものがあります。原作は短編であるためか、家福が、妻・音の内面を知り得なかったことに対して、みさきが「女の人にはそういうところがあるのです」と解題的な(示唆的な)言葉を投げかけて終わりますが、映画ではこのセリフはなく、より突っ込んだ家福の心の探究の旅が続きます。

 それは、演劇祭での上演直前にしての主役の高槻の事件による降板から、上演中止か家福自身が主役を演じるか迫られたのを機に、どこか落ち着いて考えられるところを走らせようと提案するみさきに、家福が君の育った場所を見せてほしいと伝えたことから始まり、二人は広島から北海道へ長距離ドライブをすることに。このあたりはまったく原作にはない映画のオリジナルです。

「ドライブ・マイ・カー」6jpg.png 北海道へ向かう車中で、家福とみさきは、これまでお互いに語らなかった互いの秘密を明かしますが、何だか実はみさきの方が家福より大きな秘密を追っていたような気がしました。それを淡々と語るだけに、重かったです。母親の中にいた8歳の別人格って、「解離性同一性障害」(かつては「多重人格性障害」と呼ばれた)だったということか...。

 喪失感を抱えながらも生きていかねばならないという(それがテーマであるならば、村上春樹からもそれほど離れていないと言えるかも)、ちゃんと「起承転結」がある作りになっていて、商業映画としてのカタルシス効果を醸しているのも悪くないです(この点は村上春樹が短編ではとらな「ドライブ・マイ・カー」7.jpgいアプローチか)。言わば、ブレークスルー映画として分かりやすく、ラストのみさきが韓国で赤いSAABに乗って買い物にきているシーンなどは、彼女もブレークスルーしたのだなと思わせる一方で、映画を観終わった後、「あれはどういうこと?」と考えさせる謎解き的な余韻も残していて巧みです。

 演出が素晴らしいと思いました。もちろん脚本も。絶対に現実には話さないようなセリフを使わないということで、脚本を何度も書き直したそうですが、「演技」させない演技というのも効いていたように思います。演劇ワークショップ(原作にはワークショップの場面は無い)での家福の素人出演者に対する注文に、濱口監督の演出の秘密を探るヒントがあったようにも思いますが、濱口監督自身、これまで素人の出演者に対してやってきた巷で"濱口メソッド"といわれるやり方が、プロの俳優でも使えることを知ったと語っています。韓国人夫婦の存在も良くて、原作の膨らませ方に"余計な付け足し"感が無かったです。「手話」を多言語の1つと位置付けているのも新鮮でした。

「ドライブマイカー」カンヌ・アカデミー.jpg 第74回「カンヌ国際映画祭」で脚本賞などを受賞、第87回「ニューヨーク映画批評家協会賞」では日本映画として初めて作品賞を受賞、「全米映画批評家協会賞」「ロサンゼルス映画批評家協会賞」でも作品賞を受賞(これら3つ全てで作品賞を受賞した映画ととしては「グッドフェローズ」「L.A.コンフィデンシャル」「シンドラーのリスト」「ソーシャル・ネットワーク」「ハート・ロッカー」に次ぐ6作品目で、外国語映画では史上初。「全米映画批評家協会賞」は主演男優賞(西島秀俊)・監督賞・脚本賞も受賞、「ロサンゼルス映画批評家協会賞」は脚本賞も受賞)、第79回「ゴールデングローブ賞」では非英語映画賞(旧外国語映画賞)を日本作品としては市川崑監督の「」(1959)以来62年ぶりの受賞、第94回「アカデミー賞」では、日本映画で初となる作品賞にノミネートされたほか、監督賞(濱口)・脚色賞(濱口、大江)・国際長編映画賞の4部門にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞しています(国内でも「キネマ旬報ベスト・テン」第1位で、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」や「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」、「芸術選奨」(濱口)を受賞)。

まさに、一気に映画界のホープとなった感がありますが、この1作をだけでも相応の実力が窺える作品でした。原作者の村上春樹にとっては、やっと自分の作品を映画化するに相応しい監督に巡り合ったという感じではないでしょうか。
「ドライブ・マイ・カー」朝日.jpg 
「朝日新聞」2022年3月28日夕刊

「ドライブ・マイ・カー」パンフレット.jpg「ドライブ・マイ・カー」●英題:DRIVE MY CAR●制作年:2021年●監督:濱口竜介●製作:山本晃久●脚本:濱口竜介/大江崇允●撮影:四宮秀俊●音楽:石橋英子●原作:村上春樹●時間:179分●出演:西島秀俊/三浦透子/霧島れいか/岡田将生/パク・ユリム/ジン・デヨン/ソニア・ユアン(袁子芸)/ペリー・ディゾン/アン・フィテ/安部聡子●公開:2021/08●配給:ビターズ・エンド●最初に観た場所:TOHOシネマズ上野(スクリーン7)(22-03-17)(評価:★★★★☆)

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