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復活したショーン・コネリーほか俳優陣だけ見ていてもまずます愉しめる。レトロ感も。

ネバーセイ・ネバーアゲイン.jpgネバーセイ・ネバーアゲイン b1.jpg メフィスト vhs.jpg ナインハーフ.jpg
ネバーセイ・ネバーアゲイン [DVD]」(バーニー・ケイシー/ショーン・コネリー/キム・ベイシンガー)/「メフィスト」VHS(クラウス・マリア・ブランダウアー)/「ナインハーフ [DVD]」(ミッキー・ローク/キム・ベイシンガー)
ネバーセイ・ネバーアゲイン  c.jpg 時は冷戦最中、元英国秘密情報部MI6の諜報員ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)は、スパイ活動を一時引退していが、新たな上司のM(エドワード・フォックス)から新たに命令を受ける。国際的犯罪組織"スペクター"のNo.1メンバー、マキシミリアン・ラルゴ(クラウス・マリア・ブランダウアー)が、2つの核弾頭を強奪したのだ。これは、スペクターの首領で、No.2のブロフェルド(マックス・フォン・シドー)の新ネバーセイ・ネバーアゲイン  12c.jpgたな作戦「アラーの涙」の一環だった。核弾頭を取り戻す命令を受けたボンドは、ラルゴを追ってバハマへ向かうことに。バハマに到着したボンドは、ラルゴの部下で殺し屋ファティマ(バーバラ・カレラ)に殺されそうになる。しかし、2度の暗殺の危機を切り抜けて、なんとか生き残る。さらに、ニースのカジノでドミノ(キム・ベイシンガー)という女性に出会ったボンドは、ドミノの兄ジャック(ギャヴァン・オハーリー)が、核弾頭を手に入れるためにラルゴに殺されたことを明かす。その後、ミサイルの一つがワシントンの大統領のもとにあると知ったボンドは本部に通報、引き続きもう一つのミサイルの行方を追うが―。

ネバーセイ・ネバーアゲイン b0.jpgネバーセイ・ネバーアゲイン b3.png 1983年公開のアーヴィン・カーシュナー監督作で、ジェームズ・ボンドの映画の制作会社イーオン・プロダクションズとは別の会社の制作であるため。007シリーズとしては番外編になります。初代ジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリー(1930 - 2020/90歳没)が「007 ダイヤモンドは永遠に」('71年/英・米)から12年ぶりの復活、7回目にして最後のボンド役を演じました(原題の意味は「ボンド、やめるなんて言わないで」ということらしい)。内容は1965年に公開された4作目「007 サンダーボール作戦」のリメイクですが、使用権の問題のためか、いつものシリーズとオープニングが違ったり(ガンバレル(銃口)のシークエンスが無い)、音楽がミシェル・ルグラン(1932 - 2019/86歳没)だったりして、少しだけ雰囲気が違います。でも、53歳のショーン・コネリーがアクションも含め頑張っていて(後ろから見ると髪が薄いのが分かるが)悪くなかったと思います。階段を軽快に上り下りするところがややわざとらしかったが(笑)、上半身裸になって落ちない肉体美を見せたりしています。

ネバーセイ・ネバーアゲイン f1.jpgクラウス・マリア・ブランダウアー2.jpg 敵のラルゴ役のクラウス・マリア・ブランダウアは、主演作であるイシュトバーン・サボー監督の「メフィスト」('81年/西独・ハンガリー)を新宿のシネマスクウェア東急で'82年に観ました。ナチス政権下で権力に翻弄される実在した「ファウスト」の名優グリュントゲンスをモデルにしたクラウスクラウス・マリア・ブランダウアー メフィスト.jpg・マンの小説の映画化作品(第34回カンヌ国際映画祭「脚本賞」受賞作)でしたが、そうした芸術色の強い映画(個人的評価は★★★☆)に出ていた俳優が、まさかその後すぐジェームズ・ボンド映画に出るとは思ってもみませんでした(言語も違ったし)。ただし、この作品では、彼、クラウス・マリア・ブランダウアーとショーン・コネリーとの心理戦的演技が、当時の典型的なボンド映画よりも感情に訴えかけるものがあると評価されて好評を博し、映画の商業的な成功にも繋がっています。クラウス・マリア・ブランダウアーはその後も活躍を続け、シドニー・ポラック監督の「愛と哀しみの果て」('85年/米)で双子の役を1人で演じてゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞するなど、ハリウッドで成功を収めた数少ないオーストリア人俳優とされています。

ネバーセイ・ネバーアゲイン sd.jpgマックス・フォン・シドー 2.jpg スペクターの首領ブロフェルドにマックス・フォン・シドー(1929 - 2020/90歳没)で、ドナルド・プレザンス(「007は二度死ぬ」('67年))、テリー・007ブロフェルド.jpgサバラス(「女王陛下の007」)('69年))、チャールズ・グレイ(「ダイヤモンドは永遠に」('71年))に続いての配役。マックス・フォンシドーも「第七の封印」('57年)などイングマール・ベルイマン監督の映画で常連だった名優ですが、この頃は既に「フラッシュ・ゴードン」('80年/米)の「悪の帝王」ミン皇帝を演じていたりしました。以降もハリウッド映画でのこの手の役が多くなり、ジョン・ミリアス監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「コナン・ザ・グレート」('82年/米)では邪フォンシドー.jpg教の王と対峙する善の王オズリック王の役でしたが、スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演の「マイノリティ・リポート」('02年/米)では、主人公の上司にあたる犯罪予防局の局長でありながら、実は陰謀の"黒幕"だったという役でした。ショーン・コネリーが亡くなったのが昨年['20年]10月にでしたが、マックス・フォンシドーも昨年3月に、ショーン・コネリーと同じく90歳で亡くなっています。

ネバーセイ・ネバーアゲイン  かれら.jpgネバーセイ・ネバーアゲイン c1.jpg ボンドガールの一人は、スペクターの女殺し屋(スペクターNo.12)ファティマを演じたバーバラ・カレラ(1951年生まれ)。ファティマは最後までボンドを追い回して危機に落とし入れるネバーセイ・ネバーアゲイン c2.jpgも、Q(アレック・マッコーエン)が開発した万年筆型ロケットで爆殺されます。ボンドを追いつめた際に、自分が最高の女だったとボンドに書き付けを要求すエンブリヨ.jpgドクター・モローの島7.jpgるシーンが見せ場でしたが、結局それが仇となった(笑)。バーバラ・カレラはこの「ネバーセイ・ネバーアゲイン」の出演が一番のキャリアとされていますが、「エンブリヨ」('76年)、「ドクター・モローの島」('77年)といった作品の彼女に思い入れがある人もいるかと思います。
エンブリヨ [DVD]」('76年)、「ドクター・モローの島」('77年)

ネバーセイ・ネバーアゲイン k1.jpgネバーセイ・ネバーアゲイン k2.jpg もう一人は、ラルゴの愛人でどうやらラルゴに殺害されたジャックの妹ドミノを演じたキム・ベイシンガ(1953年生まれ)で、こちらは敵側からボlaコンフィデンシャル.jpgンド側に寝返る(これはシリーズのいつものお約束通り)言わばヒロイン役です。当時はバーバラ・カレラに比べれば小娘みたいな感じですが、その後、「ナインハーフ」('85年)で大胆な演技が話題を呼んでスターの仲間入りを果たし、「バットマン」('89年)でヒロイン役に抜擢され、「L.A.コンフィデンシャル」('97年)で往年の女優ヴェロニカ・レイクを彷彿とさせる役柄でアカデミー助演女優賞受賞と著しい活躍ぶりを見せました。
L.A.コンフィデンシャル [AmazonDVDコレクション]」('97年)

「ナインハーフ.jpgナインハーフes.jpg 個人的には「ナインハーフ」はイマイチだったかも。原題は「9週間半」。監督は「フラッシュダンス」('83年)のエイドリアン・ラインで、相変わらず映像には凝っていて、哲学的な語り口を装っていますが、本質はエンターテイメントではなかったかなあ(キム・ベイシンガーのボディにばかり目が行く。この頃のミッキー・ロークってなぜか好きになれない)。

あの日、欲望の大地で dvd.jpgあの日、欲望の大地で 574_01.jpg キム・ベイシンガーはその25年後、ギジェルモ・アリアガ監督の「あの日、欲望の大地で」('08年/米)でも、ジェニファー・ローレンス演じるマリアーナの母親役で、隣町に住むメキシコ人との不倫に溺れる女性を演じてスレンダーな背中&お尻を見せていますが、当時55歳でスクリーンでヌードを見せることができたというのはたいしたものかも。

アカデミー賞 キム・ベイシンガー.jpg そう言えばキム・ベイシンガーは、アカデミー賞の授賞式でのプレゼンターとして舞台に立った際に(その年の作品賞は「ドライビング・ミス・デイジー」('89年)だった)、「今年のノミネート作品ほど素晴らしい作品が揃った年はない。しかし一つだけ最高の傑作をアカデミーは忘れている」と発言して、スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」('89年)を取り上げ、「この映画には真実がある」と訴えています(キム・ベイシンガーも「ドライビング・ミス・デイジー」が良くないとは言っていない。しかしながら、この頃からアカデミーのある種"偏向"を見抜いていたとも言える)。

ネバーせい え」.jpgジャッカルの日 73米.jpg この「ネバーセイ・ネバーアゲイン」では、これら準主役級のほかに、Mの役が「ジャッカルの日」('73年)の"ジャッカル"ことエドワード・フォックスであったり、ボンドの同僚スパイ(と言っても事務方か)のナイジェル・スモール=フォーセット役で"ミスタービーン"ことローワン・アトキンソン2012年ロンドン・オリンピック開会式の「炎のランナー」のパロディは最高だった)が登場していたりと(アトキンソンはこの時が映画初出演、ラストでボンドにプールに投げ込まれるというオチがある)、俳優陣だけ見ていてもまずます愉しめる作品でした(評価★★★★は、レトロ感も含めて星半分おまけしての評価)。
ネバーセイ・ネバーアゲイン la1.jpg ネバーセイ・ネバーアゲイン la2.jpg

「ネバーセイ・ネバーアゲイン」 g.jpgネバーセイ・ネバーアゲイン  tj.jpg「ネバーセイ・ネバーアゲイン」●原題:NEVER SAY NEVER AGAIN●制作年:1983年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:アーヴィン・カーシュナー●製作:ジャック・シュワルツマン●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ミシェル・ルグラン●原作:イアン・フレミング●時間:134分●出演:ショーン・コネリー/クラウス・マリア・ブランダウアー/マックス・フォン・シドー/バーバラ・カレラ/キム・ベイシンガー/バーニー・ケイシー/アレック・マッコーエン/エドワード・フォックス/ギャヴァン・オハーリー/ローワン・アトキンソン/ロナルド・ピックアップ/ヴァレリー・レオン/ミロス・キレク/パット・ローチ/アンソニー・シャープ/プルネラ・ジー●日本公開:1983/12●配給:松竹富士=ヘラルド●最初に観た場新宿ローヤル 地図.jpg新宿ローヤル.jpg新宿ローヤル劇場 88年11月閉館 .jpg所:新宿ローヤル(84-09-04)(評価:★★★★)
新宿ローヤル劇場(丸井新宿店裏手)1955年「サンニュース」オープン、1956年11月~ローヤル劇場、1988年11月28日閉館[モノクロ写真:高野進 『想い出の映画館』('04年/冬青社)/カラー写真:「フォト蔵」より]

メフィスト 2.jpgメフィスト3.jpg「メフィスト」●原題:MEPHISTO●制作年:1981年●制作国:西独・ハンガリー●監督:イシュトバン・サボー●脚本:イシュトバン・サボー/ペーテル・ドバイ●撮影:ラホス・コルタイ●音楽:ゼンコ・タルナシ●原作:クラウス・マン●「メフィスト」09.jpg時間:145 分●出演:クラウス・マリア・ブランダウアー/クリスティナ・ヤンダ/イルディコ・バンシャーギィ/カーリン・ボイド/ロルフ・ホッペ/ペーター・アンドライ/クリスティーネ・ハルボルト●日本公開:1982/04●配給:大映インターナショナル●最初に観た場所:新宿・シネマスクウェア東急(82-05-01)(評価:★★★☆)
シネマスクエアとうきゅうMILANO2L.jpgシネマスクエアとうきゆう.jpgシネマスクウエアとうきゅう 内部.jpgシネマスクエアとうきゅう 1981年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」3Fにオープン。2014年12月31日閉館。
 
ナインハーフ 3.jpgナインハーフ2.jpg「ナインハーフ」●原題:NINE 1/2 WEEKS●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:エイドリアン・ライン●製作:アンソニー・ルーファス・アイザック/キース・バリッシュ●脚本:パトリシア・ノップ/ザルマン・キング●撮影:ピーター・ビジウ●音楽:ジャック・ニッチェ●原作:エリザベス・マクニール●時間:117分●出演:ミッキー・ロー/キム・ベイシンガー/マーガレット・ホイットンン/ドワイト・ワイスト/クリスティーン・バランスキー/カレン・ヤング/ロン・ウッド●日本公開:1986/04●配給:日本ヘラルド(評価:★★★)

Charlize Theron/Kim Basinger/Jennifer Lawrence
あの日、欲望の大地で 8.jpgキム・ベイシンガー欲望の大地.jpg「あの日、欲望の大地で」●原題:THE BURNING PLAIN●制作年:2008年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ギジェルモ・アリアガ●製作:ウォルター・パークス/ローリー・マクドナルド●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:ハンス・ジマー/オマール・ロドリゲス=ロペス●時間:106分●出演:シャーリーズ・セロン/キム・ベイシンガー/ジェニファー・ローレンス/ホセ・マリア・ヤスピク/ジョン・コーベット/ダニー・ピノ/テッサ・イア/ジョアキム・デ・アルメイダ/J・D・パルド/ブレット・カレン●日本公開:2009/09●配給:東北新社●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-09-07)(評価:★★★★)
 

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ジョン・ヒューストン監督の夢を追いかける男を描いた映画の系譜上にある作品。

王になろうとした男 pannhuretto .jpg になろうとした男 dvd.jpg 王になろうとした男0s.jpg 王になろうとした男3s.jpg
映画パンフレット 「王になろうとした男」 監督 ジョン・ヒューストン/「王になろうとした男 [DVD]」マイケル・ケイン/クリストファー・プラマー/ショーン・コネリー

王になろうとした男7s.jpg 英領インド帝国ラホールの北極星新聞の記者キップリング(クリストファー・プラマー)の事務所に、乞食のような男が現れ、「君の前で契約を交わした」と言われて、キップリングは彼が3年前に出会ったカーネハン(マイケル・ケイン)だと気づく。キップリングは、契約を交わしたもう一人の男王になろうとした男5s.jpgドレイボット(ショーン・コネリー)の行方を訊くが、カーネハンは彼は死んだと言い、彼らの「王になる」という夢の顛末を語る。3年前にカーネハンは、偶然にドレイボット、カーネハンと知り合うが、二人は「王になる」という夢を抱いていて、キップリングを証人に「王になるまでは女と酒を断つ」という契約を交わしたのだ。銃を入手した二人はアフガニスタン辺境カフィリスタンに向けて出発、何とかカフィリスタンに到達した二人は、女性を襲う仮面の部族に出くわし銃で追い払う。襲われていた部族の城に英語を話す男ビリー(サイード・ジャフリー)がいて、二人はビリーを仲間に引き込み、首長を丸め込み英国式軍事訓練を施し、カフィリス王になろうとした男ages.jpgタン支配を企む。仮面の部族に戦争を仕掛け降伏に追い込むが、その際、ドレイボットの胸に矢が命中するも、ベルトに当たり王になろうとした男as.jpg命拾いする。それを見た部族たちは、ドレイボットが、伝説で語られる大昔カフィリスタンを征服した神シカンダー(アレクサンダー大王)の息子だと信じる。カーネハンは伝説を利用してドレイボットを「神の息子」に仕立て上げ、戦わずに周辺部族を従属させるが、聖都シカンダルグルの大司祭に出頭を命じられる。大司祭は「本当の神か確かめる」としてドレイボットを剣で刺そうとするが、彼がフリーメイソンの紋章を所持しているのを見てシカンダーの息子として認める。祭壇に刻まれた古来の紋章は、フリーメイソンのと同じ意匠だった。「シカンダー2世」としてカ王になろうとした男 2s.jpgフィリスタン王に即位したドレイボットは人々から崇められ、シカンダーが残した莫大な財宝を手に入れる。悲願達成を喜ぶカーネハンは、「財宝を手にインドに戻ろう」と提案するが、王座の魅力に憑りつかれたドレイボットは、留まって美女ロクサネ(シャキーラ・ケイン)を王妃に迎えることを決める。「神と人間の結婚」に高僧は反発し、カーネハンも正体の露見を恐れて反対するが、ドレイボットは聞き入れず強引に結婚を宣言する。カーネハンはドレイボットに別れを告げて出発しようとするが、懇願されて結婚式だけは参列する。式の際に、「神に愛された女は灰になる」という言い伝えを信じたロクサネは、恐怖のあまりドレイボットの頬を噛む。不死身のはずのドレイボットから血が流れる姿を見た大司祭らは、彼が神を騙る偽物だと気づき、二人は怒り狂う群衆から逃れようとするが―。

ラドヤード・キップリング.jpg 1975年公開のアメリカ・イギリス映画で、『ジャングル・ブック』などで知られるノーベル文学賞受賞作家のラドヤード・キップリング(1865-1936)の同名小説の映画化作品。キップリングは英国人で初めての(1907年)、且つ史上最年少(41歳)でのノーベル文学賞受賞作家です。ジョン・ヒューストン監督はキップリングの愛読者で、「王になろうとした男」は王になろうとした男2s.jpg20年来の念願の企画だったそうです。当初はハンフリー・ボガートとクラーク・ゲイブルが主演候補でしたが、ゲイブルの死で頓挫し、後にポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの主演で企画が再スタートしまたが、ポール・ニューマンが英国人を主演に据えるべきだと主張し、マイケル・ケインとショーン・コネリーになったとか。ポール・ニューマンの主張は正しかったように思います。

王になろうとした男es.jpg 途中まで結構コミカルなシーンがあるために、ラストのトレイボットが英国の歌を歌いながら吊り橋を渡っていくシーンは一気に悲壮感が増します。結局、「王」になるつもりが「神」にまでなってしまって、それがトレイボットに災いしました。ジョン・ヒューストン自身は、「この映画にも欠点はないとはいえない。でもそんなことを誰が気にするだろうか。これは遮二無二前に突き進む映画である。前方の瀑布に向かってひたすら泳いでいくそういう映画なのである」と述べています。結末こそ悲壮感が漂いますが、夢を追いかける生き方をした男を肯定的に捉えたと言うか、むしろ讃えた映画なのでしょう。

黄金 002.jpgマルタの鷹 b.jpg そう言えば、同監督の「マルタの鷹」('41年)でも、ハンフリー・ボガート演じるサム・スペードは、"マルタの鷹"の争奪に明け暮れる男達を警察に引き渡しながらも、"鷹"を手に取った刑事の「重いな、これは何だ」という問いに「夢のかたまりさ」と答えているし、「黄金」('48年)はまさに、一獲千金を夢見てシエラ・マドレ山中に金鉱を求める男達の話でした。その意味では、「マルタの鷹」「黄金」の流れを汲むものがあると思います。

王になろうとした男0as.jpg 原作であるラドヤード・キップリングの短編小説「王になろうとした男」(1888)(「王になろうとした男」(『諸国物語』('08年/ポプラ社)所収)/「王を気取る男」(『キプリング・インド傑作選』('08年/鳳書房)所収))は、冒険家ジェームズ・ブルックとジョシア・ハーランの二人の経験を元にしていて、ジェームズ・ブルックは、ボルネオ島にあるサラワクで白人王に成った英国人であり、ジョシア・ハーランは、ゴール王子の称号を、彼自身のみ成らず、彼の子孫インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説es.jpgにまで与えられた米国人冒険家でした。こうした秘境に冒険し、お宝や理想郷を求める話は、同じく英国作家のジェームズ・ヒルトンの『失われた地平線』(1933)などに受け継がれ(『失われた地平線』は1937年にフランク・キャプラ監督で映画化されている)、更には、フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)や、スティーヴン・スピルバーグ監督の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」('81年/米)をはじめとするインディ・ジョーンズ・シリーズなどにも影響を与えているように思います。「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年)

 「王になろうとした男」の舞台カフィリスタンはアフガニスタンとパキスタンの国境付近で、その谷に住むカラーシャ族は独自の宗教を信仰するため「異教(カフィール)徒の地=カフィリスタン」と呼ばれ、人々は白い肌、青い瞳の特徴を持ち、古代マケドニアの将軍アレキサンダー大王の軍隊の末裔という伝説があるそうです。但し、撮影の大半はモロッコで行われたとのことです。カフィリスタンの首長や司祭を演じた俳優はこの作品しか出演記録がないので、モロッコでの現地調達だったのではないでしょうか。

王になろうとした男mages.jpg王になろうとした男ges.jpg ドレイボットが結婚式を挙げる相手のロクサネ役は、ロアルド・ダールとパトリシア・ニールの娘テッサ・ダール(1957年生まれ)が予定されていましたが、ジョン・ヒューストンがよりアラブ的な女性を求め、「私たちはどこかでアラブの姫を探さなければいけない」という話をマイケル・ケインとした食事した時に話した際に、同席したマイケル・ケインの妻シャキーラ・ケイン(1947年生まれ)が南米ガイアナ出身でエキゾチックな容貌だったため、ヒューストンが彼女を説得してロクサネ役に起用したそうです。減量や歯の矯正までして撮影に備えたというテッサ・ダールには気の毒ですが、演技力より容貌の方が重要だったということでしょう。モデル出身のシャキーラ・ケインも"Carry on Again Doctor" (1969)などにノンクレジットのチョイ役で出ている他はこの作品ぐらいしか出演記録が無いテンポラリー(特別出演)で(アイーシャと呼ばれていた頃、英APフィルムズの「謎の円盤UFO」(1970)というSFテレビドラマにアイーシャ・ジョンソン少尉役で出ていて、これがマイケル・ケインの目にとまり二人の結婚に至った)、こちらは"現地調達"ならぬ"自前調達"といったところでしょうか。

SHAKIRA CAINE in CARRY ON AGAIN DOCTOR (1969)/THE MAN WHO WOULD BE KING (1975)
SID JAMES <font color=deeppink><strong>SHAKIRA CAINE</strong></font> & JIM DALE CARRY ON AGAIN DOCTOR (1969) .jpg Shakira Caine .jpg
アイーシャ(in「謎の円盤UFO」)=シャキーラ・ケイン/マイケル・ケイン in「鷲は舞いおりた」('76年/英)
アイーシャ・ジョンソン少尉.jpg シャキーラ ケインSH.jpg 鷲は舞いおりた ケイン サザーランド 2 .jpg

クリストファー・プラマー in 「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)/「王になろうとした男」(1975)/「手紙は憶えている」(2015)
クリストファー・プラマー サウンド・オブ・ミュージック.jpg クリストファー・プラマー 王になろうとした男.jpg 手紙は憶えている .jpg

The Man Who Would Be King (1975).jpg王になろうとした男5.jpg「王になろうとした男」●原題:THE MAN WHO WOULD BE KING●制作年:1975年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジョン・フォアマン●脚本:ジョン・ヒューストン/グラディス・ヒル●撮影:オズワルド・モリス●音楽:モーリス・ジャール●原作:ラドヤード・キップリング「王になろうとした男」●時間:129分●出演:ショーン・コネリー/マイケル・ケイン/クリストファー・プラマー/サイード・ジャフリー/ドラミ・ラルビ/ジャック・メイ/カルーム・ベン・ボウリ/モハマド・シャムシ/アルバート・モーゼス/ポール・アントリム/グラハム・エイカー/シャキーラ・ケイン●日本公開:1976/06●配給:コロムビア・ピクチャーズ(評価:★★★☆)
The Man Who Would Be King (1975)

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今まで観たシリーズ作品の中では一番。"リップサービス"がそのままタイトルに?

007_ロシアより愛をこめてps.jpg007_ロシアより愛をこめてdvd601_.jpg 007_ロシアより愛をこめてdvd60_.jpg 007_ロシアより愛をこめてdvd_.jpg ダニエラ・ビアンキ.jpg
ロシアより愛をこめて (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]」「ロシアより愛をこめて (アルティメット・エディション) [DVD]」「ロシアより愛をこめて(デジタルリマスター・バージョン) [DVD]」 ダニエラ・ビアンキ

007_ロシアより愛をこめて es.jpg 犯罪組織「スペクター」は、クラブ諸島の領主ノオ博士の秘密基地を破壊し、アメリカ月ロケットの軌道妨害を阻止した英国海外情報局の諜報員007ことジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)への復讐、それもソビエト情報局の美人女性情報員と暗号解読機「レクター」を餌にボンドを「辱めて殺す」ことで両国に泥を塗り外交関係を悪化させ、さらにその機に乗じて解読機を強奪するという、一石三鳥の計画を立案した。実はスペクターの女性幹部であるソビエト情報局のローザ・クレッ007_ロシアより愛をこめて0ges.jpgブ大佐(ロッテ・レーニャ)は、真相を知らない部下の情報員タチアナ・ロマノヴァ(ダニエラ・ビアンキ)を騙し、暗号解読機を持ってイギリスに亡命する様、また亡命時にはボンドが連行することが条件だロシアから愛をこめて.JPGと言うように命令する。英国海外情報局のトルコ支局長・ケリム(ペドロ・アルメンダリス)からタチアナの亡命要請を受けたボンドは、罠の匂いを感じつつも、トルコのイスタンブルに赴いた。しかし、そこにはスペクターの刺客・グラント(ロバート・ショウ)が待っていた―。

007_ロシアより愛をこめて700.jpg 1963年公開の007シリーズ第2作で、監督は第1作と同じくテレンス・ヤング(1915-1994)。1964年4月日本初公開時の邦題は「007/危機一発」で007/危機一発3.JPGした(意図的に誤字を使った)。1972年のリバイバル公開時に、タイトルを小説の題名に近い「007 ロシアより愛をこめて」に変えていますが、手元にある『大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150』('91年/文春文庫ビジュアル版)にもまだ「007/危機一発」とあり、但し、「ロシアより愛をこめて」と小さくカッコ付きであります(初公開時から主題歌の邦題は「ロシアより愛をこめて」だった)。この本では、ミステリーサスペンス洋画全体の中で15位に入っており、007シリーズの中では最上位にきていますが、個人的にも、今まで観たシリーズ作品の中では一番良かったかと思います。

 イアン・フレミングの原作では、英国情報部vs,ソ連情報部という構図になっているのを、映画の方は脱イデオロギー化と言うか、秘密組織スペクターを敵役にして、ソ連、英国、スぺクターの三つ巴に改変していますが、それでも、当時のソ連にとって好ましくない描写もあったため、同国ではその後007シリーズは御法度とされていたようです。一方、日本国内では、配給収入は約2億4千万円と、前作「007は殺しの番号」に比べ4倍の収入増でした。

007_ロシアより愛をこめて dv.jpg ボンドガールはダニエラ・ビアンキで、ロシアではなくイタリア出身の女優です。知的な雰囲気を醸す美形であり、彼女が演じる秘密情報員タチアナ・ロマノヴァは、偽上司クレッブ大佐(ロッテ・レーニャ)の計略で「祖国のために」ボンドを籠絡すべくスパイとして彼の下へ遣わされて、結局、ボンドのことを好きになってしまうわけで、このパターンは後のボンドガールにも多くみられるタイプであり、また彼女は、その頂点に立つと言っていいかもしれません。

ロシアより愛をこめて1.jpg 前作「007 ドクター・ノオ」('62年)のシルビア・トレンチもこれに近いですが、殺されもしなければ、ボンドとよろしくやるにも至らず、結局ボンドに追い返されてしまう脇役のボンドガールでした。そのシルビア・トレンチを演じたユーニス・ゲイソンが、この「ロシアより愛をこめて」では冒頭、ボンドとハイキングを楽しむガールフレンド役で出ていて、役名クレジットは同じくシルビア・トレンチとなっており、この辺りのお遊びは楽しいです(ボンドは結局、呼び出し指令でハイキングを途中できり上げることになるのだが)。

007_ロシアより愛をこめてq.jpg レギュラー・キャラクターは、第1作から出ていたボンドの上司にあたるM(バーナード・リー)やその秘書マネーペニー(ロイス・マクスウェル)に加えて、秘密兵器担当のQ(デスモンド・リュウェリン)が登場してコマが揃った感じです。例によって、ボンドが最初はやや珍奇で使うことはあるまいと見ていたようなアタッシュケースに仕込まれたその秘密兵器が、いざという時にボンドの窮地を救うことに...(武器以外に金貨が仕組まれていたのも計算づくだったのか)。

007_ロシアより愛をこめて8es.jpg お話の舞台は殆どイスタンブールで、ボンドがタチアナの持ち出したソ連領事館の青写真を入手する場所が聖ソフィア寺院だったりと、異国情緒充分です。ボンド・カーはまだ出てきませんが、オリエント急行からトラックへ、トラックからモーターボートと乗り継いでヴェネツィアへ向かうという流れで、世界の景勝地を飛びまわる豪華観光映画的絵作りがここに出来上がったとも言えます。

From Russia with Love .jpg オリエント急行内でのグラント(ロバート・ショウ)との対決が1つヤマ場なのですが、それまでにもボンドは、ロマの女性同士の男を奪い合っての決闘に巻き込まれたり、ラストでも、全て終わって一安心と思ったら、ホテルのメイドに化けていたクレッブに襲われたりと盛り沢山で、ノン・ストップ007_ロシアより愛をこめてls.jpg・ムービーと言っていいかも。但し、格闘アクションに関しては、ボンドとグラントの殴り合いさえも今観ると何となくやや地味で(列車内で狭い)、最後のクレッブなどは、ボンドに立ち向かうにしても靴先に忍ばせた毒針が武器とホント地味、しかも教え子のタチアナに寝返られてやや気の毒ささえも漂いました(でも、こうした手作り感にに加え、スパイの哀切感もあって悪くないか)。

007_ロシアより愛をこめてss.jpg 「ロシアより愛をこめて」の邦題は、 "From Russia with Love"の原題の意に、「ロシアを愛する以上にあなたを愛する」というタチアナの気持ちを懸けたとの説もありますが、やや無理があるのでは。この作品では、これから任務に就くボンドからマネーペニーへの書き置きとして、この"From Russia with Love"というフレーズが登場します。ボンドに恋愛感情を持つマネーペニーが色々な方法でボンドにアピールするもののボンドにその気はなく、いつも"リップサービス"のみで返すのがシリーズのお決まりとなりますが、その"リップサービス"がそのままタイトルになっているというのはちょっと面白い気がします。

007_ロシアより愛をこめて6.jpg「007 ロシアより愛をこめて(007/危機一発)」●原題:007 FROM RUSSIA WITH LOVE●制作年:1963年●制作国:イギリス●監督:テレンス・ヤング●製作: ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:リチャ007 ロシアより愛をこめて.2.jpegード・メイボーム●撮影:テッド・ムーア●音楽:ジョン・バリー●原作:イアン・フレミング●110分●出演:ショーン・コネリー/ダニエラ・ビアンキ/ペドロ・アルメンダリス/ロッテ・レーニャロバート・ショウ/バーナード・リー/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェ007_ロシアより愛をこめてges.jpgリン/マルティーヌ・ベズウィック/ユーニス・ゲイソン/ヴラデク・シェイバル/ヴラディク・シェイバル●日本公開:1964/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★★)
Robert Shaw(1927-78/享年51)/Lotte Lenya(1898-1981/享年83)
ロバート・ショウ in 「007 ロシアより愛をこめて」('63年)/「スティング」('73年)/「ジョーズ」('75年)
ロバート・ショー007.jpgロバート・ショー スティング.jpgロバート・ショー jaws.jpg

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敵の要塞のすぐそばでビキニ美女が貝殻採りをしているという、この緩さ(ノー天気)がいい?

007 ドクター・ノオ ps5.jpg007 ドクター・ノオ ps.jpg007 ドクター・ノオ [DVD].jpg  007 ドクター・ノオes.jpg
007 ドクター・ノオ アルティメット・エディション [DVD]」ウルスラ・アンドレス

007 ドクター・ノオ ps6.jpg アメリカの要請で、月面ロケット発射を妨害する不正電波を防ぐ工作をしていたジャマイカ駐在の英国諜報部員ジョン・ストラングウェイズ(ティム・モクソン)とその新人助手メアリー(ドロレス・キーター)が消息を絶つ。英国情報部「MI6」に所属する諜報員「007」こと、ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)はM(バーナード・リー)から、その捜査を命じられる。CIA007は殺しの番号.JPGのフィリックス・ライター(ジャック・ロード)や、クォレル(ジョン・キッツミラー)らと協力し、ボンドはリモコンによってジャイロスコープコントロールを狂わせる装置が使用され、その発信地がジャマイカ付近であることを突き止める。アメリカの月面ロケット打ち上げを目前に控え、ボンドはその妨害者の発見と危機回避のため、近づく者は一人として無事に帰ったことのない「ドラゴン」の伝説がある「クラブ・キー」のノオ博士(ジョセフ・ワイズマン)の秘密基地へ乗り込む―。

 1962 年公開の007シリーズ第1作で、1963年6月日本初公開時の邦題は「007は殺しの番号」でした(手元にある『大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150』('91年/文春文庫ビジュアル版)にもまだ「007は殺しの番号」とある)。事前の評価はさほど高いとは言えず、同年公開された1963年度の外国映画配給収入でもベスト10にも入りませんでしたが、シリーズが続くにつれて次第に評価が高まり、同シリーズ作品の人気ランキングで上位にくることも多いようです。

007 ドクター・ノオ2.jpg そう思って観ると、第1作にしてタイトルデザイン、テーマ音楽、ヒーロー像などが確立されていると007 ドクター・ノオ 05.jpgいうのは、今思えばやはりスゴイことかも。ボンドの上司にあたる〈M〉やその秘書〈マネーペニー〉などシリーズのレギュラー・キャラクターが既に登場するしており、はっきりと名乗る形で出ていないのは、秘密兵器担当の〈Q〉ぐらいでしょうか。

ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)/マネーペニー(ロイス・マクスウェル)

 米ソの宇宙開発競争をバックにしたストーリーですが、背景そのものがやや荒唐無稽? そうした荒唐無稽さもシリーズ初期作品にほぼ連なる特徴で、例えばシリーズ第5作で若林映子、浜美枝らがボンドガールを務めた「007は二度死ぬ」('67年)でも、アメリカとソ連の宇宙船が謎の飛行物体に捉えられるという事件が起こり、米ソ間が一触即発の状態になるというのがイントロでした(殆ど円谷プロ特撮の子供向け番組のような宇宙シーンが冒頭ある)。

007 ドクター・ノオ16.jpg ボンドガールに関しては、ウルスラ・アンドレス(以前はアーシュラ・アンドレスと表記されていた)演ずるハニー・ライダーが白いビキニ姿で海から上がってくるシーンは、シリーズを通しても有名なシーンの一つとなりましたが(ウルスラ・アンドレスは007 ドクター・ノオ72.jpgスイス出身で両親はドイツ人。英語がおぼつかなく、彼女の声のみ吹き替え)、考えてみれば、「近づく者は一人として無事に帰ったことのない」と言われるクラブ島で、ビキニの美女が呑気に貝殻採りをしているというのがあまりにいい加減?(この緩さと言うか、いい加減さがいいともとれるが)。それを偶々見つけたボンドはニンマリしてしまいますが、これは、プレイボーイとしてのボンド像を早く定着させようという狙いか。

007 ドクター・ノオges.jpg007 ドクター・ノオ02.jpg 以降のシリーズ作のボンドガールは、ボンドの敵役のガールフレンドや敵国の女性スパイなど、ボンドと対立する立場からプレイボーイのボンドの手練にかかって寝返るパターンが多いため、むしろ、作戦上ボンドを誘惑しようとして、ボンドの住まいに勝手に押しかけてきて、ボンドが帰ってくる間ワイシャツ1枚でゴルフのパターの練習をしていたシルビア・トレンチ(ユーニス・ゲイソン)の方が正統派ボンドガールと言えるかも(最後はボンドに追い返されてしまうけれど、シリーズ第2作「007 ロシアより愛をこめて」('63年)にボンドのガールフレンド役で再登場する)。

 この考え方でいくと、「007は二度死ぬ」の若林映子と浜美枝は本筋のボンドガールではなく、ヘルガ・ブラントを演じたカリン・ドールがそれに該当するのか(最後、気の毒に、スペクターの秘密基地で裏切り者としてピラニアのいる人工川に落とされてしまう)。007   ドクター・ノオes.jpg但し、ボンドガールには、MI6から派遣されたボンドの助手や同一の敵を追う別の諜報機関の女性エージェントがボンドに手を貸したりボンドを出し抜いたりしながら最後はボンドとよろしくやるというパターンもあり、若林映子などはこれに該当します(日本の公安のエージェント役)。でも、敵の要塞がある島で、生活のためとは007 ドクター・ノオ(1).jpg言え法螺貝など探しているノー天気なボンドガールというのはさすがにそうしたパターンを後のシリーズ作に見出すのは難しく、そうした意味でもユニークと言えばユニークだったかもしれません(結果的には彼女も、泥川の中ボンドらを導いたり、ボンドと共にスペクターに捉えられたりと、結構頑張ったり散々な目に逢ったりするのだが、体力勝負には自信ありそうなボンドガールだった)。

007 ドクター・ノオ s.jpgdoctor no.jpg「007 ドクター・ノオ(007は殺しの番号)」●原題:007 DR. NO●制作年:1962年●制作国:イギリス●監督:テレンス・ヤング●製作: ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:リチャード・メイボーム/ジョアンナ・ハーウッド/バークレイ・マーサー●撮影:テッド・ムーア●音楽:モンティ・ノーマン●原作:イアン・フレミング●105分●出演:ショーン・コネリ007 ドクター・ノオ 9.2.jpeg007 ドクター・ノオw.jpgー/ジョセフ・ワイズマン/ウルスラ・アンドレス/バーナード・リー/ピーター・バートン/ジョン・キッツミラー/ゼナ・マーシャル/ユーニス・ゲイソン/007 ドクター・ノオes.jpg007 ドクター・ノオ69.jpgロイス・マクスウェル/ジャック・ロード/アンソニー・ドーソン/ティム・モクソン/ドロレス・キーター●日本公開:1963/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)

Joseph Wiseman(1918-2009/享年91)

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公安トップの移動手段は「丸ノ内線」専用車両! 珍品的色合いが濃いが、映像的には貴重か。
007は二度死ぬ チラシ.jpgYOU ONLY LIVE TWICE 基地.jpg YOU ONLY LIVE TWICE images.jpg
007は二度死ぬ [DVD]」  [下]丹波哲郎/若林映子/ショーン・コネリー

You Only Live Twice 3.jpg アメリカとソ連の宇宙船が謎の飛行物体に捉えられるという事件が起こり、米ソ間が一触即発の状態になるものの、英国の情報機関である MI6はその宇宙船が日本周辺から飛び立っているという情報を掴み、その真偽を確かめるために、ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が日本に派遣されることになる。ボンドは敵の目を欺くため、英国の植民地の香港の売春宿で、情報部により用意された現地の女性リン(ツァイ・チン)の手引きによって、寝室になだれ込んだ殺し屋にマシンガンで銃撃され死んだことに。その後ビクトリア・ハーバー内にYOU ONLY LIVE TWICE 05.jpg停泊するイギリス海軍の巡洋艦上で水葬され、その遺体を回収したイギリス海軍の潜水艦で隠密裏に日本へ。日本上陸後は、蔵前国技館で謎の女アキ(若林映(あき)子)と会い、彼女を通じて日本の公YOU ONLY LIVE TWICE 06.jpg安のトップ・タイガー田中(丹波哲郎)に会うが、在日オーストラリア人の捜査協力者のヘンダーソンは直後に殺されてしまう。その殺し屋は大里化学工業の本社から送られた者だと知ったボンドは、化学薬品を取り扱うビジネスマンを装って大里化学工業の東京本社に赴き、大里社長とその秘書ヘルガ・ブラント(カリン・ドール)と接触する―。 (右:サンヨー・テレビ「日本」の梱包)

『007号は二度死ぬ』早川書房.jpgYOU ONLY LIVE TWICE 08.jpg 事件の背後にはスペクターの影があり、ボンドはタイガー田中の助けを得てスペクターの秘密基地に潜入、宿敵ブロフェルド(「大脱走」('63年)、「刑事コロンボ/別れのワイン」('73年)のドナルド・プレザンス)と対決するというシリーズの第5作。原作はイアン・フレミングによるシリーズ第11作で(ハヤカワ・ポケット・ミステリの邦訳タイトルは『007号は二度死ぬ』)、脚本は、イアン・フレミングと親交のあったロアルド・ダール(ティム・バートン監督「チャーリーとチョコレート工場」 ('05年/米)として映画化された『チョコレート工場の秘密』の作者)であり、「女性を3人出し、最初の女はボンドの味方で敵方に殺され、2番目の女は敵の手先でこれも殺され、3番目の女は殺されず映画の終わりにボンドがものにするように」というのがプロデューサーの指示だったそうですが、ほぼその通りに作られています。 
You Only Live Twice.jpgMie Hama as Kissy Suzuki in "You Only Live Twice"(1967)
Mie Hama as Kissy Suzuki in  最初は日本に潜入したボンドをリードする公安エージェントの女性役が浜美枝で、ボンドが地方に行って出会う海女のキッシー鈴木の役が若林映子だったそうで、この配役は「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝)を観て浜を知ったスタッフからの若林映子と併せての指名だったとのことです(若林映子は個人的akiko_wakabayashi若林映子_n.bmpには「宇宙大怪獣ドゴラ」('64年/東宝)などでリアルタイムで見た。浜美枝と若林映子は「国際秘密警察鍵の鍵」('65年/東宝)でも共演している)。ところが浜美枝の語学力ではボンドをリードする公安エージェント役が務まらない「太陽の中の対決」pg.jpgということで、若林映子がエージェント(アキという役名になった)を演じ、浜美枝の方がキッシー鈴木役になったとのこと。但し、海女役になった浜美枝は、ロケ地に来て潜れないということが判明し、ショーン・コネリーに同伴していた妻のダイアン・シレント(彼女は子供の頃から泳ぎが得意で潜水も長時間できた)が、映画でYou Only Live Twice akiko wakabayashi.jpg若林映子3.jpgキッシーが潜るシーンはスタントするなどしたとのことで、撮影に際しては結構ドタバタだった面もあったようです。
Akiko Wakabayashi in James Bond film You Only Live Twice (1967)
ニューオータニ(Osato Chemical & Engineering Co., LTD.(大里化学工業)になっている。)
 都内並びに日本の各所でロケを行っているという007は二度死ぬ ニューオータニ.jpg点では、昭和40年代前半の日本の風景を映し出していて貴重かも。都内では、旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニなどで、地方では富士スピードウェイ、神戸港、 姫路城、鹿児島県坊津町などでロケをしています。日本的なものを都会と地方、現代と伝統の両面からピックアップしている意欲は買えますが、一方で、姫路城で手裏剣で塀を傷つけたりするなどのトラブルも生じさせています。

007は二度死ぬ87.jpg オープニングの影絵は浮世絵のイメージ? イアン・フレミングは親日家ではあったものの、日本文化に対する外国人特有の偏見や誤解もあり、あまりに奇異な見方であると思われる部分は丹波哲郎が撮影陣に進言して直させたりもしたようですが、ボンドと若林演じるアキや丹波演じるタイガーなど日本の公安との橋渡し役が横綱・佐田の山(!)だったり、タイガーの移動手段が地下鉄「丸ノ内線」の深夜の007は二度死ぬ 丸ノ内線.jpg専用車両(!)だったり(中野坂上駅でロケ。タイガーのオフィスは地下鉄の駅の「地下」にある。公安は顔を知られてはならず、そのため下手に地上を歩けないからというその理由がこじつけ気味)、さらに公安所属の特殊部隊が全員忍者装束(!)で日本刀を背負っていたりと、ち007は二度死ぬ nihon.jpgょっYOU ONLY LIVE TWICE 丹波.jpgと飛躍し過ぎていて、さすがの丹波哲郎でも口を挟みにくかった部分もあったのか(まあ、いいかみたいな感じもあったのか)、結果として「!」連続の珍品で、ボンドが日本人に変装することなども含「007は二度死ぬ」 (67年/米)2.jpgめ、現実味という観点からするとどうかなあと思わざるを得ません(非現実性はロアルド・ダールらしく、また007らしくもあるのだが。因みに丹波哲郎は、英語が不得手な浜美枝の降板を要請する英国側スタッフに対し、ここまできたらそれは難しいと交渉するくらいの英語力はあったが、発音は日本語訛りであったため、作中での本人の英語の台詞は吹き替えられている)。

 ロケット遭難事故の黒幕は米ソ何れでもなければどこか、日本にはそんな技術はあるとは思えない、と英国情報部は最初から日本に対し"上から目線"ですが、冒頭の宇宙船の特撮シーンは円谷プロでもあれくらいは出来たかもしれません。

 個人的に不満な点は(プロデューサーの指示とは言え)ずっと頑張っていたアキをあっさり死なせてしまった点でしょうか。ややあっけ無さ過ぎた印象を受けました。アキは江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」と同じトリックで寝ている間に殺され、その間ボンドも寝ていたというのはどうもねえ(女性を守り切れていない)と言いたくなります(近作「007 スカイフォール」('12年)でもボンドガールをあっさり死なせているが)。

YOU ONLY LIVE TWICE 朝日グラフ.jpg まあ、かなりの部分を日本で撮影しているということで、映像的価値並びに珍品的価値(?)を加味して星半個オマケといったところでしょうか。アジア人が最初にボンド・ガ007 ミシェル・ヨー.jpgールになった作品であり、この次にアジア人ボンド・ガールが誕生したのは「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」('97年)のミシェル・ヨーで、その間何と30年もあったわけだし、やっぱり若林映子、浜美枝の起用は今振り返っても画期的だったと言えるのだろうなあ。

若林映子 サルノ王女.jpg 若林映子は、「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年/東宝)にもセルジナ公国のサルノ王女役で出ていましたが(サルノ王女の本名はマアス・ドオリナ・サルノ(まあ素通りなさるの!)。正体は5000年前、キングギドラによって滅ぼされた金星文明から地球に脱出してきた金星人の末裔の一人)、「007は二度死ぬ」の前年にTV番組の「ウルトラQ(第9話)/クモ男爵」('66年/TBS)にゲスト出演したりもしています。ストーリーは―、

桜井浩子/若林映(あき)子 in 「ウルトラQ/クモ男爵」('66年/TBS)
クモ屋敷で不安げな二人の美女(若林映子・桜井浩子).jpg ホテルのパーティに招かれた6人の男女客たちが、霧深い夜道を車を連ねて帰路に着く途中、竹原(鶴賀二郎)が誤って沼に落ちる。助けようとしたクモ男爵 若林1.jpg一平(西條康彦)も深みにはまり、後続車の万城目淳(佐原健二)と江戸川由利子(桜井浩子)、葉山(滝田裕介)と今日子(若林映子)が辛じて救出。霧が深くこれ以上車で先へ進めないので、淳たちはずぶ濡れの北原と一平をかかえて途方に暮れるが、沼の向う側に灯のついた洋館を発見、そちらに向かう。洋館の中は何十年も放置され荒れていたが、階上の方へ淳が行ってみると、そこで巨大なクモに突然襲われる。驚いて階投を転がり降りた淳は、九十年前いたという蜘蛛男爵の館みたいだと言う。その頃、地下のワイン倉庫にいっていた葉山は、例の巨大なクモに襲われ傷つく。淳たちは、はじめてここがまさに蜘蛛男爵の館であることに気づき、館から逃げ出そうとするが―。

クモ男 洋館.jpg 洋館は、コラムニストの泉麻人氏も言っていましたが、アルフレッド・ヒッチコックの映画「レベッカ」('40年/米)に出てくる邸宅みたいな雰クモ男爵カラー .jpg囲気があって良かったですが、男爵の死んだ娘がクモになり、娘の死を悲しんだ男爵自身もクモになっていまったという話はやや強引か(まあ、「ウルトラQ」は"強引"なスト-リーが多いのだが)。この回の視聴率は35.7%と(「ウルトラQ伝説」等による)シリーズ全27話の中では上位にくる数字を出しています。このシリーズ、総天然色版でDVDが出ているので、それでもう一度作品を鑑賞するとともに、若林映子や桜井浩子のファッションを見直してみるのもいいかも。

第9話「クモ男爵」.jpgウルトラQ.jpgクモ男爵 title.jpg「ウルトラQ(第9話)/クモ男爵」●制作年:1965年●監督:円谷一●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション●脚本:金城哲夫●撮影:内海正治●音楽:宮内国郎●特技監督:小泉一●出演:佐原健二/西條ウルトラQ クモ男爵 000.jpgウルトラQ クモ男爵 001.jpg康彦/桜井浩子/若林映子/滝田裕介/鶴賀二郎/永井柳太郎/岩本弘司/石坂浩二(ナレーター)●放送:1966/02/17●放送局:TBS(評価:★★★)      

007 wa nido shinu (1967)
007 wa nido shinu (1967) .jpg「007は二度死ぬ」●原題:YOU ONLY LIVE TWICE●制作年:1967年●監督:ルイス・ギルバート●製007は二度死ぬ 若林映子.jpg作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:ロアルド・ダール●撮影:フレディ・ヤング●音楽:ジョン・バリー●主題歌:You Only Live Twice(唄:ナンシー・シナトラ)「007は二度死ぬ」●2.jpg「007は二度死ぬ」●.jpgKissy-Suzuki2-600x400.jpg●原作:イアン・フレミング●時間:117分●出演:ショーン・コネリー丹波哲郎若林映子浜美枝/ドナルド・プレザンス/島田テル/カリン・ドール/チャールズ・グレイ/ツァイ・チン/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェリン/バーナード・リー●公開:1967/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価:★★★☆)


「007は二度死ぬ」 松崎真(ノンクレジット)/松岡きっこ(ノンクレジット)
007は2度死ぬ 松崎真.jpg007は2度死ぬ matuoka.jpg


松岡きっこ .jpg                                    
「007は二度死ぬ」 若林映子/ショーン・コネリー/カリン・ドール/ドナルド・プレザンス/浜 美枝
o0420021311847920120.jpgYOU ONLY LIVE TWICE last.jpg                                                                                                                                                                               
ホテルニューオータニ東京のエントランス
ホテルニューオータニ.jpgホテルニューオータニ東京 のエントランス - コピー.jpg
                                                                
キングコング対ゴジラ pos.jpg「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝) 若林映子/浜 美枝(共演:高島忠夫) 
若林映子 浜美枝  キングコング対ゴジラ 2.jpg 若林映子 浜美枝  キングコング対ゴジラ.jpg

若林映子 in「宇宙大怪獣ドゴラ」('64年/東宝)/「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年/東宝)with 夏木陽介
若林映子 宇宙大怪獣ドゴラ .jpg 若林「三大怪獣 地球最大の決戦」61 - .jpg 若林映子%E3%80%80サルノ王女.jpg

「国際秘密警察鍵の鍵」('65年/東宝) 若林映子/浜 美枝(共演:三橋達也)
国際秘密警察 鍵の鍵1.jpg 国際秘密警察 鍵の鍵0.jpg 国際秘密警察鍵の鍵(浜美枝・若林映子).jpg 国際秘密警察鍵の鍵(浜美枝・若林映子)1.jpg

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シリーズの中で一番面白かった「魔宮の伝説」。この頃は"手作り"感があった。

インディージョーンズ 魔宮の伝説 dvd.jpg インディジョーンズ 魔宮の伝説 パンフレット.jpg インディジョーンズ魔球の伝説4298.JPG
インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説 [DVD]」「映画パンフレット 「インディ・ジョーンズ-魔宮の伝説-」

インディジョーンズ魔球の伝説4299.JPG 「インディ・ジョーンズ シリーズ」の最初の3作のうち、個人的には最初の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」('81年)は名画座に降りてくるのを待って観ましたが、この「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」('84年)はロード館で観ました。第3作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年)もロードで観ましたが、結局、一番面白かったのは「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」だったように思います。

「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」パンフレット

 日本でも、前作を上回るヒットを記録しましたが、年間興業収入では「ゴーストバスターズ」の69.7億円に次いで2位でした。因みに'82年本邦公開の「レイダース」は年間5位で、その年のトップは同じくスピルバーグ監督の「E.T.」の163.5億円(これは15年興行収入.jpg後に「タイタニック」('97年公開)に抜かれるまで1位の記録だった)、'89年公開の「最後の聖戦」も、同年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」の94.0億円に及ばず2位と、このシリーズ作は何れも年間トップを取ってはいなかったんだなあと、やや意外な思いもします。「最後の聖戦」公開時に「シリーズ最終作」と銘打っていたように思いますが、その後「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」('08年)が作られています(2008年の年間興業収入57.1億円で第3位。この年の第1位は「崖の上のポニョ」の155億円)。

 シリーズ全体の原案はジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグ、製作には何れもはジョージ・ルーカス(ルーカス・フィルム)が噛んでいて、第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の原作は、後に「ライト・スタッフ」「存在の耐えられない軽さ」「ライジング・サン」などを監督することになるフィリップ・カウフマン、脚本は「白いドレスの女」を監督することになるローレンス・カスダンと、第1作から才人が集まっていたことになります。

インディジョーンズ魔球の伝説4300.JPG 「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の3年後に作られた第2弾「魔宮の伝説」の時代設定は前作の1年前(1935年)ということになっていて、トロッコやつり橋の使い方が上手く、アニメをそのままのスピード感で実写化したという感じでした。今だったらCGに委ねるところをセットやミニチュア模型でやっている、この"手作り"感がいいのかもしれません。

 50年代、60年代のミュージカル映画のようなオープニングから始まって、物語の舞台が、上海 → メイアプール → パンコットとテンポよく移り変わり(メイアプールは実在するインドの小村、パンコットは架空の宮殿)、ピンチを脱したと思ったらまたピンチの連続で、何も考えずにただただ楽しめます。

インディジョーンズ魔球の伝説4301.JPG 冒頭のシーンは「ザッツ・エンターテインメント」('74年)へのオマージュでもあるのでしょうか。007映画やディズニーインディジョーンズ魔球の伝説4302.JPG映画、スピールバーグが好きな「フラッシュ・ゴードン」('36年)など様々な映画へのオマージュが随所込められており、ラストの大洪水シーンは、前作「レイダース」のパロディになっているなど、トリビアな見所も多いです。

 この作品を撮った時、ジョージ・ルーカス39歳、スティーブン・スピルバーグ37歳と、共に30代で、しかも、それでいてシリーズ2作目。二人とも若かったのだなあと改めて思います(シリーズ第1作の時は更にそれぞれ3歳若かったわけだが)。

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 dvd.jpg 5年後に作られた「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年)は、時代設定は1938年で第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の2年後という設定。ジョーンズ博士の少年時代を演じたのはリバー・フェニックスで(当時19歳)、この作品の4年後に麻薬死しています。
インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 [DVD]

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 husi2.jpg 物語は聖杯伝説をベースにしており、手に入れれば願いはすべて叶うという聖杯を巡ってのナチス連中とインディたちの争奪戦。ナチスに誘拐された考古学者である父親(ショーン・コネリー)を救出に向かったインディも捉えられ...と、本来ならばもっとハラハラドキドキさせられるような展開になるところが、ハリソン・フォード演じるインディのおとぼけぶりに輪をかけるようなショーン・コネリー演じる父親のおとぼけぶりで、コメディ映画みたいになっていました。

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 husi.jpg インディは馬に乗って軍用列車を追いかけたり、ナチスの一味と殴り合い、撃ち合いしたりと相変わらずアクション面でも頑張っていますが、前作に比べると派手さがなく、テンポもイマイチ。最後は、聖杯の守り主みたいな騎士が出てきiインディ・ジョーンズ/最後の聖戦.jpgてなかなかシュールに盛り上げてくれましたが(それにしてはその手前の仕掛けがやたらメカニックだったりもする)、「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」のラストと被ってしまい、結果的に「ショーン・コネリーがとぼけた父親役をやっている映画」という印象インディ・ジョーンズ/最後の聖戦s.jpgのみが強く残ってしまった気がします。但し、ショーン・コネリーはこの作品における「007シリーズ」のジェームズ・ボショーン・コネリー   .jpgンドのパロディ的要素を含む役どころを気に入っていたようで(敵か味方か途中までよく分からないボンドガール的な女性が出てくるのは007へのオマージュか)、2006年に俳優業を引退宣言していますが、もし映画界に戻ってくるとしたら「インディ・ジョーンズ」に出られるときだけとも語っています。
 
ザ・ロック s.jpgザ・ロック 1996.jpg 因みに、ショーン・コネリーがジェームズ・ボンドのパロディ的要素を含む人物設定の役柄として出演している作品の代表的なものとしては、アメリカ海兵隊員の英雄率いるテロリストと、制圧する特殊部隊との攻防を描いたマイケル・ベイ監督によるアクション映画「ザ・ロック」('96年/米)があります。かつて敵に包囲された末に救援も得られずに部下を見殺しにされ、それに対して何の補償もない国に憤りを抱くハメル准将(エド・ハリス)が、14人の部下と共に化学兵器を奪取して、ザ・ロックと呼ザ・ロック アルカトラズ.JPEGばれるかつての刑務所島アルカトラズ島に観光客・ガイド計81人を人質にとって立て籠り、サンフランシスコを化学兵器の標的にして莫大な補償金を要求、化学兵器のスペシャリストであるグッドスピード(ニコラス・ケイザ・ロック ケイジ コネリー 2.jpgジ)がアメリカ海軍特殊部隊SEALsに同行して島に潜入することになりますが、潜入にあたってアルカトラズ島からの唯一の脱獄成功者で、現在は刑務所に幽閉中の元イギリス情報局秘密情報部(SIS)部員・兼SAS大尉のメイソン(ショーン・コネリー)の協力を得るというもの。結局、SEALsは敵の前に全滅し、残されたのは元脱獄囚メイソンと化学兵器オタクのグッドスピードのみという、まあアクション映画のパターナルな展開ですが、ショーン・コネリー演じるメイソンが元SIS(SISの中にMI6がある)ということで、ジェームズ・ボンドが意ザ・ロックL.jpgアリエール ジェルボール.jpg識されていることは明白でした。この映画公開の前年にサンフランシスコに行き、ゴールデン・ゲート・ブリッジからアルカトラズ島を観てきたところだったので懐かしかったですが、映画自体はやや大味でした。エド・ハリスの叛乱はかなり理不尽であるし(最後、自分でも作戦変更した)、FBIでありながら戦闘経験のない化学兵器オタクであるはずのニコラス・ケイジ(アクション映画の主役は初)が、カーチェイスをはじめ結構アクションしていました。化学兵器である毒ガスの溶剤が洗濯用の洗剤に見えてしまったのが難でした。

ザ・ロック 01.jpg 因みに、ショーン・コネリー演じるメイソンが刑務所から移送された後に滞在をリクエストし、その豪華なスウィートルームをしばし満喫するホテルは、サンフランシフェアモント サンフランシスコ めまい.jpgスコの「ザ フェアモント サンフランシスコ」で、ここは映画「めまい」('58年)や「タワーリング・インフェルノ」('74年)などの撮影にも使われたホテルであり(TVドラマ「アーサー・ヘイリーのホテル」にも使われた)、2010年に米国の世界最大級のオンライン旅行コミュニティサイト「トリップfairmontsf-location1.jpgアドバイザー」が映画の舞台となったり重要なシーンに登場したホテルの中で、ユーザーからの評価が高いものをランキfairmontsf-hero-overview2.jpgング化した「映画の舞台になった米国のホテル トップ10」を発表していますが、その中で第1位に選ばれています。
フェアモント サンフランシスコ

「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年) 
インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説es.jpg インディ・ジョーンズ シリーズ3作の個人的評価は、第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」が★★★☆、第2作「魔宮の伝説」が★★★★、第3作「最後の聖戦」が★★★といったところです(第3作が星3つと厳しいのは、絶対評価と言うより、ややシリーズの中での相対評価になっているためで、普通の娯楽映画としてみれば十分楽しめる作品であると言える)。因みに「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」は、2000年代に入って、ソフト化作品のタイトルに"インディ・ジョーンズ"と付けるようになっており、これはこの作品がインディ・ジョーンズ シリーズの第1作であることを知らない年代層が増えてきたためでしょうか。   

レイダース/失われたアーク vhs.jpgレイダース/失われたアーク<聖櫃>(字幕 [VHS]」「インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》 [DVD]
レイダース/失われたアーク dvd.jpg「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」●原題:RAIDERS OF THE LOST ARK●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグレイダース/失われたアーク《聖櫃》.jpg●製作:フランク・マーシャル●脚本:ローレンス・カスダン●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス/フィリップ・カウフマン●時間:115分●出Reidâsu Ushinawareta âku (1981).jpg演:ハリソン・フォードカレン・アレン/ジョン・リス=デイヴィス/デ飯田橋佳作座.jpgンホルム・エリオット/ポール・フリーマン/ロナルド・レイシー/ヴォルフ・カーラー/ジョージ・ハリス/アルフレッド・モリーナ/ビック・タブリアン/アンソニー・ヒギンズ●日本公開:1981/12●配給:パラマウント映画/CIC●最初に観た場所:飯田橋佳作座(82-07-11)(評価:★★★☆)●併映:「スター・ウォーズ」(ジョージ・ルーカス)
飯田橋佳作座(神楽坂下外堀通り沿い)1957(昭和32)年10月1日オープン、1988(昭和63)年4月21日閉館
Reidâsu/Ushinawareta âku (1981)
Indi Jônzu - Makyû no densetsu (1984)
Indi Jônzu - Makyû no densetsu (1984).jpg
インディジョーンズ魔球の伝説4303.JPG「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」●原題:INDIAN JONES AND THE TEMPLE OF DOOM●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ロバート・ワッツ●脚本:ウィラード・ハイク/インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説2.jpgグロリア・カッツ●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョインディ・ジョーンズ/魔宮の伝説ges.jpgージ・ルーカス●時間:118分●出演:ハリソン・フォード/ケイト・キャプショー/キー・ホイ・クァン/アムリッシュ・プリ/ロイ・チャオ/ロシャン・セス/リック・ヤン/デヴィッド・ヴィップ/チュア・カー・ジ「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」0.JPG「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」1.JPGョー/フィリップ・タン/ダン・エイクロイド/フィリップ・ストーン●日本公開:1984/07●配給:パラマウント・ピクチャーズ●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ劇場(84-07-08)(評価:★★★★)

新宿プラザ8.jpg新宿プラザ 閉館上映チラシ.jpg新宿プラザ劇場200611.jpg 新宿プラザ劇場 1969年10月31日オープン、歌舞伎町・コマ劇場隣り(1,044席) 2008(平成20)年11月7日閉館
新宿プラザ劇場内.jpg
1981年「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」/1984年「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」/1989年「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦ド.jpg「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」●原題:INDIAN INDIANA JONES AND THELAST CRUSADE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・ボーム●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●製作総指揮:ジョージ・ルーカス●時間:127分●出演:ハリソン・インディ・ジョーンズ/最後の聖戦e.jpgフォード/ショーン・コネリー デン/ホルム・エリオット/アリソン・ドゥーディ/ジョン・リス=デイヴィス/ジュリアン・グローヴァー/インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 リバー・フェニックス.jpgリヴァー・フェニックス/マイケル・バーン/ケヴォルク・マリキャン/リチャード・ヤング/ロバート・エディスン●日本公開:1989/07●配給:パラマウント・ピクチャーズ●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ劇場(89-07-30)(評価:★★★)
リヴァー・フェニックス(1970-1993)in 「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」

The Rock (1996)
ザ・ロック ケイジ コネリー34.jpgThe Rock (1996).jpg
「ザ・ロック」●原題:THE ROCK●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・ベイ●製作:ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー●脚本:デヴィッド・ウェイスバーグ、他●撮影:ジョン・シュワルツマン●音楽:ハンス・ジマー、他●時間:135分●出演:ショーン・コネリー/ニコラス・ケイジ/エド・ハリス/ジョン・スペンサー/ウィザ・ロック ケイジ コネリー33s.jpg リアム・フォーサイス/デヴィッド・モース/マイケル・ビーン/ザンダー・バークレー/ラルフ・ペデュート/デヴィッド・ボウ/ヴァネッサ・マーシル/ジェームズ・カヴィーゼル/ドワイト・ヒックス/ジョン・C・マッギンリー/ジョン・ラフリン/アンソニー・クラーク/デヴィッド・グラント/トニー・トッド/ボキーム・ウッドバイン/ダニー・ヌッチ/ショーン・スケルトン/スティーヴ・ハリス/インゴ・ノイハウス/グレゴリー・スポールダー/ブレンダン・ケリー/レイモンド・クルス/マーシャル・R・ティーグ/フィリップ・ベイカー・ホール/スタンリー・アンダーソン/スチュアート・ウィルソン/ハワード・プラット/ハリー・ハンフリーズ/レオナルド・マクマハン/クレア・フォーラニ/トッド・ルイーゾサム・ホイップル●日本公開:1996/09●配給:ブエナ・ビスタ・インターナショナル・ジャパン(評価:★★★)

「●よ 吉田 修一」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2076】 吉田 修一 『愛に乱暴
「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●は行の外国映画の監督②」の インデックッスへ「●ショーン・コネリー 出演作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(丸の内ルーブル)

ストーリーが巧みでテンポも良いい。敢えて通俗、通俗だから面白いのでは。

太陽は動かない 吉田修一.jpg吉田修一氏.jpg エントラップメント01.jpg ラストエンペラー02.jpg
 吉田 修一 氏  「エントラップメント [DVD]」 「ラストエンペラー ディレクターズ・カット (初回生産限定版) [DVD]

太陽は動かない』(2012/04 幻冬舎)

『太陽は動かない』5.JPG 表向きはアジア各地のファッションやリゾート情報などを扱う小さなニュース通信社だが、裏では「産業スパイ」としての顔を持つAN(アジアネット)通信情報部の鷹野一彦は、油田開発利権にまつわる機密情報を入手し高値で売り飛ばすというミッションのもと、部下の田岡と共にアジア各国企業の新油田開発利権争いの渦中で起きた射殺事件の背後関係を探っていた。鷹野は、企業間の提携交渉の妨害を意図したウイグル反政府組織による天津スタジアム爆破計画天津スタジアム.jpg情報を入手、その詳細を突き止めるため、闇社会に通じている雑技団団長・張豪(ジャンハオ)の紹介で、首謀者シャマルに会うが交渉は決裂、更に、商売敵デイビッド・キムや謎の女AYAKOが暗躍し、中国国営エネルギー巨大企業CNOX(中国海洋石油)が不穏な動きを見せる中、田岡が何者かに誘拐されたため、張豪の部下である張雨(ジャンユウ)と共に、彼が拉致されていると思われる天津へと飛ぶ―。

天津スタジアム

 スパイ小説ですが、その舞台が「ポスト原発」と呼べる状況にある国際的なエネルギー市場であるところが現代風で、油田開発の利権争いの一方で、日本の無名の技術者が、従来のものとは比較にならない高性能の太陽光発電のパネルを開発した―というのが、何となく夢があっていいなあと。

 お膳立てが揃ってしまえば、後は、政治家、日本企業、中国多国籍企業、CIAなどの様々な組織の利害関係が複雑に絡み合ってのノンストップ・アクション風―ということで、ストーリー・テイリングも巧みだし、実際にテンポも良くて428ページ一気に読めました。

 作者は文芸作家としてデビューし、芥川賞も受賞していますが、『パレード』にはミステリの要素もあったし、『悪人』もエンタテイメント要素はあったように思います。

 この作品に対しては、『悪人』など比べると人物の描き方に深みが無いとの批評も多くありますが、"純粋エンタテイメント"として読めば、それでいいのではないかと思いました。『悪人』とは根本的にテーマもモチーフも異なる作品。敢えて通俗、通俗だから面白いのではないかと。

 日本が"スパイ天国"であるとは、随分と以前から言われていることですが、「スパイ小説」となると、劇画に出てくるような怪しげな外国人が大勢登場して何となく胡散臭いものになりがちという気もし、この作品についてもそのことが言えなくもないけれど、筆の運びの上手さで(さすが芥川賞作家?)、あまりそうしたことに疑念を挟まずにどんどん読めてしまいました。

 最後まで日本人中心であるというのもよく、産業スパイという設定は、日本人を主人公とするのに適しているのかも―と思ったりもしました。

2020年映画化「太陽は動かない」(公開は2021年)
羽住 英一郎(原作:吉田修一)「太陽は動かない」 (2020/05 → 2021/03 ワーナー・ブラザース映画) ★★★☆
太陽は動かない  2021.jpg 太陽は動かない 2.jpg 


「エントラップメント」1.gifエントラップメント03.jpg アクション風ということで、「ミッション:インポッシブル」 ('96年/米)など想起させられる映画が幾つかありましたが、金だけのために敵になったり味方になったりし、それが鷹野とAYAKOという男女間で展開するところは、個人的にはジョン・アミエル監督の「エントラップメント」('99年/米)を想起しました(この系統は「泥棒成金」('55年/米)や「華麗なる賭け」('68年/米)以来、連綿とあるが)。

「エントラップメント」3.gif AYAKOのイメージは、「エントラップメント」で主人公の美術泥棒役のショーン・コネリーと共演し、主人公と様々な駆け引きを繰り広げる保険会社調査員役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズかな。ゼタ=ジョーンズの方がよりアクション系で、主人公の相方(弟子?)的立場になったりし、その間、ショーン・コネリーに若干惹かれ気味になったりするんだけど、ラストは...。

峰不二子.jpg キャサリン・ゼタ=ジョーンズはこの作品でゴールデン・ラズベリー賞の最低主演女優賞にノミネートされていますが(すごくいいと言うほどでもないが、そんなに悪くもなかったと思う)、この『太陽は動かない』も、仮に映画化されるとすると、鷹野やAYAKOを演じきれる役者はあまりいないように思います(巷ではAYAKOは「ルパン三世」の峰不二子が相応しいとの声を聞くが、いきなりアニメに行っちゃうのか)。

 「金だけのために」とか言いつつ、主要な登場人物たちがそれぞれに"貸し借り"に律義で(反政府組織の女性指導者までもが)、ラストのデイビッド・キムの登場などには友情めいたものさえ感じられるという、何だか綺麗に出来過ぎた話ですが、カタルシス効果はあったように思います("カタルシス効果"と言うより"読後感の爽やかさ"か)。

 それにしても、作者に関しては、芸域、広いなあという感じ。普段からエスピオナージをよく読み、その分野を読みつけている人から見れば突っ込みどころの多い作品かも知れないし、従来の作者の作品の世界に馴染んだ人から見れば、人物の描き方がステレオタイプだとかいった評価になるのかも知れないけれど、個人的には、とにかく面白く読めたため、そのことを素直に認めてのほぼ5つ星評価―ミステリ界でどういった評価になるのか気になります(「文芸作家は自分たちの領域に立ち入らんでくれ」と言うほど閉鎖的ではないとは思うが)。

静園.jpg 因みに、作者は映画「ラストエンペラー」('87年/イタリア・中国・イギリス)の大ファンということで、版元のサイトによれば本書執筆のため2011年5月に3泊4日という強行スケジュールで、北京→天津→内モンゴル自治区を行く取材旅行し(編集者同行)、北京では紫禁城を、この作品の前半の主要な舞台となる天津では溥儀が暮らしていた邸宅「静園」なども訪問したそうですが、そうしたモチーフはこの作品には織り込まれていなかったなあ(純粋に溥儀の家を見たかったということか)。

「静園」(天津市)

ラストエンペラー01.jpg ベルナルド・ベルトリッチ(最近はベルトルッチと表記するみたい)監督の「ラストエンペラー」は、アカデミー賞の作品・監督・脚本・撮影・美術・作曲など9部門を獲得した作品で(ゴールデングローブ賞作品賞も)、紫禁城で世界初の完全ロケ撮影を行うなど前半のスペクタクルに比べ、ジョン・ローンが演じる庭師になった元・皇帝が、かつて自分が住んでいた城に入場料を払って入るラストが侘しかったです。
 
『ラストエンペラー』(1987).jpg 2時間43分という長尺でしたが、実はこれでも3時間39分の完全版を劇場公開用に短縮したものであり、そのため繋がりの良くないところもあって、個人的には星3つ半の評価でした(これ、有楽町マリオン別館内の「丸の内ルーブル」で観たけれど、たまたま天井の可動式シャンデリアの真下に座ったので、最初それが気になったのを憶えている)。その後、今世紀に入って完全版のDVDが発売されていますが未見。完全版を観れば評価が変わるかもしれません。

 同監督作品では、「1900年」('76年)の方が質的に上のように感じましたが、こちらは、5時間16分の完全版を観ることが出来たというのも影響しているかもしれません(普段は3本立の「三鷹オスカー」で1本のみ上映)。

エントラップメント dvd.jpg「エントラップメント」2.gif「エントラップメント」●原題:ENTRAPMENT●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アミエル●製作:ショーン・コネリー/マイケル・ハーツバーグ/ロンダ・トーレフソン●脚本:ロン・バス/ウィリアム・ブロイルズ●撮影:フィル・メイヒュー●音楽:クリストファー・ヤング●原案:ロン・バス/マイケル・ハーツバーグ●時間:113分●出演:ショーン・コネリー/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/ヴィング・レイムス/ウィル・ パットン/モーリー・チェイキン/ケヴィン・マクナリー/テリー・オニール/マッドハヴ・ シャーマ/デヴィッド・イップ/ティム・ポッター/エリック・メイヤーズ/アーロン・スウォーツ●日本公開:1999/08●配給:20世紀フォックス(評価★★★)
The Last Emperor(1987)
The Last Emperor(1987).jpgラストエンペラーdvd.png「ラストエンペラー」●原題:THE LAST EMPEROR●制作年:1987年●制作国:イタリア・中国・イギリス●監督:ベルナルド・ベルトリッチ●製作:ジェレミー・トーマス●脚本:ベルナルド・ベルトルッチ/マーク・ペプロー●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:坂本龍一●時間:163分(劇場公開版)/219分(オリジナル全長版)●出演:ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/坂本龍一/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/デイヴィッド・バーン/コン・スー/ヴィヴィアン・ウー/ヴィクター・ウォン/デニス・ダン/イェード・ゴー/マギー・ハン/リック・ヤング/ウー・ジュンメイ/英若誠/リサ・ルー/ファン・グァン/立花ハジメ/坂本龍一/高松英郎/池田史比古/陳凱歌(カメオ出演)●日本公開:1988/01●配給:松竹富士●最初に観た場所:丸の内ルーブル (88-04-23)(評価:★★★☆)
丸の内ルーブル.jpg丸の内ルーブル シャンデリア.jpg丸の内ピカデリー3の看板.jpg 丸の内ルーブル 1987年10月3日「有楽町サロンパスルーブル.jpgマリオン」新館7階に5階「丸の内松竹」とともにオープン(2005年12月~2008年11月「サロンパス ルーブル丸の内」) 2014年8月3日閉館(「丸の内松竹」は1996年6月12日~「丸の内ブラゼール」、2008年12月1日~「丸の内ピカデリー3」) 

丸の内ピカデリー3.jpg丸の内ルーブル 閉館最終日の巨大シャンデリアの点灯

【2014年文庫化[幻冬舎文庫]】

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佐々木倫子の部分が星3.5で、綾辻行人の部分が星2.5。『オリエント急行の殺人』へのオマージュか。
月館の殺人.jpg 佐々木 倫子 (原作:綾辻行人) 『月館の殺人』.jpg   オリエント急行殺人事件  1974 dvd.jpg オリエント急行殺人事件01.jpg
月館の殺人 上 IKKI COMICS』 『月館の殺人 (下) 』「オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
月館の殺人3.jpg 沖縄育ちの雁ヶ谷空海は、鉄道嫌いの母の影響もあり、未だかつて電車に乗ったことがなかったが、母の死後、弁護士に「母方の祖父が生きていて、財産相続の件でぜひ北海道まで来てほしい」と伝えられ、祖父の待つ月館へ列車で向かうことになり、そのSL《幻夜号》には、祖父の招待客らしい6人の鉄道マニアも乗っていたが、そこで密室殺人事件が―。

 '04(平成16)年12月から翌年にかけて「月刊IKKI」('05年2月号〜'06年6月号)に連載された、『おたんこナース』の佐々木倫子の作画による本格ミステリの漫画化作品(原作・綾辻行人)で、上巻を読んでから下巻にいく間に随分間が空いてしまい(下巻は上巻刊行の約1年後の'06年7月刊行)、そうしたら、下巻に入って状況が随分違っているではないかとやや唖然とさせられました(雑誌連載は読んでないんで)。

 鉄道ミステリと言えば、本書にも出てくる『オリエント急行殺人事件』や『Xの悲劇』が有名ですが、「オリエント急行」とは車両だけ同じでストーリーは違うだろうことは予想に難くないのですが、『Xの悲劇』と似たようなことになるのかなと、一瞬思ったりもして...。

 結局それなりにオリジナリティはあったけれども、前提状況にかなり無理があり、相当「空海」という主人公がボケっとしていないと成り立たないような話にも思えました(雪の中で停止している列車というのは、クリスティの『オリエント急行の殺人』へのオマージュだろうが)。むしろ、鉄道マニアの類型が鉄道に関するマニアックな薀蓄に絡めて面白く描き分けられていて、その部分では最後まで楽しめた感じです。

 Amzon.comかどこかの評で、佐々木倫子の部分が星3.5で、綾辻行人の部分が星2.5という評価があったように思いますが、個人的には全く同感で、装丁などは立派ですが、内容的には、息抜き程度には悪くないといったところでしょうか(『おたんこナース』の単行本同様、大判で読み易いし)。

オリエント急行殺人事件 映画 アルバート・フィニー.jpg コミックであるせいか、読んでいる間ずっとクリスティの原作『オリエント急行の殺人』でなく、シドニー・ルメット監督の映画「オリエント急行殺人事件」('74年/オリエント急行殺人事件 snow.jpg英・米)の方が頭に浮かんでいました(原作を読んだ時はあまり雪のシーンをイメージしなかった?)。アルバート・フィニー(1936-2019)がポワロを演じたほか(アカデミー主演男優賞にノミネートされたが、彼のポアロ役はこの一作きりで、以後、アガサ・クリスティ原作の映画化は「ナイル殺人事件」('78年)、「地中海殺人事件」('82年)、「死海殺人事件」('88年)と全てピーター・ユスティノフがポアロを演じている)、被害者役のリチャード・ウィドマークをはじめ、アンソニー・パーキンス、ジョン・ギーオリエント急行殺人事件 バーグマン.jpgルグッド、ショーン・コネリー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ウェンディ・ヒラー、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン、マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセット、ジャン=ピエール・カッセル等々が出演したオールスターキャスト映画でしたが、神経質で少しエキセントリックなところがある中年のスウェーデン人宣教師を演じたイングリッド・バーグマンが印象的でした。イングリッド・バーグマンは事件の中心人物的な公爵夫人役を打診されたけれども、この地味な宣教師役を強く希望したそうで、その演技でアカデミー助演女優賞を獲得しています。


オリエント急行殺人事件 2017 00.jpg(●2017年にケネス・ブラナー監督・主演のリメイク作品「オリエント急行殺人事件」('17年/米)が作られた。Amazon.comのレビューなどを見ても評価が割れているが、本国でも賛否両論だったようだ。映画批評集サイトのRotten Tomatoesのサイト側によオリエント急行殺人事件 201700.jpgる批評家の見解の要約は「映画史の古典となった1974年版に何一つ新しいものを付け足せていないとしても、スタイリッシュなセットとオールスターキャストのお陰で、『オリエント急行殺人事件』は脱線せずに済んでいる」となっている。個人的感想も概ねオリエント急行殺人事件 2017 1.jpgそんな感じだが、セットは悪くないけれど、列車が雪中を行くシーンなどにCGを使った分、新作の方が軽い感じがした。旧作にも原作にもないポワロのアクションシーンなどもあったりしたが、最も異なるのは終盤であり、ポワロが事件にどう片を付けるか悩む部分が強調されていて、ラストの謎解きもダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模した構図の中でケネス・ブラナーの演劇的な芝居が続く重いものとなっている。旧作は、監督であるオリエント急行殺人事件 2017 l.jpgシドニー・ルメットが、「スフレのような陽気な映画」を目指したとのことで、ポワロの事件解決後、ラストにカーテンコールの意味合いで、乗客たちがワインで乾杯を行うシーンを入れたりしているので、今回のケネス・ブラナー版、その部分は敢えて反対方向を目指したのかもしれない。ただ、もやっとした終わり方でややケネス・ブラナー監督の意図がやや伝わりにくいものだった気もする。)


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オリエント急行殺人事件  1974 dvd.jpgオリエント急行殺人事件02.jpg「オリエント急行殺人事件」●原題:MURDER ON THE ORIENT EXPRESS●制作年:1974年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:ポール・デーン●撮影:ジェフリー・アンスワース●音楽:リチャード・ロドニー・ベネット●原作:アガサ・クオリエント急行殺人事件03.jpgリスティ「オリエント急行の殺人」●時間:128分●出演:アルバート・フィニー/リチャード・ウィドマーク/アンソニー・パーキンス/ジョン・ギールグッド/ショーン・コネリー/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/ウェオリエント急行殺人事件 ショーン・コネリー.jpgオリエント急行殺人事件 バコール.jpgンディ・ヒラー/ローレン・バコール/イングリッド・バーグマン/マイケル・ヨーク/ジャクリーン・ビセット/ジャン=ピエール・カッセル●日本公開:1975/05●配給:パラマウント=CIC(評価:★★★☆)

オリエント急行殺人事件 [DVD]」Kenneth Branagh
オリエント急行殺人事件 2017 dvd.jpgオリエント急行殺人事件 20172.jpg「オリエント急行殺人事件」●原題:MURDER ON THE ORIENT EXPRESS●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:リドリー・スコット/マーク・ゴードン/サイモン・キンバーグ/ケネス・ブラナー/ジュディ・ホフランド/マイケル・シェイファー●脚本:マイケル・グリーン●撮影:ハリス・ザンバーラウコス●音楽:リパトリック・ドイル●原作:アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」●時間:114分●出演:ケネス・ブラナー/ペネロペ・クルス/ウィレム・デフォー/ジュディ・デンチ/ジョニー・デッ/ジョシュ・ギャッド/デレク・ジャコビ/レスリー・オドム・Jrオリエント急行殺人事件 2017michelle-pfeiffer.jpgミシェル・ファイファー/デイジー・リドリー/トム・ベイトマン/オリヴィア・コールマン/ルーシー・ボイントン/マーワン・ケンザリ/マオリエント急行殺人事件 2017 deppu.jpgヌエル・ガルシア=ルルフォ/セルゲイ・ポルーニン/ミランダ・レーゾン●日本公開:2017/12●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)

Johnny Depp

Michelle Pfeiffer

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映画では割愛されてしまった素晴らしい"潜水艦"トリック。

レッド・オクトーバーを追え 上.jpg レッド・オクトーバーを追え下.jpg レッド・オクトーバーを追え!2.jpg レッド・オクトーバーを追え!.jpg Tom Clancy.jpg Tom Clancy
レッド・オクトーバーを追え (上) (文春文庫)』『レッド・オクトーバーを追え (下) (文春文庫)』〔'85年〕映画「レッド・オクトーバーを追え!」

THE HUNT FOR RED OCTOBER0.jpgTHE HUNT FOR RED OCTOBER1.jpg 1984年に発表されたトム・クランシー(Tom Clancy)のデビュー作で、'90年の映画化作品でも御馴染みですが、スケールの大きい海洋軍事小説であり、また、米ソ冷戦の軍事的背景や、原潜レッド・オクトーバー号のラミウス艦長を初めとする人物の描写などがしっかりしているのではないかと思います。

 しかし何よりもリアリティに寄与しているのが、潜水艦を初めとする軍事兵器に関する詳細な専門的記述で、何だかメルヴィルの『白鯨』とちょっと似ているかもしれないという気になりました(『白鯨』も捕鯨に関する百科事典的ウンチクが矢鱈スゴく、「世界一退屈な小説」とも言われている)。             

 トム・クランシーは保険代理業をやっていた人で、何でそんな一介の保険セールスマンがここまで書けるのか、不思議な気もします(アメリカ海軍については、リクルーティング目的でかなりの情報をサイト等で公開しているし、一般にもマニアが多くいるようですが...)。仕事をしながらおおよそ9年の歳月をかけて書き上げたそうですが、単なるオタクの領域を超えています。正直、『白鯨』のときと同じく、いささか食傷しました。でも、それを"乗り越えて"至る結末は、満足のいくものでした。

 映画化作品(監督は「ダイ・ハード」('88年/米)のジョン・マクティアナン)の方は、原作と細部において異なり、軍事や兵器に詳しい人たちの間で326103.jpgは、どっちがいいとかどっちがおかしいとか議論があるみたいです。映画での海中シーンの殆どは、水中での撮影ではなく、スモークを焚いて撮ってるとのこと、海中をいく潜水艦の感じをうまく出していたし、音響にもシズル感がありました。ショーン・コネリーら役者陣の演技もいいと思いました。

Sean Connery as Captain Ramius inside the Red October

 ところが、原作で最も感心させられた、囮の潜水艦を使ってソ連側の乗組員を錯覚させるという巧妙かつ大掛かりなトリックが、映画ではスッポリ抜け落ちていて、最後にガックリきたというか、唖然としました。映画だけ観ればまあまあだったのかもしれませんが、原作を読んだ上でだと、原作の白眉とも言える一番のアイデアが生かされていないというのは、やはりいかがなものかと。THE HUNT FOR RED OCTOBER movie.jpg従って、この映画に対する個人的評価はあまり高くはないのですが、スモークで本当に海の中のように見せる技術的な工夫だけは評価できます。

「レッド・オクトーバーを追え!」●原題:THE HUNT FOR RED OCTOBER●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●音楽:バジル・ポールドゥリス●原作:トム・クランシー 「レッド・オクトーバーを追え」●時間:135分●出演:ショーン・コネリー/アレック・ボールドウィン/スコット・グレン/ジェームズ・アール・ジョーンズ/ティム・カリー/コートニー・B・ヴァンス/ステラン・スカルスガルド/ジェフリー・ジョーンズ/リチャード・ジョーダン/ジョス・アックランド/ゲイツ・マクファーデン/トマス・アラナ/ティモシー・カーハート●日本公開:1990/07●配給:UIP (評価★★★)

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多少マニアックな映画ファンが楽しんで読めるヒッチコック入門書。 

ヒッチコック.jpg  ヒッチコック2.jpg 白い恐怖 チラシ.jpg
ヒッチコック』 講談社現代新書 〔'86年〕/筈見 有弘 (1937-1997/享年59)/「白い恐怖 [DVD]」チラシ
ヒッチコック2.jpg
 ヒッチコックぐらい、その多くの作品が日本で見られる外国の監督はいないのではないでしょうか。例えば双葉十三郎『外国映画ぼくの500本』('03年/文春新書)でも、結果として作品数的にはヒッチコック作品が最も多く取り上げられていたし、自分自身も、劇場で見たものだけで20本を超えます(しかもハズレが少ない)。本書はそうしたヒッチコック映画の数々を、ストーリーや状況設定、小道具や出演女優など様々な角度から分析し、よく使われる「共通項」をうまく抽出しています。

『白い恐怖』(1945)2.jpgsiroikyouhu3.jpg  例えば、白と黒の縞模様を見ると発作を起こす医師をグレゴリー・ペック、彼を愛し発作の原因を探りだそうとする精神科医をイングリッド・バーグマンが演じた「白い恐怖」(原作はフランシス・ヒーディングの『白い恐怖』、本国での発表は1927年)では、グレゴリー・ペックの見る夢のシーンで用いられたサルバドール・ダリによるイメージ構成にダリの実験映画と同じような表現手法が見出せましたが(これにテルミンの音楽が被る)、この部分はあまりにストーレートで杓子定規な精神分析的解釈で、個人的にはさほどいいとは思えず、著者も「本来のヒチコックの映像造形とはかけ離れている」としています。

「白い恐怖」より(イメージ構成:サルバドール・ダリ)
    
白い恐怖 イングリッド・バーグマン.jpg  一方、イングリッド・バーグマンがはじめはメガネをかけていたことにはさほど気にとめていませんでしたが、他の作品では眼鏡をかけた女性が悪役で出てくるのに対し、この映画では、一見冷たさそうに見える女性が、恋をすると情熱的になることを効果的に表すために眼鏡を使っているとのことで、ナルホドと(イングリッド・バーグマンはこの作品で「全米映画批評家協会賞」の主演女優賞を受賞)。

 同じ小道具へのこだわりでも、その使い方は様々なのだなあと感心させられました(ただし、眼鏡をかけたイングリッド・バーグマンもまた違った魅力があり、ヒッチコックという人は、元祖「眼鏡っ子」萌え―だったかもと思ったりもして...。

マーニー 01.jpgマーニー 02.jpg 一方、「白い恐怖」と同様に精神分析の要素が織り込まれていたのが「マーニー」('64年)でした(日本では「マーニー/赤い恐怖」の邦題でビデオ発売されたこともある)。ある会社の金庫が破られ、犯人は近頃雇い入れたばかりの女性事務員に違いないとういうことになるが、当の彼女はその頃ホテルでブルネットの髪を洗って黒い染髪料を洗い流すとブロンドに様変わり。よって、その行方は知れない―幼児期の体験がもとで盗みを繰り返し、男性やセックスにおびえる女性マーニーを「鳥」('63年)のティッピ・ヘドレンが演じ(彼女も血筋的にはバーグマンと同じ北欧系)、彼女と結婚して彼女を救おうとする夫を「007 ロシアより愛をこめて」('63年)のショーン・コネリーが演じていますが、夫が妻を過去と対峙させてトラウマから解放する手法が精神分析的でした(夫は単なる金持ちの実業家で、精神分析ではないのだが)。

マーニー bul.jpg 著者はこの映画を初めて観たとき、ブルネットのときは盗みを働き、ブロンドの時は本質的に善であるマーニーから、ヒッチコックのブロンド贔屓もずいんぶん露骨だと思ったそうです。「裏窓」('54年)のグレース・ケリー、「めまい」('58年)のキム・ノヴァクも確かにブロンだしなあ。今まで観たことのある作品もナルホドという感じで、次にもう一度観る楽しみが増えます。
"Spellbound by Beauty: Alfred Hitchcock and His Leading Ladies (English Edition)"
Spellbound by Beauty.jpg 本書179pに、ティッピ・ヘドレンはグレース・ケリーをしのぐほどにクールなブロンド美女で、「生来の内気さを失ったヒッチコックは、彼女に言いよったが、彼女の方では相手にしなかったという噂もある」とありザ・ガール ヒッチコックに囚われた女.jpgますが、実際セクハラまがいのこともしたようです(ヒッチコックによるヘドレンへのセクハラを描いたドナルド・スポトの『Spellbound by Beauty: Alfred Hitchcock and His Leading Ladies』が、2012年に米・英・南アフリカ合作のテレビ映画「ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女」としてトビー・ジョーンズ、シエナ・ミラー主演で映像化されていて、2013年にスター・チャンネルとWOWOWで放送されたようだが、個人的には未見)。
     
ヒッチコック アートプリント(Alfred Hitchcock Collage)
ヒッチコック アートプリント.jpg 著者なりの作品のテーマ分析もありますが、「すべてエンターテイメントのために撮った」というヒチコックの言葉に沿ってか、それほど突っ込んで著者の考えを展開しているわけではありません。

 むしろ映像として、あるいは音として表されているものを中心に、ヒッチコックのこだわりを追っていて、映画ファンというのは誰でも多少マニアックなところがあるかと思うのですが、そうしたファンが楽しんで読めるヒチコック入門書になっています。

映画術 フランソワ トリュフォー.jpg 因みに、映画監督のフランソワ・トリュフォーによるヒッチコックへのインタビュー集『映画術―ヒッチコック・トリュフォー』('81年/晶文社)では、ヒッチコックは、「バーグマンは私の演出を好まなかった。私は議論が嫌だったから、"イングリッド、たかが映画じゃないか"と言った。彼女は名作に出ることだけを望んだ。製作中の映画が名作になるかならないかなんて誰がわかる?」とボヤいています。ヒッチコックは当初バーグマンに特別な感情を抱いていたため、バーグマンとイタリア人監督ロベルト・ロッセリーニとの不倫劇はヒッチコックを大いに失望させたそうで、その辺りがこうしたコメントにも反映されているのかもしれません。ヒッチコックはバーグマンを「白い恐怖」('45年)、「汚名」('46年)、「山羊座のもとに」('49年)の3作で使っていますが、バーグマンとロッセリーニが正式に結婚した1950年以降は使っていません(ヒッチコックがバーグマンに"たかが映画じゃないか"と言ったのは「山羊座のもとに」撮影中のことだが、これはヒッチコックの口癖でもあったらしく、「サイコ」('60年)の主演女優のジャネット・リーにも同じことを言い、「そう、たかが映画よね。たった45秒のシーンのために、監督は8日間カメラを回し、70回カメラアングルを変えたわ」と切り返されたそうだ)。

 しかし、ともあれ、あのヒッチコックが"たかが映画じゃないか"と言ったというのが面白く、この言葉は、山田宏一、和田誠両氏の共著のタイトルになっています(『たかが映画じゃないか』('78年/文藝春秋))。

白い恐怖 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)」「白い恐怖 [DVD]
白い恐怖 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ).jpg白い恐怖 イングリッド・バーグマン/グレゴリー・ペック.jpg白い恐怖.jpg 「白い恐怖」●原題:SPELLBOUND●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:アルフレッド・ヒッチコック●製作:デヴィッド・O・セルズニック●脚本:ベン・ヘクト/アンガス・マクファイル●撮影:ジョージ・バーンズ●音楽:ミクロス・ローザ●原作:フランシス・ビーディング(ジョン・パーマー/ヒラリー・エイダン・セイント・ジョージ・ソーンダーズ)●時間:111分●出演:イングリッド・バーグマン/グレゴリー・ペック/レオ・G・キャロル/ロンダ・フレミング/ジョン・エメリー/ノーマン・ロイド/ビル・グッドウィン ●日本公開:1951/11●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:三鷹オスカー (83-10-22) (評価:★★★☆)●併映:「めまい」「レべッカ」(アルフレッド・ヒッチコック)
マーニー [DVD]
マーニー 1964.jpgマーニー 05.jpg「マーニー(マーニー/赤い恐怖)」●原題:MARNIE●制作年:1964年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:ジェイ・プレッソン・アレン●撮影:ロバート・バークス●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ウィンストン・グレアム「マーニー」●時間:130分●出演:ショーン・コネリー/ティッピー・ヘドレン/マーティン・ガベル/ダイアン・ベイカー/ルイーズ・ラサム/ブルース・ダーン●日本公開:1964/08●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(評価:★★★☆)

《読書MEMO》
●ヒチコックは「間違えられた男」の話が好き...暗殺者の家・三十九夜・弟3逃亡者・断崖・間違えられた男・泥棒成金・北北西に進路を取れ・フレンジー...
●偏執狂的小道具演出法...
・チキン料理(断崖・ロープ・知りすぎていた男)
・眼鏡をかけた女(弟3逃亡者・北北西に進路を取れ・三十九夜・断崖・白い恐怖・知りすぎていた男)
・イニシャル入りライター(見知らぬ乗客)など

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