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"エログロ"色の濃い3作を選んだバジリコ版。増村保造の映画化作品は「コレクター」風マザコン映画。

バジリコ 盲獣1.jpg盲獣 dvd.jpg盲獣poster.jpg 盲獣40.jpg
盲獣』(2016/01 バジリコ)「盲獣 [DVD]」「盲獣」ポスター 船越英二/緑魔子

 浅草歌劇の踊り子・水木蘭子は、ある日恋人の使いと偽る者に誘拐され、見知らぬ地下室へと連れ込まれる。薄暗い地下室には奇矯なオブジェが多数あり、それらは女性の身体の部位をかたどり、色彩は奇妙だが手触りは様々な素材を使った巧妙なもので、腕なら腕、唇なら唇とまとめて無数に並べられていた。その地下室の主は水木の前に度々現れていた「盲目の男」だった。生来の全盲である彼はその慰みとして「触覚」の世界を見い出し、父の莫大な遺産を使ってそれを満足させる芸術を造らせ続けているという。やがてこの触覚の世界に没頭し、彼と共にこの地下室で暮らすようになる蘭子。しかし、蘭子に飽いた男は、その本性を現し始める―。(「盲獣」)

 女性の体全体の美に執着する野崎三郎は、ある日友人の紹介で踊り子・お蝶に出会って、すっかりお蝶の身体の虜となり、共に暮らすようになる。そんなある日、お蝶が何かに怯えるように駆け落ちを提案する。不思議に思いつつも、野崎が以前行ったことのある人里離れた籾山ホテルへと身を寄せたが、沼でお蝶が姿を消してしまう。友人の植村喜八とともに、お蝶失踪の真実を探る野崎だが、何者かによって洞窟に閉じ込められてしまう。そして、犯人かと思っていた謎の男・進藤までが2人のいる洞窟に監禁される―。(「闇に蠢く」)

 探偵小説家の「私」は、偶然知り合った実業家夫人・小山田静子に助けを求められる。かつて捨てた男である、謎の探偵作家・大江春泥に脅迫されているそうだ。静子への下心と作風の異なる春泥への興味から、「私」は春泥を追うことになるが、行方を掴めぬ内に、春泥の脅迫通り、静子の夫・六郎が死体で発見される。しかし、そこには思いもよらない真相があった―。(「陰獣」)

 「盲獣」(1931(昭和6)年2月から翌1932(昭和7)年3月まで雑誌「朝日」に連載)、「闇に蠢く」(1926(大正15)年1月から11月まで雑誌「苦楽」に連載、その後中断し1927年に完結)、「陰獣」(1928(昭和3)年8月から10月まで雑誌「新青年」に連載)の3作を収めています。江戸川乱歩(1894-1965)の生誕120周年記念と言うより、没後50年を経て著作権が切れたために各社からその作品の刊行が盛んですが([Kindle版なども含め)、このバジリコ版はその中でも"エログロ"色の濃い3作を選りすぐったという感じでしょうか。

十字路・盲獣0_.jpg 「盲獣」は、作者自身は本作を失敗作としており、桃源社版の「江戸川乱歩全集」刊行の際、後半の一部を削除したほどです。推理的要素は殆ど無く、ただ男が猟奇的な殺人を繰り返していくばかりで(二度三度と繰り返し、最後は海女さんたちを纏めて殺害して犠牲者は計7名に)リアリティも何もなく、そこがまた一面において乱歩らしいところですが、やや突っ走りすぎて話が収まらなくなり、「全部男の空想でした」で終わってもおかしくないような内容でした。 『十字路・盲獣 (江戸川乱歩長編全集(20))』春陽堂書店 (1973)

陰獣~江戸川乱歩全集第3巻_.jpg 「闇に蠢く」の方が、カニバリズムなどがモチーフになってはいるものの、犯人推理の要素があり、その意外性が結構楽しめるかもしれません。「陰獣」は、更に凝った筋立てで、ラストは犯人が誰なのか曖昧にしてあります(但し、主人公にも読者にも誰が犯人か何となく分かるようにはなっている)。これらの作品にもエログロ的要素、更にはSM的要素までありますが、謎解きの要素もあって、「盲獣」ほど"異常さ"が前面に出てこない感じでしょうか。一方の「盲獣」も、純粋な猟奇小説に近いにしても、犯人があまりに易々と犯行を繰り返すため、却って軽すぎて、仕舞いには「笑っちゃう」といった印象も受けました(作者が自ら失敗作としたのも頷ける)。
陰獣~江戸川乱歩全集第3巻~ (光文社文庫)』[Kindle版]
(1. 踊る一寸法師/2. 毒草/3. 覆面の舞踏者/4. 灰神楽/5. 火星の運河/6. 五階の窓/7. モノグラム/8. お勢登場/9. 人でなしの恋/10. 鏡地獄/11. 木馬は廻る/12. 空中紳士/13. 陰獣/14. 芋虫)

 「陰獣」は加藤泰(1916-85)監督の「江戸川乱歩の陰獣」('77年/松竹)として映画化されているほか、何度かテレビドラマ化されています。一方、「盲獣」も、"映像化"するのは一見無理そうな作品ですが、「」('64年/大映)の増村保造増村保造.jpg1924-86)監督により「盲獣」('69年/大映)として映画されていて(増村保造は東京大学法学部卒業後、大映に入社。同大学文学部哲学科に再入学し、イタリアにも留学、フェデリコ・フェリーニやルキノ・ヴィスコンティらに学んだ)、出演は、「黒い十人の女」('61年)の船越英二(1923-2007)、「やさしいにっぽん人」('77年)の緑魔子(東映)、「静かなる決闘」('49年)の千石規子(東宝)です。この映画にはこの3人しか登場しませんが、船越英二がこんなマニアックな役を演じているのが何となくうれしい(?)。
増村保造
盲獣1.jpg 映画「盲獣」では、時代盲獣12.jpgが現代に置き換えられていて、誘拐される女性は原作では浅草歌劇の人気踊り子だったのが、映画では売れないファッションモデルから有名写真家のヌードモデルへ転身してその個展まで開かれるようになった女性(緑魔子)というように改変されています(彼盲獣09.jpg女が呼ぶ「按摩師」は「マッサージ師」(船越英二)になっているが、まあ、これは同じこと)。その彼女が攫(さら)われて連れてこられた地下室の、女性の身盲獣7.jpg体の部位をかたどったオブジェが林立する様が、映siroikyouhu3.jpg像的によく再現されていたように思います(アルフレッド・ヒッチコックの「白い恐怖」('45年/米)におけるサルバドール・ダリによるイメージセットを想起させる)。

盲獣10.jpg 映画では、盲目の男による誘拐は1度だけで、中盤までの展開は、監禁される側が監禁する側に対して憐れみを抱くようになるという点で、ウィリアム・ワイラー監督の「The Collector  .jpgコレクター」('65年/英・米)の影響を受けているように思いました。その後、男女が異常性愛に溺れていくのは江戸川 乱歩の原盲獣s.jpg作と同じですが、終盤にかけて、それまで息子である男のために"獲物"の調達と監禁に協力していた母親(千石規子)が、2人の関係が思いもよらず深いものとなったことを危惧してそこへ入り込んできたために三角関係の展開となり、その時点で原作とは別物になったように思いました(マザコン映画だったということか)。

盲獣vs一寸法師6.jpg 原作は、後に「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」('69年)の石井輝男(1924-2005)監督によって、その遺作「盲獣vs一寸法師」('04年/石井プロダクション=スローラーナー)の中でも一部映像化されていますが、先行例があったからこそ石井輝男監督も映像化に踏み切れたのではないでしょうか。でも、増村保造版に比べると石井輝男版セットなどは安っぽい印象を受け(意図したキッチュ感なのかもしれないが、何となく学生の自主製作映画みたい)、両者を見比べると、映画会社と独立プロダクションの差はあるにしても、改めて増村保造の映画作りへのこだわりを感じさせます。
石井輝男監督「盲獣vs一寸法師」('04年)

 「盲獣vs一寸法師」は全部を観ていないので評価不可。「盲獣」は、カルト的なポイントは加味しない評価で「星3つ」。カルト的要素を加点すれば「星3つ半」か或いは「星4つ」に近いといったところでしょうか。

音楽:林 光(1931-2012)
林光.jpg盲獣11.png盲獣090.jpg「盲獣」●制作年:1969年●監督:増村保造●脚本:白坂依志夫●撮影:小林節雄●音楽:林光●原作:江戸川乱歩「盲獣」●時間:84分●出演:船越英二緑魔盲獣16.jpgMôjû (1969) .jpg盲獣19.jpg千石規子●公開:1969/01●配給:大映(評価:★★★)

Môjû (1969)

船越英二 in「黒い十人の女」('61年/大映)/緑魔子 in「やさしいにっぽん人」('71年/東プロ)/千石規子 in「静かなる決闘」('49年/東宝)
黒い十人の女 03.jpg やさしいにっぽん人       .jpg 「静かなる決闘」 千石.jpg

盲獣・陰獣 (河出文庫)』['18年]
盲獣・陰獣 (河出文庫).jpg「盲獣」...【1973年文庫化[春陽文庫(『十字路・盲獣―江戸川乱歩長編全集(20)』)]/1988年再文庫化[春陽堂書店・江戸川乱歩文庫(『十字路―他一編(盲獣)』)]/1988年再文庫化[講談社江戸川乱歩推理文庫(『盲獣』)]/2005年再文庫化[光文社文庫(『江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男』)]/2018年再文庫化[河出文庫(『盲獣・陰獣 』)]】
江戸川乱歩作品集Ⅱ 岩波文庫.jpg「闇に蠢く」...【1988年文庫化[春陽堂書店・江戸川乱歩文庫(『暗黒星―他一編(闇に蠢く)』)]/2004年再文庫化[光文社文庫(『江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚』)]】
「陰獣」...【2005年文庫化[光文社文庫(『江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣』)]/2008年再文庫化[角川ホラー文庫(『陰獣―江戸川乱歩ベストセレクション (4)』)]/2015年再文庫化[春陽堂書店・江戸川乱歩文庫(『陰獣 』)]/2018年再文庫化[岩波文庫(『江戸川乱歩作品集Ⅱ 陰獣・黒蜥蜴 他』)]/2018年再文庫化[河出文庫(『盲獣・陰獣』)]】

江戸川乱歩作品集Ⅱ 陰獣・黒蜥蜴 他 (岩波文庫)』['18年]
要旨(「BOOK」データベースより)
犯行の謎に迫る探偵と意表を突く犯人。謎と推理をテーマとした代表作群。「陰獣」は緻密な構成とトリックにより日本探偵小説の新段階を告げた。「黒蜥蜴」は妖しく美しい女賊黒蜥蜴と明智小五郎探偵との対決と愛の葛藤を描く。幻のデビュー作「一枚の切符」、本格探偵小説「何者」、戦後の好短篇「断崖」を収録。

《読書MEMO》
● 桂 千穂 『カルトムービー本当に面白い日本映画 1945→1980』['13年/メディアックス]
IMG_8盲獣.JPG

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強烈な自己規律で武士道に生きた河井継之助の生涯。作者の60年代作品は自由度が高くて面白い。

司馬 遼太郎 峠 単行本 前編.jpg司馬 遼太郎 峠 単行本 後編.jpg 司馬 遼太郎 峠 文庫  上.bmp 司馬 遼太郎 峠 文庫  中.bmp 司馬 遼太郎 峠 文庫  下.bmp峠 (上巻) (新潮文庫)』『峠 (中巻) (新潮文庫)』『峠 (下巻) (新潮文庫)
峠 前編』『峠 後編

河井継之助.jpg 幕末、雪深い越後長岡藩から江戸に出府した河井継之助(つぎのすけ)は、いくつかの塾に学びながら、歴史や世界の動きなど物事の原理を知ろうと努め、更に、江戸の学問に飽き足らなくなった継之助は、備中松山の藩財政を立て直した山田方谷のもとへ留学、長岡藩に戻ってからは藩の重職に就き、様式の銃器を購入して富国強兵に努めるなど藩政改革に乗り出すが、ちょうどその時、大政奉還の報せが届いた―。

河井継之助

司馬遼太郎 峠 3巻.JPG 開明論者であり、封建制度の崩壊を見通しながらも、家老という立場から長岡藩を率いて官軍と戦うという矛盾した行動をとらざるを得なかった河井継之助の悲劇を描いた長編小説で、1966(昭和41)年11月から1967(昭和43)年5月まで約1年半に渡って毎日新聞に連載された新聞小説ですが、『竜馬がゆく』の完成からほぼ半年後に書き始められ、作者が一番脂が乗り切っていた頃の作品と言えるのではないでしょうか。

 この小説によって、坂本竜馬や西郷・大久保や勝海舟などの幕末・維新の立役者に比べると一般にはそれまであまり知られていなかった河井継之助の名は、「最後の武士」として注目を集めるようになったと言われますが、武士の時代の終わりを最も鋭敏に感知しながらも、藩士として生きなければならないという強烈な自己規律によって武士道に生き、「最後の武士」と言われるようになったというのはある意味で皮肉なことなのかも。

 但し、作者自身、本書のあとがきにおいて、継之助がその死にあたって自分の下僕に棺を作らせ、庭に火を焚かせ、病床からそれを見つめ続けていたという、作中の凄絶なエピソードを再度とりあげ、継之助に見る武士道哲学を強調していることからも、この作品において「武士道倫理」「武士道精神」の凝縮された一典型を描こうとしたことは明らかであるように思います。

 継之助が自らの置かれた立場から「いかに藩をよくするか」に専心し、「中立国家」という理想を目指したのは「武士道倫理」からくるものであり、その想いが果たされないまま、「いかに美しく生きるか」という方向に転換されていったのは、これもまた「武士道精神」であるということでしょう。

 実際の河井継之助という人物は、官軍に徴発された藩民を殺戮したりもするなどの冷徹さも持ち、また、維新史上最も壮烈な北越戦争を引き起こした張本人として、その墓碑が砕かれたりもしたりして、必ずしもヒーロー的な存在とは言えない面も多々あったようですが、作品ではその部分はねぐって、継之助の女郎買いの話を織り込むなどして英傑(色傑?)ぶりを強調するだけでなく、公家女との神秘的な交情の話を織り込むなどして、物語としての面白味も全開。

 何せ、継之助の自筆で現存しているのは江戸から備中松山へ向かう際の旅日記『塵壺』のみ、本書が出る前にあった研究書は今泉鐸次郎著『河井継之助伝』(1910年)くらいだったというから、このことが却ってかなり自由に書ける要因になったのではないでしょうか。

 確かに『燃えよ剣』などもかなり自由に書いているけれど、土方歳三と架空の恋人「お雪」との函館での逢瀬の場面で、その日に歳三は函館にはいなかったという指摘が読者からあったりして、改版時に書き直しをせざるを得なかったとのこと。こうしたことに懲りたのかどうかはともかく、この作家の後期の作品には、史実を書き連ねて構成するタイプのものが多くなっており、やはり作者の60年代頃の作品群が一番面白のではないかと、個人的には改めて思いました。

花神 河井継之助1.jpg花神 河井継之助2.jpg 因みに司馬遼太郎が日本近代兵制の創始者・大村益次郎(村田蔵六)の生涯を描いた『花神』(1969(昭和44)年10月から1971(昭和46)年11月まで朝日新聞夕刊に連載)が'77(昭和52)年のNHKの大河ドラマ「花神」として放映された際に、脚本を担当した大野靖子(1928-2011/享年82)は、ドラマの中に『花神』だけではなく、司馬遼太郎作品から『世に棲む日日』『十一番目の志士』、そして、この『峠』の要素も織り込んだため、ドラマ花神4.jpg花神vhs.jpgでは河井継之助の活躍も結構取り上げられていたようです。主人公の大村益次郎を演じたのは中村梅之助(おでこに詰め物をして風貌を本人と似せた)、河井継之助を演じたのは高橋英樹(風貌がカッコ良すぎて実物と随分違うが...)でした。総集編のビデオ(全5巻)はあったものの(後にDVD化)、本編の方はオリジナルテープがNHKにも無いとのことです(当時はTV番組用のビデオテープが高価だったため、どんどん上書きして他の番組に使い回ししていた)。

「グラフNHK」より(下)  「花神」●演出:斉藤暁ほか●脚本:大野靖子●制作:成島庸夫●音花神 河井継之助 グラフnhk .jpg楽:林光●原作:司馬遼太郎「花神」「世に棲む日日」「十一番目の志士」「峠」(「燃えよ剣」)●出演:中村梅之助/中村雅俊/篠田三郎/米倉斉加年/西田敏行/田中健/大竹しのぶ/秋吉久美子/志垣太郎/尾藤イサオ/東野英心/夏八木勲/岡本信人/愛川欽也/月丘夢路/池田秀一/長塚京三/大滝秀治/金田龍之介/草笛光子/田村高廣/加賀まりこ/宇野重吉/浅丘ルリ子/高橋英樹●放映:1977/01~11(全52回)●放送局:NHK

【1968年単行本[新潮社(上・下)]・1993年改訂/1997年文庫化(上・下)・2003年改訂[新潮文庫 (上・中・下)]】

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手塚作品の変遷(初期・前半期作品)を概観する上では手頃。

手塚治虫クロニクル1.jpg          0(ゼロ)マン  手塚治虫.jpg キャプテンKen  手塚治虫.jpg   
手塚治虫クロニクル 1946~1967 (光文社新書)』『0マン』('59年)/『キャプテンKen』('60年)

フィルムは生きている2.jpg『鉄腕アトム』 朝日ソノラマ.jpg 手塚治虫の作品を年代別に取り上げ抜粋したもので、この「1946~1967」年版では、デビュー作『マアチャンの日記帳』('46年・17歳)から、以下、『新宝島』('47年・18歳)、『ロスト・ワールド』('48年・20歳)、『メトロポリス』('49年・20歳)、『ジャングル大帝』('50年・22歳)、『来るべき世界』('51年・22歳)、『鉄腕アトム』('52年・23歳)、『リボンの騎士』('53年・24歳)、『ケン1探偵長』('54年・25歳)、『第三帝国の崩壊』('55年・26歳)、『漫画生物学』('56年・27歳)、『ライオンブックス 狂った国境』('57年・28歳)、『フィルムは生きている』('58年・29歳)、『魔神ガロン』('59年・30歳)、『0魔人ガロン サンデーコミック.jpgマン』('59年31歳)、『キャプテンKen』('60年・32歳)、『ふし人間ども集まれ! 手塚 新書マンガシリーズ .jpgハトよ天まで1.jpgぎな少年』('61年・32歳)、『勇者ダン』('62年・33歳)、『ビッグX』('63年・34歳)、『ハトよ天まで』('64年・36歳)、『マグマ大使』('65年・36歳)、『バンパイヤ』('66年・37歳)、『アトム今昔物語』('67年・38歳)、『人間ども集まれ!』('67年・38歳)、『どろろ』('67年・38歳)まで、前半期22年間に発表された25作品の抜粋を収めています。

 タイトル通り、基本的には発表年代順の作品抜粋だけで本が成り立っていて、作品ごとの初出誌・作品の概要、今回どこでいつ発表されたものを抜粋掲載したかという数行のデータと、年ごとの作者に関連する出来事が簡単に纏められている以外は、編集作業と言えるのは、どの作品のどの部分を抜き出すかということしか実質的には行われておらず、末尾に漫画評論家・ブルボン小林(=芥川賞作家・長嶋有)氏の解説があるのみ。従って編者名はなく、作者名として「手塚治虫」となっていて、やや安易な本づくりという感じもするし、実際にネット書評などでも、そうした観点からの批判はあったように思います。但し、個人的には、初期の内容をよく知らなかった作品もかなりあり、最近ではこの辺りの作品も復刻・文庫化されているようですが、そうした作品のそれぞれの雰囲気を僅かながらでも知り、手塚治虫の初期も含めた前半期の仕事を概観する上では手頃な本でした。

四コマ漫画―北斎から「萌え」まで.jpg 手塚治虫も四コマ漫画からスタートしたことは、清水勲 著『四コマ漫画―北斎から「萌え」まで』('09年/岩波新書)で知りましたが、毎日小学生新聞の前身「少國民新聞」に連載された、作者当時17歳の作品のその完成度は、もう今の新聞連載漫画と変わるところのない、玄人レベルのように思いました。

少年サンデー版 キャプテンKen 限定版BOX.jpg 『鉄腕アトム』のイメージからか、作者の前半期の作品は、未来に対する期待において楽天的過ぎるという見方もありますが、『メトロポリス』('49年)、『来るべき世界』('51年)、『第三帝国の崩壊』('55年)など、近未来の恐怖を描いたSFもあるし、戦争を扱った世界観的なストーリーは早くからあったのだなあ(『ライオンブックス 狂った国境』('57年)は傑作)。『キャプテンKen』('60年)の主人公キャプテン・ケンは、その正体は、顔がそっくりの星野家の遠縁の少女(水上ケン)かと思いきや、実は未来からやってきた彼女の息子でした。映画「ターミネーター」('84年/米)のタイムパラドックスを先取りしていたと言えますが、SFでは伝統的によくある展開と言えなくもないかも。

少年サンデー版 キャプテンKen 限定版BOX (復刻名作漫画)

ジャングル大帝 テレビ 1965 2.jpg 『ジャングル大帝』のオリジナルも興味深く('50年初出、昭和25年かあ)、この作品の初出は『鉄腕アトム』よりも前ということになりますが、後に大幅に構成を変えて、作者の代表作となるとともに、'65年に、手塚作品では初のカラーTVアニメとなります。

 一方、60年代に入ってからの作品では、『ふしぎな少年』('61年)、『マグマ大使』('65年)、『バンパイヤ』('66年)辺りは、誌面発表から比較的間をおかずに、実写版のTVドラマになっています(TV版「バンパイヤ」は実写とアニメの合成ドラマ。変身シーンも前半実写で、子ども心に気持ち悪くでトラウマになった)。

ふしぎな少年 少年クラブ9月号ふろく.jpgふしぎな少年 太田博之.bmp 「ふしぎな少年」('61年/NHK、生放送ドラマ)で「時間よ~止まれ!」と叫んでいたサブタンを演じた太田博之('47年生まれ)は「小銭寿司チェーン」(「小僧寿しチェーン」ではない)の経営者に転身するも後に経営破綻し、「マグマ大使」('67年/フ江木俊夫  .jpgジテレビ。TBSの「ウルトラマン」の少し前くらいに放送が始まった)でマモル少年を演じた江木俊夫('52年生まれ。3歳でデビューし黒澤明の「天国と地獄」('63年)で三船敏郎演じる権藤の息子役を演じるなどした)は、その後ジャニーズ事務所のアイ水谷豊.pngドルグループ・フォーリーブスのメンバーとなり、「バンパイヤ」('68年/フジテレビ)でトッペイ・チッペイ兄弟の兄トッペイを演じた水谷豊('52年生まれ)は、今もTVドラマで活躍中と、子役のその後の人生は様々なようです。

「少年クラブ」1961年9月号付録

ふしぎな少年7.jpgふしぎな少年005.jpg「ふしぎな少年」●演出:辻真先●脚本:石川透●原作:手塚治虫●主題歌:(唄)ジュディ・オング●出演:太田博之/忍節子/椎名勝巳/青柳美枝子/日下武史/小山源喜/愛川欣也/長門勇/岩下志麻●放映:1961/04~09(全130回)●放送局:NHK

マグマ大使.jpgマグマ大使 egi.jpg「マグマ大使」●演出:土屋啓之助/船床定男/中尾守●プロデューサー・製作:上島一男●脚本:若林藤吾/高久進/山浦弘靖/梅樹しげる/内山順一郎/石堂淑朗●音楽:山本直純●原作:手塚治虫●出演:岡田真澄/江木俊夫/大平透/魚澄鉄也/三瀬滋子/清水元/八代真マグマ大使 岡田真澄.jpg矢子/二宮秀樹/吉田次昭/イーデス・ハンソン/三瀬滋子/黒丸良●放映:1966/07~1967/06(全52回)●放送局:フジテレビ

江木俊夫/岡田真澄

ソノシート(朝日ソノラマ) 林 光(1931-2012.1.5)
バンパイヤ ソノシート.jpg林光.jpgバンパイヤ 水谷豊.png「バンパイヤ」●演出:山田健/菊地靖守●制作:疋島孝雄/西村幹雄●脚本:山浦弘靖/辻真先/藤波敏郎/久谷新/安藤豊弘/雪室俊一/中西隆三/宮下教雄/今村文人/三芳加也/石郷岡豪●音楽:司一郎/林光●原作:手塚治虫●出演:水谷豊/佐藤博/渡辺文雄/戸浦六バンパイヤ 水谷豊2.jpg宏/山本善朗/左ト全/上田吉二郎/岩下浩/平松淑美/鳳里砂/嘉手納清美/桐生かおる/市川ふさえ/館敬介/中原茂男/手塚治虫●放映:1968/10~1969/03(全26回)●放送局:フジテレビ

「バンパイヤ」テーマソング

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