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木村拓哉は軽い感じだったが、原作の良さ、周囲の演技陣に助けられていた。

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木村拓哉/壇れい
武士の一分 [木村拓哉]|中古DVD [レンタル落ち] [DVD]
 
「武士の一分」01.jpg 幕末時代の海坂藩。優れた剣技を生かされることなく毒見役の職を務める小侍の三村新之丞(木村拓哉)は、毒味の仕事の最中倒れ、城内は藩主の暗殺未遂の疑いで騒然となるが、原因はつぶ貝の貝毒と判明。城内は落ち着きを取り戻したものの「武士の一分」02.jpg、御広敷番頭の樋口作之助(小林稔侍)は責任を取らされ切腹の運びとなる。三日後に意識を取り戻した新之丞は、自分の「武士の一分」03.jpg目が見えなくなっていることに気がつく。妻・加世(檀れい)は医師の玄斎(大地康雄)を頼るが、彼は「新之丞の目はもう治らない」と告げる。視力を失ったかわりに、他の感覚に鋭さが増し、加世の化粧の臭い等から男の影を感じ取る。最初に加世に関する話を持ってきたのは「武士の一分」04.jpg従妹の波多野以寧(桃井かおり)だった。ある場所、加世を見たという噂を持ち込んだのだ。その場所が武家の妻女が夜分出入りすべき町ではなかった。視力を失って以来、久方ぶりに新之丞は剣の稽古をした。だが、以「武士の一分」木村.jpgで前と勝手が違う。最初は戸惑いを覚えることが多かった。ある時、新之丞は徳蔵(笹野高史)に加世の尾行を命じた。その結果、噂は本当だったのが判明した。相手は新之丞の上司・島村藤弥(坂東三津五郎)。新之丞はそうなった経緯を加世に問いただし、離縁を申し伝えた。その後、新之丞は同僚の加賀山(近藤公園)からあることを聞かされる―。

「武士の一分 ベルリン国際映画祭.jpg 山田洋次の監督の「たそがれ清兵衛」('02年)、「隠し剣 鬼の爪」('04年)と並ぶ「時代劇三部作」の'06年公開の完結作で、興行収入は41.1億円で、松竹配給映画としての歴代最高記録(当時)を樹立したとのことです。ただし、それでも'06年公開作の興行収入ランキングは11位で、トップ10から漏れています(1位は「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」で100.2億円)。日本上映に先駆けて、第57回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門オープニング作品として上映されています。

檀れい・桃井かおりin 第57回ベルリン国際映画祭(2007年2月9日)

「武士の一分」07.jpg 原作は「たそがれ清兵衛」、「隠し剣 鬼の爪」と同じく藤沢周平の短編であり。短編集『隠し剣 秋風抄』('81年/文藝春秋)の中の一編である「盲目剣谺返し」(昭和55年発表)です(「隠し剣 鬼の爪」の原作と同じシリーズということになる)。文庫本で50ページ弱の話であるため、映画では少しだけ話を膨らませている部分があります。

 まず、原作は新之丞がすでに視力を失っているところから始まりますが、映画はそこに至る経緯を現在進行形で描いていきます。毒見役の仕事が(まるでEテレの番組内の解説映像のように)丁寧に描かれていますが、小林稔侍が演じる御広敷番頭の樋口作之助は原作に登場しないので、責任を取らされ切腹させられるのも映画のオリジナル(こっちの方が主人公より気の毒?)。

 しかし、新之丞が失明してからラスト、かたき討ちを果たした後の後日譚までは、比較的原作に忠実に作られていたように思いました。ただし、新之丞が島村と斬り合って彼を斃した際に、原作ではすでに島村はそこで絶命しいているのに、映画では腕を切り落とされたものの生きていて、自ら切腹したことになっていて「彼にも武士の一分があった」と他人に言われていますが、これは映画のオリジナルです。個人的には、新之丞の言う「武士の一分」だけでよく、こっちは蛇足だったように思えました。

「武士の一分」4.jpg 木村拓哉は頑張っている印象でしたが、SMAP(スマップ)の先入観があるせいか、ちょっと軽い感じも。原作の良さ、山田洋次監督の演出力、そして何より徳蔵を演じた笹野高史、加世を演じた檀れい、剣の師匠・木部孫八郎を演じた緒形拳など周囲の多くの俳優陣(桃井かおりや小林稔侍もいる)に助けられていたように思います(笹野高史はこの演技で第30回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞)。作品自体の個人的評価は、「たそがれ清兵衛」★★★☆、「隠し剣 鬼の爪」★★★★に対して、その間くらいでしょうか(一応、★★★★としたが、やや甘いか)。

桃井かおり/笹野高史
小林稔侍/坂東三津五郎

「武士の一分」6.jpg そう言えば、緒形拳は前作「隠し剣 鬼の爪」では、主人公(永瀬正敏)の親友の妻(高島礼子)を騙して寝とってしまう家老の役(敵役)で、つまりこの作品における坂東三津五郎が演じる島村と似たような、いわば悪役でしたが、今回は主人公の剣の師匠で、主人公の「武士の一分」の意を汲む人物の役でした。「隠し剣 鬼の爪」で主人公の剣の師匠役を演じた舞踏家の田中泯は、その前作「たそがれ清兵衛」では、上意討ちにより主人公に斃される役だったので、前作で敵役だと、次は主人公を助ける役とかが回ってくるのかも。坂東三津五郎も、山田洋次監督の次の作品「母べえ」('08年)では、一家の良き父親で反戦思想を抱く文学者を演じていたから、そうやってバランスをとっているのかな。

「武士の一分」p.jpg 「武士の一分」●制作年:2006年●監督:山田洋次●製作:久松猛朗●脚本:山田洋次/平松恵美子/山本一郎●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平●時間:121分●出演:木村拓哉/檀れい/笹野高史/坂東三津五郎/小林稔侍/緒形拳/岡本信人/左時枝/綾田俊樹/桃井かおり/赤塚真人/近藤公園/歌澤寅右衛門/大地康雄●公開:2006/10●配給:松竹(評価:★★★★)
   

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勧善懲悪&恋愛ドラマ。混ざり気が少なく、すべて"藤沢周平"という感じが良い。

隠し剣 鬼の爪 dvd.jpg「隠し剣」永瀬松.jpg 新装版 隠し剣孤影抄.jpg
隠し剣 鬼の爪 [DVD]」永瀬正敏/松たか子『新装版 隠し剣孤影抄 (文春文庫)

「隠し剣」永瀬.jpg「隠し剣」10.jpg 幕末、東北・海坂藩の平侍・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母(倍賞千恵子)と妹の志乃(田畑智子)、女中のきえ(松たか子)と、貧しくも笑顔の絶えない日々を送っていた。やがて母が亡くなり、志乃ときえは嫁入りしていく。心中は寂しいが武士としての筋目を守り、日々を過ごす宗蔵。海坂にも近代化の波は押し寄せつつあり、藩では英国式の教練が取り入れられ始めていた。ある雪の日、宗蔵は3年ぶりにきえと再会する。大きな油問屋の伊勢屋に嫁して幸せに暮らしているとばかり思っていたきえの、青白くやつれた横顔に心を傷めた宗蔵。志乃の口からきえが嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、宗蔵は武士の面目や世間体を忘れ去って走り出していた。伊勢屋を訪れた宗蔵は、陽のあたらない板の間に寝かされ、やつれ果てたきえを見ると、自分で背負い家に連れ帰る。回復したきえと共に暮らし始め、宗蔵は心の安らぎを覚える。だが、世間の目は二人が同じ家に暮らすことを許さなかった。宗蔵はきえを愛している自分と、彼女の人生を捻じ曲げている自身の狡さに悩む。きえも身分の前に伝えられない気持ちを抱え、気づかない振りをして目をそらしてきた。そんな時、藩に大事件が起きた。宗蔵と同じく藩の剣術指南役・戸田寛斎(田中泯)の門下だった狭間弥市郎(小澤征悦)が謀反を企んだ罪で囚われ、さらに牢を破って逃げ出したのだ。宗蔵は、逃亡した弥市郎を斬るよう、家老・堀将監(緒形拳)に命じられる。そうすれば、狭間と親しかったお前の疑いも晴れると。かつて狭間は門下の中でも随一の腕前であった。しかしある時を境に宗蔵に抜かれ、それを宗蔵が戸田より授かった秘剣「鬼の爪」によるものだという不満を抱いていた。「隠し剣」14.jpg狭間の妻・桂(高島礼子)からの、躰を宗蔵に捧げることを引き換えした夫の命乞いを拒んだ宗蔵は、不条理さを感じつつも藩命に従い、狭間との真剣勝負に挑む。そして宗蔵は師より新たに伝授されていたもう一つの秘剣「龍尾返し」を用い、「鬼の爪」を振るうことなく狭間を倒す。深手を負った狭間は「龍尾返し」を「卑怯な騙し技」と罵りながら、失意の中で鉄砲隊に撃たれて死んだ。しかし戦いのあと、家老の堀が夫の助命嘆願に来た狭間の妻を騙し、辱め、彼女を死に追いやった。その所業を知るに及び、遂に「鬼の爪」が振るわれる―。

 山田洋次(1931年生まれ)監督の2004年公開作で、時代劇三部作の「たそがれ清兵衛」('02年)と「武士の一分」('06年)の間に位置する作品。この三部作はいずれも藤沢周平の短編を原作としますが、この「隠し剣 鬼の爪」は、「隠し剣」シリーズの「隠し剣鬼ノ爪」「邪剣竜尾返し」(『隠し剣孤影抄』収録)と男女の人情劇「雪明かり」(『時雨のあと』収録)の3つの短編を基にしており、一つの短編を独自に膨らませた他の二作品とは少し違います(すべて"藤沢周平"という意味で、混ざり気が少ないとも言えるのでは)。

 「たそがれ清兵衛」と同じように、主人公(永瀬正敏)が意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうという、藤沢作品によくあるパターンですが、その相手(小澤征悦)が自分のかつて同じ師匠に剣を学んだライバルであり友であるという点が大きく違います。因みに、「たそがれ清兵衛」の時の主人公・清兵衛(真田広之)の上意討ちの相手だった一刀流の使い手・余吾善右衛門を演じた田中泯が、ここでは二人のかつての師匠役となっています。また、サイドストーリーとして、宗蔵と女中きえ(松たか子)との秘めたる恋の物語があって、松たか子のお嬢さん的な雰囲気がなかなか女中には見えないという難はありましたが、まずまずに演技ぶりだったでしょうか。

「隠し剣」11.jpg 宗蔵が狭間弥市郎との対決では使わなかった秘剣「鬼の爪」がどのようなものか、最後まで関心が持たれましたが(原作では狭間弥市郎は、それが知りたいがために、自分の討ち手に宗蔵を指名する)、最後に振るわれたそれは、一騎討の際に使うようなものではなく完全な暗殺剣で、動作としては"居合"っぽい感じでした。ただ、使うのは日本刀ではなく、匕首のようなもので(原作でも匕首となっている)、体外出血しないということで、千枚通しのようなものかとも思いましたが、そうなると、仇の堀将監必殺仕掛人 春雪仕掛針s.jpg役の緒形拳がかつて演じた「必殺仕掛人」の表の顔は鍼医者、裏の顔は仕掛人の藤枝梅安と同じになっちゃうからなあ(笑)。最後に宗蔵が「隠し剣」を狭間弥市郎夫妻の墓地に埋めるシーンがあり、やはり千枚通しというより匕首でした。

「隠し剣」12.jpg 映画では宗蔵は禄を返上して町人になる決意をしますが、これは映画のオリジナルで、原作では、下級武士ではあるものの、武士の身分のまま、きえに求婚します。野外ではなく自宅で、お茶飲んでから(笑)プロポーズ。「知っているとおりの軽輩の家だから、やかましいことはいらん」と言うと、きえが泣き出しそうな顔で、「旦那さま...私には、親の決めた人がおります」と打ち明けたため、きえを他の男にやることなど出来ないと思った宗蔵は、「ま、わしにまかせろ」と。まあ、映画の方が現代的かも(映画はほとんど現代劇になってしまっていると言えなくもないが)。

 こうした細部の改変はあり、また、きえを婚家から救出するのは「雪あかり」から、狭間弥市郎との死闘シーンは「邪剣龍尾返し」からそれぞれ引いていますが、「たそがれ清兵衛」でラストに清兵衛の娘(岸惠子)の墓参りシーを持ってきて、清兵衛が戊辰戦争で死んだことにしてしまったのに比べると、たいした改変とは言えないでしょう。

 「たそがれ清兵衛」と「隠し剣 鬼の爪」が同じ幕末を描いていても、「隠し剣 鬼の爪」の方が刀の時代が終わりを告げようとしていることを如実に物語って入り、ラストは現代劇になってしまったと書きましたが、この流れからすると、宗蔵が禄を返上して町人になるという改変は不自然ではなかったように思います。

 癖にない勧善懲悪&恋愛ドラマとも言え、興行的には三部作の中で一番ぱっとしなかったようですが、嫌いではない作品です。

高島礼子(狭間弥市郎の妻・桂)/吉岡秀隆(島田左門)・小澤征悦(狭間弥市郎)・永瀬正敏(片桐宗蔵)
「隠し剣23.jpg「隠し剣22.jpg「隠し剣 鬼の爪」●制作年:2004年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平●時間:131分●出演:永瀬正敏/松たか子/小澤征悦/吉岡秀隆/田畑智子/高島礼子/田中泯/田中邦衛/倍賞千恵子/小林稔侍/神戸浩/光本幸子/松田洋治●公開:2004/10●配給:松竹(評価:★★★★)

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やや"べた"だが、ラストの吟子(吉永小百合)が涙ぐむシーンにはほろっときた。

『おとうと』2010.jpg 「おとうと」0.jpg 「おとうと」40.jpg
あの頃映画 松竹DVDコレクション おとうと」笑福亭鶴瓶/吉永小百合

「おとうと」蒼2.jpg 結婚してすぐに夫を亡くし、小さな薬局を営みながら、女手一つで娘の小春(蒼井優)を育てた姉・吟子(吉永小百合)と、役者としての成功を夢み、無為に歳を重ねてしまった風来坊の弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)。鉄郎は姉・吟子の夫の十三回忌の席で酔っ払って大暴れし、親類中の鼻つまみ者となっていた。以後10年近く吟子との連絡も途絶えていたが、娘のように可愛がっていた姪の小春が結婚することをたまたま知り、披露宴に駆けつけた。歓迎されざる客を追い返そうとする親類「おとうと」 1.jpgを吟子は取りなし、鉄郎に酒は一滴も飲まないと約束させて披露宴に参加させた。しかし鉄郎は目の前に置かれた酒の誘惑に抵抗できず、あっさりと約束を破ったばかりか酔っぱらって大騒ぎを演じ、披露宴を台無しにしてしまう。その事件は、後に小春の結婚が破綻する一因ともなる。結婚式での乱行に激怒した親類らが次々と絶縁を決め込む中、ただ一人、吟子だけは鉄郎の味方だったが、その吟子も、ある事件をきっかけについに鉄郎に絶縁を言い渡してしまう。鉄郎は悪態を吐いて出て行くが、 このときすでに鉄郎は死の病に取り付かれていた―。
山田洋次監督in 第60回ベルリン国際映画祭(2010年2月20日) photo:KAZUKO WAKAYAMA
「おとうと」山田監督ベルリン.jpg「おとうと」山田吉永ベルリン.jpg 山田洋次(1931年生まれ)監督の2010年1月30日公開作で、同年2月11日開催の第60回ベルリン国際映画祭でクロージング上映されて、この時、山田洋次監督は特別功労賞に当たるベルリナーレ・カメラ賞を受賞しています(日本人では過去、2000年に市川崑監督、2001年に熊井啓監督の2名が受賞)。前作「母べい」('08年)が第58回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、受賞を逃したものの好評だったことが伏線としてあるのかもしれません(この映画祭では後に「小さいおうち」('14年)で黒木華が最優秀女優賞(銀熊賞)を取ることになる)。

市川崑監督「おとうと」('60年/大映)岸惠子
「おとうと」kisi.jpg 「おとうと」('60年/大映)を撮った市川崑監督に捧げられた作品となっていて、病に倒れた弟に姉が鍋焼きうどんを食べさせるシーンや、二人がリボンで手をつないで眠るシーンがオマージュとして反復されていると言われていますが、これは共に幸田文による原作『おとうと』にある場面です。ただし、原作は17歳の姉から見た14歳の弟を描いたものであり、市川崑版は岸惠子が28歳で姉を演じたということはあるものの、一応原作をベースとしているのに対し、この山田洋次版は原作とはうんと年齢差があり、時代背景や家庭環境も異なるので、ほとんどこの二つのモチーフだけを原作から借りてきたと言ってもいいくらいではないかと思います。

「おとうと」末後.jpg 映画は、前作「母べい」よりもっと"べた"になった感じがしなくもないですが、昔はこういう映画をあまり評価しなかったけれど、最近はいいなあと思うようになって、これは年齢のせいでしょうか? 批判しようと思ったらいくらでもできるのですが、山田洋次監督に山田洋次的でないものを求めても仕方がないという気がするといのもあります。

「おとうと」 l1.jpg.png でも、鉄郎が亡くなった後のラストで、小春(蒼井優)の亨(加瀬亮)との結婚式を前にして、加藤治子(1922-2015)演じる母のボケからくる「あの変わり者の弟を呼んであげないとかわいそうだ」という言葉に絡めて、小春の結婚式に鉄郎はもう来ることないという現実が吟子を涙ぐませる場面にはさすがにほろっときました(このシーンが一番。笑福亭鶴瓶もラッシュうを観て「涙が出ましたわ」「あのラストは最高」と言っている)。小春の最初の結婚式に鉄郎がきて、式をぶち壊しにしてしまったこととの対比で、上手いなあと思いました。亡くなった人って、こういう時にふっと今そこにいるかのように目に浮かぶのだろなあ。

 考えてみれば、夢破れたもののそれなりに好き勝手やって、本来なら野垂れ死にしてもおかしくないところ(笑福亭鶴瓶は前作「母べい」では、同じ叔父さん役でも野垂れ死する役だった)、最期は最愛の肉親に看取られて死ねるというのは、ある意味ハッピーエンドなのかも。

 そのハッピーエンドを生み出したものとして、身寄りのない人のための民間ホスピス「みどりのいえ」とそこで働く所長の小宮山進(小日向文世)、小宮山千秋(石田ゆり子)ら親切な人々の存在があったわけで、そういう施設や人々にフォーカスしている点はいいと思いました。実在の施設を取材しているそうですが、ただし、在阪ではなく台東区の山谷にある「きぼうのいえ」だそうです。

「おとうと」1蒼.jpg 吉永小百合は、33歳の女性をやつれ感を出しながら演じた「母べえ」の時よりもさらに綺麗になっている感じ。笑福亭鶴瓶は、最後の方は、朝7時に起きてサウナスーツで走って、サウナに1時間くらい入って、水も飲まずにボクシングを9ラウンドまでやって減量したそうですが、その努力もさることながら、演技の方で魅せることも忘れてなかったように思います。

 「母べえ」とどちらが上か人によって意見は分かれるかと思いますが、個人的には、全体を通して「母べえ」が良かったけれど、最後で「おとうと」が追いついたという感じでしょうか。ああ、年齢と共に山田作品への評価がどんどん甘くなってくる(笑)。

「おとうと」syutuen.jpg「おとうと」●制作年:2010年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/平松恵美子●撮影:近森眞史●音楽:冨田勲●原作:幸田文●時間:126分●出演:吉永小百合/笑福亭鶴瓶/蒼井優/加瀬亮/小林稔侍/森本レオ/芽島成美/ラサール石井/佐藤蛾次郎/池乃めだか/田中壮太郎/キムラ緑子/笹野高史/小日向文世/横山あきお/近藤公園/石田ゆり子/加藤治子●公開:2010/01●配給:松竹(評価:★★★★)

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「みんな死んでしまった」という映画だが良かった。「忍ぶ恋」映画でもあった。

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あの頃映画 松竹DVDコレクション 母べえ」『母べえ』['07年/中央公論新社]野上照代氏
母べえ 6.jpg 昭和15年(1940年)の東京、野上家ではユーモアを愛する父・滋(坂東三津五郎)の考えからか家族に「べえ」をつけるのが習慣になっていて、母親・佳代(吉永小百合)のことを「母(かあ)べえ」父親のことを「父(とお)べえ」と呼んでいた。娘の初子(初べえ)(志田未来)と照美(照べえ)(佐藤未来)は、その二人の愛に包まれて育ち、家庭は平穏だった。だが日中戦争の激化とともに国情は変化し、帝国大学出身のドイツ文学者で反戦思想をもっていた父が治安維持法違反の思想犯として投獄され、暮らしが一変する。残された三人はそれでも父を信じ、陰膳をして待っている。やがて母の故郷・山口から警察署長をしている祖父・久太郎(中村梅之助)が上京してきて「恥をかかせた」と、佳代を厳しく罵る。それでも、彼女らの家を温かい目で見つめる人々が去来する。父のかつての教え子で小さな出版社に勤めていた山崎徹(浅野忠信)は、不器用だが優しい性格で初子と照美に親しまれ、「山ちゃん」の愛称で野上家に欠かせない存在となる。父がいつ帰れるか見通しが立たないため、母は隣組長の世話で小学校の代用教員として一家の家計を支え始める。帰宅すれば深夜まで家の雑事に追われる。時折、父の妹で画家を目指す叔母・久子(檀れい)が手伝いにきてくれる。夏休みの間だけ、「招かれざる客」叔父の仙吉(笑福亭鶴瓶)が奈良から上京してくる。変わり者の仙吉はデリカシーのない発言をして思春期を迎えた初子に嫌われるが、自由奔放な姿は佳代の心を癒し、金の指輪を母にと山崎に託して帰る(戦後、自身の予言通り吉野の山で野垂れ死にしていた)。ふみ(左時枝)と再婚した久太郎が上京してきて、思想犯となった父との離婚を命じ、できなければ自害しろ、勘当だと迫るが母の心は少しも揺るがない。母が倒れ、山崎が飛んでくるが、疲労からの病気だった。夏になり、海水浴に行くが山崎が溺れそうになり、母が助ける。秋になり、久子に山崎と結婚しないの?と尋ねる佳代に、山崎は佳代に恋心を抱いていることを告げて故郷に帰る。昭和16(1941)年12月8日、太平洋戦争が勃発。昭和17年の正月に父が獄死という電報が来て、その後にクリスマスに書いた父の手紙が届く。追い打ちをかけるように、近眼で左の耳が聞こえない山崎にも赤紙が届く。3年後に終戦。久子は広島で被爆して亡くなっていた。山崎の戦友がきて、南方の海に消えた山崎の最後の言葉を伝える。美術教師となった照美(戸田恵子)が初子(倍賞千恵子)が医師として勤める病院に入院している母の容態が悪化したと聞いて駆けつける。「もうすぐ父べえに会えるね」というと、母は「あの世でなんか会いたくない、生きている父べえに会いたい」と悲痛な言葉を呟く―。

母べえ 出演者.jpg 山田洋次(1931年生まれ)監督の2008年監督作で、第58回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門出品作。原作は映画スクリプターの野上照代(1927年生まれ)。黒澤明監督の「羅生門」にスクリプターとして参加し、以降、全黒澤作品に関わった人です。1984年の読売女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞に「父へのレクイエム」という題名で応募され(当初は57歳になって54歳で亡くなった父のことを書いたので「年下の父へ」という題だった)、優秀賞を受賞。山路ふみ子功労賞も併せて受賞しています。2007年12月、翌年の映画公開を前に、中央公論新社から『母べえ』として、単行本として刊行されています。

 野上照代の父・野上巖(映画では滋)は、戦前から新島繁のペンネームで活躍したドイツ文学者、芸術研究者で、作品とは異なり、1940年に転向したため保釈されています。したがって、原作で父親が最後に拘置所で37歳で急死するのはフィクションであり、応募規定の中にも「多少のフィクションは許される」とあり、なるべく当選するようにと、やや事実を変えてドラマチックな最後にしたそうで、野上巖は、戦後は神戸大学教授などを歴任しています。ただし、原作に挿入されている拘置所内の父親と妻子との往復書簡などは、父・巖が戦後、散逸しないように大学ノートに書き写していたものだそうです。

母べえ dvd.jpg 原作にある作者による挿画は、映画化が決まってから母べいのイメージや出来事の状況を可視化するものとして描かれたのでしょうが、これがいい味を出していて、映画でもその通りのシーンがいくつも出てきます。映画は、1940(昭和15)年から翌年、昭和16年までの太平洋戦争開戦前までの1年間の、思想統制が強まっていく時代の流れと市井の人々の生活の変化がよく描かれていて、昭和16年12月8日にいきなり"戦時"になったわけではないことが伝わってきました。

 といっても、必ずしもすべてが原作通りではなくて、いちばん大きく異なるのは、主人公の母子を見守る青年・山崎の温かい視線が前面に出されていることでしょう(原作では山本という名前になっている)。父親が獄中にいるために代理の男親の役割を果たしている点で疑似家族的とも言えるし、山崎が恋人(叔母・久子)がいながら佳代に恋心を抱いている点も含め、後の「小さいおうち」('14年)に連なるモチーフでもあるように思いました。山崎の戦友が語った彼の最後の言葉「僕はもうこの世にはいないけれど、魂はいつまでもあなた方といて護ってあげる」という言葉には泣かされますが、原作の"山ちゃん"は映画の久子の相当する女性に恋をしており、戦争に行って船が沈められて死ぬという結末も用意されていません。

母べえ うみ.jpg 吉永小百合(1945年生まれ)の配役は、山田洋次監督がすぐに思い浮かび、吉永小百合も原作を読んでこの役をとても演りたいと思ったものの年齢的に躊躇していたところ、当時の母親はみな疲れていたんだという山田洋次監督の説得で決まったようです。それにしても、62歳で33歳の役、しかも浅野忠信(当時35歳)演じる山崎青年に恋心を抱かせるという設定が見ていてそう不自然でないのがスゴイ。原作にはない山崎の戦死(彼は泳げないので泳ぎが得意な戦友に先ほどの言葉を託す)の伏線として、山崎が母子と海水浴に行って溺れる場面がありますが、それを泳いで助けにいくのが吉永小百合演じる母べいでした(さすが2000年・第1回「ベストスイマー賞」受賞者! 着衣水泳でも本領発揮! )。

吉永小百合 ベルリン.jpg 第58回ベルリン国際映画祭の公式上映を前に赤じゅうたんを歩く吉永小百合。奥は山田洋次監督と原作者の野上照代(2008年2月13日)(スポニチ)

母べい t.jpg 父べえの獄死は原作通りで、羽振りの良かった叔父の仙吉(笑福亭鶴瓶)が自らの予言通り吉野の山で野垂れ死にしたというエピソードは原作通りですが、叔母・久子(壇れい)も帰郷後に原爆死、山崎も戦死し、しかも映画の最後に後日譚として母べいの死をもってきているので、「みんな死んでしまった」という、「死」の色合いが濃い映画になっていたようにも思います(山崎の「忍ぶ恋」の映画でもあった)。でも、(母べいの最期の言葉も含め)個人的にはそれで良かったように思います。
戸田恵子(大人になってからの照美(照べえ))・倍賞千恵子(大人になってからの初子(初べえ))/吉永小百合(佳代(母べえ))
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 俳優陣で、今観ると、亡くなっている人が多いのが寂しいです。父べいの野上滋を演じた坂東三津五郎が2015年に59歳で亡くなっているほか、祖父・久太郎を演じた中村梅之助が2016年に85歳で、野村医師を演じた大滝秀治が2012年に82歳で亡くなっています。
坂東三津五郎(滋(父べえ))/中村梅之助(久太郎(佳代の父・山口の警察署の署長))/大滝秀治(野村医師)
母べえ 3.jpg
坂東三津五郎(1956-2015/59歳没)
母べえ 出演者2.jpg坂東三津五郎.jpg「母(かあ)べえ」●制作年:2008年●監督:山田洋次●製作:松本輝起●脚本:山田洋次/平松恵美子●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:野上照代「母(かあ)べえ」●時間:132分●出演:吉永小百合/浅野忠信/檀れい/志田未来/佐藤未来/笹野高史/でんでん/神戸浩/近藤公園/中村梅之助/赤塚真人/吹越満/左時枝/鈴木瑞穂/倍賞千恵子/戸田恵子/大滝秀治/笑福亭鶴瓶/坂東三津五郎●公開:2008/01●配給:松竹(評価:★★★★)

【2010年文庫化/中公文庫】

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刺殺体を巡る7人の"探偵"。パロディ精神と映画愛が密度濃く詰まっている。

殺人 MURDER 0.jpg 殺人 MURDER①.jpg 和田 誠 氏2.jpg 和田 誠  去年マリエンバートで dvd 2009_.jpg
「殺人 MURDER!」 (1964)           「去年マリエンバートで HDニューマスター版 [DVD]

殺人 Murder.jpg メイドがノックして入った部屋で刺殺体を発見し、大声で叫ぶ。この場面が7回繰り返され、回ごとに「MURDER!」というそれぞれ違ったタイトルロゴの後、様々な探偵が登場し、独自の方法で犯人を突き止め、逮捕に至る(逮捕殺人 MURDER①ホームズ.jpgされるのは常に同じ人物)。1人目は、ハンチングキャップ.を被りパイプを咥え、現場の遺留物や足跡など残された手掛かりの組み合わせから犯人を推理する探偵。2人目は、巻き口髭を生やし、肘掛椅子で葉巻を燻らせな殺人 MURDER② ポワロ.pngがら新聞記事を読み、創造力だけで事件を解決してみせる探偵。3人目は、ソフト帽を被って両手はいつもコートのポケットの中で、メイドへの質問を手始めに鉄道や船殺人 MURDER③サム・スペード.jpgを使って地道な聞き込みを行い、更にはバーに行って聞き込みをしてカクテルを飲んだり、飛行機に乗ったりして捜査を続け、犯人を見つける探偵。4人目からは、"探偵"という枠を超えた人物が登場し、トップハット殺人 MURDER④.pngを被った19世紀風の男が刺殺体を調べていると、死体が突然目を見開いて吸血鬼となって甦るも、男はニンニクと十字架でこれを退散させるという殺人 MURDER⑤007.pngオカルト・ホラー調。5人目は、007(ジェームズ・ボンド)風で、映画でよく知られている銃口をモチーフしたオープニングのパロディあり、美女との出会いや危険なア殺人 MURDER⑥科学者.pngクションありで、事件を解決して最後は美女とベッドイン。6人目は、SF映画のパロディ風で、科学者風の男が登場し、コンピュータにデータを打殺人 MURDER⑦.pngち込んで犯人を割り出す。本当の犯人はどうやら人間の躰を借りた宇宙人だったらしく、犯人の首がパカッと開いて、そこから空飛ぶ円盤へと帰って行く。最後7人目は、アートシアター風で、冒頭のタイトル及び刺殺体発見場面から最後まで全編モノクロ。映画「去年マリエンバートで」のパロディになっていて、探偵かと思われた男は、最後犯人探しはどうでもよくなっていて、出会った女と共に闇に消えていく。このパートだけ、犯人逮捕の場面はなく、ラストは「END」ではなく「FIN」で終わる―。
第1回「アニメーション・フェスティバル」('64年)チラシ
第1回「アニメーション・フェスティバル」.jpg 1964年秋、草月会館ホールで行われた第1回「アニメーション・フェスティバル」で上映するため、主催の「アニメーション三人の会」(久里洋二、柳原良平、真鍋博)から依頼されて和田誠が制作した16ミリのアニメーションで、音楽は八木正生(1932-1991)が担当し、時間が無い中で作られたというこの作品は、毎日映画コンクール・第3回「大藤信郎賞」を受賞しています(受賞理由では音楽も高く評価されている)。

 「アニメーション三人の会」が設立された'60年の段階では、柳原良平の「アンクルトリス」のCMを除きそれまで本格的なアニメーション制作の経験のなかった3人ですが、「三人の会」の活動は、日本の自主制作アニメーション界全体の活性化と次代の人材育成に繋がったほか(「三人の会」のメンバー作品のみの上映会は'60年、'61年、'63年の3回行なわれ、それが第4回以降「アニメーション・フェスティバル」となった)、「アニメーション・フェスティバル」を通じて、横尾忠則や宇野亜喜良など他の分野の芸術家がアニメーション制作を行なう契機にもなっています。

去年マリエンバートで 01.jpg この「殺人 MURDER!」は9分という長さの軽く楽しめる作品ですが、'64年という制作年で、しかも、「アニメーション三人の会」からの依頼で作った自主制作映画であったにしては、質的レベルはかなり高いように思います。『倫敦巴里』('77年/話の特集)に見去年マリエンバートで dvd 2016_.jpgられるパロディ精神が、この頃から横溢していたことを物語っていると共に、作者の"映画愛"が密度濃く詰まっている感じがし、'64年5月に日本で公開されたアラン・レネ監督の「去年マリエンバートで」('61年/仏)などがパロディ素材として使われていることに作者の慧眼を感じます(既にヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞してはいたが、後に映画史上もっとも難解な作品の一つと評されることになった)。
去年マリエンバートで [DVD]

去年マリエンバートで 03.jpg去年マリエンバートで   es.jpg 「去年マリエンバートで」は、脚本のアラン・ロブ=グリエ(1922-2008)自身の言によれば、黒澤明監督の「羅生門」('50年/大映)に触発れて作られた作品であり、つまりは芥川龍之介の「藪の中」を下敷きにした作品の一つと言えますが、"誰もあらすじを説明することができない映画"としても有名(?)でしょうか。何回観ても理解不能であり(そこが良くてまた観てしまう人もいると思うが)、この「殺人 MURDER!」の中での使われ方は、ややその辺りのアイロニーが込められているように思いました(和田誠は山田宏一との共著『たかが映画じゃないか』('78年/文藝春秋)で、フランス映画通の山田宏一へのコンプレックスをユーモラスに吐露している)。

殺人 MURDER図1.jpg 「殺人 MURDER!」の1人目と2人目の探偵はシャーロック・ホームズとエルキュール・ポアロがモデルであるのがすぐに分かるけれど、3殺人 MURDER②2.jpg人目は、前のエントリーで取り上げた『マルタの鷹』の探偵か。だとすれば、彼が飲むカクテルはマンハッタンということになるかもしれませんが、あの探偵、船や飛行機に乗ったりしたっけ。一方の捕まる犯人の方は、常に"久里洋二"風の男であるのが可笑しいです(そこだけ日本風)。フェスティバルでの上映では、最後の「去年マリエンバートで」篇が最も好評だったそうです(みんな「あの映画は(高踏的で?)無理に解らなくてもよい」と何となく安心した?)。

真鍋博「潜水艦カシオペア」('64年)(原画)/手塚治虫「人魚」('64年)
真鍋博「潜水艦カシオペア」1.jpg手塚治虫「人魚」.jpg なお、この第1回「アニメーション・フェスティバル」には、先に述べたように、主催者である久里洋二、柳原良平、真鍋博の作品のほかに横尾忠則や宇野亜喜良、さらには手塚治虫の作品なども出品されていますが、この和田誠の「殺人 MURDER!」以外では、真鍋博の「潜水艦カシオペア」、手塚治虫の「人魚」、横尾忠則の「アンソロジーNo.1」「KISS KISS KISS」などを観ました。真鍋博「潜水艦カシオペア」は、SF作家の都筑道夫が原作の"戦争が嫌いな潜水艦"を主人公に据えた寓話的短編で、米ソ冷戦の影響を受けつつも真鍋博らしいなあという印象(但し、ラストはアンハッピーエンド)。手塚治虫「人魚」は、空想を禁じられている架空の国が舞台で、ひとりの少年が助けた魚が人魚に変身してしまい、これはよからぬ空想の産物だとして少年は逮捕され、強制的に空想する力を奪い取られてゆくという管理社会の怖さとそこからの脱出を描いた作品。8分の短編にテリー・ギリアム監督のSF映画「未来世紀ブラジル」('85年/英)張りのテーマを込めてしまうところはさすがに手塚治虫といった横尾忠則「アンソロジーNo.1」1.jpg感じ。横尾忠則「アンソロジーNo.1」は、実験映画というよりは画像コラージュに近い作品。星、古城、太陽、木、鳥、女の顔、演奏、涙、指差す形、ピストル、決闘、死(死神、霊柩車、十字架)という風に、いくつかのイメージを集め、ポスターや本の表紙、自らが描いたイラストなどから切り取った静止画がほとんどで(一部動画もあり)、60年代という時代における"横尾忠則"を感じる作品とでもいうべきでした。これらの中ではやはり、和田誠の「殺人 MURDER!」と手塚治虫の「人魚」が頭一つ抜きん出ているでしょうか。更に言えば、和田誠が一番でした(何度観ても飽きない)。

和田 誠 「<殺人 MURDER!>」('64年)

横尾忠則「アンソロジーNo.1」('64年)

「殺人 MURDER!」●制作年:1964年●監督・製作:和田誠●撮影:古川肇郁/林政道●音楽:八木正生●時間:9分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★★☆)

去年マリエンバートで  チラシ.jpg去年マリエンバートでes.jpg「去年マリエンバートで」●原題:L'ANNEE DERNIERE A MARIENBAT●制作年:1961年●制作国:フランス・イタリア●監督:アラン・レネ●製作:ピエール・クーロー/レイモン・フロマン●脚本:アラン・ロブ=グリエ●撮影:サッシャ・ヴィエルニ●音楽:フランシス・セイリグ●時間:94分●出演:デルフィー去年マリエンバートで ce.jpgヌ・セイリグ/ ジョルジュ・アルベルタッツィ(ジョルジョ・アルベルタッツィ)/ サッシャ・ピトエフ/(淑女たち)フランソワーズ・ベルタン/ルーチェ・ガルシア=ヴィレ/エレナ・コルネル/フランソワーズ・スピラ/カ去年マリエンバートで 記事をクリップする_3.jpgリン・トゥーシュ=ミトラー/(紳士たち)ピエール・バルボー/ヴィルヘルム・フォン・デーク/ジャン・ラニエ/ジェラール・ロラン/ダビデ・モンテムーリ/ジル・ケアン/ガブリエル・ヴェルナー/アルフレッド・ヒッチコック●日本公開:1964/05●配給:東和●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会(81-05-23)(評価★★★?)●併映:「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル)

真鍋博「潜水艦カシオペア」title.png真鍋博「潜水艦カシオペア」2.jpg「潜水艦カシオペア」●制作年:1964年●監督・製作:真鍋博●協力:都築道夫/杉山正美/富澤幸男/岡田三八雄/染谷博/村瀬信夫/大野松雄/植田俊郎/池田亜都敦夫/片岡邦男/矢野譲/山内雅人●原作:都築道夫●時間:5分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★☆)

手塚治虫「人魚」title.jpg手塚治虫「人魚」2.jpg「人魚」●制作年:1964年●原案・構成・演出・作画:手塚治虫●製作:富岡厚司(虫プロのプロデューサー)●原画:山本繁●動画:沼本清海●撮影:佐倉紀行●音楽:冨田勲(ドビュッシー「牧神の午後の前奏曲」より)●時間:8分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★★)
           
アンソロジーNo.1 横尾忠則ド.jpg横尾忠則「アンソロジーNo.1 title.png横尾忠則「アンソロジーNo.1」2.jpg「アンソロジーNo.1」●制作年:1964年●監督・製作:横尾忠則●時間:7分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★☆)   
        

第1回「アニメーション・フェスティバル」('64年)チラシ
第1回「アニメーション・フェスティバル」2.jpg
《読書MEMO》
森卓也.jpg森卓也(映画評論家)の推すアニメーションベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))
○難破ス物語第一篇・猿ヶ島('30年、正岡憲三)
くもとちゅうりっぷ('43年、正岡憲三)
○上の空博士('44年、原案・横山隆一、演出:前田一・浅野恵)
○ある街角の物語('62年、製作構成:手塚治虫、演出:山本暎一・坂本雄作)
殺人 MURDER('64年、和田誠)
○長靴をはいた猫('69年、矢吹公郎)
ルパン三世・カリオストロの城('79年、宮崎駿)
うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー('84年、押井守)
○天空の城ラピュタ('86年、宮崎駿)
となりのトトロ('88年、宮崎駿)

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「懐かしい未来図」。実際にはまだ未来図のままだが、少しずつ実現出来ている部分も。

空中都市008青い鳥文庫.jpg空中都市008 アオゾラ市のものがたり 1.jpg空中都市008 アオゾラ市のものがたり 2.jpg  完全読本 さよなら小松左京.jpg 
『空中都市008―アオゾラ市のものがたり』(1969/02 講談社)[装丁・挿絵:和田 誠
空中都市008 アオゾラ市のものがたり (講談社青い鳥文庫)』『完全読本 さよなら小松左京
空中都市008―アオゾラ市のものがたり 和田誠.jpg 空中都市008に引っ越してきた、ホシオくんとツキコちゃん。ここはいままで住んでいた街とはいろんなことがちがうみたい。アンドロイドのメイドさんがいたり、ふしぎなものがいっぱい......じつはこのお話、1968年に作者が想像した未来社会、21世紀の物語なのです。さあ、今と同じようで少しちがう、もうひとつの21世紀へ出かけてみましょう!(「青い鳥文庫」より)。

 1968(昭和43)年に「月刊PTA」(産経新聞発行)に「あおぞら市のものがたり」というタイトルで連載され、1969年に単行本刊行された際に「空中都市008」がタイトルとなった小松左京(1931-2011)のSF児童文学で、2003年版「青い鳥文庫」の作者まえがきで、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏が小学田中 耕一 記者会見2.jpg空中都市008―アオゾラ市のものがたり.jpg生の頃この作品の愛読者だったことを知って感激したとあります(オリジナルは入手困難だが、「青い鳥文庫」版も和田誠氏の挿画を完全収録しているのがありがたい)。

 作品の中で主人公たちが月に行く場面がありますが、この作品が書かれた当時は米ソが宇宙進出競争をしていて、この作品の発表の翌年1969(昭和44)年にアメリカがアポロ11号で人類を月に送り込んでいます。この作品では月には既に都市があって、月で生まれ育った「月っ子」たちがいることになっています。

スケッチブック.jpg このように、この作品に出てくる様々な未来像は、21世紀になっている現在からみてもまだ先の「未来像」のままであるものが多くありますが、方向性として全然違っているというものは少ないように思われ、そこはさすが科学情報に精通していた作者ならではと思われます。子どもの頃に思い描いていたという意味で、「懐かしい未来図」という言葉を思い出してしまいますが、あの時の"未来図"が本当ならば今頃スゴイことになっている? (人々はエア・カーや動く歩道で移動しているとか...)。実際にはそれほど変っていないかなあ。但し、少しずつ実現出来ている部分も一部あるなあと思いました。

スケッチブック

「ぼくら」1969年7月号付録.jpg 例えば、ホシオたちの家族が移り住んだ空中都市は、「50かいだてアパートの36かい」ということになっていますが、今ならそういうところに住んでいる人はいるなあと(但し、ホシオたちの場合は「可動キャビン」方式で家ごと引っ越してきたのだが)。

 「ファクシミリ・ニュース」というのは今で言えばインターネットによるニュース配信であり、1000人乗れるという「ジャンボ・ジェット」もそれに近いところまでいっているし、「エアクッション・カー」という車輪を使わない鉄道は、今で言うリニアモーター・カーでしょうか。

「ぼくら」1969年7月号付録

 道路の「標識システム」は今で言うカーナビゲーションに近いかも。「電子脳」(今で言う「コンピュータ」)が故障して、都市の交通システムが麻痺してしまうという話は、例えばシステムの不具合で金融機関のATMが仕えなくなったといった近年の出来事を思い出させ、クルマが使えないので人々が皆、久しぶりに自転車に乗ってみたらこれが意外と良かったというのも、エコ・ブームや健康ブームを想起させます。

 この物語はNHKで連続人形劇としてテレビドラマ化され、月曜から金曜の18:05-18:20の放送時間帯で1年間にわたり空中都市008 グラフNHK.jpg放映されました(「空中都市008」1969年4月-1970年4月、全230回)。ひ番組の絵葉書.jpgと続きの話は原則として1週間単位で終わったため、原作のエピソード以外に多数の書き下ろしがあります。「チロリン村とくるみの木」(1956年-1964年、全812回)「ひょっこりひょうたん島」(1964年-1969年、全1,224回)に続くNHKの平日夕方の人形劇シリーズ第3弾でしたが、技術的にはよく出来ていたように思います。ただ、人形やセットに費用がかかり過ぎたのと、指向としては「サンダーバード」(1965年-1966年)などを目指したため人形がリアルになり過ぎて「ひょっこりひょうたん島」のキャラのような可愛さが足りず、視聴率が伸び悩んだということもあって1年足らず(全230回)で放送終了となりました(次番組「ネコジャラ市の11人」(1970年-1973年、全668回)と比べても放送回数はかなり少なかったことになる)。
番組の絵葉書

銀河少年隊 title.jpg銀河少年隊01.jpg 因みに、「空中都市008」は人形美術及び操作を糸あやつり人形の竹田人形座が担当しましたが、同じ竹田人形座による人形美術及び操作の担当でこれに先行するものにとして、NHKの日曜の17:45-18:00の15分の時間帯(後に木曜の18:00-18:25の25分の時間帯に変更)で、「銀河少年隊」(1963年4月-1965年4月、全92回)がありました(さらにその前に「宇宙船シリカ」(1960年9月-1962年3月、全227回)というのもあった)。「銀河少年隊」は人形芝居と銀河少年隊 sono.jpg手塚治虫2.jpgアニメーションを合成したもので、原作は手塚治虫(因みに「宇宙船シリカ」の原作は星新一)。太陽のエネルギーが急速に衰え、地球を含めた太陽系の惑星は極寒に襲われ、数年後には太陽系の全生物が死滅してしまうという危機を救うために、花島六平少年率いる銀河少年隊が活躍するというもの。アニメ部分は虫プロの作品を多く手がけてきた若林一郎が脚色をして、スケールの大きい物語となって④冨田 勲.jpgおり、金星人の美少女アーリアも登場、宇宙服や宇宙船の操縦席など小道具もよくできていたように思いますが、竹田喜之助(1923-1979)って相当な"凝り性"だった? 音楽は「銀河少年隊」「空中都市008」とも富田勲(1932-2016)が担当しています(「宇宙船シリカ」も富田勲)。

地球になった男 (新潮文庫 こ 8-1)
『地球になった男.jpg小松 左京(0.jpg 「空中都市008」原作者の小松左京は「空中都市008」放送終了時の頃は、日本万国博覧会のサブ・テーマ委員、テーマ館サブ・プロデューサー(チーフ・プロデューサーは岡本太郎)として1970年の日本万博開催の準備に追われており、放送終了を残念がる暇も無かったのではないかな。『地球になった男』('71年/新潮文庫)などの短編集の刊行もあり、'73年には『日本沈没』(カッパ・ノベルズ)で日本推理作家協会賞を受賞するなどした一方で、テレビなどにもよく出ていましたが、この人、この頃が一番太っていて、すごくパワフルな印象がありました。
  
中山千夏(1970)/初音ミク(2010)        iPad 版「空中都市008」音楽(唄:初音ミクvs中山千夏)
空中都市008 アプリ版 .jpg中山千夏(1970).jpg初音ミク.jpg この作品は2010年にiPad専用のオーディオビジュアルノベルとしてApp Storeで配信され、作中の登場人物の台詞が声優によって読み上げられるほか、物語の進行に合わせたBGMが再生され、かつてのNHKの放送で番組主題歌を歌った中山千夏が初音ミクとコラボして誕生したテーマソングや、小松氏のボイスコメントなども収録されているそうですが、「まさ小松左京マガジン 第46巻_.jpg小松左京マガジン47.pngか本がこんなことになっちまうとは、私自身がSF作家のくせに思いもよりませんでした」とのコメントを寄せた小松左京氏は、その翌年2011年の7月に肺炎のため80歳で亡くなっています(健康時にはタバコを1日3箱吸うヘビースモーカーだった)。

 「小松左京マガジン」が没後もしばらく刊行され続けていたことなどからみても、小松左京やその作品には当時も今も根強いファンがいるものと思われます。

小松左京マガジン 第46巻」(2012.09)/「小松左京マガジン〈第47巻〉」(2012.12)

宇宙人ピピ.jpg 因みに、小松左京原作で「空中都市008」より以前にテレビ番組になったものには「宇宙人ピピ」(1965年4月-1966年3月、全52回)があります。宇宙人"ピピ"と彼を取り巻く地球人との騒動を描いたコメディドラマで、ピピ宇宙人ピピ シングル .jpgはアニメーション、円盤は写真で描かれていて、日本で最初の実写とアニメの画面合成によるテレビドラマシリーズです(小松左京が大阪から原稿を送り週1回の放送を1人でこなすのは困難だったことから、脚本は平井和正との合作となっている)。"ピピ"の声は中村メイコで、主題歌の作曲は「銀河少年隊」('63年)、「空中都市008」('69年)と同じく冨田勲(1932-2016)でした。NHKのアーカイブで観たら、形式はコメディなのですが、中身は子どもの塾の問題とか扱っていて、結構シリアスだった?

空中都市008(中山千夏).jpg「空中都市008」●脚本:高垣葵●音楽:冨田勲(主題歌:中山千夏)●人形美術及び操作:竹田人形座●原作:小松左京●出演(声):里見京子/若空中都市008 [DVD].jpg山弦蔵/太田淑子/平井道子/山崎唯/藤村有弘/松島トモ子/熊倉一雄/古今亭志ん朝/松島みのり/大山のぶ代●放映:1969/04~1970/04(全230回)●放送局:NHK NHK人形劇クロニクルシリーズVol.3 竹田人形座の世界~空中都市008~ [DVD]

 空中都市0083.jpg


銀河少年隊 02.jpg「銀河少年隊」●脚本:若林一郎●音楽:冨田勲●人形製作:竹田喜之助(竹田人形座)●アニメーション:虫プロダクション●原作:手塚治虫●出演(声):安藤哲(ロップ[第1部])/白坂道子(ロップ[第2部以降])/若山弦蔵(花島博士[第1部])/天地総子(ポイポイ[第1部])/永井一郎(ダー[第1部]、テックス刑事[第2部])/安田まり子/相模武/太田淑子/高見理沙/木下喜久子/滝口順平/牟田悌三(語り[第1部])●放映:1963/04~1965/01(全92回)●放送局:NHK

宇宙人ピピ   .jpg宇宙人ピピ 00.jpg「宇宙人ピピ」●脚本:小松左京/平井和正●音楽:冨田勲(主題歌:中村メイコ)●人形製作:竹田人形座●原作:小松左京●出演(声):中村メイコ/安中滋/北条文栄/福山きよ子/梶哲也/安田洋子/小林淳一/大山尚雄/黒木憲三/酒井久美子/峰恵研/蔭山昌夫/加藤順一/乾進/中島浩二/若柳東穂/大山のぶ代/小泉博●放映:1965/04~1966/03(全52回)●放送局:NHK
宇宙人ピピ38話

【1969年単行本[講談社]/1981年文庫化[角川文庫]/2003年再文庫化[講談社・青い鳥文庫]】
  

「●TVドラマ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2906】 小林 恒夫 「怪奇大作戦(第9話)/散歩する首
「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●日本のTVドラマ (~80年代)」の インデックッスへ(「怪奇大作戦」「恐怖劇場アンバランス」)「●山本 直純 音楽作品」の インデックッスへ(「怪奇大作戦」)「●冨田 勲 音楽作品」の インデックッスへ(「恐怖劇場アンバランス」)

老人問題を早期に取り上げたと言うより、そのレトリックにおいて佳作の「青い血の女」。

青い血の女 dvd.jpg青い血の女 title.jpg青い血の女3.jpg 第9話 死体置場(モルグ)の殺人者.jpg
DVD 怪奇大作戦 Vol.2」(第6話「吸血地獄」/第7話「青い血の女」/第8話「光る通り魔」/第9話「散歩する首」)「DVD恐怖劇場アンバランスVol.5」(第9話「死体置場(モルグ)の殺人者」/第10話「サラリーマンの勲章」)
岸田森(牧)/小橋玲子(小川)/原保美(的矢)/松山省二(野村)/勝呂誉(三沢)
怪奇大作戦0.jpg 三沢(勝呂誉)は久しぶりに会った友人・鬼島明(山中紘)の家でくつろいでいたが、家の前で偶然見かけた鬼島の父・竹彦(浜村純)の話をした際の鬼島夫妻の様子から、鬼島と竹彦の間に確執があることが窺えた。急にテレビの映りが変になったところで話にキリをつけ、三沢は鬼島の誘いで一泊することに。その夜、三沢は就寝中に何者に襲われ、手に傷を負う。同じ頃、帰宅途中のサラリーマンが刃物で殺害され、三沢は手の傷から事件の容疑者となってしまう。証拠不十分で釈放された三沢だが、その帰り道にまたも何者かに襲われる。三沢の事件を知った鬼島は一人暮らしの父の家を訪ねるが、竹彦は会おうともせず、一人"子供部屋"に戻り、ベビーベッドに横たわる何かに向かって話しかけるのだった。翌晩、竹彦の家を見張っていた三沢は、酒に酔った竹彦をタクシーで家まで送り届けた女性に会うが、女性を自分の車内に残して竹彦を自宅に送る間に、女性は何者かに襲われ、三沢は自宅に逃げ帰った彼女の後を追うが、女性の部屋に着くと女は既に息絶えていた。三沢はまたも容疑者にされるが、これも証拠不十分で釈放に。自分が襲われた晩に鬼島宅でテレビ画像が乱れたことを警察の町田警部(小林昭二)に告げ、それが警察の今回の事件の聞き込みと一致したことから、犯行時にテレビ画面を乱すほどの強力な電波が出ていることが判明、調べてみると、その電波の発信源は竹彦の家だった―。

「怪奇大作戦」 岸田森(1939-1982)・勝呂誉
怪奇大作戦.jpg怪奇大作戦 suti-ru.jpg 「怪奇大作戦」は円谷プロダクションが制作し、TBS系で1968(昭和43)年9月から1969(昭和44)年3月まで毎週日曜日19:00-19:30に全26話が放送された、SRI(科学捜査研究所)の活躍を描いた特撮テレビドラマ。2007年にNHKデジタル衛星ハイビジョンで「怪奇大作戦 セカンドファイル」(全3回)、2013年にNHK-BS2で「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」(全4回)としてリメイク放映されて、この間BS-2などでオリジナルの再放映もされています。オリジナルは最初の方、回が浅い間はやや方向性がバラバラだったような感じでしたが、この第7話「青い血の女」辺りになると、大体定まってきたかなという感じでした。

青い血の女 1.jpg サラリーマン、三沢、女性を襲ったのは《殺人人形》で、早くから画面に登場しますが、これは完全に機械仕掛けのからくり人形。その殺人人形を操っているのは誰なのか。ラストで警察が竹彦の部屋に踏み込む際に、竹彦は、ここには4歳の女の子がいるだけだと拒みますが、そこで彼らが見たものは―。

青い血の女2.jpg う~ん。竹彦は、自分を見捨てていく子どもたちの代わりに《女の子》を作って(高額の特許料で生活しているようだから発明家なのだろう)これを偏愛していたけれど、その《女の子》が老人である竹彦に代わって老人を見捨てる者を襲っているうちに"彼女"も自我を持つようになるとともに成熟し、竹彦から自由になりたいと考え、「あたしも老人を捨てて独立するの。だから、あたしも殺さなきゃ...」ということで"自殺"することになるわけか。なかなか凝ったレトリックだったなと思います。

青い血の女 sri.jpg 「青い血の女」というタイトルから成熟した女性が出てくると思われがちですが、結局"自我を持った人形"だったわけで(老人の少女愛、人形愛というのは川端康成っぽい?)、但し、自殺して「血を流した」という意味においては半ば"人間"であり、しかしながら「血が青かった」という意味では"人間"ではなかったという、こうしたレトリックにおいても、シリーズの中では佳作とされるべきものではないかと思います。

 「孤立する老人」の問題を早期に取り上げたことによっても傑作エピソードとされていますが、エピローグで三沢、的矢(原保美)、牧(岸田森)、野村(松山省二)、さおり(小橋玲子)といったSRI(科学捜査研究所)の面々がそうした"世評風に"事件を振り返っている一方で、この「怪奇」を科学的にどう説明するかということについては「科学捜査研究所」であるのに誰も追及しないとうのが違和感ありますが、「怪奇」を暴かず、「怪奇」は「怪奇」のままにしておくというのが、この辺りで確立されたこのシリーズの「方向性」だったと言えるかと思います。
        
恐怖劇場アンバランス title2.jpg死体置場(モルグ)の殺人者.jpg この「青い血の女」は大井武蔵野館で観ましたが、併映作品の1つに「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」('73年/フジテレビ、長谷部安春監督)がありました。「恐怖劇場アンバランス」は円谷プロが「怪奇大作戦」に続いて制作した本格オムニバスホラーの1時間ドラマで、「ウルトラQ」の企画時のタイトルだった「ア恐怖劇場アンバランス title.jpgンバランス」を冠しており、「怪奇大作戦」のSRIのようなレギュラーメンバーがおらず「ウルトラQ」のようなスタイルで、内容的には「怪奇大作戦」にも増して大人向けの色合いが濃くなっています。内容が過激で、台本の段階かそれ以前でストップし放映されなかったものが幾つかあり、おおよそ3年のお蔵入り期間を経て放映された13話のうち、制作No.7まではオリジナル脚本によるホラー路線で、制作No.8以降は原作付きのサスペンスに路線変更しています(放映順は制作順と異なる)。その原作者というのが、円地文子、西村京太郎、松本清張、山田風太郎、仁木悦子、樹下太郎といった錚々たるメンバーで、監督も、まだ巨匠扱いされる以前の鈴木清順、藤田敏八、神代辰巳、黒木和雄あたりだったりします。また、作り手として知られる人たち(大和屋竺、蜷川幸雄、唐十郎)が主演俳優として出演しているのも、今観ればレア感があります。

1死体置場(モルグ)の殺人者.png21死体置場(モルグ)の殺人者.png この第9話「死体置場(モルグ)の殺人者」(制作No.3)のあらすじは―
 雨の降る夜道、医大助教授の水上(久富惟靖)は、インターン生の愛人・小野寺涼子(西尾三枝子)を乗せた車を運転中、誤って村田(向精七)をはね殺してしまう。教授への昇進を控え、さらには将来の医学部長を目指す水上は、事実をもみ消すため死体を大学へ運び、死体保存用のホルマリンのプールへと沈める。愛人と一緒だっため、大学の医学部長の娘である妻(中原早苗)にもそのことを隠すが、村田はゾンビとなって水上の前に現れる―
i死体置場(モルグ)の殺人者s.jpg第9話 死体置場(モルグ)の殺人者1.jpg というもので、背景が「白い巨塔」('66年/大映)みたいで、水上と涼子(演じるのは元「プレーガール」メンバーの西尾三枝子)のベッドシーンもあったりして、完全に大人向けになっています。ゾンビなった村田が脱がされた背広をまた着直しているし(結局、水上の妄想か。但し、ゾンビ村田は涼子の前にも現れるし、更には自宅にも)、包帯ぐるぐる巻きになって家に帰ったのに、村田の妻が「あなたどうしたの?」程度にしか驚かないし(これは人が死ぬ前に近しい者の前に現れるという超常現象か)、野坂昭如(特別出演)演じる、水上の教授昇進祝いに水上宅に来ていた友人「第9話 死体置場(モルグ)の殺人者 0.jpg坂野」が、唐突に死体が甦る話をし始める(しかもセリフ棒読み)違和感など、突っ込みどこ第9話 死体置場(モルグ)の殺人者 野坂.jpgろは多いですが、怪奇モノ(怪談×モダンホラー)としてはオーソドックスだったでしょうか、いや、オーソドックスと言うより"ベタ"と言うべきか。あくまで今観て思うことで、リアルタイムで見ていた頃は結構怖がって観ていたかもしれません(そのことを加味して、星半分オマケ)。

西尾三枝子(涼子)/野坂昭如(坂野)

西尾三枝子(1947年生まれ)映画「砂の上の植物」(1964)/「サインはV」(1970)/「プレイガール」(1970-74)
西尾三枝子 砂の上の植物群9 - コピー.png 西尾三枝子 サインはv.jpg プレイガール nisiuo.jpg
 
 
怪奇大作戦2 [VHS].jpg大井武蔵野館.jpg「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」●制作年:1968年●監督:鈴木俊継●監修:円谷英二●制作:円谷英二●脚本:若槻文三●特技:高野宏一●音楽監督:山本直純●音楽:玉木宏樹●出演:勝呂誉/原保美/岸田森/松山省二/小橋玲子/小林昭二/山中紘/浜村純●放送:1968/10/27●放送局:TBS●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「恐怖劇場アンバランス(第9話)死体置場(モルグ)の殺人者」(長谷部安春)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)
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1  死体置場(モルグ)の殺人者.png「恐怖劇場アンバランス(第9話)/死体置場(モルグ)の殺人者」●制作第9話 死体置場(モルグ)の殺人者111.jpg年:1969年(制作№3)●監督:長谷部安春●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクシ小野寺涼子を演じた西尾三枝子.jpgョン/フジテレビ●脚本:山浦弘靖●音楽:冨田勲●出演:久富惟靖/西尾三枝子/向精七/渥美国泰/柳川慶子/高杉哲平/熊倉重之/鈴木勇作/小池泰光/酒井郷博/宮島邦継/斉藤リカ/倉石和旺/野坂昭如(特別出演)/中原早苗/高橋幸雄●放送:1973/03/05●放送局:フジテレビ●最初に観た場所(再見):大井武蔵野館(83-03-24)(評価:★★★☆)●併映:「怪奇大作戦(第7話)/青い血の女」(鈴木俊継)/「ウルトラQ/東京氷河期」(野長瀬三摩地)/「怪奇大作戦/死神の子守歌」(実相寺昭雄)

怪奇大作戦 sri.jpg怪奇大作戦 TITLE.jpg「怪奇大作戦」●演出:飯島敏宏/円谷一/実相寺昭雄/ 鈴木俊継/小林恒夫/安藤達己/長野卓/仲木繁夫/福田純/満田かずほ●制作:円谷英二●脚本:上原正三/金城哲夫/佐々木守/若槻文三/市川森一/福田純/高橋辰雄/藤川桂介/田辺虎男/石堂淑朗/山浦弘靖●音楽監督:山本怪奇大作戦 .jpg直純(主題歌「恐怖の町」作詞:金城哲夫/作曲:山本直純/歌:サニー・トーンズ)●出演:勝呂誉(三沢)/岸田森(牧)/原保美(的小川さおり(小橋玲子).jpg矢)/松山省二(野村)/小橋玲子(小川)/小林昭二(町田)●放映:1968/09~1969/03(全26回)●放送局:TBS

小橋玲子(小川さおり役)

怪奇大作戦 DVD-BOX 上巻【DVD】

「怪奇大作戦」(全26話)放映ラインアップ
放送日 話数 制作 No. サブタイトル 脚本 監督 特殊技術
1968年
9月15日 1 3 壁ぬけ男 上原正三 飯島敏宏 的場徹
9月22日 2 1 人喰い蛾 金城哲夫 円谷一 的場徹
9月29日 3 2 白い顔 金城哲夫/上原正三 飯島敏宏 的場徹
10月6日 4 4 恐怖の電話 佐々木守 実相寺昭雄 大木淳
10月13日 5 5 死神の子守唄 佐々木守
10月20日 6 6 吸血地獄 金城哲夫 円谷一 的場徹
10月27日 7 8 青い血の女 若槻文三 鈴木俊継 高野宏一
11月3日 8 7 光る通り魔 上原正三/市川森一 円谷一 的場徹
11月10日 9 9 散歩する首 若槻文三 小林恒夫 大木淳
11月17日 10 11 死を呼ぶ電波 福田純 長野卓 的場徹
11月24日 11 10 ジャガーの眼は赤い 高橋辰雄 小林恒夫 大木淳
12月1日 12 13 霧の童話 上原正三 飯島敏宏 的場徹
12月8日 13 12 氷の死刑台 若槻文三 安藤達己 高野宏一
12月15日 14 14 オヤスミナサイ 藤川桂介 飯島敏宏 的場徹
12月22日 15 15 24年目の復讐 上原正三 鈴木俊継 大木淳
12月29日 16 16 かまいたち 長野卓 高野宏一
1969年
1月5日 17 17 幻の死神 田辺虎男 仲木繁夫 的場徹
1月12日 18 18 死者がささやく 若槻文三 的場徹
1月19日 19 19 こうもり男 上原正三 安藤達己 大木淳
1月26日 20 20 殺人回路 市川森一/福田純 福田純 佐川和夫
2月2日 21 22 美女と花粉 石堂淑朗 長野卓 的場徹
2月9日 22 21 果てしなき暴走 市川森一 鈴木俊継 佐川和夫
2月16日 23 24 呪いの壺 石堂淑朗 実相寺昭雄 大木淳
2月23日 24 23 狂鬼人間 山浦弘靖 満田かずほ 的場徹
3月2日 25 25 京都買います 佐々木守 実相寺昭雄 大木淳
3月9日 26 26 ゆきおんな 藤川桂介 飯島敏宏 佐川和夫

円谷プロダクション 『円谷プロ全怪獣図鑑』 (2013/06 小学館)
円谷プロダクション監修 円谷プロ全怪獣図鑑0.jpg

恐怖劇場アンバランス Blu-ray BOX」(2016年リリース)
恐怖劇場アンバランス 1973.jpg
「恐怖劇場アンバランス」●監督:鈴木清順/藤田敏八/長谷部安春/山際永三/神代辰巳/森川時久/黒木和雄/満田かずほ/鈴木英夫/井田探●監修:円谷英二●特撮:佐川和夫●制作年:1969年8月~1970年4月●制作:円谷プロダクション/フジテレビ●脚本:田中陽造/小山内美江子/若槻文三/市川森一/山崎忠昭/滝沢真里/満田かずほ(禾+斉)/山浦弘靖/上原正三●音楽:冨田勲●解説:青島幸男●放映:1973/01~04(全13回)●放送局:フジテレビ

「恐怖劇場アンバランス」(全13話)放映ラインアップ
話数 制作No. サブタイトル ☆原作 脚本/監督
第1話 10 木乃伊(ミイラ)の恋 ☆円地文子 田中陽造/鈴木清順
第2話 7 死を予告する女 小山内美江/藤田敏八
第3話 9 殺しのゲーム ☆西村京太郎 若槻文三/長谷部安春
第4話 6 仮面の墓場 市川森一/山際永三
第5話 5 死骸(しかばね)を呼ぶ女 山崎忠昭/神代辰己
第6話 11 地方紙を買う女 ☆松本清張 小山内美江子/森川時久
第7話 12 夜が明けたら ☆山田風太郎 滝沢真理/黒木和雄
第8話 8 猫は知っていた ☆仁木悦子 満田穧(かずほ)/満田穧
第9話 3 死体置場(モルグ)の殺人者 山浦弘靖/長谷部安春
第10話 13 サラリーマンの勲章 ☆樹下太郎 上原正三/満田穧
第11話 2 吸血鬼の絶叫 若槻文三/鈴木英夫
第12話 1 墓場から呪いの手 若槻文三/満田穧
第13話 4 蜘蛛の女 滝沢真里/井田 探

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見るだけでも楽しいが、手塚治虫自身による裏話が多く盛り込まれており、読んでも面白かった。

手塚治虫劇場.jpgジャングル大帝917.JPG 
手塚治虫劇場―手塚治虫のアニメーションフィルモグラフィー』(1997/07 手塚プロダクション) (カバーイラスト:和田 誠)/「ジャングル大帝 レオのうた(劇場版1966)」作詞:辻真先/作曲:冨田勲/歌:弘田三枝子

 手塚アニメのフィルモグラフィーで、'97年刊行(初版は'91年)。'60(昭和35)年公開の「西遊記」から'97年公開の「ジャングル大帝」までの劇場公開されたアニメーション映画作品、並びに、'63年から'66年にかけて放映された「鉄腕アトム」から、'97年に放映された「聖書物語」までのTVアニメ作品(「バンパイヤ」などの実写との合成版を含む)の、画像や上映・放送記録データを収録しています。

 主要作品については、作者・手塚治虫自身がメディア各誌等で語ったその作品に関する長文の談話が付されていて、主にアニメーションの制作の苦労話や技術的なことについて触れているものが多く、そうした意味では、アニメに特化した編集の趣旨が明確に出ていていいです。

 冒頭の'88年の「朝日賞」受賞時の講演(作者が亡くなる1年前)からしてまさにそうであり、殆どアニメ制作の現場にいる玄人に向けて話すような内容を、一般の人にも分かり易いよう噛み砕いて語っていて、それがそのまま、日本のアニメ史や手塚アニメの特徴を語ることにもなっています。

 代表作「鉄腕アトム」に対する作者の後の自己評価はさほど高くなかったように思いましたが、それでも日本のTVアニメにおいて画期的な作品ではあったのだなあと。その自負は、作者自身の談話からも感じ取れます。
 
 取り上げられているている作品の中で個人的に思い出深いのは、「ジャングル大帝」のテレビアニメ版と旧い方の劇場版('66年/東宝)。

「ジャングル大帝 テレビアニメ 昭和40年.jpgジャングル大帝 テレビ 1965.jpgジャングル大帝 テレビ 1965 2.jpg 原作のオリジナルは、'50(昭和25)年から5年間「漫画少年」に連載されたもので、「鉄腕アトム」のオリジナルよりも以前になりますが、それを虫プロが手直しして、TV版に改変し放映を開始したのが'65(昭和40)年で、当時はまだカラーテレビの普及率が低かったものの(東京でカラー受像機は5千台程度)、番組スポンサーである電機メーカーのカラーテレビを普及させたいとの強い意向から、日本初のカラーアニメ番組が実現したとのことです。
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 このスポンサーというのは「三洋電機」のことであり、喜劇俳優の「エノケン」こと榎本健一(1904-1970)の「うち~のテレビにゃ色がない 隣のテレビにゃ色がある あらまきれいとよく見たら サンヨー・カラーテレビ」という軽妙ながらも視聴者の購買意欲をそそるコマーシャルが流れていました(因みににエノケンがCMに顔を出すのはこの作品だけで、初めてのCM出演がカラーで喜んだそうだ)。

弘田三枝子.jpg冨田勲6.jpg また、番組のエンディングテーマ「レオのうた」の作曲者は、後にシンセサイザー音楽作家として名を馳せる冨田勲(1932-2016)で、弘田三枝子(1947-2020))のパンチの効いた歌唱力により、アニメのエンディングテーマとしては人々の記憶に最も残るものの1つとなりました。弘田三枝子は、伊東ゆかりらと同様、少女時代から米軍キャンプで唄っていた経歴の持ち主で、このテーマを唄っている頃の彼女はややふっくら体型でしたが、自分で作ったカロリーブックをもとに、1日の食事を2000キロカロリー以内に抑えて半年間で17キロのダイエットに成功、1969年に「人形の家」がブレイクして第11回日本レコード大賞の歌唱賞を受賞し、1970年には『ミコのカロリーBOOK』を出版し150万部を超えるベストセラーになりました。

「ジャングル大帝 1966.jpgジャングル大帝・サンダ対ガイラ.gif 「ジャングル大帝」は、本書の手塚治虫自身の談によれば視聴率40%を超えたとのことで、その翌年に映画化され、主人公のレオが大人になってからの物語「新ジャングル大帝 進めレオ!」も引き続きテレビ放映されました。

「ジャングル大帝」('66年/東宝)ポスター(併映「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」('66年/東宝))

 映画版は劇場で見ましたが、オープニングの迸るような色彩の噴出に、ただただ圧倒された思い出があります(おそらくテレビではまだ白黒でしか見ておらず、それがいきなり大型スクリーンでカラーだったから衝撃をもって受け止められたのではないか)。

 本書の手塚治虫の談話を読むと、まずTVアニメの方は、音楽に経費を使い過ぎて、アニメの方は使い回しするなど苦心したとのこと、また、原画の色が当時のテレビ受像機ではそのままに出ないので、実際に映ったものを何度も見て絵具を塗り直したとのこと、それが今度は映画になると、その色がそのまま映像に出てしまうので、また修正と、かなり苦労したようです。

 因みに「ジャングル大帝」はその後、'97年(監督:竹内啓雄)、'07年(監督:谷口悟朗)に映画化されていますが(本書第2版は'97年版「ジャングル大帝」の公開に合わせて刊行されている)、それらはDVD化されているのに対し、この'66年版(監督:山本暎一)はDVDが無いようですが、他作品とバンドルされて、期間限定でDVD化されたりしたことはあったかもしれません。(このブログを見た人から、実際に「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「新宝島」の3部作DVD-BOX として、2005年と2008年に発売されていることを、メールで教えていただいた(感謝!)。期間限定生産だったが、マーケットプレイスで購入可能のようだ。)

w3.JPG 「ジャングル大帝」のテレビ放映時期は「鉄腕アトム」の終わりの方と重なっており、ほぼ同じ時期に虫プロのTVアニメ第2弾作品「W3(ワンダースリー)」の放映がありましたが('65年6月~'66年6月フジテレビで放映)、「W3」は「鉄腕アトム」と「ジャングル大帝」のどちらのアニメチームにも入れなかった虫プロのスッタフの「俺たちは落ちこぼれじゃないか」というひがみムードを払拭するために、そうしたスッタフの自発的なアイディアを尊重して作られた作品であるとのことです。

 もともと宇宙からきたリスのシリーズを考えていたところ、他のプロダクションでそっくりな企画が進行しているとの情報が入ってスパイ疑惑まで生じ、豊田有恒氏が虫プロを辞める事態にまで至ったわけですが(これが巷にいう「W3事件」)、その別のプロダクションの作品というのが「宇宙少年ソラン」です。

 「少年マガジン」で「W3」の連載が始まった後に「宇宙少年ソラン」の連載も同誌で始まり、しかもアニメ化された番組のスポンサーは菓子メーカー同士(ロッテ(W3)と森永(ソラン))の競合だったという―。結局、「W3」は「少年マガジン」の連載を中断し、「少年サンデー」で再開。但し、アニメの方は、途中から裏番組に「ウルトラQ」がきて、ガクンと視聴率が下がってしまったとのことですが、アメリカのローカル局に買われたとのことです(ローカル局のためか、吹き替え無しの字幕放送だった)。

 この本は、見ているだけでも楽しいですが、作者・手塚治虫自身による現場の裏話がふんだんに盛り込まれており(「W3事件」に関しても手塚自身が殆どの経緯を述べている)、読んでも面白かったです。

ジャングル大帝 1965.jpgジャングル大帝3.jpg「ジャングル大帝」●製作:山本暎一●チーフ・ディレクター:林重行●音楽:冨田勲●原作:手塚治虫●出演(声):太田淑子/小池朝雄/松尾佳子/明石一/田村錦人/勝田久/加藤精三/熊倉一雄/川久保潔/関根信昭/山本嘉子/千葉順二●放映:1965/10~1966/09(全52回)●放送局:フジテレビ

ジャングル大帝 劇場版 (1966)b.jpgジャングル大帝(劇場版)1966年2.jpg「ジャングル大帝」(劇場版)●制作年:1966年●監督:山本暎一●脚本:辻真先●音楽:冨田勲●原作:手塚治虫●時間:75分●声の出演:太田淑子/明石一/勝田久/松尾佳子/田村錦人/緑川稔●公開:1966/07●配給:東宝(評価:★★★★)

W3(ワンダースリー).jpgW3(ワンダースリー)2.jpg「W3(ワンダースリー)」●プロデューサー:黒川慶二郎●チーフ・ディレクター:杉山卓●音楽:宇野誠一郎●原作・総監督:手塚治虫●出演(声):白石冬美/近石真介/小島康男/沢田和子/金内吉男/池田一臣/桜井良子●放映:1965/06~1966/06(全52回)●放送局:フジテレビ

  
冨田勲.jpg 冨田勲ド.jpg  冨田 勲(1932-2016/享年84) 
関連作品
【TV番組】
宇宙人ピピ.jpg キャプテンウルトラ2.jpg 空中都市008(中山千夏)2.jpg宇宙人ピピ」('65年)/「キャプテンウルトラ」('67年)/「空中都市008」('69年)
【映画】
飢餓海峡(ポスター)65年.jpg たそがれ清兵衛 dvd.jpg飢餓海峡」('65年)/「たそがれ清兵衛」('02年)

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共演の男優・女優を追悼。シェイクスピアを下敷きにした見所多い(?)作品「禁断の惑星」。

禁断の惑星 dvd.jpg 禁断の惑星 英語ポスター.jpg 禁断の惑星 ポスター.jpg 昆虫型ミュータントがアダムス博士を襲う.jpg
禁断の惑星 [DVD]」「禁断の惑星」輸入版ポスター/日本版ポスター 「宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg 宇宙移民が行われている2200年代、アダムス機長(レスリー・ニールセン)が率いる宇宙船は、20年前に移住して消息を絶った移民団の捜索のために、惑星第4アルテアへ着陸するが、アルテア移民団の生き残りは、モービアス博士(ウォルター・ピジョン)と、アルテアで誕生した彼の娘アルティラ(アン・フランシス)の2人と、博士が作った万能ロボット・ロビーだけだった。博士によれば、アルテアにはかつて高度に進化し、発達した科学を創り上げた先住民族が存在したが、原因不明の滅亡を遂げ、そして移民団も正体不明の怪物に襲われて自分達以外は死んでしまったという―。

アン・フランシス_3.jpgForbidden Planet2.jpgForbidden Planet.jpg アダムス機長を演じたレスリー・ニールセンが昨年('10年)11月に亡くなった(享年84)のに続いて、アルティラを演じたアン・フランシスも今年('11年)1月に亡くなり(享年80)、寂しい限りです。TV番組「ハニーにおまかせ」('56年~)の私立探偵役のアン・フランシスも、「裸の銃(ガン)を持つ男」('86年)のレスリー・ニールセンも、この映画では2人とも20代でしょうか。この作品を観ると、永遠に2人とも若いままでいるような錯覚に陥ります。

禁断の惑星 名画座ミラノ2.jpg 「禁断の惑星」がシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにしていることはよく知られていて、最初に劇場(名画座ミラノ、すでに「名画座料金」ではなくなっていた)で観た時も、同時期の作品「宇宙水爆戦」('55年)などに比べてよく出来ているように思いました。

宇宙水爆戦1.jpg 「宇宙水爆戦」の方は結構キッチュ趣味と言えるかも。惑星間戦争で絶滅の危機にある星の異星人の科学者が、地球の科学者に協力を依頼するが、実はその星の指導者は地球を支配して移り住むことを企んでいた―というストーリーですが、最後、事件が一見落着したかと思ったら、宇宙船内に潜んでいた宇宙昆虫人間みたいなミュータントに襲われそうになるという―このとってつけたように出現するミュータントがポスターなどではメインになっていて、それだけストーリーは印象に残らないといことでしょうか。ストーリー的にも怪物キャラクター的にも、当時流行ったSFパルプマガジンの影響を強く受けているようです(そのこともキッチュ感に繋がる要因か。でもこのキッチュ感こそが、この作品の根強い人気の秘密かも)。

宇宙家族ロビンソン3.jpg 一方、「禁断の惑星」に出てくる有名キャラクターは万能ロボット「ロビー」で、これを参照したのが60年代に作られたテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」に出てくるロボット(愛称:フライデー)だったりし、先駆的な要素も結構あったわけです(「宇宙家族ロビンソン」には外にも「宇宙水爆戦」も参考にしている箇所が幾つかある)。

刑事コロンボ 愛情の計算2.png刑事コロンボ 愛情の計算.jpg 因みに、このロボットは、「刑事コロンボ」の第23話「愛情の計算」('74年)にも"ゲスト出演"してロビーとフライデー.jpgおり(下半身の造りが二本脚から台座型に変わっている)、人工知能研所の所長である犯人のアリバイ作りに一役買っていますが、ロボットのキー・ボードを叩く手つきの大雑把さを見ると、ちょっと所長の代役をさせるには無理な感じも。

ロビー(「禁断の惑星」)とフライデー(「宇宙家族ロビンソン」)のおもちゃ

 事件の鍵を握る天才少年の名は、スティーブン・スペルバーグで、これは勿論、コロンボ・シリーズ第3話「構想の死角」を撮ったスピルバーグ監督の名前をもじったもの。息子を庇う親心を利用して犯人を自白に追い込むというのは、後のフェイ・ダナウェイが犯人役を演じた第62話「恋におちたコロンボ」('93年)でもFaye Dunaway & Peter Falk.jpg恋におちたコロンボ2.jpg(こちらは娘を庇ってだが)使われましたが、真犯人ではないと分かっていながら拘束するのはいかがなものでしょうか(「恋におちたコロンボ」の脚本はピーター・フォーク自身が手掛けている)。但し、フェイ・ダナウェイの演技力はさすが。70年代のシリーズ作に比べ見劣りがする90年代のシリーズ作(特に後期作品)の中では、ひときわ映える名犯人役と言っていいのではないでしょうか。
Faye Dunaway & Peter Falk

アン・フランシス「死の方程式」「溶ける糸
死の方程式 アン・フランシス.jpg溶ける糸3 アン・フランシス.jpg 因みに「刑事コロンボ」シリーズに出たのはロボットだけではなく、アン・フランシスも「刑事コロンボ」の第8話「死の方程式」('72年)にロディ・マクドウォール(「猿の惑星」)演じる犯人の秘書兼愛人役で、第15話「溶ける糸」('73年)にレナード・ニモイ(「スタートレック」)演じる犯人に殺されてしまう看護婦役で出ているし、レスリー・ニールセンも、第7話の「もう一つの鍵」で、犯人である広告会社役員役のスーザン・クラークの恋人役で、第34話「仮面の男」('75年)で、元同僚のスパイに殺害される被害者役仮面の男2.jpg刑事コロンボ 仮面の男2.jpgで出ています。

レスリー・ニールセン 「仮面の男

 レスリー・ニールセンはこの頃もまだ二枚目俳優で(コメディ初出演は「フライング・ハイ」('80年))、「禁断の惑星」や「刑事コロンボ」の演技と「裸の銃(ガン)を持つ男」('88年)の演技を比べてみるのも一興でしょうか。コメディ俳優としてブレイクするきっかけとなった「裸の銃を持つ男」ではエリザベス女王裸の銃(ガン)を持つ男(1988).jpgをはじめフセイン大統領、ホメイニなど様々な人物をコケにし、「裸の銃を持つ男PART2 1/2」('88年)では当時のアメリカ大統領裸の銃(ガン)を持つ男2.jpgジョージ・ブッシュをコケにしています。「裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱」('94年)までプリシラ・プレスリー、ジョージ・ケネディ、O・J・シンプソンという共演トリオは変わらず和気藹々といった雰囲気でしたが、O・J・シO・J・シンプソンs.jpgンプソンは'94年に発生した元妻の殺害事件(「O・J・シンプソン事件」)の被疑者となってしまいました(刑事裁判で殺人を否定する無罪判決となったが、民事裁判では殺人を認定する判決が下った)。


Forbidden Planet3.jpg 「禁断の惑星」という作品は、ストーリーも凝っているように思われ、「テンペスト」をなぞるだけでなく、「イドの怪物」という精神分析的な味付けがされていて、ファーザー・コンプレックスがモチーフになっているように、フロイディズムの影響も濃く滲んでいます。
 また、ロボット・ロビーが博士に怪物の攻撃を止めるよう命じられても出来ないのは、アイザック・アシモフの「ロボット3原則」が下敷きになっているわけですが、この「ロボット3原則」は「ロボコップ」('87年/米)のラストなどにも援用されていたなあ。

 「禁断の惑星」も、時代ものSFパルプマガジンをそのまま映像化したような雰囲気はあるものの、それでいて結構おシャレな、レトロ・モダン感満載の"未来"像が楽しめるし、アン・フランシスがパルプマガジンの表紙そのままに超ミニで歩き回るし、この作品が実質的には映画デビュー作であるアダムス機長を演じたレスリー・ニールセンは、多分大多数の日本人がイメージしキャプテンウルトラ222.jpgている彼の演技とは全く異なる演技をしているし(昔の怪獣映画の宝田明や夏木陽介の感じ、乃至は、背景も含めると「キャプテンウルトラ」('67年)の中田博久の方がより近いか)、いろいろと見所が多い作品です(「なぜウチの中にビオトープがあるのか?」とか、突っ込み所も含めて)。

キャプテンウルトラ ハック2.jpg 尚「キャプテンウルトラ」にも、「宇宙警察パトロール隊」と共に「宇宙船シュピーゲル号」(なぜか「鏡」を意味するドイツの有名週刊誌の名前)に乗り込み、バンデル星人や怪獣たちと戦い続ける万能ロボット「ハック」が登場しますが、こちらは「ゴジラ」以来の日本の"伝統"か(この番組の制作城野ゆき.jpg会社は東映)、着ぐるみっぽいロボットでした。このシリーズは、脚本が番組放送に追いつかなくなった「ウルトラマン」と、その後継番組として構想されていた「ウルトラセブン」との間の所謂「つなぎシリーズ」だったので、書割りのような背景からも察せられる通り、番組制作予算は限られていたようです。その後ウルトラ・シリーズでお決まりとなる"紅一点"の女性隊員は、ここでは「アカネ隊員」ですが、「ウルトラマン」で桜井浩子が演じた「フジ・アキコ隊員」、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「アンヌ隊員」と並んで、この「キャプテンウルトラ」で城野ゆきが演じた「アカネ隊員」も、今も第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」.jpgって人気があるようです。いわばフジ・アキコ隊員の後輩格、アンヌ隊員の先輩格になりますが、アカネ隊員は紅一点と言うより"準主役"と言った方がいいかも。アカネ隊員は番組の最初から準主役級でいたわけでなく、レギュラーメンバーだった「キケロ星人ジョー」(演じていたのは無名時代の小林稔侍)が子供たちに不人気で12回までで降板(キケロ星に帰郷したことにされてしまった)、それと入れ替わるようにして(重なっている時期がある)レギュラーメンバーとして準主役となったものです。このアカネ隊員、もともと変装を得意とし、一度だけコスプレっぽい服を着ていたことがありましたが(第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」)、あれは一体なんだったのか(「禁断の惑星」のアン・フランシスを意識したのか)。
 

禁断の惑星 11 アンフランシス.jpg SFパルプマガジン風ファッション

禁断の惑星 21 アン・ニールセン.jpg 万能ロボット・ロビー登場

禁断の惑星 20 アン.jpg なぜウチの中にビオトープがあるのか?

禁断の惑星 04 アン・レスリー.jpg アン・フランシス/レスリー・ニールセン
Forbidden Planet(1956)
Forbidden Planet(1956).jpg
「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98しねまみらの.jpgシネマミラノ.jpg分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシスレスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス/ボブ・ディックス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
名画座ミラノ 1971年11月30日、歌舞伎町「東急ミラノビル」4Fに「名画座ミラノ」オープン、→1987年10月26日~封切館「シネマミラノ」、2006年6月1日~「新宿ミラノ3」(209席) 2014(平成26)年12月31日閉館。
新宿東急ミラノビル4館(シネマミラノ・ミラノ座・新宿東急・シネマスクエアとうきゅう)2005年8月
新宿ミラノ会館4館 20051.08.jpg

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]」 

宇宙家族ロビンソン dvd.jpg宇宙家族ロビンソン l.jpg宇宙家族ロビンソンの一コマ.jpg「宇宙家族ロビンソン」Lost in Space (CBS 1965~68) ○日本での放映チャネル:TBS(1966~68)
(全3シーズン。第1シーズンはモノクロ、第2シーズンからカラー)

宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン DVDコレクターズ・ボックス 通常版」 
  
刑事コロンボ 愛情の計算 vhs.bmp「刑事コロンボ/愛情の計算」●原題:MIND OVER MAYHEM●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●脚本:スティーブン・ボッコ/ディーン・ハーグローブ/ローランド・キビー刑事コロンボ 愛情の計算3.bmp●原案:ロバート・スペクト●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ホセ・ファーラー/ロバート・ウォーカー/ジェシカ・ウォルター/リュー・エヤーズ/リー・H・モンゴメリー/アーサー・バタニデス/ジョン・ザレンバ/ウィリアム・ブライアント/ルー・ワグナー/バート・ホランド●日本公開:1974/08●放送:NHK総合(評価:★★★)特選 刑事コロンボ 完全版「愛情の計算」【日本語吹替版】 [VHS]

恋におちたコロンボ1.jpg「新・刑事コロンボ/恋におちたコ恋におちたコロンボ dvdブック.jpgロンボ」●原題:IT'S ALL IN THE GAME●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ビンセント・マクビーティ●製作:クリストファー・セイター●脚本:ピーター・フォーク●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/フェイ・ダナウェイ/アルマンド・プッチ/クローディア・クリスチャン/ジョン・フィネガン/ビル・メイシー/シェリー・モリソン/ブルース・E・モロー/ジョニー・ガーデラ/ダグ・シーマン/ダニエル・T・トレント/トム・ヘンシェル日本公開:1999/05●放送:NTV(評価:★★★☆)
新刑事コロンボDVDコレクション 17号 (恋におちたコロンボ) [分冊百科] (DVD付)

裸の銃(ガン)を持つ男 dvd.jpg裸の銃(ガン)を持つ男 1.jpg「裸の銃(ガン)を持つ男」●原題:THE NAKED GUN:FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・ザッカー●製作:ロバート・K・ウェイス●脚本:ジェリー・ザッカー/ジム・エイブラハムズ/デヴィッド・ザッカー/パット・プロフト●撮影:ロバート・スティーヴンス●音楽:アイラ・ニューボーン●時間:85分●出演:レスリー・ニールセン/プリシラ・プレスリー/ジョージ・ケネディ/O・J・シンプソン/リカルド・モンタルバン/ナンシー・マルシャン●配給:UIP映画配給●日本公開:1989/04(評価:★★★☆)
裸の銃(ガン)を持つ男 [DVD]

「キャプテンウルトラ」中田.jpgキャプテンウルトラ.jpg「キャプテンウルトラ」●演出:佐藤肇/田口勝彦/加島昭/竹本弘一/山田稔/富田義治ほか●制作:平山亨/植田泰治●脚本:大津皓一/高久進/長田紀生/井口達/伊上勝ほか●音楽:冨田勲●出演:中田博久/城野ゆき小林稔侍/伊沢一郎/安中滋/相馬剛三/都健二/田川恒夫●放映:1967/04~09(全24回)●放送局:TBS 「キャプテンウルトラ Vol.2 [DVD]

(第9話怪生物バンデルエッグあらわる .jpgキャプテンウルトラ」第9話42.jpg「キャプテンウルトラ(第9話)/怪生物バンデルエッグあらわる」●制作年:1967年●監督:加島昭●脚本:鈴木良武/伊東恒久●音楽:冨田勲●時間:92 分●出演:中田博久(第9話)怪生物バンデルエッグあらわる kobayasi.jpg小林稔侍城野ゆき/伊沢一郎/安中滋/佐川二郎/桐島好夫/川田信一/(以下、非レギュラー)八名信夫/三重街恒二/大槻憲/木内博之/比良元高●放送局:TBS●放送日:1967/06/11(評価:★★★)

中田博久(キャプテンウルトラ=本郷武彦)/城野ゆき(アカネ隊員)第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」
キャプテンウルトラ」9.jpg キャプテンウルトラ」第9話61PQCFU.jpg
「キャプテンウルトラ」第1話「バンデル星人襲来す」 
」第1話「バンデル星人襲来す」.jpg

キャプテンウルトラ 第1話 「バンデル星人襲来す」.jpg 城野ゆき(アカネ隊員)1_500.jpg アカネ隊員cp.jpg 城野ゆき(アカネ隊員)
小林稔侍(キケロ星人ジョー)[当時26歳]/「シュピーゲル号」プラモデル
キャプテンウルトラ 小林稔侍.jpg シュピーゲル号.jpg

「●み 水上 勉」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●み 水木 しげる」【2396】 水木 しげる 『星をつかみそこねる男
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洞爺丸事故を7年繰り上げた大胆さ。心筋梗塞後の作者がワープロ練習用に選んだ作品。

飢餓海峡 上.jpg 飢餓海峡下.jpg    飢餓海峡dvd.jpg  飢餓海峡1シーン.jpg
飢餓海峡(改訂決定版) 上』『飢餓海峡(改訂決定版) 下』〔'05年〕 『飢餓海峡 [DVD]』(三國連太郎(中)/伴淳三郎(左)/高倉健(右))
飢餓海峡(上) (新潮文庫)』『飢餓海峡(下) (新潮文庫)
飢餓海峡(上) (新潮文庫).jpg飢餓海峡(下) (新潮文庫).jpg飢餓海峡(ポスター).jpg 昭和22年秋、台風のため青函連絡船・層雲丸の転覆事故が起き、必死の救助活動が行われる中、3人の復員服姿の男が台風で不通になった列車から飛び降り、転覆事故の混乱に紛れ、本土へ向けて夜の海峡を船を漕いでいた。台風が去った後、転覆した層雲丸の乗客の遺体が次々と収容されるが、引取り人のいない遺体があり、収容遺体は実際の乗客数より2体多かった。一方、同じ台風の中、函館市内て質屋が全焼する火事があり、焼け跡から質屋一家の他殺体が発見され、質屋一家強盗殺人事件と、転覆事故の乗船者数より多い2体の遺体が結びついた―。

飢餓海峡2.jpg [映画]函館署のベテラン刑事の弓坂(伴淳三郎)は、亡くなった男2人と行動を共にしていた犬飼太吉なる大男の行方を粘りつよく捜索を続け、その男・犬飼太吉(三國連太郎)と思われる男と一夜を共にした女郎・杉戸八重(左幸子)の存在を突き止める―。

 水上勉(1919‐2004)(ミナカミベンと呼ぶ人もいるが本来は「みずかみ・つとむ」と読む)の代表作で、内田吐夢(1898‐1970(うちだ・とむ)監督による映画化作品も、様々なアンケートでいつも歴代邦画のベストテンに入っている、そうした評価に相応しい力作でした(水上勉は'71年に『宇野浩二伝』などの功績で「菊池寛賞」を受賞)。

「飢餓海峡」1.jpg「飢餓海峡」2.jpg

飢餓海峡.jpg 主人公・犬飼役の三國連太郎の生涯最高の演技に加えて、刑事役の高倉健の演技もいいですが、高倉健と共に捜査にあたる元「飢餓海峡」.jpg刑事役の伴淳三郎と、堅気になろうとしてなれない薄幸の女性・八重(ひたすら犬飼を思いながら生き続ける哀しさ)を演じた左幸子の演技が、この二人もまた生涯最高の演技と言っていいくらいに、とてもいいです。

飢餓海峡」3.jpg とりわけ伴淳三郎については、内田吐夢監督がロケで、大勢の見物人の前で彼を罵倒して何十回もNGを出し、喜劇王伴淳のプライドをズタズタに傷つけ、すっかり意気消沈させたとのことで、実はそれこそが内田吐夢の狙いであり、伴淳がいつもの喜劇と場が違って巨匠の撮る大作にシリアスな大役ということで、いいところを見せようと肩に力が入り過ぎるのを、監督が伴淳を怒鳴りつける事で意図的に元気をなくさせ、それが作品が求めるところの人生に疲弊している老刑事像に繋がったというから、恐ろしいまでの演出です。

 原作を以前に読んだときは、貧困から這い上がる男のパワーとその結末の哀しさが強く印象に残りましたが、「改訂決定版」('05年/河出書房新社(上・下))で再読し、終盤の主人公の更正施設への"寄付"の組み入れ方なども改めて良くできているなあと思いました(結果的にはこの寄付によって、主人公の犬飼は...)。本作発表当時にはもう人気作家だった作者ですが、"贖罪"というテーマが、晩年の宗教的回帰の「予兆」としてこの作品の中に既にあったともとれます。

虚無への供物.jpg 岩内大火というのは本当に洞爺丸の転覆事故と同じ日に起きたのだと知りませんでした。共に、昭和29年9月の台風15号の影響を受けての惨事ですが、2つの事件からよくここまで構想したものだと驚きます。洞爺丸の転覆事故をモチーフにしたものでは、中井英夫『虚無への供物』がありますが、『虚無への供物』が歴史どおり昭和29年の出来事としてこの事件を扱っているのに対し、『飢餓海峡』では岩内大火と併せて7年繰り上げて昭和22年の出来事としているわけであって、その大胆な"柔軟性"にも改めて感心させられました。 
虚無への供物』 講談社文庫

事件.jpg 純文学作家による推理小説の最高峰として、テーマは異なりますが大岡昇平事件とこの作品を挙げたいと思います。ただし、『事件』は〈裁判小説〉、『飢餓海峡』は〈社会派サスペンス小説〉と言った方がよいかもしれませんが...(『虚無への供物』が正統派ミステリーと言えるかどうかは別として、少なくとも『事件』も『飢餓海峡』も、一般的な推理小説とはかなり異なるタイプの作品と言えるだろう)。

 河出書房新社の「改訂決定版」は、仮名使いだけでなく、文章そのものにかなり手を加えていますが、筋立ての変更はありません。作者は'89(平成元)年、70歳の時に心筋梗塞で倒れ、リハビリとしてワープロに挑戦し、"入力練習用"に選んだのがこの「飢餓海峡」だったということです(自身の代表作の「改稿」とリハビリのための「入力練習」を同時にやったことになる。作者が亡くなったのは「改訂決定版」出版の前年('04(平成16)年)で85歳だった)。
Kiga kaikyô (1965)
Kiga kaikyô (1965) .jpg飢餓海峡film.jpg高倉健 若い頃.png「飢餓海峡」●制作年:1965年●制作:東映●監督:内田吐夢●脚本:鈴木尚之●撮影:仲沢半次郎●音楽:冨田勲●時間:183分●出演:三國連太郎(樽見京一郎/犬飼多吉)、左幸子(杉戸八重/千鶴)/伴淳三郎(弓坂吉太郎刑事、函館)/高倉健(味映画「飢餓海峡」2.jpg村時雄刑事、東舞鶴)/加藤嘉(杉戸長左衛門、八重の父)/三井弘次(本島進市、亀戸の女郎屋「梨花」の主人)/沢村貞子(本島妙子)/藤田進(東舞鶴警察署長、味村の上司)/風見章子(樽見敏子、樽見の妻)/山本麟一(和尚、弓坂34587552f0e389e1d42e569c1a635e71--japanese-film.jpgの読経を褒める)/最上逸馬(沼田八郎、岩内の強盗犯)/安藤三男(木島忠吉、岩内の強盗犯)/沢彰謙(来間末吉)/関山耕司(堀口刑事、東舞鶴)/亀石征一郎(小川、チンピラ)/八名信夫(町田、チンピラ)/菅沼正(佐藤刑事、函館)/曽根秀介(八重が大湊で働いていた娼館、"花や"の主人)/牧野内とみ子(朝日館女中)/志摩栄(岩内署長)/岡野耕作(戸波刑事、函館)/鈴木昭生(唐木刑事、東舞鶴)/八木貞男(岩田刑事、東舞鶴)/外山高士(田島清之助、岩内署巡査部長)/安城百合子(葛城時子、八重が東京で訪ねる)/河村久子(煙草屋のおかみ)/高須準之助(竹中誠一、樽見家の書生)/河合絃司(巣本虎次郎、網走刑務所所長)/加藤忠(刈田治助)/須賀良(鉄、チンピラ)/大久保正信(漁師の辰次)/西村淳二(下北の巡査)/田村錦人(大湊の並木座.jpg巡査)/遠藤慎子(巫子)/荒木玉枝(一杯呑み屋のおかみ)/進藤幸(弓坂織江、弓坂の妻)/松平峯夫(弓坂の長男)/松川清(弓坂の次男)/山之内修(記者)/室田日出男(記者)●劇場公開:1965/01●最初に観た場所:銀座並木座 (87-10-18) (評価★★★★☆) 
銀座並木座  1953年10月7日オープン。1998(平成10)年9月22日閉館。

 【1963年単行本(全1巻)・1978年改訂版(全1巻)[朝日新聞社]/1964年単行本(全1巻)・2005年改訂決定版(上・下)[河出書房新社]/1969年文庫化(全1巻)・1990年文庫改訂(上・下)[新潮文庫]】

「●ふ 藤沢 周平」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1905】 藤沢 周平 『麦屋町昼下がり
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隠れた剣客というだけではなく、自分なりの価値観を持つ男たち。

たそがれ清兵衛 映画タイアップカバー.jpgたそがれ清兵衛2.jpg たそがれ清兵衛 dvd.jpg m020937a.jpg
たそがれ清兵衛』 単行本新装改訂版 ['02年] 「たそがれ清兵衛 [DVD]」 (松竹/監督:山田 洋次/出演:真田広之, 宮沢りえ)
たそがれ清兵衛 (新潮文庫)』(カバー:村上 豊)  Tasogare Seibei (2002)
Tasogare Seibei (2002).JPG

 表題作「たそがれ清兵衛」のほか、「うらなり与右衛門」「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「かが泣き半平」「日和見与次郎」「祝い人助八」の全8編を収録。

 一見すると情けないほど貧相だったり頼りなさげだったりするため普段は侮られているのだけれど、いざという時には毅然とした行動をとる男たちの話。彼らは何れも、しがない宮仕えの下級武士なのですが、実は知られざる(知る人ぞ知る)凄腕の剣客なのである―こうした「スーパーヒーロー」と言うよりむしろ「アンチヒーロー」達による剣豪小説は、サラリーマンの心をくすぐるものがあるのかも知れません。

 表題作「たそがれ清兵衛」のように、意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうといった話が多いのですが、命令には従い、そしてやり遂げる。しかし、そのことを足掛かりに出世しようなどという気は毛頭ない―。 "逆刺客"を倒した直後も番所へ届けず、とっとと家路を急ぐ主人公の姿に、夫婦愛というより、自分なりの価値観を持った人間が描かれていると思いました。

 「うらなり与右衛門」「日和見与次郎」などは義憤による敵討ちの話で、外見や日頃の立ち振る舞いでは窺えない主人公の心意気が伝わってきます。風呂敷包みに隠されていた"うらなり"与右衛門のしたたかさ、黒幕を絶対に許さない"日和見"与次郎の徹底ぶりが、"うらなり"や"日和見"といった外見とは対照的であり、強く印象に残りました。 

たそがれ清兵衛 0.jpg 「たそがれ清兵衛」は2002年に山田洋次監督によって映画化され、同監督初の時代劇でしたが、第76回キネマ旬報ベスト・テンの第1位に選ばれるなど多くの賞を受賞しました(「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「ブルーリボン賞 作品賞」「報知映画賞 作品賞」「山路ふみ子映画賞」「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」など作品賞を総嘗めした)。

宮沢りえ(朋江)/真田広之(清兵衛)

 元が短編であるだけに、他と短編と組み合わせて話を膨らませている部分があり、真田広之演じる清兵衛は、最近妻に死なれ、認知症の母と幼い娘2人を抱えており、残業しないのも無理はないという感じで(しようと思っても出来ない)、 宮沢りえ演じるヒロインの朋江は、夫の家庭内暴力で出戻りとなった親友の妹という設定になっています(何だか現代的)。

田中泯(一刀流の使い手・余吾善右衛門)/真田広之
たそがれ清兵衛 殺陣.jpg 清兵衛と朋江の相互の切ない想いの描き方は感動的でしたが、原作はもっと軽い感じだったという印象。但し、意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうというのは原作通りで、真田広之と田中泯の殺陣シーンはなかなかリアリティがありました。こうした、テレビ時代劇などにある従来のお決まりの殺陣シーンとは違った演出ばかりでなく、時代考証も細部に行き届いているようで、山田洋次監督の初時代劇作品への意気込みが感じられ、真田広之、宮沢りえの演技も悪くなかったです(それぞれ日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞・女優賞を受賞)。
   
丹波哲郎(清兵衛の本家の叔父・井口藤左衛門)/岸恵子(清兵衛の娘・井口以登(壮齢期))
たそがれ清兵衛 丹波哲郎2.pngたそがれ清兵衛 岸恵子2.jpg でも、恋愛を描いたことで、完全に原作とは別物の作品になった印象もありました。話の枠組みを岸恵子(壮齢となった清兵衛の娘)の語りにする必要もなかったし(岸恵子は「男はつらいよ 私の寅さん」('73年/松竹)以来の山田洋次監督作品への出演)、その語りによるエピローグで清兵衛を戊辰戦争で死なせる必要も無かった―更に言えば、どうせここまで改変するならば、2人を結婚させず悲恋物語にしても良かったように思います。
     
たそがれ清兵衛 01.jpg「たそがれ清兵衛」●制作年:2002年●製作:大谷信義/萩原敏雄/岡素之/宮川たそがれ清兵衛 丹波哲郎.jpg智雄/菅徹夫/石川富康●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平「たそがれ清兵衛」「竹光始末」「祝い人助八」●時間:129分●出演:真田広之/宮沢りえ/田中泯/小林稔侍/大杉漣/吹越満/深浦加奈子/神戸浩/伊藤未希/橋口恵莉奈/草村礼子/嵐圭たそがれ清兵衛   .jpg史/岸惠子/中村梅雀/赤塚真人/佐藤正宏/桜井センリ/北山雅康/尾美としのり/中村信二郎/丹波哲郎たそがれ清兵衛   .jpg/佐藤正宏/水野貴以●劇場公開:2002/11●配給:松竹(評価★★★☆)
[右写真]小林稔侍/宮沢りえ/山田洋次監督/真田広之/丹波哲郎

 【1988年単行本・2002年新装版[新潮社]/1991年文庫化・2006年改版[新潮文庫]】

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