Recently in 真鍋 博 Category

「●ま 真鍋 博」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●み 三浦 綾子」 【2638】 三浦 綾子 『泥流地帯
「●イラスト集」の インデックッスへ

環境破壊等の今日的問題に早くから高い関心と危惧を抱いていたエコロジストだった。

真鍋博の植物園と昆虫記 (ちくま文庫)2.jpg真鍋博の植物園と昆虫記 (ちくま文庫).jpg 真鍋博の植物園.jpg 真鍋博の昆虫記.jpg
真鍋博の植物園と昆虫記 (ちくま文庫)』['20年]『真鍋博の植物園 (1976年)』『真鍋博の昆虫記 (1976年)

真鍋博の植物園と昆虫記72.jpg ラストレーターの真鍋博(1932-2000/68歳没)が、社会のあらゆるものを"植物"と"昆虫"に見立て、ユーモアと風刺を織り込んで描いたものです。もともとは、『真鍋博の植物園』('76年/中央公論社)と『真鍋博の昆虫記』('76年/中央公論社)として別々に刊行されたものが、40年の年月を経て、ちくま文庫に合本化し再編集されたということです。

真鍋博の植物園と昆虫記5.jpg 星新一、筒井康隆、アガサ・クリスティーなど人気作家作品の装画や装幀の仕事で知られた著者ですが、装画や装幀は作品の内容に沿って描かれるのに対し、本書は、著者自身が純粋な自らのアイデアでイラストを描き、コメントを添えています。

真鍋博の植物園と昆虫記4.jpg 見て、読んで感じるのは、70年代から80年代にかけて我々に「未来」像を提供し続けてくれた著者が、実はエコロジストであり、環境破壊等の今日の世界が直面している問題に、その当時から高い関心を寄せ、危惧を抱いていたということが窺えることです。

 本書は、イラストレーターである著者の、その膨大な仕事の中では、最もメッセージ性が高い部類のものであると思います。

「●イラスト集」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2814】佐々木 マキ 『佐々木 マキ―アナーキーなナンセンス詩人』
「●ま 真鍋 博」の インデックッスへ 「●ほ 星 新一」の インデックッスへ

真鍋博の插絵と星新一のショーショートの組み合わせは、双方にとって相性ばっちり。

真鍋博のプラネタリウム 2013.jpg 真鍋博のプラネタリウム (新潮文庫).jpg 真鍋博のプラネタリウム my.jpg 真鍋博3.jpg 星新一 p.jpg
真鍋博のプラネタリウム:星新一の挿絵たち (ちくま文庫)』['13年]『真鍋博のプラネタリウム―星新一の挿絵たち (新潮文庫)』['83年]真鍋博/星新一

真鍋博 146.jpg 名コンビと言われた星新一(1926‐1997)と真鍋博(1932‐2000)ですが、本書は、雑誌掲載時の作品を中心に「真鍋博の插絵」という視点で集めた唯一の作品集であるとのことで、1983(昭和58)年に〈新潮文庫〉として刊行されています。この2013(平成25)年刊行の再文庫化版(〈ちくま文庫〉版)では、従来の星新一によるまえがき、真鍋博によるあとがきプラス、新たに真鍋博の子息で恐竜学者の真鍋真氏による解説が加わっています。

 星新一作品の插絵は和田誠、ヒサクニヒコ、そして真鍋博が御三家と呼ばれていますが、やはり一番印象に残っているのは真鍋博の插絵のような気がします。真鍋博自身も、筒井康隆作品の插画やアガサ・クリスティのハヤカワ・ミステリ文庫のカバー絵なども手掛けていますが、星新一作品との組み合わせは、双方にとって相性ばっちりだったように思います。

 本書は、その相性の良さを堪能できますが、真鍋博の插絵を多く紹介するために、星新一のショートショートの方は、「おーいでてこーい」(星新一のまえがきによると、これが最初に真鍋博と組んだ作品とのこと。和田誠と知り合ったのはその9年後)、「マイ国家」「ボッコちゃん」などの代表作にしても、書き出しやさわりの部分だけの引用になっています。結末や核心に触れていないので、これはこれで、これからどうなるのだろうという余韻を残して悪くないと思いました(どんな結末だったか忘れてるなあ)。
  
真鍋博のプラネタリウム2.9.2.png それでも、全部このスタイルだと読者がカタルシス不全になると考えたのか、30ページおきぐらいに結末まで全文掲載している作品が出てきます。そのラインアップは「はじめての例」「窓の奥」「いやな笑い」「追われる男」「幸運の未来」「夢のような星」となっており、先に挙げた「マイ国家」「ボッコちゃん」といった短編集の表題作となるような有名なものではないところが、またミソなのかもしれません(ほぼ初読のはずなので、插絵から結末を想像して読んで欲しいとのことらしい)。

 難を言えば、真鍋博の插絵が、中には見開きいっぱいにスペースをとっているものもありますが、全体としては小さいものが多い点で、これは、旧版も文庫でありるため致し方無いのかもしれません。目をうんと近づけて見てしまいました。

「●イラスト集」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●写真集」 【1749】 土門 拳 『ヒロシマ
「●ま 真鍋 博」の インデックッスへ

日本の主要都市の鳥瞰図。超細かい。時を経て記録的な価値が高まった。

真鍋博の鳥の眼.jpg真鍋博の鳥の眼2.jpg 鳥の眼―真鍋博の (1968年).jpg 真鍋博3.jpg 真鍋 博
新装版 真鍋博の鳥の眼 タイムトリップ日本60'S』['19年]『鳥の眼―真鍋博の (1968年)』['68年]
(37.2 x 23.3 x 2.1 cm)
真鍋博の鳥の眼1.jpg イラストレーターの真鍋博(1932-2000/68歳没)による日本の主要都市を鳥瞰図的に描いたイラスト集で、昭和43(1968)年に刊行され、今回50年ぶりに令和元年に新装版として復刻されました。描かれているのは、丸ノ内、霞が関、新宿、渋谷、札幌、盛岡、日光、軽井沢、横浜、鎌倉、箱根、熱海、新潟、金沢、名古屋、奈良、京都、大阪、和歌山、神戸、岡山、松江、広島、尾道、高知、松山、別府、福岡、長崎、鹿児島...etc.全部で54に及び、一部、黒四や日本アルプスなどを含みます。個人的には、ちょうど昭和のその頃通っていて、今は廃校になってしまった小学校と中学校が見つかったのが嬉しかったです。

真鍋博の鳥の眼 S.jpeg 週刊誌「サンデー毎日」の連載として昭和43年から翌年にかけて発表されたものですが、一定の技法があるとは言え、CGソフトもない時代に、この細密画に近い鳥瞰図を週一のペースで描き続けていたというのはスゴイなあと思われ、筒井康隆氏が「鳥になり壮絶な技法で日本を国会議事堂から喫茶店まで描ききったこの個人による芸術は唯一無二である」と絶賛したのも頷けます(新装版の解説は、マップラバー(地図愛好者)を自認する生物学者の福岡伸一氏で、真鍋博の息子で恐竜学者の真鍋真氏と知己であるとのこと)。

 よく展望台にあるマップのように、建物に線を引いて名称をこと細かく書いてあるのがまたスゴく、「新宿」(上図)などは大変なことになっています(笑)。因みに旧版は新書本に近いサイズであったから、週刊誌に掲載したサイズに合わせたのだと思いますが、週刊誌でリアルタイムで見た人は、この細かい字をどこまで読み込めたのでしょうか(それぐらい超細かい)。

真鍋博の鳥の眼_5354.JPG 各ページに見開きページに、著者によるその都市の紹介がついていますが、もともとバイコロジーの提唱者で、文明批評的エッセイの分野でも足跡を残した人であり、解説もそうした視点からなされています。新装版になって「タイムトリップ日本60'S」というサブタイトルが付きましたが、年月が経過したことで、記録的な価値が高まった言えるかと思われ(著者自身、当初より"イラスト・ルポルタージュ"という姿勢でこの大作業に臨んだとある)、復刻したのは意義があることだと思います。エッセイ風の解説と併せて堪能できる一冊です。

 自分の知らない街はあまり興味がないという人もいるかもしれませんが、全部かどうか分かりませんが、絵の中に一組の男女が隠れていて(左例はP60「名古屋(南)」)、それを探してみる楽しみもあります(これがなかなか見つからない)。1987年に英国人イラストレーターのマーティン・ハンドフォードによって英国で出版された絵本『ウォーリーをさがせ!』を想起させます(真鍋博の方が20年早いが)。

「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2510】 渡辺 邦男 「忠臣蔵
「●日本のアニメーション映画」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●や‐わ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ「●「ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞」受賞作」の インデックッスへ(「去年マリエンバートで」) 「●「フランス映画批評家協会賞(ジョルジュ・メリエス賞)」受賞作」の インデックッスへ(「去年マリエンバートで」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●わ 和田 誠」の インデックッスへ「●ま行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●ま 真鍋 博」の インデックッスへ「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●て 手塚 治虫」の インデックッスへ「●冨田 勲 音楽作品」の インデックッスへ(手塚治虫「人魚」)「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●よ 横尾 忠則」の インデックッスへ

刺殺体を巡る7人の"探偵"。パロディ精神と映画愛が密度濃く詰まっている。

殺人 MURDER 0.jpg 殺人 MURDER①.jpg 和田 誠 氏2.jpg 和田 誠  去年マリエンバートで dvd 2009_.jpg
「殺人 MURDER!」 (1964)           「去年マリエンバートで HDニューマスター版 [DVD]

殺人 Murder.jpg メイドがノックして入った部屋で刺殺体を発見し、大声で叫ぶ。この場面が7回繰り返され、回ごとに「MURDER!」というそれぞれ違ったタイトルロゴの後、様々な探偵が登場し、独自の方法で犯人を突き止め、逮捕に至る(逮捕殺人 MURDER①ホームズ.jpgされるのは常に同じ人物)。1人目は、ハンチングキャップ.を被りパイプを咥え、現場の遺留物や足跡など残された手掛かりの組み合わせから犯人を推理する探偵。2人目は、巻き口髭を生やし、肘掛椅子で葉巻を燻らせな殺人 MURDER② ポワロ.pngがら新聞記事を読み、創造力だけで事件を解決してみせる探偵。3人目は、ソフト帽を被って両手はいつもコートのポケットの中で、メイドへの質問を手始めに鉄道や船殺人 MURDER③サム・スペード.jpgを使って地道な聞き込みを行い、更にはバーに行って聞き込みをしてカクテルを飲んだり、飛行機に乗ったりして捜査を続け、犯人を見つける探偵。4人目からは、"探偵"という枠を超えた人物が登場し、トップハット殺人 MURDER④.pngを被った19世紀風の男が刺殺体を調べていると、死体が突然目を見開いて吸血鬼となって甦るも、男はニンニクと十字架でこれを退散させるという殺人 MURDER⑤007.pngオカルト・ホラー調。5人目は、007(ジェームズ・ボンド)風で、映画でよく知られている銃口をモチーフしたオープニングのパロディあり、美女との出会いや危険なア殺人 MURDER⑥科学者.pngクションありで、事件を解決して最後は美女とベッドイン。6人目は、SF映画のパロディ風で、科学者風の男が登場し、コンピュータにデータを打殺人 MURDER⑦.pngち込んで犯人を割り出す。本当の犯人はどうやら人間の躰を借りた宇宙人だったらしく、犯人の首がパカッと開いて、そこから空飛ぶ円盤へと帰って行く。最後7人目は、アートシアター風で、冒頭のタイトル及び刺殺体発見場面から最後まで全編モノクロ。映画「去年マリエンバートで」のパロディになっていて、探偵かと思われた男は、最後犯人探しはどうでもよくなっていて、出会った女と共に闇に消えていく。このパートだけ、犯人逮捕の場面はなく、ラストは「END」ではなく「FIN」で終わる―。
第1回「アニメーション・フェスティバル」('64年)チラシ
第1回「アニメーション・フェスティバル」.jpg 1964年秋、草月会館ホールで行われた第1回「アニメーション・フェスティバル」で上映するため、主催の「アニメーション三人の会」(久里洋二、柳原良平、真鍋博)から依頼されて和田誠が制作した16ミリのアニメーションで、音楽は八木正生(1932-1991)が担当し、時間が無い中で作られたというこの作品は、毎日映画コンクール・第3回「大藤信郎賞」を受賞しています(受賞理由では音楽も高く評価されている)。

 「アニメーション三人の会」が設立された'60年の段階では、柳原良平の「アンクルトリス」のCMを除きそれまで本格的なアニメーション制作の経験のなかった3人ですが、「三人の会」の活動は、日本の自主制作アニメーション界全体の活性化と次代の人材育成に繋がったほか(「三人の会」のメンバー作品のみの上映会は'60年、'61年、'63年の3回行なわれ、それが第4回以降「アニメーション・フェスティバル」となった)、「アニメーション・フェスティバル」を通じて、横尾忠則や宇野亜喜良など他の分野の芸術家がアニメーション制作を行なう契機にもなっています。

去年マリエンバートで 01.jpg この「殺人 MURDER!」は9分という長さの軽く楽しめる作品ですが、'64年という制作年で、しかも、「アニメーション三人の会」からの依頼で作った自主制作映画であったにしては、質的レベルはかなり高いように思います。『倫敦巴里』('77年/話の特集)に見去年マリエンバートで dvd 2016_.jpgられるパロディ精神が、この頃から横溢していたことを物語っていると共に、作者の"映画愛"が密度濃く詰まっている感じがし、'64年5月に日本で公開されたアラン・レネ監督の「去年マリエンバートで」('61年/仏)などがパロディ素材として使われていることに作者の慧眼を感じます(既にヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞してはいたが、後に映画史上もっとも難解な作品の一つと評されることになった)。
去年マリエンバートで [DVD]

去年マリエンバートで 03.jpg去年マリエンバートで   es.jpg 「去年マリエンバートで」は、脚本のアラン・ロブ=グリエ(1922-2008)自身の言によれば、黒澤明監督の「羅生門」('50年/大映)に触発れて作られた作品であり、つまりは芥川龍之介の「藪の中」を下敷きにした作品の一つと言えますが、"誰もあらすじを説明することができない映画"としても有名(?)でしょうか。何回観ても理解不能であり(そこが良くてまた観てしまう人もいると思うが)、この「殺人 MURDER!」の中での使われ方は、ややその辺りのアイロニーが込められているように思いました(和田誠は山田宏一との共著『たかが映画じゃないか』('78年/文藝春秋)で、フランス映画通の山田宏一へのコンプレックスをユーモラスに吐露している)。

殺人 MURDER図1.jpg 「殺人 MURDER!」の1人目と2人目の探偵はシャーロック・ホームズとエルキュール・ポアロがモデルであるのがすぐに分かるけれど、3殺人 MURDER②2.jpg人目は、前のエントリーで取り上げた『マルタの鷹』の探偵か。だとすれば、彼が飲むカクテルはマンハッタンということになるかもしれませんが、あの探偵、船や飛行機に乗ったりしたっけ。一方の捕まる犯人の方は、常に"久里洋二"風の男であるのが可笑しいです(そこだけ日本風)。フェスティバルでの上映では、最後の「去年マリエンバートで」篇が最も好評だったそうです(みんな「あの映画は(高踏的で?)無理に解らなくてもよい」と何となく安心した?)。

真鍋博「潜水艦カシオペア」('64年)(原画)/手塚治虫「人魚」('64年)
真鍋博「潜水艦カシオペア」1.jpg手塚治虫「人魚」.jpg なお、この第1回「アニメーション・フェスティバル」には、先に述べたように、主催者である久里洋二、柳原良平、真鍋博の作品のほかに横尾忠則や宇野亜喜良、さらには手塚治虫の作品なども出品されていますが、この和田誠の「殺人 MURDER!」以外では、真鍋博の「潜水艦カシオペア」、手塚治虫の「人魚」、横尾忠則の「アンソロジーNo.1」「KISS KISS KISS」などを観ました。真鍋博「潜水艦カシオペア」は、SF作家の都筑道夫が原作の"戦争が嫌いな潜水艦"を主人公に据えた寓話的短編で、米ソ冷戦の影響を受けつつも真鍋博らしいなあという印象(但し、ラストはアンハッピーエンド)。手塚治虫「人魚」は、空想を禁じられている架空の国が舞台で、ひとりの少年が助けた魚が人魚に変身してしまい、これはよからぬ空想の産物だとして少年は逮捕され、強制的に空想する力を奪い取られてゆくという管理社会の怖さとそこからの脱出を描いた作品。8分の短編にテリー・ギリアム監督のSF映画「未来世紀ブラジル」('85年/英)張りのテーマを込めてしまうところはさすがに手塚治虫といった横尾忠則「アンソロジーNo.1」1.jpg感じ。横尾忠則「アンソロジーNo.1」は、実験映画というよりは画像コラージュに近い作品。星、古城、太陽、木、鳥、女の顔、演奏、涙、指差す形、ピストル、決闘、死(死神、霊柩車、十字架)という風に、いくつかのイメージを集め、ポスターや本の表紙、自らが描いたイラストなどから切り取った静止画がほとんどで(一部動画もあり)、60年代という時代における"横尾忠則"を感じる作品とでもいうべきでした。これらの中ではやはり、和田誠の「殺人 MURDER!」と手塚治虫の「人魚」が頭一つ抜きん出ているでしょうか。更に言えば、和田誠が一番でした(何度観ても飽きない)。

和田 誠 「<殺人 MURDER!>」('64年)

横尾忠則「アンソロジーNo.1」('64年)

「殺人 MURDER!」●制作年:1964年●監督・製作:和田誠●撮影:古川肇郁/林政道●音楽:八木正生●時間:9分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★★☆)

去年マリエンバートで  チラシ.jpg去年マリエンバートでes.jpg「去年マリエンバートで」●原題:L'ANNEE DERNIERE A MARIENBAT●制作年:1961年●制作国:フランス・イタリア●監督:アラン・レネ●製作:ピエール・クーロー/レイモン・フロマン●脚本:アラン・ロブ=グリエ●撮影:サッシャ・ヴィエルニ●音楽:フランシス・セイリグ●時間:94分●出演:デルフィー去年マリエンバートで ce.jpgヌ・セイリグ/ ジョルジュ・アルベルタッツィ(ジョルジョ・アルベルタッツィ)/ サッシャ・ピトエフ/(淑女たち)フランソワーズ・ベルタン/ルーチェ・ガルシア=ヴィレ/エレナ・コルネル/フランソワーズ・スピラ/カ去年マリエンバートで 記事をクリップする_3.jpgリン・トゥーシュ=ミトラー/(紳士たち)ピエール・バルボー/ヴィルヘルム・フォン・デーク/ジャン・ラニエ/ジェラール・ロラン/ダビデ・モンテムーリ/ジル・ケアン/ガブリエル・ヴェルナー/アルフレッド・ヒッチコック●日本公開:1964/05●配給:東和●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会(81-05-23)(評価★★★?)●併映:「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル)

真鍋博「潜水艦カシオペア」title.png真鍋博「潜水艦カシオペア」2.jpg「潜水艦カシオペア」●制作年:1964年●監督・製作:真鍋博●協力:都築道夫/杉山正美/富澤幸男/岡田三八雄/染谷博/村瀬信夫/大野松雄/植田俊郎/池田亜都敦夫/片岡邦男/矢野譲/山内雅人●原作:都築道夫●時間:5分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★☆)

手塚治虫「人魚」title.jpg手塚治虫「人魚」2.jpg「人魚」●制作年:1964年●原案・構成・演出・作画:手塚治虫●製作:富岡厚司(虫プロのプロデューサー)●原画:山本繁●動画:沼本清海●撮影:佐倉紀行●音楽:冨田勲(ドビュッシー「牧神の午後の前奏曲」より)●時間:8分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★★)
           
アンソロジーNo.1 横尾忠則ド.jpg横尾忠則「アンソロジーNo.1 title.png横尾忠則「アンソロジーNo.1」2.jpg「アンソロジーNo.1」●制作年:1964年●監督・製作:横尾忠則●時間:7分●公開:1964/09●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★☆)   
        

第1回「アニメーション・フェスティバル」('64年)チラシ
第1回「アニメーション・フェスティバル」2.jpg
《読書MEMO》
森卓也.jpg森卓也(映画評論家)の推すアニメーションベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))
○難破ス物語第一篇・猿ヶ島('30年、正岡憲三)
くもとちゅうりっぷ('43年、正岡憲三)
○上の空博士('44年、原案・横山隆一、演出:前田一・浅野恵)
○ある街角の物語('62年、製作構成:手塚治虫、演出:山本暎一・坂本雄作)
殺人 MURDER('64年、和田誠)
○長靴をはいた猫('69年、矢吹公郎)
ルパン三世・カリオストロの城('79年、宮崎駿)
うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー('84年、押井守)
○天空の城ラピュタ('86年、宮崎駿)
となりのトトロ('88年、宮崎駿)

「●ほ 星 新一」の インデックッスへ  Prev|NEXT ⇒ 【2989】 星 新一 『きまぐれロボット
「●わ 和田 誠」の インデックッスへ

"ブザー"にしないで「ノックの音が」としたことで、古びずに済んでいる。

『ノックの音が』毎日新聞社(65).jpgノックの音が昭和40年初版 星新一毎日新聞社.jpgノックの音が 講談社文庫.jpg ノックの音が 新潮文庫.jpg 星新一.jpg 星 新一
ノックの音が (1965年)』['65年/毎日新聞社(装幀・挿絵:村上 豊)]/『ノックの音が (講談社文庫)』['72年(カバー:村上 豊)]/『ノックの音が (新潮文庫)』['85年/新潮文庫(カバー:真鍋 博)]

 星新一(1926‐1997)の「ノックの音が」で始まる15のショートショート集で、'65(昭和40)年に毎日新聞社から単行本が刊行され、'71年に講談社・ロマン・ブックス、'72年の講談社文庫版、'85年には新潮文庫版が刊行されています。

ようこそ地球さん.jpgおせっかいな神々.jpgエヌ氏の遊園地.jpgボッコちゃん.jpg 以前読んだ星新一作品としては、『ようこそ地球さん』('61年・新潮社/'72年・新潮文庫)、『おせっかいな神々』('65年・新潮社/'79年・新潮文庫)、『エヌ氏の遊園地』('66年・三一新書/'71年・講談社文庫/'85年・新潮文庫)、『ボッコちゃん』('71年・新潮文庫)などがあようこそ地球さん 新潮文庫.jpgおせっかいな神々 新潮文庫.jpgエヌ氏の遊園地 新潮文庫.jpgりますが、新潮文庫だけでなく講談社文庫や角川文庫(『きまぐれロボット』など)にも初期作品集が収められていました。

上段:『ようこそ地球さん―ショート・ショート28選 (1961年)』『おせっかいな神々 (1965年)』『エヌ氏の遊園地』['71年/講談社文庫]/『ボッコちゃん』['71年/新潮文庫(旧カバー版)](イラスト:真鍋 博/ヒサクニヒコ) 下段:『ようこそ地球さん (新潮文庫)』『おせっかいな神々 (新潮文庫)』『エヌ氏の遊園地 (新潮文庫)』(何れも新カバー版(イラスト:真鍋 博))

きまぐれロボット250.jpg 風俗描写を"禁忌的"と言っていいまでに排し、「時代に影響されない」寓話的な世界を展開した作風が知られていますが、このショートショート集などはまさに今読んでも"現代"の物語として通用するものであり、そのことを実証しているように思います。

きまぐれロボット (角川文庫 緑 303-3)』(旧カバー版(イラスト:和田 誠

 更に、登場人物がやはり作者ならではの乾いた感じのキャラクターばかりで、自らが課した「ノックの音が」で始まるというルールに沿って、いきなり部屋に美女が現われたりするなど、大人のイマジネーションを掻き立てるようなシチュエーションもありながら、いやらしさやウエット感が全然ないのも、星新一作品の特徴をよく示しています。
       
ボッコちゃん (新潮文庫)』(イラスト:真鍋 博)  
ボッコちゃんdc.jpg星 新一02.jpg 「時代に影響されない」ということについては、新潮文庫の後書き('85年新潮文庫版)で作者自身が、「現在ならブザーの方が適切な場合もあるのではないだろうか」としつつも(ノックだとあまりにクラシックな感じがするということか?)、「ノックだと、良くも悪しくも、人間的な何かがある」「ブザーだと、電線的なるものが中間にあって、人間性が薄れてしまう」と書いていますが、'85年当時は玄関などで呼び出すとすればブザーが主流だったのでしょうか。今ならばむしろブザーではなく「チャイムの音が」ということになるのでしょう。

ノックの音が 講談社ロマンブックス.jpg ブザーにしないで「ノックの音が」とすることで、却って「作品は風俗の部分から、まず古びていくのである」との轍を踏まずに済んでいるように思いました。

講談社ロマンブックス『ノックの音が』['71年2月/装幀:和田 誠

星新一のおすすめ名作ショートショート15選(個人サイト)
1.『ノックの音が』
nokkunootoga.jpg2.『悪魔のいる天国』
3.『午後の恐竜』
4.『ようこそ地球さん』
5.『妄想銀行』
6.『おせっかいな神々』
7.『妖精配給会社』
8.『マイ国家』
9.『白い服の男』
10.『かぼちゃの馬車』
11.『おのぞみの結末』
12.『ごたごた気流』
13.『ちぐはぐな部品』
14.『エヌ氏の遊園地』
15.『ボッコちゃん』
(あくまで15選であり、15選内のランキングではない)


 【1965年単行本(新書版)[毎日新聞社]/1971年ノベルズ版[講談社ロマンブックス]/1972年文庫化[講談社文庫]/1985年文庫化[新潮文庫]】

「●科学一般・科学者」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【336】 養老 孟司 『脳が語る科学
「●ほ 星 新一」の インデックッスへ「●ま 真鍋 博」の インデックッスへ「●世界史」の インデックッスへ 「●雑学・クイズ・パズル」の インデックッスへ

飽きずに読める雑学本。自然科学に限らず、歴史など多岐にわたるSF作家の好奇心。

『アシモフの雑学コレクション』.JPGアシモフの雑学コレクション.jpgIsaac Asimov's Book of Facts 3000 of the Most Entertaining, Interesting, Fascinating, Unusual and Fantastic Facts.jpg    世界史こぼれ話2三浦一郎.jpg
アシモフの雑学コレクション (新潮文庫)』 "Isaac Asimov's Book of Facts: 3,000 Of the Most Interesting, Entertaining, Fascinating, Unbelievable, Unusual and Fantastic Facts"(原著)三浦一郎 『世界史こぼれ話 2 (角川文庫)

星新一.jpgアイザック・アシモフ.jpg SF作家アイザック・アシモフ(1920‐1992)による原著には3,000 項目の雑学が収められていて、星新一(1926‐1997)がその中から抜粋して編訳していますが、スッキリした翻訳で楽しみながら読め、また、雑学に潜むアシモフの科学的視点というものも大切に扱っている気がしました。前半部分は自然科学系の雑学ですが、後半部分は歴史、文学、天才、人の死など様々な分野の雑学となっているのが、歴史本も書いているというアシモフらしく、SF作家としての作風が全く異なる星新一も、その好奇心の幅広さ、旺盛さの部分に呼応するものがあったのでしょう。

世界史こぼれ話.jpg世界史こぼれ話 1.2 三浦一郎.jpg 歴史系に限った雑学本では、故・三浦一郎(1914‐2006)の『世界史こぼれ話』('55年/学生社)も楽しい本でした(アシモフのこの本と、歴史に関する部分はトーンが似ている)。『世界史こぼれ話〈続〉 』('56年/学生社)と併せて'73年から角川文庫でシリーズ化され、今のところ自分の手元には2巻しか残っていませんが、全部で6巻まであり、これも、比較的飽きずに読める(もちろん暇潰しにはうってつけの)雑学本でした。

真鍋博.jpg 因みに『アシモフの雑学コレクション』のイラストは星新一のショートショート作品には欠かせない存在だった真鍋博(1932‐2000)、『世界史こぼれ話』(角川文庫)は、北杜夫の「どくとるマンボウ」シリーズのイラストなどで知られた佐々木侃司(1933‐2005)、何だか亡くなった人が多くて、少し寂しい。
真鍋 博

《読書MEMO》
●銀河系のなかで、太陽よりも大きい恒星は、5%しかない。5%といっても、50億個だが。(19p)
●冥王星に直接に行こうとすれば、47年かかる。しかし、木星経由だと、25年ですむ。宇宙船は木星の引力で加速され、より早く行けるのだ。(24p)
●1400年代の初期、世界で最もすぐれた天文学者は、モンゴルの王子だった。テムジン(ジンギスカン)の孫のベグ。サマルカンドに天文台を作り、正確な星図と惑星運行表を作成した。(29p)
●蚕はガの一種だが、長い養殖のため、人間の世話なしには生きられない。(53p)
●インフルエンザは、邪悪な星の「影響(インフルエンス)」のためとされ、この呼称となった。(83p)
●バクダッドに病院をたてる時、場所の選定にある方法を使った。各所に肉の塊をつり下げ、最もくさるのがおそかった地点を、最適とした。(84p)
●アルキメデスは入浴中、浮力の原理を発見し、わかったの意味の「ユリーカ」の叫びとともに、裸で街を走り回った。有名な話だが、古代ギリシャでは裸で運動するのが普通で、男の裸は珍しくなかった。(108p)
●(南北戦争時、)陸軍長官のカメロンは、反乱軍を指揮したリー将軍の家へのいやがらせに、その近くに兵士たちを埋葬した。のちに政府の所有となり、アーリントン軍用墓地となった。
●無名時代、ピカソは寒い時、自分の作品を燃やして、あたたかさを求めた。(177p)
●ゆり椅子の発明者は、ベンジャミン・フランクリン。(209p)
●ニュートンは十代の時、母に言われて学校を中退したことがある。農業がむいているのではないかと期待されて。(210p)

About this Archive

This page is an archive of recent entries in the 真鍋 博 category.

松本 清張 is the previous category.

三浦 綾子 is the next category.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1