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自分の経験を作品に"昇華"させることにより自らの明日を切り拓いていく(自己セラピー?)。

人間仮免中 卯月妙子.jpg人間仮免中』 失踪日記 吾妻 ひでお.jpg失踪日記』 失踪日記2 アル中病棟.jpg失踪日記2 アル中病棟

 『人間仮免中』は、2012(平成24)年度「『本の雑誌』編集部が選ぶノンジャンル・ベスト10」第1位。

人間仮免中1.jpg 夫の借金と自殺、自身の病気と自殺未遂、AV女優など様々な職業を経験―と、波乱に満ちた人生を送ってきた私は、36歳にして25歳年上の男性と恋をする―。

 '12(平成24)年に刊行された、'02年刊行の『新家族計画』以来10年ぶりとなる作者の描き下ろし作品ですが、単行本刊行時から話題なり、作家の高橋源一郎氏が「朝日新聞」の「論壇時評」(2012年5月31日朝刊)で紹介(推奨)していたり、同時期によしもとばなな氏、糸井重里氏といった人たちも絶賛しており、更には漫画家ちばてつや氏が自らのブログで「ショックを受けた」と書いていたりしました。

『人間仮免中』

 作者の病気とは「統合失調症」であり、衝動的に歩道橋から飛び降り、顔面を複雑粉砕骨折...この作品ではそれ以降のリハビリの日々が描かれていますが、まず思ったのは、動機らしい動機もないままにふわ~と歩道橋から飛び降りて、何の防御姿勢もとらずに顔面から地面に激突したというのが、統合失調症らしいなあと(そう言えば、昨年['13年]8月にマンションから転落死(飛び降り自殺)した藤圭子も、一部ではうつ病と統合失調症の合併障害だったと言われていたなあ)。

 夫の自殺で経済的苦境に陥ったとは言え、いきなりグロ系AV女優の仕事をするなどし、また飛び降りによる顔面骨折で顔がすっかり"破壊"されてしまうなど、経験していることが一般人のフツーの生活から乖離している分、恋愛物語の部分や家族との絆の部分の温かさが却ってじわっと伝わってくる感じでした。

 統合失調症(かつては「精神分裂症」と呼ばれていた)は罹患した個人によって症状が様々ですが、共通して言えるのは「常識」が失われるということであると、ある高名な精神科医(木村敏)が書いていたのを以前に読みましたが、この作品で言えば、病院のスタッフに対する被害妄想意識などがその顕著な例でしょう。統合失調症の一般的な病症についても書かれており、「闘病記」としても読めます。

 但し、Amazon.comのレビューには、読んでいて辛くなるというのも結構あり、身内にうつ病者がいて自殺したという人のレビューで、「精神病の人は自分の事しか考えていません。読んで再度、認識しました」という批判的なものもありました。

 この作品を読んで思い出されるのが、'05(平成17)年3月にこれもイースト・プレスから刊行された漫画家・吾妻ひでお氏の『失踪日記』('05年)で、こちらは'05(平成17)年・第9回「文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞」、'06(平成18)年・第10回「手塚治虫文化賞マンガ大賞」など多くの漫画賞を受賞しましたが、「日記」と謳いつつも"創作"の要素が入っていることを後に作者自身が明かしています。

 『失踪日記』にしてもこの『人間仮免中』にしても、もし作者が自分や周囲の人々の苦しみをストレートに描いていたら、あまりに生々しくなり、ユーモアの要素が抜け落ちて、コミック作品としては成立しなかったのではないかと思われます。『人間仮免中』についてのAmazon.comのレビューには、「意外と悲惨に感じなかった」というのもありましたが、個人的な印象はそれに近く、そうした印象を抱かせるのは"作品化"されていることの効果ではないかと。

 一方で『人間仮免中』の場合、最後はやや無理矢理「感動物語」風にしてしまったキライもありますが、こうしたことからも、作者の場合は創作活動が自己セラピーになっている面もあるのではないかと思われました。大袈裟に言えば、自分の経験を作品に"昇華"させることによって、自らの明日を切り拓いていくというか...。

失踪日記 夜を歩く.jpg 吾妻ひでお氏の『失踪日記』は、うつ病からくる自身の2回の失踪(1989年と1992年のそれぞれ約4か月間)を描いたものでした。1回目の失踪の時は雑木林でホームレス生活をしていて、2回目の失踪の時はガス会社の下請け企業で配管工として働いていたという具合に、その内容が異なるのが興味深いですが、1回目の失踪について描かれた部分は「極貧生活マニュアル」みたいになっていて、2回目は下請け配管工の「お仕事紹介」みたいになっています。

 1回目の失踪で警察に保護された際に、署内に熱烈な吾妻ファンの警官がいて、「先生ともあろうお方が...」とビックリされつつもサインをせがまれたという話は面白いけれど、事実なのかなあ。熱心な吾妻ファンである漫画家のとり・みき氏と1995年に対談した際に、「失踪の話はキャラクターを猫にして...」と言ったら、「吾妻さんが(ゴミ箱を)あさったほうが面白いですよ(笑)」と言われて、その意見も参考にしたとも後に明かしています。
『失踪日記』

 『失踪日記』も、個人的には、自らの経験を漫画として描くことが自己セラピーになっている面もあるのではないかと思うのですが、作者はこの失踪事件から復帰後、今度はうつ病の副次作用からアルコール中毒に陥り、重症のアルコール依存症患者として病院で治療を受けていて(但し、本作『失踪日記』が世に出る前のことだが)、この経験も「アル中病棟」(『失踪日記2-アル中病棟』('13年10月/イースト・プレス))という作品になっています。

 最後ばたばたっと"感動物語"にしてしまった『人間仮免中』よりは、「極貧生活マニュアル」乃至は「お仕事紹介」になっている『失踪日記』の方が、ある意味"昇華度"(完成度)は高いように思われますが、繰り返し"うつ"になってしまうということは、吾妻ひでおという人は根本的・気質的な部分でそうした素因を持ってしまっているのだろうなあと思われる一方で、「アル中病棟」退院後は断酒を続けているとのことで、セラピー効果はあったのか。

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薀蓄やテクニックだけではなく、ドラマ的にも結構面白かったが...。

ドラゴン桜 13.jpg ドラゴン桜 14.jpg ドラゴン桜15.jpg ドラゴン桜16.jpg ドラゴン桜17.jpg ドラゴン桜18.jpg ドラゴン桜19.jpg ドラゴン桜20.jpg ドラゴン桜21.jpg ドラゴン桜 ドラマ1.jpg テレビドラマ「ドラゴン桜」
ドラゴン桜 |モーニングKC [コミックセット])』 (全21巻)

 '03(平成15)年から'07(平成19)年まで講談社の「モーニング」に連載された作品で、'05(平成17)年度・第29回「講談社漫画賞」並びに第9回「文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞」受賞作。'05(平成15)年にTVドラマ化もされましたが、自分にとって直接関わるテーマに思えなくて(画も上手だとは思えないし)第1巻だけ買ってずーっと読まずにいて、ドラマも1度も見ずにいたのが、連載終了を機に全巻まとめ買いして読んでみたら、当初のそれほど期待していなかった予想と違って結構面白かったです。

 主人公の男女2人の高校生は教師・桜木と出会ってひょんなことから受験生としては殆ど"無"の状態で1年後の東大受験を目指すことになり、最初から東大受験のノウハウ、薀蓄がだーっと出てきてやや圧倒されましたが、先月('09年3月)退官した東大の小宮山総長が以前から「知識の構造化」の重要性を説いており、実際、東大の入試問題は、詰め込みの知識ばかりを問うのではなく、それを構造化する"知恵"のようなものを求めているのだということがこのマンガでよくわかりました。

 ただ、どこまで自分の社会人としての勉強法に取り込めるかと思うとやや消化不良気味で、このままテクニック・オンリーで最後までいくのはキツイなあと思いながら、それでも教師・桜木の断定的な物言いと周囲との確執などに引き込まれて読んでいると、後半部分は2人の受験生の精神面の問題に重点が移行し、それがそのまま2人の成長物語になっているという―たまたま選ばれた2人に発奮する要因がそれなりに内包されていたというのがマンガの"お約束ごと"であるにせよ、何故ヒトは勉強するのかといった問題にまで踏み込んでいて、ドラマ的にも良く出来ていると思いました。

 巻が進むにつれて、このマンガの人気が出たせいか、教育関係者に限らず色々な分野の人のアドバイスが挿入されていますが、受験産業の業界人パブリシティみたいなものも少なからずあり、便乗商法ではないかとちょっと邪魔っ気に感じたりもしました。

  '04年に同じく講談社のマンガ雑誌で連載がスタートした『もやしもん』が'08年の「手塚治虫文化賞」(朝日新聞社主催)のマンガ大賞を受賞し、薀蓄マンガは(身内の賞である「講談社漫画賞」を除いては)賞に縁が無いのか思っていたらそうでもないのかと。
 でも『ドラゴン桜』はテーマもテーマだし...と思ったら、既に'04年に「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」の優秀賞を受賞していました(文化庁も"便乗"した?)。

 諦めかけている受験生をやる気にさせるという意味ではいいマンガかも知れませんが(親がやる気になって変な期待を抱いてしまう?)、桜木のような教師に巡り逢えない生徒は多いと思うし、このマンガでやっているのは、学校の授業の時間帯を全て(更に通常の時間帯を超えて)塾講師の講義に置き換えているようなものです。
 そこに作者の学校教育に対する批判が込められているとも言えますが、(文化庁は文部科学省の外局であるけれども)文科省はこのマンガをどう捉えているのだろうか。

 '05(平成17)年にTBSでドラマ化されましたが、連載が完結しないうちのドラマ化であったためか、原作における2人の中心的な生徒の外に何人かの原作に無い生徒の人物造型があって、教師とそれら生徒たちとの人間関係や葛藤が更に前面に出ているため(「金八先生」を意識したのか?)、「受験蘊蓄」的な要素はかなり薄まっています。

ドラゴン桜2.jpgドラゴン桜 ドラマ.jpg「ドラゴン桜」●演出:塚本連平/唐木希浩●制作:遠田孝一/清水真由美●脚本:秦建日子●音楽:仲西匡●原作:三田紀房「ドラゴン桜」●出演:阿部寛/長谷川京子/山下智久/長澤まさみ/中尾明慶/小池徹平/新垣結衣/サエコ/野際陽子/品川徹/寺田農/金田明夫●放映:2005/07~09(全11回)●放送局:TBS 

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被爆家族の3代を描く。約100ページしかないのに、長編小説を読み終えたような余韻。

夕凪の街 桜の国2.jpg 夕凪の街桜の国1.jpg夕凪の街桜の国夕凪の街 桜の国 (双葉文庫).jpg夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

 広島に投下された原爆によって命運を左右された家族3世代を描いた作品で、'03(平成15)年発表の「夕凪の街」、'04(平成16)年発表の「桜の国(第1部)」と書き下ろしの「桜の国(第2部)」の合本ですが、刊行時の反響に違わず、'04(平成16)年度(第8回)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回('05年)手塚治虫文化賞新生賞などを受賞し、'07年には映画化もされました。

 「夕凪の街」は、'55(昭和30)年の広島市の基町にあった原爆スラムを舞台に、少女の頃に被爆した平野皆実(みなみ)という23歳の女性の被爆10年後が描かれ、「桜の国」では、第1部が'87(昭和62)年の春、第2部が'04(平成16)年の夏の東京と広島を舞台に、皆実の弟・石川(旧姓平野)旭の子・七波(ななみ)の小学生時代と28歳のOLになってからの話が描かれています(映画では、「桜の国」第2部を'07年に年代変更して、田中麗奈、麻生久美子が主演)。

 「夕凪の街」の主人公・皆実は、原爆で父、姉、妹を失い、被災地で多くの遺体を乗り越えてきた経験のフラッシュバックとともに、自分は生きていてよいのだろうか、周囲からも死ねばいいと思われているのではないかという思いに悩まされ、優しい男性同僚との恋愛にも一歩踏み込めないでいる中、被爆後遺症が勃発し、離れて暮らしていた弟などが見舞いに来る頃には、既に眼も見えなくなっていますが、この最後の場面が視力を失った主人公に合わせて空白のコマになって内語だけが書かれており、「十年たったけど、原爆を落とした人はわたしを見て『やった!またひとり殺せた』とちゃんと思ってくれとる?」というその言葉は、平和な時代になっても原爆後遺症によってその命を奪われねばならなかった主人公の無念さを表していて痛切な響きがあります。

 「桜の国」の主人公・七波は野球好きの活発な少女ですが、広島出身の母・京花が自宅で血を吐いて倒れているのを発見し、それが母の最期となったという哀しい体験をしています。
 京花がまだ幼い頃の、学生だった七波の父・旭(「夕凪の街」の皆実の弟)との出会いも描かれていて、ああ、彼女も原爆後遺症だったのかなあと。
 その旭も今ではすっかり年をとり、時々家を抜け出て遠出しているようですが、それをボケの始まりではないかと疑った七波は、ある日、家を抜け出した父を尾行すると、彼は広島行きの長距離バスに乗り込んでいた―。

『夕凪の街 桜の国』.bmp 「桜の国」の主人公は七波ですが、その父・旭の負っているものも重い。それに加え、七波の親友であり、弟・凪夫に思いを寄せる利根東子。七波の父を追っての広島行きは、彼女に引っ張られてのことですが、彼女は被爆一家と付き合うことを親から禁じられていて、ここに1つ、被爆者に対する差別というのがテーマとして浮き彫りにされています。

 全体で約100ページしかありませんが、「夕凪の街」の約30ページの執筆だけで1年かけたとのことで、それだけ密度の濃い労作であると言えます。
 「桜の国」に入って登場人物の関係がやや錯綜しますが、注意して読むと「夕凪の街」との様々な相似形やリフレイン的な描写が見られ、単なる感動物語というだけでなく、全体としての緻密な構成の上に成り立っていて、但し、技法が目的化するのではなく(この物語には所謂"オチ"というものが無い-強いて言えば、七波の父・旭が何故広島通いをしていたのかとうのが"オチ"だが)、例えば、旭の娘・七波に対する思いが、姉・皆実へのレクイエムと重なっているというような重層的効果を持たせることで、長編小説を読み終えたような余韻を読者に与えることに繋がっているように思いました。

夕凪の街 桜の国 1.jpg夕凪の街 桜の国 2.jpg「夕凪の街 桜の国」('07年/「夕凪の街 桜の国」製作委員会)
監督・脚本: 佐々部清
出演:田中麗奈/麻生久美子/藤村志保/堺正章/吉沢悠/中越典子


 【2008年文庫化[双葉文庫]】

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「21世紀」が「20世紀」の"解題"になってない。大風呂敷、拡げてたたまずの感。編集者が作品に口出しするのも良し悪し。

20世紀少年 全巻.jpg21世紀少年下.jpg21世紀少年 上.jpg20世紀少年22.jpg『20世紀少年 22』
映画「20世紀少年」.jpg『21世紀少年 (上・下)』

 '99(生成11)年から'07(平成19)年まで「ビッグコミックスピリッツ」で連載され、「小学館漫画賞」「講談社漫画賞」「文化庁メディア芸術祭優秀賞」などを受賞した作品。'08年には堤幸彦監督により映画化されました('08年公開は全3部作のうち第1部のみ)。

 ケンヂたちが少年時代に遊びで作った「世紀末預言書」の内容が、成長した彼らに現実となって襲いかかり、ケンジとその仲間たちは地球を救うため立ち上がる―。

 話は、ケンヂ達の少年時代('70年前後)と「血の大晦日」('00年)前後を行き来し、そして「ともだち暦」(2015年)にはいり、最終章では『21世紀少年』と改題されていますが、24巻で一つの作品と見てよいものです。

プロフェッショナル仕事の流儀 0701.jpg ストーリーテラーらしい複雑な物語構成と、世界制覇を企む「ともだち」とは何者かという〈大きな謎〉で、ぐいぐい読む者を引っぱっていく力量はさすがで、相変わらず飽きさせません。ところが、気宇壮大であることは結構なのですが、「21世紀少年」と改題までされた結末部分が、実際の"解題"とはなっておらず、「大風呂敷、拡げてたたまず」といった感じで終わってしまっていて、『MONSTER』の読後感のようなカタルシスは得られませんでした。

漫画家・浦沢直樹 氏 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」('07年1月18日放送)

 NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に、'07年1月に作者・浦沢氏が、11月には漫画原作者で浦沢作品の編集者でもある長崎尚志氏が出演していましたが(両方の放送を見ると、長崎氏の浦沢作品に対する関与の度合いの大きさがわかる)、長崎氏に言わせれば、浦沢作品は複雑なことをわかりやすく伝えているのが魅力であり、また、わからないものにこそ人は魅力を感じると―。

長崎尚志.jpg 今回は、「ともだち」とは誰かという謎を敢えて謎のまま残そうとした意図が見てとれますが、これは長崎氏の強い意向ではないだろうかと思いました。ところが、その答えが意外とミエミエなのは、浦沢氏のサービス精神(?)が出てしまったためで、それなのに無理矢理ミステリアスに仕立てようとする、そうした不整合が、ストーリーを収束し切れなかったり、矛盾を生じたりする原因になっているような気もしました。

漫画原作者・長崎尚志 氏 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」('07年11月6日放送)

20世紀少年 一場面.jpg 少年期の壮大な想いや仲間同士の結束・反目というのは、大人になっても無意識に抱えているものかも知れず、それが表面化し再現されるという設定も悪くないのですが、やはり結末が...。

 スティーブン・キングの作品(この人のも、途中から何でもありになってしまうものが多いと思うが)や映画「ターミネーター2」を想起させられる部分がありましたが、読後は、ストーリー(編集者の影響が及ばぶ部分)よりも、作者の自分史に重ねた昭和の時代(万博とか)への郷愁や、昭和漫画(ナショナルキッドとか)に捧げたオマージュの方が印象に残りました(編集者の影響が及ばない部分)。

 編集者が作品に口出しすることの良し悪しを考えさせられます(ましてや、長崎氏は自身が漫画原作者でもある)。良い方向に転ぶ場合が無いとは言えませんが...。

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自閉症児とその親の歩み。母親の一番苦しい時期を描く第1巻。

光とともに1巻.bmp光とともに... (1)』〔'01年〕光とともに 自閉症児を抱えて.jpg光とともに... ~自閉症を抱えて~ DVD-BOX

光とともに3.jpg '00(平成12)年、女性コミック誌「for Mrs.(フォアミセス)」(秋田書店)にて連載がスタートした、自閉症児とその親の歩みを描いたコミックの第1巻で、主人公の光君の誕生から保育園卒園までを画いています。'04(平成16)年度(第8回)文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、'04年にNTV系でドラマ化され話題を呼びましたが(主演は、'01年に蜷川幸雄演出の舞台「ハムレット」でオフィーリア役を演じて"一皮むけた"篠原涼子)、ドラマを見て少しでも関心を抱いた人にはお薦めしたいと思います。

 母親と目を合わせようとしないし、いつまでたっても母親を「ママ」と呼ばないわが子。最初は自分でもわが子のことがよくわからないで困惑する母親。そして、〈自閉症〉という診断にたどり着く―。自閉症だとわかった後も、家族・親戚・周囲の理解がなかなか得られない、そうした母親の一番苦しい時期が描かれています。
NTV系ドラマ「光とともに~自閉症児を抱えて~」 ('04年放映)
光とともに2.jpg光とともに.jpg これを読むと、TVドラマ(母親役は篠原涼子)の方は途中から始まっていることになり(小学校入学の少し前から)、またかなり明るいシーンが多かったような気がします。作者は漫画にはいろいろ制約があるといったことを以前言っており、テレビの場合はなおさらそうでしょう。
出演:篠原涼子/小林聡美/山口達也

光とともに(戸部けいこ 秋田書店) .jpg わが子との心の繋がりを懸命に模索する母親。光君が初めて母親のことを「ママ」と呼ぶ場面や、さまざまな出来事を経て保育園の卒園式で新たな一歩を踏み出す場面は胸を打ちますが、いずれも作者が取材した事実に基づいているようです。

 続きモノで手をつけるのはちょっと...という人もいるかもしれませんが、この第1巻はこれ1冊でも完結した感動的物語として読めるので、未読の人も手にとりやすいのではないかと思います(もちろん療育に簡単な"終わり"はないのでしょうが)。 

 自閉症という一般の人にはなかなか理解されない障害を、多くの人にわかりやすく知らしめたという意味でも、本書の功績は大きいと思います。

光とともに 篠原.jpg「光とともに~自閉症児を抱えて~」●演出:佐藤東弥/佐久間紀佳●制作:梅原幹●脚本:水橋文美江●音楽:溝口肇●原作:戸部けいこ●出演:篠原涼子/小林聡美/山口達也/武田真治/鈴木杏樹/井川遥/齋藤隆成/市川実日子/大倉孝二/大城紀代/高橋惠子/渡辺いっけい/金沢碧/福田麻由子/佐藤未来/池谷のぶえ●放映:2004/04~06(全11回)●放送局:日本テレビ

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センセーショナリズム? 暴走気味の主人公の独善が気になる。

ブラックジャックによろしく.jpg                 ブラックジャックによろしくドラマ3.jpg
ブラックジャックによろしく (1)』 〔'02年〕 「ブラックジャックによろしく 涙のがん病棟編 [DVD]」妻夫木聡

立花隆.bmp '02(平成14)年に第1巻が刊行され第6回「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」で優秀賞を受賞したこのシリーズは、あの立花隆氏が絶賛、氏曰く―、「(この漫画は)いまやコミックを超え、ノンフィクションを超え、文学すら超えて、我々の時代が初めて持った、知・情・意のすべてを錬磨する新しい情報メディアとなった。これからの時代、『ブラックジャックによろしく』を読んで悩み苦しんだことがない医者にはかかるな、と言いたい」と、ものすごい褒めようで、東大での講義素材にも使ったりしていますが、確かに医療現場においてあるかもしれない問題を鋭く突いているなあという感じはします(実態とかけ離れているという現場の声もあったようですが)。

ブラックジャックによろしく1.jpg この第1巻では、研修医の劣悪な労働条件や治療よりも研究を優先する大学病院の内実を抉っていて、続く第2巻で主人公の研修医は、大学病院の面目を潰してまでも患者を市井の名医に診せたりしています(なかなかの行動力)。

ブラックジャックによろしく がん病棟編.bmp 第3巻、第4巻でダウン症の生前告知を通して新生児医療の問題を扱っていて(これは感動しました)、第5巻~第8巻のガン告知の問題を扱っているところまで読みましたが(この部分は'03年にTBS系でテレビドラマ化されたシリーズの中では取り上げられず、翌年の正月にスペシャル版としてドラマ化された)、その後も精神障害とマスコミ報道の問題を扱ったりしているようで、どちらかと言うとジャーナリスティックな(悪く言えばセンセーショナリスティックな)路線を感じます。

 それはそれでいいのですが、主人公の正義感がややもすると暴走的な行動に表れ、主人公の独善に思えてきます。山崎豊子の『白い巨塔』では、この種の"正義感"を揶揄するような描き方がありましたが、この漫画は、「強者は悪者で、善なる者は弱者」みたいな構図の中で、弱者にはどんな非常手段も許される...みたいなを感じがあるのが引っかかります。

Er.jpgER 緊急救命室.jpg 同じ「青臭さ」でも、個人的には、テレビドラマ『ER』初期の研修医時代の"カーター君"みたいな、周囲に対するセンシビリティのあるタイプの方が好きなのですが、多分、立花氏は、自分とは違った視点でこの作品を見ているのだろうなあと。

ブラックジャックによろしくドラマ2.jpg
ブラックジャックによろしく47.jpg
「ブラックジャックによろしく」●演出:平野俊一/三城真一/山室大輔●チーフプロデューサー:貴島誠一郎●脚本:後藤法子●音楽:長谷部徹●原作:佐藤秀峰●出演:妻夫木聡/国仲涼子/鈴木京香/加藤浩次/杉本哲太/松尾政寿/綾瀬はるか/今井ブラックジャックによろしく  緒形拳.jpg陽子/伊東四朗/泉ピン子/原田芳雄/笑福亭鶴瓶/吉田栄作/横山めぐみ/浅茅陽子/石橋凌/伊東美咲/藤谷美紀/阿部寛/鹿賀丈史/小林薫/薬師丸ひろ子/三浦友和/緒形拳●放映:2003/04~06(全11回)●放送局:TBS

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「鉄腕アトム/地上最大のロボット」の浦沢流"料理方法"。

PLUTO.jpg 『PLUTO (1).』 〔'04年〕 豪華版 PLUTO 1.jpg 豪華版 〔'04年〕

 '03(平成15)年の連載開始時(「ビックコミックオリジナル」誌上)から話題を席巻した作品。『MONSTER』('94〜'01年)で「手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞した浦沢直樹氏が、自らが「最初に読んで感動した漫画」という「鉄腕アトム/地上最大のロボット」('64年)を翻案したもので地上最大のロボット.bmp、浦沢氏は本作で2度目の「手塚治虫文化賞マンガ大賞」と3度目の「文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞」を受賞しています。また、宝島社が発行するムックで年度毎にマンガを投票でランキングする「このマンガがすごい!」(トコ編とオンナ編に分かれている)で、オトコ編の2006年の第1位に選ばれています。

 1巻ごとに完結しているわけでなく、連続したストーリーの途中までしか読んでなくて評価をするのは何ですが、面白いし、うまいなあと思いました。「地上最大のロボット」との比較論も巷に溢れており、その中では、「これは浦沢のアトムであり、手塚漫画とは別物」という見方がかなりあるようですが、リメイクとは元来そういうものであるはずだし、監修者である手塚真氏も、事前に「浦沢直樹自身の漫画が見たい」という注文をつけたそうです。

「鉄腕アトム/地上最大のロボット」

 「地上最大のロボット」を読んで(できれば手元に置きながら)、浦沢直樹がそれをどのように料理したかを楽しみつつ読むのが一番いいのではないかと思います(『鉄腕アトム』全巻、持っています!)。

 パンクチュアル・スーツとかは、ガンダム世代を意識したものなのでしょうか。いろいろと工夫の跡が見えます。『MONSTER』を読んだ人ならすぐに掴めてくる独特の雰囲気はあるかと思いますが、それでも第1巻の巻末のアトム登場の場面には、「こうきましたか」という感じ。ストーリーの大筋が分かっていても、"料理方法"に今後も期待が持てました。

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読んでいる間は24時間"ミステリーツアーのお客様"状態。

MONSTER.jpg MONSTER2.jpg Monster (3).jpg Monster (4).jpg MONSTER 5.jpg MONSTER 6.jpg MONSTER7.jpg MONSTER8.jpg MONSTER9.jpg MONSTER10.jpg 『MONSTER 全18巻セット

 1994(平成6)年から2001(平成13)年にかけてコミック雑誌に連載された浦沢直樹氏の長篇ミステリーコミック。1997(平成9)年・第1回「文化庁メディア芸術祭マンガ部門(優秀賞)」受賞作、並びに1999(平成11)年・第3回「手塚治虫文化賞(マンガ大賞)」、2000(平成12)年・第46回「小学館漫画賞(青年一般部門)」受賞作。

 独デュッセルドルフのアイスラー病院に勤務する天才外科医ドクター・テンマ(天馬賢三)は、院長の娘との結婚を約し、順風満帆の将来を保障されていた。しかし、利潤優先で人の命を平等に扱わない病院に対し疑問を抱いた彼は、頭を撃たれ病院に担ぎ込まれた貧しい少年の手術を、資産家の手術に優先して敢行したために、自らの将来を棒に振る。だが実は、彼が命を救ったその少年は、大量殺人を繰り返す怪物の心を持っていた―。

 最初は軽い気持ちで第1巻を手に取ったのが、読み終わるまでの間は、仕事していても食事していても頭の中は"ミステリーツアーのお客様"状態で、あっという間に18巻まで読み進み、最後にガーンと壁に激突させられて、しばらくは何がどうだったのかよくわからないという感じ。

 これだけの長編で、かつ密度の濃いストーリーを構築できる人は今までそういないのではないかと思いました。すべての挿話がラストに繋がっていくため、ラストの謎を自分なりに整理してストーリーを遡及していく楽しみもあります。個人的にはロバート・ラドラムの小説を連想したりもしましたが、やはりこの作品はストーリーでもインパクトでも、その高いオリジナリティを認めなければならないものだと思います。
 
MONSTER アニメ.jpgMONSTER アニメ dvd.jpg '04年には日テレ系でアニメ化されていますが、放送時間帯が平日深夜で、それもこの作品らしいかなと思ったりしました(DVDレコーダーが普及がしたせいでもある? どちらかというと、時間のあるときに腰を落ち着けて一気に見たい作品)。
 アニメに限らず、できれば全巻続けて一気に読んだ方がいいタイプの作品であるし、先入観を持たないで読んだ方が楽しめると思います。
   
「MONSTER」●演出:小島正幸●脚本:浦畑達彦●音楽:配島邦明●原作:浦沢直樹●出演(声)木内秀信/小山茉美/佐々木望/能登麻美子/池田勝/磯部勉●放映:2004/04~2005/09(全74回)●放送局:日本テレビ

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